JP3990505B2 - 血液成分の分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液をガラス繊維フィルターで濾過して得られた血漿または血清検料を分析する際に、ガラス繊維フィルターによって生じる誤差を補正する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血液中の構成成分例えば代謝産物、蛋白質、脂質、電解質、酵素、抗原、抗体などの種類や濃度の測定は通常全血を遠心分離して得られる血漿または血清を検体として行われている。ところが、遠心分離は手間と時間がかかる。特に少数の検体を急いで処理したいときや、現場検査などには、電気を動力とし、遠心分離機を必要とする遠心法は不向きである。そこで、濾過により全血から血漿や血清を分離する方法が検討されてきた。
【0003】
この濾過方法には、ガラス繊維濾紙をカラムに充填し、カラムの一方から全血を注入し、加圧や減圧を行なって他方から血漿や血清を得るいくつかの方法が公知化されている(特公昭44−14673号公報、特開平2−208565号公報、特開平4−208856号公報、特公平5−52463号公報等)。
【0004】
しかし、全血から濾過により自動分析等による測定に必要な量の血漿または血清を得る方法に関しては血糖など一部の項目を除いては、いまだ試行の段階にあり、広く実用化されるに至っていない。
【0005】
そこで、本発明者らは先に、微量な血液であっても血漿や血清を効率よく分離しうる血液濾過ユニットとして、濾材にガラス繊維濾紙と微多孔性膜を組み合わせるとともに濾材の血漿等の出口側にシール部材を設けて濾過材料の開口面積を狭めた血液濾過ユニットを完成した(特開平9−196911号公報)。
【0006】
また、その吸引側に血漿受槽を設けたものも既に開発した(特開平9−276631号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
臨床分析される血液中の電解質には、カルシウム、ナトリウム、カリウム等も対象に含まれている。ところが、本発明者らが市販のガラス繊維フィルターを調べたところ、その中にはこれらが血液中に溶出して分析誤差を与えるものが複数存在することを見出した。
【0008】
さらに、蛋白、アンモニア態窒素、アルカリホスファターゼ等の酵素等も影響を受けることを見出した。
【0009】
本発明の目的は、ガラス繊維フィルターを用いて血液を濾過してもそれによって生じる誤差を除去でき、もって血液成分を簡便に測定できる分析方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、ガラス繊維フィルターによる電解質、蛋白、アンモニア態窒素、酵素等の誤差は一次方程式で表されること、および同種のガラス繊維フィルターであれば現れる誤差が同じになることを見出した。従って、測定しようとする分析項目についてこのガラス繊維フィルターの一次方程式で表される誤差の2つの係数を予め求めておけば、この一次方程式によって誤差を補正することができる。
【0011】
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、血液をガラス繊維フィルターで濾過して得られた血漿検体または血清検体を分析する際に、予め当該ガラス繊維フィルターを用いて濾過して得られた血漿または血清の分析値Xと標準となる血液分離方法で得られた血漿または血清の分析値Yとの関係式
Y=aX+b
におけるaとbを求めておき、当該血漿検体または血清検体の分析値Xtから上記式により補正された分析値Ytを算出することを特徴とする血液成分の分析方法に関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
ガラス繊維フィルターは密度が0.02〜0.5程度、好ましくは0.03〜0.2程度、特に好ましくは0.05〜0.13程度で、保留粒子径が0.6〜9μm程度、特に1〜5μm程度のものが好ましい。ガラス繊維の表面を、特開平2−208565号公報、同4−208856号公報に記載された様な方法で、親水性高分子で処理することによって濾過をより速やかに円滑に行なうことができる。また、ガラス繊維の表面をレクチンで処理することもできる。ガラス繊維濾紙は複数枚を積層して用いることができる。
