JP2005133086A - エラストマーフィルム及びその製造方法 - Google Patents

エラストマーフィルム及びその製造方法 Download PDF

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昌則 鈴木
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隆 川田
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博行 溝内
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Abstract

【課題】 透明性、機械的性質、耐熱性、耐衝撃性、及び着色性に優れるエラストマーフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 エチレン、プロピレン、及び8−メチル−8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに由来する各単量体を含む極性基変性オレフィン系共重合体と、金属化合物であるテトラn−ブトキシジルコニウムを混練りし、次いで造粒及びペレット化することによりエラストマー材料を得た。そして、得られたペレットをプレス成形することにより、上記極性基変性オレフィン系共重合体中の極性基を介して、上記極性基変性オレフィン系共重合体を金属化合物で電気的相互作用により架橋したエラストマー層を有する本発明のエラストマーフィルムを得た。
【選択図】なし

Description

本発明は、エラストマーフィルム及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、透明性、機械的強度、耐熱性及び着色性に優れるエラストマーフィルム及びその製造方法に関する。
液晶パネルに代表される平面状ディスプレイパネルを構成するガラス板等の基層は、薄く、且つ無アクリルガラスを使用する必要があるため、あまり粘弾性がなく、押さえつけたり、あるいはぶつけたりすることで容易に破損することが知られている。そのため、従来、携帯電話等で平面状ディスプレイパネルを用いる場合、そのパネルを保護するために、ポリカーボネート製又はアクリル製の透明樹脂層を使用していた。また、ディスプレイパネルの保護に関し、下記特許文献1及び2には、樹脂フィルムの一方の面に粘着剤等を設け、ディスプレイパネルの表面に貼付するディスプレイパネル保護シートが開示されている。
一方、エラストマーフィルムを構成するエラストマーとして、従来より、オレフィン系熱可塑性エラストマーが知られている。かかるオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系樹脂とオレフィン系共重合ゴムとを混合してなる熱可塑性エラストマー、オレフィン系樹脂とオレフィン系共重合ゴムとを、架橋剤によって部分的に架橋させてなる熱可塑性エラストマー等が知られている。例えば、下記特許文献3には、エチレン、炭素数が3〜10のα−オレフィン、官能基を有する不飽和単量体、及び必要に応じて非共役ジエンが共重合されてなるオレフィン系ランダム共重合体と、このオレフィン系ランダム共重合体を架橋する金属イオンとよりなることを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマーが開示されている。かかるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーと同様のゴム弾性、柔軟性及び成形加工性を有し、しかも、機械的特性及び耐摩耗性が良好で、特に耐傷付性に優れるという作用効果を有する。
また、下記特許文献4には、特定の水添ブロック共重合体と、パラフィン系プロセスオイル等の液状添加剤とを特定の割合で含有する軟質組成物が開示されている。そして、かかる軟質組成物は、柔軟性、低分子保持性、力学的性質、ホットメルト粘・接着性及び液体保持性に優れていることが記載されている。更に、下記特許文献5には、特定の熱可塑性ブロック共重合体よりなる三次元連続網目骨格間に、パラフィン油等の低分子材料が保持されており、クッション材料等に用いられる高分子網状構造体が開示されている。更に、下記特許文献6には、下記特許文献5に開示されている高分子網状構造体と、ゴム材料とを混合してなるゴム組成物が開示されている。かかるゴム組成物は、低分子材料が均一に分散し、且つ該低分子材料を良好に保持して低分子材料のブリードが少ない低弾性のゴム組成物であることが開示されている。
特開平4−030120号公報 特開2000−56694号公報 特開2003−82023号公報 特開平9−263678号公報 特開平8−127698号公報 特開平8−127699号公報
しかし、上記特許文献1に示すようなディスプレイパネル保護シートは、梱包状態の輸送時の保護や、据置型ディスプレイの保護用が主な用途であり、携帯電話等用ディスプレイパネルの保護のために作られたものではない。また、上記特許文献2のディスプレイパネル用保護シートは、衝撃や引っ掻き等の保護をすることができるが、落下して床に衝突することによる衝撃、尻ポケットに該装置を入れて座ったり、押さえ付けられたり等の携帯時の負荷に対しては言及されていない。
更に、ディスプレイパネルを保護するために、ポリカーボネート製又はアクリル製の透明樹脂層を使用する場合、かかる透明樹脂層を設けても、透明樹脂層と液晶パネルの基層との間に空隙を設けないと、衝撃や負荷による透明樹脂層の変形が基層に伝わり、基層が破損してしまうことがあった。また、空隙と透明樹脂層との間や、空隙と基層との間で光が反射し二重映り等を起こし、見にくくなることがあった。しかも、携帯電話等、携行する製品用途では、ディスプレイパネルはできるだけ薄くできることが好ましい。かかる観点から、ディスプレイパネルの損傷を起こすことがなく、保護板自体の厚さを薄くすること、並びにディスプレイパネル及び保護板間の空隙を無くすことができる手段が望まれている。そして、かかる実情に鑑み、ディスプレイパネルの表示内容の視認性を確保できる透明性を具備すると共に、基層の押さえ付けや衝突等に由来する破損から防ぐことができる衝撃吸収層を設けることが検討されている。そして、かかる衝撃吸収層として利用できる材料、即ち、透明性に優れると共に、耐衝撃性及び粘弾性に優れるゴム組成物の開発が検討されている。
しかし、耐衝撃性及び粘弾性に優れ、衝撃吸収層として利用できるゴム組成物は透明性が十分ではない。一方、透明性を有するゴム組成物は、耐衝撃性及び粘弾性に劣るのが現状である。また、上記特許文献4〜6は、透明軟質組成物に関するものでなく、しかも、ゴム組成物において、透明性と、耐衝撃性及び粘弾性とを両立する必要性、及びそれを実現するための手段については全く言及がない。よって、従来、ゴム組成物において、透明性、耐衝撃性及び粘弾性を両立することは困難であった。しかも、今日、エラストマーフィルムの用途が広がったことに伴い、ファッション性、色別の観点から、エラストマーフィルムとして着色性に優れていることも求められている。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、透明性、機械的性質、耐熱性、耐衝撃性、及び着色性に優れるエラストマーフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の通りである。
〔1〕極性基変性オレフィン系共重合体と、金属イオン及び/又は金属化合物と、よりなるエラストマー層を有することを特徴とするエラストマーフィルム。
〔2〕 上記極性基変性オレフィン系共重合体に含まれる極性基が、カルボキシル基及びその誘導体、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、スルホン酸基、並びにニトリル基のうちの少なくとも1種である上記〔1〕記載のエラストマーフィルム。
〔3〕上記極性基変性オレフィン系共重合体は、極性基変性エチレン・α−オレフィン系共重合体及び極性基変性エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体のうちの少なくとも1種である上記〔1〕又は〔2〕記載のエラストマーフィルム。
〔4〕上記極性基変性オレフィン系共重合体は、オレフィン系単量体の1種又は2種以上と、極性基を有する不飽和単量体の1種又は2種以上とを共重合して得られる共重合体であり、且つ上記極性基変性オレフィン系共重合体中の単量体単位を100モル%とした場合、上記極性基を有する不飽和単量体単位の割合は0.01〜5モル%である上記〔1〕又は〔2〕記載のエラストマーフィルム。
〔5〕上記官能基を有する不飽和単量体が、下記一般式(1)で表される化合物である上記〔4〕記載のエラストマーフィルム。
Figure 2005133086
