JP7040038B2 - ガスバリア積層体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、包装体に用いられるガスバリア積層体に関する。
食品、医薬品等の包装には機密性が高く、水分や酸素による内容物の劣化を防ぐために各種プラスチックフィルムや金属箔、紙などの材質を用いた包装用材料が開発されている。特に、食品・医薬品用途において長期間保存可能な包装形態として、レトルトやボイルなどの加熱殺菌処理を行ったレトルト包装やボイル包装が一般的に行われている。レトルト・ボイル用包材に要求される特性として、各種ガスバリア性、耐熱水性、保香性、耐変色性、耐衝撃性、耐圧性、突き刺し耐性、屈曲耐性などが挙げられ、加熱処理条件や内容物に適したラミネート構成が設計される。
そのような包装材料の一例として、例えば耐熱水性や保香性、印刷適性等を付与するために二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)フィルムを基材とし、耐衝撃性や突き刺し耐性を付与するために二軸延伸ナイロン(以下、ONYと称する)フィルム、バリア性を付与するガスバリア層としてアルミニウム(Al)箔、もしくは蒸着膜を積層し、まずガスバリアフィルムを作製する。
さらに、ヒートシール性を付与するために耐熱グレードの未延伸ポリプロピレン(以下CPPと称する)フィルムやポリエチレンフィルム等をシーラントとして、接着剤を塗布した前記ガスバリアフィルムとドライラミネート法で貼り合わせ、ガスバリア積層体とすることにより加熱処理に適した包装材が得られる。
レトルト処理は、一般に食品等を保存するために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加圧殺菌する方法である。通常は、食品を包装したガスバリア積層体包装材を、105~140℃、0.15~0.30MPaで10~120分の条件で加圧殺菌処理をする。レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式と加圧加熱水を利用する熱水式があり、内容物となる食品等の殺菌条件に応じて適宜使い分ける。
ボイル処理は、食品等を保存するため湿熱殺菌する方法である。通常は、内容物にもよるが、食品等の包装したガスバリア積層体包装材を、60~100℃、大気圧下で、10~120分の条件で湿熱殺菌処理を行う。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて100℃以下で処理を行う。方法としては、一定温度の熱水槽の中に浸漬し一定時間処理した後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中をトンネル式に通して処理する連続式がある。
例えば、レトルト処理の熱水加圧殺菌処理としては、105℃~130℃、圧力0.10~0.30MPa、処理時間10~60分の条件で熱水加圧殺菌処理をするために、ガスバリア積層体包装材のラミネート構成として、外側よりPET/Al/ONY/CPP、PET/ONY/Al/CPP、PET/蒸着層/ONY/CPPが使用される。このように、PETフィルムとONYフィルムの併用が一般的に行われる。
他方、特許文献1には、ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと称する)を用いることで、PBT/Al/CPP構成のレトルト包材への展開が提案されている。また、レトルト処理後のガスバリア性を向上するためにポリ(メタ)アクリル酸やポリビニルアルコールに代表される、分子内に親水性の高い高水素結合性基を含有する重合体が用いられているが、乾燥条件下においては非常に優れた酸素等のガスバリア性を有する一方で、高湿度条件下においては、その親水性に起因して酸素等のガスバリア性が大きく低下する問
題や、湿度や熱水に対する耐性が劣る問題があった。
一方、フィルム基材にガスバリア性を付与する方法として、金属酸化物等の無機化合物からなる無機蒸着層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、無機蒸着層のフィルム基材への密着性を高めるため、フィルム基材と無機蒸着層との間にプライマー層を設けることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、更なる高バリア性及び耐水性、耐湿性を付与するために、無機蒸着層上にガスバリア性被覆層を設けることが提案されている。例えば特許文献4では、無機蒸着層上に水溶性高分子と、I)1種類以上の金属アルコキシドまたは金属アルコキシド加水分解物、あるいはII)塩化錫を含む、水溶液、または水アルコール混合溶液とを主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱、乾燥してなるガスバリア性被覆層を第2層として順次積層したガスバリア性包材を設ける手法が記載されている。
しかし、無機蒸着層を備えるガスバリア性積層体は、加熱処理により無機蒸着層等のバリア層の材質の劣化が起こることで層間の密着性が低下しやすく、レトルト処理、ボイル処理、加熱調理等の加熱処理を行うと、無機蒸着層のデラミネーションが生じ、ガスバリア性が低下することがある。また、無機蒸着層は、無機化合物からなるため脆く、延伸、屈曲等によりガスバリア性フィルムに応力(虐待)を加えると、無機蒸着層がダメージを受け、ガスバリア性が低下しやすい。
特開2012-214248号公報 特許第3448872号公報 特許第3736130号公報 特許第2790054号公報
