JP2006038512A - 血液濾過用ガラス繊維フィルター、血液濾過器具および血液分析素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ガラス繊維を有機酸を用いて洗浄した後に、ガラス繊維の表面をポリ(アルコキシアクリレート)のような生体適合性の高分子で被覆してなる血液濾過用ガラス繊維フィルター。該血液濾過用ガラス繊維フィルターを用いた血液濾過器具および乾式血液分析素子。
【選択図】 図6
Description
このような多項目の検査のための分析方法として、従来からウェットケミストリー分析法が開発されてきた。これは、いわゆる溶液試薬を用いる方法である。多項目の検査を目的とした、ウェットケミストリー分析法を用いた装置は、多項目に相当する多数の試薬溶液およびその取扱を組み合わせているため、一般に複雑であり、装置の取り扱い及び手順も簡便ではない。
一つの方法として、分析法に溶液を使用しない、すなわち、特定成分の検出に必要な試薬類が乾燥状態で含有されている、いわゆるドライケミストリー分析方法が開発されてきている(非特許文献1、特許文献1)。
これに対してフィルターを使う方法で血球分離をする装置が開発され(特許文献2等)ており、血球分離に要する時間がある程度短縮されたが、血球分離と検出は別の作業であり、時間の短縮が充分であるとは言い切れない。
また、血球を分離するフィルターとしてガラス繊維を用いた場合、ガラス繊維から溶出する成分或いはガラス繊維に吸着する成分がその後の血液検査の分析に影響を及ぼす可能性があるが、これに対してはガラス繊維を予め酢酸等の有機酸で処理する方法が提案されている。(特許文献2)
これに対して、針による血液採取、濾過および遠心による血球分離、および電極法によるウェットケミストリー分析法を組み合わせて、血液採取から分析までの手段を一体化した分析装置が提案されている(特許文献4)が、操作の簡便性の点で充分に満足できるものには至っていない。また、測定値のばらつきが起こることがあり、臨床検査における測定の精度という観点からも満足できるものには至っていない。
さらに、医療現場では、検体の採取から分析、検出までがより迅速に行われることが求められている。また、近年、院内感染が大きな社会問題となっており、特に血液からの感染の防御が要望されている。検査時に検査従事者が血漿あるいは血清に触れてしまうことを防止できる血液検査ユニットとして、光検出器と組み合わせることにより、血液採取から分析、検出までの手段を一体化した分析装置が提案されている(特許文献5)。
ガラス繊維に蛋白などの成分を吸着しにくくする方法としては、ヒト血清アルブミン(HSA),牛血清アルブミン(BSA)などをガラス繊維に予め吸着させておき、いわゆる非特異的な吸着を抑制することが考えられるが、血液中の成分分析に用いる全血を濾過する際には、予め吸着させたアルブミンが侠雑物となって成分分析に影響するので実用的ではない。
本発明の他の目的は、上記血液濾過用ガラス繊維フィルターを用いることにより、血漿中の成分の濃度に変化を起こすことがなく、遠心分離によると同等の成分の血漿を短時間で濾過回収することができる血液濾過器具を提供することにある。
そこで、本発明のさらなる目的は、上記血液濾過用ガラス繊維フィルターを用いることにより、検査精度をより高めることができ、さらには安全でかつ操作が簡便で多項目について迅速に検出まで行うことの可能な血液分析素子を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の構成により上記目的を達成したものである。
2) ガラス繊維を酸を用いて洗浄した後に、該ガラス繊維の表面を高分子で被覆してなることを特徴とする血液濾過用ガラス繊維フィルター。
3) 前記高分子がアクリレート系高分子であることを特徴とする1)又は2)に記載の血液濾過用ガラス繊維フィルター。
4) 前記アクリレート系高分子がポリ(アルコキシアクリレート)であることを特徴とする3)に記載の血液濾過用ガラス繊維フィルター。
5) 1)〜4)のいずれかに記載の血液濾過用ガラス繊維フィルターを用いたことを特徴とする血液濾過器具。
6) 5)に記載の血液濾過器具において、複数の部材を嵌合させ、嵌合させる部分にシール部材を挟むことで減圧時に実質的に気密かつ水密となることを特徴とする血液濾過器具。
7) 1)〜4)のいずれかに記載の血液濾過用ガラス繊維フィルターを用い、該ガラス繊維フィルターを通過した濾液が乾式分析要素に接触することを特徴とする血液分析素子。
また、本発明によれば、血漿中の成分の濃度に変化を起こすことがないので、遠心分離によると同等の成分の血漿を短時間で濾過回収することができる血液濾過器具が提供される。
さらにまた、本発明によれば、血漿中の成分の濃度に変化を起こすことがないので、検査精度をより高めることができ、さらには安全でかつ操作が簡便で多項目について迅速に検出まで行うことの可能な血液分析素子が提供される。
[血液濾過用ガラス繊維フィルター]
以下、本発明の血液濾過用ガラス繊維フィルターについて説明する。
本発明の血液濾過用ガラス繊維フィルターは、表面を高分子で被覆してなるガラス繊維からなるフィルターである。
ガラス繊維の材料としては、ソーダガラス、低アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英などが挙げられる。
