JP3685283B2 - 血漿採取具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、採血と血液濾過を連続的に行なうことにより、血管から血漿を直接採取する器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血液中の構成成分例えば代謝産物、蛋白質、脂質、電解質、酵素、抗原、抗体などの種類や濃度の測定は通常全血を遠心分離して得られる血漿または血清を検体として行われている。ところが、遠心分離は手間と時間がかかる。特に少数の検体を急いで処理したいときや、現場検査などには、電気を動力とし、遠心分離機を必要とする遠心法は不向きである。そこで、濾過により全血から血漿を分離する方法が検討されてきた。
【0003】
この濾過方法には、3〜6枚のガラス繊維濾紙をカラムに充填し、カラムの一方から全血を注入し、加圧や減圧を行なって他方から血漿や血清を得るいくつかの方法が公知化されている(特公昭44−14673号公報、特開平2−208565号公報、特開平4−208856号公報、特公平5−52463号公報等)。
【0004】
しかし、これらのいずれの方法においても採血と血漿分離が別々に行なわれていたので手間がかかっていた。また、採血と血漿分離の間の待ち時間にかなりバラツキがあり、その間の血液の凝固や変質も問題であった。
【0005】
一方、採血と血漿分離を連続的に行なう技術の開発は古くから行なわれていたが、血漿分離にはほとんどが遠心法を利用していた。
【0006】
特開昭52−100783号公報には採血と血漿分離を一つの器具で行なう方法が開示されている。この器具において血漿の分離にはシリカゲルが用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
血管から直接血漿を取得する手段は種々開発されているが、操作煩雑であったり、血球成分の分離が不充分であったりしていずれも実用化されるに至っていない。
【0008】
本発明の目的は、血管から分析に必要な量の血液を容易にかつ確実に採取しうる手段を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく種々検討の結果、最も簡便な方法として濾過方式に着目するに至った。濾過方式を採血と血漿分離を同時に行う方式に適用する場合の最大の問題点は、血液濾過速度が大きくしかも血球漏出や溶血がないという相反する要求を満足する血液濾過材料の開発にある。本発明者らはさらに検討を進めた結果、ガラス繊維濾紙と微多孔性膜の組み合わせがこの要求を満足するものであることを見出し、更に当該濾過材料の血漿出口側の面がホルダーと離隔している状態でホルダーに収容することにより、分析に必要な量の血漿を血管から直接採取しうる手段の開発に成功した。系内において血漿からフィブリンが析出することを阻止するためには、系内の少なくとも1箇所に抗凝固剤を加えることが好ましい。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくともガラス繊維濾紙と微多孔性膜が積層されている血液濾過材料が、血液入口と血漿出口を有するホルダーに収容され、該ホルダーの血漿出口側の面が血液濾過材料と離隔しており、該ホルダーの血液入口には採血針が接続され、血漿出口側には血漿受槽がそれに収容した血漿が血液濾過材料に接しない状態で該ホルダーに内設されていることを特徴とする血漿採取具に関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
ガラス繊維濾紙は密度が0.02〜0.5程度、好ましくは0.05〜0.3程度、特に好ましくは0.08〜0.2程度で、保留粒子径が0.8〜9μm程度、特に1〜5μm程度のものが好ましい。ガラス繊維の表面を、特開平2−208565号公報、同4−208856号公報に記載された様な方法で、親水性高分子で処理することによって濾過をより速やかに円滑に行なうことができる。また、ガラス繊維の表面をレクチンで処理することもできる。ガラス繊維濾紙は複数枚と積層して用いることができる。
【0013】
表面を親水化されており血球分離能を有する微多孔性膜は、実質的に分析値に影響を与える程には溶血することなく、全血から血球と血漿を特異的に分離するものである。この微多孔性膜は孔径がガラス繊維濾紙の保留粒子径より小さくかつ0.2μm以上、好ましくは0.3〜5μm程度、より好ましくは0.5〜3μm程度のものが適当である。また、空隙率は高いものが好ましく、具体的には、空隙率が約40%から約95%、好ましくは約50%から約95%、さらに好ましくは約70%から約95%の範囲のものが適当である。微多孔性膜の例としてはポリスルホン膜、アセチルセルローズ、弗素含有ポリマー膜等がある。
【0014】
弗素含有ポリマーの微多孔性膜としては、特表昭63−501594号公報(WO 87/02267)に記載のポリテトラフルオロエチレンのフィブリル(微細繊維)からなる微多孔性のマトリックス膜(微多孔性層)、Gore−Tex(W.L.Gore and Associates社製)、Zitex(Norton社製)、ポアフロン(住友電工社製)などがある。その他に、US 3268872(実施例3及び4)、US 3260413(実施例3及び4)、特開昭53−92195(US 4201548)等に記載のポリテトラフルオロエチレンの微多孔性膜、US 3649505に記載のポリビニリデンフルオリドの微多孔性膜などがある。
