JP5606649B1 - 熱水耐性を有するガスバリアフィルム及び該フィルムを用いた医療用輸液包装材および食品包装材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 易接着コート処理がなされた基材フィルムの易接着面に、少なくとも、ガスバリア性物質を積層してなるガスバリア層と、高分子樹脂を積層してなる高分子樹脂層とを、この順で積層してなるガスバリア性フィルムであって、前記高分子樹脂が、水溶性高分子と、金属アルコキシドと、カップリング剤とを含有する塗工組成物の架橋反応により得られてなり、前記水溶性高分子が、ヒドロキシ基をアセトアセチル基で一部置換したアセトアセチル変性PVAと、ヒドロキシ基をエチレン基で一部置換したエチレン変性PVAとを混合したものであることを特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルムと該フィルムを用いた医療用輸液包装材および食品包装材を提供する。
【選択図】 なし
Description
本願発明に係る熱水耐性を有するガスバリアフィルムに関して、第1の実施の形態として説明する。
まず基材フィルムであるが、これは従来ガスバリアフィルムにおいて周知に用いられる樹脂フィルムを用いれば良い。好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、あるいはこれらの複合フィルム状物、等である。本実施の形態においてはPETフィルムを用いることとする。
本実施の形態に係るガスバリア層としては、従来ガスバリアフィルムにおいて周知に用いられるガスバリア性物質を用いれば良いが、好ましくはケイ素、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、の一群よりなる群の何れか1つ若しくはその酸化物、窒化物、又は化合物若しくはそれらの混合物の何れか、又は前記一群の中の複数若しくはその酸化物、窒化物、又は化合物若しくはそれら混合物の何れか、である。さらに具体的に述べるならば、例えばケイ素を用いても良く、また酸化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ素化合物でも良く、更に酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物であっても良い。またスズとインジウムの合金の酸化物や窒化物であっても良い。即ちこれら一群の金属を原材料とした物質によるガスバリア層とすれば良い。本実施の形態では酸化ケイ素を用いることとする。
本実施の形態に係る高分子樹脂は、水溶性高分子と、金属アルコキシドと、カップリング剤とを含有する塗工組成物を架橋反応させることにより得られる。このような成分を架橋反応させることによってより強固な膜とすることができる。
未変性PVAは架橋反応によって強固な膜となるため、ガスバリア性物質として広く用いられているが、高湿度条件下ではガスバリア性、特に水蒸気バリア性が著しく且つ容易に低下してしまう。これは、未変性PVAのみではヒドロキシ基のみでの反応となるが、全てのヒドロキシ基が反応するわけではないため架橋が強固でなく、熱水処理により容易に架橋が外れてしまうためである。
易接着コート処理がなされた基材フィルムとして、東洋紡(株)社製:商品名「UV402」(片面易接着コートフィルム)を用いることとする。
高分子樹脂の水溶性高分子としては、完全けん化型PVAにおいてヒドロキシ基が3%アセトアセチル基に置換されたアセトアセチル変性PVA、完全けん化型PVAにおいてヒドロキシ基が3%エチレン基に置換されたエチレン変性PVA、および完全けん化型PVAより各水準において選択したPVAを所定の比率で混合したものを用いることとする。金属アルコキシドとしてはエチルシリケートを、カップリング剤としてはシランカップリング剤を用いることとする。また、加水分解触媒として3%希塩酸、脱水反応触媒として東京化成工業(株)製のN,N−ジメチルベンジルアミン、熱硬化触媒として日本化学産業(株)製のナーセムAl、架橋剤として日本合成化学工業(株)製のSafelink SPM−02を用いることとする。
表1の配合表に示された配合比に従って高分子樹脂の調製を行う。まず、エチルシリケート、シランカップリング剤、イソプロピルアルコール(IPA)、3%希塩酸、N,N−ジメチルベンジルアミンを順に混合して、エチルシリケートとシランカップリング剤の加水分解溶液を調製したものを水/IPA混合溶液で必要固形分に希釈し、ナーセムAlを混合・撹拌してA液を得た。次に、各水準で選択したPVAを必要固形分となるよう水に分散し、温浴で加温・撹拌して水溶性高分子溶液を得た。該水溶性高分子溶液を自然降温させた後、あらかじめ3%希塩酸により加水分解させたシランカップリング剤と、Safelink SPM−02を混合・撹拌してB液を得た。上記で得られたA液とB液とを混合・撹拌し、目的の塗工液を得た。表中の数字は重量比であり、PVA重量比は用いたPVAの合計である。