本明細書でいう円相当直径とは、いわゆる等価直径(equivalent diameter)のことであり、機械工学の分野で一般的に用いられている用語である。任意断面形状の配管(本発明では、非水溶性物質、繊維、ガラス繊維に当たる。)に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径を等価直径といい、deq:等価直径は、A:配管の断面積、p:配管のぬれぶち長さ(周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、一辺aの正四角形管ではdeq=4a2/4a=a、路高さhの平行平板間の流れではdeq=2hとなる。これらの詳細は「機械工学事典」((社)日本機械学会編1997年、丸善(株))に記載されている。
円相当半径は、円相当直径と同様に算出する。
[参考図1]赤血球がガラス繊維GFに絡みつく走査型電子顕微鏡SEMの図(図1)
血液濾過の濾過材として用いるガラス繊維濾紙で、全血中の赤血球が捕捉される様子を観察した。ヘパリンリチウムを抗凝固剤とした真空採血管で健常人男性から全血を採血した。このときのHct値は45%であった。この全血をワットマン社製のガラス繊維濾紙GF/D(ガラス繊維の直径約3μm以下)に室温で10μL滴下し、1%グルタルアルデヒドを含有する0.1モル/Lリン酸緩衝液(pH7.4)の中に全血を滴下したガラス繊維濾紙を速やかに入れ、室温で2時間静置して赤血球を硬膜させた。その後、水/t−ブタノール混合液にガラス繊維濾紙を浸漬し、水/t−ブタノール混合比を徐々に変えて最終的にt−ブタノールに置換し、冷蔵庫に約1時間静置して凍結させた。ガラス繊維濾紙を含む凍結したt−ブタノール溶液を凍結乾燥機に入れて溶媒を除去した。こうして得た、全血を滴下してある乾燥状態のガラス繊維濾紙を走査型電子顕微鏡で観察し、倍率1000倍の写真を得た。図1に写真を示した。図1の写真において、写真のフルスケールの横幅は120μmである。赤血球が直径約3μm以下のガラス繊維で捕捉できている。
比較として、直径約8μmおよび直径約10μmのガラス繊維濾紙、ならびに直径約15μmのアセチルセルロース繊維濾紙を濾材として同様の実験を行った。直径約8μmのガラス繊維では、赤血球が捕捉できていない。直径約10μmのガラス繊維および直径約15μmのアセチルセルロース繊維では、赤血球は全く捕捉できていない。
このことから、特定の円相当直径をもつ繊維、すなわち非水溶性物質を、血液濾過用の濾材として用いることにより、検体として全血を用いる場合に、全血から赤血球を迅速に効率よく除去することができることが分かる。さらには、全血から赤血球を除去するのに、特別な装置を作動させる必要がないので、血漿を試薬に迅速に供給でき、測定に至るまでの時間を短縮できる。
[参考図2]赤血球がガラス繊維GFに絡みつくMC−FANの図(図2)
血液の流れを観察して計測する装置MC−FAN(日立原町電子工業(株)製)を用いて、赤血球などの細胞が微細流路を通過する際の動的形態観察を行う応用として、赤血球がガラス繊維に捕捉される様子を観察した。
容量200mLの三角フラスコにイオン交換水を100g入れ、そこにガラス繊維濾紙(ワットマン社製;GF/D)100mgを秤量して投入し、マグネティックスターラを用いて撹拌して分散させ、濃度1000ppmのガラス繊維懸濁液を調製した。この1000ppmガラス繊維懸濁液300μLを生理的食塩水(生食)10mLに分散させ、濃度30ppmのガラス繊維懸濁液を調製した。30ppmガラス繊維懸濁液500μLとヘパリンリチウム採血管を用いて採血した全血500μLを静かに混合し、ガラス入り全血試料液を得た。比較として、全血と生食各々500μLを静かに混合した全血試料液を得た。
2種類の全血試料液における液の流れを、MC−FANの装置を用いて観察した。観察には日立原町電子工業(株)製のカスタムチップ(Bloddy6−7などの型式が付与)を用いた。2種類の全血試料液を観察した動画の1コマを図2に示した。全血試料液にガラス繊維がない場合は赤血球はスムーズに流れたが、全血試料液にガラス繊維が存在する場合は、直径2μm程度の細いガラス繊維に赤血球が絡まる様子を直接見ることができた。
ガラス繊維の表面を被覆する高分子としては、まず、血液中の成分として存在しない高分子でなければならない。また、高分子として、ポリスチレンスルホン酸,ポリスチレンスルフィン酸などの高分子電解質を、或いはポリエチレングリコール,エチレンオキサイド・プルピレンオキサイド共重合体などの高分子界面活性剤を用いると、全血中の赤血球が破壊(溶血)する可能性が高く、このような高分子を用いることも実用的ではない。なお、溶血は全血を遠心分離して得た上清の色味を目視で確認することによって、簡便に確認することができる。
そこで、ガラス繊維の表面を生体適合性高分子で被覆することによって、溶血の可能性を最小限に抑えることができる。具体的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート(PHEMA)、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)などのアクリレート系高分子、より好ましくはPMEAなどのポリ(アルコキシアクリレート)を使用して表面処理をする方法などを挙げることができる。
溶血を起こすことのない生体適合性の高分子としては、アクリレート系高分子以外にも、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、絹、ポリ(εーカプロラクトン)を挙げることができるが、アクリレート系高分子は、適度に親水性であるという点で好ましい。
また、アクリレート系高分子としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリ(アルキル(メタ)アクリレート)、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート(PHEMA)等のポリ(ヒドロキシ(メタ)アクリレート)、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)等のポリ(アルコキシ(メタ)アクリレート)を、挙げることができる。
