JPH05188053A - 血液から血清又は血漿成分を分離する器具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】ヒトまたは動物からの採血にあたり、血清又は
血漿が採血と同時あるいは即座に分離でき、採血と同時
に多数の血液成分の検査を可能とするものである。 【構成】不織布、セルロ−ス繊維またはガラス繊維とポ
リエチレングリコ−ルまたはDocusate sodium などの
湿潤力をもつ界面活性剤単独あるいはそれらの混合物を
コ−ティングした、また所望によりレクチンを含浸させ
た分離層を設けることを特徴とし、これを真空あるいは
手動採血器具中に設置した装置により、ヒトまたは動物
からの直接採血時、ほとんど同時に多量の血球分離を行
う方法及び器具に係る。 【効果】本発明はポリエチレングリコールまたは Docus
ate sodium などの湿潤力をもつ界面活性剤単独あるい
はそれらの混合物を特定の濃度で含有した繊維素材を主
体とする血球分離層を設置し、また所望によりレクチン
含浸層を設けることにより採取血液の溶血を防止し、採
取した血液から効率的に血清または血漿が即座に分離で
きる器具を提供するものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は血液から血清又は血漿成
分を簡便かつ効率的に分離・回収する器具に係わる。本
発明による器具は、緊急時の臨床化学分析検査、ベッド
サイド検査等リアルタイムな検査をしなければならない
際の血液試料からの血清又は血漿成分の分離・回収に利
用される。

【０００２】

【従来の技術】血液からの血清又は血漿の分離は、従来
より、また今日においても遠心分離機による方法が採ら
れ、一般的になっている。この方法は通常注射器により
採取された血液または抗凝固剤を含む血液を管状の容器
に入れ、６５０Ｇから１５００Ｇ程度の重力をかけ細胞
成分とそれ以外の部分に分離する方法である。分離され
た細胞成分以外の部分は必要な各種の臨床検査の試験に
供され、その結果を各種の診断治療に用いている。一
方、緊急検査、ベッドサイドの迅速検査に対応できるよ
う、試薬自体の中に血清又は血漿が分離できる機構がド
ライケミストリー試薬の進歩により開発されてきてい
る。

【０００３】例えば、Ｖｏｇｅｌらの米国特許第４，４
７７，５７５号にはろ紙状のガラス繊維の血球分離部と
試薬反応部分とが一体化した試験紙の方法が開示されて
いる。これによれば微量の血液（数μｌから３０μｌ）
から血清又は血漿が分離し、続いてそれらが血球分離部
と密着している試薬反応部位へ移動し、そこで反応が起
こり血清又は血漿の測定値がリアルタイムに得られると
なっている。また同様に、ロン．Ｒ．スト−バ−らの特
開昭６４−２１３６２号には赤血球凝集活性を有するレ
クチンと吸収性材料（親水性無機粉末、セルロース系材
料等）とを用いて濾紙状の吸収性マトリックスを血球分
離部として利用し、これを用いて、血液から血球成分と
血清・血漿成分を分離し反応部へと導く方法が開示され
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】遠心分離機による分離
方法等によれば、大病院以外にとっては高価で一般的で
ない遠心分離機を常に患者の近くに有していなければ、
リアルタイムに行う必要のある緊急検査や基本検査（通
常数項目〜１０項目程度）ができない。この様な装置を
持たない施設では採血されたままの状態で保存し、その
後装置を有する臨床検査センター等に検査を外注してい
るのが現状である。その結果、検査結果をリアルタイム
に得ることができないばかりでなく、時には数日かかっ
てしまうこともある。また、血液のまま保存することか
ら溶血等で、検査値に誤差を生じたり、検査値を得るこ
とができなかったりする場合もある。また、感染力を持
つ患者の場合などでは遠心分離操作時の注意以上に使用
後の容器の廃棄にも細心の注意が必要となる。

【０００５】一方また、前記の米国特許第４，４７７，
５７５号や特開昭６４−２１３６２号に開示されている
方法は血球分離部と試薬反応部分とが一体化とした方法
であり、上記の問題は解決されるがこの場合、ドライケ
ミストリ−の反応であるために例えば、免疫系の検査な
どは試薬反応部を作成することができていないのが現状
である。また、分離された血清・血漿成分は個々の検査
項目ごとに異なる反応試薬部が必要であり、数多く存在
する検査項目ごとにすべての反応試薬部は用意されてい
ない。さらに、これらの方法においては微量の血液を用
いて微量の試薬と反応させることが目的であるため単独
に血清・血漿を得ることは不可能である。また、これら
を拡張する方法、例えば単純に濾紙状の血球分離部を何
層か重ねて分離層とすることなどは溶血などの現象によ
り、血清・血漿を得ることは不可能であった。