[一般式(1)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Y、Y及びYは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、又はカルボキシル基を示し、Y、Y及びYのうち少なくとも1つはカルボキシル基であり、また、Y、Y及びYのうち2つ以上がカルボキシル基である場合は、それらは互いに連結して形成された酸無水物であってもよい。oは0〜2の整数であり、pは0〜5の整数である。]
〔6〕上記極性基変性オレフィン系共重合体が、電子線照射、紫外線照射、及び架橋剤により形成される架橋を含まない上記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
〔7〕上記極性基変性オレフィン系共重合体の少なくとも一部が、電子線照射、紫外線照射、及び架橋剤により形成される架橋を含む上記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
〔8〕上記金属イオン及び/又は金属化合物は、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウム、及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオン及び/又は化合物である上記〔1〕乃至〔7〕のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
〔9〕上記金属化合物が、金属元素を含有する有機化合物である上記〔1〕乃至〔8〕のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
〔10〕上記エラストマー層は、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上である上記〔1〕乃至〔9〕のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
〔11〕上記エラストマー層の少なくとも一方の表面に他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を有する上記〔1〕乃至〔10〕のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
〔12〕極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物を溶媒に溶解又は分散することにより混合液を調製し、該混合液を基材上に塗布し、次いで上記溶媒を除去することにより上記基材上にエラストマー層を形成することを特徴とするエラストマーフィルムの製造方法。
〔13〕極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の含有液を用い、押出法により成形してエラストマー層を形成することを特徴とするエラストマーフィルムの製造方法。
〔14〕上記エラストマー層を基材上に配置する上記〔13〕記載のエラストマーフィルムの製造方法。
〔15〕上記エラストマー層に電子線照射、紫外線照射又は加熱を行うことにより、極性基含有オレフィン系共重合体の少なくとも一部に架橋を形成する上記〔12〕乃至〔14〕のいずれかに記載のエラストマーフィルムの製造方法。
本発明のエラストマーフィルムは、上記構成を有することにより、透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性に優れる。
また、本発明のエラストマーフィルムにおいて、上記極性基変性オレフィン系共重合体に含まれる上記極性基を、カルボキシル基及びその誘導体、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、スルホン酸基、並びにニトリル基のうちの少なくとも1種とすると、より透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性に優れるエラストマーフィルムとすることができる。
更に、本発明のエラストマーフィルムにおいて、上記極性基変性オレフィン系共重合体を、極性基変性エチレン・α−オレフィン系共重合体及び極性基変性エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体のうちの少なくとも1種とすると、より透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性に優れるエラストマーフィルムとすることができる。
また、本発明のエラストマーフィルムにおいて、上記極性基変性オレフィン系共重合体を、オレフィン系単量体の1種又は2種以上と、極性基を有する不飽和単量体の1種又は2種以上とを共重合して得られる共重合体であり、且つ上記極性基を有する不飽和単量体の割合を特定の範囲である共重合体とすると、より透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性に優れるエラストマーフィルムとすることができる。
更に、本発明のエラストマーフィルムにおいて、上記官能基を有する不飽和単量体を、上記一般式(1)で表される化合物とすると、より透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性に優れるエラストマーフィルムとすることができる。
また、本発明のエラストマーフィルムは、上記極性基変性オレフィン系共重合体が、電子線照射、紫外線照射、及び架橋剤により形成される架橋を含まなくても優れた透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性を奏するが、上記極性基変性オレフィン系共重合体の少なくとも一部が、電子線照射、紫外線照射、及び架橋剤により形成される架橋を含むものとすると、より耐熱性に優れたエラストマーフィルムとすることができる。
更に、本発明のエラストマーフィルムにおいて、上記金属イオン及び/又は金属化合物を、上記の特定の金属のイオン及び/又は化合物とすると、より透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性に優れるエラストマーフィルムとすることができる。特に、上記金属化合物として、金属元素を含有する有機化合物を用いると、より容易に上記極性基変性オレフィン系共重合体に分散させることができる。
また、本発明のエラストマーフィルムにおいて、上記エラストマー層を、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上であるエラストマー層とすると、より透明性に優れたエラストマーフィルムとすることができる。
更に、上記エラストマー層の少なくとも一方の表面に他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を有するものとすると、より透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性に優れる複数層を有するエラストマーフィルムとすることができる。
本発明のエラストマーフィルムの製造方法及び他の本発明のエラストマーフィルムの製造方法によれば、容易に本発明のエラストマーフィルムを得ることができる。
また、本発明のエラストマーフィルムの製造方法及び他の本発明のエラストマーフィルムの製造方法において、エラストマー層に電子線照射、紫外線照射又は加熱を行うことにより、極性基含有オレフィン系共重合体の少なくとも一部に架橋を形成することができる。その結果、より耐熱性に優れたエラストマーフィルムを得ることができる。
以下、本発明を説明する。
本発明のエラストマーフィルムは、極性基変性オレフィン系共重合体と、金属イオン及び/又は金属化合物と、よりなるエラストマー層を有する。
(1)極性基変性オレフィン系共重合体
上記極性基変性オレフィン系共重合体は、構造中に極性基を有するオレフィン系の共重合体である。上記極性基は、後述のように、金属イオン及び/又は金属化合物による電気的相互作用(静電力による相互作用等)により架橋する性質を有する限り、その種類には限定がない。また、上記極性基は1種のみでもよく、あるいは2種以上の異なる極性基でもよい。上記極性基として具体的には、例えば、カルボキシル基及びその誘導体、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、スルホン酸基、並びにニトリル基のうちの1種又は2種以上が挙げられる。ここで、上記カルボキシル基の誘導体とは、加水分解等の反応によりカルボキシル基を生成する官能基であり、例えば、無水マレイン酸基等のカルボン酸無水物基等が挙げられる。また、上記アルコキシシリル基に含まれるアルコキシ基の炭素数は、通常1〜10、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜5である。上記アルコキシ基は直鎖状でもよく分枝状あるいは環状でもよい。上記アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基等が挙げられる。尚、上記アルコキシ基は全て同じ種類でもよく、異なるアルキル基でもよい。
