JP2006046443A - エンドキャップ式ボールねじ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ボールナット3の端面に刻設された連結溝32と、この連結溝32に対向して位置するようにエンドキャップ4の端面に刻設された湾曲溝41とからボール方向転換路7を構成する。このボール方向転換路7は、負荷ボール通路6の端部からねじ軸2のねじ溝2aのリード角θ方向へ転がり出たボール5を、湾曲溝41がねじ溝2aの表面に沿って外径部肩口2cまで迫り上げたのち外径部肩口2cを支点として迫り上げ、その後、外径部2bに乗り上げさせることなくねじ溝2aからボールを完全に離脱させるボール離脱領域と、離脱したボール5を収容してボール戻し通路31の端部へ案内するボール案内領域とからなる。
【選択図】図12
Description
なお、両ねじ溝のリード角が同一であること、及び、ボール戻し通路の孔径をボールの直径よりも僅かに大きくしていることはいうまでもない。
伊澤實著,「ボールねじ応用技術」,初版1刷,株式会社工業調査会,1993年5月20日,p.19−20
エンドキャップの内周面に、両ねじ溝と同一のリード角を有して螺旋状に延びるねじ山を突設するととともに、このねじ山のボールナット側先端にボールを掬い上げるためのタング部を形成している。また、エンドキャップのボールナット対向端面に、両ねじ溝と同一のリード角を有して内周面側に開口するボール案内溝と、このボール案内溝に連接するボール旋回溝とを一体的に刻設している。さらに、ボールナットの両端面に、それぞれ、その端面とボール戻し通路の端部とを連接するためのボール旋回溝を刻設している。
具体的には、ねじ軸のねじ溝内にエンドキャップのねじ山を遊嵌させた後、負荷ボール通路の端部からねじ軸のねじ溝のリード角方向へ転がり出てボール案内溝まで案内されたボールを、タング部に乗り上げさせるようにして掬い上げてねじ軸のねじ溝から離脱させる。そして、対向配置させたエンドキャップのボール旋回溝とボールナットのボール旋回溝とによって、離脱したボールを90°旋回させてボール戻し通路の端部へ案内するようにしている。
他方、強度及び耐久性を考慮してタング部先端の肉厚を厚くした場合、ねじ溝とタング部との間に段差が生じる。このため、ボールがタング部に乗り上げる際にタング部に大きな衝撃が加わってしまい、経時的な使用によってタング部が損傷するという問題がある。また、ボールがタング部に乗り上げる度に、衝突音が発生するという問題もある。
このエンドキャップ式ボールねじは、外周面に螺旋状のねじ溝102が形成されたねじ軸101と、内周面にねじ溝102に対向する螺旋状のねじ溝105が形成されるとともに、肉厚内に軸方向の貫通孔からなるボール戻し通路106を有してねじ軸101に遊嵌されるボールナット104と、このボールナット104の両端面111,111にそれぞれ装着されるとともに、その端面111との間に両ねじ溝102,105間からなる負荷ボール通路112の端部とボール戻し通路106の端部とを連通させるボール方向転換路113を形成する一対のエンドキャップ114,114と、負荷ボール通路112、ボール戻し通路106及びボール方向転換路113,113内に循環可能に介挿された多数のボール100とを具えている。
以下、ボール方向転換路113の構成を具体的に説明する。
また、開口溝107は、負荷ボール通路112の端部から転がり出たボール100をねじ溝102から離脱させるためのボール離脱領域108と、離脱したボールをボール戻し通路106の端部へ案内するためのボール案内領域109とからなる。
この開口溝107を端面111に対向するエンドキャップ114の平坦面115で被覆することにより、ボール方向転換路113が構成される。
ボール100の進行方向から見たボール離脱領域108の横幅は、ねじ溝105から開口溝107内に進入したボール100が徐々にねじ溝102から離脱するように、ボール案内領域109へ近づくにつれ徐々に広がるように形成されている。
