JP5038766B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、タイヤの転がり抵抗、乗り心地性、操縦安定性など他性能を損なうことなく、高周波のロードノイズを改善した空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤでは、周波数300〜1kHz付近の高周波ロードノイズが顕著にあらわれることがある。この高周波ロードノイズは、路面から拾った振動でタイヤが共振し、その振動が車軸を通して車室に伝達され、車室内に共鳴音を発生する騒音のことである。
従来、高周波ロードノイズの抑制対策としてベルト幅増、ベルト補強層の配置が一般的に行われている。また、タイヤのサイド部のほぼ全体やベルトのエッジ付近にゴム層やコード、短繊維を含む補強層を配置し、サイド部全体の剛性を向上させたり、質量を付加するという手法により高周波の振動モードを対策する提案が種々なされている(特許文献1〜3など)。
特開2002−67618号公報 特開2001−71715号公報 特開平5−58119号公報
しかし、従来の抑制方法は、いずれも大幅な剛性向上により低〜中周波のロードノイズの悪化や乗り心地性を低下させ、また質量付加によるタイヤ質量増、転がり抵抗の悪化を招くものとなっていた。
本発明は上記の点に鑑み、低〜中周波ロードノイズの悪化や、転がり抵抗、乗り心地性、操縦安定性など他性能を損なうことなく、高周波のロードノイズを改善することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、高周波ロードノイズの振動モードを特定することを得、タイヤ断面方向における振動モードの感度の高い部位、すなわち振動伝達の寄与度の高い部位にロードノイズ対策を行い、その部位のタイヤ周方向、上下方向の剛性配分をコントロールすることで、タイヤの他性能を維持しながら高周波ロードノイズを効果的に低減できることを見出し、本発明に到った。
すなわち、本発明は、一対のビード部と該ビード部に続くサイドウォール部と該両サイドウォール部の間に設けられたトレッド部とで構成され、前記ビード部間に装架された少なくとも1枚のカーカスプライが前記ビード部に埋設されたビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返し巻き上げられたカーカスを備えた空気入りタイヤにおいて、ビードベース側からのタイヤ断面高さの40〜65%の範囲内におけるタイヤ最大幅位置を含む部位にタイヤ径方向幅が前記タイヤ断面高さの10%以上の補強ゴム層が前記カーカスに沿ってタイヤ周方向に配され、また、前記タイヤ断面高さの30〜75%の範囲に前記補強ゴム層の少なくとも一部と重なりかつ前記補強ゴム層よりもビードベース側に延びてビードフィラーの先細り部にかかるタイヤ径方向幅が前記タイヤ断面高さの20%以上の有機繊維補強層が配されたことを特徴とする空気入りタイヤである。
本発明においては、前記補強ゴム層が、JIS−A形硬度70〜90にあるゴム組成物からなることが好ましい。
また、前記有機繊維補強層が、有機繊維コードをタイヤ径方向に対して20〜70°の範囲に配したゴム被覆層からなるものとすることができる。
また、前記補強ゴム層及び/又は有機繊維補強層の少なくとも一部が、前記カーカスプライ本体と該カーカス巻き上げ部の間に配されることが好ましい。
本発明の空気入りタイヤによれば、高周波ロードノイズ対策を要所で実施することで、サイド部全体の剛性向上やタイヤ質量増を伴わず、低〜中周波ロードノイズを悪化させることなく、また転がり抵抗、乗り心地性、操縦安定性などタイヤの他性能を維持しながら高周波のロードノイズを低減することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤTの半断面図である。空気入りタイヤTは、一対のビード部1と該ビード部1にタイヤ径方向に延びて続くサイドウォール部2と該両サイドウォール部2、2の間に設けられたトレッド部3とで構成される乗用車用のラジアルタイヤが示される。以下、空気入りタイヤを単に「タイヤ」ということがある。
タイヤTはタイヤ周方向に対してほぼ90°の角度で配され前記ビード部1、1間に装架された2枚のカーカスプライ51、52が、前記ビード部1に埋設されたビードコア4の周りでタイヤ内側から外側に折り返しビードフィラー9に沿って巻き上げられたカーカス5を備えている。カーカス5の1stプライ51はサイドウォール部2の上端付近のバットレス部まで巻き上げ端部51aが延び、また2ndプライ52はビードフィラー9の位置52aにそれぞれ係止されている。