上記極性基変性オレフィン系共重合体の種類、構造には特に限定はない。また、上記極性基変性オレフィン系共重合体は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。上記極性基変性オレフィン系共重合体として具体的には、例えば、極性基変性α−オレフィン系共重合体、極性基変性エチレン系共重合体等が挙げられ、より具体的には、極性基変性エチレン・α−オレフィン系共重合体及び極性基変性エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体等が挙げられる。ここで、上記α−オレフィンとして具体的には、例えば、後述のα−オレフィンが挙げられる。
上記極性基変性オレフィン系共重合体を製造する方法には特に限定はない。通常は、オレフィン系単量体の1種又は2種以上と、極性基を有する不飽和単量体の1種又は2種以上とを公知の方法により共重合することにより得ることができる。
上記オレフィン系単量体の構造、種類には特に限定はなく、必要に応じて種々のオレフィン系単量体を使用することができる。通常、上記オレフィン系単量体としては、炭素数2〜15、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜8のオレフィンが用いられる。より具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−ペンテン−1,1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の1種又は2種以上が挙げられる。また、上記オレフィン系単量体は1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。例えば、上記オレフィン系単量体として、エチレンと、炭素数3〜15、好ましくは3〜10、更に好ましくは3〜8のα−オレフィンとを用いることができる。ここで、上記α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−ペンテン−1,1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の1種又は2種以上が挙げられる。
上記オレフィン系単量体の使用割合は、上記極性基を有する不飽和単量体と共重合することにより、共重合体を得ることができる限り特に限定はなく、上記極性基を有する不飽和単量体や後述の他の単量体の使用割合等に応じて種々の範囲とすることができる。また、上記オレフィン系単量体として、エチレンと、炭素数3〜15のα−オレフィンを併用する場合、上記エチレンの使用割合は、通常、単量体成分全体の35〜94.99モル%、好ましくは40〜89.99モル%、更に好ましくは45〜84.99モル%である。一方、上記α−オレフィン系単量体の使用割合は、通常、単量体成分全体の5〜50モル%、好ましくは10〜45モル%、更に好ましくは15〜40モル%である。上記エチレン及びα−オレフィンの使用割合を上記範囲とすることにより、容易に共重合をすることができると共に、エラストマーとして必要なゴム弾性を得ることができ、得られるエラストマーの耐久性を向上させることができることから好ましい。
上記極性基を有する不飽和単量体は、上記極性基及び不飽和結合を有し、上記オレフィンと共重合可能である限り、その種類、構造には特に限定はない。例えば、上記極性基としては、上記のように、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、スルホン酸基、又はニトリル基を有するものが好ましい、上記極性基を有する不飽和単量体としてより具体的には、例えば、上記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。かかる化合物を用いると、上記金属イオン及び/又は金属化合物との架橋性が良好であることから好ましい。
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜6の炭化水素基であり、Y、Y及びYは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜6の炭化水素基、又はカルボキシル基であり、且つY、Y及びYのうち少なくとも一つはカルボキシル基である。また、Y、Y及びYのうち2つ以上がカルボキシル基である場合は、それらは互いに連結して形成された酸無水物(−CO−(O)−CO−)であってもよい。上記炭素数1〜10の炭化水素基は直鎖炭化水素基でもよく、分枝炭化水素基でもよい。状の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基を挙げることができる。また、繰り返し数oは0〜2、好ましくは0〜1の整数である。この繰り返し数oが3以上である場合には、当該環状化合物を他の単量体と共重合させることが困難となることがある。また、繰り返し数pは0〜5、好ましくは0〜4、更に好ましくは0〜2の整数である。尚、上記一般式(1)で表される化合物は、例えば、シクロペンタジエンと上記極性基を含有する不飽和化合物を用い、これらをディールス・アルダー反応等によって縮合させることにより製造することができる。
上記一般式(1)で表される化合物として具体的には、例えば、5,6−ジメチル−5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジエチル−5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジメチル−5,6−ビス(カルボキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジエチル−5,6−ビス(カルボキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−メチル−5−カルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−エチル−5−カルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−カルボキシ−5−カルボキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−メチル−5−カルボキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−エチル−5−カルボキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、8,9−ジメチル−8,9−ジカルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジエチル−8,9−ジカルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチル−8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等が挙げられる。
上記官能基を有する不飽和単量体の使用割合は、単量体成分全体の0.01〜5モル%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜4モル%である。上記官能基を有する不飽和単量体の使用割合を0.01モル%以上とすると、得られるエラストマーフィルム架橋密度を高くすることができ、その結果、フィルムの機械的強度及び耐熱性を向上させることができるので好ましい。一方、上記官能基を有する不飽和単量体の使用割合を5モル%以下とすると、架橋密度が高くなり過ぎることにより、硬度が高すぎて脆いフィルムとなることを抑制することができるので好ましい。
上記極性基変性オレフィン系共重合体は、上記単量体に由来する構造以外に、他の単量体に由来する構造を1種又は2種以上有していてもよい。かかる他の単量体に由来する構造は、通常、上記単量体に他の単量体を加えて共重合することにより形成することができる。上記他の単量体は、上記単量体と共重合することができる限り、その種類、構造には特に限定はない。上記他の単量体として具体的には、例えば、非共役ジエン等が挙げられる。上記非共役ジエンとして具体的には、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、7−メチルオクタ−1,6−ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の脂環式ジエン等が挙げられる。
