以下、本発明に係る移動物体管理システムの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明は、移動物体の現在位置をリアルタイムに管理するものである。移動物体とは、移動する物体のことで、たとえば、道路を走行する自動車や自動二輪車、線路を走行する電車、水面を移動する船、航路を飛行する飛行機、人などが含まれる。
以下の説明では、一例として、自動車や自動二輪車などの車両用テストコースのような管理された道路や領域を走行する車両の走行状態を管理するものとして説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る移動物体管理システムの基本的な機能構成を示す図である。図1を参照して、まず、この移動物体管理システムの機能構成の概略を説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る移動物体管理システム1は、移動端末20と、基地局3と、管理対象となる全車両の走行状況を一括して管理する管理装置40とを有している。移動端末20と基地局3は、それぞれのアンテナ25,31を介して互いに無線通信を行う。各基地局3と管理装置40は伝送路51により接続されている。
移動端末20(移動局)は、移動する自動車や自動二輪車などの車両ごとに備えられた端末装置である。移動端末20は、当該車両(以下、「自車両」と称する。)の現在時刻と現在位置を検出して位置情報を取得する測位機能を有するとともに、取得した位置情報を基地局3に向けて送信する無線通信機能を有している。移動端末20は、車両にあらかじめ登録された自車両の車両識別情報(車両ID)を保持しており、測位機能により取得した情報を基地局3に向けて発信する際に、併せて、自車両の車両IDを発信する機能をも有している。また、移動端末20は、基地局3を介して使用中チャネル情報を受信する機能をも有している。
基地局3は、移動端末20が発信した車両の位置情報および車両IDを管理装置40へ渡すとともに移動端末20に制御信号を発信する無線装置であり、管理対象となるコースの大きさ・形状や数、管理対象たる車両の数や速度などに応じてコース脇に複数設置される。基地局3の設置位置は、無線通信や車両走行への障害を考慮して決定される。たとえば、コース脇の樹木やコースのバンクなどは、マルチパスやフェージングの原因となり無線通信の障害となり得る。また、コースのブラインドコーナーや高速コーナーの近傍などは、走行する車両と物理的に衝突しやすく基地局を破損する原因となり得る。したがって、基地局3はこのような場所を避けて設置することが望ましい。特に、車両が高速移動するほどマルチパスやフェージングの影響が大きくなるので、基地局3は、そのような影響が生じにくい場所に設置することが好ましい。このように、適切な場所に基地局3を設置することで、無線通信エリアの確保と車両の安全確保が可能になる。
伝送路51は、基地局3と管理装置40とを結ぶ通信路である。伝送路51としては、たとえば光ファイバなどの高速回線を用いることができる。この実施形態に係る移動物体管理システム1では、複数のコース上の複数の移動物体管理を実現するため、複数の基地局3を備えている。伝送路51は、これら複数の基地局3を一箇所の管理装置40で管理するためのリモート回線としての機能を有している。伝送路51は、コースの数や範囲、基地局3の展開する領域の広さ、基地局3の数、伝送されるデータ量などに応じて決定される。なお、この実施形態では、伝送路51は有線通信であるものとして説明しているが、固定無線回線などを利用してもよい。すなわち、基地局3と管理装置40とを常時接続することのできる回線形態であればどのような回線でも利用することができる。
管理装置40は、基地局3を介して受信した車両の位置情報を蓄積し、これらの情報に基づいて車両の位置や走行状況を管理するコンピュータ装置である。管理装置40は、基地局3を介して受信した車両の位置情報等を解析するコンピュータ41と、同じく受信した車両の位置情報等を蓄積する記憶部42と、コンピュータ41の解析結果や車両の位置等を視覚的に表示する表示部43とを備えている。
コンピュータ41は、記憶部42、および表示部43と連携して、プログラムを実行する機能を有する。コンピュータ41としては、汎用のパーソナルコンピュータやサーバー用コンピュータを用いることができる。
記憶部42は、データやプログラム等の情報を不揮発的に記憶する記憶装置である。記憶部42は、コンピュータ41上で稼動するプログラムからの要求に応じて情報を記憶し、出力する機能を有する。記憶部42としては、たとえば、ハードディスクなどの読み書き可能な記憶装置を用いることができ、参照専用の情報の記憶については、CD−ROMやDVD−ROMなどの参照専用の媒体とその読み出し装置を用いることができる。記憶部42は、図1に示すようにコンピュータ41の外に設置することができるが、コンピュータ41の内部にあってもよい。
表示部43は、たとえば、現在どの車両がどの位置をどの方向に移動しているかを、時々刻々と継続的に表示する表示装置である。表示部43は、コンピュータ41上で稼動するプログラムから渡された情報に基づいて、表示データを画面に表示する表示装置であり、例えばCRTや液晶ディスプレイなどである。表示部43は、たとえば管理対象の全コースと走行中の管理対象全車両を一画面に表示しても各車両の現在位置が視認できる程度の大きさで表示できるような大きさと解像度を有する表示装置であることが好ましい。
管理装置40は、車両の位置情報に基づいてコースにおける車両の現在位置などの走行状況を常時表示部に表示し、操作員に知らせる機能を有する。併せて、管理装置40は、全基地局を管理する機能を有している。管理装置40は、移動物体から基地局3への送信用(上り通信用とも称する。)に使用するチャネル情報を常時管理して使用中チャネル情報を生成し、各基地局に向けて送信する機能をも有している。管理装置40は、基地局3とともに移動物体管理装置を構成する。
次に、図1を参照して、移動端末20の各部の機能構成について詳細に説明する。
図1に示すように、移動端末20は、測位部21と、送信データ生成部22と、チャネル設定部23と、無線通信部24と、アンテナ25とを有している。