【0013】
空間体積あるいは血漿または血清濾過量に対応する指標として、透水速度が有効である。透水速度は、入口と出口をチューブに接続できるように絞った濾過ユニット中に一定面積のガラス繊維フィルターを密閉保持し、一定量の水を加えて一定圧力で加圧または減圧したときの、単位面積あたりの濾過量を速度で表したものであり、ml/sec等の単位を持つ。
【0014】
具体例としては、濾過ユニット中に直径20mmのガラス繊維フィルターをセットし、その上に100mlの注射筒をたてて60mlの水を入れて自然流下させ、開始後10秒と40秒の間の30秒間にガラス繊維フィルター中を通り抜けた水の量をもって透水量とし、これから単位面積あたりの透水速度を算出する。
【0015】
血漿または血清の濾過に特に適しているのは透水速度が1.0〜1.3ml/sec程度のもので、例えば、ワットマン社GF/D、東洋濾紙GA−100、同GA−200等がある。さらに、市販のガラス繊維濾紙を熱水中で再分散してナイロンネット上で再抄紙して低密度濾紙(密度約0.03)を作成することもでき、これは良好な血漿または血清濾過特性を示す。
【0016】
本発明で使用される血液濾過材料は、ガラス繊維フィルターのみからなるものでもよく、ガラス繊維フィルターに他の血液濾過材料を組み合わせたものであってもよい。ガラス繊維濾紙に組み合わせる他の血液濾過材料の例として微多孔性膜がある。
【0017】
表面を親水化されており血球分離能を有する微多孔性膜は、実質的に分析値に影響を与える程には溶血することなく、全血から血球と血漿を特異的に分離するものである。この微多孔性膜は孔径がガラス繊維濾紙の保留粒子径より小さくかつ0.2μm以上、好ましくは0.3〜5μm程度、より好ましくは0.5〜3μm程度のものが適当である。また、空隙率は高いものが好ましく、具体的には、空隙率が約40%から約95%、好ましくは約50%から約95%、さらに好ましくは約70%から約95%の範囲のものが適当である。微多孔性膜の例としてはポリスルホン膜、弗素含有ポリマー膜等がある。
【0018】
好ましい微多孔性膜はポリスルホン膜、酢酸セルローズ膜等であり、特に好ましいのはポリスルホン膜である。本発明の血液濾過材料においてはガラス繊維濾紙が血液供給側に配置され、微多孔性膜が吸引側に配置される。最も好ましい材料は血液供給側からガラス繊維濾紙、ポリスルホン膜をこの順に積層した積層体である。
【0019】
本発明で用いられる濾過材料は特開昭62−138756〜8号公報、特開平2−105043号公報、特開平3−16651号公報等に開示された方法に従って各層を部分的に配置された接着剤で接着して一体化することができる。
【0020】
ガラス繊維フィルター層の厚さは、回収すべき血漿や血清の量とガラス繊維フィルターの密度(空隙率)及び面積から定められる。分析を乾式分析素子を用いて複数項目行なう場合の血漿や血清の必要量は100〜500μlであり、ガラス繊維フィルターの密度が0.02〜0.2程度、面積が1〜5cm2程度が実用的である。この場合ガラス繊維フィルター層の厚さは1〜10mm程度、好ましくは2〜8mm程度である。このガラス繊維濾紙は複数枚、例えば2〜10枚程度、好ましくは3〜8枚程度を積層して上記厚さとすることができる。
【0021】
微多孔性膜の厚さは0.05〜0.5mm程度、特に0.1〜0.3mm程度でよく、通常は1枚の微多孔性膜を用いればよい。しかしながら、必要により複数枚を用いることもできる。
【0022】
いずれにしても、本発明が適用される血液濾過材料はガラス繊維フィルター層が容積%で40%以上、通常60%以上のものである。
【0023】
血液濾過が乾式分析用検体の調製として行われる場合には、本発明者らが先に開発した血液濾過ユニットの形で使用することが好ましい。
【0024】
血液濾過材料はホルダーに入れられる。このホルダーは一般に血液濾過材料を収容する本体と、蓋体に分けた態様で作製される。通常は、いずれにも少なくとも1個の開口が設けられていて、一方は血液入口として、他方は濾過液出口として、場合により更に吸引口として使用される。吸引口を別に設けることもできる。ホルダーが四角形で蓋体を側面に設けた場合には血液入口と濾過液出口の両方を本体に設けることができる。