上記他の単量体の使用割合は、全単量体成分を100モル%とした場合、通常10モル%以下、好ましくは0.001〜10モル%、更に好ましくは0.01〜7モル%、より好ましくは0.1〜5モル%である。特に上記他の単量体が非共役ジエンである場合、その使用割合を上記範囲とすると、得られるエラストマーの耐久性を向上させることができるので好ましい。
上記極性基変性オレフィン系共重合体は、その構造中に極性基を有するオレフィン系共重合体であれば、その種類、材質及び構造に特に限定はないが、優れた透明性を維持するために、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上、好ましくは91%以上、更に好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上の熱可塑性エラストマーが好適に使用できる。また、上記極性基変性オレフィン系共重合体は、耐衝撃性向上の観点から、分岐構造を有することが好ましい。更に、上記極性基変性オレフィン系共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でのポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常1000〜300万、好ましくは3000〜100万、更に好ましくは5000〜70万である。上記極性基変性オレフィン系共重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、力学的性質が優れたエラストマーフィルムとすることができるので好ましい。
上記極性基変性オレフィン系共重合体は、後述のように、上記金属イオン及び/又は金属化合物により上記極性基を介して架橋している。上記極性基変性オレフィン系共重合体は、上記架橋以外の架橋を含まないものとすることもできる。また、上記極性基変性オレフィン系共重合体の少なくとも一部が、その他の架橋を形成していてもよい。かかる架橋の形成方法については特に限定はなく、例えば、電子線照射による架橋、紫外線照射による架橋、及び架橋剤(有機過酸化物等)による架橋等が挙げられる。
(2)金属イオン及び/又は金属化合物
本発明のエラストマーフィルムは、上記極性基変性オレフィン系共重合体中の極性基を介して上記極性基変性オレフィン系共重合体を架橋する金属イオン及び/又は金属化合物を含有する。本発明のエラストマーフィルムは、かかる構成を備えることにより、エラストマーフィルムの弾性率、耐熱性、及び引張強度を向上させることができる。ここで、上記極性基を介して架橋するとは、上記極性基と上記金属イオン及び/又は金属化合物を構成する金属との間で、電気的な相互作用(静電力による相互作用等)により凝集することであり、このような架橋としては、例えば、金属イオンと上記極性基のイオンとの間で形成されるイオン架橋が挙げられるが、電気的な相互作用により凝集している限り、かかるイオン架橋には限定されない。かかる架橋は、電子線照射等により形成される架橋と異なり、加熱により相互作用が弱まる結果、高温になるにつれて弾性率が低下するという作用効果を奏する。尚、本見解は推定に基づくものであり、何ら本発明を限定する趣旨でないことを付言する。
上記架橋の有無は、上記極性基変性オレフィン系共重合体に対して、上記金属イオン及び/又は金属化合物を含有させる前後の粘度の変化により調べることができる。即ち、上記金属イオン及び/又は金属化合物を含有させる前の上記極性基変性オレフィン系共重合体(通常は当該共重合体を含む含有液)の粘度より、上記金属イオン及び/又は金属化合物を含有させた後の上記極性基変性オレフィン系共重合体の粘度が大きければ、上記架橋が形成されていることが確認できる。具体的には、例えば、RE115U型粘度計等の粘度測定装置を用いて粘度を測定した結果、上記金属イオン及び/又は金属化合物を含有させた後の上記極性基変性オレフィン系共重合体の粘度η(mPa・s)と、上記金属イオン及び/又は金属化合物を含有させる前の上記極性基変性オレフィン系共重合体の粘度ηo(mPa・s)との粘度比(η/ηo)を調べることにより、上記架橋が形成されていることが確認できる。25℃にてRE115U型粘度計により測定した上記η及びηoから求めた上記粘度比は、通常1より大きく、好ましくは1より大きく1000以下、更に好ましくは1より大きく500以下、特に好ましくは1より大きく100以下である。
上記金属イオン及び金属化合物を構成する金属は、上記極性基を介して上記極性基変性オレフィン系共重合体を架橋する性質を有する限り、その種類に特に限定はない。また、上記金属は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。上記金属としては、周期律表の周期表第I〜VIII族、特にはIA族、IIA族、IIIA族、IVB族の金属が好ましく、具体的には、例えば、ジルコニウム、チタン、カリウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、セシウム、ストロンチューム、ルビジウム、亜鉛、銅、鉄、錫、及び鉛等よりなる群から選ばれる少なくとも1種等が挙げられる。これらの中では、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、鉄、カルシウム、及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく挙げられる。また、本発明のエラストマーフィルムの架橋は、電気的な相互作用によるものであり、必ずしもイオン架橋に限定されるものでないことから、上記金属は必ずしも2価の金属に限定されるものではない。また、上記のように、本発明のエラストマーフィルムの架橋は、電気的な相互作用によるものであることから、上記金属化合物は、エラストマー層中で必ずしもイオンの状態で存在する必要はない。
上記金属化合物は、金属元素を含む無機化合物でもよく、有機化合物でも構わないが、有機溶媒に溶解する場合には、金属元素を含む有機化合物の方が好ましい。上記金属元素を含む無機化合物としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩及び金属錯体等が挙げられる。具体的には、例えば、CuO、MgO、BaO、ZnO、Al、Fe、SnO、CaO、TiO等の金属酸化物、LiOH、NaOH、KOH、Cu(OH)、CuO(OH)、Mg(OH)、MgO(OH)、Ba(OH)、Zn(OH)、Sn(OH)、Ca(OH)等の金属水酸化物等が挙げられる。また、金属元素を含む有機化合物として具体的には、例えば、金属アルコキシド、アルキルアルコキシ金属化合物(トリメチルアルコキシ金属化合物、トリエチルアルコキシ金属化合物等のトリアルキルアルコキシ金属化合物、ジメチルジアルコキシ金属化合物等のジアルキルアルコキシ金属化合物)、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトナート等が挙げられる。上記金属アルコキシドを構成するアルコキシドの炭素数は、通常1〜8、好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜4であり、より具体的には、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等が挙げられる。更に、上記金属元素を含む有機化合物としてより具体的には、例えば、ジルコニウムブトキシド〔Zr(OBu)〕、チタンブトキシド〔Ti(OBu)〕、アルミニウムブトキシド〔Al(OBu)〕、及び亜鉛ブトキシド〔Zn(OBu)〕等が挙げられる。
上記金属イオン及び/又は金属化合物の含有割合は特に限定はなく、必要に応じて種々の範囲とすることができる。この含有割合は、通常は、上記極性基変性オレフィン系共重合体100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜15質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。上記金属イオン及び/又は金属化合物の含有割合を0.1質量部以上とすると、得られるエラストマーフィルムの架橋密度が高く、機械的強度及び耐熱性が高いエラストマーフィルムとすることができるので好ましい。一方、上記金属イオン及び/又は金属化合物の使用割合を20質量部以下とすると、得られるエラストマーフィルムの架橋密度を適切な範囲に調整することができ、その結果、架橋密度が高過ぎることにより、硬度が高すぎて脆いフィルムとなることを抑制することができるので好ましい。
(3)エラストマーフィルム