特に、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)等のポリ(アルコキシアクリレート)が、ガラス繊維表面を処理する際にエタノール、メタノールなどのアルコール系の有機溶媒に溶解させることができるので、取り扱いのしやすさの点で好ましい。
また、ガラス繊維の表面を高分子で被覆する方法としては、浸漬、塗布、噴霧など、通常の高分子による被覆方法を採用することができる。具体的には、後述するガラス繊維濾紙をポリマー溶液に浸漬する方法やガラス繊維濾紙にポリマー溶液を噴霧する方法が挙げられるが、ガラス繊維の表面を均一に被覆するという点で、ガラス繊維濾紙をポリマー溶液に浸漬する方法が好ましい。
本発明の血液濾過用ガラス繊維フィルターとしては、ガラス繊維を酸を用いて洗浄した後に、該ガラス繊維の表面を高分子で被覆してなるものが好ましい。
ガラス繊維を洗浄処理する酸としては、特に有機酸が好ましい。
本発明の血液濾過用ガラス繊維フィルターは、例えば、以下に記載の、ガラス繊維濾紙と微多孔性膜が積層されている血液濾過材料と、該血液濾過材料を収容するホルダーとよりなる血液濾過ユニットにおける、ガラス繊維濾紙として使用される。
以下、本発明の血液濾過器具の一例として使用することができる血液濾過ユニットのガラス繊維濾紙、微多孔性膜、ホルダーについて説明する。
ガラス繊維濾紙は2種類に分けられる。
細断は上記のサイズにできる市販の裁断機を使用して行えばよい。細断小片の充填に際して繊維方向に特に注意する必要はない。
ガラス繊維濾紙の濾過液出口側には、さらに血球と血漿の分離を促進し、また、漏出血球を阻止するため微多孔性膜を配置する。
ホルダーは血液濾過材料を収容するものであって、血液入口と濾過液出口が設けられているものである。このホルダーは、一般に血液濾過材料を収容する本体と、蓋体に分けた態様で作製される。通常は、いずれにも少なくとも1個の開口が設けられていて、一方は血液供給口として、場合により更に加圧口として、他方は吸引口として、場合により更に濾過された血漿または血清の排出口として使用される。濾過された血漿または血清の排出口を別に設けることもできる。ホルダーが四角形で蓋体を側面に設けた場合には血液供給口と吸引口の両方を本体に設けることができる。
以下、本明細書では、ホルダーの一例としての嵌合ホルダー、すなわち、複数の部材を嵌合させ、嵌合させる部分にシール部材を挟むことで減圧時に実質的に気密かつ水密となる血液濾過器具について、詳しく説明する。
図3は、本発明に係る血液濾過器具の実施形態を示す斜視図である。図4及び図5は、それぞれ、図3に示す血液濾過器具10を構成するフィルタ収容部材(内管)12及びホルダ部材(外管)14の断面図を示している。図6は、フィルタ収容部材12及びホルダ部材14を嵌合させた血液濾過器具10の断面図を示している。
図3に示す血液濾過器具10は、円筒形状のフィルタ収容部材12とホルダ部材14とからなり、ホルダ部材14の下方から、シール部材である多孔質膜17を介してフィルタ収容部材12を嵌合できるようになっている。
フィルタ収容室16の上端(出口側)には、濾過液(血漿)をホルダ部材14(図5)側へ排出する開口部19を有している。
また、仕切壁23の周縁部分には、嵌合溝21bが形成されている。フィルタ収容部材12がホルダ部材14に収納されると、フィルタ収容室16に充填された血液濾過フィルタ15が下方に押し込められ、嵌合溝21bにフィルタ収容室16側壁の上端部分が嵌り込む(図6)。
なお、多孔質膜17は、濾過に必要な気密・水密性を保持するためには必ずしも必要なものではないが、前述したように、嵌合部28における接合力及び器具の濾過性能を向上させることができるため、フィルタ収容部材12とホルダ部材14との嵌合部28に多孔質膜17を介在させることが好ましい。
フィルタ収容部材12及びホルダ部材14は、樹脂成形等の手段によって製造することができる。
以下では、本発明の血液分析素子の一例として使用することができる多項目測定乾式分析素子について説明する。
多項目測定乾式分析素子は、検出器として、エリアセンサ、ラインセンサまたは電気化学検出器を用いる。そこで、まず、検出器について説明する。
[検出器]
(イ)エリアセンサは、紫外光・可視光・赤外光などの光あるいは電磁波を感知し、2次元的な情報を得ることができるように配列させたものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、CCD、MOS、写真フィルム等が挙げられる。この中でも、CCDが好ましい。多項目測定乾式分析素子を、エリアセンサを用いて検出することにより、1項目について1000画素以上の情報から測定結果を得ることができ、かつ同時に複数項目の測定が可能となる。
(ロ)ラインセンサは、紫外光・可視光・赤外光などの光あるいは電磁波を感知し、1次元的な情報を得ることができるように配列させたものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、フォトダイオードアレイ(PDA)、スリット状に光を検出するように配置した写真フィルム等が挙げられる。この中でも、フォトダイオードアレイが好ましい。上記の特定の多項目測定乾式分析素子を、ラインセンサを用いて検出することにより、同時に複数項目の測定が可能となる。