基材フィルムの易接着コート処理面に、ガスバリア層として真空蒸着法を用いて酸化ケイ素を30nm形成した。ガスバリア層の表面に、高分子樹脂をバーコーター法により塗布し、乾燥させて0.4μmの高分子樹脂層を形成し、目的とするガスバリアフィルムを得た。水溶性高分子としてはアセトアセチル変性PVAとエチレン変性PVAを用い、各PVAの固形分の重量%濃度比は、アセトアセチル変性PVA/エチレン変性PVA=3/1とする。
高分子樹脂におけるPVAの固形分の重量%濃度比が、アセトアセチル変性PVA/エチレン変性PVA=1/1となるようにした以外は、実施例1と同様にして目的とするガスバリアフィルムを得た。
高分子樹脂におけるPVAの固形分の重量%濃度比が、アセトアセチル変性PVA/エチレン変性PVA=1/3となるようにした以外は、実施例1と同様にして目的とするガスバリアフィルムを得た。
基材フィルムの易接着コート処理面に、ガスバリア層として真空蒸着法を用いて酸化ケイ素の混合膜を30nm形成し、目的とするガスバリアフィルムを得た。
水溶性高分子として未変性の完全けん化型PVAのみを使用する以外は、実施例1と同様にして目的とするガスバリアフィルムを得た。
水溶性高分子としてアセトアセチル変性PVAのみを使用する以外は、実施例1と同様にして目的とするガスバリアフィルムを得た。
水溶性高分子としてエチレン変性PVAのみを使用する以外は、実施例1と同様にして目的とするガスバリアフィルムを得た。
水溶性高分子としてアセトアセチル変性PVAと未変性の完全けん化型PVAを用い、その固形分の重量%濃度比を、アセトアセチル変性PVA/未変性PVA=1/1とする以外は、実施例1と同様にして目的とするガスバリアフィルムを得た。
水溶性高分子としてエチレン変性PVAと未変性の完全けん化型PVAを用い、その固形分の重量%濃度比を、エチレン変性PVA/未変性PVA=1/1とする以外は、実施例1と同様にして目的とするガスバリアフィルムを得た。
上記サンプルの水蒸気透過度および酸素透過度について、「カップ法(JIS Z 0208)」により測定した。次に得られたサンプルを125℃の熱水に30分間浸漬し、その後の水蒸気透過度および酸素透過度についても同様に測定した。その結果はそれぞれ表中の酸素透過度は「OTR」、水蒸気透過度は「WVTR」とした欄に記載する。
上記サンプルの片端を固定し、オートグラフ((株)島津製作所社製、型番:AGS−100A)を使用して他端を引っ張り、サンプルが剥離した際の荷重(N/15mm)を測定し、その境界面における密着性について評価を行った。測定方法は T型剥離:引張速度300mm/min によるものとした。また、ガスバリア性試験で行った熱水処理を行ったものについても同様に測定した。サンプルその結果はそれぞれ表中の「密着」とした欄に記載する。ちなみに表中の「密着」における「3<」「4<」とは、サンプルが層間で剥離せずに3N/15mmまたは4N/15mmで破断してしまい、境界面の密着力が測定不能であったことを示す。即ち、該水準の層間密着力は3N/15mmまたは4N/15mm以上ということになる。
比較例1においては酸素透過度が熱水処理前後共に条件を満たしていない。未変性PVAのみによる高分子樹脂層を設けた比較例2においては、熱水処理前の酸素透過度、水蒸気透過度については改善したが、熱水処理後の酸素透過度、水蒸気透過度、密着強度全てにおいて劣化しており、未変性PVAでは耐熱水性が不足していることが分かる。また、水溶性高分子としてアセトアセチル変性PVAのみを用いた比較例3においては、酸素透過度は改善したが熱水処理後の密着強度が劣化している。水溶性高分子としてエチレン変性PVAのみを用いた比較例4では、酸素透過度、水蒸気透過度、密着強度全てにおいて熱水処理により劣化している。未変性PVAと変性PVAを混合した比較例5および比較例6においても同様に熱水処理後において、要求される酸素透過度、水蒸気透過度、密着強度は得られていない。これらに対し、実施例1ないし実施例3においては、酸素透過度、水蒸気透過度、密着強度全てにおいて熱水処理の前後で良好な結果を示している。即ち、良好なガスバリア性を保持したまま密着強度も維持しており、ガスバリア層のみのガスバリアフィルムや、未変性PVAや変性PVAのみ、または未変性PVAと変性PVAの混合物を水溶性高分子として用いたガスバリアフィルムと比較して、本願発明のガスバリアフィルムは高度な耐熱水性を有していることが分かる。
Claims (8)