【0025】
その場合、血液濾過材料収納部すなわち血液濾過室の容積は、収納すべき濾過材料の乾燥状態および検体(全血)を吸収し膨潤した時の総体積より大きい必要がある。濾過材料の総体積に対して収納部の容積が小さいと、濾過が効率良く進行しなかったり、溶血を起こしたりする。収納部の容積の濾過材料の乾燥時の総体積に対する比率は濾過材料の膨潤の程度にもよるが、通常101%〜400%、好ましくは110%〜150%、更に好ましくは120%〜140%である。具体的には血漿や血清の必要量との関係で定まるが0.5〜2.5ml程度、通常0.6〜2.2ml程度である。
【0026】
また、体積濾過材料と収納部の壁面との間は、全血を吸引した時に体積濾過材料を経由しない流路が出来ないように構成されていることが好ましい。但し、微多孔性膜で止めうる程度の血球が漏れてきても支障はない。
【0027】
濾過ユニットは、上記本体に蓋体が取付けられると、これらの血液入口と吸引口としても使用される濾過液出口を除いて全体が密閉構造になる。
【0028】
ホルダーの材料はプラスチックが好ましい。例えば、ポリスチレン、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート等の透明あるいは不透明の樹脂が用いられる。
【0029】
上記本体と蓋体の取付方法は、接着剤を用いた接合、融着等如何なる手段によってもよい。この際、上記本体と蓋体のいずれの周縁が内側に位置してもよく、あるいは突き合わせ状態であってもよい。また、上記本体と蓋体をネジ等の手段で組立分解ができる構造とすることもできる。
【0030】
血液濾過材料の形状に特に制限はないが、製造が容易なように、円形とすることが望ましい。この際、円の直径をホルダー本体の内径よりやや大きめとし、濾過材料の側面から血漿が漏れることを防ぐことができる。一方、四角形にすれば作製した血液濾過材料の切断ロスがなくなるので好ましい。
【0031】
濾過液受槽は濾過液出口から吐出される濾過液である血漿や血清を受けるものであり、しかも濾過液出口が濾過液受槽の液面より上に配置されているものである。濾過液出口はこの受槽の側壁の上部に設けられていてもよく、あるいは受槽内に起立する管等であってもよい。濾過液受槽の形状は他の要因、例えばそこからの分析試料の吸引位置との関係、血液濾過室との関係、任意に設けられる他部品との関係、等を考慮して種々の形状とされるが、特段の事情がなければ円筒形、方形等でよい。底面は平底、擂鉢状、丸底等でよい。受槽の容積は、乾式分析用試料の調製の場合には、100〜900μl程度、通常200〜600μl程度、深さは3〜12mm程度、横幅は(直径または辺)5〜11mm程度のものである。受槽における濾過液出口の位置は該出口の下縁が受槽の設計液面より0.5〜5mm程度、通常1〜2mm程度上方に位置している。濾過液量は血液のヘマトクリット値によって変わるがこの設計液面はヘマトクリット値が20〜60%の血液を濾過したときの液面である。この濾過液受槽はホルダーと一体であってもよく、あるいは別体であってもよい。
【0032】
予め関係式Y=aX+bの係数を求めるために使用されるガラス繊維フィルターは測定しようとする血液を濾過する際に使用されるものと同種のものである。上記関係式の係数はガラス繊維フィルターの種類、銘柄、製造業者、原料、製造方法、構造、物性等によって変化する可能性がある。一方、同一銘柄であれば、特に原料、製造方法、製造装置が同一であればほぼ同一の係数となり、特に同一ロット品であれば同一係数となる。そこで、要求される分析精度に従い、通常は同一銘柄品について、特に精度が要求される場合には同一ロット品について予め係数a,bを求めておき、血漿検体あるいは血清検体の分析値の補正はこのa,bを用いて行えばよい。多くの場合aは1であるので、実際にはbだけを求めておいても足りる場合が多い。血液濾過材料がガラス繊維フィルターと他の濾過材料との組合せからなっている場合には、上記の関係式のaとbはこの組合せからなる濾過材料について測定することが好ましい。
【0033】