【０００６】

【発明の目的】本発明による器具は、緊急時の臨床化学
分析検査、ベッドサイド検査等リアルタイムな検査をし
なければならない際の血液試料からの血清及び血漿成分
単独の分離・回収に簡便でかつ迅速な方法を提供するも
のである。従って、本発明は体液、例えば血液から数項
目〜１０項目程度の検査に供せられる血清又は血漿成分
を迅速にかつ簡便な器具により分離・回収することに係
わり、これによって、従来技術における上述の問題点を
解決することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段及び方法】本発明者らは、
血球分離素材として種々の繊維素材での血球分離能を調
べたところ、血液から数項目〜１０項目程度の検査に供
する血清又は血漿量を得るには分離中に溶血現象を起こ
し易く、不可能であることがわかった。しかしながら、
繊維状の血球分離層の種類およびそれらの長さと密度及
びコーティング剤の関係を鋭意研究したところ、不織
布、セルロ−ス繊維又はガラス繊維とコ−ティング剤か
らなり、繊維の長さが 100〜 3000 μm の範囲でありか
つ密度が 50 〜250 mg／cm³ である場合に効率よく血清
又は血漿が即座に分離できることを見出だした。特に、
コ−ティング剤としてポリエチレングリコ−ル又はDocu
sate sodium などの湿潤力をもつ界面活性剤が有効で
あることを見いだし本発明を完成するに至った。

【０００８】本発明のコーティング剤の濃度としては0.
01〜10％の範囲で十分な効果があった。さらに、コーテ
ィング剤として所望により血液に相互作用をもつレクチ
ンを利用することも有効であることを見出だした。レク
チンの種類としては、血液型非特異性のレクチンであれ
ばいかなるものでも良い。特に、コーティング剤に血液
型非特異性のレクチンを含む場合には少ない濃度で良好
な分離能を有することが分った。

【０００９】本発明は、血球分離層単独、あるいはコ−
ティング層の２層を接種用注射針、真空採血管、接合
針、分離血清収容のための真空採取管から構成される真
空自動採血用注射器あるいは採血用注射器具内に一体化
させ用いることにより、緊急時の臨床化学分析検査、ベ
ッドサイド検査等リアルタイムな検査をしなければなら
ない際の血液試料からの血清及び血漿成分単独の分離・
回収に一層有用な手段となる。

【００１０】

【発明の効果】数項目〜１０項目程度の検査に供する多
量の血液を血清又は血漿に採血と同時に簡便な器具を用
いて分離する方法は分離中に溶血現象を起こすため、こ
れまで実用化されてはいない。本発明はポリエチレング
リコールまたは Docusate sodium などの湿潤力をもつ
界面活性剤単独あるいはそれらの混合物を特定の濃度で
含有した繊維素材を主体とする血球分離層を設置し、ま
た所望によりレクチン含浸層を設けることにより採取血
液の溶血を防止し、採取した血液から効率的に血清また
は血漿が即座に分離できる器具を提供するものである。
以下実例をあげて、本発明を具体的に説明する。

【００１１】

【実施例】

製造例１ ガラス繊維（太さ 0.8 〜 2.5 μm ）を100 〜3000μ
m の長さに粉砕する。粉砕したガラス繊維をポリエチレ
ングリコール溶液に懸濁させた後円錐状の容器に100 〜
300mg/cm³ となるように充填・乾燥し、分離チップとす
る。

【００１２】製造例２ ガラス繊維（太さ 0.8 〜 2.5 μm ）を100 〜3000μ
m の長さに粉砕する。粉砕したガラス繊維を Docusate
sodium 溶液に懸濁させた後円錐状の容器に100 〜300m
g/cm³ となるように充填・乾燥し、分離チップとする。