同図からわかるように、ボール100は、ねじ軸101、開口溝107の側面及びエンドキャップ114の平坦面115と常に3点接触しており、これら3点で抱持されるようにしてねじ溝102から離脱する。
具体的に説明すると、ボール100は、ねじ溝102の表面に沿って迫り上げられた後(分図(II)〜(III))、ねじ溝102と外径部103との間、すなわち外径部肩口(符号を付さず。)を支点として迫り上げられる(分図(IV)〜(VI))。そして、ボール100は、ボール離脱領域108の終点付近でねじ溝102から完全に離脱して、外径部103に乗り上げた状態になる(分図(VII))。
このボール案内領域109によって、ボール100は、ボール離脱領域108からボール戻し通路106へ、又はボール戻し通路106からボール離脱領域108へ案内される。
(1)ボール離脱領域108及びボール案内領域109は上述のように形成されているので(例えば、ボール100が外径部103に完全に乗り上げるようにしている。)、開口溝107の全長、すなわち、ボール方向転換路113の全長が、従来の「エンドキャップにタング部を設けたときのボール方向転換路」より長くなる。このため、
I)ボールナット104のねじ溝105の巻数を、従来の「エンドキャップにタング部を設けたときのボールナット」(以下、「従来仕様品」という。)の巻数と略同一にしたい場合、ボールナット104の長さが従来仕様品より長くなる。その結果、ねじ軸101を回転する仕様の場合、ボールナット104の移動可能距離が短くなる。
II)ボールナット104の長さを従来仕様品と略同一にしたい場合、ねじ溝105の巻数が従来仕様品の巻数より少なくなる。このことは、負荷ボール通路112内に介挿できるボール100の個数が減少することを意味する。その結果、ボールねじの基本定格荷重、特に疲れ寿命に関与する動定格荷重の値が従来仕様品より低減する。
よって、ボールナット104を従来仕様品と互換できない場合がある。
I)ボール100の転動に対して大きな抵抗が作用して、ボール100の円滑な循環が阻害される。
II)エンドキャップの材質として、通常、POM(ポリアセタール)等のエンジニアリング・プラスチック(以下、「エンプラ」という。)が用いられる。このエンプラ製エンドキャップ114の平坦面115にボール100の衝撃力が繰り返し作用するから、経時的な使用によって平坦面115が破損する蓋然性がある。
III)ボール100が平坦面115に衝突する度に衝突音が発生する。特に、エンドキャップ114の材質を金属とした場合、衝突音が高くなる。
前記ボール方向転換路が、前記ボールナットのねじ溝の切り通し端部と該ねじ溝に対応する前記ボール戻し通路の端部とを連結するように前記ボールナットの端面に刻設された連結溝と、該連結溝に対向して位置するように前記エンドキャップの端面に刻設された湾曲溝とから構成されとともに、
該ボール方向転換路が、前記負荷ボール通路の端部から前記ねじ軸のねじ溝のリード角方向へ転がり出た前記ボールを、前記湾曲溝が前記ねじ軸のねじ溝の表面に沿って外径部肩口まで迫り上げたのち該外径部肩口を支点として迫り上げ、その後、前記ねじ軸の外径部に乗り上げさせることなく前記ねじ溝から前記ボールを完全に離脱させるボール離脱領域と、離脱した前記ボールを収容して前記ボール戻し通路の端部へ案内するボール案内領域とからなることを特徴とする。
(1)ボールナットを従来仕様品(エンドキャップにタング部を設けたときのボールナット)と互換することができる。
(2)ボールの循環をより円滑に行うことができる。
(3)ボールがエンドキャップに衝突する際の衝撃力及び衝突音を軽減することができる。
なお、図1、図3、図5及び図6は無限循環するボール列が2組のボールねじ、すなわち、二条のボールねじを示しているが、各ボール列の循環構造は同一であるので、一条のボールねじとして説明する。
