JP2006082239A - バリア性積層フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 熱可塑性樹脂の基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層を介して複合ポリマー層を有し、前記複合ポリマー層が、アルコキシシラン又はその加水分解物と、ポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーとを含有する塗工組成物を重縮合してなることを特徴とするバリア性積層フィルム。
【選択図】 図1
Description
(2) フィルムの厚さは12μmであり、40℃、相対湿度(RH)90%で24時間中にフィルムを透過した水蒸気の量である。
本発明のもう1つの目的は、かかるバリア性積層フィルムの製造方法を提供することである。
本発明のさらにもう1つの目的は、かかるバリア性積層フィルムからなる成形体を提供することである。
(1) 熱可塑性樹脂の基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層を介して複合ポリマー層を有し、前記複合ポリマー層が、アルコキシシラン又はその加水分解物と、ポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーとを含有する塗工組成物を重縮合してなることを特徴とするバリア性積層フィルム。
(2) 上記(1) に記載のバリア性積層フィルムにおいて、前記塗工組成物にさらにシランカップリング剤が含まれていることを特徴とするバリア性積層フィルム。
(3) 上記(1) 又は(2) に記載のバリア性積層フィルムにおいて、前記無機薄膜層が無機蒸着膜及び/又はゾル−ゲル法による緻密な無機コーティング膜及び/又はLPD法(液相析出法;Liquid-Phase-Deposition)による緻密な無機コーティング膜であることを特徴とするバリア性積層フィルム。
(4) 上記(1) 〜(3) のいずれかに記載のバリア性積層フィルムにおいて、前記複合ポリマー層は、アルコキシシラン及び/又はシランカップリング剤又はその加水分解物からなるポリシロキサンにポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーが脱水結合した構造を有することを特徴とするバリア性積層フィルム。
(5) 上記(1) 〜(4) のいずれかに記載のバリア性積層フィルムにおいて、前記塗工組成物がさらにアルコキシシラン以外の金属アルコキシド又はその加水分解物を1種以上含有することを特徴とするバリア性積層フィルム。
(6) (a) 熱可塑性樹脂の基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層を形成し、(b) アルコキシシラン及び/又はシランカップリング剤又はその加水分解物と、ポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーとを含有する塗工液(少なくとも部分的に重縮合している)を前記無機薄膜層に塗布し、(c) 80〜150℃でかつ前記熱可塑性樹脂の融点未満の温度に加熱することにより、前記無機薄膜層の表面に結合した複合ポリマー層を形成することを特徴とするバリア性積層フィルムの製造方法。
(7) 上記(6) に記載のバリア性積層フィルムの製造方法において、前記無機薄膜層が無機蒸着膜及び/又はゾル−ゲル法による緻密な無機コーティング膜及び/又はLPD法による緻密な無機コーティング膜からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする方法。
(8) 上記(6) 又は(7) に記載のバリア性積層フィルムの製造方法において、前記塗工液がさらにアルコキシシラン以外の金属アルコキシド又はその加水分解物を含有することを特徴とする方法。
(9) 上記(1) 〜(5) のいずれかに記載のバリア性積層フィルムからなる成形体。
(1) 基材フィルム
基材フィルムに用いる熱可塑性樹脂は特に限定されないが、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等、又はこれらの二種以上を溶融混合したものが好ましい。中でもポリエステルは十分な耐熱性及び機械的強度を有するため好適であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好適である。基材フィルムは未延伸フィルムでも、一軸又は二軸延伸フィルムでもよい。また基材フィルムを二枚以上積層したものを用いてもよい。
基材フィルムに形成する無機薄膜層は、シリカ、ジルコニア、アルミナ等からなるのが好ましい。無機薄膜層の厚さは0.001〜10μmであるのが好ましく、0.01〜1μmであるのが特に好ましい。また複数の無機薄膜層を積層することにより、さらなるガスバリア性の向上が可能である。
(i) 塗工組成物
複合ポリマー層の形成に用いる塗工組成物は、アルコキシシラン又はその加水分解物、及びポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーを必須成分とし、任意成分としてシランカップリング剤、アルコキシシラン以外の金属アルコキシド等を含有する。
アルコキシシランは、Si(OR1)4(ただしR1は炭素数1〜6の低級アルキル基である。)で表されるものが好ましい。具体的には、Si(OCH3)4 、Si(OC2H5)4が挙げられる。必要に応じて、アルコキシシランとともに、珪素以外の金属(ジルコニウム、チタン等)のアルコキシドを添加してもよい。
ポリビニルアルコールは高結晶性を持つポリマーであり、分子間の隙間が小さく、ガスとの親和性が小さいためガスバリア性が良い。ガスに対する吸着性、拡散性及び脱着性の作用の大きい極性基を有しており、その分子構造は対称性を有しているため、良好なガスバリア性を有する。