既述のように、加熱処理、特にレトルト処理に関しての包装材構成としては、一般的にPETフィルムとONYフィルムの両者が併用されている。これは、PETフィルムの耐熱水性が高い長所である一方、突刺強度は低い短所があり、ONYフィルムは突刺強度が高い長所である一方、耐熱水性は低い短所があるため、お互いに長所短所を補完して用いるためである。しかし、PETとONYの両者を用いるためラミネート工程が増えて、環境負荷への影響が懸念され、コスト面からも改善が求められている。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、本発明の課題とするところは、長所補完のためにPETとONYの両方の層を用いることなく、レトルト処理等の熱水処理を行っても優れたガスバリア性を維持することができるとともに、突刺強度、及び物理衝撃に対する強度にも優れたガスバリアフィルムを提供することである。
上記課題を解決するために、本発明に係る第一の発明は、ガスバリア積層体の製造方法であって、
ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルム基材の一方の面に、金属酸化物からなる蒸着層を形成する蒸着層形成工程と、
前記金属酸化物からなる蒸着層の上に、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシド又はその加水分解生成物を少なくとも含むガスバリア被膜層を形成するガスバリア被覆層形成工程を備え、
前記ガスバリア被覆層形成程は、当該ガスバリア被覆層形成用塗液を前記金属酸化物からなる蒸着層上に、搬送の際に前記フィルム基材のフィルム走行方向(MD方向)にかかる張力70N/m未満として塗布し、乾燥温度80℃未満とするコーティング加工工程であることを特徴とするガスバリア積層体の製造方法である。
また第二の発明は、請求項1記載のガスバリア積層体の製造方法であって、
前記蒸着層形成工程の前に、アンカーコート剤を含有する密着層を形成する密着層形成工程を備えることを特徴とするガスバリア積層体の製造方法である。
また第三の発明は、前記ガスバリア積層体に50℃~150℃の温度で10N/m~70N/mの張力をかけたときのフィルム走行方向(MD方向)の伸び率Y(下記数式1)が30%以下である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア積層体の製造方法である。
伸び率Y=((所定の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ)-(室温で張力をかけていないときの長さ))/(所定の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ) ・・・(数式1)
第四の発明は、前記金属酸化物からなる蒸着層を積層したフィルム形状において、10N/m~70N/mの張力をかけたときのフィルム走行方向(MD方向)の前記伸び率Yが、任意のフィルムにかかる温度X(℃)、張力Z(N/m)により、下記数式2で示される伸び率Y’に対して、Y≦Y’となることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法である。
伸び率Y’(%)=0.8×(フィルムにかかる温度X(℃)-50)×(0.9×(張力Z(N/m)-5)/40) ・・・(数式2)
本発明に係るガスバリア積層体により、耐熱水性、物理衝撃に対する強度(突刺、落錘、落袋等)が高く、レトルト処理、ボイル処理、加熱調理等を行っても優れたガスバリア性を維持することのできるガスバリア積層体が可能となった。
本発明に係るガスバリア積層体の一様態を示した模式断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面をもって説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るガスバリア積層体10は、フィルム基材1の一方の面上に、密着層2と、金属酸化物からなる蒸着層3と、ガスバリア性被膜層4とを含んでいる。なお、本発明において、密着層2は必須構成ではなく、フィルム基材1と蒸着層3との密着性が充分であれば密着層2は省略が可能である。
また、包装体関連の用語として「フィルム」と「シート」とは厚さに応じて使い分けることがあるが、ここでは厚さとは無関係に「フィルム」という用語を使用する。
(フィルム基材)
フィルム基材1は、ブチレンテレフタレート(PBT)単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するものである。
ここで、ブチレンテレフタレート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂とは、該樹脂のジカルボン酸成分とグリコール成分が結合してなる繰り返し単位の60質量%以上がブチレンテレフタレート単位からなることを意味している。
フィルム基材1に含まれる上記ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレートを60質量%以上含むポリブチレンテレフタレート、もしくはポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの混合材料であることが好ましい。ポリブチレンテレフタレートが60質量%未満であるとインパクト強度及び耐ピンホール性が低下してしまい、フィルム特性としては十分なものでなくなってしまう。また、フィルム基材1は二軸延伸でも一軸延伸でもよいが、熱安定性を持たせるためには二軸延伸がより好ましい。