なお、符号2b,2c及び35は、それぞれ、ねじ軸2の外径部、外径部肩口(ねじ溝2aと外径部2bとの間)、及び、ボールナット3をナットハウジング(図示せず。)に取り付けるためのねじ挿通孔を示す。また、符号doは、ねじ軸2の外径を示す。
同図より明らかなように、ねじ溝2aの断面は、2つの円弧を合わせた、いわゆる、「ゴシックアーク」と称呼される形状を有している。具体的には、ボール5の直径及びねじ溝適合度をそれぞれDw及びf(通常、f=0.52〜0.55)とすると、ねじ溝2aの断面は、曲率中心をOsとする曲率半径f・Dwの 円弧を左右対称に配置した形状に構成されている。そして、ボールねじ1の軸方向すきまを0、すなわちボール5と両ねじ溝2a,3a間のすきまを0としたとき(但し、無予圧とする。)、ボール5がねじ溝2aと接触角αで点接触するようにしている。
なお、符号Dpwは、ボール5のピッチ円径を示す。ここで、ピッチ円径とは、JIS B1192−1997(ボールねじ)の「用語の定義」に準じて、両ねじ溝2a,3aと接触角αで点接触しているボール5の中心OBを包含する仮想円筒の直径をいう。
ボールナット3の両端面には、それぞれ、ねじ溝3aの切り通し端部とこのねじ溝3aに対応するボール戻し通路31との端部とを連結する連結溝32が、ボール戻し通路31に関して左右対称に刻設されている。
この連結溝32は、ボール戻し通路31の孔径と同一の刃径Dt(Dt>Dw)のボールエンドミル(以下、「BEM」という。)を用いて形成される。具体的には、連結溝32をNC(数値制御)加工するためのUN−ZN座標平面が設定されたのち、後述するBEMの中心軌跡T上の各点T8,T7,・・・,T2,T1の順に連結溝32が創成される。
なお、
(1)UN−ZN座標平面は、後記の図7のU−Z座標平面と正負の方向を逆にしている。また、UN座標と後記の図8のX座標との関係は、UN≒−X とみなしている。
(2)図3中の符号33及び34は、それぞれ、後述するエンドキャップ4の突出部42が嵌合される嵌合凹部、及び、エンドキャップ4をボールナット3の端面に装着するためのねじ孔を示す。また、図4中の符号θは、ねじ溝3a(及びねじ溝2a)のリード角を示す。
エンドキャップ4のボールナット対向端面には、上述の連結溝32に対向して位置するように、突出部42が突設されるとともに湾曲溝41が突出部42に跨って刻設されている。
この湾曲溝41は、連結溝32と同様に、刃径DtのBEMを用いて形成される。具体的には、湾曲溝41をNC加工するためのU−Z座標平面が設定されたのち、BEMの中心軌跡T上の各点T1,T2,・・・,T7,T8の順に湾曲溝41が創成される。
また、エンドキャップ4の内径deは、ボール5のピッチ円径Dpwより小さく、かつ、ねじ軸2の外径doより大きくなるように設定されている(do<de<Dpw)。
なお、
(1)U−Z座標の原点を、BEMの加工の始点であるT1点としている。また、U座標と後記の図8のX座標との関係は、前記のUN座標と同様に、U≒Xとみなしている。
(2)図5及び図6中の符号43は、ボールナット3のねじ孔34に対応するねじ挿通孔を示す。
(3)エンドキャップ4の材質として、前述したPOM等のエンプラを用いることが好ましい。
また、このボール方向転換路7は、負荷ボール通路6の端部からねじ溝2aのリード角θ方向へ転がり出たボール5を、湾曲溝41がねじ溝2aの表面に沿って外径部肩口2cまで迫り上げたのち外径部肩口2cを支点として迫り上げ、その後、外径部2bに乗り上げさせることなくねじ溝2aからボール5を完全に離脱させるボール離脱領域と、離脱したボール5を収容してボール戻し通路31の端部へ案内するボール案内領域とからなる。
なお、BEMの中心軌跡Tの態様は、負荷ボール通路6の端部からねじ溝2aのリード角θ方向へ転がり出たボール5が、湾曲溝41に接しながらボール戻し通路31の端部まで移動することを前提として与えられる。