【0015】
これらの弗素含有ポリマーの微多孔性膜の作成に当たっては、1種もしくは2種以上の弗素含有ポリマーを混合しても良いし、弗素を含まない1種もしくは2種以上のポリマーや繊維と混合し、製膜したものであつても良い。
【0016】
構造としては、延伸しないもの、1軸延伸したもの、2軸延伸したもの、1層構成の非ラミネートタイプ、2層構成のラミネートタイプ、例えば繊維等の他の膜構造物にラミネートした膜等がある。
【0017】
フイブリル構造又は一軸延伸もしくは二軸延伸した非ラミネートタイプの微多孔性膜は、延伸により、空隙率が大きくかつ濾過長の短い微多孔膜が作られる。濾過長が短い微多孔膜では、血液中の有形成分(主として赤血球)による目詰りが生じがたく、かつ血球と血漿の分離に要する時間が短いので、定量分析精度が高くなるという特徴がある。
【0018】
弗素含有ポリマーの微多孔性膜は特開昭57−66359号公報(US 4783315)に記載の物理的活性化処理(好ましくはグロー放電処理又はコロナ放電処理)を微多孔膜層の少なくとも片面に施すことにより微多孔性膜の表面を親水化して、隣接する微多孔性膜との部分接着に用いられる接着剤の接着力を強化することができる。
【0019】
弗素含有ポリマーの微多孔性膜は、そのままでは、表面張力が低く乾式分析要素の血球濾過層として用いようとしても、水性液体試料ははじかれてしまって、膜の表面や内部に拡散、浸透しないことは、周知の事実である。本発明では、第1の手段として弗素含有ポリマーの微多孔性膜に親水性を付与し親水性を高める手段として、弗素含有ポリマーの微多孔性膜の外部表面及び内部の空隙の表面を実質的に親水化するに充分な量の界面活性剤を弗素含有ポリマーの微多孔性膜に含浸させることにより、前記の水性液体試料がはじかれる問題点を解決した。
【0020】
水性液体試料がはじかれることなく膜の表面や内部に拡散、浸透、移送されるに充分な親水性を弗素含有ポリマーの微多孔性膜に付与するには、一般に、弗素含有ポリマーの微多孔性膜の空隙体積の約0.01%から約10%、好ましくは約0.1%から約5.0%、更に好ましくは0.1%から1%の界面活性剤で微多孔性膜の空隙の表面が被覆されることが必要である。例えば、厚さが50μmの弗素含有ポリマーの微多孔性膜の場合に、含浸される界面活性剤の量は、一般に0.05g/m2から2.5g/m2の範囲であることが好ましい。弗素含有ポリマーの微多孔性膜に界面活性剤を含浸させる方法としては、界面活性剤の低沸点(沸点約50℃から約120℃の範囲が好ましい)の有機溶媒(例、アルコール、エステル、ケトン)溶液に弗素含有ポリマーの微多孔性膜を浸漬し、溶液を微多孔性膜の内部空隙に実質的に充分に行きわたらせた後、微多孔性膜を溶液から静かに引き上げ、風(温風が好ましい)を送り乾燥させる方法が一般的である。
【0021】
弗素含有ポリマーの微多孔性膜を親水性化処理に用いられる界面活性剤としては、非イオン性(ノニオン性)、陰イオン性(アニオン性)、陽イオン性(カチオン性)、両性いずれの界面活性剤をも用いることができる。
【0022】
これらの界面活性剤のうちでは、ノニオン性界面活性剤が、赤血球を溶血させる作用が比較的低いので、全血を検体とするための多層分析要素においては有利である。ノニオン性界面活性剤としては、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール、アルキルポリエーテルアルコール、ポリエチレングリコールモノエステル、ポリエチレングリコールジエステル、高級アルコールエチレンオキシド付加物(縮合物)、多価アルコールエステルエチレンオキシド付加物(縮合物)、高級脂肪酸アルカノールアミドなどがある。
【0023】
ノニオン性界面活性剤の具体例として、次のものがある。
【0024】
アルキルフェノキシポリエトキシエタノールとしては、
イソオクチルフェノキシポリエトキシエタノール:
(Triton X−100:オキシエチレン単位平均9〜10含有)
(Triton X−45:オキシエチレン単位平均5含有)
ノニルフェノキシポリエトキシエタノール:
(IGEPAL CO−630:オキシエチレン単位平均9含有)
(IGEPAL CO−710:オキシエチレン単位平均10〜11含有)
(LENEX698:オキシエチレン単位平均9含有)
【0025】
アルキルポリエーテルアルコールとしては、
高級アルコール ポリオキシエチレンエーテル:
(Triton X−67:CA Registry No.59030−15−8)
【0026】
弗素含有ポリマーの微多孔性膜は、その多孔性空間に水不溶化した1種又は2種以上の水溶性高分子を設けることによって親水化したものであってもよい。水溶性高分子の例として、酸素を含む炭化水素にはポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、窒素を含むものにはポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、負電荷を有するものとしてポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸などをあげることが出来る。不溶化は熱処理、アセタール化処理、エステル化処理、重クロム酸カリによる化学反応、電離性放射線による架橋反応等によって行えばよい。詳細は、特公昭56−2094号公報及び特公昭56−16187号公報に開示されている。
