JP2006131790A - 廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法 - Google Patents

廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 廃芳香族ポリカーボネートを安価で、分解時間が短く、大量に処理し、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液から不純物を経済的に、且つ効率的に取り除き、ポリカーボネートの製造原料として有用な高純度の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を提供する。
【解決手段】 廃芳香族ポリカーボネートをアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液とハロゲン化炭化水素化合物溶媒とを向流接触させて洗浄することを特徴とする廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、廃芳香族ポリカーボネートをアルカリ金属水酸化物水溶液により分解し、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法に関する。また、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液をポリカーボネートの製造工程の原料として使用する芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。
芳香族ポリカーボネート(以下、PCと略すことがある)は、優れた機械的性質、電気的性質、耐熱性、耐寒性、透明性等を有しており、建築材料用の透明シート、液晶テレビやプロジェクションテレビ用の拡散板あるいはレンズシート、レンズ、コンパクトディスク等の光ディスク、自動車部品、OA機器のシャーシー、カメラボディー等様々な用途に利用されている材料であり、その需要は年々増加している。これに伴って排出される廃PCの量も増加している。廃棄されるPC製品の多くは、一般のプラスチック同様に焼却や埋め立て等の方法で処理されている。しかしながら、これはPC等プラスチックの需要の増加から石油資源の枯渇を加速させるだけでなく、地球環境の悪化を招く。そこで、廃棄されたプラスチックを再利用(リサイクル)することが重要になってきた。
廃プラスチックをリサイクルする方法としては、(1)廃プラスチックを熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクル、(2)廃プラスチックを製品にある割合で混合し、加工して製品とするマテリアルリサイクル、(3)廃プラスチックを化学的に分解してプラスチックの原材料として回収して、プラスチック製造に再利用するケミカルリサイクルがある。これらのうち、サーマルリサイクルはプラスチックを焼却して熱を取り出すので、二酸化炭素を生成し、本質的には地球環境を破壊し、資源を減少させていることになる。マテリアルリサイクルは、資源の消費や環境の負荷は一番少なく望ましいが、プラスチック自身の劣化は否めず、混合できる製品が限定され、混入できる割合が少なく、リサイクルできる量が限られるという問題がある。一方ケミカルリサイクルはプラスチックを原材料まで分解するので、新たなプラスチックの製造に利用され、元の製品を含め広範囲の用途に利用できるので、産業上有用なりリサイクル方法といえる。
PCをケミカルリサイクルする方法として、過剰のアルカリ水溶液で分解させ、中和して芳香族ジヒドロキシ化合物を生成する方法は昔から知られており、例えば特許文献1には、PCと1〜30%のアルカリ水溶液を耐圧容器に入れ、100℃以上、好ましくは150℃以上で加水分解後、酸性にした後メタノールに溶解し、活性炭処理して着色成分を除去後、再沈殿して白色ビスフェノールを得ている。特許文献2には、ポリカーボネートスクラップをバルクまたは溶液でケン化し、未ケン化の成分を分離し、ケン化混合物をホスゲン化し、まったく精製工程および処理工程なしでポリカーボネート重合工程に用いる方法が示されている。特許文献3には、アルカリ触媒存在下、PCをフェノールで分解し、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジアリールを回収する方法が示されている。また、特許文献4には、トルエン、キシレン、ベンゼンまたはジオキサン溶剤中で、少量のアルカリを触媒として、エステル交換反応を行い、炭酸ジアルキルと芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法が示されている。また、特許文献5には、PCを塩化アルキル、エーテル類または芳香族炭化水素系溶媒等の溶媒と触媒としての3級アミンの存在下、低級アルコールとエステル交換させて芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジアルキルを得る方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1の方法は薄いアルカリ性水溶液を用いているので反応が高温になり、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物の純度が低く、精製に大きな労力が必要となる。この方法では、高温でPCを分解反応させたために着色した芳香族ジヒドロキシ化合物が得られ、これを脱色させるために活性炭処理を用いるなど煩雑な操作が必要となる。特許文献2の方法は精製工程なしで重合反応に使用するので、プラスチックにほぼ必須である、添加剤、着色剤などをPC製造工程に混入することになり、製品品質に影響を及ぼす。また、末端停止剤が反応初期段階に混入することになるので、レンズやコンパクトディスク等の市場で求められているような精密な分子量制御は困難である。特許文献3〜5の方法は、炭酸ジアリールや炭酸ジアルキル等の副生成物が生成し、目的とする芳香族ジヒドロキシ化合物の分離回収工程が煩雑になる。