(1)図8は、図5の部分拡大詳細図である(但し、図面手前にボールナット3の端面が対向するとともにねじ軸2が遊嵌しているものとする。)。図9は、図7の拡大詳細図、すなわち、図8のIX−IX線矢視切断面の展開図である(但し、座標軸U及びZを図示せず。)。図10は、図9の部分拡大詳細図である(但し、連結溝32を図示せず。)。図11は、湾曲溝41(図示せず。)がねじ溝2aからボール5を迫り上げる際のボール5の中心軌跡の態様(後記のT(X,Y)上のB1点〜B4点の範囲)を示す説明図である。図12は、ボール離脱領域の態様とボール案内領域の一部の態様を示す説明図である。
このT(U,Z)は、ねじ溝中心軸V(前記の図2参照)に平行、すなわち、リード角θと同一角度で傾斜する直線部(T1点〜T2点の範囲)と、この直線部の終点であるT2点及びエンドキャップ4の端面(リード角0°)上に位置するT6点をそれぞれ接点とする半径R1の単一円弧部(T2点〜T6点の範囲)と、エンドキャップ4の端面上に位置する直線部(T6点〜T7点の範囲)と、この直線部の終点であるT7点及びボール戻し通路31の中心軸C上に位置するT8点をそれぞれ接点とする半径R2の単一円弧部(T7点〜T8点の範囲)とから構成されている。
(1)上述のリード角θと同一角度で傾斜する直線部(T1点〜T2点の範囲)及び半径R1の単一円弧部(T2点〜T6点の範囲)が創成する湾曲溝41によって、前述のボール離脱領域におけるボール5の転動方向角度がθから0°に緩やかに変化するともに、湾曲溝41と外径部肩口2cとの間隔、すなわち、前記の距離Wが狭まることによりボール5がねじ溝2aから離脱していく(図12の分図(1)〜(4)参照)。
(2)外径部肩口2cを示す細い二点鎖線が中心軌跡B上のB6点と交差するようにしている。すなわち、図12の分図(6)に示すように、外径部肩口2cの鉛直上にB6点が位置するようにしている。
このT(X,Y)は前述のT(U,Z)に対応しており、前記のピッチ円径Dpwを直径とする円弧部(B1点〜B2点の範囲)と、前記の高さH(前記の距離Wの関数)によって与えられる曲線部(B2点〜B4点の範囲)と、直線部(B4点〜B8点の範囲)とから構成されている。
なお、ボール5は、負荷ボール通路6の端部から転がり出た当初、ねじ溝2aのリード角θ方向へ進行するとともに、その中心がピッチ円径Dpw上を移動する。すなわち、図9及び図10に示すように、中心軌跡B上のB1点〜B2点の範囲は、ねじ溝中心軸V上に位置する。そうすると、B1点〜B2点の範囲を直線部とするためのT(U,Z)上のT1点〜T2点の範囲は、幾何学的関係により、ねじ溝中心軸Vに平行な直線になる。このため、上述したように、T(U,Z)上のT1点〜T2点をリード角θと同一角度で傾斜する直線部とするとともに、T(X,Y)上のB1点〜B2点をピッチ円径Dpwの円弧部としている。
なお、ボール離脱領域を創成するためのBEMの中心軌跡を、T(X,Y)上のB1点〜B5点の範囲(T(U,Z)上のT1点〜T5点の範囲)とした理由は後述する。
最初に、BEMの加工の始点であるT(U,Z)上のT1点(T(X,Y)上のB1点)と、ねじ溝3aの切り通し終端との位置関係について説明する。なお、前記の図2に示したように、ねじ溝3aの下方にねじ溝2aが対向していることはいうまでもない。
図9及び図10に示すように、ねじ溝3a(及び2a)のねじ溝中心軸Vがボールナット3の端面(エンドキャップ4の端面でもある。)と交差する点、すなわち、ねじ溝3aの切り通し終端点をFとしたとき、T1点とF点との距離Lは、幾何学的関係(具体的に図示せず。)により次式(2)のようになる。なお、図8において、F点に対応する点をF対応点(図示せず。)とする。