また、タイヤTは前記トレッド部3の内側に配された2枚の交差ベルトプライからなるベルト6と、さらにベルト6の外周にはタイヤ周方向に対しほぼ0°の角度でらせん状に巻回されたコードからなる該ベルト6の全幅にわたり覆うキャッププライ7とベルト6の両端部を覆うエッジプライ8を有している。
前記カーカス5には、ポリエステル、ナイロン、レーヨンなどの有機繊維コードが、ベルト6にはスチールコード、アラミド繊維などの剛直なコードが、またキャッププライ7とエッジプライ8にはナイロン、ポリエステルなどの熱収縮性の比較的大きい有機繊維コードが補強材として用いられている。
タイヤTは、図1に示すように、サイドウォール部2にタイヤ周方向に沿う補強ゴム層21と有機繊維補強層22がタイヤ全周に配置されている。
補強ゴム層21はビード部1のビードベース10を基点とする該タイヤ断面高さHの40〜65%の範囲の幅でタイヤ周方向にカーカス5のタイヤ外側に沿って配されている。好ましくは45〜65%の範囲である。該補強ゴム層21の配置位置は、タイヤ断面方向で最も振動モードの感度の高いタイヤ最大幅位置Sを含む部位であり、サイドウォール部2の剛性の向上と質量付加することでトレッド部3からビード部1への振動伝達を減衰するとともに振動の振幅を抑制し高周波ロードノイズを低減することができる。
また、前記補強ゴム層21は、タイヤ径方向幅が前記タイヤ断面高さHの10%以上である必要があり、これよりも幅が狭いと質量付加の効果が発現されずロードノイズを低減することが困難となる。
タイヤ断面高さHの40〜65%の範囲を超えて補強ゴム層21を配置しても、高周波ロードノイズの低減効果の割りにはタイヤ質量増を伴い、また低〜中周波ロードノイズの悪化を招くおそれがある。
前記補強ゴム層は、JIS−A硬度が70〜90にあるゴム組成物からなることが好ましい。硬度が70未満であると剛性向上の効果が充分得難く、硬度が90を超えると剛性が高くなりすぎ乗り心地性を低下させ、また周辺のサイドウォールゴムとの硬度差に基づく界面接着破壊を起こしやすくし、さらにゴム層の屈曲疲労性が低下する。なお、JIS A硬度は、JIS K6253におけるスプリング式硬さ試験(A形)によるゴム硬さ(Hs)である。
また、前記補強ゴム層21の厚みは、特に制限されないが、0.2〜5mm程度であり、好ましくは0.3〜3mmである。厚みが薄いとサイドウォール部2の剛性向上が得難く、厚くなると質量増加が大きくなりタイヤ質量増、転がり抵抗の悪化傾向を示すようになり好ましくない。
また、タイヤTは、前記補強ゴム層の少なくとも一部と重なる該タイヤ断面高さHの30〜75%の範囲に有機繊維補強層22がタイヤ周方向に配されている。好ましくは、30〜65%の範囲である。すなわち、有機繊維補強層22は、タイヤ最大幅位置S近傍からビードフィラー9にかかる部位に配置される。
この最大幅位置Sの下部からビードフィラー9の先細り部にかけての部位は、上記最大幅位置Sに次いで振動モードの感度の高い部位であり、剛性部材である有機繊維補強層22を配することでサイドウォール部2からビード部1にかけての剛性を高めて振動伝達を減衰するとともに振幅を抑制することができる。特に、タイヤ最大幅位置S近傍において、前記補強ゴム層21と重なるようにして両者を併用することで高周波ロードノイズを効果的に低減することができる。
タイヤ断面高さHの30%未満の高さに有機繊維補強層22を配置しても、硬質ゴムからなるビードフィラーのビードコア4側の厚肉部にかかるようになり剛性向上への寄与率が小さくなり、また断面高さHの75%を超えて有機繊維補強層22を配置しても高周波ロードノイズの低減効果は少なく、乗り心地性や低〜中周波ロードノイズの悪化を招くおそれがある。すなわち、有機繊維補強層22はビードフィラー4と少なくとも5mm程度重ねるだけで十分である。
また、前記有機繊維補強層22は、タイヤ径方向幅が前記タイヤ断面高さHの20%以上である必要があり、これよりも幅が狭いとサイドウォール部2の剛性向上が得られずロードノイズを低減する効果が得難くなる。
前記有機繊維補強層21としては、有機繊維コードを所定の打ち込み密度で平行に配列しゴム被覆したゴム被覆コード層が好ましく使用できる。