【００１３】製造例３ ガラス繊維（太さ 0.8 〜 2.5 μm ）を100 〜3000μ
m の長さに粉砕する。粉砕したガラス繊維をポリエチレ
ングリコール及びＧｌｙｃｉｎｅｍａｘ（大豆）レクチ
ンの混合溶液に懸濁させた後円錐状の容器に100 〜300m
g/cm³ となるように充填・乾燥し、分離チップとする。

【００１４】製造例４ ガラス繊維（太さ 0.8 〜 2.5 μm ）を100 〜3000μ
m の長さに粉砕する。粉砕したガラス繊維をポリエチレ
ングリコール溶液に懸濁させた後、接合針つきの円筒状
容器に100 〜300mg/cm³ となるように充填・乾燥する。
次いで、上部をゴム栓で密封し真空採血管用器具とす
る。

【００１５】製造比較例 ガラス繊維を製造例と同様に調製し、ポリエチレングリ
コールを含まない溶液に攪拌、懸濁した後、円錐状の容
器に100 〜300mg/cm³ となるように充填する。これを乾
燥させて比較試験用サンプルとする。次に実施例で作成
したチップを用い、実際に分離した血清又は血漿中の成
分量が従来の遠心分離法で行った場合のそれと差がある
かをみるため、以下の試験を行った。

【００１６】比較試験例 ウサギから新鮮血を採取し、製造例１で調製したチップ
および製造比較例で調製した比較試験用サンプルに滴下
し、血漿を分離する。分離した血漿を集めてその容量、
溶血度および分離するのに必要な時間を測定し以下の結
果を得た。

【００１７】 回数 溶血度 分取時間（秒） 回収量（μｌ） 製造例 製造比較例 実施例 比較実施例 実施例 比較実施例 １ − − １４０ ２１０ １００ ３０ ２ − − １５０ ２６０ ９０ ４０ ３ − ＋ １２０ ２９０ ８０ 不可 ４ − − １３０ ２４０ ７０ ４０ ５ − − １５０ ６６０ １００ ３５ ６ − ＋ １２０ ２６０ １１０ 不可 ７ − ＋ １２５ ２１０ ９０ 不可 ８ − − １３５ ６６０ １１０ ３０ ９ − − １４５ ２１０ ９０ ２５ １０ − ＋ １２５ ６６０ ７０ 不可 溶血しない 平 平 割 合 10/10 6/10 均１３４ ３６６ 均 ９１ ３３

【００１８】試験例１ グルコース測定 グルコース濃度の異なる３種類の血液検体を用い、一部
を遠心分離機にて分離を行なう（方法〜１）。他方は製
造例１の分離チップを用いて、分離を行ない（方法〜
２）、市販の測定試薬により、双方のグルコース濃度を
測定した。その結果を以下に示す。

【００１９】 回 数 検体 Ｉ 検体 ＩＩ 検体 ＩＩＩ 方法〜１ 方法〜２ 方法〜１ 方法〜２ 方法〜１ 方法〜２ １ １０１ １１３ ２３７ ２４２ ５２８ ５３６ ２ ９９ １１０ ２４２ ２４１ ５２９ ５３９ 単位：ｍｇ／ｄｌ

【００２０】試験例２ ３ーヒドロキシ酪酸測定 ３ーヒドロキシ酪酸濃度の異なる３種類の血液検体を用
い、一部を遠心分離機にて分離を行なう（方法〜１）。
他方は製造例１の分離チップを用いて、分離を行ない
（方法〜２）、市販の測定試薬により、双方の３ーヒド
ロキシ酪酸濃度を測定した。その結果を以下に示す。

【００２１】 回 数 検体 Ｉ 検体 ＩＩ 検体 ＩＩＩ 方法〜１ 方法〜２ 方法〜１ 方法〜２ 方法〜１ 方法〜２ １ ８９ ９１ １０９ １１０ １８７ １８６ ２ ９０ ９３ １１２ １１０ １８５ １８５ 単位：μｍｏｌ／ｌ

【００２２】試験例３ 総胆汁酸測定 総胆汁酸濃度の異なる３種類の血液検体を用い、一部を
遠心分離機にて分離を行なう（方法〜１）。他方は製造
例１の分離チップを用いて、分離を行ない（方法〜
２）、市販の測定試薬により、双方の総胆汁酸濃度を測
定した。その結果を以下に示す。