また、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの混合材料であるポリエステル樹脂を用いることによって、突刺強度も向上する。例えば特開2002-179892号公報によると、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主とするポリエステル樹脂とポリブチレンテレフタレート(PBT)を主とするポリエステル樹脂のブレンドフィルムでありながら、PET相とPBT相が独立した結晶を有することで、耐熱水性を持ちながら、柔軟性も兼ね備えることで突刺強度が強いポリエステルフィルムを得ることができるとされている。
前記独立した結晶を得るためには、ポリエステルフィルムを作製するときに個別に融解することが必要であり、示差走査熱量計(DSC)にて個別に結晶融解ピークを検出することで確認することができる。PBT相の結晶ピークが低温側に出現し、続いてPET相の結晶ピークが出現する。この2つのポリエステル樹脂、PETとPBTを用いることにより、ガラス転移が融合する程度の相溶性を確保しながら、個別に結晶融解が生じるためPET相、PBT相の利点を生かすことができる。
フィルム基材1の厚さは、特に限定されない。厚いほど突刺強度は向上するが、用途に応じて、6μm~200μm程度のものを好適に使用することができる。このフィルム基材1には、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理、または易接着層などのアンカーコート層を設けてもよい。また別途、フィルム基材の凹凸を低減するために平坦化層を施しても差し支えない。
(密着層)
密着層2は、透明プラスチック材料からなるフィルム基材上に設けられ、フィルム基材1と無機蒸着層3の密着性能向上と、平面を平滑にすることで次工程の蒸着層を欠陥なく均一に成膜し高いバリア性を発現することの、二つの効果を得ることを目的とした層であって、アンカーコート剤を含有する層である。
このような密着層2としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらのアンカーコート剤の中でも、耐熱性及び層間接着強度の観点から、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
また、このような密着層2の厚さは特に限定されないが、この厚みが0.01~5μmの範囲であることが好ましく、0.03~3μmの範囲であることがより好ましく、0.05~2μmの範囲であることが特に好ましい。密着層2の厚みが前記下限値未満では、層間接着強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると所望のガスバリア性が発現しない傾向にある。
また、密着層2を前記フィルム基材1上に塗工する方法としては、公知の塗工方法が特に制限なく使用可能であり、浸漬法(ディッピング法);スプレー、コーター、印刷機、刷毛等を用いる方法が挙げられる。また、これらの方法に用いられるコーター及び印刷機の種類並びにそれらの塗工方式としては、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、オフセットグラビア方式等のグラビアコーター、リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、チャンバードクター併用コーター、エアナイフコーター、ディップコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター等を挙げることができる。
さらに、このような密着層2の塗布量としては、アンカーコート剤を塗工して乾燥した後の1mあたりの質量が0.01~5g/mであることが好ましく、0.03~3g/mであることがより好ましい。アンカーコート剤を塗工して乾燥した後の1mあたりの質量が前記下限未満では、成膜が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると乾燥が不十分で溶剤が残留しやすくなる傾向にある。
また、このような密着層2を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、前記コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等を用いる方法を挙げることができる。さらに、乾燥の条件としては、乾燥させる方法により適宜選択することができ、例えばオーブン中で乾燥させる方法においては、温度60~100℃にて、1秒間~2分間程度乾燥することが好ましい。
アンカーコート層や平坦化層のためのコーティング剤としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらのコーティング剤の中でも、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
(蒸着層)
金属酸化物からなる蒸着層3は、フィルム基材1上に気相堆積法によって形成されたガスバリア性の透明な層である。蒸着層3の材料としては、たとえば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化マグネシウム、又はこれらの混合物を使用することができるが、好ましくは酸化珪素あるいは酸化アルミニウムが望ましい。
蒸着層3の形成には、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、またはプラズマ気相堆積法を利用することができる。真空蒸着法を利用する場合、蒸発材料の加熱手段としては、たとえば、電子線加熱、抵抗加熱、または誘導加熱の方式を利用することができる。電子線加熱方式を利用した場合、蒸発材料の選択の自由度が大きい。蒸着の際に、プラズマアシスト法またはイオンビームアシスト法を利用すると、より緻密な蒸着層3を形成することができる。また、蒸着の際に、酸素などのガスを吹き込む反応蒸着を利用すると、透明性に優れた蒸着層3を形成することができる。