本発明のエラストマーフィルムは、上記極性基変性オレフィン系共重合体と、該極性基変性オレフィン系共重合体中の極性基を介して上記極性基変性オレフィン系共重合体を架橋する金属イオン及び/又は金属化合物と、よりなるエラストマー層を有することにより、優れた透明性を有する。具体的には、本発明のエラストマーフィルムの25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上、好ましくは91%以上、更に好ましくは92%以上である。また、本発明のエラストマーフィルムは、広い温度範囲で優れた透明性を有する。具体的には、本発明のエラストマーフィルムは、−100〜90℃、好ましくは−50〜90℃、更に好ましくは−40〜90℃で透明(肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上、好ましくは91%以上、更に好ましくは92%以上)を維持することができる。尚、上記全光線透過率は、実施例記載の方法により測定した値を示す。
また、本発明のエラストマーフィルムの厚さについても特に限定はなく、用途等の必要に応じて種々の範囲とすることができる。通常、本発明のエラストマーフィルムの厚さは1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、更に好ましくは1〜100μmである。
本発明のエラストマーフィルムには、必要に応じて各種添加剤、例えば滑剤、老化防止剤、熱安定剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤等の安定剤、防菌・防かび剤、分散剤、可塑剤、結晶核剤、難燃剤、粘接着付与剤、発泡助剤、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤、フェライト等の金属粉末、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維、複合繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の無機ウィスカー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、ポリマービーズ等の充填剤又はこれらの混合物、ポリオレフィンワックス、セルロースパウダー、ゴム粉、木粉等の充填剤、低分子量ポリマー等を配合して用いることができる。
本発明のエラストマーフィルムは、上記エラストマー層を有していればよく、その他の構成には特に限定はない。即ち、本発明のエラストマーフィルムは、上記エラストマー層1層のみで構成されていてもよく、あるいは種類、性質の異なる上記エラストマー層を2層以上有する多層フィルムでもよい。更に、本発明のエラストマーフィルムは、上記エラストマー層の少なくとも一方の表出面に他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を有するものとすることができる。上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層は、上記エラストマー層の少なくとも一方の表面に設けられていればよい。即ち、上記エラストマー層の一方の表面にのみ設けてもよく、あるいは、上記エラストマー層の両方の表面に設けてもよい。また、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層の透明性は、好ましくは、実施例記載の方法により測定した25℃における全光線透過率が80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは91%以上である。更に、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層の厚さについては特に限定はない。上記他のフィルム層の厚さは通常は200μm以下、好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは20〜100μmである。また、上記硬質透明板層の厚さは通常は1000μm以下、好ましくは700μm以下、更に好ましくは500μm以下、特に好ましくは200〜500μmである。
上記他のフィルム層の材質・形状・構造については特に限定はない。上記他のフィルム層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、並びにフッ素樹脂等が挙げられる。また、上記他のフィルム層は1層のみでもよく、2層以上でもよい。更に、2層以上の場合、各上記他のフィルム層は同一の材質のフィルム層でもよく、異なる材質のフィルム層でもよい。
上記透明樹脂層を構成する透明樹脂の材質・形状・構造についても特に限定はない。本発明のエラストマーフィルムは、電子・電気機器等のディスプレイパネルに好適に使用でき、また、特に携帯電話等用ディスプレイパネルでは、尻ポケットに該装置を入れて座る等により、ディスプレイパネルへ負荷がかかるおそれもあることから、上記透明樹脂は、かかる負荷に耐え得る可とう性を有することが好ましい。また、上記透明樹脂の形状は、シート状でもよく、フィルム状でもよい。更に、上記透明樹脂は単層構造でもよく、同一の材質又は異なる材質の透明樹脂を積層した2層以上の多層構造でもよい。上記透明樹脂層を上記エラストマー層の両方の表面に設ける場合、両面とも同じ材質の透明樹脂を用いてもよく、一方の表面と他方の表面にそれぞれ異なる材質の透明樹脂を用いてもよい。
上記透明樹脂層を構成する透明樹脂として具体的には、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、1,2−ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、環状オレフィン共重合体、変性ノルボルネン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、脂環式アクリル樹脂、ポリシクロヘキシルエチレン等の非晶性ポリオレフィン、非晶性フッ素樹脂、ポリスチレン系樹脂、透明ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶性コポリエステル、ポリアリレート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、セルロースアセテート、アリルジグリコールカーボネート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、通常、3質量%以上の酢酸ビニル単位を含有する。)、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ビニルエステル系樹脂(EVAを除く。)、非晶性ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂並びにケイ素系樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂等の樹脂が好ましい。
(4)エラストマーフィルムの製造方法
本発明のエラストマーフィルムの製造方法は、極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物を溶媒に溶解又は分散することにより混合液を調製し、該混合液を基材上に塗布し、次いで上記溶媒を除去することにより基材上にエラストマー層を形成することを特徴とする。
また、他の本発明のエラストマーフィルムの製造方法は、極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の含有液(例えば、金属化合物含有溶融重合体)を用い、押出法により成形してエラストマー層を形成することを特徴とする。
上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物を溶解又は分散させる溶媒には特に限定はない。通常は、上記極性基含有オレフィン系共重合体を容易に溶解又は分散させることができる有機溶媒が用いられる。該有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類及びこれらのハロゲン化物等が挙げられる。具体的には、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−ブタン、2−メチル−2−ブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等を挙げることができる。
本発明のエラストマーフィルムの製造方法では、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物を溶媒に溶解又は分散させて混合液を調製する。上記金属化合物としては、既に詳述したように、金属元素を含む無機化合物でもよく、有機化合物でもよい。また、無機金属化合物の場合、上記極性基含有オレフィン系共重合体に対する分散性を高めるために、シランカップリング剤や高級脂肪酸で処理されたものであってもよい。これらの金属化合物は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