廃芳香族ポリカーボネートをアルカリ分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液をそのままポリカーボネートの製造原料として使用するために、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液から、不純物を経済的に、且つ効率的に取り除く方法が望まれている。
特公昭40−016536号公報 特開昭54−048869号公報 特開平06−056985号公報 特開平10−259151号公報 特開2002−212335号公報
本発明の目的は、廃芳香族ポリカーボネートを安価で、分解時間が短く、大量に処理し、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液から不純物を経済的に、且つ効率的に取り除き、ポリカーボネートの製造原料として有用な高純度の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を提供することである。
本発明の他の目的は、精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を用いてCD等に使用できる高品質の芳香族ポリカーボネートを製造する方法を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、廃芳香族ポリカーボネートをアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液とハロゲン化炭化水素化合物溶媒とを向流接触させることにより、かかる水溶液中に含有する不純物を経済的に且つ効率的に除去できることを見出し、また、向流接触後の精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液は、ポリカーボネート樹脂の製造原料として充分に使用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、
1.廃芳香族ポリカーボネートをアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液とハロゲン化炭化水素化合物溶媒とを向流接触させて洗浄することを特徴とする廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
2.向流接触させて洗浄する方法が、充填塔を使用して向流接触させる方法である前項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
3.ハロゲン化炭化水素化合物溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびクロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である前項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
4.アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである前項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
5.前項1〜4のいずれかに記載の方法で得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液をポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する芳香族ポリカーボネートの製造方法。
が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、使用される廃芳香族ポリカーボネート樹脂は、界面重合法や溶融重合法等公知の方法で製造されたものでよく、分子量は粘度平均分子量で1000〜100000のものが好ましく、10000〜30000のものが特に好ましい。廃芳香族ポリカーボネートの形状はパウダー、ペレット、シート、フィルム、成形品等特に限定されない。また、分解に用いられる廃芳香族ポリカーボネートとして、ポリカーボネート製造途中に目標とする分子量に到達せず、パウダーあるいはペレット化されなかったポリカーボネートの溶液から溶媒を除去し、乾燥した固形物でもよい。
ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
上記廃芳香族ポリカーボネート成形品の具体例としては、液晶ディスプレイや液晶テレビに使用されるポリカーボネート樹脂製光拡散板(紫外線吸収能を有する膜で被覆されたものも含む)や表面を保護膜で被覆されたポリカーボネート樹脂製窓ガラス、紫外線吸収能や耐擦傷性を有する保護膜で被覆されたポリカーボネート樹脂製眼鏡レンズ、耐擦傷性を有する保護膜で被覆された自動車用ポリカーボネート樹脂製ヘッドランプレンズ、耐擦傷性を有する保護膜で被覆されたオートバイ用ポリカーボネート樹脂製風防が挙げられる。また、他の具体例としては、CD、CD−R、DVD等の光ディスクであり、廃棄されたものや成形不良のものなど不要になった廃光ディスクをそのまま、あるいは印刷膜や金属膜を剥離し除去したもの等が挙げられる。