【0027】
ポリスルホンの微多孔性膜は、ポリスルホンをジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンあるいはこれらの混合溶媒等に溶解して製膜原液を作製し、これを支持体上に、又は直接凝固液中に流延し洗浄、乾燥して行うことにより製造することができる。詳細は特開昭62−27006号公報に開示されている。ポリスルホンの微多孔性膜は、そのほか特開昭56−12640号公報、特開昭56−86941号公報、特開昭56−154051号公報等のも開示されており、それらも使用することができる。ポリスルホンの微多孔性膜も弗素含有ポリマーと同様界面活性剤を含有させ、あるいは水不溶化した水溶性高分子を設けることによって親水化することができる。
【0028】
その他の非繊維微多孔性膜としては、特公昭53−21677号、米国特許1,421,341号等に記載されたセルロースエステル類、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテート/ブチレート、硝酸セルロースからなるブラッシュポリマー膜が好ましい。6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の微多孔性膜でもよい。その他、特公昭53−21677号、特開昭55−90859号等に記載された、ポリマー小粒子、ガラス粒子、けい藻土等が親水性または非吸水性ポリマーで結合された連続空隙をもつ多孔性膜も利用できる。
【0029】
非繊維微多孔性膜の有効孔径は0.2〜10μm、好ましくは0.3〜5μm、特に有効なのは0.5〜3μmである。本発明で非繊維微多孔性膜の有効孔径は、ASTM F316−70に準拠した限界泡圧法(バブルポイント法)により測定した孔径で示す。非繊維微多孔性膜が相分離法により作られたいわゆるブラッシュ・ポリマーから成るメンブランフィルターである場合、厚さ方向の液体通過経路は、膜の製造の際の自由表面側(即ち光沢面)で最も狭くなっているのが普通で、液体通過経路の断面を円に近似したときの孔径は、自由表面の近くで最も小さくなっている。容積の通過経路における厚さ方向に関する最小孔径は、さらにフィルターの面方向について分布を持っており、その最大値が粒子に対する濾過性能を決定する。通常、それは限界泡圧法で測定される。
【0030】
上に述べたように、相分離法により作られたいわゆるブラッシュ・ポリマーから成るメンブランフィルターでは、厚さ方向の液体通過経路は膜の製造の際の自由表面側(即ち光沢面)で最も狭くなっている。本発明の分析素子の非繊維微多孔性膜としてこの種の膜を用いる場合には、出口側を、メンブランフィルターの光沢面とすることが好ましい。
【0031】
本発明で使用される血液濾過材料には、ガラス繊維濾紙と微多孔性膜に加えて第3の濾過材料を追加することができる。この第3の濾過材料の例としては、濾紙、不織布、織物生地(例えば平織生地)、編物生地(例えば、トリコット編)等、繊維質多孔性層を挙げることができる。これらのうち織物、編物等が好ましい。織物等は特開昭57−66359号に記載されたようなグロー放電処理をしてもよい。この第3の濾過材料はガラス繊維濾紙と微多孔性膜の中間に配置することが好ましい。
【0032】
好ましい微多孔性膜はポリスルホン膜、酢酸セルローズ膜等であり、特に好ましいのはポリスルホン膜である。本発明の血液濾過材料においてはガラス繊維濾紙が血液供給側に配置され、微多孔性膜が吸引側に配置される。最も好ましい血液濾過材料は血液供給側からガラス繊維濾紙とポリスルホン膜をこの順に積層した積層体である。
【0033】
本発明の血漿採取具では、濾過材料であるガラス繊維濾紙とポリスルホン膜等を重ね合わせてホルダー内部に収容させればよいが、特開昭62−138756〜8号公報、特開平2−105043号公報、特開平3−16651号公報等に開示された方法に従って各層を部分的に配置された接着剤で接着して一体化することもできる。
【0034】
本発明の濾過材料では、その表面のみで血球をトラップする訳ではなく、ガラス繊維濾紙の厚さ方向に浸透するに従って、初めは大きな血球成分、後には小さな血球成分と徐々に空隙構造にからめ、厚さ方向に全長にわたって血球を留め除去していく、いわゆる体積濾過作用によるものと理解される。
【0035】
本方式により濾過し得る全血の量は、ガラス繊維濾紙中に存在する空間体積と全血中の血球の体積に大きく影響される。ガラス繊維濾紙の密度が高い(粒子保持孔径が小さい)と赤血球がガラス繊維濾紙の表面近傍にトラップされるので、表面からごく浅い領域でガラス繊維濾紙中の空間が閉塞状態になってしまうことが多い。従って、それ以上の濾過が進まず、結果として濾過、回収し得る血漿量も少なくなる。この際、回収血漿量を増やそうとして更に強い条件で加圧すると、血球の破壊、すなわち溶血が起きてしまう。つまり表面濾過に近いプロセスとなり、濾紙の空間体積利用効率は低い。