測位部21は、自車両の現在位置を測定して位置情報を生成する測位装置である。測位部21は、自車両の位置情報を緯度経度、基準点からの方位角と距離、座標位置などにより表される位置データや、その中間データを位置情報として生成する。位置情報には、少なくとも、測位した時刻又は前回測位してからの時間、位置(たとえば緯度、経度)、速度が含まれる。位置情報には、走行方向や傾きなどの姿勢情報を含めてもよい。
測位部21は、現在位置を測定する手段として、たとえば測位用(測地用)の電波を地球に向けて発信しているGPS(Global Positioning System)やGLONASS(Global Orbiting Navigation Satellite System)、準天頂衛星などの測位用衛星からの電波を受信して測位を行う衛星測位装置(測位用衛星電波受信ユニット)を用いることができる。このような測位用衛星からの電波を用いた測位は、原理的に高精度の位置情報を得ることができ、また、測位地点の天頂方向が開けていれば測位が可能であることから、広範囲のエリアで正確な測位が可能になる。これにより、コース上のさまざまなエリアを走行している車両の位置データを求めることができ、管理装置40の利用者は常に車両の現在位置を正確に把握することができる。
測位部21は、測位用衛星などの外部からの電波によらずに自律して自車両の現在位置を測位できる自律測位装置を用いてもよい。自律測位装置としては、移動速度を検出する速度センサや移動加速度を検出する加速度センサなどの移動情報センサ、ジャイロセンサ、操舵角センサなどの姿勢センサ、赤外線センサなど各種センサを適宜組み合わせて用いることができる。
測位部21は、衛星測位装置と自律測位装置を併用してもよい。併用することで、車両がトンネルや山間部などの外部からの電波の不感領域を走行する場合など、衛星測位装置で正常に測位できない場合でも、位置情報を生成することができる。
送信データ生成部22は、測位部21から受け取った位置情報に基づいて、自車両の移動速度に適した方式により送信データを生成する手段である。自車両の移動速度は、測位部21から受け取る位置情報に含まれている。具体的には、送信データ生成部22は、低速の場合には測位部21から受け取った位置情報すべてを用いて送信用データを生成し、高速の場合には送信すべきデータが少なくなるように圧縮し、エラー耐性を強化すべくマーカを付加して送信用のデータを生成する。
チャネル設定部23は、自車両の移動速度に基づいて、基地局3と通信する送信用チャネル(上り通信用チャネル)を設定する手段である。チャネル設定部23は、無線通信部24を介して基地局3から受信した使用中チャネル情報を参照し、速度域ごとに用意されている上り通信用チャネルの中から空きチャネルを検索して自端末が使用すべきチャネルを設定する機能を有する。基地局3から受信するチャネル(下り通信用チャネル)は、コース上のすべての管理対象車両に対して、個別に割り当てられる。
使用中チャネル情報は、移動端末20が使用することのできる全通信チャネルのうち、全ての基地局3を通じて特定の移動端末20にのみ使用が許される高速移動専用チャネルと、移動端末20の位置する通信圏に対応する基地局3単位で特定の移動端末20に使用が許され移動端末20の速度に応じて用意される通常チャネルと、高速移動専用チャネルまたは通常チャネルが全て使用中の場合に管理装置40からの指示に基づいて使用が許される予備チャネルとに区分されたチャネル情報である。高速移動専用チャネルは、ハンドオーバーを無くすため所定のチャネル固定開始速度以上の移動端末20が全ての基地局3において使用することのできる通信チャネルであり、管理装置40において使用中か否かが管理される。通常チャネルは、ハンドオーバーが問題とならない速度域の移動端末20が基地局3単位で使用することのできる通信チャネルであり、基地局3において使用中か否かが管理される。予備チャネルは、高速移動専用チャネルまたは通常チャネルが全て使用中の場合に管理装置40の許可により使用が許される予備用通信チャネルである。従って、高速移動専用チャネルと予備チャネルは全ての基地局3において共通に使用されるチャネルであるが、通常チャネルは隣接する基地局3で重複する通信チャネルを使用しないように割り当てられる。このような割り当てにより、通常チャネルを複数の基地局3で共用することが可能になり、限られた通信チャネルで最大限の車両数を管理することが可能になる。
ここで、チャネル固定開始速度とは、移動物体がどの速度に達したときに通信チャネルを固定するかを定めた速度である。チャネル固定開始速度は、管理対象となる車両が走行するコースの制限速度や平均的走行速度、車両の最高速度など種々の要因を考慮して予め定められる。
無線通信部24は、送信データ生成部22が生成した送信データをチャネル設定部23が設定した送信用チャネルを用いて基地局3に向けて送信する無線装置である。無線通信部24は、測位部21が生成した位置情報や、移動端末20が搭載される車両の車両IDを基地局3に向けて送信する。併せて、無線通信部24は、基地局3から使用中チャネル情報を受信してチャネル設定部23に渡す機能をも有している。無線通信部24としては、たとえば、送信用(上り通信用)に、2.4GHz帯の周波数、受信用(下り通信用)に、1.2GHz帯の周波数を用いた小電力の無線通信装置を用いることができる。なお、無線通信部23は、送信したデータを一定期間保管し、要求に応じて再送する機能を有していてもよい。
アンテナ25は、無線通信部24と接続されたアンテナである。アンテナ25は、無線通信部24の出力信号を基地局3に向けて発信するとともに、基地局3からの電波を受信して無線通信部24に渡す。アンテナ25としては、例えば車載に好適な小型形状の単一型アンテナやF型アンテナなど、棒状のものや板状のものを用いることができ、使用する周波数帯や電力に合わせて適切なアンテナを選択することができる。
次に、基地局3について説明する。図1に示すように、この基地局3は、アンテナ31と、無線通信部32を有している。基地局3は、無線通信部32と管理装置40との間でデータを受け渡しする伝送機能(図示せず)をも有している。