上記金属化合物の使用割合は特に限定はなく、必要に応じて種々の範囲とすることができる。通常は、上記極性基変性オレフィン系共重合体100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜15質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。上記金属化合物の使用割合を0.1質量部以上とすると、得られるエラストマーフィルムの架橋密度が高く、機械的強度及び耐熱性が高いエラストマーフィルムとすることができるので好ましい。一方、上記金属化合物の使用割合を20質量部以下とすると、得られるエラストマーフィルムの架橋密度を適切な範囲に調整することができ、その結果、架橋密度が高過ぎることにより、硬度が高すぎて脆いフィルムとなることを抑制することができるので好ましい。
更に、上記極性基含有オレフィン系共重合体に対する上記金属化合物の混和性、及び得られるエラストマーフィルムの耐熱性を向上させるために、上記金属化合物以外に、活性剤としてカルボン酸の金属塩を添加することができる。カルボン酸の金属塩としては、1価のカルボン酸の金属塩を用いることが好ましく、当該カルボン酸が炭素数3〜23のものであることが更に好ましい。かかるカルボン酸の具体例としては、プロピオン酸、アクリル酸、酪酸、メタクリル酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2ーエチルヘキサン酸、デカン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ナフテン酸、安息香酸等が挙げられる。また、活性剤として用いられる金属塩における金属としては、既に例示した金属から選択して用いることができるが、上記金属化合物を構成する金属と同種の金属を用いることが好ましい。また、上記活性剤として用いられる金属塩の使用割合は、上記極性基含有オレフィン系共重合体100質量部に対し、通常0.3〜20質量部、好ましくは1〜15質量部である。この割合が0.3質量部以上であると、効果が十分に発揮され、また、20質量部以下とすると、得られるエラストマーフィルムの機械的強度の低下を抑制できるので好ましい。
尚、上記金属化合物や上記活性剤の上記溶媒に対する溶解性が低い場合には、上記金属化合物や上記活性剤を溶媒中に懸濁状態で分散した分散液を調製してもよく、また、上記金属化合物や上記活性剤を溶解するために他の溶媒や添加剤を加えてもよい。
一方、他の本発明のエラストマーフィルムの製造方法では、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の含有液を用いる。ここで、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の含有液とは、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物が溶媒中に溶解又は分散している混合液でもよく、あるいは、溶融液(例えば、金属化合物含有溶融重合体)等、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物が溶媒中に溶解又は分散せず液状で存在している状態も含む。上記溶媒としては、既に詳述した上記溶媒を用いることができる。また、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の含有液においても、上記極性基含有オレフィン系共重合体に対する上記金属化合物の混和性、及び得られるエラストマーフィルムの耐熱性を向上させるために、上記金属化合物以外に、活性剤としてカルボン酸の金属塩を添加することができる。
上記各成分を混合する方法としては、例えば、上記各成分をそれぞれ溶媒中に添加・混合する方法、上記各成分の溶液又は分散液を調製し、これらを混合する方法、及び一般的に使用される溶融混練装置を用いる方法等、種々の方法を利用することができる。上記溶媒中に上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物を溶解又は分散させる場合、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の添加順序には特に限定はない。いずれかを先に添加してよく、あるいは、両者を同時に添加してもよいが、上記極性基含有オレフィン系共重合体を先に添加し、次いで上記金属化合物を添加する方が好ましい。即ち、上記極性基含有オレフィン系共重合体を先に添加し、十分混合、分散した状態で上記金属化合物を添加すれば、上記金属化合物も適切に混合、分散させることができ、得られるエラストマー層の透明性を高めることができるので好ましい。また、上記各成分の混合は、一般的に用いられる溶液撹拌装置によって行うことができる。更に、混合条件については特に限定はなく、例えば、混合する際の温度は、20℃以上であることが好ましく、より好ましくは30℃以上である。また、金属イオンや金属化合物による架橋を促進するために、適宜の触媒を加えてもよい。
本発明のエラストマーフィルムの製造方法では、上記混合液を基材上に塗布する。この塗布の方法については特に限定はない。上記塗布の方法としては、例えば、ロールコーターにより塗布する他、溶媒キャスト法、スピンコート法等によって塗布することができる。また、上記基材の種類、材質についても特に限定はなく、必要に応じて種々の種類、材質の基材を用いることができる。上記基材としては、例えば、樹脂等の重合体又は重合体フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリビニルアルコール等)、スチールベルト、並びにセラミック及びガラス等の無機材料基材等が挙げられる。
他の本発明のエラストマーフィルムの製造方法では、極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の含有液を用い、押出法により成形してエラストマー層を形成する。上記押出法は、従来公知の押出法であればよく、その方法、条件について特に限定はない。具体的には、例えば、Tダイ押出法により成形することができる。即ち、シリンダー内に上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物を添加混合し、混合物をTダイへ移送して押出法により成形することができる。この場合、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物は、同時にシリンダー内に添加してもよく、あるいは異なる時期に添加してもよい。また、上記Tダイ押出法において、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の含有液は、溶媒を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。溶媒を含む場合は、上記シリンダー内で加熱し、ベント口から溶媒を留去することが好ましい。
本発明のエラストマーフィルムの製造方法及び他の本発明のエラストマーフィルムの製造方法では、形成された上記エラストマー層に電子線照射、紫外線照射又は加熱を行うことにより、極性基含有オレフィン系共重合体の少なくとも一部に架橋を形成することができる。かかる架橋を形成することにより、エラストマーフィルムの耐熱性を向上させることができる。電子線照射の場合は、得られたフィルムについて、電子線照射装置により電子線照射することにより、架橋を形成することができる。また、紫外線照射の場合は、上記極性基変性オレフィン系共重合体及び上記金属イオン及び/又は金属化合物に加え、必要に応じて光増感剤を混和し、得られたフィルムについて、紫外線照射装置により紫外線照射することにより、架橋を形成することができる。更に、加熱により架橋を行う場合、通常、上記極性基変性オレフィン系共重合体及び上記金属イオン及び/又は金属化合物に加え、必要に応じて有機過酸化物等の架橋剤、更には架橋助剤を混和し、得られたフィルムについて、窒素雰囲気等、空気の存在しない雰囲気で加熱することにより、架橋を形成することができる。
本発明のエラストマーフィルムの製造方法及び他の本発明のエラストマーフィルムの製造方法において、上記極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物を溶媒に溶解又は分散させて使用した場合、溶媒を除去することによりエラストマー層を形成する。上記溶媒の除去方法には特に限定はなく、例えば、加熱、減圧、水蒸気蒸留等の周知の方法により除去することができる。