【0036】
これに対し、ガラス繊維濾紙の密度を低くすると、血球は濾紙の深部(出口に近い領域)まで浸透していき血漿が通過できる空間が増すので、濾紙全体の空間体積が有効に利用され、回収される血漿の量も多くなる。
【0037】
空間体積あるいは血漿濾過量に対応する指標として、透水速度が有効である。透水速度は、入口と出口をチューブに接続できるように絞った濾過ユニット中に一定面積のガラス繊維濾紙を密閉保持し、一定量の水を加えて一定圧力で加圧または減圧したときの、単位面積あたりの濾過量を速度で表したものであり、ml/sec等の単位を持つ。
【0038】
具体例としては、濾過ユニット中に直径20mmのガラス繊維濾紙をセットし、その上に100mlの注射筒をたてて60mlの水を入れて自然流下させ、開始後10秒と40秒の間の30秒間にガラス濾紙中を通り抜けた水の量をもって透水量とし、これから単位面積あたりの透水速度を算出する。
【0039】
血漿の濾過に特に適しているのは透水速度が1.0〜1.3ml/sec程度のもので、例えば、ワットマン社GF/D、東洋濾紙GA−100、同GA−200等がある。さらに、市販のガラス繊維濾紙を熱水中で再分散してナイロンネット上で再抄紙して低密度濾紙(密度約0.03)を作製することもでき、これは良好な血漿濾過特性を示す。
【0040】
ガラス繊維濾紙の厚さは、回収すべき血漿量とガラス繊維濾紙の密度(空隙率)及び面積から定められる。分析を乾式分析素子を用いて複数項目行なう場合の血漿の必要量は100〜500μlであり、ガラス繊維濾紙の密度が0.02〜0.2程度、面積が1〜5cm2程度が実用的である。この場合ガラス繊維濾紙の厚さは1〜10mm程度、好ましくは2〜8mm程度、より好ましくは4〜6mm程度である。このガラス繊維濾紙は複数枚、例えば2〜10枚程度、好ましくは2〜6枚程度を積層して上記厚さとすることができる。
【0041】
微多孔性膜の厚さは50〜500μm程度、特に100〜200μm程度でよく、通常は1枚の微多孔性膜を用いればよい。しかしながら、必要により複数枚を用いることもできる。
【0042】
ホルダーは血液濾過材料を収容するものであって、血液入口と濾過液出口が設けられているものである。このホルダーは、一般に血液濾過材料を収容する本体と、蓋体に分けた態様で作製される。通常は、いずれにも少なくとも1個の開口が設けられていて、一方は血液供給口として、他方は吸引口として、場合により更に濾過された血漿の排出口として使用される。濾過された血漿の排出口を別に設けることもできる。ホルダーが四角形で蓋体を側面に設けた場合には血液供給口と吸引口の両方を本体に設けることができる。
【0043】
血液濾過材料収納部の容積は、収納すべきろ過材料の乾燥状態および検体(全血)を吸収し膨潤した時の総体積より大きい必要がある。ろ過材料の総体積に対して収納部の容積が小さいと、ろ過が効率良く進行しなかったり、溶血を起こしたりする。収納部の容積のろ過材料の乾燥時の総体積に対する比率はろ過材料の膨潤の程度にもよるが、通常101%〜200%、好ましくは110%〜150%、更に好ましくは120%〜140%である。
【0044】
また、ろ過材料と収納部の側壁面との間は密着していることが必要であり、全血を吸引した時にろ過材料を経由しない流路が出来ないように構成されている必要があることは勿論である。
【0045】
本発明の血漿採取具は、ホルダーの吸引口側の血液濾過材料対向面に血液濾過材料、通常は微多孔性膜の密着を阻止するよう離隔させておく。これは濾過が血液濾過材料の全面にわたって行なわれるよう血液濾過材料をホルダーの対向面から離しておくものであり、例えば対向面の略全面を凹面にするとか、対向面に複数、1cm2当り1〜100個程度、通常1〜5個程度の突起を設けるとか、スペーサー、例えばメッシュ(液体が面方向に移動可能なもの)を介在させるとかする。凹面はロート状、階段状等でよいが、血漿通路入口が最も深くなるようにすることが好ましい。
【0046】
ホルダーの吸引口側の対向面に血液濾過材料を密着させて、(1) 吸引口を対向面の中心に設けたもの、(2) 周縁部近傍に設けたもの、(3) 図11又は14に示すような階段状凹所(深さ1mm)を設けて中心から吸引するようにしたもの、(4) (3)において吸引口を周縁部近傍に設けたものの4つのホルダーを作製して血漿回収量を測定したところ(1)が50μl、(2)が40μl、(3)が243μl、(4)が330μlであった。
【0047】
突起の形状は円柱状、角柱状、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状、キノコ形、不定形状等任意の形状をとることができる。突起の先端は平ら又は円頭状とすることが好ましい。突起の先端は吸引時に全突起の血液濾過材料への接触面積が血液濾過材料の表面積の1〜50%程度、好ましくは5〜20%程度になるようにするのがよい。本発明の血漿採取具で濾過される血液は少量であるのでこの密着阻止手段によって形成される血液濾過材料とホルダーの対向面との間の空間部の体積(血液濾過時)は10〜500μl程度、好ましくは50〜200μl程度になるようにするのがよい。ホルダーの対向面は濾過液である血漿が排出されやすいよう傾斜面(ロート状面)とすることが好ましい。