aとbの決定に必要な標準となる血液分離方法は、血漿または血清の分析対象物の濃度が分離の際に実質的に影響を受けない、つまり分析対象物の変質や濃度変化が実質的に無視できる程度のものであり、具体的には遠心分離法などが利用される。
【0034】
aとbの決定は、分析対象物の濃度が異なる血液について、ガラス繊維フィルターを用いて得られた血漿または血清とこの標準となる分離方法で得られた血漿または血清の分析対象物濃度を測定することによって行うことができる。濃度は測定範囲のなるべく全範囲をカバーするよう血液を選択することが好ましいが、実用的観点から選択すればよく、例えば測定範囲の50%以上、好ましくは80%以上カバーできればよい。測定する血液の数は最少で2点でよいわけであるが、実用的に許される範囲で数が多いほうがよいことはいうまでもなく、実際には5〜10点程度が現実的である。測定点が3点以上の場合のa,bの決定方法は周知であり、例えば、測定範囲内の測定下限に近い試料(全血)、測定中心に近い試料、測定上限に近い試料を準備し、それぞれ半分を遠心分離して測定値Y1,Y2,Y3を得る。別に本発明に記載のガラスフィルターにより濾過した血漿(あるいは血清)を測定し、X,X2,X3を得る。以上の値を用いて最小二乗法によりY=aX+bのa,b値を得る。
【0035】
本発明の方法は乾式分析、湿式分析を問わず適用できるが、乾式分析素子を用いた乾式分析法が特に好ましい。
【0036】
乾式分析素子の基本構成は、水不透過性支持体の上に、親水性ポリマー層および多孔性展開層が、この順に積層されて成る。
【0037】
多孔性展開層は、水性の検体に含有されている成分を実質的に偏在させることなしに平面的に拡げ、単位面積当りほぼ一定量の割合で親水性ポリマー層に供給する機能を有する層であり、これまでドライケミストリー分析要素に使われている展開層として、公知の非繊維質及び繊維質の全ての多孔性材料を用いることができる。具体的には特開昭49−53888に開示されているメンブランフィルター(ブラッシュドポリマー)に代表される非繊維性等方的微多孔質媒体層、特開昭55−90859等に開示されたポリマーミクロビーズが水不膨潤性の接着剤で点接触状に接着されて成る連続空隙含有三次元格子粒状構造物層に代表される非繊維性多孔性層、特開昭55−164356、同57−66359等に開示された織物布地からなる多孔性層、同60−222769等に開示された編物布地からなる層等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
例えば、セルロース誘導体(DAC,TAC,NC,HMC(ヒドロキシメチルセルロース),HEC(ヒドロキシエチルセルロース))の多孔質膜、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニール等のエチレン重合体または共重合体で作られた多孔質膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等で作られた多孔質膜、アクリル酸やメタクリル酸、これらのエステルのビニル重合体または共重合体から成る多孔質膜、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン等の縮合重合体の多孔膜、ガラス粒子、けい藻土等の無機材料微粒子を少量のポリマーで結合させて作られた多孔性膜、ポリテトラフルオロエチレンで作られた多孔性膜、濾紙、ガラス繊維濾紙等がある。
【0039】
展開層は、1層だけに限定する必要はなく、特開昭61−4959、同62−138756、同62−135757、同62−138758等に開示されている様に、2層以上の層を重ねて用いることができる。
【0040】
展開層中には、検体の展開を促進するために、ノニオン、アニオン、カチオンもしくは両性の界面活性剤を含ませることができる。
【0041】
また、展開性をコントロールする目的で、親水性のポリマー等の展開制御剤を含ませることができる。
【0042】
更に、目的とする検出反応を促進する為の、あるいは干渉、妨害反応を低減、阻止する為の各種試薬、もしくは試薬の1部を含ませることができる。
【0043】
展開層の厚さは、20〜200μm、好ましくは50〜170μm、更に好ましくは80〜150μmである。