また、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を有する本発明のエラストマーフィルムを得る場合、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を設ける方法については特に限定はない。本発明のエラストマーフィルムの製造方法であれば、上記基材として、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を使用すれば、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を有する本発明のエラストマーフィルムを得ることができる。その他の方法としては、例えば、接着剤(又は粘着剤)を用いて接合したり、ホットプレス及びコールドプレス(単に押しつけて接合する場合も含む。)等を用いて直接接合すること等が挙げられる。その他、キャスティング法(無溶剤キャスト法及び溶剤キャスト法)、押出法、プレス成形法、射出成形法、注型法等が挙げられる。
具体的には、例えば、上記エラストマー層の一方の表面又は両表面に、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を積層し、次いで、必要に応じて圧着することにより、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を有する本発明のエラストマーフィルムを得ることができる。より具体的には、例えば、上記エラストマー層を搬送しながら、加熱により半硬化状態である上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を押出し又はドクターブレードで上記エラストマー層の表面に供給し、次いでローラー等で圧着し、その後冷却等することにより、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を有する本発明のエラストマーフィルムを得ることができる。また、加熱や溶媒等に溶解又は分散させる等により液状又は半固形状となった他のフィルム及び/又は硬質透明板を上記エラストマー層の一方の表面又は両表面にロールコーター等で塗布し、その後、乾燥等を行うことにより、上記エラストマー層の方の表面又は両表面に、上記他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を設けることができる。
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。また、実施例中の「%」及び「部」は、特に断らない限り質量基準である。
(1)エラストマーフィルムの調製
上記極性基変性オレフィン系共重合体として、エチレンに由来する単量体単位の含量が86.3モル%、プロピレンに由来する単量体単位の含量が10.6モル%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する単量体単位の含量が2.6モル%、及び8−メチル−8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに由来する単量体単位の含量が0.5モル%であり、且つ重量平均分子量(MW)が16.5×10である共重合体(A−1)を用いた。また、金属化合物(B−1)としてテトラn−ブトキシジルコニウム(和光純薬社製)、金属化合物(B−2)としてテトラn−ブトキシチタン(和光純薬社製)、及び金属化合物(B−3)としてテトラn−ブトキシアルミニウム(東京化成社製)を用いた。
窒素雰囲気下で、上記共重合体(A−1)100質量部及び上記金属化合物(B−1)0.6質量部をそれぞれ230℃に加熱した10L双腕型加圧ニーダー(モリヤマ社製)に投入し、40rpmで20分間混練りした(ずり速度200s−1)。その後、得られた溶融状態の塊状混練物を180℃、40rpmに設定したフィーダールーダー(モリヤマ社製)によって造粒し、ペレット化したエラストマー材料を得た。そして、得られたエラストマー材料のペレットを、電熱加圧プレス成形機(関西ロール社製)によって、金型温度が180℃、加圧加熱時間が10分間、加圧冷却時間が5分間の条件でプレス成形することにより、厚さ0.3mm、縦幅120mm、横幅120mmである実施例1のエラストマーフィルムを得た。
また、窒素雰囲気下で、上記共重合体(A−1)100質量部及び上記金属化合物(B−2)0.5質量部をそれぞれ230℃に加熱した10L双腕型加圧ニーダー(モリヤマ社製)に投入し、40rpmで20分間混練り(ずり速度200s−1)する他は、上記実施例1と同じ手順により、実施例2のエラストマーフィルムを得た。
更に、窒素雰囲気下で、上記共重合体(A−1)100質量部及び上記金属化合物(B−3)0.4質量部をそれぞれ230℃に加熱した10L双腕型加圧ニーダー(モリヤマ社製)に投入し、40rpmで20分間混練り(ずり速度200s−1)する他は、上記実施例1と同じ手順により、実施例3のエラストマーフィルムを得た。
一方、上記金属化合物(B−1)を用いない他は、上記実施例1と同じ手順により、比較例1のエラストマーフィルムを得た。
(3)物性評価
上記の方法により得られた実施例1〜3及び比較例1のエラストマーフィルムを用い、下記に記載の方法により、透明性、着色性、機械的強度、耐熱性、及び耐衝撃性を測定した。その結果を表1に示す。
〔1〕透明性
上記実施例1〜3及び比較例1のエラストマーフィルムを用いて、BYK−ガードナーGmbh社製モデル(haze−gard plus)を使用して、25℃における全光線透過率(%)を求め、透明性を評価した。
〔2〕着色性
上記実施例1〜3及び比較例1のエラストマーフィルムを用いて、以下に示す群青染色性を調べることにより、着色性の評価を行った。即ち、上記実施例1〜3及び比較例1の各エラストマーフィルム70gをロールに巻きつけ、群青0.5gを添加し、0.3mmのニップで10回薄通しした後、2mmのニップでシーティングし、染色の状態を目視で確認することにより、染色性を調べた。
〔3〕機械的強度
JIS−K6351に準拠して、上記実施例1〜3及び比較例1のエラストマーフィルムの引張破断強度T(MPa)及び引張破断伸びE(%)を測定することにより評価した。
〔4〕耐熱性
動的粘弾性測定装置(レオロジー社製「MR−500」)を用い、温度30℃、1Hz及び70℃、1Hzの条件で、上記実施例1〜3及び比較例1のエラストマーフィルムのの剪断貯蔵弾性率G’30℃及びG’70℃(dyn/cm)を測定した。そして、このG’30℃(30℃、1Hzでの動的粘弾性測定における剪断貯蔵弾性率)及びG’70℃(70℃、1Hzでの動的粘弾性測定における剪断貯蔵弾性率)から30℃と70℃でのG’の変化量〔log(G’30℃/G’70℃)〕を算出し、耐熱性を評価した。ここで、この30℃と70℃でのG’の変化量が0に近いほど耐熱性が良いことを意味する。
〔5〕耐衝撃性
以下の試験1及び2の方法により、耐衝撃性を評価した。
(A)試験1
図1に示すように、大理石等からなる基台62の上にシリコーンゴム薄肉板61(厚さ5.15mm)を載せ、この上に厚さ0.7mmの溶融成形アルミノケイ酸薄板ガラスである基層2(コーニング社製、商品名「Corning 1737」)を載せた。そして、該基層2の上に、上記実施例1〜3及び比較例1のエラストマーフィルム1を載置した。次いで、ゴルフボール7(直径42.7mm、質量45.8g)を、所定高さから上記実施例1〜3及び比較例1のエラストマーフィルム上に自由落下させ、衝突させた。その後、基層2にひびや割れが起きていないか目視で確認した。そして、基層2が破損した時の高さを落球高度(m)として求め、この落球高度から、以下の式により衝撃破壊エネルギー(J)を算出することにより、耐衝撃性を評価した。
衝撃破壊エネルギー(J)=A×B×9.8
A;落球高度(m) B;ゴルフボールの重量(kg)
(B)試験2
図2に示すように、大理石等からなる基台62の上に、厚さ2mmの鉄板60(SUS304製)を載せた。この鉄板60上に、厚さ1.0mmのアクリル板4(日東樹脂工業社製、商品名「クラレックス」)を載せ、更にこの上に、厚さ0.7mmの溶融成形アルミノケイ酸薄板ガラスである基層2(コーニング社製、商品名「Corning 1737」)を載せた。そして、該基層2の上に、上記実施例1〜3又は比較例1のエラストマーフィルム1及び厚さ0.5mmのアクリル板3を載置した。次いで、鋼球8(直径50.8mm、質量550g)を、所定高さから上記実施例1〜3及び比較例1のエラストマーフィルム上に自由落下させ、衝突させた。その後、基層2にひびや割れが起きていないか目視で確認した。そして、基層2が破損した時の高さを落球高度(m)として求め、この落球高度から、以下の式により衝撃破壊エネルギー(J)を算出することにより、耐衝撃性を評価した。
衝撃破壊エネルギー(J)=A×B×9.8
A;落球高度(m) B;鋼球の重量(kg)
Figure 2005133086
表1の結果から明らかなように、実施例1〜3のエラストマーフィルムは、透明性、着色性、機械的強度、耐熱性、及び耐衝撃性のいずれにも優れていることが分かる。これに対し、極性基変性オレフィン系共重合体中の極性基を介した金属による架橋を含んでいない比較例1のエラストマーフィルムでは、透明性及び着色性は実施例1〜3のエラストマーフィルムと同程度であるが、耐熱性、耐衝撃性及び機械的性質は実施例1〜3のエラストマーフィルムよりも劣ることが分かる。