(ハ)電気化学検出器は、導電性物質媒体における電流量、電位差、電気伝導度、抵抗を計測することができるものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、金電極、白金電極、銀電極、炭素電極などの導電物質単独の電極、銀塩化銀電極、酸素電極、グルコースオキシダーゼなどの酵素を被覆した修飾電極などの複合電極あるいはこれらの組み合わせ等が挙げられる。この中でも、グルコースオキシダーゼなどの酵素を被覆した修飾電極が好ましい。上記の特定の多項目測定乾式分析素子を、電気化学検出器を用いて検出することにより、同時に複数項目の測定が可能となる。
次に多項目測定乾式分析素子について詳述する。以下、検出器として(イ)エリアセンサを用いる場合について説明する。検出器として(ロ)ラインセンサを用いる場合、および(ハ)電気化学検出器を用いる場合も、(イ)エリアセンサの場合と同様に適用することができる。
多項目測定乾式分析素子は、流路、(顕色)反応試薬および該(顕色)反応試薬を担持している部分を有しており(本発明における「乾式分析要素」とは、例えば、ガラス繊維フィルターを通過した濾液(血漿)と接触し反応(して顕色)する(顕色)反応試薬とそれを担持している部分を指す。(顕色)反応試薬を担持している部分で代表して説明することもある。)、該流路の幅、深さ、長さのうち少なくともひとつが1mm以上であり、かつ該(顕色)反応試薬を担持している部分の幅が流路の幅の2倍以上 および/または (顕色)反応試薬を担持している部分の長さが流路の長さの0.4倍以上であることが好ましい。
まず、流路について説明する。
「流路」
前記流路は、前記したとおり、幅、深さ、長さのうち少なくともひとつが1mm以上であることが好ましい。より好ましくは、1mm〜100mmの範囲であり、また最も好ましい範囲は1mm〜30mmである。この範囲で、流路を検体が効率よく進行し、好ましい。
該流路は、検体である血液が通過可能であれば、いずれの形態をも採ることができる。 また、該流路は、1つのみでも、2つ以上に分岐しても、いずれでもよい。また、直線状、曲線状等、いずれの形態をとることも可能であるが、直線状であることが好ましい。
プラスチックあるいはゴムとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサイクリックオレフィン(PCO)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの誘導体が挙げられる。
シリコン含有物質としては、ガラス、石英、シリコンウエファー等のアモルファスシリコン、ポリメチルシロキサンなどのシリコーンが挙げられる。
中でも、PMMA、PCO、PS、PC、ガラス、シリコンウエファーが好ましい。
プラスチックの例としては、PCO、PS、PC、PMMA、PE、PET、PP等を挙げることができる。ゴムの例としては、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム、PDMS等を挙げることができる。
シリコン含有物質としては、ガラス、石英、シリコンウエファー等のアモルファスシリコン、ポリメチルシロキサンなどのシリコーンが挙げられる。
特に好ましい例としては、PMMA、PCO、PS、PC、PET、PDMS、ガラス、シリコンウエファー等を挙げることができる。
代表的な方法を挙げれば、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、Deep RIEによるシリコンの高アスペクト比加工法、Hot Emboss加工法、光造形法、レーザー加工法、イオンビーム加工法、およびダイアモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法などがある。これらの技術を単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。好ましい微細加工技術は、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、および機械的マイクロ切削加工法である。
マイクロリアクターや微小分析要素の作成方法は、例えば"マイクロリアクター"(吉田潤一監修、CMC社刊)に記載されている方法を使用することができる。
「(顕色)反応試薬」
顕色反応試薬は、検体の被測定成分の定性・定量分析に必要な試薬であり、検体の被測定成分と反応し、発色するもの、または蛍光・発光など、光・電気・化学反応などの作用で光を発するものを言う。本発明においては、検体の種類および測定する項目に合わせて適宜選択することができる。一例として、富士写真フイルム(株)製の富士ドライケム マウントスライドGLU−P(測定波長;505nm,測定成分;グルコース)とTBIL−P(測定波長;540nm,測定成分;総ビリルビン)が挙げられる。本発明において、多項目測定乾式分析素子が有する顕色反応試薬は、乾燥している試薬を用いる。乾燥している試薬とは、いわゆるドライケミストリーに使用する試薬である。ドライケミストリーに使用することができる試薬であれば、どのような試薬でも用いることができる。
具体的には、例えば、富士フイルム研究報告、第40号(富士写真フイルム(株)、1995年発行)p.83や、臨床病理、臨時増刊、特集第106号、ドライケミストリー・簡易検査の新たなる展開(臨床病理刊行会、1997年発行)等に記載されているものをあげることができる。
「(顕色)反応試薬を担持している部分」(乾式分析要素)
以下、主に、顕色反応試薬を使用する場合について説明する。検出器として電気化学検出器を用いる場合、反応試薬を担持している部分が担持しているのが反応試薬であること以外は、エリアセンサ等における場合の顕色反応試薬を担持している部分と同様である。
該顕色反応試薬を担持している部分は、前記したとおり、その幅が流路の幅の2倍以上 および/または 顕色反応試薬を担持している部分の長さが流路の長さの0.4倍以上であることが好ましい。