- 易接着コート処理がなされた基材フィルムの易接着面に、少なくとも、
ガスバリア性物質を積層してなるガスバリア層と、
高分子樹脂を積層してなる高分子樹脂層とを、この順で積層してなるガスバリア性フィルムであって、
前記高分子樹脂が、水溶性高分子と、金属アルコキシドと、カップリング剤とを含有する塗工組成物の架橋反応により得られてなり、
前記水溶性高分子が、ヒドロキシ基をアセトアセチル基で一部置換したアセトアセチル変性ポリビニルアルコールと、ヒドロキシ基をエチレン基で一部置換したエチレン変性ポリビニルアルコールとを混合したものであること、
を特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルム。 - 請求項1に記載の熱水耐性を有するガスバリアフィルムであって、
前記水溶性高分子が、前記アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(a)と前記エチレン変性ポリビニルアルコール(b)とを、固形分比が(a)/(b)=3/1〜1/3となるような範囲で混合したものであること、
を特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルム。 - 請求項1または請求項2に記載の熱水耐性を有するガスバリアフィルムであって、
前記金属アルコキシドが、一般式M(OR)n(Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数)で表されるものであること、
を特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルム。 - 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の熱水耐性を有するガスバリアフィルムであって、
前記カップリング剤が一般式YMRm(OR)n−1−m(ただし、Yは反応性官能基、Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数、mは0以上で(n−1)より小さい整数)で表される各種カップリング剤の1種または複数であること、
を特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルム。 - 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の熱水耐性を有するガスバリアフィルムであって、
前記易接着コート処理が、インラインコートによりなされること、
を特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルム。 - 請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の熱水耐性を有するガスバリアフィルムであって、
前記ガスバリア性物質が、ケイ素、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、の一群よりなる群の何れか1つ若しくはその酸化物、窒化物、または化合物若しくはそれらの混合物の何れか、または前記一群の中の複数若しくはその酸化物、窒化物、または化合物若しくはそれら混合物の何れか、であること、
を特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルム。 - 請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の熱水耐性を有するガスバリアフィルムの積層面に、ポリアミドフィルムと、シーラントフィルムとを、接着剤を介して積層してなること、
を特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルム積層体であって、
前記積層体のガスバリア性が、水蒸気透過度1g/m2・day以下、酸素透過度0.1cc/m2・day・atm以下であり、
且つ、前記積層体を温度125℃の熱水で30分間の熱水処理を行った後のガスバリア性が、水蒸気透過度1.6g/m2・day以下、酸素透過度0.5cc/m2・day・atm以下であり、
且つ、300mm/minの剥離速度でT型剥離を行ったとき、上記各層の剥離強度が3N/15mm以上であること、
を特徴とする、熱水耐性を有するガスバリアフィルム積層体。 - 請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の熱水耐性を有するガスバリアフィルムおよび熱水耐性を有するガスバリアフィルム積層体を用いてなる医療用輸液包装材又は食品包装材。
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