蒸着層3の厚さは、厚みが薄い場合は蒸着層3を均一な連続膜として形成することが難しく、また十分なガスバリア性が得られない。厚みが厚い場合は、柔軟性が低く、透明なガスバリア積層体10を撓ませた場合や引っ張った場合に亀裂を生じる可能性がある。また、気相堆積法は、経済的観点からは厚膜の形成には適していない。蒸着層3の厚さは、たとえば、5nmから500nmの範囲内とする。
(ガスバリア性被膜層)
ガスバリア性被膜層4は、蒸着層3上に形成された透明な膜であり、透明樹脂と無機酸化物などの無機物とを含んだ混合物からなる。ガスバリア性被膜層4を設けると、より高いガスバリア性を有する透明ガスバリア積層体10を得ることができる。ガスバリア性被膜層4は、たとえば、金属酸化物からなる蒸着層3上に水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシド又はその加水分解生成物を含む水溶液あるいは水・アルコール混合溶液を主成分としたコーティング液を塗布、乾燥することで得ることができる。
水溶性高分子としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリ
ウム、またはそれらの混合物を使用することができる。特に、PVAを使用した場合、最もガスバリア性に優れたガスバリア性被膜層4を形成することができる。なお、ここでいうPVAとは、典型的には、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られるものである。
このPVAとしては、アセチル基が数10%残存している部分鹸化PVAからアセチル基が数%しか残存していない完全PVAまで様々な鹸化PVAを使用することができる。PVAの分子量に制限はなく、たとえば、重合度が300から数千の範囲内にあるものを使用することができる。なお、一般に鹸化度が高く、かつ重合度が高い高分子量のPVAは優れた耐水性を得ることができる。
金属アルコキシドは、一般式M(OR)nで表される化合物である。ここで、MはTi,Al,Zr等の金属またはSiを示し、RはCH基 ,C基 等のアルキル基を示している。また、nは、元素Mの価数を示している。
金属アルコキシドとしては、たとえば、テトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムは加水分解後、水を含んだ溶液中で比較的安定に存在することができる。
金属アルコキシドとしてアルコキシシランを使用する場合、このアルコキシシランとしては、たとえば、Si(ORまたはRSi(ORで表される化合物またはそれらの混合物を使用することができる。ここで、RおよびRはCH基,C基,COCH基などの加水分解性基を示し、Rは有機官能基を示している。
なお、金属アルコキシドを加水分解および縮合させることにより得られる金属酸化物膜は硬いため、外力や縮合時の体積縮小によるひずみに起因してクラックが生じ易い。それゆえ、クラックなどを生じることなく、この金属酸化物膜を均一な厚さに形成することは非常に困難である。
これに対し、高分子と金属アルコキシド及び/またはその加水分解物と水とを含有したコーティング液を用いて形成した膜は、金属酸化物膜と比較して柔軟性が高いため、クラックを発生しがたい。但し、この膜は、微視的には金属酸化物が均一に分散しておらず、高いガスバリア性が得られないことがある。
この高分子として、水溶性高分子を使用した場合には、高分子の水酸基と金属アルコキシドの加水分解物の水酸基との強い水素結合を利用して、縮合の際に金属酸化物を高分子中に均一に分散させることができる。それゆえ、金属酸化物膜に近いガスバリア性を達成することができる。したがって、このようなガスバリア性被膜層4を蒸着層3上に形成すると、それらを単独で使用した場合と比較して、はるかに高いガスバリア性を達成することができる。
しかしながら、上述の金属アルコキシド及び/又はその加水分解生成物と水酸基を有する水溶性高分子と水とを含有したコーティング液を用いて得られるガスバリア性被膜層4は、水素結合を形成しているため、苛酷な環境で使用した場合に、水の浸入により膨潤して、最終的には溶解を生じることがある。そのため、このガスバリア積層体10は、蒸着層3とガスバリア性被膜層4とを積層することにより、高いガスバリア性を達成することができたとしても、高温多湿環境などの過酷な条件下では、密着性やガスバリア性が容易に劣化する可能性がある。
これに対し、金属アルコキシドとして、たとえば、RSi(ORで示されるアルコキシシランを使用すると、水が浸入した場合でも膨潤しがたく、耐水性に優れたガス
バリア性被膜層4を得ることができる。特に、有機官能基Rが、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、およびイソシアネート基などの非水溶性官能基である場合、より高い耐水性を達成できる。有機官能基Rが、ビニル、メタクリロキシである場合は製造過程で紫外線または電子線等の電離放射線の照射を行なう。また、金属アルコキシドの加水分解の反応促進剤として、一般に水と触媒(酸、アルカリ)を用いる。
また、金属アルコキシドとして、たとえば、Si(ORで示されるテトラアルコキシシランを使用すると、水が浸入した場合でも膨潤しがたく、耐水性に優れ、非常に高いバリア性を有するガスバリア性被膜層4を得ることができる。特に、加水分解性基R1が、CH3基,C2H5基である場合、より高い耐水性・優れたバリア性を達成できる。また、金属アルコキシドの加水分解の反応促進剤として、一般に水と触媒(酸、アルカリ)を用いる。