エチレン−ビニルアルコールコポリマーはエチレンとビニルアルコールとのランダムコポリマーであり、エチレン/ビニルアルコールのモル比率は20/80〜50/50であるのが好ましい。エチレン−ビニルアルコールコポリマーの添加により、複合ポリマー層のガスバリア性、耐水性、耐侯性、耐熱水性及び熱水処理(ボイル・レトルト処理)後のガスバリア性が向上する。
シランカップリング剤は、一分子中に有機官能基と加水分解基を有し、無機物と有機樹脂との接着性を向上させ、それにより複合ポリマー層のガスバリア性、耐熱水性を高めることができる。シランカップリング剤は組成式:(Y)nSiX4-n(式中、Xは加水分解性基を表し、Yは有機官能基を表す。nは0〜3の整数である。)で表される。特にエポキシ基を有するオルガノアルコキシシラン、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が好ましい。このようなシランカップリング剤は2種以上を混合して用いてもよい。シランカップリング剤の使用量は、アルコキシシラン(他の金属アルコキシドを含有する場合には、アルコキシシラン+他の金属アルコキシド)100重量部に対して1〜20重量部であるのが好ましい。20重量部超のシランカップリング剤を使用すると、形成される複合ポリマーの剛性と脆性が大きくなり、複合ポリマー層の絶縁性及び加工性が低下する。
複合ポリマー層の中の珪素原子は無機薄膜層中の金属原子と酸素を介して結合しているため、接着強度は十分に大きい。このような複合ポリマー層の厚さは0.1〜10μm程度、特に0.2〜5μm程度であるのが好ましい。複合ポリマー層は単層でも良いが、複合ポリマー層の厚さが大きすぎると乾燥時又は加熱時に無機薄膜層から剥離するおそれがあるため、膜厚を大きくしたい場合には、複数の複合ポリマー層を積層するのが好ましい。
(1) 無機薄膜層の形成
基材フィルム上に蒸着法(真空蒸着法、スパッタリング法等)、ゾル−ゲル法及びLPD法(液相析出法;Liquid Phase Deposition)等により無機薄膜層を形成する。ゾル−ゲル法は、アルコキシシランや他の金属アルコキシドを加水分解・重縮合し、得られた塗工液を基材フィルム又は成形体に塗布する方法である。LPD法は、例えば水溶液中で金属フルオロ錯体の加水分解平衡反応系(配位子置換反応)に、フッ化物イオンと容易に反応してより安定な化合物を生成するホウ酸(フッ化物イオン捕捉剤)を添加することにより、系中の遊離のフッ化物イオンとより安定な錯イオンを形成させ、上記平衡反応系を酸化物析出側ヘシフトさせて、反応水溶液に浸漬した基板上に酸化物薄膜を析出させる方法である。
アルコキシシラン又はその加水分解物、及びポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーを必須成分とし、任意成分としてシランカップリング剤、アルコキシシラン以外の金属アルコキシド等を含有する塗工組成物及び触媒を、水及び有機溶媒に溶解することにより塗工液とする。
ゾル−ゲル触媒は酸触媒及びアルカリ触媒のいずれでも良い。酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、及び酢酸、酒石酸等の有機酸が好ましい。酸の使用量は、アルコキシシラン(他の金属アルコキシドも含有する場合には、アルコキシシラン+他の金属アルコキシド)1モル当たり、0.001〜0.05モルであるのが好ましく、0.01モルであるのがより好ましい。
溶媒としては、水と金属アルコキシドが可溶な有機溶媒との混合溶媒が好ましい。水の添加量は、アルコキシシラン(他の金属アルコキシドも含有する場合には、アルコキシシラン+他の金属アルコキシド)1モルに対して0.8〜2モルが好ましく、1.5モルがより好ましい。この範囲内の水の添加量では、金属アルコキシドは実質的に直鎖状で非晶質のポリマーになる。さらに、得られるポリマー分子内に極性基(OH基)が部分的に存在し、分子の凝集エネルギーが高い。水の添加量が2モルを超すと、金属アルコキシドから得られるポリマーが球状粒子となり、さらに球状粒子同士が三次元的に架橋して低密度の多孔性ポリマーとなり、基材フィルムのガスバリア性を改善することができない。水の添加量が0.8モル未満であると、加水分解反応が進行しにくい。
塗工液を無機薄膜層の表面に塗布する。アルコキシシラン(又はアルコキシシラン及び他の金属アルコキシド)は触媒の作用により加水分解する。生成した加水分解生成物の水酸基からプロトンが奪取されることにより、加水分解生成物同士が脱水重縮合するとともに、加水分解生成物の水酸基とポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコールコポリマーの水酸基とも脱水縮合し[式(1) 及び(2) ]、Si-O-Si、Si-O-Zr、Si-O-Ti等の結合からなる無機質部分と、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコールコポリマーとが結合した三次元網目構造の重縮合物(例えば式(3) に示す直鎖状複合ポリマー)が生成する。これらの反応は常温で進行し、それにより塗工液の粘度は増大する。
本発明のガスバリア性成形体は、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層を形成し、さらに少なくとも1層の複合ポリマー層を形成した後、得られた積層フィルムを必要に応じて加熱下で適当な成形手段により所望の形状に成形したものである。あるいは予め基材フィルムを成形した後、基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層を形成し、さらに少なくとも1層の複合ポリマー層を形成したものでも良い。このようにして得られる本発明の成形体は、ガスバリア性及び耐熱水性等に優れている。