そうすると、図8のX−Y座標において、原点OX−YとB1点及びF対応点をそれぞれ結ぶ直線がなす角度をηとしたとき(図示せず。)、距離Lと角度ηとの間には、次式(3)の関係が成立する。すなわち、図8のY軸は、F対応点からの角度ηの位置に設定されている。そして、このY軸とピッチ円径Dpwの円との交差点をB1点としている。なお、式(3)中、πは円周率を示す。
そうすると、距離Pは次式(6)のようになる。また、距離Qは、幾何学関係(図示せず。)により、適用範囲をT1点〜T2点とする次式(7−1)、及び、適用範囲をT2点〜T6点とする次式(7−2)のように場合分けされる。
なお、便宜上、式(7−1)及び(7−2)が成立するときのQを、それぞれ、Qi及びQjと表記する。また、式(7−2)中、M及びR1は、それぞれ、前記の式(4)及び(5)から与えられる。
なお、便宜上、式(8−1)、(8−2)及び(8−3)が成立するときのWを、それぞれ、Wi,Wj及びWB3と表記する。また、式(8−2)中、M,R1及びQjは、それぞれ、前記の式(4)、(5)及び(7−2)から与えられる。
なお、便宜上、式(9−1)、(9−2)及び(9−3)が成立するときのHを、それぞれ、Hi(=HB1=HB2),Hj1及びHj2と表記する。また、式(9−2)及び(9−3)中、Wjは上記の式(8−2)から与えられる。但し、変曲点であるB3点のときの高さHB3は、WjをWB3(上記の式(8−3)参照)として与えられる。
前述したように、図8の中心軌跡T(B)、すなわち、T(X,Y)上のB1点〜B4点の範囲(ボール5をねじ溝2aから迫り上げるための範囲)は、上記の高さHによって与えられる。具体的に説明すると、ねじ軸2の外径部2b上から上記の式(9−1)、(9−2)及び(9−3)によってそれぞれ与えられる高さHi,Hj1及びHj2をプロットして(このとき、Hj2の最大値であるDw/2までプロットする。)、高さHのプロット曲線を作成する。そして、予め位置が設定されているB8点(ボール戻し通路31の中心軸C上に位置する。)からプロット曲線に接線を引き、その接点をB4点としている。
なお、このようにした理由は、ボール5が外径部2bに完全に乗り上げた位置、すなわち、高さHj2が最大値Dw/2になる位置をボール離脱領域の終点(ボール案内領域の始点でもある。)とした場合、それだけボール方向転換路7の全長が長くなるとともに、ボール5に無駄な動作をさせることになるからである。また、このボール5の無駄な動作が、ボール方向転換路7内でボール5同士がかみ合ってボール詰まりの要因になると考えられるからである。
なお、図8をCAD図面にすれば、B4点〜B8点までの任意の点における高さHの具体的な値を求めることができる。また、図9も同様にCAD図面にすれば、B4点〜B6点までの任意の点における距離Wの具体的な値を求めることができる(前記の式(8−2)から求めることもできる。)。
このT(U,Z)上のT6点〜T8点の態様は、前述したように、エンドキャップ4の端面上に位置する直線部(T6点〜T7点の範囲)と、この直線部の終点であるT7点及びボール戻し通路31の中心軸C上に位置するT8点をそれぞれ接点とする半径R2の単一円弧部(T7点〜T8点の範囲)とから構成されている。
この半径R2は、エンドキャップにボールを掬い上げるためのタング部を設けた従来のボールねじにおいて、実験及び経験則から得られている値を転用したものであって、本発明においては、
R2=κ・Dt (κは、2>κ>1の常数) ・・・・・・ (10)
としている。
なお、ボール5が、T(U,Z)上のT6点〜T8点の態様によって創成される湾曲溝41に摺接しながら90°旋回することはいうまでもない。
なお、表1において、
I)X−Y−Z座標の原点を、前述したように、図8中のOX−Y、並びに、対応する図7、図9及び図10中のT1点としている。
II)M,R1,P,Hj1,Hj2及びR2は、それぞれ、前記の式(4)、(5)、(6)、(9−2)、(9−3)及び(10)から与えられる。