該顕色反応試薬を担持している部分は、1つのみでも、2つ以上でも、いずれでもよい。また、2つ以上の場合には、1箇所にまとめても、別々に配列してもよい。
該顕色反応試薬を担持している部分は、前記流路と接続した形態でも、該顕色反応試薬を担持している部分が流路内に組み込まれた形態でもよい。また、前記流路と接続した形態の場合には、該顕色反応試薬を担持している部分はセルであってもよい。該セルとしては、流路に対する幅および/または長さが前記を満たせばどのような形態であってもよい。セルの素材としては、流路に前記したものと同じ材料が挙げられる。また、好ましいものも同じである。
流路と、該顕色反応試薬を担持している部分との接続には、接合技術を用いることができる。通常の接合技術は大きく固相接合と液相接合に分けられ、一般的に用いられている接合方法は、固相接合として圧接や拡散接合、液相接合として溶接、共晶接合、はんだ付け、接着等が代表的な接合方法である。
更に、高温加熱による材料の変質や大変形による流路等の微小構造体の破壊を伴わない寸法精度を保った高度に精密な接合方法が望ましく、その技術としてはシリコン直接接合、陽極接合、表面活性化接合、水素結合を用いた直接接合、HF水溶液を用いた接合、Au−Si共晶接合、ボイドフリー接着などが挙げられる。
また、超音波、レーザー等を用いる接合、接着剤、接着テープなども使用する接合を使用してもよいし、単に圧力だけで、接合していてもよい。
好ましくは、乾式多層フィルムを、顕色反応試薬を担持している部分における試薬層として用いる。乾式多層フィルムは、検体中の被測定成分の定性・定量分析に必要な全てのまたはその一部分の試薬を1層以上の層に組み込むことができ、好ましい。乾式多層フィルムとしては、前述のドライケミストリーに使用されるものが挙げられる。具体的には、富士フイルム研究報告、第40号(富士写真フイルム(株)、1995年発行)p.83や、臨床病理、臨時増刊、特集第106号、ドライケミストリー・簡易検査の新たなる展開(臨床病理刊行会、1997年発行)等に記載されているものをあげることができる。乾式多層フィルムを、顕色反応試薬を担持している部分における試薬層として用いることにより、多段反応を段階的に行うことが容易になり、好ましい。また、安定して同一品質のものを作り出すことができ、すなわちロット差を考慮する必要なく、かつ臨床検査が求める測定精度を満足することができ、好ましい。
乾式多層フィルムに多孔質膜を接着させる方法には、特に制限はないが、例えば乾式多層フィルム1m2あたり15〜30gの水を用いて湿らせ、多孔質膜を室温で3〜5kg/cm2の圧力をかけて圧着することで、乾式多層フィルムに多孔質膜を接着させることができる。
乾式多層フィルムに微粒子を接着させる方法は、特に限定はないが、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリイソプロピルアクリルアミド、あるいは両者の混合物を微粒子の質量に対して1〜10%添加した水溶液を多層フィルムに塗布・乾燥させる方法を挙げることができる。
検体の種類が本発明におけるように血液の場合、上記顕色反応試薬を担持している部分に検体を供給する前に、濾過方法を用いることが好ましい。濾過方法としては、従来公知のいずれのものも適用可能であるが、本発明では、濾材として、円相当直径が5μm以下の繊維を用いた濾過方法が、特に、検体として全血を用いる場合に、全血から赤血球を迅速に効率よく除去することができ、好ましい。また、特別な装置を作動させることなく、全血から赤血球を除去した後、血漿を試薬に供給することができ、結果的に、検出に至るまでの時間を短縮することができ、好ましい。
より好ましくは、円相当直径が5μm以下の繊維と、多孔質膜を組み合わせることが、全血の量が多い場合にも赤血球が漏れることがなく、充分な量の血漿を試薬に供給でき、好ましく、さらには、円相当直径が5μm以下の繊維がガラス繊維であることが好ましい。
本発明では、濾材として、特にガラス繊維の表面を高分子で被覆してなるものを、血液濾過用として用いる。
また、空隙率は高いものが好ましく、具体的には、空隙率が約40%から約95%が好ましく、より好ましくは約50%から約95%、さらに好ましくは約70%から約95%の範囲である。
多孔質膜の例としては、従来公知のポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、弗素含有ポリマー膜、セルロースアセテート膜、ニトロセルロース膜等が挙げられる。好ましくは、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜である。
また表面を加水分解、親水性高分子、活性剤などで親水化処理したものも使用できる。 親水化処理に適用される加水分解法、親水性高分子、活性剤などは、親水化処理の際に通常用いる方法、化合物を使用することができる。
以下、多項目測定乾式分析素子の好ましい態様の一例を図7、図8を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
検体は多項目測定乾式分析素子A100の注入口A3より注入される。注入された検体は流路A1を通り、顕色反応試薬を担持している部分A2に導かれる。前記のとおり、流路A1には、検体の種類によって、濾過方法を適用するための濾材A6を配置することができ、あるいは、高分子多孔質体を配置することができ、または、流路A1自体に空間を刻印することができる。顕色反応試薬を担持している部分A2に顕色反応試薬A7を配置する。図7では、下材A5に微細加工技術を用いてA1、A2およびA3を作製しているが、前述のとおり、A1、A2、A3の構成を作製し、下材A5の代わりに下蓋を設けて、組み立てて作製してもよい。