該ポリカーボネートは、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4′−ジヒドロキシジフェニルエステル等のジヒドロキシ化合物の単独または2種以上の混合物から製造されたものである。
また、末端停止剤(分子量調節剤)としては、1価のフェノール化合物が好ましく用いられ、フェノール、p−クレゾール、p−エチルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−キシレノール、p−メトキシフェノール、p−ヘキシルオキシフェノール、p−デシルオキシフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、p−フェニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2,4−ジ(1’−メチル−1’−フェニルエチル)フェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、p−(2’,4’,4’−トリメチルクロマニル)フェノール、2−(4’−メトキシフェニル)−2−(4’’−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類等の単独または2種以上の混合物が用いられる。
本発明において、まず、廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解させる。
この方法としては、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒に溶解し、この有機溶媒溶液中のポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液の存在下に分解する方法が好適に採用される。有機溶媒の存在下で芳香族ポリカーボネートの分解(解重合反応)を行うことにより分解反応が低温で進み易く好ましい。
前記有機溶媒としては25℃における芳香族ポリカーボネート樹脂の溶解度が50g/L以上である溶媒が好ましく、具体的にはジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素化合物溶媒が好ましく、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたはクロロホルムがより好ましく、ジクロロメタン(塩化メチレン)が特に好ましく用いられる。これらの溶媒は芳香族ポリカーボネート樹脂の良溶媒で、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造工程に反応溶媒として用いられており、分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物にこれらの有機溶媒が残留していても、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に悪影響を及ぼさない利点がある。
有機溶媒の使用量は、廃芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し40〜2000重量部が好ましく、200〜1000重量部の範囲がより好ましい。有機溶媒の使用量が40重量部より少ないと芳香族ポリカーボネート樹脂が十分に溶解せず不溶部が増え収量が低下し、2000重量部より多いと分解反応時に分解速度が低下し分解反応時間が長くなり、また溶媒の回収コストも高くなる。なお、光ディスク等の成形品はあらかじめ0.1〜2cm程度の大きさに粉砕し、この粉砕物を溶解すると溶解時間が短縮されるため好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒に溶解した有機溶媒溶液はそのまま分解反応に使用してもよく、あるいはろ過してその濾液を分解反応に使用してもよい。有機溶媒にポリカーボネート樹脂を溶解させた場合、有機溶媒に溶解しない不純物、例えば成型品中に含まれる添加剤、金属膜、コーティング剤、充填剤等をろ過し、除去することが可能である。除去しないで分解反応を行った場合、これらの不純物も分解され、芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩水溶液に混入し、不純物分解物が混ざったままポリカーボネート製造工程に該水溶液を使用すると、製品のポリカーボネート樹脂の品質に悪影響を及ぼす可能性があるので、あらかじめ不溶物を除去することが好ましい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒に溶解した有機溶媒溶液は、この溶液中のポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物の存在下に分解させる。
ポリカーボネート樹脂の分解反応においてアルカリ金属水酸化物水溶液が使用される。アルカリ金属水酸化物として、調達コスト、水溶液の調整の容易さ等の点で、具体的には水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく使用され、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリ金属水酸化物の使用量は、ポリカーボネート樹脂のカーボネート結合1モルに対し4.1〜8.0モルが好ましい。使用量が4.1モルより少ないと分解反応が非常に遅く、8.0モルより多いとコストが高くなり、かつ、芳香族ジヒドロキシ化合物を単離、回収する際に使用する酸水溶液の量も多くなり、経済的に不利となる。