【0048】
ホルダーの血漿出口側には血漿受槽を設ける。この血漿受槽はホルダー内に設ける。
【0049】
ホルダー内に設けられる血漿受槽は、少なくともホルダーの中心方向からアナライザーが血漿を吸引できるようにすることがアナライザーの設計上好ましく、その結果、血漿の受槽への通路はホルダーの中心を外して設けることになる。この通路を受槽の縁部近傍に設けることによって成形がしやすくなり、また血漿の粘度が低いときでも血漿が吸引ダクトに入るトラブルを防ぐことができる。ヘマトクリット値の小さい血液の場合は吸引により血漿が通路から噴出することがあるので通路の出口には噴出を阻止する邪魔部材、例えば庇を形成することが好ましい。血漿受槽はアナライザーの吸引ノズルが吸引しやすいよう底面を傾斜面、例えば逆円錐状にするのがよい。また、回収血漿量はヘマトクリット値によってかなりバラツクのでオーバーフロー構造を持つようにすることが好ましい。
【0050】
容積は10μl〜2ml程度でよい。
【0051】
ホルダーの血液入口側の空間の効果を調べるために次の実験を行なった。
【0052】
[濾過ホルダーの底面の形と回収血漿量]
1)濾過ホルダーの底面の構造と濾過ユニットの組み立て濾過ホルダー中に、ガラス濾紙を組み込む時に一番下になる血液が吸引された時、最初に接触する濾紙の下側の部分の濾過ホルダーの構造について3種類を検討した。
▲1▼ 底面が平らであって血液が吸収され直ちに濾紙に接触する構造のもの。
▲2▼ 底面がロート状に削り取られていて吸引された血液がある程度の面積に広げられてから濾紙に接触する構造のもの。
▲3▼ 底面と濾紙との間にスペーサ(厚さ1mm)があって、吸引された血液が濾過ホルダーの底面で一度貯溜され、更に吸引されることにより水位が上がってから濾紙の全面積にわたってほぼ同時に濾紙に接触する構造のもの。
【0053】
2)採血
ヘパリン入り真空採血管(テルモ社製,10ml)を用いて女子健常者より静脈血を採血し、プラスチック製のサンプルチューブに2mlづつ分注した。Hctは41%であった。
【0054】
3)濾過ユニットの組み立て
図1に記載した濾過ホルダー(基体の上面構造を除く。)に、直径19.7mmに打ち抜いたガラス繊維濾紙(ワットマン社製,GF/0)6枚をセットし、その上にポリスルホン多孔質膜(富士写真フイルム社製)を重ねた。更にその上から空気吸引用のジョイントをセットし、小型ペリスタルポンプに接続した。
【0055】
4)血液の濾過
上記3)にて組み立てた濾過ユニットの血液出口に長さ4cmのシリコーンチューブを接続しその先端を上記2)で調製した血液試料の入ったサンプルチューブに挿入し、ほぼ垂直に固定した。
【0056】
ペリスタルポンプの吸気速度を2.8ml/secに設定し、10秒間づつ2回吸引した。1回目と2回目の吸引の間隔は約1秒間で行った。血漿が分離され血漿貯溜槽中に溜まった。
【0057】
5)結果
(1)では殆ど血漿濾過は起こらずかつ、溶血の程度が著しかったのに対し、(3)では良質の血漿が多量に分離回収できた。(2)は両者の中間であるが回収血漿量は十分とはいえず、(3)の構造が優れていることは明らかだった。
【0058】
上記のように、ホルダーの血液入口側にも濾過が血液濾過材料の全面にわたって行なわれるよう空間を設けるのがよい。これによってまず空気が血液濾過材料の全面から吸引され、その結果、血液が全面に拡がって吸引濾過される。ホルダーの血液入口側は濾過の際には血液濾過材料がホルダー内壁から離隔する方向に作用するのでホルダーの側壁に血液濾過材料縁部を保持してホルダーとの間を明けるスペーサー、例えばリング状突部や数個所の突部などを形成すればよい。蓋体の周縁部を血液濾過材料側に突出させて、これをスペーサーとして機能させることもできる。血液濾過材料とホルダーの対向面との間の空間部の体積(血液濾過時)は10〜500μl程度、好ましくは50〜200μl程度が適当である。
【0059】
本発明になる濾過ユニットは、上記本体に蓋体が取付けられると、これらの血液入口と出口を除いて全体が密閉構造になる。
【0060】
ホルダーの材料はプラスチックが好ましい。例えば、汎用ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、メタアクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート等の透明あるいは不透明の樹脂が用いられる。
【0061】
上記本体と蓋体の取付方法は、接着剤を用いた接合、融着等如何なる手段によってもよい。この際、上記本体と蓋体のいずれの周縁が内側に位置してもよく、あるいは突き合わせ状態であってもよい。また、上記本体と蓋体をネジ等の手段で組立分解ができる構造とすることもできる。
【0062】
血液濾過材料の形状に特に制限はないが、製造が容易なように、円形とすることが望ましい。この際、円の直径をホルダー本体の内径よりやや大きめとし、濾過材料の側面から血漿が漏れることを防ぐことができる。一方、四角形にすれば作製した血液濾過材料の切断ロスがなくなるので好ましい。
【0063】