金属アルコキシドが、一般式Si(ORで表されるテトラアルコキシシランと一般式RSi(ORで表されるトリアルコキシシランの2種を使用する場合、これらのアルコキシシランの比は、たとえば、Si(ORのSiO換算質量とRSi(ORのRSi(OH)換算質量との和に対するRSi(ORのRSi(OH)換算質量の割合が、1%から50%の範囲内となるように設定してもよい。1%より小さくすると耐水性が低くなり、50%を超えると有機官能基R2がガスバリアの孔となり、ガスバリア性が低下する。
一般式Si(ORで表されるテトラアルコキシシランと一般式RSi(ORで表されるトリアルコキシシランとの混合比は、上述の割合が、5%から30%の範囲内となるように設定してもよい。この場合、液体内容物または水分含有内容物を煮沸殺菌処理や加圧・加熱殺菌処理し、さらに高温多湿環境中で長期保存するのに十分な耐水性およびハイバリア性を達成することができる。
一般式Si(ORで表されるアルコキシシランのうち、テトラエトキシシランは加水分解生成物が水系の溶媒中で比較的安定に存在しうるため、これを使用した場合、製造条件の制御が比較的容易である。
ガスバリア性被膜層4を形成するコーティング液の各成分である、一般式Si(ORで表されるアルコキシシランと一般式RSi(ORで表されるアルコキシシランと水溶性高分子は、どの順番で混合してもよい。たとえば、一般式Si(ORで表されるアルコキシシランと一般式RSi(ORで表されるアルコキシシランとを別々に加水分解し、その後、水溶性高分子を含んだ溶液中にこれらを添加してもよい。この方法は、シリコン酸化物の分散性や加水分解の効率の点で優れている。
ガスバリア性被膜層4を形成するためのコーティング液には、ガスバリア性被膜層4のインキまたは接着剤に対する濡れ性の向上や密着性の向上、ガスバリア性被膜4の収縮によるクラック発生の防止などを考慮して、添加物を添加してもよい。この添加物としては、たとえば、イソシアネート化合物、コロイダルシリカ、スメクタイトなどの粘土鉱物、安定化剤、着色剤、レオロジー調整剤、及びそれらの混合物を使用することができる。
ガスバリア性被膜層4の厚みは、厚みが薄い場合ガスバリア性被膜層4を均一な連続膜として形成することが難しく、十分なガスバリア性が得られない。厚みが厚い場合は膜に亀裂を生じ易い。ガスバリア性被膜層4の厚さは、たとえば、0.01μmから50μmの範囲内とする。
ガスバリア性被膜層4を形成するためのコーティング液は、たとえば、ディッピング法
、ロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等により塗布することができる。このコーティング液を塗布してなる塗膜は、たとえば、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、高周波照射法、赤外線照射法、UV照射法、またはそれらの組み合わせにより乾燥させることができる。
また、前記ガスバリア性被膜層4の上にシーラント層(図示せず)を備えることで、より実用性の高い包装材料とすることができるガスバリア積層体を提供することができる。シーラント層は、袋状包装体などを形成する際の接着部に利用されるものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。
ガスバリア性被膜層4の厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15~200μmの範囲である。また、包装体の形状により基材側にシーラント層を設ける構成、両側に設ける構成である場合もある。
前記金属酸化物からなる蒸着層3を積層したフィルム形状において、任意の温度で10N/m~70N/mの張力をかけたときのフィルム走行方向(MD方向)の伸び率Y(数式1)が、30%以下である必要がある。
伸び率Y=((任意の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ)-(室温で張力をかけていないときの長さ))/(任意の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ) ・・・(数式1)
PBTフィルムは温度に依存して、高温ほどフィルムの伸び率が高くなる。一方、蒸着層はフィルムが伸びると割れてバリアが発現しない。蒸着層3の上に積層するガスバリア性被膜層4のコーティング液を塗工、乾燥する際の、乾燥オーブン内の温度、張力によっては、蒸着層が割れてバリア性、特に水蒸気バリア性が発現しない。
本発明者らが鋭意研究の結果、ロールコーティングにおいて、蒸着層3を割らずに、ガスバリア性被膜層4をコーティングする際の張力および乾燥条件は、前記金属酸化物からなる蒸着層3を積層したフィルム形状における伸び率のパラメータで規定できることがわかった。
すなわち、任意の温度で10N/m~70N/mの張力をかけたときのフィルム走行方向(MD方向)の伸び率Y(数式1)が、30%以下である必要がある。
((任意の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ)-(室温で張力をかけていないときの長さ))/(任意の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ) ・・・(数式1)
伸び率Yは、好ましくは15%以下であることが望ましい。ガスバリア性被膜層4のコーティングの際の張力条件において、加工のマージンを広く設定することが可能である。
伸び率Yは低ければ低いほど蒸着層を割らずにコーティングによってガスバリア性被膜層4を積層することが出来るが、伸び率が低くなると突刺強度、及び物理衝撃に対する強度が落ちるため、突刺強度、及び物理衝撃を確認して設定する必要がある。
伸び率Yの測定方法としては、熱機械分析(TMA)が用いられる。TMAは試料に非振動的荷重(一定荷重)をかけながらの温度に対する変形を計測する手法である。荷重および温度は次工程で実施されるロールコーティング加工時の張力および乾燥温度を想定し