アルカリ金属水酸化物は水溶液の状態で使用する。アルカリ金属水酸化物の濃度は、35重量%〜55重量%が好ましい。35重量%より低いと分解速度が遅くなり、55重量%を超えるとアルカリ金属水酸化物が析出しスラリーになりやすく、スラリーになった場合かえって反応が遅くなる。
本発明において、分解反応を行う温度は30℃〜120℃が好ましく、30℃〜50℃がより好ましい。30℃未満の場合は分解反応時間が長くなり、処理効率が著しく劣ることがある。また、120℃を越えると、加熱のエネルギーが多く必要となり、さらに分解処理中に溶液の色が褐色に着色し易くなり、品質の良い芳香族ジヒドロキシ化合物の水溶液が得られなくなることがある。また、沸点以上においての反応は圧力容器が必要となり、設備費がかかり経済的に不利となる。
分解反応中に生成した芳香族ジヒドロキシ化合物は、塩基性条件下では酸化されやすいので、反応溶液中に酸化防止剤を添加することが好ましい。また、工程内の酸素濃度を不活性ガスにより、低減しておくことも有効である。
酸化防止剤として、重亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、ハイドロサルファイトナトリウム(Na)等が挙げられる。これらを1種または2種以上混合して用いても差し支えない。酸化防止剤の使用量は芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、0.05〜4.0重量部が好ましい。0.05〜4.0重量部の範囲であると酸化防止効果があり、また、コスト的に有利で、分解反応速度が低下せず好ましい。
不活性ガスの種類として、窒素、アルゴン等が挙げられる。窒素がコスト的に有利であり好ましい。
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂の分解反応は、界面反応であり、有機溶媒に溶解、または膨潤している芳香族ポリカーボネート樹脂がアルカリ金属水酸化物水溶液と攪拌され、界面で接触して分解される。この反応は不可逆であり、芳香族ポリカーボネート樹脂のカーボネート結合が切れ、芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩と炭酸金属塩に分解する。
解重合反応後、生成する芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩と炭酸金属塩が金属水酸化物水溶液に溶解せず、固型分として析出している場合は、解重合反応後の反応液に水を加えて析出した固型分を溶解させる。
解重合反応後の反応液に水を加えて析出した固型分を溶解させる工程では、解重合反応後の反応液に水を加えて攪拌し、析出した芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩と炭酸金属塩を溶解させる。加える水の量は、完全に固型分が溶解する量以上を投入するが、多く投入しすぎると水溶液中の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩濃度が低下し、この水溶液を芳香族ポリカーボネート製造工程の原料として使用した場合に反応速度が低下し、またこの水溶液から芳香族ジヒドロキシ化合物を回収する場合に廃液を蒸留する際にコスト増となるので、完全に固体が溶解する量の最小量が好ましい。解重合反応後の反応液に水を加え析出した固型分を溶解させると有機溶媒相と芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩の水溶液相(芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液相)との2つの相に分離する。
次に、有機溶媒相とアルカリ水溶液相とを分液する工程が行われる。この工程では有機溶媒相と芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液相との2つの相をデカンター等の液液分離器で分離して有機溶媒相とアルカリ水溶液相を回収する。
分液して回収した芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液には、有機溶媒が粒状に浮遊してあるいは水溶液中に分散して微量存在する。この微量の有機溶媒中には廃芳香族ポリカーボネート中に存在していた添加剤、または添加剤の分解物などの有機不純物が含まれている。また、かかる添加剤または添加剤の分解物などの有機不純物は有機相に比較的分配しやすいが、水溶液相に残っているものもゼロではなく少しは存在している。これらの有機不純物が混入した芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液をポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂の品質に悪影響を及ぼす。したがって、添加剤または添加剤の分解物は、水溶液相に存在している芳香族ジヒドロキシ化合物以外の有機物質を可能な限り除去することが必要である。
廃芳香族ポリカーボネート中の添加剤として、分解後の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液に混入する可能性があるものは、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、紫外線吸収剤、耐候剤、抗菌剤、顔料、染料、充填剤等、またはこれらの分解物である。