アンテナ31は、無線通信部32と接続されたアンテナである。アンテナ31は、無線通信部32の出力を車両に搭載された移動端末20のアンテナ25に向けて送信するとともに、車両の移動端末20から発信された電波を受信して無線通信部32に渡す。アンテナ31としては、無指向性の単一型アンテナなどを用いることができるが、必要に応じて指向性アンテナを使用してもよい。すなわち、使用する周波数帯や電力、基地局一箇所でカバーすべき範囲の広さ、周囲の立地条件などに合わせて適切な利得指向性のアンテナを選択することができる。
無線通信部32は、基地局内に設置され、移動端末20と無線通信することができる無線通信装置である。無線通信部32は、移動端末20の無線通信部24と対応した周波数および無線方式を用いており、同期を取って通信する機能を有する。無線通信部32は、アンテナ31を介して移動端末20から送信された無線信号を受信して、伝送手段(図示せず)を用いて管理装置40に伝送するとともに、伝送手段を用いて管理装置40から受け取った信号を、アンテナ31を介して移動端末20に向けて無線送信する。
無線通信部32は、自基地局3が移動端末20との上り通信用に使用しているチャネル情報を常に検出し、検出したチャネル情報を管理装置40に送信する機能を有する。たとえば、無線通信部32は、移動端末20から受信した位置情報を管理装置40に送信する際に、その移動端末20との通信に使用しているチャネル情報をヘッダ情報として付加して送信してもよい。あるいは、受信した位置情報を管理装置40に送信するのとは別に、自基地局で使用中の上りチャネル情報を管理装置40送信してもよい。いずれの場合にも、基地局からその基地局が使用中のチャネル情報を受け取った管理装置40は、リアルタイムにチャネルの使用状況を把握でき、使用中チャネル情報を生成することができる。
無線通信部32は、自局の通信圏内にある全ての又は特定の移動端末20に対してデータ送信要求を出す機能をも有する。これにより、たとえば、管理装置40から特定の移動端末20と通信を開始するように指示された場合に(管理装置40の基地局切替機能)、その移動端末に対してデータ送信要求を出すことができ、通信が途絶えていた端末との通信を再開することが可能となる。
無線通信部32と管理装置40との間の伝送手段としては、例えばシリアル回線、イーサネット(商標名)回線などに用いる汎用の有線通信インタフェース手段などを用いることができ、伝送路51に対応して選択される。
次に、図1を参照して、管理装置40の機能構成について説明する。
図1に示すように、この管理装置40は、コンピュータ41と、記憶部42と、表示部43を有するとともに、コンピュータ41上で稼動するプログラムで実現される受信データ解析部411と、表示データ生成部412と、基地局管理部413と、使用中チャネル情報生成部414とを有している。
記憶部42は、たとえば、管理対象たる車両の車両IDや車種などの車両情報、コースを示す地図情報など、管理対象となるコースに関連する情報、使用中チャネル情報を生成するために必要なチャネル割り当て関連情報、基地局を管理するために必要な基地局情報、コンピュータ41上で稼動するこれらのプログラム、及び/またはオペレーティングシステムなどを予め記憶している。チャネル割り当て関連情報としては、たとえば、高速専用に固定で割り当てるために用意しているチャネルの数とチャネル識別子、予備チャネルとして用意しているチャネルの数とチャネル識別子、速度域毎に用意しているチャネルの数とチャネル識別子、各チャネルの周波数、各チャネルの使用状況などの情報を記憶している。また、コースに関連する情報として、たとえば、コースの位置や形状などのコース地図情報、コースを所定の複数のエリアに分割したエリアごとの位置範囲情報、エリアごとに設定した転倒判定傾斜角の情報、コースごとに設定した最高速度情報などをさらに記憶していてもよい。
受信データ解析部411は、基地局3を介して移動端末20から受信したデータを解析する受信データ解析手段である。受信データ解析部411は、データを受信すると、受信したデータを解析し、車両IDとその車両のコースにおける現在位置を対応付けて、表示データ生成部412に渡す機能を有する。受信データ解析部411は、基地局3において現在使用されているチャネル情報を受け取って、使用中チャネル情報生成部414に渡す機能をも有する。受信データ解析部411は、受け取った位置情報の送信元である基地局3と移動端末20とを対応付けて基地局管理部413に渡す機能をも有している。
表示データ生成部412は、画面表示に必要なデータを生成する画像データ生成手段である。表示データ生成部412は、受信データ解析部411から渡される情報や記憶部に記憶されている情報に基づいて表示データを生成し表示部43に表示させる機能を有する。表示データ生成部412は、生成した表示データを記憶部に保存する機能をも有する。
基地局管理部413は、各基地局3がカバーするエリアを管理する機能を有する。基地局管理部413は、どの基地局とどの端末が通信しているかを対応付けて管理する機能をも有する。
基地局管理部413は、基地局3を介した移動端末20からの電波が途絶えた場合に、その直前に受信した移動端末20の位置情報に基づいて移動端末20が次に通信を行う基地局を選定して、その移動端末20との通信を開始するよう指示することで、その移動端末20が通信を行うべき基地局を切り替える機能(基地局切替手段)をも有する。この機能により、通信切断時に失われるデータを最小限に抑えることが可能となる。たとえば、移動端末20の周辺環境により通信エリアが大きく変動すると、今まで通信を行っていた基地局3のエリアから急にはずれてしまい、通信が切断されてしまう場合があるが、そういう場合であっても、基地局の配置によっては、その移動端末20が現在移動している地点が他の基地局の通信エリアに入っている可能性がある。そのような場合には、それまで受け取っていたその移動端末20の位置情報等を基にして次に通信を行う予定である基地局を選定して通信を開始させることで、移動端末20との通信を再開できる。
使用中チャネル情報生成部414は、無線通信部32が使用可能な通信チャネルのうち、どのチャネルが使用中でどのチャネルがまだ使えるかを示す使用中チャネル情報を生成する手段である。使用中チャネル情報生成部414は、各基地局から受け取った基地局ごとのチャネル使用状況をマージし、記憶部に記憶されている基地局のエリア情報やチャネル管理情報など必要な情報に基づいて、また必要に応じて、基地局管理部413と協力して、使用中チャネル情報を生成する機能を有する。また、使用中チャネル情報生成部414は、隣接する基地局の間で混信しないようにチャネルの割り当て調整をする機能をも有する。