て測定条件を選定できる。
例えば、ガスバリア性被膜層4の形成を、60N/mの張力でフィルムを搬送させ、コーティング液の乾燥を80℃で実施する場合を想定する。
乾燥温度は、乾燥機の設定温度ではなくフィルムに実際にかかる温度を指す。例えば、ヒートラベル(示温素子を紙ラベルに特殊加工し、表面には指示温度が印刷され、裏面は、耐熱性粘着剤が塗布された、温度測定シール)等をフィルムに貼り付けたまま、前述のコーティング液を塗布、乾燥させた後に示される温度である。
ロールコーティングを想定して、日立ハイテクサイエンス製(TA700)において、蒸着層を積層したフィルムをフィルム幅4mmで荷重2Nの荷重をかけた状態で50℃~150℃まで温度を可変させたときのフィルムの伸び率Yを測定した場合、80℃でのフィルム伸び率Yが30%を超えるフィルムでは、上述のロールコーティング条件では、蒸着層が割れてバリア性が発現しない。
一方、同じ蒸着層3を積層したフィルムでも、乾燥温度が低くなれば伸び率は低くなる。乾燥温度を50℃と設定して、フィルム伸び率Yが30%以下となれば、蒸着層は割れずにバリア性を発現する。
また、同じ蒸着層3を積層したフィルムでも、張力が低くなれば伸び率は低くなる。フィルム幅4mmで荷重0.4Nの荷重をかけた状態で50℃~150℃まで温度を可変させたときのフィルムの伸び率Yを測定した場合、同じフィルムでも、乾燥温度80℃でのフィルム伸び率Yが30%以下となれば、蒸着層3は割れずにバリア性を発現する。
温度と張力によりフィルム伸び率の関係は以下の式に当てはめられ、さらに伸び率Yが下記数式2で表される伸び率Y’以下であれば、蒸着層3はコーティングによって割れずにバリア性を発現する。
前記金属酸化物からなる蒸着層3を積層したフィルム形状において、10N/m~70N/mの張力をかけたときのフィルム走行方向(MD方向)の伸び率Y(数式1)が、任意のフィルムにかかる温度X(℃)、張力Z(N/m)に従い、数式2で示される伸び率Y’以下となる、即ちY≦Y’となることが好ましい。
伸び率Y’(%)=0.8×(フィルムにかかる温度X(℃)-50)×(0.9×(張力Z(N/m)-5)/40)・・・(数式2)
蒸着層3を積層したフィルムの伸び率Yを調整する方法として、フィルムの厚みを厚くすれば、伸び率は低くすることが可能である。また、基材であるPBTフィルムのフィルム製膜方法や延伸方法によってもフィルムの伸び率Yの調整が可能である。
また密着層2の厚みや選定される樹脂成分によっても伸び率Yの調整が可能である。また密着層2をコーティングにより積層する際の張力や乾燥温度によってフィルム基材をアニール処理化することにより蒸着層を積層する前にフィルムの伸び率Yを調整することも可能である。
シーラント層の形成方法としては、上述の樹脂からなるフィルム状となるものを一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤で貼りあわせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼りあわせるノンソルベントドライラミネート法、上述した樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼りあわせるエキストルージョンラミネート法等いずれも公知の積層方法により形成することができるが、後述する熱水加熱処理、特に120℃以上の高温熱水処理に対して好ましいのはドライラミネート法である。85℃以下の温度での処理であれば、ラミネート方式を問わず用いることは可能である。
加熱殺菌処理方法として、レトルト処理、ボイル処理などが挙げられる。レトルト処理は、一般に食品等を保存するために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加圧殺菌する方法である。通常は、食品を包装したガスバリア積層体包装材を、105~140℃、0.15~0.30MPaで10~120分の条件で加圧殺菌処理をする。
レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式と加圧加熱水を利用する熱水式があり、内容物となる食品等の殺菌条件に応じて適宜使い分ける。ボイル処理は、食品等を保存するため湿熱殺菌する方法である。
通常は、内容物にもよるが、食品等の包装したガスバリア積層体包装材を、60~100℃、大気圧下で、10~120分の条件で湿熱殺菌処理を行う。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて行うが、一定温度の熱水槽の中に浸漬し一定時間後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中をトンネル式に通して殺菌する連続式がある。
本発明の透明ガスバリア積層体10とシーラント層から構成されるガスバリア積層体包装材は、温度30℃、相対湿度70%RHにおける酸素透過度が、レトルト処理後において好ましくは5cc/m・day・MPa以下であり、より好ましくは3cc/m・day・MPa以下である。酸素透過度は低いほど好ましく、その下限としては特に限定は無いが通常は0.1cc/m・day・MPa以上である。
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
密着層2は、以下の手順で調製した。
[塗液1]:三井化学(株)製接着剤溶液(ポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液)
主剤:タケラックA-525(内 ウレタン樹脂の前駆体50質量%、酢酸エチル50質量%)
硬化剤:タケネートA-52(内 ウレタン樹脂の硬化剤55質量%、酢酸エチル45質量%)
溶媒:酢酸エチル