III)X|B4及びY|B4という表記は、それぞれ、B4点におけるX座標及びY座標を示している(X|B7及びY|B7という表記も同様である。)。
IV)Gという表記は、図8におけるT(X,Y)の直線部(B4点〜B8点の範囲)上の任意の点に位置するBEM中心とB4点との直線部における距離を示している。また、βという表記は、T(X,Y)の直線部(B4点〜B8点の範囲)の座標軸Xに対する角度を示している。
これらの各分図は、前述したように、負荷ボール通路6の端部からねじ軸2のねじ溝2aのリード角θ方向へ転がり出たボール5を、BEMの中心軌跡T(X,Y,Z)によって創成された湾曲溝41がねじ溝2aの表面に沿って外径部肩口2cまで迫り上げたのち外径部肩口2cを支点として迫り上げ、その後、外径部2bに乗り上げさせることなくねじ溝2aからボール5を完全に離脱させていく態様、すなわち前述のボール離脱領域の態様(分図(1)〜(5))と、離脱したボール5がボール案内領域に収容されていく態様(分図(5)〜(7))を示している。
従って、請求項3に係る発明の「湾曲溝を、ボール戻し通路の孔径と同一の刃径のボールエンドミルを用いて創成した」という文言は、金型によって射出成形された湾曲溝を含むものである。
2 ねじ軸
2a ねじ溝
2b 外径部
2c 外径部肩口
3 ボールナット
3a ねじ溝
4 エンドキャップ
5 ボール
6 負荷ボール通路
7 ボール方向転換路
31 ボール戻し通路
32 連結溝
41 湾曲溝
BEM ボールエンドミル
θ リード角
Dt ボールエンドミルの刃径
Dpw ピッチ円径
de エンドキャップの内径
do ねじ軸の外径
Claims (5)
- 外周面に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、内周面に前記ねじ溝に対向する螺旋状のねじ溝が形成されるとともに、肉厚内に軸方向の貫通孔からなるボール戻し通路を有して前記ねじ軸に遊嵌されるボールナットと、該ボールナットの両端面にそれぞれ装着されるとともに、該端面との間に前記両ねじ溝間からなる負荷ボール通路の端部と前記ボール戻し通路の端部とを連通させるボール方向転換路を形成する一対のエンドキャップと、前記負荷ボール通路、ボール戻し通路及びボール方向転換路内に循環可能に介挿された多数のボールとを具えたエンドキャップ式ボールねじにおいて、
前記ボール方向転換路が、前記ボールナットのねじ溝の切り通し端部と該ねじ溝に対応する前記ボール戻し通路の端部とを連結するように前記ボールナットの端面に刻設された連結溝と、該連結溝に対向して位置するように前記エンドキャップの端面に刻設された湾曲溝とから構成されるとともに、
該ボール方向転換路が、前記負荷ボール通路の端部から前記ねじ軸のねじ溝のリード角方向へ転がり出た前記ボールを、前記湾曲溝が前記ねじ軸のねじ溝の表面に沿って外径部肩口まで迫り上げたのち該外径部肩口を支点として迫り上げ、その後、前記ねじ軸の外径部に乗り上げさせることなく前記ねじ溝から前記ボールを完全に離脱させるボール離脱領域と、離脱した前記ボールを収容して前記ボール戻し通路の端部へ案内するボール案内領域とからなることを特徴とする、 エンドキャップ式ボールねじ。 - 前記ねじ軸のねじ溝のリード角をθとしたとき、前記ボール離脱領域における前記ボールの転動方向角度を前記θから0°に緩やかに変化させた、請求項1のエンドキャップ式ボールねじ。
- 前記連結溝及び湾曲溝を、前記ボール戻し通路の孔径と同一刃径のボールエンドミルを用いて創成した、請求項1又は2のエンドキャップ式ボールねじ。
- 前記エンドキャップの内径を、前記ボールのピッチ円径より小さく、かつ、前記ねじ軸の外径より大きくした、請求項1から3のいずれかのエンドキャップ式ボールねじ。
- 前記両ねじ溝をゴシックアーク形状とした、請求項1から4のいずれかのエンドキャップ式ボールねじ。
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