本発明において、分液して回収した芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液は、ハロゲン化炭化水素化合物溶媒と向流接触させて、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中の不純物をハロゲン化炭化水素化合物溶媒に抽出し除去する。
水溶液中に存在している有機不純物を有機溶媒側に抽出する方法として、攪拌槽に水溶液と有機溶媒を両方投入し、激しく攪拌した後、分離槽へ送液、静置して2相を分ける方法、また、混合をラインミキサーで混合し、同様に分離槽で2相に分ける方法がある。しかし、これらの方法は液滴を小さくして液の界面の面積を大きくする必要があるので、液の分離に時間がかかるため、大きい分離槽が必要となり採用し難い。
一方、洗浄される液(芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液)に対し、洗浄する液(ハロゲン化炭化水素化合物溶媒)を逆方向に流す向流接触方式は、設備費が比較的安価で且つ場所をとらず、洗浄液の使用量も少なく効率の良い洗浄方法であり、本発明において採用される。
向流接触を行う装置として、MSカラム、カールカラム等の抽出塔を使用する方法、規則充填物、または不規則充填物を充填した塔を通す方法等があるが、充填塔による液液向流接触方式がポンプ、撹拌機等の動力を使用せず、メンテナンスも必要なく、非常に優れた方法であり好適に採用される。
充填塔による芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液からハロゲン化炭化水素化合物溶媒への有機不純物の抽出の方法は、2つの液のうち密度の高い液を塔の上部から導入し、密度の低い液を塔の下部から導入する方法である。塔内部においてこの2液は充填物の表面で接触し、水溶液側から有機溶媒側へ有機不純物が抽出される。
洗浄に使用するハロゲン化炭化水素化合物溶媒は、ポリカーボネート製造時に使用する溶媒を使用するのが好ましい。具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタンおよびジクロロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒が好適であり、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたはクロロホルムがより好ましく、ジクロロメタン(塩化メチレン)が特に好ましく用いられる。
上記ハロゲン化炭化水素化合物溶媒は、通常芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液より密度が高いので、ハロゲン化炭化水素化合物溶媒を充填塔の上部から導入し、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を塔の下部から導入し、両者を向流接触させる。
洗浄液であるハロゲン化炭化水素化合物溶媒を連続相として充填塔に満たし、洗浄される芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を分散させて液滴とする方が、効率的に有機不純物がハロゲン化炭化水素化合物溶媒に抽出されるため好ましい。
液滴のサイズについては1〜20mmが好ましい。1mmより小さいと液液分離し難くなり、また流量の上限が低くなり易く効率的ではない。20mmより大きいと、不純物の抽出効率が低下することがある。
塔の充填物として、メラパック、ゼムパック、MCパック、ロンボパック、ラルパックなどの蒸留用規則充填物、ポールリング、ラシヒリング、ラシヒスーパーリング、ベルルサドル、インタロックサドル、マクマホンパッキング、メタレット、インタロックスメタルタワーパッキング(IMTP)等の不規則充填物が挙げられる。充填物の選択は、特に限定されるものではないが、価格と性能を鑑み、不規則充填物が好ましく、このうち運転条件の広さ、液液抽出の性能に関して、ラシヒスーパーリング、IMTPが優れている。
芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液とハロゲン化炭化水素化合物溶媒とを向流接触させて得られた精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液は、そのまま芳香族ポリカーボネートの製造工程に好適に使用できる。
また、精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液と、購入した芳香族ジヒドロキシ化合物を調合した水溶液を任意の割合で混合して、芳香族ポリカーボネートの製造工程に使用することもできる。
さらに、精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液に酸を加えて、芳香族ジヒドロキシ化合物を析出させ、芳香族ジヒドロキシ化合物を単離、回収することもできる。固体化することにより、より純度の高い芳香族ジヒドロキシ化合物原材料を得ることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物を析出させる好適な方法は、ハロゲン化炭化水素化合物溶媒の存在下あるいは非存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を攪拌および/または循環している造粒槽に、酸水溶液を加えるという方法である。該方法によれば、水相および有機溶媒相に溶解しない芳香族ジヒドロキシ化合物がスラリーとして得られ、このスラリーをろ過することにより、芳香族ジヒドロキシ化合物を得ることができる。水相の最終pHは4〜10の範囲にするのが好ましい。さらに好ましくはpH6〜8.5の範囲である。