(4)その他の方法により得られたエラストマーフィルムの物性評価
窒素雰囲気下、上記共重合体(A−1)100質量部及び上記金属化合物(B−1)1.0質量部をそれぞれ230℃に加熱した10L双腕型加圧ニーダー(モリヤマ社製)に投入し、40rpmで20分間混練りした(ずり速度200s−1)。その後、得られた溶融状態の塊状混練物を180℃、40rpmに設定したフィーダールーダー(モリヤマ社製)によって造粒し、ペレット化したエラストマー材料を得た。そして、得られたエラストマー材料のペレットを、500mmTダイを取り付けた押出機(服部歯車製作所社製、型式「MG427」、スクリューは単軸ユニメルトスクリューであって、スクリューのフライト部の長さLとスクリューの直径Dとの比L/Dが26、Tダイリップ厚みは0.5mmである。)によって、シリンダー内温度が210℃、スクリュー回転数が30rpmの条件で押出成形することにより、厚み0.05mm、幅500mmである実施例4のエラストマーフィルムを得た。
また、窒素置換した2L二口フラスコに、上記共重合体(A−1)100gと脱水処理したトルエン1900gとを加えて80℃にて溶解した。この溶液に上記金属化合物(B−1)の85%ブタノール溶液0.6gを加え、80℃にて1時間攪拌して混合溶液を調製した。そして、得られた混合溶液を、ポリエステルフィルム上にキャストし、24時間風乾した後、更に80℃で4時間真空下で乾燥した。その後、ポリエステルフィルム上に形成された膜を剥離することにより、厚みが100μmである実施例5のエラストマーフィルムを得た。
更に、コーター(ヒラノテクシード社製、「M−200」)を用い、上記実施例5で調製した上記混合溶液をコンマダイレクトのクリアランス2mmにてポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥温度100℃にて乾燥することにより、厚みが100μmである実施例6のエラストマーフィルムを得た。更に、上記塗布後、電子線照射装置(日新ハイボンデージ社製、「EBC360−60」)を用い、200kV、100kGyの条件で電子線照射を行い、その後、乾燥温度100℃にて乾燥することにより、厚みが100μmである実施例7のエラストマーフィルムを得た。
上記実施例4〜7の各エラストマーフィルムについて、上記実施例1〜3と同様の方法により、透明性、着色性、機械的強度、耐熱性、及び耐衝撃性を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2005133086
尚、本発明においては、上記実施例に限らず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
本発明のエラストマーフィルムは、従来のフィルムに比べて、透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性に優れている。そのため、透明性、耐衝撃性、耐熱性及び着色性が要求される分野、例えば、情報機器用ロール、クリーニングブレード、電子部品用フィルム、シール材、写真などの画像保護膜、建材用化粧フィルム、医療用機器部品、電線、日用雑貨品、スポーツ用品等の一般加工品にも幅広く利用することができる。また、本発明のエラストマーフィルムは、上記特性を生かして、携帯電話、携帯情報端末、デスクトップ型コンピュータ用、ノート型コンピュータ用、又は車載用コンピュータ用ディスプレイ、タッチパネル、テレビジョン、及び時計等のディスプレイ用パネル等に好適に使用することができる。
本実施例の耐衝撃性試験(試験1)を説明するための模式図である。 本実施例の耐衝撃性試験(試験2)を説明するための模式図である。
符号の説明
1;エラストマーフィルム、2;基層、3,4;アクリル板、60;鉄板、61;弾性板、62;基台、7;ゴルフボール、8;鋼球。

Claims (15)

  1. 極性基変性オレフィン系共重合体と、金属イオン及び/又は金属化合物と、よりなるエラストマー層を有することを特徴とするエラストマーフィルム。
  2. 上記極性基変性オレフィン系共重合体に含まれる極性基が、カルボキシル基及びその誘導体、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、スルホン酸基、並びにニトリル基のうちの少なくとも1種である請求項1記載のエラストマーフィルム。
  3. 上記極性基変性オレフィン系共重合体は、極性基変性エチレン・α−オレフィン系共重合体及び極性基変性エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体のうちの少なくとも1種である請求項1又は2記載のエラストマーフィルム。
  4. 上記極性基変性オレフィン系共重合体は、オレフィン系単量体の1種又は2種以上と、極性基を有する不飽和単量体の1種又は2種以上とを共重合して得られる共重合体であり、且つ上記極性基変性オレフィン系共重合体中の単量体単位を100モル%とした場合、上記極性基を有する不飽和単量体単位の割合は0.01〜5モル%である請求項1又は2記載のエラストマーフィルム。
  5. 上記官能基を有する不飽和単量体が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項4記載のエラストマーフィルム。
    Figure 2005133086
    [一般式(1)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Y、Y及びYは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、又はカルボキシル基を示し、Y、Y及びYのうち少なくとも1つはカルボキシル基であり、また、Y、Y及びYのうち2つ以上がカルボキシル基である場合は、それらは互いに連結して形成された酸無水物であってもよい。oは0〜2の整数であり、pは0〜5の整数である。]
  6. 上記極性基変性オレフィン系共重合体が、電子線照射、紫外線照射、及び架橋剤により形成される架橋を含まない請求項1乃至5のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
  7. 上記極性基変性オレフィン系共重合体の少なくとも一部が、電子線照射、紫外線照射、及び架橋剤により形成される架橋を含む請求項1乃至5のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
  8. 上記金属イオン及び/又は金属化合物は、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウム、及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオン及び/又は化合物である請求項1乃至7のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
  9. 上記金属化合物が、金属元素を含有する有機化合物である請求項1乃至8のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
  10. 上記エラストマー層は、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上である請求項1乃至9のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
  11. 上記エラストマー層の少なくとも一方の表面に他のフィルム層及び/又は硬質透明板層を有する請求項1乃至10のいずれかに記載のエラストマーフィルム。
  12. 極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物を溶媒に溶解又は分散することにより混合液を調製し、該混合液を基材上に塗布し、次いで上記溶媒を除去することにより上記基材上にエラストマー層を形成することを特徴とするエラストマーフィルムの製造方法。
  13. 極性基含有オレフィン系共重合体及び金属化合物の含有液を用い、押出法により成形してエラストマー層を形成することを特徴とするエラストマーフィルムの製造方法。
  14. 上記エラストマー層を基材上に配置する請求項13記載のエラストマーフィルムの製造方法。
  15. 上記エラストマー層に電子線照射、紫外線照射又は加熱を行うことにより、極性基含有オレフィン系共重合体の少なくとも一部に架橋を形成する請求項12乃至14のいずれかに記載のエラストマーフィルムの製造方法。
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