ホルダーの血液入口には採血針を接続する。この採血針は血管に挿入されるものであり、注射針をそのままあるいは接続部を加工して使用することができる。ホルダーと採血針の間は直接接続してもよく、チューブ等を介して接続してもよい。採血針は無菌状態で保存されている必要があるので使用直前に取付けるようにすることもできる。
【0064】
抗凝固剤は血液からフイブリンが析出して凝固するのを阻止するものであり、ヘパリンのアンモニウム、ナトリウム、リチウム、カリウム塩等、プラスミン、EDTA、蓚酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどを用いることができる。特に、ヘパリンはフイブリンの析出を阻止する能力が高く好ましい。抗凝固剤の使用量は回収血漿の凝固の阻止に必要な量であるので、回収血漿の量に依存するが0.1〜100ユニット程度、好ましくは0.5〜50ユニット程度が適当である。
【0065】
抗凝固剤は採血針から血漿受槽に至る少なくとも1個所に配置される。抗凝固剤は採血針から血漿受槽の何処に配置してもよいが、液流への影響を少なくする点で血液濾過材料に含有させるか、血漿受槽の内に配置しておくのが好ましい。あるいは抗凝固剤容器を新たに設けることもできる。配置形態は抗凝固剤が保存中に変質しないよう乾燥状態としておくのがよい。配置方法は濾過時に血液又は濾過液と接触して抗凝固剤がそれに含有されるようになればよく、血液濾過材料の場合には、例えばその一層あるいは複数層に含浸させて凍結乾燥等により乾燥すればよい。血漿受槽に配置する場合には抗凝固剤の乾燥物を飛散を防止するために水溶性高分子(例えばPVA、PVP)の混合物としてスプレーしたり、抗凝固剤を繊維等に含浸させて乾燥し、これを血漿受槽に投入あるいは固着しておけばよい。
【0066】
本発明の血漿採取具の使用方法としては、腕やその他の部位の動脈又は静脈に採血針を挿入し、血漿出口から濾液である血漿を血漿受槽に受ける。濾過に際しては通常血漿出口側からの吸引が必要であるが、この吸引手段には注射筒、真空採血管、吸引ポンプなどの吸引具を利用する。吸引速度は0.1〜100ml/分、好ましくは1〜70ml/分、更に好ましくは5〜50ml/分程度が適当である。動脈から採血する場合には通常は吸引手段は不要である。使用後の血漿採血具は通常は使い捨てとする。
【0067】
本発明の血漿採取具を使用して腕やその他の部位から採血しようとする場合には、血漿採取具は垂直に保持されるよりも、水平か斜めの位置で保持されることの方が多く、更に血液入口が血漿出口より上にある場合もあり得る。このような場合には、採取された血漿が吸引具の中に流入してしまう恐れがある。シール部材はこのようなトラブルを回避するためのものである。当然のことながら、シール部材には、少なくとも吸引濾過が実行されている間は空気の流通が妨げられない程度の孔(スリット、切り込み等でもよい)が設けられている必要がある。この孔は、採血時に流出する血漿により塞がれることがないように空気の流通が保てる位置に、更に濾過された血漿が吸引具の中に流入しない位置に、設ける必要がある。シール部材は、更に分離した血漿の保存時に蒸発を防止する機能を有する。この機能が十分に発揮されるためには、上述の孔等は吸引時に空気の流通が確保できる最低限の大きさであることが好ましい。
【0068】
このような孔等は、それ自身が、測定に際して血漿受槽から血漿を吸引する器具(プラスチックピペットや自動測定機に組み込まれているサンプリングノズル)の導入口になっていてもよい。もちろん、この導入口は吸引の際に通気孔とは別にあけられたものでもよく、この場合には、シール部材が、血漿を吸引する器具の先端で容易に貫通孔をあけることができる素材で作成されていることが好ましい。
【0069】
シール部材は、血液濾過のための吸引時と、測定のための血漿吸引時とで異なる部材であってもよい。例えば、血液濾過の終了時に吸引アダプターと一緒にシール部材が取り外される構造のものであり、その後新たにシール部材で血漿受槽をシールすることもできる。血液濾過に引き続いて測定が行われる場合、例えば緊急検査ではサンプルを吸引した後で血漿の蒸発防止を考慮すればよいので、この形態が好ましい。
【0070】
シール部材は、使用前には血漿受槽の全面を完全に覆っていても良い。その場合には、使用に当たって一部を容易に引き剥がすことができるか、針やピペットの先端等で容易に孔をあけられるような膜であることが好ましい。
【0071】
シール部材の材質はプラスチックフィルムが最も適当であるが、上述の機能を発揮できれば、金属膜、紙、布等でもよく、材質は問わない。成形されたプラスチック等の蓋材でもよい。その表面は撥水処理されていることが好ましい。このような膜の具体例としては、パラフィルム(商品名:アメリカン ナショナル カンパニー製)、シーロン(商品名:富士写真フイルム社製)、ポリ塩化ビニリデンフィルム(例えば、旭化成製の商品名「サランラップ」)、塩化ビニリデン系フィルム(例えば、クレハ化学製の商品名「クレラップ」)、ポリエチレンフィルム等を挙げることができる。
【0072】
【実施例】
[実施例1]
図1〜6に示す血液濾過ユニットを作製した。この濾過ユニットは組み立てた状態の縦断面図である図1に示すようにホルダー本体10と蓋体20からなっている。
【0073】