使用する酸水溶液の酸の種類は特に限定はないが、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸が好ましく用いられる。
固体として得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のろ過の方法は、ろ過器、遠心分離機、遠心沈降装置等を挙げることができる。遠心分離機がろ過後の含液率が低く、好ましい。
得られた芳香族ジヒドロキシ化合物は、洗浄することにより純度が向上する。洗浄の方法としては、固体の芳香族ジヒドロキシ化合物を攪拌槽に移し、水、ハロゲン化炭化水素化合物溶媒を同時、または別々に投入し、攪拌、ろ過する方法、遠心分離機内で水、ハロゲン化炭化水素化合物溶媒を同時、または別々に振りかけそのまま遠心分離で脱液する方法などが挙げられる。
回収された固形の芳香族ジヒドロキシ化合物は、芳香族ポリカーボネートの製造工程に再使用することができる。再使用する方法としては、溶融重合法ではそのまま使用することができ、また、界面重合法では金属水酸化物水溶液に所望の濃度で溶解し、芳香族ポリカーボネートの製造に使用することが可能である。その際、芳香族ジヒドロキシ化合物を金属水酸化物水溶液に溶解した溶液を加熱し、残存するハロゲン化炭化水素化合物溶媒を揮発したものを使用することも好ましい。
また、回収した芳香族ジヒドロキシ化合物と市販の芳香族ジヒドロキシ化合物とを一緒に芳香族ポリカーボネートの製造に使用しても構わない。回収した芳香族ジヒドロキシ化合物と市販の芳香族ジヒドロキシ化合物を混合する方法は、固体同士、固体と液体、液体同士を混合する方法のどの方法であってもよい。
本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂には、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、紫外線吸収剤、耐候剤、抗菌剤、顔料、染料、充填剤、強化剤、他樹脂やゴム等の重合体、難燃剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。
上記熱安定剤としてはリン系の熱安定剤が好ましく用いられ、例えば亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリメチルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)等が好ましく使用される。これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.002〜0.05重量部である。
前記熱安定剤をポリカーボネート樹脂に配合する方法としては、重合反応後のポリカーボネート樹脂溶液に添加する方法、ポリカーボネート樹脂パウダーに添加する方法のいずれの方法で加えてもよい。特に、重合反応後のポリカーボネート樹脂溶液に添加する方法が得られるポリカーボネート樹脂の色相および熱安定性がより向上し好ましく、精製終了後のポリカーボネート樹脂溶液に添加する方法または温水で造粒する際に温水中に添加する方法が好ましい。熱安定剤は、溶媒に溶解してあるいはそのまま添加しても構わない。
また、本発明の製造方法により得られるポリカーボネート樹脂は、色相および熱安定性に優れることから、例えば光磁気ディスク、各種追記型ディスク、デジタルオーディオディスク(いわゆるコンパクトディスク)、光学式ビデオディスク(いわゆるレーザディスク)、デジタル・バーサイル・ディスク(DVD)等の光学ディスク基板用の材料、シリコンウエハー等の精密機材収納容器の材料として好適に使用できる。また、光拡散板、窓ガラス、眼鏡レンズ、自動車用ヘッドランプレンズ、オートバイ用風防等のポリカーボネート樹脂製成形品としてリサイクルして使用することができる。
本発明によれば、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解時間が短く、エネルギーコストも高くなく、高純度で芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を回収でき、さらに芳香族ポリカーボネート製造の原材料として利用できる。本発明の奏する工業的効果は格別である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に断り書きのない場合、部は重量部を表す。なお、評価は次に示す方法で行った。
(1)色相(b値)
ポリカーボネート樹脂ペレットを射出成形機(日本製鋼所(株)製:日鋼アンカー V−17−65型)を用い、シリンダー温度340℃で、厚さ2mmの50mm角板を成形した。その成形板を色差計(日本電色(株)製)を用いてb値を測定した。
(2)熱安定性(△E)
ポリカーボネート樹脂ペレットを射出成形機(日本製鋼所(株)製:日鋼アンカー V−17−65型)を用い、シリンダー温度340℃で10分間滞留させたものとさせないもの(1分間滞留)の試験片(厚さ2mmの50mm角板)をそれぞれ作成し、その色相の変化(△E)を測定した。色相の変化は、色差計(日本電色(株)製)でそれぞれのL、a、b値を測定し、下記式を用いて算出した。