使用中チャネル情報生成部414は、高速移動専用チャネルについては、同時に一つの移動局しか使えないように全基地局共通で割り当て管理をして、使用中チャネル情報を生成する。たとえば、ある高速移動専用チャネルを使用している端末が1台あれば、そのチャネルは使用中(使用中なので他の端末は使用不可)として情報を生成する。
使用中チャネル情報生成部414は、また、低速用に割り当てる通常のチャネルについては、同一基地局内において同時に複数の移動局が使えるように、また、隣接する基地局はそのチャネルを使えないように、離れた基地局では、そのチャネルも使えるように、割り当て調整をして、使用中チャネル情報を生成する。たとえば、あるチャネルについて、同時に同一基地局内で使用している端末が何台かあっても、台数が少なく余裕がある場合には、他の端末も使用できるように、空きとして使用中チャネル情報を生成する。そうすることにより、低速で移動する物体に対して通信を行う際には、複数の低速移動物体で1つのチャネルを共有させることができ、同時管理可能台数を増やすとともに通信の効率化を図ることができる。
生成する使用中チャネル情報は、各移動局が上り通信に使用するチャネルを設定する際に基礎とする情報である。使用中チャネル情報には、基地局毎に使用できることとなっているチャネルが列挙され、各チャネルの情報には、たとえば、チャネル番号や周波数などのチャネル識別情報、高速専用、低速用、予備用などを示すチャネル種別情報、使用中か空きかなど使用可能状況を示す情報などが含まれる。高速移動専用チャネルの情報は、全基地局共通である。
使用中チャネル情報生成部414は、高速移動専用チャネルのすべてが使用され空きがない状況が続くようであれば、新たに高速移動専用チャネルを増やすように構成してもよい。そうすることで、高速移動専用チャネルの意義が没却するのを防ぐことができる。逆に、使用中チャネル情報生成部414は、高速移動専用チャネルに空きが多く、高速移動専用チャネルの数が多すぎると判定した場合には、高速移動専用チャネルの数を減らすように構成しても良い。すなわち、高速移動専用チャネルの数を任意に設定できる。そのように構成することで、移動局から基地局への通信効率を高めることができる。
また、生成する使用中チャネル情報には、速度域を具体的に示す情報を含めてもよい。また、そのチャネルをどの端末が使用しているかを示す情報を付加してもよく、特定の端末に対するチャネル変更指示となるような情報を付加してもよい。
また、使用中チャネル情報生成部414は、管理対象又は状況に応じて、適宜、チャネル固定開始速度を設定変更し、この情報を、生成する使用中チャネル情報の中に織り交ぜように構成してもよい。そうすることにより、移動物体がどの速度に達したときに通信チャネルを固定するかを任意に設定することが可能となる。
ここで、図2を参照して、管理装置40の使用中チャネル情報生成部414が生成する使用中チャネル情報の例について詳細に説明する。図2に示すのは、使用中チャネル情報の一例を示す模式的な図である。
同図において、(a)は基地局3a向けに生成される使用中チャネル情報を示し、(b)は基地局3b向けに生成される使用中チャネル情報を示し、(c)は基地局3c向けに生成される使用中チャネル情報を示す。チャネル識別情報の列の「A」,「B」,「C」等は、チャネルを識別するための符号である。チャネル種別情報の列において、「H」は高速移動専用チャネルであることを示し、「M」は中速用に用意された通常チャネルであることを示し、「L」は低速用に用意された通常チャネルであることを示し、「A」は予備チャネルであることを示す。「使用/空」は当該チャネルの使用状況を表す。「使用/空」の列において、「1」は使用中であって使えないことを示し、「0」はまだ空いているから使えることを示している。
同図においては、「H」,「M」,「L」、すなわち、高速、中速、低速とは、具体的に速度がどこからどこの値の範囲を場合をいうのかは表されていないが、この例では、予め定められており通知の必要はないものとする。
上述したように、使用中チャネル情報生成部414は、速度の範囲を具体的に示す情報を付加してもよい。そうすることで、チャネル固定開始速度を変更することも可能になり、各チャネルに対応する移動速度の範囲も変更可能となる。また、中速、低速というようなチャネル種別ではなく、もっと細分化してもよい。
この例において、基地局3aと基地局3bは隣接し、基地局3bと基地局3cは隣接しているが、基地局3aと基地局3cは隣接していないものとする。
同図に示すように、高速移動専用チャネルは基地局共通であるが、通常チャネルは、隣接する基地局で同一チャネルは割り当てないようにして、使用中チャネル情報が生成されている。
続いて、図1ないし図3を参照して、チャネル設定部23の処理を中心に、移動端末20が測位してから基地局へデータ送信するまでの移動端末20の基本的な動作を説明する。図3は、移動端末20の動作のうち、移動端末20が測位してから基地局へデータ送信するまでについて、送信チャネルの設定に焦点を当てて示すフローチャートである。
この実施形態に係る移動物体管理システム1では、移動端末20の測位部21は、自車両の位置、向き、速度などを検出・計測する。すなわち、測位を行う(ステップ101。以下「S101」のように称する。)。
測位部21は、検出・計測された位置、速度などの測位データを変換処理して位置情報を生成し、生成した位置情報(移動速度を含む)を送信データ生成部22に渡すとともに、速度情報をチャネル設定部23に渡す(S102)。
一方、無線通信部24は、基地局から使用中チャネル情報を受信し、チャネル設定部23に渡す(S103)。
チャネル設定部23は、測位部21から速度情報を受け取るとともに、基地局から受信した使用中チャネル情報を受け取ると、受け取った移動速度が高速かどうか判定する(S104)。この判定は、後述するように、高速用に通信チャネルを固定するかどうかを判定するためのものである。