前記有機繊維コードとしては、特に制限されないが、ナイロン6、ナイロン66などのナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ビニロン、レーヨン、アラミド繊維などの各種コードが挙げられる。剛性向上の観点からは高モジュラス糸を用いるのが有利であるが、接着性やコスト(汎用性)を勘案するとナイロン、PETが好適に用いられる。
前記有機繊維コードは、正量繊度470〜3500texの撚り糸の単撚り糸又は複撚り糸からなるものとすることができる。正量繊度が470dtex未満ではコード自体のモジュラスが低いためサイドウォール剛性の向上効果が少なく、3500texを超えるとコード径が大きくなりサイドウォール部2の肉厚増によるタイヤ質量増や転がり抵抗の悪化につながる。具体的には、940dtex/2、1400dtex/2のナイロンコード、1100dtex/2、1670dtex/2のポリエステルコードなどが例示され、RFL樹脂処理液などによる接着処理が施されたコードが使用できる。
また、有機繊維補強層22に有機繊維コードを適用するに当たっては、有機繊維コードの傾斜角度がタイヤの径方向に対して20〜70°の範囲であることが好ましい。前記角度が70°を超えるとタイヤの縦剛性が高くなり操縦安定性は確保できるが、乗り心地性が低下する。また、20°未満ではサイド剛性向上の効果が充分得られなくなる。
また、有機繊維補強層22は、1層で構成しても、複数層から構成してもよく、後者の場合は、コード傾斜角度を同方向にしても、異方向とすることもできる。さらに、異なる角度で組み合わせてもよい。
さらに、前記有機繊維補強22における、有機繊維コードの占有率は20〜80%であることが好ましく、より好ましくは30〜70%である。占有率が20%未満ではサイドウォール部剛性の向上が充分得られず、80%を超えるとコード密度が高くなり接着耐久性が低下する。ここで、コード占有率とは、有機繊維コード層の単位断面における有機繊維コード断面が占める面積率を言う。
本発明においては、前記補強ゴム層21及び有機繊維補強層22はカーカス5の巻き上げ部分5bのタイヤ外側に配置されるものでもよいが、図1に示すようにカーカス本体5aとカーカス巻き上げ部分5b及びビードフィラー9の間に配置されることが好ましい。
これは、トレッド部3におけるベルト6に接するカーカス本体5aがサイドウォールゴムよりもトレッド部3からの振動の伝達経路になりやすいことから、カーカス本体5aに接して剛性部材と質量部材を配置するのが有利となる。また、グリーンタイヤ成型時の成型のしやすさも挙げられる。
また、図1ではタイヤ軸方向の内側に補強ゴム層21、外側に有機繊維補強層22を配置した例が示されているが、タイヤ軸方向の内側に有機繊維補強層22、外側に補強ゴム層21を配置した構造でももちろん同様の効果が得られる。
本発明の空気入りタイヤによると、路面の凹凸によりトレッド部3に入力される振動をサイドウォール部2における振動モードの感度の高い部分を選択し剛性及び質量付加の対策することで、振動を減衰させるとともに振動の振幅を抑制し、高周波ロードノイズを操縦安定性や乗り心地性を確保し低減することができる。
以下に、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
図1に示すように補強ゴム層21及び有機繊維補強層22をカーカス本体5aとカーカス巻き上げ部5b及びビードフィラー9との間に挟持させた構造に基づき、サイズ215/55R17 93Vの乗用車用空気入りラジアルタイヤを表1の仕様に従い試作した。
補強ゴム層21にはJIS−A硬度80、厚さ1mmのゴムシートをカーカスに沿ってタイヤ周方向に配置し、そのタイヤ径方向上端及び下端の位置をタイヤ断面高さHの%で表1に示した。
また、有機繊維補強層22には940dtex/2または1400dtex/2のナイロン66コードを打ち込み密度13本/25mmで平行に配列しゴム被覆したゴム被覆コード層(厚み0.9mm)を、コード角度をタイヤ径方向に対して60°となるように配置した。そのタイヤ径方向上端及び下端の位置をタイヤ断面高さHの%で表1に示した。
コントロールタイヤとしては、図2に示す補強ゴム層、有機繊維補強層を持たない従来タイヤT2(図2参照)を用い、補強ゴム層、有機繊維補強層以外は各タイヤで共通構造として比較した。
なお、カーカスは1670dtex/2のポリエステルコード、打ち込み密度22本/25mmを2プライ、ベルトは2+2×0.25のスチールコード、打ち込み密度22本/25mmの2プライ(交差角度45°)、キャッププライとエッジプライは940dtex/2のナイロン66コード、打ち込み密度28本/25mmとした。
