JP2006131826A - 樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】メタクリル系樹脂が本来持つ優れた透明性を損なうことなく、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】メチルメタクリレートを主要構成単位とするメタクリル系樹脂(I)と多層
構造グラフト共重合体(II)とを含む樹脂組成物であって、多層構造グラフト共重合体(II)が、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート70〜90質量%等を含む単量体混合物と、多官能単量体とを含む単量体成分を重合して得られる内層重合体(A)と、該内層重合体(A)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体成分を重合して得られる外層重合体(B)とを有し、内層重合体(A)が特定の質量平均粒子径、外層重合体(B)との関連において特定の質量を有し、内層重合体(A)、外層重合体(B)、メタクリル系樹脂(I)の(共)重合体
の溶解度パラメーター(SP値)が特定の関係を満たす。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明性、耐衝撃性に優れた樹脂組成物に関する。
メタクリル系樹脂は透明性、耐候性、成型加工性に優れており、自動車部品、照明用品、各種パネル等に広く用いられている。しかし、一般にメタクリル系樹脂は耐衝撃性が十分でないため、その用途が狭められている。
そこで、メタクリル系樹脂の耐衝撃性を改良するために、特定の硬質−軟質−硬質の三層構造を基本構造とする多層構造グラフト共重合体を添加することにより、メタクリル系樹脂等の硬質樹脂の耐衝撃性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、ある程度の耐衝撃性の改良は見られるものの、満足できるものではない。
また、内層の少なくとも1層のガラス転移点(Tg)が25℃未満の軟質層であり、最外層のガラス転移点(Tg)が25℃以上の硬質層である多層構造グラフト共重合体により、耐衝撃性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この方法においても、ある程度の耐衝撃性の改良は見られるものの、さらなる耐衝撃性の向上が求められている。
上記の多層構造グラフト共重合体を多量に添加すればメタクリル系樹脂の耐衝撃性をより高くすることは可能であるが、そのようなメタクリル系樹脂の硬度は低下してしまうため実用性が低下してしまう。また、多層構造グラフト共重合体を多量に添加するほど製造コストが高くなるため、多層構造グラフト共重合体の添加量が少なくかつ耐衝撃性が高い樹脂組成物が望まれている。
特公昭55−27576号公報 特開平4−356502号公報 POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION
本発明の目的は、メタクリル系樹脂において本来有する透明性を維持して耐衝撃性を満足する樹脂組成物を安価に得ることができなかったところ、メタクリル系樹脂が持つ優れた透明性を損うことなく、優れた耐衝撃性を備えた樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らはこのような現状に鑑み鋭意検討した結果、適切な組成、粒子径からなる内層重合体と適切な組成からなる外層重合体との2層を少なくとも有する多層構造重合体とメタクリル系樹脂とを、おのおのが適切な範囲の溶解度パラメーター(SP値)となるように組み合わせて配合することにより、優れた透明性と耐衝撃性とを備えた組成物が得られることの知見を得て、上記問題が解決することを見い出し、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、メチルメタクリレートを主要構成単位とするメタクリル系樹脂(I)と多層構造グラフト共重合体(II)とを含む樹脂組成物であって、
多層構造グラフト共重合体(II)が、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート70〜90質量%、芳香族ビニル化合物10〜30質量%、および、その他の共重合可能な単量体0〜20質量%からなる単量体混合物100質量部と、多官能単量体0.1〜5質量部とを含む単量体成分を重合して得られる内層重合体(A)と、該内層重合体(A)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体成分を重合して得られる外層重合体(B)とを有し、
前記内層重合体(A)の質量平均粒子径が150〜500nmであり、
前記内層重合体(A)を100質量部としたときの前記外層重合体(B)が30〜500質量部であり、
内層重合体(A)、外層重合体(B)、メタクリル系樹脂(I)の(共)重合体の溶解
度パラメーター(SP値)をそれぞれX、Y、Zとしたときに、式(1)
X+0.2(Z−X)<Y<Z−0.1(Z−X) (1)
を満たすことを特徴とする樹脂組成物に関する。このような本発明の樹脂組成物は、メタクリル系樹脂が持つ優れた透明性を損うことなく、優れた耐衝撃性を備えたものである。