多項目測定乾式分析素子の形および大きさは、手で持ちやすい範囲であれば、いずれの形、大きさでも良い。具体的には、例えば、底面の一辺が10〜50mm位の長方形で、厚みが2〜10mm位のものが好ましい形および大きさとして挙げられる。
多項目測定乾式分析素子を組み立てる際には、前述の顕色反応試薬を担持している部分と流路とを接続する際に用いる接合技術と同じ技術を用いることができる。
[採血ユニット]
該採血ユニットは、前記多項目測定乾式分析素子を、採血器具に装着し、略気密状態を保ちつつ摺動自在に組み合わされることにより、内部に減圧可能に密閉空間を画成することが可能である。該採血ユニットは、前記多項目測定乾式分析素子を、採血器具に装着することができ、略気密状態を保ちつつ摺動自在に組み合わされることができ、内部に減圧可能に密閉空間を画成することが可能であれば、どのような形、大きさであってもよい。 手で持ちやすく操作しやすい範囲であることが好ましい。
該採血ユニットは、内部に減圧可能に密閉空間を画成することにより、採血された全血が、多項目測定乾式分析素子の流路に入り、顕色反応試薬を担持している部分まで迅速に導くことができる。
採血ユニットの素材としては、前記流路における素材と同じものを挙げることができる。好ましい範囲も同じである。
採血ユニットを組み立てる際には、前述の顕色反応試薬を担持している部分と流路とを接続する際に用いる接合技術と同じ技術を用いることができる。
採血ユニットと穿刺針の接合方法は、前述の顕色反応試薬を担持している部分と流路とを接続する際に用いる接合技術と同じ技術を用いることができる。
穿刺針は中空の針であり、血管より血液を採取し、採血ユニットを摺動することによる減圧によって、全血が、多項目測定乾式分析素子の流路に導入されるものである。穿刺針は、上記の範囲を満たせば、例えば、通常の注射針のようなものであってもよいが、微量採血という点からみて小型のものであってもよい。また、針の先端を細くすることにより、採血時の痛みを軽減するのも好ましい。また、前述の微細加工技術を利用して作成することもできる。
穿刺針を構成する素材は、通常は金属であり、ステンレス類、ニッケル−チタン合金、タングステン類等のようないわゆる注射針として使用されるような素材を挙げることができる。また、多項目測定乾式分析素子を構成する素材として前述したプラスチック類などの樹脂を使用することも可能である。具体的には、PCO、PS、PC、PMMA、PE、PET、PP、PDMS等が挙げられる。
多項目測定乾式分析素子A100は採血器具B1に方向C1から装着され、採血ユニットB100となる。装着後、穿刺針B2をヒトまたは動物などに刺し全血Dを採血する。 前記したとおり、採血器具の一部を方向C2に摺動し、これにより内部が減圧され、採血された全血Dが多項目測定乾式分析素子A100の流路A1に入り、さらには、顕色反応試薬を担持している部分A2に導かれ、反応する。反応後、多項目測定乾式分析素子A100を採血器具B1から脱着し、検出に供することができる。多項目測定乾式分析素子A100は採血器具B1から方向C1、すなわち、装着する際と同じ方向のまま、採血器具B1の向こう側へ脱着する態様、または方向C1とは逆方向、すなわち装着する際と同じ側から脱着する態様のいずれでもよい。
また、指先、肘、かかとなどをランセットなどで穿刺して末梢血を取り出し、それを検査に用いる場合においては、採血ユニットの採血器具に穿刺針は不要である。中空構造をもち、血液を分析要素に導くことができる機能を有する構造であればよい。
上記多項目測定乾式分析素子に供する検体としては、ヒトやその他の動物の血液があげられる。
以下、図11を用いて、エリアセンサを用いた場合の測定装置の概略構成を示す。
測定装置100は、測定対象となる検体を設置する多項目測定乾式分析素子設置部1と、検体に光を照射するハロゲンランプ等の発光素子を用いた光源2と、光源2から照射される光の強度を変化させる光可変部3と、光源2から照射される光の波長を変化させる波長可変部4と、光源2から照射される光を平行化及び集光するレンズ5a及び5bと、検体からの反射光を集光するレンズ5cと、レンズ5cで集光された反射光を受光する受光素子としてのエリアセンサ6と、各部を制御すると共に光可変部3の状態とエリアセンサ6で受光した光の光量とに応じた測定結果を求めてディスプレイ等に出力するコンピュータ7とを備える。尚、ここでは、コンピュータ7が各部を制御する構成としているが、各部を統括制御するコンピュータを別に用意しておいても良い。
次に、嵌合式の多項目測定乾式分析素子について説明する。図12は、本発明に係る嵌合式の乾式分析素子の実施形態を示す断面図である。図13及び図14は、それぞれ、図12に示す乾式分析素子50を構成する上部材30及び下部材40の上面図(図13(A),14(A))及び断面図(図13(B),14(B))を示している。
図12〜14に示すように、本実施形態に係る乾式分析素子50は、外形がほぼ直方体の上部材30と下部材40とからなり、シール部材である多孔質膜52(図12)を介して、上部材30を下部材40に嵌合できるようになっている。
上部材30の下面側には、短い円柱状の嵌合凸部35が形成されており、円柱軸の位置に流路34と連通している排出路39が配置されている。排出路39により、流路34により送られた濾過液を下方に導き、排出路39の出口38から下部材40(図14)に送液される。
嵌合凹部46の底面部には、乾式分析要素54を配置するセル42が、例えば9箇所に格子状に設けられている。乾式分析要素54は、血液の濾過液(血漿)が接触することによって、発色変化等の反応を示すものである。また、この嵌合凹部46の側壁には、吸引ポンプ(図示せず)等の吸引装置に接続する吸引ノズル44が水平方向に延設されている。