表2の配合表に従って、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH、エチレン共重合比率29モル%)をイソプロピルアルコール及びイオン交換水の混合溶媒に溶解してEVOH溶液(組成a)を作製し、下記式(4):
表3の配合表に従って、実施例1と同様に塗工液を作製した。得られた塗工液は無色透明だった。シリカ蒸着した厚さ12μmのPETフィルムのシリカ蒸着面に上記塗工液をアプリケータにより塗布し、送風乾燥炉内で100℃に30秒間加熱することにより、膜厚0.8μmの複合ポリマー層が形成された無色透明かつ高光沢のバリア性積層フィルムを得た。
(1) 無機薄膜層の形成
表4の配合表に従って、エチルシリケート40及びn-プロピルアルコールを50℃で混合し、塩酸及びイオン交換水を攪拌中に点滴した後、N,N-ジメチルベンジルアミンを加えて30分間攪拌して、加水分解・重縮合反応を進行させ、15重量%になるようにn-プロピルアルコールを加えて、シリカコーティング液を得た。
得られた無機薄膜層の上に実施例1と同じ方法で複合ポリマー層を塗工し、加熱することにより、バリア性積層フィルムを得た。複合ポリマー層の膜厚は0.4μmであり、バリア性積層フィルムは無色透明で光沢があった。このバリア性積層フィルムの酸素透過率及び透湿度を実施例1と同様に測定したところ、酸素透過率は0.01 cc/m2/24 hであり、透湿度は0.1 g/m2/24 hであった。
(1) 無機薄膜層の形成
表5の配合表に従って、ケイフッ化アンモニウムの水溶液を常温で調整し、ホウ酸を添加することによりシリカコーティング液を得た。このシリカコーティング液をPETフィルム(厚さ:12μm)に塗布し、60℃に調節しながらLPD法により二酸化珪素を生成させた。得られた膜を送風乾燥炉内で100℃に30秒間加熱し、膜厚0.4μmの無機薄膜層を得た。この無機薄膜層は、クラックがなく緻密な薄膜であり、優れた形状追随性及びガスバリア性を示した。
得られた無機薄膜層の上に実施例1と同じ方法で複合ポリマー層を塗工し、加熱することにより、バリア性積層フィルムを得た。複合ポリマー層の膜厚は0.1μmであり、バリア性積層フィルムは無色透明で光沢があった。このバリア性積層フィルムの酸素透過率及び透湿度を実施例1と同様に測定したところ、酸素透過率は0.01 cc/m2/24 hであり、透湿度は0.05 g/m2/24 hであった。
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂の基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層を介して複合ポリマー層を有し、前記複合ポリマー層が、アルコキシシラン又はその加水分解物と、ポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーとを含有する塗工組成物を重縮合してなることを特徴とするバリア性積層フィルム。
- 請求項1に記載のバリア性積層フィルムにおいて、前記塗工組成物にさらにシランカップリング剤が含まれていることを特徴とするバリア性積層フィルム。
- 請求項1又は2に記載のバリア性積層フィルムにおいて、前記無機薄膜層が無機蒸着膜及び/又はゾル−ゲル法による緻密な無機コーティング膜及び/又はLPD法(液相析出法;Liquid-Phase-Deposition)による緻密な無機コーティング膜であることを特徴とするバリア性積層フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のバリア性積層フィルムにおいて、前記複合ポリマー層は、アルコキシシラン及び/又はシランカップリング剤又はその加水分解物からなるポリシロキサンにポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーが脱水結合した構造を有することを特徴とするバリア性積層フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のバリア性積層フィルムにおいて、前記塗工組成物がさらにアルコキシシラン以外の金属アルコキシド又はその加水分解物を1種以上含有することを特徴とするバリア性積層フィルム。
- (a) 熱可塑性樹脂の基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層を形成し、(b) アルコキシシラン及び/又はシランカップリング剤又はその加水分解物と、ポリビニルアルコール及び/又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーとを含有する塗工液(少なくとも部分的に重縮合している)を前記無機薄膜層に塗布し、(c) 80〜150℃でかつ前記熱可塑性樹脂の融点未満の温度に加熱することにより、前記無機薄膜層の表面に結合した複合ポリマー層を形成することを特徴とするバリア性積層フィルムの製造方法。
- 請求項6に記載のバリア性積層フィルムの製造方法において、前記無機薄膜層が無機蒸着膜及び/又はゾル−ゲル法による緻密な無機コーティング膜及び/又はLPD法による緻密な無機コーティング膜からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする方法。
- 請求項6又は7に記載のバリア性積層フィルムの製造方法において、前記塗工液がさらにアルコキシシラン以外の金属アルコキシド又はその加水分解物を含有することを特徴とする方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のバリア性積層フィルムからなる成形体。
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