ΔE=[(L′−L)+(a′−a)+(b′−b)1/2
(L、a、bは滞留させないもの、L′、a′、b′は10分間滞留させたもの)
(3)ビスフェノールA水溶液中のビスフェノールA濃度
ビスフェノールA水溶液を0.1〜0.5重量%になるように水酸化ナトリウム水溶液で薄め、UV計で波長294nmで吸光度を測定し、あらかじめ作成した検量線により水溶液中のビスフェノールA濃度を測定した。
[実施例1]
攪拌槽に廃ポリカーボネートシート100部と塩化メチレン600部を投入し、6時間攪拌した。この溶液を目開き10μmのセルロース製フィルタを取り付けたろ過器(アドバンテック製)に通し、異物(シート保護膜、ラベル、付着していた泥等)を除去した。
温度計、撹拌機及び還流冷却器、水浴付き反応器に、該ポリカーボネートの塩化メチレン溶液264部(ドープ濃度14.2%)、50%水酸化ナトリウム水溶液71部(ポリカーボネートのカーボネート結合1モルに対し6.0モル)、ハイドロサルファイトナトリウム0.6部を投入し、攪拌した。その後、水浴温度を40℃に調節したところ、15分後に激しく還流が始まり、30分後には激しさは収まった。反応5時間後、内部は固体が析出しており、固体を一部取り分析したところ、ビスフェノールAナトリウム塩と炭酸ナトリウムであった。水浴の温度調節を止めて、337.5部の純水を投入し、1時間攪拌を継続して固体を溶解した。
分液ロートに反応混合物を移し、1時間静置後、455部の水相と224部の有機相に分離した。水相はアルカリ性水溶液であり、ビスフェノールA、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、p−ターシャリーブチルフェノールを含んでいた。また、有機相はエバポレータで塩化メチレンを蒸発、回収し、残さは廃棄した。残さは未反応ポリカーボネートと添加剤の分解物であり、重量を測定したところ1.1部であった。
ビスフェノールA水溶液(水相)中のビスフェノールA濃度を測定したところ、78.2g/Lであった。静置時間1時間では分離が不十分であったため、ビスフェノールA水溶液中には有機相が分散しており、分散した有機相中に有機不純物(シートの表面硬化膜、紫外線吸収剤、青色色素、熱安定剤、離型剤分解物等)が存在していた。
内径108.3mmの塔に、充填物IMTP#15を充填高さ800mmで充填し、分散板を下部に設置した。この塔の下部からビスフェノールA水溶液を500L/h、上部から塩化メチレン60L/hの流速で導入し、連続的に塔の内部で接触させた。連続相が塩化メチレンになるようにU字管を設けて、界面の位置を設定した。運転開始1時間後より塔の上部から流出した水溶液を採取し、精製されたビスフェノールA水溶液を得た。
[実施例2]
実施例1において、充填高さを400mmにしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、精製されたビスフェノールA水溶液を得た。
[比較例1]
実施例1において、塔による洗浄処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ビスフェノールA水溶液を得た。
[参考例1] (ポリカーボネート樹脂の製造方法)
(A)温度計、撹拌機、還流冷却器、循環器付き反応器に、イオン交換水650部、25%水酸化ナトリウム水溶液252部を仕込み、これに購入したビスフェノールA170部、塩化メチレン13部およびハイドロサルファイト0.34部を加え、循環しながら温度を30℃に保持し40分間で溶解し、ビスフェノールA水溶液を調合した。
(B)温度計、撹拌機及び還流冷却器付き反応器に、(A)で調合したビスフェノールA水溶液367部を仕込み、塩化メチレン181部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン28.3部を40分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液7.2部および固体のp−ターシャリーブチルフェノール1.55部を加え、乳化せしめた後、10分後にトリエチルアミン0.06部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物に塩化メチレン400部を加え混合した後、攪拌を停止し、水相と有機相を分離して、ポリカーボネート樹脂濃度14.5重量%有機溶媒溶液を得た。
この有機溶媒溶液に水150部を加えて攪拌混合した後、攪拌を停止し、水相と有機相とを分離した。この有機相にpH3の塩酸水200部を加え、攪拌混合しトリエチルアミン等を抽出した後、攪拌を停止し、水相と有機相とを分離した。次いでさらに分離した有機相にイオン交換水200部を加え攪拌混合した後、攪拌を停止し、水相と有機相とを分離した。この操作を水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで(4回)繰返した。得られた精製ポリカーボネート樹脂溶液をSUS304製の濾過精度1μmフィルターで濾過した。
次に、該有機溶媒溶液を軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けた内壁の材質がSUS316L製の1000Lニーダーにイオン交換水100Lとともに投入し、水温42℃にて塩化メチレンを蒸発させて粉粒体とし、該粉粒体と水の混合物を水温95℃にコントロールされた攪拌機付熱水処理槽に投入し、粉粒体25部対水75部の混合比で30分間攪拌混合した。この粉粒体と水の混合物を遠心分離機で分離して塩化メチレン0.5重量%と水45重量%を含有する粉粒体を得た。この粉粒体を140℃にコントロールされているSUS316L製伝導受熱式溝型2軸攪拌連続乾燥機に50kg/h(ポリカーボネート樹脂換算)で連続供給して、平均乾燥時間3時間の条件で乾燥して粉粒体を得た。