高速かどうかの判定は、具体的には、受け取った移動速度と、所定のチャネル固定開始速度とを比較し、当該移動速度の数値がチャネル固定開始速度の数値以上か否かで判定する。
チャネル設定部23は、高速と判定すると(S104のYes)、自端末が現在使用している上り通信チャネルが高速移動専用チャネルとして用意されたものであるか否か判定する(S105)。
チャネル設定部23は、現在のチャネルが高速移動専用のものだと判定すると(S105のYes)、現在のチャネルを上り通信チャネルとして継続して使用する(S106)。
一方、現在のチャネルが高速移動専用のものではないと判定すると(S105のNo)、基地局3から受け取った使用中チャネル情報に基づき、高速移動専用チャネルに空きがあるか否か判定する(S107)。
チャネル設定部23は、高速移動専用チャネルに空きがあると判定すると(S107のYes)、高速移動専用チャネルの空きの1つを選定し、自端末の上り通信チャネルとして固定する(S108)。
一方、チャネル設定部23は、高速移動専用チャネルに空きがないと判定すると(S107のNo)、予備チャネルの空きの1つを選定し、自端末の上り通信チャネルとして固定する(S111)。
また、チャネル設定部23は、高速ではないと判定すると(S104のNo)、受け取った移動速度および使用中チャネル情報に基づいて、該当する速度域用に用意されたチャネルに空きがあるか否かを判定する(S112)。
チャネル設定部23は、該当する速度域用に用意されたチャネルに空きがあると判定すると(S112のYes)、その空きチャネルの1つを選定する(S113)。
チャネル設定部23は、該当する速度域用に用意されたチャネルに空きがないと判定すると(S112のNo)、予備チャネルの空きの1つを選定する(S114)。
チャネル設定部23は、チャネルが選定されるとそのチャネルを自端末の上り通信チャネルとして設定し、無線通信部24に渡す(S109)。
無線通信部24は、設定された通信チャネルを用いて、別途送信データ生成部22から受け取った送信データを基地局に向けて送信する(S110)。
なお、図3では、S102とS103が逐次的に表現されているが、S102とS103は並列的に処理されてもよい。要は、移動速度データと使用中チャネル情報とがそろえばよいので、受け取る順序は問わない。
この実施形態に係る移動端末20によれば、測位部21が、衛星測位手段及び各種センサを用いた自律測位手段に基づいて移動端末20の搭載された車両の現在位置を測位するので、より確実に測位を実現することができる。
また、この実施形態に係る移動端末20によれば、自車両の移動速度および管理装置40から基地局を介して受信した使用中チャネル情報に基づいて、チャネル設定部23が上り通信用に使用すべきチャネルを選択し設定するので、移動端末20から基地局3への送信チャネルが確実に確保され、移動速度によらず安定した伝送が可能になる。
すなわち、この実施形態に係る移動端末20によれば、移動物体の移動速度が、所定のチャネル固定開始速度を越えた場合には上り通信チャネルを固定し、所定のチャネル固定開始速度以下になった場合には上り通信チャネルの固定を解除し、当該移動速度に対応して割り当てられたチャネルを選択して使用するので、高速移動の場合にはハンドオーバーのないリアルタイム通信が可能となり、低速移動の場合には周波数の有効利用を図ってより多くの車両管理を可能とする。
続いて、図1及び図4を参照して、管理装置40の動作を説明する。図4は、管理装置40が基地局3を介して各移動端末20のデータを受信してから画面表示するまで及び基地局3を介して使用中チャネル情報を移動端末20へ送信するまでの基本的な動作を示すフローチャートである。
この実施形態に係る移動物体管理システム1では、管理装置40は、管理を開始するとまず各移動局から送信されたデータを基地局3を介して受信する(S201)。
データを受信すると、受信データ解析部411は、受信したデータを解析し、画面表示に必要な車両IDと位置情報を抽出して、表示データ生成部412に渡す。
表示データ生成部412は、受信データ解析部411からデータを受け取ると、受け取ったデータを処理して画面表示可能なように表示データを生成し、表示部43に渡す(S202)。
表示部43は、表示データ生成部412から表示データを受け取ると画面表示する(S203)。
一方、受信データ解析部411は、受信したデータを解析し、その基地局3において現在使用されているチャネル情報を抽出して、使用中チャネル情報生成部414に渡す。使用中チャネル情報生成部414は、必要に応じて、記憶部42に記憶されている情報を参照しあるいは基地局管理部413と協働して、全基地局3についての使用中チャネル情報を生成し、それを、各基地局3を介して、移動端末20へ送信する(S205)。送信する使用中チャネル情報は、送信毎に変更があった部分だけでもよい。
このようにして、管理装置40は、使用されているチャネル情報を管理し、使用中チャネル情報を各移動局に送信するので、各移動局では、使用中チャネル情報を受信することができ、それに基づいてチャネルを設定することができる。
以上のように、各移動端末では、受信した使用中チャネル情報に基づいて自身の移動速度に応じた上り通信用チャネルを設定して送信し、各基地局では自基地局の上り通信用チャネルの使用状況を管理装置に送信し、管理装置では、各基地局から受信したチャネル使用状況を元に、この実施形態に係るシステムのすべてのチャネルについて割り当て調整し、それに基づいて、使用中チャネル情報を生成して送信する。これにより、移動速度に応じた速やかなチャネル割り当てが可能になる。特に、高速移動している各端末は、複数の基地局の通信圏内を移動する場合であっても、チャネル固定し、同一のチャネルを独占的に使用するので、基地局切り換えに伴うチャネル切り換え(ハンドオーバー)処理の発生を抑え、リアルタイムに通信ができる。
また、この実施形態に係る移動物体管理システムでは、通信予備チャネルを複数用意しているので、各移動端末は、高速移動時に高速移動専用チャネルの数が足りずに高速移動専用チャネルに固定することができなかった場合であっても、予備チャネルを暫定的に使用することができるので、移動物体との通信を効率的に行うことが可能となる。