【0044】
親水性ポリマー層は通常分析に必要な試薬の少なくとも1部を含んでおり、その場合、この層は試薬層と称される。この層には、これまで乾式分析素子に使われている公知の水に可溶性、膨潤性、親水性の各種ポリマーを用いることができる。水吸収時の膨潤率が30℃で約150%から約2000%、好ましくは約250%から約1500%の範囲の天然又は合成親水性ポリマーを使用することができ、具体的には、特開昭59−171864、同60−108753等に開示されたゼラチン(例えば、酸処理ゼラチン、脱イオンゼラチン等)、ゼラチン誘導体(例えば、フタル化ゼラチン、ヒドロキシアクリレートグラフトゼラチン等)、アガロース、プルラン、プルラン誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
親水性ポリマー層に代えて、ポリマー多孔質膜等を用いることもできる。
【0046】
親水性ポリマー層の厚さは、乾燥時に約1μm〜約100μm、好ましくは約3μm〜約50μm、特に好ましくは約5μm〜約30μmであり、実質的に透明であることが好ましい。
【0047】
親水性ポリマー層中には、目的とする反応を促進する、もしくは干渉、妨害反応を防止、低減するための各種試薬もしくは試薬の1部を含ませることができる。
【0048】
水不透過性支持体としては、これまで乾式分析素子に使われている公知の水不透過性の支持体を用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、セルロースエステル(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等)等から成る厚さ約50μm〜1mm、好ましくは約80μm〜約300μmの透明フイルムを用いることができる。
【0049】
支持体は、通常光透過性のものを用いるが、展開層側から測定をする場合には、着色されていても、もしくは光不透過性であっても良い。
【0050】
支持体の表面には、必要により公知の下塗層もしくは接着層を設けて、親水性ポリマー層との接着を強固にすることができる。
【0051】
乾式分析素子には分析項目等に応じて各種の層が組込まれる。例えば、検出層、吸水層、光反射層、光遮蔽層等である。
【0052】
乾式分析素子は分析に必要な試薬の全てを予め含むものであるが、本発明者らが先に開発した、試薬の1部または全部を分析時に添加するものであってもよい。
【0053】
検体を分析するにあたって、上記の係数a,bを予めアナライザーにキーボード入力しておいたり、バーコード記録してバーコード読取り機で読取らせ補正したり、あるいはカード発行機により磁気記録しておいて、アナライザーのカード読取装置で読取らせて補正させることが好ましい。
【0054】
【実施例】
[実施例1]
図1〜3に示す血液濾過ユニットを作製した。図1は血液濾過ユニットを組み立てた状態の縦断面図、図2は血液濾過ユニットを構成する蓋体の平面図、図3は血液濾過ユニットを構成する蓋体の底面図である。
【0055】
この血液濾過ユニットは、図1に示すように、ホルダー1を有し、このホルダー1は、ホルダー本体10と、その上部に密着固定された蓋体20とからなっている。
【0056】
このホルダー本体10はハイインパクトポリスチレン樹脂で形成されたもので、血液濾過材料を構成するガラス繊維濾紙30を収容するガラス繊維濾紙収容室11が形成されるとともに、このガラス繊維濾紙収容室11の上部において、血液濾過材料を構成する微多孔性膜としてのポリスルホン多孔性膜40を収容する微多孔性膜収容室12が形成されている。この微多孔性膜収容室12は、下端においてガラス繊維濾紙収容室11より大きい径の段部19が形成されており、この段部19にポリスルホン多孔性膜40が載置された状態で収容される。また、この段部19の外周縁から、上方に斜めに立ち上がった傾斜部13が形成されており、傾斜部13の上縁から外方にフランジ14が形成されている。
【0057】