この粉粒体100重量部にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.01重量部、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)を0.01重量部およびステアリン酸モノグリセリドを0.08重量部加え混合した。かかる粉粒体をベント式二軸押出機[東芝機械(株)製TEM−50B]によりシリンダー温度280℃、乾式真空ポンプを用いてベント吸引圧700Paで吸引脱気しながら溶融混練押出し、ペレットを得た。得られたペレットを用いて粘度平均分子量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
[実施例3]
参考例1(B)において、参考例1(A)で調合した水溶液367部の代わりに、実施例1で得られた水溶液19.0部と参考例1(A)で調合した水溶液358.2部とを使用した以外は、参考例1と同様の操作をして、ペレットを得た。得られたペレットを用いて粘度平均分子量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
[実施例4]
参考例1(B)において、参考例1(A)で調合した水溶液367部の代わりに、実施例1で得られた水溶液95部と参考例1(A)で調合した水溶液323部とを使用した以外は、参考例1と同様の操作をして、ペレットを得た。得られたペレットを用いて粘度平均分子量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
[実施例5]
参考例1(B)において、参考例1(A)で調合した水溶液367部の代わりに、実施例2で得られた水溶液19.0部と参考例1(A)で調合した水溶液358.2部とを使用した以外は、参考例1と同様の操作をして、ペレットを得た。得られたペレットを用いて粘度平均分子量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
[実施例6]
参考例1(B)において、参考例1(A)で調合した水溶液367部の代わりに、実施例2で得られた水溶液95部と参考例1(A)で調合した水溶液323部とを使用した以外は、参考例1と同様の操作をして、ペレットを得た。得られたペレットを用いて粘度平均分子量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
[比較例2]
参考例1(B)において、参考例1(A)で調合した水溶液367部の代わりに、比較例1で得られた水溶液19.0部と参考例1(A)で調合した水溶液358.2部とを使用した以外は、参考例1と同様の操作をして、ペレットを得た。得られたペレットを用いて粘度平均分子量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
[比較例3]
参考例1(B)において、参考例1(A)で調合した水溶液367部の代わりに、比較例1で得られた水溶液95部と参考例1(A)で調合した水溶液323部とを使用した以外は、参考例1と同様の操作をして、ペレットを得た。得られたペレットを用いて粘度平均分子量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
Figure 2006131790

Claims (5)

  1. 廃芳香族ポリカーボネートをアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液とハロゲン化炭化水素化合物溶媒とを向流接触させて洗浄することを特徴とする廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
  2. 向流接触させて洗浄する方法が、充填塔を使用して向流接触させる方法である請求項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
  3. ハロゲン化炭化水素化合物溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびクロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である請求項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
  4. アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである請求項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから精製された芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得る方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法で得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液をポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する芳香族ポリカーボネートの製造方法。
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