なお、上記の例では、自身の移動速度の速度域に応じて用意されたチャネルを選択して使用するようにしているため、これを忠実に行うと、同一の基地局の通信エリア内だけを移動する端末でも、移動速度が変化して異なる速度域に移行するたびに、チャネルを切り替えることとなってしまう。それでは、かえって非効率である。その非効率を避けるため、このような場合には、チャネル切り替えを行わず、同一のチャネルで通信を行えるよう、移動速度に応じたチャネル割り当て手段を不作動にすることが好ましい。
すなわち、移動物体が1つの基地局の通信エリア内のみを移動する場合には、移動速度に応じたチャネル割り当て手段を用いず、移動速度が変化してもチャネルを切り替えずに継続して同一チャネルを使用することが好ましい。そうすることで、チャネル切り替え時に発生するチャネル切り替え時間を抑えることができ、リアルタイム通信を行うことができる。
また、低速移動の場合には、複数の移動端末で同一のチャネルを共用することとしているが、その具体的な手段としては、たとえば、基地局側から端末に対して送信要求を出すポーリングをする方式を採用してもよいし、端末側からタイミングを見計らって送信する搬送波検出多元接続方式(CSMA:Carrier Sense Multiple Access)などを採用してもよい。
また、チャネル分割のしくみは、上記の説明のように周波数分割多重(FDMA:Frequency Division Multiple Access )にしてもよいが、時分割多重(TDMA:Time Division Multiple Access )にしてもよく、符号分割多重(CDMA:Code Division Multiple Access)にしてもよい。
次に、図5ないし9を参照して、移動端末20の送信データ生成部22について、詳細に説明する。
送信データ生成部22は、測位部21から受け取った位置情報に基づいて、移動速度が速いほど送信するデータのサイズが小さくなるように送信データを生成する機能を有する。また、送信データ生成部22は、移動速度の速度に応じてエラー耐性を強化するように送信データを生成する機能をも有する。すなわち、高速で移動する場合には、移動物体の現在位置が頻繁に変化するから、位置情報のリアルタイム性を担保するためには、測位・送信の頻度を高くせざるをえないので(たとえば時速300kmの場合で1秒間に数十回)、その分、一回の測位で送信するデータサイズを少しでも小さくして通信エラーの起こる蓋然性を減らすことが好ましい。また、高速移動時には、仮に通信エラーが起きても再送はしないで、最新の位置情報を送信し続けることが現実的かつ好ましい。高速移動時には、位置情報がすぐに古くなるので再送することは役に立たない上、通信トラフィックを増大させてしまうために新たな通信エラーを生じさせる蓋然性が高いからである。この場合、再送しない代わりに、同期マーカを付加することで、エラー耐性を強化できる。一方、低速移動時には、移動物体の現在位置はそれほど頻繁に変化しないから、測位・送信の頻度も低くできるので(たとえば時速30kmの場合で1秒間に数回)、位置情報を省略せずにそのまま送信し、送信エラー時に再送したほうが、位置情報の正確さを担保できる。送信データ生成部22は、このような観点から構成された送信データ生成手段である。
図5は、移動端末20の送信データ生成部22が有する機能構成を示す図である。同図に示すように、送信データ生成部22は、送信方法選択部221と、時間・速度差分算出部222と、動き予測部223と、位置差分算出部224と、同期マーカ付加部225と、前回の位置情報226と地図データ227と基準点データ228とを記憶するメモリ部220とを有する。
送信方法選択部221は、送信データの処理内容を決定する制御手段である。送信方法選択部221は、移動速度に基づいて、速度に応じた適切な送信方法を選択して、送信データを生成し、生成した送信データを無線通信部24に渡す機能を有する。
時間・速度差分算出部222は、位置情報のうちの測位時刻と移動速度について、記憶されている前回の位置情報226と今回受け取った現在の位置情報とを比較して、差分を算出する機能を有する差分算出手段である。時間・速度差分算出部222は、初回の場合など、前回の位置情報226がない場合には、受け取った位置情報をそのまま返す機能を有する。
動き予測部223は、自車両の動きを予測する手段である。動き予測部223は、現在の位置情報と進行方向と地図データ227とに基づいて、動きを予測し、変化がないと予測される位置情報については削除して、残りを返す機能を有する。たとえば、図7に示すようにY座標に変化のない道路を車両2が移動している場合、Y座標は変化することがないので、Y座標のデータは送信しないでX座標のデータのみを送信データとする。このように処理することで、送信するパケットサイズの縮小が可能となる。この逆の処理を管理装置40のコンピュータ41でも行うことで、送られてきたパケットの内容を管理装置40で復元できる。
位置差分算出部224は、測位時刻や速度も含む位置情報のうち、位置(たとえば緯度、軽度)について、基準点からの差分を算出する手段である。位置差分算出部224は、受け取った位置情報と記憶されている基準点データ228に基づいて、基準点からの位置の差分を算出する機能を有する。たとえば、図8に示すように、基準点の座標が(50,50)で、車両2の位置の座標が(45,5)の場合、差分算出後のデータは、(50,50)から(45,5)を引いて、(5,45)となる。このように処理することで、送信するパケットサイズの縮小が可能となる。逆の処理を管理装置40のコンピュータ41でも行うことで、送られてきたパケットの内容を管理装置40で復元できる。
同期マーカ付加部225は、位置情報の内部構成の意味的な区切りに同期マーカを入れる同期マーカ付加手段である。たとえば、位置情報の内部構成として、時間情報、緯度情報、経度情報、および速度情報という意味的に異なる4つのデータがこの順番で並んでいる場合を考える。このデータ構成のまま送信すると、緯度情報の一部が通信の過程で発生したエラー等により欠けた場合に、基地局では、緯度以降のデータ(緯度、経度、速度)をすべて取得することができない。その問題を回避するため、同期マーカ付加部225は、時間情報、緯度情報、経度情報、および速度情報の各データの前に同期マーカを入れる。このように構成することで、たとえば緯度情報の一部がエラーで欠けて正常に取得できなかったとしても、経度、速度の情報が受信できていれば同期マーカを見て、基地局が残りのデータを取得でき位置精度の向上が可能となる(図9)。こうすることで、データの再送をしなくても、ある程度のエラー耐性を確保できる。