本発明において、メタクリル系樹脂が本来有する優れた透明性を損うことなく、優れた耐衝撃性を備えた樹脂組成物を提供することができる。
本発明の樹脂組成物は、メチルメタクリレートを主要構成単位とするメタクリル系樹脂(I)と多層構造グラフト共重合体(II)とを含む樹脂組成物であって、多層構造グラフ
ト共重合体(II)が、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート70〜90質量%、芳香族ビニル化合物10〜30質量%、および、その他の共重合可能な単量体0〜20質量%からなる単量体混合物100質量部と、多官能単量体0.1〜5質量部とを含む単量体成分を重合して得られる内層重合体(A)と、該内層重合体(A)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体成分を重合して得られる外層重合体(B)とを有し、前記内層重合体(A)の質量平均粒子径が150〜500nmであり、前記内層重合体(A)を100質量部としたときの前記外層重合体(B)が30〜500質量部であり、内層重合体(A)、外層重合体(B)、メタクリル系樹脂(I)の共重合体の溶解度パラメーター(SP値)をそれぞれX、Y、Z
としたときに、X+0.2(Z−X)<Y<Z−0.1(Z−X)であれば、特に制限されるものではない。
本発明の樹脂組成物におけるメタクリル系樹脂(I)は、メチルメタクリレートを主要
構成単位として重合して得られる樹脂であれば、特に制限されるものではないが、好ましいメタクリル系樹脂(I)としては、具体的に、メチルメタクリレート70〜100質量
%、それと共重合可能なビニルまたはビニリデン系単量体0〜30質量%を含む単量体成分を重合して得られる共重合体などを挙げることができる。上記の共重合可能なビニル系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物等を挙げることができる。
また、メタクリル系樹脂には、その他、離型剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を共存させることができる。
このようなメタクリル系樹脂の製造は、メチルメタクリレートを主要構成単位として上記ビニルまたはビニリデン系単量体の他、必要に応じてその他の単量体成分などを適宜含む単量体混合物を塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法によることができる。このような単量体成分の重合にあたり、単量体混合物に分子量を調整するための連鎖移動剤を添加することが好ましい。連鎖移動剤としては、t−ブチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等を挙げることができる。これらの連鎖移動剤の使用量は、上記単量体または単量体混合物100質量部に対して0.01〜3質量部の範囲が好ましい。
また、メタクリル系樹脂を懸濁重合法により製造する場合、使用する重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン等の過酸化物系開始剤等を挙げることができる。これらの重合開始剤の使用量は、上記単量体または単量体混合物100質量部に対して0.01〜3質量部の範囲が好ましい。
メタクリル系樹脂を懸濁重合法により製造する場合、使用する分散安定剤としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、澱粉末シリカ等の水難溶性無機化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体等のノニオン系高分子化合物、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、メタクリル酸エステルとメタクリル酸およびその塩との共重合体等のアニオン系高分子化合物等を挙げることができる。これらの分散安定剤の使用量は、水100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲が好ましい。また、必要に応じて、これらの分散安定剤と共に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マンガン等の分散安定助剤を併用することもできる。また、懸濁重合の重合温度としては、50〜150℃の範囲が好ましく、より好ましくは、70〜130℃の範囲である。
本発明の樹脂組成物に用いる多層構造グラフト共重合体は、内層重合体(A)および外層重合体(B)の2層を少なくとも有する多層構造グラフト重合体からなるものであり、その多層構造重合体における各層は以下に示される組成からなる単量体成分によって構成される。
