JP2006082693A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ベースゴム11を有するトレッド部21と断面略三日月状のサイド補強ゴム層3を有する一対のサイドウォール部20とを備えるサイド補強式ランフラットタイヤ1において、ショルダ領域22のベースゴム11に接する位置に、タイヤ内周面に垂直且つトレッドと路面とのタイヤ幅方向の接地端を通る線を跨ぐようにクッションゴム13を配置し、このクッションゴム13の損失正接(tanδ)をベースゴム11のtanδより低く設定する。
【選択図】 図1
Description
このようなサイド補強式ランフラットタイヤにおいて、パンク走行時(ゼロ内圧走行時)のショルダ領域の耐久性を向上させるものとして、例えば、ショルダ領域のコード補強ゴム層(ベルト、ベルトカバー、カーカス等)の層間に、損失正接(tanδ)が低いクッションゴムを配置するというものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記従来の空気入りタイヤにあっては、ショルダ領域のコード補強ゴム層の層間にtanδが低いクッションゴム(すなわち、減衰性の悪いゴム)を配置しているので、振動伝達率が大きくなり、通常走行時(内圧負荷時)のロードノイズが悪化するという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、パンク走行時のショルダ領域の耐久性を向上すると共に、通常走行時のロードノイズの悪化を最小限に抑えることができる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
図1は本発明の第1の実施形態を示す概略構成図であり、空気入りタイヤ1(以下、タイヤ1と称す)の右半断面を示す図である。このタイヤ1はサイド補強式ランフラットタイヤであり、耐外傷性に優れるコンパウンドを配するサイドウォール2の内周側に、断面が略三日月状のサイド補強ゴム層3を備えている。
またタイヤ1は、その骨格を構成するカーカス4を有する。このカーカス4はポリエステル、レーヨンなどのコードを周方向と直角に配するものであり、その端部がタイヤ1の内周側から外周側へ向けてビードコア5に巻き付けられている。さらに、このビードコア5の上部のカーカス4間の隙間には、剛性確保のために硬いコンパウンドを配し細切り形状に形成されたビードフィラー6が埋設されている。
このインナーライナー7は、タイヤ内部の空気を保持すると共に、タイヤ内部への酸素の透過を防止し、タイヤ内部の酸化劣化を防ぐ機能がある。
また、カーカス4の外周にはトレッド部21を強化する2層のベルト8及びベルトカバー9を備え、ベルト8は、トレッド部21のショルダ領域22にその端部を配置するように構成されている。
トレッド部21は、路面に接触する重要な要素であり、NR(Natural Rubber)、BR(Butadiene Rubber)、SBR(Styrene Butadiene Rubber)などのエラストマーに、カーボンブラック、シリカなどの補強材や硫黄、加硫促進剤などの配合剤を混合したコンパウンドで構成され、接地面に配置されるキャップゴム10と、キャップゴム10とベルト部23との間に配置されるベースゴム11とで構成される。
さらに、このタイヤ1は、ベースゴム11の外周側、例えば、キャップゴム10とベースゴム11との間にクッションゴム12を備えている。クッションゴム12の損失正接(以下、tanδと称す)はベースゴム11のtanδより低く設定されており、ベースゴム11のtanδの40%以上80%以下とする。
このクッションゴム12は、図2に示すように、ショルダ領域において、トレッドと路面とのタイヤ幅方向の接地端Aを通りタイヤ内周面に垂直な線Bを跨ぐように配置されている。図中Cはショルダ領域のトレッド総厚さを示しており、図中Dはトレッド幅を示している。
なお、このクッションゴム12は、NR,BR,SBRなどのエラストマーに、カーボンブラック、シリカなどの補強材や硫黄、加硫促進剤などの配合剤を混合したコンパウンドが好ましいが、必要に応じて、エラストマーの代わりに熱可塑性樹脂を混合したり、エラストマーを含む熱可塑性樹脂を混合してもよい。
そこで、本発明では、ショルダ領域に低tanδなクッションゴム(即ち発熱が小さいゴム)を配置することで、ショルダ領域のセパレーション(剥離)等の耐久性を向上する。
また、通常走行時のロードノイズ(路面から車体に伝わる振動騒音)は、図4に示すタイヤの振動伝達特性が影響する。走行時には、ベルト、ベルトカバー、カーカス等のコード補強ゴム層に大きな層間せん断変形が発生することが一般的に知られており、この層間せん断変形は振動を減衰する効果がある。
今、235/45R18サイズのタイヤモデルを用いて有限要素法によるタイヤ解析を行い、表1に示す従来例z及び実施例a〜eについて、耐久性の評価指標となる損失エネルギー密度と、ロードノイズの評価指標となる振動伝達率との計算を行う。
そして、従来例xを100とするショルダ領域の損失エネルギー密度の指数を求め、これを解析結果とする。この値が小さいほどショルダ領域の損失エネルギーが小さく、耐久性に優れると判断する。なお、目標レベルは、市場実績を考慮し、損失エネルギー指数98以下とする。
そして、従来例xを0とするオーバーオール値の差を解析結果とし、この値が小さいほど振動伝達率が低く、静粛性に優れると判断する。なお、目標レベルは、市場実績を考慮し、伝達率差+0.4dB以下とする。
tanδは、温度50℃、周波数14Hz、動歪2%におけるゴム試験片の粘弾試験結果を用いる。ここで、周長2.0mのタイヤが100km/hで走行すると、27.8m/s÷2.0m≒14Hzで変形するため、周波数を14Hzとしている。
図5において、横軸はベースゴムのtanδに対するクッションゴムのtanδの比率、縦軸は損失エネルギー指数である。この図からも明らかなように、実施例b〜eが目標レベル98以下となっており、耐久性に優れていることがわかる。