前回の位置情報226は、前回の測位時に受け取った位置情報である。測位時刻、位置、速度などの位置情報を、差分ではなくそのまま記憶している。前回と今回との差を求めるために用意する。また、エラー時の再送要求の際に用いてもよい。前回と今回との差分を求めるためには1回分だけ記憶しておけば十分であるが、より完全を期すため、新しい順に数回分記憶しておいてもよい。
地図データ227は、移動物体が移動する可能性がある領域の地図データである。管理装置40の記憶部も地図データを記憶しているが、移動物体の動き予測に必要な範囲の地図データをあらかじめ移動端末20側に用意しておくことで、移動端末20は、速やかに動き予測をすることができ、動き予測によるデータ圧縮機能を実現することが可能となる。
基準点データ228は、時間や速度等も含めた位置情報のうち、位置(たとえば緯度、経度)の部分について、差分を求める基準となる点を記憶した情報である。基準点データ228としては、たとえば、移動物体が移動する可能性がある範囲の中心若しくは四隅の緯度、経度などをあらかじめ登録しておくことができる。また、基準点データ228に記憶させる情報を、管理装置40のコンピュータ41が動的に定めて基地局3を介して移動端末20に送信するように管理装置40を構成してもよい。管理装置40が動的に基準点データ228を設定して移動端末20に向けて送信するようにシステムを構成することで、たとえば、物体が移動する範囲があらかじめよくわかっていない場合などでも、基準点を適切に定めることができ、差分を小さくすることができる。
次に、図5および図6を参照して、送信データ生成部22の動作を詳細に説明する。図6は、送信データ生成部22における送信方法選択部221の処理の流れに焦点を当てて、移動端末20による測位から管理装置40による画面表示までの基本的な動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、この実施形態に係る移動物体管理システム1では、まず、移動端末20の測位部21が自身の位置を測位し、測位データを処理して、時間情報や速度情報を含む位置情報を生成し、生成した位置情報を送信データ生成部22に渡す(S301)。
位置情報を受け取ると、送信データ生成部22の送信方法選択部221は、移動速度が高速か、中速か、低速かを判定する(S302)。その判定基準は、移動物体が移動する可能性がある領域の制限速度や通信環境、測位・送信頻度、データ伝送速度、送信側(移動端末20)及び受信側(基地局3及び管理装置40)の処理性能などを勘案して、あらかじめ定められる。その判定基準を状況に応じて動的に変更できるようにシステムを構成してもよい。
なお、送信方法選択部221は、測位部21から受け取った位置情報を、現在の位置情報としてメモリ部220に一時保存する。この情報は、次回の処理のときに前回の位置情報226として使用するためのものである。
送信方法選択部221は、速度判定の結果高速と判定した場合(S302のH)、時間・速度差分算出部222に対して、今回の位置情報のうちの時間情報と速度情報を前回からの差分情報に変換するよう指示する(S303)。具体的には、送信方法選択部221は、時間・速度差分算出部222に今回の位置情報を渡し、時間と速度情報を前回からの差分情報に変換した位置情報を受け取る。
送信方法選択部221は、差分情報に変換された位置情報を受け取ると、同期マーカ付加部225に対し、その位置情報に同期マーカを付加するよう指示する(S304)。具体的には、送信方法選択部221は、その位置情報を同期マーカ付加部225に渡し、同期マーカが付加された位置情報を受け取る。
送信方法選択部221は、同期マーカが付加された位置情報を受け取ると、動き予測部223に対し、動き予測による位置情報の軽量化を行うよう指示する(S305)。具体的には、送信方法選択部221は、同期マーカ付加部225から受け取った位置情報を動き予測部223に渡し、動き予測による軽量化後の位置情報を動き予測部223から受け取る。
送信方法選択部221は、動き予測部223から位置情報を受け取ると、その情報に対して、管理装置40側での位置情報の復元に必要な情報をヘッダ情報として付加して、無線通信部24に渡すべき送信データとして出力する。
一方、送信方法選択部221は、速度判定の結果中速だと判定した場合(S302のM)、時間・速度差分算出部222に対し、今回の位置情報のうちの時間情報と速度情報を前回からの差分情報に変換するよう指示する(S306)。この処理は、高速の場合と同様である。
送信方法選択部221は、差分情報に変換された位置情報を受け取ると、同期マーカ付加部225に対し、その位置情報に同期マーカを付加するよう指示する(S307)。この処理も、高速の場合と同様である。
送信方法選択部221は、同期マーカが付加された位置情報を受け取ると、位置差分算出部224に対し、位置情報を基準点からの差に変換するよう指示する(S308)。具体的には、同期マーカ付加部225から受け取った位置情報を位置差分算出部224に渡し、基準点からの差に変換された位置情報を、位置差分算出部224から受け取る。
送信方法選択部221は、位置差分算出部224から位置情報を受け取ると、その情報に対して、管理装置40側での位置情報の復元に必要な情報をヘッダ情報として付加して、無線通信部24に渡すべき送信データとして出力する。
一方、送信方法選択部221は、速度判定の結果低速だと判定した場合(S302のL)、位置情報の一部を削除するなどのデータ圧縮を行わず、全部を送るようにし、エラー時の再送要求に応えられるような処理をする(S309)。具体的には、受け取った位置情報に対して、再送要求に応じる旨の情報と非圧縮の位置情報である旨の情報をヘッダ情報として付加して、無線通信部24に渡すべき送信データとして出力する。再送要求に応じる旨の情報を付加することで、無線通信部24はエラー時に再送が可能となり、基地局3又は管理装置40側では、通信エラーが生じれば再送要求を出すことができる。また、非圧縮の位置情報である旨の情報を付加することで、管理装置40は位置情報を復元することができる。