内層重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート70〜90質量%(好ましくは75〜85質量%)、芳香族ビニル化合物10〜30質量%(好ましくは15〜25質量%)、および、その他の共重合可能な単量体0〜20質量%(好ましくは0〜10質量%)からなる単量体混合物100質量部と、多官能単量体0.1〜5質量部(好ましくは0.5〜2質量部)とを含む単量体成分を重合して得られる重合体であり、特に乳化重合により得られる共重合体であることが好ましい。単量体成分の組成を上述の各範囲内にすることにより優れた耐衝撃性及び透明性を持つ樹脂組成物を得ることができる。特に、上記単量体混合物におけるアルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートの使用量が70質量%以上であると、高度な耐衝撃性を持つ樹脂組成物を得ることができ、90質量%以下であると、高度な透明性を持つ樹脂組成物を得ることができる。
上記アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を挙げることができ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちn−ブチルアクリレートを使用することが好ましい。
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちスチレンを使用することが好ましい。
上記その他の共重合可能な単量体としては、上記の単量体と共重合可能であれば特に制限されないが、例えばフェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、グリシジルメタクリレートなどを挙げることができ、これらを単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、共重合可能な官能基を2以上有する単量体は以下に示す多官能単量体に分類し、その他の共重合可能な単量体には分類しないものとする。
上記多官能単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、アリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、フマル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル等を挙げることができ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちアリルメタクリレートを使用することが好ましい。
外層重合体(B)は、上述した内層重合体(A)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体成分を重合、特に乳化重合により得られる共重合体であることが好ましく、内層重合体(A)間においてグラフト交差を有するものが好ましい。
上記アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等を挙げることができ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、上述した内層重合体(A)に用いうるアルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとして例示したものと同様のものを挙げることができる。
ここで、「アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする」とは、単量体成分中、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートの含有量が50質量%以上であることを意味する。この含有量を50質量%以上とすることで、優れた透明性、耐候性を持つ樹脂組成物を得ることができる。
また、上記その他の共重合可能な単量体としては、上述した内層重合体(A)に用いうる芳香族ビニル化合物及びその他の共重合可能な単量体として例示したものと同様のものを挙げることができる。
また、多層構造グラフト共重合体には、その他、離型剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を共存させることができる。
このような単量体成分を有する外層重合体(B)うちの内層重合体(A)との間にグラフト交差を有しない単独重合体の数平均分子量としては、1万〜100万が好ましい。
このような単量体成分を有する外層重合体(B)のガラス転移点(Tg)は20〜80℃であることが好ましく、より好ましくは35〜65℃である。ガラス転移点(Tg)が20℃以上であれば、粉体として回収したときにブロッキングが抑制され、取り扱い性が向上する。また、ガラス転移点(Tg)が80℃以下であれば、より高度な耐衝撃性を持つ樹脂組成物を得ることができる。
ここで、本発明において、重合体のガラス転移点(Tg)は、通常知られているFOXの式:
1/Tg=a1/Tg1+a2/Tg2+a3/Tg3+…
に従い計算により求めた値であり、式中のTg1、Tg2およびTg3として、各重合体を形成するのに用いた単量体成分に含まれる単量体を単独で重合した際に得られるそれぞれのホモポリマーのガラス転移点(Tg)を表し、「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」(非特許文献1)に記載されている値を引用して求めた値である(以下同じことをいう。)。また、上記FOXの式中のa1、a2およびa3は各重合体を形成するのに用いた単量体成分に含まれる単量体のそれぞれの質量分率を表す。尚、ホモポリマーのガラス転移点(Tg)(K)として非特許文献1に記載される値は、ポリメチルメタクリレート:378、ポリn−ブチルメタクリレート:293、ポリメチルアクリレート:283、ポリエチルアクリレート:249、ポリn−ブチルアクリレート:219、ポリスチレン:373である。