また、図6において、横軸はtanδの比率、縦軸は伝達率差である。この図からも明らかなように、実施例a〜dが目標レベル+0.4dB以下となっており、従来例zの伝達率差+1.4dBと比較すると、大幅にロードノイズが低減しており静粛性に優れていることがわかる。つまりこれは、従来例zと実施例a〜dとでコード補強ゴム層の層間せん断変形に大きく違いがあることを示している。
ここで、tanδは、ベースゴムのtanδ(0.26)の40%以上80%以下、クッションゴムの厚さは、ショルダ領域のトレッド総厚さ(約6.7mm)の15%以上75%以下、クッションゴムの幅は、トレッド幅(約125mm)の8%以上40%以下に相当する。
このように、上記第1の実施形態では、トレッド部のショルダ領域に低tanδなクッションゴムを配置するので、車両走行中にタイヤがパンクした場合であっても、ショルダ領域の耐久性を向上して、それ以上タイヤへのダメージを与えることなく且つ操縦安定性を損なうことなく、ある程度の距離を安定して走行することができる。
さらに、クッションゴムをタイヤ内周面に垂直且つトレッドと路面とのタイヤ幅方向の接地端を通る線を跨ぐように配置するので、クッションゴムが適正位置に配置されて、よりショルダ領域の耐久性を向上させることができると共に、ロードノイズの悪化を抑制して静粛性を向上させることができる。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、クッションゴムをベースゴムの外周側に配置しているのに対し、ベースゴムの内周側に配置するようにしたものである。
図7は、第2の実施形態における空気入りタイヤ1の概略構成を示す図であり、前述した第1の実施形態と同様の構成を有する部分には同符号を付し、その詳細な説明は省略する。
今、235/45R18サイズのタイヤモデルを用いて有限要素法によるタイヤ解析を行い、表2に示す従来例z及び実施例f〜jについて、耐久性の評価指標となる損失エネルギー密度と、ロードノイズの評価指標となる振動伝達率との計算を行う。
図8において、横軸はベースゴムのtanδに対するクッションゴムのtanδの比率、縦軸は損失エネルギー指数である。この図からも明らかなように、実施例g〜jが目標レベル98以下となっており、耐久性に優れていることがわかる。
したがって、図8及び図9の解析結果により、実施例g〜iが耐久性と静粛性の両方に優れていることがわかる。つまり、耐久性と静粛性の両方を満足するためのクッションゴムの適正条件は、tanδが0.12以上0.23%以下、クッションゴムの厚さが1mm以上5mm以下、クッションゴムの幅が10mm以上50mm以下である。
また、ベースゴム11の内周側と外周側とでは、ロードノイズと耐久性とに与える影響が異なり、ベースゴム11の内周側は、ベースゴム11の外周側に比べてロードノイズと耐久性とに与える影響が大きい。そのため、クッションゴム12をベースゴム11の内周側に配置した場合の方が、目標レベルをクリアするtanδが若干高い範囲となる。
実施例cの損失エネルギー指数は93、実施例hの損失エネルギー指数は89であり、クッションゴムをベースゴムの内周側に配置した実施例hの方が耐久性に有利であることがわかる。また、実施例cの伝達率差は+0.1、実施例hの伝達率差は+0.2であり、クッションゴムをベースゴムの外周側に配置した実施例cの方がロードノイズの抑制に有利であることがわかる。
また、クッションゴムのtanδをベースゴムのtanδの45%以上90%以下、厚さをショルダ領域のトレッド総厚さの15%以上75%以下、幅をトレッド幅の8%以上40%以下とするので、クッションゴムの大きさ及びtanδを適正範囲に設定して、パンク時のショルダ領域の耐久性を向上しつつ、走行時のロードノイズの悪化を最小限に抑えることができる。
2 サイドウォール
3 サイド補強ゴム層
4 カーカス
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 インナーライナー
8 ベルト
9 ベルトカバー
10 キャップゴム
11 ベースゴム
12 クッションゴム
20 サイドウォール部
21 トレッド部
22 ショルダ領域
23 ベルト部
Claims (6)
- キャップゴムと該キャップゴムの内周側に位置するベースゴムとを有するトレッド部と、該トレッド部の両側に位置し、サイド補強ゴム層を有する一対のサイドウォール部とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部のショルダ領域にある前記ベースゴムに接するように配置されたクッションゴムを備え、該クッションゴムの損失正接を前記ベースゴムの損失正接より低く設定することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記クッションゴムは、タイヤ内周面に垂直且つトレッドと路面とのタイヤ幅方向の接地端を通る線を跨ぐように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記クッションゴムは、前記ベースゴムの外周側に接するように配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記クッションゴムの損失正接を前記ベースゴムの損失正接の40%以上80%以下に設定し、前記クッションゴムの厚さを前記ショルダ領域の総厚さの15%以上75%以下に設定し、前記クッションゴムの幅をトレッド幅の8%以上40%以下に設定することを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
- 前記クッションゴムは、前記ベースゴムの内周側に接するように配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記クッションゴムの損失正接を前記ベースゴムの損失正接の45%以上90%以下に設定し、前記クッションゴムの厚さを前記ショルダ領域の総厚さの15%以上75%以下に設定し、前記クッションゴムの幅をトレッド幅の8%以上40%以下に設定することを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
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