これらの試作タイヤについて、タイヤの質量、剛性特性、転がり抵抗、乗り心地及びロードノイズを下記の試験方法により評価した。いずれの試験の場合にも、サイズ17×7−JJのリムに組みつけて内圧230kPaを充填して行った。結果を表1に示す。
[タイヤ質量]
試作タイヤ5本の質量を測定し、その平均値をタイヤ質量とした。
[剛性特性]
試作タイヤに荷重460Kgを負荷して、リムにタイヤ縦方向、径方向及び前後方向の変位を与えたときの変位量(mm)とその変位量を与えるのに要した力(N)を測定し、単位変位量当たりの力を求め、縦剛性、横剛性、前後剛性とした。従来例のタイヤを100とする指数で示した。
[転がり抵抗]
転がり抵抗測定用の1軸ドラム試験機を使用し、負荷荷重460Kg、時速80Km/hでの転がり抵抗を測定した。従来例を100とする指数で表し、数値が大きいほど転がり抵抗が高く燃費性が劣ることを示す。
[乗り心地性]
試作タイヤを実車(排気量3,000cc、セダン)に装着して、乗り心地性評価用テストコースを各種の速度で走行したときの3名のテストドライバーの官能評価により、従来例タイヤを基準とする±5段階評価にて比較評価を行った。
[ロードノイズ]
試作タイヤを実車に装着して、運転席と後席右側の2名乗車により、メーター読みにて60Km/hの定常走行で、マイク位置を前席および後席の運転席側窓寄りの耳元で、騒音計により騒音を測定することにより行い、低周波125Hzピーク及び高周波400Hzピークの周波数域での音圧レベルの差を従来例を基準として示した。
Figure 0005038766
本発明に係る実施例1〜3のタイヤでは、従来例に比べて転がり抵抗、乗り心地性を損なわずロードノイズ、特に高周波ロードノイズ低減の効果が確認された。一方、ゴム補強層のみ、あるいは有機繊維補強層のみを配置した比較例1、2ではロードノイズ低減効果が不十分であり、補強層量の多い比較例3、4,6では高周波ロードノイズの低減の改善は見られるが、転がり抵抗と乗り心地性が悪化し、低周波ロードノイズが悪化傾向を示すようになった。また、補強層量の少ない比較例5では、従来タイヤとほぼ同等性能を示した。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車を始めとして、バスやトラック、ライトトラックなどの各種車両に使用することができる。
実施形態の空気入りタイヤの半断面図である。 従来例の空気入りタイヤの半断面図である。
符号の説明
T……空気入りタイヤ
1……ビード部
4……ビードコア
5……カーカス
10……ビードベース
21……補強ゴム層
22……有機繊維コード層
H……タイヤ断面高さ

Claims (4)

  1. 一対のビード部と該ビード部に続くサイドウォール部と該両サイドウォール部の間に設けられたトレッド部とで構成され、前記ビード部間に装架された少なくとも1枚のカーカスプライが前記ビード部に埋設されたビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返し巻き上げられたカーカスを備えた空気入りタイヤにおいて、
    ビードベース側からのタイヤ断面高さの40〜65%の範囲内におけるタイヤ最大幅位置を含む部位にタイヤ径方向幅が前記タイヤ断面高さの10%以上の補強ゴム層が前記カーカスに沿ってタイヤ周方向に配され、
    記タイヤ断面高さの30〜75%の範囲に前記補強ゴム層の少なくとも一部と重なりかつ前記補強ゴム層よりもビードベース側に延びてビードフィラーの先細り部にかかるタイヤ径方向幅が前記タイヤ断面高さの20%以上の有機繊維補強層が配された
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記補強ゴム層が、JIS−A硬度70〜90にあるゴム組成物からなる
    ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記有機繊維補強層が、有機繊維コードをタイヤ径方向に対して20〜70°の範囲に配したゴム被覆層からなる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記補強ゴム層及び/又は有機繊維補強層の少なくとも一部が、前記カーカスプライ本体と該カーカス巻き上げ部の間に配された
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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