また、多層構造グラフト共重合体において、内層重合体(A)の質量平均粒子径は150〜500nmであり、より好ましくは220〜300nmである。内層重合体(A)の質量平均粒子径が150nm以上であれば、樹脂組成物の耐衝撃性を高いものにすることができ、500nm以下であれば樹脂組成物の透明性を高いものにすることができる。
また、多層構造グラフト共重合体の内層重合体(A)を100質量部としたときの外層重合体(B)は30〜500質量部であり、好ましくは50〜100質量部であり、より好ましくは60〜80質量部である。30質量部以上500質量部以下であれば樹脂組成物の耐衝撃性を十分なものとすることができる。
なお、多層構造グラフト共重合体の各層の重合体の質量は、各層を構成する単量体成分の質量の総和として算出する。
本発明における多層構造グラフト共重合体を製造するには、例えば、内層重合体(A)の単量体成分を乳化重合し重合体のラテックスを得、そのラテックスに外層重合体(B)の単量体成分を加え乳化重合し積層グラフト重合体のラテックスを得、得られたラテックスから多層構造グラフト共重合体を回収する方法などによることができる。乳化重合は公知の方法にしたがって行うことができる。
このような多層構造グラフト共重合体の製造において、特に外層重合体(B)を得るための単量体成分の重合では、単量体混合物にマトリックス樹脂(メタクリル系樹脂)への分散性、流動性、耐衝撃性を良好にするためにアルキルメルカプタン等の連鎖移動剤を用いることが好ましい。アルキルメルカプタンとしては、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等を挙げることができ、単量体成分100質量部に対して、0.1〜2質量部用いることが好ましい。
多層構造グラフト共重合体の製造にあたり、乳化重合に用いる乳化剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれの乳化剤も使用できるが、特にアニオン系の乳化剤が好ましい。アニオン系の乳化剤としてはオレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩等を挙げることができる。かかる乳化剤の量は、使用する乳化剤、単量体成分の種類や配合比、重合条件によって適宜決めればよいが、通常、単量体成分100質量部に対して0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であることが好ましい。また、重合体への残存量を抑えるため、単量体成分100質量部に対して10質量部以下、特に5質量部以下であることが好ましい。
また、多層構造グラフト共重合体の各層を形成するための重合反応に用いる重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物;過塩素酸化合物;過ホウ酸化合物;過酸化物と還元性スルホキシ化合物との組み合わせからなるレドックス系開始剤などを挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の添加量は、用いるラジカル重合開始剤や単量体成分の種類や配合比によって異なるが、通常、単量体成分100質量部に対して0.01〜10質量部程度である。
かかる多層構造グラフト共重合体の製造において、単量体成分及び重合開始剤等は、一括添加法、分割添加法、連続添加法、モノマー添加法、エマルション添加法等各種の方法で添加することができる。反応を円滑に進めるために反応系を窒素置換する、残存単量体を除去するために反応終了後に必要に応じて選択した触媒を添加するなどの方法をとってもよい。また、各層を形成する重合を行う際には、pH調整剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を共存させることができる。
このようにして得られる多層構造グラフト共重合体のラテックス中の固形分の量は、重合体の生産性を高くするために、10質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましい。また、ラテックス中の固形分の量は、ラテックスの安定性を損なわないために、60質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。