これらを、A-525:A-52:酢酸エチル=9:1:165(固形分濃度3質量%)で配合した。
ガスバリア性被膜層は以下の手順で調整した。
[塗液2]:
(a)テトラエトキシシラン(Si(OC);以下、TEOSと略記)17.9gとメタノール10gに0.1N塩酸72.1gを加えて30分間攪拌して加水分解させた固形分5%(重量比SiO換算)の加水分解溶液。
(b)ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記)の5%(重量比)、水/メタノール=95/5(重量比)溶液。
(c)1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを水/イソプロピルアルコ-ル=1/1溶液で固形分5%(重量比RSi(OH)換算)に調整した加水分解溶液。
上記(a)~(c)溶液の配合比率を、a液/b液/c液=70/20/10(固形分重量比率)となるように混合し、実施例1に使用する[塗液2]を得た。
(実施例1)
フィルム基材1として、厚さ15μmのポリブチレンテレフタレート成分を60%含む
二軸延伸ポリエステルフィルムのコロナ処理面側に、グラビアコート機を用いて、前記塗液1をグラビアロールコート法にて、張力70N/m、乾燥温度60℃にて塗工し、ポリエステル樹脂を0.1g/mの塗布量として硬化させた。
次に蒸着層として電子ビーム式真空蒸着法により、酸素を導入しながらアルミを蒸発させ、厚み10nmのAlOx蒸着膜を形成した。次いで前記塗液2を、張力60N/m、乾燥温度70℃の条件でコーティング加工を順次行った。
これにより密着層(0.1g/m)/AlOx層(10nm)/ガスバリア性被膜層(0.3g/m)からなる透明なガスバリア積層体を得た。乾燥温度はいずれも、塗工時のフィルムにサーモラベル(アイビー技研株式会社製 5点表示ラベルCR)を貼って乾燥オーブンを通すことで、フィルムにかかる実際の温度を測定した。
<1>フィルム伸び率の評価:[熱機械分析(TMA)の測定方法]
熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス社製 TA700)を用いて、蒸着膜を形成したフィルムを、フィルムの流れ方向に沿って、幅4mmに断裁し、装置にセットし、張力60N/mになるように荷重をセットした。温度を50℃から150℃まで、10℃/minで昇温させて、60℃、70℃および80℃でのフィルムの伸び率を測定した。フィルム伸び率Yは、以下の数式1で表される。
伸び率Y(%)=((任意の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ)-(室温で張力をかけていないときの長さ))/(任意の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ)
・・・(数式1)
<2>ガスバリア性の評価
得られたガスバリア積層体の酸素透過度および水蒸気透過度の測定を実施した。
[酸素透過度の測定方法]
酸素透過度測定装置(Modern Control社製 OXTRAN 2/20)を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件で測定した。測定方法は、JIS K-7126、B法(等圧法)に準拠し、測定値は単位[cc/m・day・MPa]で表記した(N=3平均値)。
[水蒸気透過度の測定方法]
水蒸気透過度測定装置(Modern Control社製 PERMATRAN 3/33)を用いて、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した。測定方法は、JIS
K-7126、B法(等圧法)に準拠し、測定値は単位[g/m・day]で表記した(N=3平均値)。
(実験例1)
次に本発明のガスバリア積層体を用いて包装体を作成した。
実施例1のガスバリア積層体のガスバリア性被膜層の上に、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP:東レフィルム加工製 トレファンNO ZK207、厚さ60μm)を2液型の接着剤(三井化学 A525/A52)を用いてドライラミネート法によってラミネートし、〔透明ガスバリア積層体/接着剤層/CPP(60μm)〕の構成を有するラミネートフィルムを得た。
次に、得られたラミネートフィルムを15cm×10cmのパウチ状に3方インパルスシールし、内容物に200mlの水道水を入れ、残り一辺をインパルスシールして、4方パウチを作成した。このパウチをレトルト装置にて加圧0.2MPa、温度121℃で30分レトルト処理を行った。
(実施例2)
塗液2を張力40N/m、乾燥温度70℃の条件でコーティング加工した以外は実施例
1と同様にして、透明ガスバリア積層体を得た。続いて実験例1と同様に接着剤を用いてラミネートし、同様にレトルト処理をしたものを得た。
(実施例3)
塗液2を張力40N/m、乾燥温度60℃の条件でコーティング加工した以外は実施例1と同様にして透明ガスバリア積層体を得た。続いて実験例1と同様に接着剤を用いてラミネートし、同様にレトルト処理をしたものを得た。
(比較例1)
塗液2を張力70N/m、乾燥温度80℃の条件でコーティング加工した以外は実施例1と同様にして透明ガスバリア積層体を得た。続いて実験例1と同様に接着剤を用いてラミネートし、同様にレトルト処理をしたものを得た。
(比較例2)
実施例1のフィルム基材1を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製P60)を用いた以外は実施例1と同様にして透明ガスバリア積層体を得た。続いて実験例1と同様に接着剤を用いてラミネートし、同様にレトルト処理をしたものを得た。
(比較例3)