なお、多孔質膜52についても、上記の血液濾過器具10(図3)と同様に、濾過に必要な気密・水密性を保持するためには必ずしも必要なものではないが、上部材30と下部材40との嵌合部55に配置されることによって、嵌合部55における接合力及び濾過性能を向上させることができるため、上部材30と下部材40との嵌合部55に多孔質膜52を介在させることが好ましい。
(A)酢酸処理;
厚さ約1mmに抄紙した、ガラス繊維濾紙(ワットマン社製;GF/D)を縦約200mm,横約150mmにカットし、3枚重ねてステンレス製のバットに入れる。酢酸1mLをイオン交換水999gに溶解させた、濃度約16.5mMの酢酸水溶液200mLをこのバットに静かに入れてガラス繊維濾紙に浸し、30秒間バットをゆすって液を浸透させてから4分30秒静置する。その後バットを30秒間傾斜させて液を除去する。この酢酸水溶液に浸漬する操作をもう一度行い、酢酸水溶液での処理を合計2回実施する。次に、イオン交換水200mLをこのバットに静かに入れてガラス繊維濾紙に浸し、30秒間バットをゆすって液を浸透させてからバットを30秒間傾斜させて液を除去する。このイオン交換水に浸漬する操作を更に4回実施し、イオン交換水での処理を合計5回実施する。続いてメタノール200mLをバットに静かに入れてガラス繊維濾紙に浸し、30秒間バットをゆすって液を浸透させてからバットを30秒間傾斜させて液を除去する。続いて、ピンセットでガラス繊維濾紙を挟んで静かに取り出し、予めドラフトの中に用意しておいた、(株)クレシア製のキムタオルを敷いて更に(株)クレシア製のキムワイプを敷いた部分に、ガラス繊維濾紙を静かにのせて、ドラフト内の空気を吸引しながら室温で1.5〜3時間乾燥させる。
酢酸処理と同様に、厚さ約1mmに抄紙した、ガラス繊維濾紙(ワットマン社製;GF/D)を縦約200mm,横約150mmにカットし、3枚重ねてステンレス製のバットに入れる。PMEA約20%のトルエン溶液(サイエンティフィック・ポリマー・プロダクツ社製;PMEAの分子量約10万)1mLをメタノール199mLに希釈させて得た、濃度約0.1%のPMEA溶液をこのバットに静かに入れてガラス繊維濾紙に浸し、30秒間バットをゆすって液を浸透させてから4分30秒静置する。その後バットを30秒間傾斜させて液を除去する。次に、ピンセットでガラス繊維濾紙を挟んで静かに取り出し、予めドラフトの中に用意しておいた、キムタオルを敷いて更にキムワイプを敷いた部分に、ガラス繊維濾紙を静かにのせて、ドラフト内の空気を吸引しながら室温で1.5〜3時間乾燥させる。
酢酸処理,PMEA処理などを実施したガラス繊維濾紙は、キムタオルを敷いて更にキムワイプを敷いたものの上にのせてあるが、それごと真空乾燥機に入れて、室温で15〜21時間,0.01〜10mPa程度の圧力で減圧乾燥させる。乾燥終了後に実験室内の雰囲気(20〜30℃,30〜70%RH程度)に3時間以上放置してビニール袋に入れて保管する。
富士フイルムメディカル(株)から「富士ドライケムプラズマフィルターPF」の名称で販売されている、全血から血漿を回収するフィルターの樹脂製のカートリッジに、酢酸処理・PMEA処理をしない/したガラス繊維濾紙を各々充填し、更に富士ドライケムプラズマフィルターPFで使用しているポリスルホン多孔質膜(富士写真フイルム(株)製)を装着し、超音波融着して血液濾過評価用のフィルターカートリッジを作製した。作製したフィルターカートリッジを用い、富士ドライケム3500で規定されている減圧のシーケンスにしたがって全血を用いて吸引濾過し、血漿を得た。得られた血漿の成分を、(株)日立製作所製の臨床検査自動分析装置7170を用いて定量した。比較のために、3000rpmの回転数で10分遠心分離して得た血漿の成分を定量した。この実験において、健常人の男性から抗凝固剤としてヘパリンリチウムを用いた採血管を用いて採血し、得られた全血のへマトクリット値はH46%であった。また、吸引時間60秒で全血3mLから血漿340μLを得た。
(A)嵌合式濾過器具
図3〜6に示す透明ポリスチレン樹脂(PS)製の外管および内管を作成した。厚さ約1mmに抄紙したガラス繊維濾紙(ワットマン社製;GF/D)を直径8mmに打ち抜き、打ち抜いたガラス繊維濾紙16枚を内管の内径8mmの部分に装填した。富士ドライケムプラズマフィルターPFで使用しているポリスルホン多孔質膜(富士写真フイルム(株)製)を直径11mmに打ち抜き、外管の内径11mmの部分で直径8mmの突起がある部分に挿入した。ガラス繊維濾紙を充填した内管とポリスルホン多孔質膜を挿入した外管を、ポリスルホン多孔質膜を挟み込むようにして嵌合した。この嵌合したフィルターユニットを用いて血液濾過に使用した。すなわち、内管のノズル部分を全血に浸漬し、外管の嵌合に用いていない端から吸引することによって減圧濾過をして全血から血漿を回収する形状のユニットを作成した。
上記で作製した、嵌合式のフィルターユニットを用いて血液濾過を実施した。嵌合式のフィルターユニットに充填するガラス繊維濾紙には、酢酸処理・PMEA処理をしない/したガラス繊維濾紙を各々用いた。富士ドライケム3500で規定されている方法と同等の減圧のステップのシーケンスにしたがって全血を吸引濾過し、赤血球が漏れることなく血漿を得た。得られた血漿の成分を、(株)日立製作所製の臨床検査自動分析装置7170を用いて定量した。比較のために、3000rpmの回転数で10分遠心分離して得た血漿の成分を定量した。この実験において、健常人の男性から抗凝固剤としてヘパリンリチウムを用いた採血管を用いて採血し、得られた全血のへマトクリット値はH46%であった。また、総吸引時間200秒で、全血1mLから血漿140μLを得た。
(A)平板チップ(嵌合式)の作製