上記のラテックスから多層構造グラフト共重合体を回収する方法としては、酸凝固法、塩凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法等の各種の方法を用いることができる。塩凝固法で用いる回収剤としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの無機塩が挙げられるが、回収される多層構造グラフト共重合体を耐衝撃性改質剤として用いた樹脂組成物を成形して得られる成形物の着色を抑えるためには酢酸カルシウムが特に好ましい。これらは通常水溶液として使用される。回収剤水溶液の濃度は0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。濃度は安定して多層構造グラフト共重合体を回収できる程度に高いことが好ましく、回収した多層構造グラフト共重合体に多量の回収剤が残存して、着色が大きくなるなどの成形物の性能を低下させない程度に押えることが好ましい。多層構造グラフト共重合体のラテックスを回収剤と接触させるときに、粒子径の小さい硬質重合体のラテックスを共存させると回収した多層構造グラフト重合体がブロッキングしにくくなり、取り扱い性がよくなる。ラテックスを回収剤水溶液に接触させるときの温度は30℃〜100℃が好ましい。析出した多層構造グラフト共重合体は各種の方法で洗浄、脱水、乾燥される。乾燥した多層構造グラフト共重合体に、シリカゲル微粒子などの滑剤を添加すると、多層構造グラフト重合体がブロッキングしにくくなり、取り扱い性がよくなる。
本発明の樹脂組成物は、多層構造グラフト重合体(II)における内層重合体(A)と、外層重合体(B)と、メチルメタクリレートを主要構成単位とするメタクリル系樹脂(I
)の(共)重合体の溶解度パラメーター(SP値)をそれぞれX、Y、Zとしたとき、式(1)
X+0.2(Z−X)<Y<Z−0.1(Z−X) (1)
を満たすように、内層重合体(A)と、外層重合体(B)と、メタクリル系樹脂(I)の
組み合わせにおいて、単量体成分やその混合比を適宜選択する。この溶解度パラメーター(SP値)の関係は、更に式(2)
X+0.5(Z−X)<Y<Z−0.15(Z−X) (2)
で表される関係が好ましい。
ここで、本発明において重合体の溶解度パラメーター(SP値)とは、以下の式
SP=a1×SP1+a2×SP2+a3×SP3+…
に従い計算により求めたものであり、式中のSP1、SP2およびSP3は各重合体の単量体成分に含まれる単量体を単独で重合した際に得られるそれぞれのホモポリマーのSP値を表し、「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」(非特許文献1)に記載されている値を引用した値である。また、上記式中のa1、a2およびa3は各重合体を形成するのに用いた単量体成分に含まれる単量体のそれぞれの質量分率を表す。尚、ホモポリマーのSP値(cal/cm3)1/2として非特許文献1に記載される値の中の、ポリメチルメタクリレート:9.5、ポリn−ブチルメタクリレート:8.775、ポリメチルアクリレート:10.125、ポリエチルアクリレート9.4、ポリn−ブチルアクリレート:9.075、ポリスチレン:9.1を使用した。
本発明の樹脂組成物は、上述した、メタクリル系樹脂(I)と多層構造グラフト共重合
体(II)とを所定の配合比でブレンドすることにより得られる。メタクリル系樹脂(I)
と多層構造グラフト共重合体(II)との混合割合は用途により異なるが、メタクリル系樹脂(I)と多層構造グラフト共重合体(II)との質量比が90/10〜10/90である
ことが好ましい。多層構造グラフト共重合体(II)の質量比率を10以上とすることで、耐衝撃性をより十分なものにすることができ、90以下とすることで、射出成形等の成形が容易な流動性を確保でき、かつ、成形品の外観(透明性など)がより優れたものとなる。メタクリル系樹脂(I)と多層構造グラフト共重合体(II)との質量比が80/20〜
50/50であると、上記効果がより顕著に得られる。
本発明の樹脂組成物には、上述した、メタクリル系樹脂、多層構造グラフト共重合体以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、顔料、染料等を含んでいてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を、ヘイズ%以外の「%」は「質量%」をそれぞれ表す。多層構造グラフト共重合体、および樹脂組成物の諸特性は、次の方法に従って実施した。
[質量平均粒子径]
多層構造グラフト共重合体における内層重合体(A)まで形成した重合体の質量平均粒子径は、Matec Applied Sciences社製CHDF2000型(商品名)粒度分布測定装置を用いて、カラム温度35℃、キャリア液流速1.4ml/minで測定した。
[樹脂組成物の評価]
得られた樹脂組成物を下記の条件で射出成形した後、諸特性を測定した。
装置:日精樹脂(株)製PS−60E型(商品名)射出成型機
シリンダー温度:260℃
試験片サイズ:127mm×12.7mm×6.35mm厚
(アイゾット衝撃強度測定用)
100mm×50mm×2mm厚
(ヘイズ測定用)
[アイゾット衝撃強度の測定]
ASTM−D−256に準拠して測定した。
[ヘイズの測定]
ASTM−D1003に準拠して測定した。
[実施例1]
(1)アニオン系高分子化合物水溶液(1)の製造