以上のようにして、高速、中速、低速のいずれの場合についても、送信方法選択部221は、速度に応じた適切な手段を用いて、無線通信部24に渡すべき送信データを生成できる。
送信データを生成すると、送信方法選択部221は、メモリ部220に一時保管しておいた現在の位置情報を、前回の位置情報226として保存するとともに、生成した送信データを無線通信部24に渡す。
無線通信部24は、送信データ生成部22が生成した送信データを受け取ると、基地局3に向けて送信データを送信する。送信されたデータは、基地局3および伝送路51を介して管理装置40に伝送される(S310)。
管理装置40は、伝送されたデータを受け取ると、送信方法選択部221が選択した方法に応じて位置情報を復元する(S311)。管理装置40は、ヘッダ情報を解釈することにより、送信方法選択部221が選択した方法を検出し、それぞれ対応する方法により位置情報を復元する。
管理装置40は、復元された位置情報に基づいて、画面表示可能なように表示データを生成し、処理後のデータを記憶部に保存する(S312)とともに、生成した表示データを表示部43に渡す。
表示部43は、受け取った表示データを画面に表示する(S313)。
以上のようにして、この実施形態に係る移動物体管理システムでは、移動端末20の測位部21が移動物体の現在位置を計測して位置情報を生成し、移動速度に応じた手段で位置情報を基地局3に送信し、光ファイバなどの高速回線を用いて管理装置40に伝送し、管理装置の表示部43に位置情報をリアルタイムに表示することができる。
このように、この実施形態に係る移動物体管理システムでは、高速移動の場合には、1度に送るデータを極力減らすことで、エラーを起こりにくくすることができる。また、マーカ付加手段によりエラー耐性を強化するので、高速移動の場合でも、位置情報の送信の確実性が増す。したがって、移動端末20から基地局3への無線通信が広帯域ではなく、狭帯域で、たとえば、転送速度が数十kbps程度しか確保できない場合であって、端末20が350km/h程度の高速で移動する場合(たとえば1秒間に数十回の頻度で測位・送信しなければならないような場合)であっても、位置情報の精度が向上でき、管理装置40の表示部43にリアルタイムに画面表示できる。
一方、この実施形態に係る移動物体管理システムでは、低速移動の場合には、1秒間に送信すべき頻度が高速移動に比べれば減るので、毎回全データを送信する。このとき多少1回あたりのデータが大きくなっても、無線通信側のエラー耐性を強化し、エラーが起こったときは再送を行い、確実にデータを送信することで位置精度の向上が可能となる。
また、この実施形態に係る移動物体管理システムでは、車両が高速移動する場合には、予め用意された専用のチャネルを割り当てて上り通信チャネルを固定するので、たとえば時速350km/h程度の高速で走行する車両が複数存在しても、それらすべての車両の現在位置情報等を表示部43にリアルタイムに表示することができる。
このように、この実施形態に係る移動物体管理システムでは、移動物体に自らの位置情報を発信する移動端末を備えるとともに、移動速度に応じて送信チャネルを割り当てるので、使用可能な周波数チャネルが限られていても多くの移動物体の位置を管理することができる。従って、たとえば複数のコースを備える施設において合計数百台単位の車両が走行している状況で、使用可能周波数チャネルが数十チャネル程度しかない場合であっても、移動速度に応じて、基地局かつ車両ごとにチャネルを繰り返し使用することで、全車両を管理することができる。
以上説明したように本発明によれば、車両の位置情報や速度情報などを移動端末側で測定し、測定したデータを自車両の速度に応じて割り当てた通信チャネルを用いて基地局に送信し、基地局が受信したデータを光ファイバなどの高速伝送手段により管理装置のコンピュータに伝送し、管理装置のコンピュータにて画面表示処理を行うことにより、リアルタイムな監視が可能な移動物体管理システムを提供することができる。
なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではない。本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
上記実施形態は、高速走行する車両を管理する移動物体管理システムとして説明したが、これには限定されない。比較的低速な特殊車両が走行するコースであっても、あるいは高速車両と低速車両とが混在するコースであっても、車両の数および速度に応じた基地局を配置することで、同様の効果を奏することができる。
また、上記実施形態では、テストコースのように管理された施設内に設けられた閉じたコースを走行する車両を管理するものとして説明したが、これにも限定されない。高速道路や一般道、さらには道路を特に有さない領域など、開放された領域であっても、管理対象の車両に車載装置を搭載するとともに管理対象車両の数と速度に応じて基地局を配置することで、基地局のカバーする領域内の車両を集中的に管理することができる。
さらに、上記実施形態では、移動物体に搭載された移動端末から発信される移動物体の位置情報を管理装置にて集中管理する例を説明したが、これにも限定されない。すなわち、たとえば、移動物体を車両とするならば、移動端末が車両の状態、例えばエンジン回転数などの駆動系情報やブレーキ特性などの制動系情報など、走行する車両に関係する情報を検出するセンサを備えて基地局に対し発信する構成としてもよい。この場合、管理装置が、車両の位置情報に加えて、運転者ID、事故の有無等、車両の走行に関する諸情報を併せて表示するとともに蓄積することで、管理領域内の走行車両のあらゆる情報を一元管理することが可能になる。
また、上記実施形態の移動物体管理システムでは、管理装置がコンピュータ上で稼動するコンピュータプログラムにより実現されるものとして説明したが、プログラムはROMなどに格納されていてもよく、電子回路などハードウェアにより実現されてもよい。
そして、上記実施形態では管理対象を車両として説明したが、鉄道や航空機など、所定の領域内を移動するあらゆる移動体に適用することができる。