以下の手順に従って図12に示す上部材30と下部材40とを多孔質膜52を介して嵌合した乾式分析素子50を作製した。
透明ポリスチレンを用いて成形した、約24mm×28mmのサイズの上部材30及び下部材40を用意した。嵌合凸部35及び嵌合凹部46の直径を約9mmとした。濾過フィルタ36として、赤血球捕捉・血漿抽出用のガラス繊維濾紙(ワットマン社製;GF/D)を予め酢酸処理したのちにPMEA処理したガラス繊維を流路34に充填した。
続いて、多孔質膜52として、ポリスルホン多孔質膜(富士写真フイルム社製)を一辺が約18mmの正方形にカットしたものを用意した。このポリスルホン多孔質膜を嵌合凹部46の上方に静かに乗せ、嵌合凸部35と嵌合凹部46との嵌合部に挟み込むようにして上部材30と下部材40とを嵌合させた。(平板チップ)
図11に示す測定装置100を用意した。各部材の設定は以下の通りとした。
測定装置100;倒立の実体顕微鏡。
CCD受光部での倍率は以下の2通りを用意。
0.33倍; CCD部分で33μm/ピクセル
1倍; CCD部分で10μm/ピクセル
光源72;林時計工業(株)製のルミナーエース LA−150UX
波長可変部74(干渉フィルタ);625nm,540nm,505nmで各々単色化
光可変部73(減光フィルタ);HOYA(株)製のガラスフィルタ ND−25
およびステンレス板に孔をあけた自家製フィルタ
エリアセンサ76(CCD);SONY(株)製の8ビット白黒カメラモジュール XC−7500
コンピュータ77(データ処理(画像処理));(株)ニレコ製の画像処理装置 LUZEX−SE。
反射光学濃度を校正するための手段;富士機器工業(株)製の標準濃度板(セラミック仕様)を以下の6種類用意。
標準濃度板;A00(反射光学濃度〜0.05)、
A05(同0.5)、
A10(同1.0)、
A15(同1.5)、
A20(同2.0)、
A30(同3.0)。
上記で作製した嵌合式乾式分析素子50(平板チップ)の供給口32にプレーン採血した全血を200μL注入し、10〜20秒静置して全血をガラス繊維濾紙(濾過フィルタ36)に展開させた後に、吸引ノズル44にシリコン製のチューブが接続し、このチューブの先にディスポーザブルシリンジ(テルモ(株)製)を装着して、静かにシリンジのピストンを引いて吸引した。
濾過により抽出された血漿がポリスルホン多孔質膜を通過して、ドライケム マウントスライドに滴下され、GLU−PおよびTBIL−Pスライドが徐々に発色を開始した。 全血が注入されてから血漿を抽出してマウントスライドに滴下するまでに要した時間は30秒であった。
CCDカメラで撮像した画像をLUZEX−SEで処理する際に、GLU−PおよびTBIL−Pの画像の中心部分について、各々縦1.4mm×横1.4mmの範囲の受光量を画像処理によって算出した。このとき、光学系の倍率0.33倍を使用したので、画素は縦42ピクセル×横42ピクセル、すなわち画素数1764で計測した。CCDカメラを用いて測定した結果が正しいかどうか比較するために、日立製作所製の自動臨床検査装置7170を用いて検体中のグルコース及び総ビリルビン濃度を求めた。以上の結果を表7に示す。このとき、GLU−PおよびTBIL−Pスライドでは測定波長が異なるため、表8に示すように干渉フィルターの波長を5秒ごとに逐次変えて測光した。
なお、ここでは、乾式分析要素54として、2項目分のドライケミストリー用試薬を使用したが、適宜項目数を増加することができる。
12 フィルタ収容部材
14 ホルダ部材
15,36 血液濾過フィルタ
17,52 シール部材(多孔質膜)
19 フィルタ収容部材の検体出口側(上端)の開口部
A100 多項目測定乾式分析要素
A1 流路
A2 顕色反応試薬を担持している部分
A3 注入口
A4 上蓋
A5 下材
A6 濾材
A7 顕色反応試薬
E1 上蓋の接合方向
E2 濾材の配置場所を表す矢印
E3 顕色反応試薬の配置場所を表す矢印
B100 採血ユニット
B1 採血器具
B2 穿刺針
C1 多項目測定乾式分析要素の装着方向
C2 減圧する際の摺動方向
D 全血
28,55 嵌合部
30 上部材
40 下部材
50 乾式分析素子
54 乾式分析要素
100 測定装置
71 多項目測定乾式分析要素設置部
72 光源
73 光可変部
74 波長可変部
75a、75b、75c レンズ
76 エリアセンサ
77 コンピュータ
Claims (7)
- ガラス繊維の表面を高分子で被覆してなることを特徴とする血液濾過用ガラス繊維フィルター。
- ガラス繊維を酸を用いて洗浄した後に、該ガラス繊維の表面を高分子で被覆してなることを特徴とする血液濾過用ガラス繊維フィルター。
- 前記高分子がアクリレート系高分子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血液濾過用ガラス繊維フィルター。
- 前記アクリレート系高分子がポリ(アルコキシアクリレート)であることを特徴とする請求項3に記載の血液濾過用ガラス繊維フィルター。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の血液濾過用ガラス繊維フィルターを用いたことを特徴とする血液濾過器具。
- 請求項5に記載の血液濾過器具において、複数の部材を嵌合させ、嵌合させる部分にシール部材を挟むことで減圧時に実質的に気密かつ水密となることを特徴とする血液濾過器具。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の血液濾過用ガラス繊維フィルターを用い、該ガラス繊維フィルターを通過した濾液が乾式分析要素に接触することを特徴とする血液分析素子。
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