撹拌機を備えた重合装置に、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム58部、メタクリル酸カリウム水溶液(メタクリル酸カリウム分30%)31部、メチルメタクリレート11部からなる単量体混合物と、脱イオン水900部を加えて撹拌溶解させた。その後、窒素雰囲気下で混合物を撹拌しながら60℃まで昇温し、6時間撹拌しつつ60℃で保持させてアニオン系高分子化合物水溶液を得た。この際、温度が50℃に到達した後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1部を添加し、更に別に計量したメチルメタクリレート11部を75分間かけて、上記の反応系に連続的に滴下し、アニオン系高分子化合物水溶液(1)を得た。
(2)メタクリル系樹脂(1)の製造
撹拌機を備えた容量20リットルの容器に、メチルメタクリレート94部、メチルアクリレート6部からなる単量体混合物に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.1部、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.22部、離型剤としてリケマールS−100A(商品名、理研ビタミン(株)製)0.2部を投入し撹拌混合した。また、別の撹拌機を備えた容量20リットルの容器に、脱イオン水150部、分散安定剤として上記アニオン系高分子化合物水溶液(1)0.3部、分散安定助剤として硫酸ナトリウム0.35部を投入し撹拌混合した。
撹拌機を備えた容量40リットルの重合用容器に、上記混合物をそれぞれ投入し、窒素置換後、80℃に昇温した。重合発熱ピーク終了後、115℃で20分間保持した後、30℃に冷却し重合を完結した。その後、洗浄脱水処理、乾燥してビーズ状のメタクリル系樹脂(1)を得た。得られたメタクリル系樹脂(1)のSP値は、9.54であった。
(3)多層構造グラフト共重合体(1)の製造
撹拌機、還流冷却器、窒素吹き込み口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、以下の成分1を入れた。
(成分1)
脱イオン水 250部
SFS(ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート) 0.5部
硫酸第1鉄 1.3×10-4
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 3.9×10-4
炭酸ナトリウム 0.035部
次に、系を混合撹拌下、窒素置換しながら80℃に昇温し、下記の組成の混合物(a−1)を4時間かけて投入し、80℃に保ったまま2時間保持して、内層重合体の重合を完結させた。得られたラテックス(A−1)の重合率(未反応の単量体をガスクロマトグラフィーで測定、以下同様)は99%以上で、内層重合体の質量平均粒子径は240nmであった。また、内層重合体のSP値は、9.08であった。
(混合物(a−1))
スチレン 18.5部
n−ブチルアクリレート 81.5部
アリルメタクリレート 0.9部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.3部
乳化剤A(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩:フォスファノールRS−610NA、商品名、東邦化学(株)製) 3.2部
引き続き、SFS0.14部を脱イオン水5.0部に溶解したものを、上記ラテックス(A−1)に加えて、15分間保持した後、下記の組成の混合物(b−1)を1時間30分かけて滴下し、1時間保持して外層重合体の重合を完結させた。得られた最終ラテックス(B−1)の重合率は99%以上であった。外層重合体のSP値、及びTgを表1に示した。
(混合物(b−1))
メチルメタクリレート 56.0部
n−ブチルメタクリレート 14.0部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.11部
n−オクチルメルカプタン 0.29部
乳化剤A 0.47部
続いて、ステンレス製の容器に回収剤水溶液として1.2%酢酸カルシウム水溶液300部を仕込み、混合撹拌下60℃に昇温して前記ラテックス(B−1)300部を10分間にわたって連続的に添加した。その後90℃に昇温して5分間保持した。室温まで冷却し、脱イオン水で洗浄しながら遠心脱水(1300G、3分間)でろ別して湿潤状の樹脂を得、75℃で48時間乾燥させて白色粉体状の多層構造グラフト共重合体(1)を得た。
(4)樹脂組成物の調製
次にメタクリル系樹脂(1)60部、および、多層構造グラフト共重合体(1)40部の混合物を外形30mmφの2軸スクリュー型押し出し機((株)池貝製PCM−30型(商品名)、L/D=25)を使用し、シリンダー温度230℃〜260℃、ダイ温度260℃で溶融混練して、[メタクリル系樹脂(1)]/[多層構造グラフト共重合体(1)]=60/40(質量比)の樹脂組成物のペレット(内層重合体の含有量23.5%)を作製した。
(5)評価
得られたペレットを用いて成型体を作製し、アイゾット衝撃強度、ヘイズを評価し、その結果を表1に示した。
[実施例2〜9、比較例1〜3]
(1)多層構造グラフト共重合体(2)〜(12)の製造
混合物(b−1)の単量体組成を表1のように変更した以外は、実施例1に示した多層構造グラフト共重合体(1)を製造する方法と同様にして、多層構造グラフト共重合体(2)〜(12)を得た。また、内層重合体の質量平均粒子径、外層重合体のSP値、及びTgを表1に示した。