ホルダー本体10は全体が小径部を大径部からなる2段の円筒形状をしており、上部が血漿受槽12と吸引側への接続部に、下部が血液濾過材料30の収容室11になっている。収容室11を形成する下部の内径は19.5mmであり、深さは10mmである。そのうち3mmの高さで蓋体上部が挿入されるので収容室11の高さは7mmになる。ホルダー本体10の下端は蓋体20と接続するためのフランジ13が外方に形成されている。また、収容室11の天面の図1の左端やや内方寄りには血漿通路14の入口が設けられ、天面は該入口に向かって傾斜する浅い逆ロート状に形成されている。天面周縁部と血漿入口の間の高低差は1mmである。図3に示すように天面には、血液濾過材料の密着を阻止する12個の突起15が略等間隔に形成されている。各突起15は短柱状で上端が同一平面に位置する高さに切り揃えられ、各上端周縁は斜めに削取されている。
【0074】
血漿通路14の出口上部は半分に庇16が設けられこの庇の下面が円弧状に形成されていて流出する血漿の上方への噴出を阻止している。血漿受槽12は円筒状のホルダー本体1に2枚の側壁17を血漿通路出口をはさんで平行に設けて少量の血漿でも充分な液深が得られるようにしている。ホルダー本体10の上端は開放されており、これが吸引手段に接続されて吸引口18となる。吸引口18の周縁部は吸引手段に接続後の液密性を確実なものにするため丸められている。
【0075】
蓋体20は中央の浅いロート状円板部21とその外周に形成された短管22とその下端外周に外方に向かって形成されたフランジ23と円板部21の中心から下方に延出するノズル状血液供給口24からなっている。円板部21の直径は17mm、そのロート状部上下の高低差1mm、短管部22の高さは4.5mm、フランジ23の外径が28mmである。円板部21の短管部22への接続位置を短管部22の上縁より1mm下としてその上部の突縁を血液濾過材料3の下面を蓋体のロート状円板部21上面から隔離させて空間25を形成するスペーサー26として機能させている。フランジ23の上面すなわちホルダー本体10のフランジ13と合わさる面にはリブ27が形成されている。このリブ27は上下のフランジ13、23を超音波で融着接合する際に超音波エネルギーを集め接着部の液密性を充分確保できるようにしたものである。
【0076】
上記の血液濾過材料収容室11に直径19.7mmの円板状に打ち抜いたガラス繊維濾紙(ワットマンGF/DO)6枚を重ねて収納した。約80gの力で濾紙を収容室11の底に圧入した。更にその上にポリスルホン製多孔質膜(富士写真フイルム製)をのせた。各濾過膜は相互に軽く接触している程度でよい。
【0077】
こうして血液濾過ユニットを完成した。
【0078】
この血液濾過ユニットの血漿受槽12にヘパリン5μl(0.1ユニット)を入れ、吸引口18には図7に示す吸引用アダプター60を、そして血液入口24には図8に示す採血針70をそれぞれ取着けた。アダプター60は柔軟なポリエチレン製でその中央の吸引ノズル61にはチューブ62が挿着されている。チューブ62の他端にはシリンジ(図示されていない。)等の吸引具が取着されている。採血針70は両端にフランジ71,72が形成された短柱状の支持具73先端の接続突起74に嵌着されている。この支持具73の軸心には血液通路75が先端から後端へ貫通して形成されている。後端にはチューブ76の接続突起77が形成されている。このチューブ76の他端が血液濾過ユニットの血液入口24に嵌込接続されている。血液濾過ユニットへの接続状態を図10に示す。
【0079】
[実施例2]
図11〜13に示す血液濾過ユニットを作製した。この濾過ユニットは組み立てた状態の縦断面図である図11に示すようにホルダー本体40と蓋体50からなっている。
【0080】
ホルダー本体40には血液濾過材料30の収容室41とその上縁から外方に形成されたフランジ43が形成されている。一方、ホルダー本体40の底部には周縁よりやや内側に段部を設けてそこから浅いロート状円板部42が連設され、その中心から下方にノズル状血液供給口44が延設されている。上記の段部は血液濾過材料30の下面をホルダー本体40のロート状円板部42から隔離させて空間45を形成するスペーサー46として機能させている。
【0081】
蓋体50の底面は中心に向かって同心円状の段51が4段形成されて中央が凹みここが上部空間を形成している。この底面中央にはサイコロの5の目状に5つの突起55が血液濾過材料の密着を阻止する手段として下方に突出形成されている。また、血漿受槽52の中心と周壁の中間に両側を削ぎ落とした煙突状の血漿通路54が上方に起立し、その頂部には血漿の噴出を阻止する庇56が水平方向にせり出している。この庇56は図12に示されているように大小2つの半円を組み合わされた形状をしており、周壁側の半円は血漿通路外壁と一致させ、中心側の半円は血漿通路内壁の延長線と一致させている。血漿通路54の両側部には、血漿の液深を確保するため、血漿受槽52の周壁面に達する仕切壁57が形成されている。血漿受槽52の上端は開放されており、これが吸引口58となっている。蓋体50の底部には外方に突出するフランジ53が形成され、このフランジがホルダー本体のフランジ43と超音波で接着される。フランジ53のホルダー本体のフランジ43と合わさる面にはリブ(図示されていない。)が形成され、接着の際には超音波エネルギーをそこに集めて液密性を充分に確保した状態で接着されるようにしたものである。