【００２３】 回 数 検体 Ｉ 検体 ＩＩ 検体 ＩＩＩ 方法〜１ 方法〜２ 方法〜１ 方法〜２ 方法〜１ 方法〜２ １ １０．５ １０．９ ２５．０ ２６．１ ５１．９ ５０．９ ２ １０．６ １０．９ ２５．５ ２５．８ ５１．０ ５２．２ 単位：ｍｇ／ｄｌ

【００２４】試験例４ ＧＰＴ測定 ＧＰＴ濃度の異なる３種類の血液検体を用い、一部を遠
心分離機にて分離を行なう（方法〜１）。他方は製造例
１の分離チップを用いて、分離を行ない（方法〜２）、
市販の測定試薬により、双方のＧＰＴ濃度を測定した。
その結果を以下に示す。

【００２５】 回 数 検体 Ｉ 検体 ＩＩ 検体 ＩＩＩ 方法〜１ 方法〜２ 方法〜１ 方法〜２ 方法〜１ 方法〜２ １ ４０ ４１ １０９ １１２ ３１８ ３１５ ２ ４２ ３８ １１３ １０８ ３１２ ３１２ 単位：ＩＵ

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による一実施例を示す真空自動採血、血
清分離器具平面図

【図２】本発明による一実施例を示す真空自動採血、血
清分離器具断面図

【図３】本発明による一実施例を示す手動採血、血清分
離器具平面図

【図４】本発明による一実施例を示す手動採血、血清分
離器具断面図

【図５】本発明による一実施例を示す血清分離器具平面
図

【図６】本発明による一実施例を示す血清分離器具断面
図

【図７】本発明による一実施例を示す血清分離器具断面
図、同平面図

【図８】本発明による一実施例を示す血清分離器具断面
図

【図９】本発明による一実施例を示す血清分離器具断面
図

【図１０】本発明による一実施例を示す血清分離器具断
面図、同平面図

【符号の説明】

１〜注射針 ２〜ガラスまたは樹脂性（真空）採血管 ３〜両極接合針 ４〜両極接合針保持具 ５〜ガラスまたは樹脂性（真空）分離血清採取管 ａ〜本発明血清分離素材設置カラムまたはフィルター部 ｂ〜ゴムまたは非通気性樹脂からなる栓 ｃ〜ガラスまたは樹脂製本発明血清分離素材設置カラム ｄ〜ガラスまたは樹脂製吸引あるいは加圧用注射器 ｅ〜血清分離カラムと注射器を接合するためのゴムまた
は樹脂製接合具 ｆ〜弾性樹脂あるいはゴム製スポイト

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯 田 貴 史 名古屋市東区東外堀町35番地 株式会社三 和化学研究所内 (72)発明者 浅 井 宏 基 名古屋市東区東外堀町35番地 株式会社三 和化学研究所内 (72)発明者 黒 野 昌 庸 名古屋市東区東外堀町35番地 株式会社三 和化学研究所内 (72)発明者 澤 井 喜 一 名古屋市東区東外堀町35番地 株式会社三 和化学研究所内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】採取した生物の血液を繊維素材を主体とす
   る血球分離層を通過させることにより、血球成分と血清
   又は血漿成分を分離・回収する器具。
2. 【請求項２】繊維素材を主体とする血球分離層が、不織
   布、セルロ−ス繊維またはガラス繊維とコ−ティング剤
   からなり、繊維素材の密度が100 〜300 mg／cm³ の範囲
   であることを特徴とする請求項１記載の血液から血球成
   分と血清又は血漿成分を分離・回収する器具。
3. 【請求項３】コ−ティング剤がポリエチレングリコ−ル
   または Docusate sodium などの湿潤力をもつ界面活性
   剤単独あるいはそれらの混合物からなることを特徴とす
   る請求項１〜２記載の血液から血球成分と血清又は血漿
   成分を分離・回収する器具。
4. 【請求項４】コ−ティング剤がポリエチレングリコ−ル
   または Docusate sodium などの湿潤力をもつ界面活性
   剤と血液に相互作用をもつレクチンであることを特徴と
   する請求項１〜２記載の血液から血球成分と血清又は血
   漿成分を分離・回収する器具。
5. 【請求項５】接種用注射針、真空採血管、接合針、分離
   血清収容のための真空採取管から構成される真空自動採
   血用注射器あるいは採血用注射器具内に血球分離層を一
   体化させた請求項１〜４記載の血液から血球成分と血清
   又は血漿成分を分離・回収する器具。