(2)樹脂組成物の調製
次に、実施例1と同様にして、[メタクリル系樹脂(1)]/[多層構造グラフト共重合体(2)〜(12)]=60/40(質量比)となる樹脂組成物のペレットをそれぞれ作製した。
(3)評価
得られたペレットから成型体をそれぞれ作製して、アイゾット衝撃強度、ヘイズを評価した。その結果を表1に示した。
[実施例10〜12、比較例4]
(1)樹脂組成物の調製
実施例1と同様にして、表1に示す比率で、メタクリル系樹脂(1)と多層構造グラフト共重合体(7)〜(9)および(12)をブレンドして内層重合体の含有量が23.5%の樹脂組成物のペレットをそれぞれ作製した。
(2)評価
得られたペレットから成型体をそれぞれ作製して、アイゾット衝撃強度、ヘイズを評価した。その結果を表1に示した。
Figure 2006131826
[実施例13〜15]
(1)多層構造グラフト共重合体(13)〜(15)の製造
混合物(a−1)における乳化剤Aの配合量を表2のように変更した以外は、実施例4に示した多層構造グラフト共重合体(4)を製造する方法と同様にして、多層構造グラフト共重合体(13)〜(15)を得た。内層重合体の質量平均粒子径、外層重合体のSP値、及びTgを表2に示した。
(2)樹脂組成物の調製
次に、実施例1と同様にして、[メタクリル系樹脂(1)]/[多層構造グラフト共重合体(13)〜(15)]=60/40(質量比)となる樹脂組成物のペレットをそれぞれ作製した。
(3)評価
得られたペレットから成型体をそれぞれ作製して、アイゾット衝撃強度、ヘイズを評価した。その結果を表2に示した。
[比較例5]
(1)多層構造グラフト共重合体(16)の製造
成分1に乳化剤A1.0部を配合し、混合物(a−1)における乳化剤Aを表2のように変更した以外は、実施例4に示した多層構造グラフト共重合体(4)を製造する方法と同様にして、多層構造グラフト共重合体(16)を得た。内層重合体の質量平均粒子径、外層重合体のSP値、及びTgを表2に示した。
(2)樹脂組成物の調製
次に、実施例1と同様にして、[メタクリル系樹脂(1)]/[多層構造グラフト共重合体(16)]=60/40(質量比)となる樹脂組成物のペレットを作製した。
(3)評価
得られたペレットから成型体を作製して、アイゾット衝撃強度、ヘイズを評価した。その結果を表2に示した。
Figure 2006131826
[実施例16、17および比較例6、7]
(1)多層構造グラフト共重合体(17)〜(20)の製造
混合物(a−1)におけるアリルメタクリレートの配合量を表3のように変更した以外は、実施例4に示した多層構造グラフト共重合体(4)を製造する方法と同様にして、多層構造グラフト共重合体(17)〜(20)を得た。内層重合体の質量平均粒子径、外層重合体のSP値、及びTgを表3に示した。
(2)樹脂組成物の調製及び評価
次に、実施例1と同様にして、[メタクリル樹脂(1)]/[多層構造グラフト共重合体(17)〜(20)]=60/40(質量比)となる樹脂組成物のペレットをそれぞれ作製した。
(3)評価
得られたペレットから成型体をそれぞれ作製して、アイゾット衝撃強度、ヘイズを評価した。その結果を表3に示した。
Figure 2006131826
以上のように、本発明の樹脂組成物は耐衝撃性が高く、透明性に優れていた。
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性、透明性、耐候性、成型加工性に優れており、自動車部品、照明用品、各種パネル等に広く用いることができる。

Claims (2)

  1. メチルメタクリレートを主要構成単位とするメタクリル系樹脂(I)と多層構造グラフ
    ト共重合体(II)とを含む樹脂組成物であって、
    多層構造グラフト共重合体(II)が、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート70〜90質量%、芳香族ビニル化合物10〜30質量%、および、その他の共重合可能な単量体0〜20質量%からなる単量体混合物100質量部と、多官能単量体0.1〜5質量部とを含む単量体成分を重合して得られる内層重合体(A)と、該内層重合体(A)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体成分を重合して得られる外層重合体(B)とを有し、
    前記内層重合体(A)の質量平均粒子径が150〜500nmであり、
    前記内層重合体(A)を100質量部としたときの前記外層重合体(B)が30〜500質量部であり、
    内層重合体(A)、外層重合体(B)、メタクリル系樹脂(I)の(共)重合体の溶解
    度パラメーター(SP値)をそれぞれX、Y、Zとしたときに、式(1)
    X+0.2(Z−X)<Y<Z−0.1(Z−X) (1)
    を満たすことを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記外層重合体(B)のガラス転移点(Tg)が20〜80℃である請求項1に記載の樹脂組成物。
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