実施例1のフィルム基材1を、厚み15μmのポリアミドフィルム(ユニチカ製ONM)を用いた以外は実施例1と同様にして透明ガスバリア積層体を得た。続いて実験例1と同様に接着剤を用いてラミネートし、同様にレトルト処理をしたものを得た。
以下にレトルト処理後のパウチ評価を述べる。なお、レトルト処理後に中身の水道水を捨て、十分に乾燥させた状態で評価を行った。
<1>ガスバリア性の評価:[酸素透過度の測定方法]
酸素透過度測定装置(Modern Control社製 OXTRAN 2/20)を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件で測定した。測定方法は、JIS K-7126、B法(等圧法)に準拠し、測定値は単位[cc/m・day・MPa]で表記した(N=3平均値)。
<2>ガスバリア性の評価:[水蒸気透過度の測定方法]
水蒸気透過度測定装置(Modern Control社製 PERMATRAN 3/33)を用いて、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した。測定方法は、JIS K-7126、B法(等圧法)に準拠し、測定値は単位[g/m・day]で表記した(N=3平均値)。
<3>落錘衝撃試験の評価:
落錘衝撃試験機(東洋精機社製 グラフィックインパクトテスター)を用いて、レトルト処理後のフィルムを10cm四方に断裁し、装置にセットし、常温雰囲気下において落下高さ30cmからウエイト重量6.5kgの衝撃をガスバリア積層体フィルム面側から与え、亀裂発生エネルギー[J]を測定した。(N=3平均値)
Figure 0007040038000001
Figure 0007040038000002
表1から分かるように、実施例1~3のガスバリア積層フィルムは、塗液2加工条件に
て加工を行ったときの蒸着フィルムのフィルム伸び率が30%以内であるため、ガスバリア積層フィルムの酸素透過度がいずれも1cc/m・day・MPa未満と良好なバリア性を有している。また、同フィルムの水蒸気透過度は一般的なナイロン基材のバリアフィルムよりも良好で、特に蒸着フィルム伸び率を低く加工するほど、水蒸気バリア性は良好となった。一方比較例1では、蒸着フィルム伸び率が30%以上であったため、酸素・水蒸気ともにガスバリア性が劣る結果となった。
表2から分かるように、実施例1~3のラミネートフィルムは、レトルト後の酸素・水蒸気透過度が比較例2のPET構成には劣るものの、比較例3のONY構成より良好なバリア性を保持している。また、パウチの耐衝撃性を評価するため、衝撃を与えてからパウチが破袋するまでにかかるエネルギー(亀裂発生エネルギー)の測定を落錘衝撃試験機にて実施した。その結果、比較例2であるPET構成の亀裂発生エネルギーを基準の1とした場合、実施例1~3はその1.4倍のエネルギーを要した。比較例3のONY構成はPET構成に比べ1.6倍であったことから、PBT構成はONY構成に匹敵する強い衝撃強度を示した。
本発明のPBTを主としたポリエステルフィルムを基材とした実施例1~3のラミネートフィルムは、ONY構成に匹敵する耐衝撃性を有し、レトルト後のバリア性はONY構成よりも良好な包装材として利用可能である。
1 フィルム基材
2 密着層
3 蒸着層
4 ガスバリア性被膜層
10 ガスバリア積層体

Claims (4)

  1. ガスバリア積層体の製造方法であって、
    ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルム基材の一方の面に、金属酸化物からなる蒸着層を形成する蒸着層形成工程と、
    前記金属酸化物からなる蒸着層の上に、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシド又はその加水分解生成物を少なくとも含むガスバリア被膜層を形成するガスバリア被覆層形成工程を備え、
    前記ガスバリア被覆層形成程は、当該ガスバリア被覆層形成用塗液を前記金属酸化物からなる蒸着層上に、搬送の際に前記フィルム基材のフィルム走行方向(MD方向)にかかる張力70N/m未満として塗布し、乾燥温度80℃未満とするコーティング加工工程であることを特徴とするガスバリア積層体の製造方法。
  2. 請求項1記載のガスバリア積層体の製造方法であって、
    前記蒸着層形成工程の前に、アンカーコート剤を含有する密着層を形成する密着層形成工程を備えることを特徴とするガスバリア積層体の製造方法。
  3. 前記ガスバリア積層体に50℃~150℃の温度で10N/m~70N/mの張力をかけたときのフィルム走行方向(MD方向)の伸び率Y(下記数式1)が30%以下である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア積層体の製造方法。
    伸び率Y=((所定の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ)-(室温で張力をかけていないときの長さ))/(所定の温度で張力をかけたときのフィルムの長さ) ・・・(数式1)
  4. 前記金属酸化物からなる蒸着層を積層したフィルム形状において、10N/m~70N/mの張力をかけたときのフィルム走行方向(MD方向)の前記伸び率Yが、任意のフィルムにかかる温度X(℃)、張力Z(N/m)により、下記数式2で示される伸び率Y’に対して、Y≦Y’となることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法。
    伸び率Y’(%)=0.8×(フィルムにかかる温度X(℃)-50)×(0.9×(張力Z(N/m)-5)/40) ・・・(数式2)
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