【0082】
1000u/mlのヘパリンリチウム水溶液の50μlをマイクロピペットにて吸引秤取し、濾過ユニットの先端部に接続した支持具に滴下した。そのままヘパリンを放置乾燥した。
【0083】
[実施例3]
図14〜16に示す血液濾過ユニットを作製した。この濾過ユニットは血液濾過材料収容室を四角形にしたことと血漿受槽を別体とした点を除いて実施例2のものと同じである。これも図8や図9の採血針を取着することによって血漿採取具として使用できる。ヘパリンは濾過ユニットの内壁、濾過材料、血漿貯溜槽内、その他血液または血漿の流路中にあればどこでも設けることができる。
【0084】
[実施例4]
図17に示した濾過ユニットは、採血針81、濾過ホルダー80、吸引用アダプター86、吸引用シリンジ88から構成されている。吸引用アダプター86は、シリンジ88と濾過ホルダー80を気密状態で接続するための部材であって、濾過ホルダー80にはゴム製のO−リングを介して接続されている。図19は吸引用アダプター86の断面図である。濾過ホルダー80は血液入口部、血液濾過材料収容室、血漿通路83、血漿受槽82及びシール部材84を有する。なお、吸引用シリンジ88の代わりに、吸引ポンプ等の吸引器具を使用することができることはいうまでもない。また、吸引用アダプター86は独立である必要はなく、濾過ユニットの血漿受槽の出口部が吸引用注射筒等に直接接続できる構造になっていてもよい。
【0085】
図17において、シリンジ88は容量10mlである。血液濾過ユニットの組立時に、最上部のガラス繊維濾紙に10μlのヘパリン水溶液(5ユニット)を滴下乾燥させたものを用いた。通常の採血手段に従って針を静脈に挿入し、ゆっくり吸引した。吸引に従って血漿受槽に血球を含まない血漿がゆっくり流出してきた。約10秒後に針を静脈から引き抜き採血を終了した。
【0086】
吸引用アダプター及びシリンジを血液濾過ユニットから取り外し、次いで、血漿受槽を取り外し、更にシール部材を除去した。血漿受槽がそのままセットできるようにサンプラー部分を改造した、フジドライケム3030(富士写真フイルム製)の検体保持部にセットし、血漿成分を測定した。比較のため、同時に通常法に従ってヘパリン入り真空採血管にて静脈血を採取し、遠心分離して得た血漿について日立7150臨床化学自動分析機で各成分濃度を測定した。結果を表1に示す。生化学20項目全てについて、本発明の血液濾過ユニットを用いて得た血漿と、通常の遠心分離によって得た血漿で、測定結果に差は殆どなく、臨床診断上同じレベルにあることが確認された。
【0087】
【表1】
【0088】
【発明の効果】
本発明の血漿採取具を用いることにより、血管から分析に必要な量の血液を容易にかつ確実に採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である血液濾過ユニットを組み立てた状態の縦断面図である。
【図2】 同上平面図である。
【図3】 上記血液濾過ユニットのホルダー本体の底面図である。
【図4】 突起の形状を示す拡大部分断面図である。
【図5】 図1と直角に切断して血漿通路側を見たホルダー本体上部の縦断面図である。
【図6】 蓋体のフランジ部分の形状を示す拡大部分断面図である。
【図7】 図1の血液濾過ユニットに装着されるアダプターの側面断面図である。
【図8】 採血針の一例の側面図である。
【図9】 採血針の別の例の側面図である。
【図10】 血液濾過ユニットに吸引用アダプターと採血針のチューブを装着した状態の縦断面図である。
【図11】 本発明の別の実施例である血液濾過ユニットを組み立てた状態の縦断面図である。
【図12】 同上平面図である。
【図13】 上記血液濾過ユニットのホルダー本体の底面図である。
【図14】 本発明のさらに別の実施例である血液濾過ユニットを組み立てた状態の縦断面図である。
【図15】 同上平面図である。
【図16】 上記血液濾過ユニットのホルダー本体の底面図である。
【図17】 血液濾過ユニットに吸引用アダプターと採血針のチューブを装着した状態の縦断面図である。
【図18】 上記血液濾過ユニットの平面図である。
【図19】 吸引用アダプターの縦断面図である。
Claims (6)
- 少なくともガラス繊維濾紙と微多孔性膜が積層されている血液濾過材料が、血液入口と血漿出口を有するホルダーに収容され、該ホルダーの血漿出口側の面が血液濾過材料と離隔しており、該ホルダーの血液入口には採血針が接続され、血漿出口側には血漿受槽がそれに収容した血漿が血液濾過材料に接しない状態で該ホルダーに内設されていることを特徴とする血漿採取具
- 採血針から血漿受槽に至る少なくとも1箇所に抗凝固剤が配置されていることを特徴とする請求項1記載の血漿採取具
- 血漿受槽がホルダーから分離可能な請求項1記載の血漿採取具
- 血漿受槽の上面が貫通孔を空けることが可能なシール部材でシールされている請求項1記載の血漿採取具
- 血漿受槽の上面が除去可能なシール部材でシールされている請求項1記載の血漿採取具
- シール部材が小孔を有している請求項5記載の血漿採取具
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