一方、ホルダー本体10の底部には、周縁よりやや内側にガラス繊維濾紙載置部15を設けてそこから浅いロート状円板部16が連接され、このロート状円板部16の中心から下方にノズル状血液入口17が延設されている。このノズル状血液入口17には、血液濾過の際、吸引チップ(図示せず)が装着される。上記ガラス繊維濾紙載置部15は、ガラス繊維濾紙30の下面をホルダー本体10のロート状円板部16から隔離させて空間18を形成するスぺーサとしても機能している。
【0058】
前記蓋体20は、外側から、同心円の円筒状をした外壁21、内壁22及び濾過した血漿を貯溜するためのカップ23が形成されている。前記外壁21は、上方へ行くに従って外側へ広がるテーパー状に形成されており、この外壁21の傾斜角は前記傾斜部13の傾斜角と同一であり、また、外径が傾斜部13の内径と同一となっている。すなわち、外壁21が傾斜部13に密着状態で嵌合するようになっている。また、外壁21の周縁部には外方に突出するフランジ24が形成され、このフランジ24がホルダー本体10のフランジ14と超音波で接着されている。このフランジ24の底面(フランジ14と接着する面)には、図3に示すように、接着以前の段階において、接着の際超音波エネルギーをそこに集めて液密性を充分に確保した状態で接着できるように、リブ25が形成されている(なお、接着後は溶融消滅している)。
【0059】
また、蓋体20の底面には、図3に示すように、12個の突起26が略均等な間隔で形成されており、この突起26により、ポリスルホン多孔性膜40が密着するのを防止している。
【0060】
蓋体20の内壁22とカップ23との間には、煙突状の血漿通路27が蓋体20を貫通して上方に突設されており、この血漿通路27の上方には、血漿の噴出を阻止する庇28が水平方向に形成されている。この庇28は、図2に示されるように、大小2つの半円を組み合わせた形状をしており、内側の半円は血漿通路27の外壁と一致している。また、血漿通路27の上端内側部分は、カップ23方向へ斜めになった流入部29が形成され、濾過されて来た血漿27がカップ23内に容易に流れ込むようにようになっていた。
【0061】
なお、以上のような血液濾過ユニットにおいて、ガラス繊維濾紙収容室11の直径は20.1mm、同深さ5.9mm、微多孔性膜収容室12の下端における直径23.0mm、同上端における直径22.5mm、同深さ2.10mm、外壁21の外周面下端の直径20.98mm、同下面からフランジ24までの高さ2mm、内壁22の内径15.0mm、カップ23の内径7.5mm、ガラス繊維濾紙30の直径20.0mm、同厚さ0.91mmのものを6枚、ポリスルホン多孔性膜40の直径20.9mm、同厚さ150μmである。
【0062】
以上の血液濾過ユニットを用いて、試験を行った。
【0063】
テルモ社ベノジェクトII真空採血管VP−H050(ヘパリンNa)で血液を5ml採血した。
【0064】
被検体を男女計5人について用意し、各々の血液5mlを4〜5回静かに転倒混和し均一にした。
【0065】
市販2mlスポイトを用いて、2mlを2mlの遠心用サンプルチューブに分注した。その2ml血液を遠心機(CFM−200,岩城硝子K.K.)で3分、12000rpm血漿を分離し、すみやかに、A/T(EA−06T)のサンプル容器に200μlを採取した。
【0066】
A/T測定器にてNa及びClの測定値(YNa,YCl)を得た。
【0067】
一方、残りの3mlの血液を前記の血液濾過ユニットを用いて濾過し、350μlの血漿を採取した。この血漿をA/T測定器にて、Na及びClの測定値(XNa,XCl)を得た。
【0068】
各被験者について下記表1の結果を得た。
【0069】
【表1】
【0070】
上記乖離値の最下欄の数字は関係式Y=aX+bの係数b(a≒1)に相当するものであり、これが下記の式で示される補正値になる。
Naの補正値:
XNa−YNa=Na補正値(meq/L)
Clの補正値:
XCl−YCl=Cl補正値(meq/L)
【0071】
次に、この補正後の確認を行った。
ヘパリン採血血液5mlを3検体用意した。
【0072】
前記の血液濾過ユニットを用いて3mlの血液を濾過し、350μlの血漿を得た。
【0073】
富士ドライケムシステムFDC−800と電解質分析素子(Na−K−CL,富士写真フィルム(株))を用いて比較測定をした。
未補正測定値:
内蔵演算式の変更はせずに、測定値(ANa(mEq/L))を得た。
補正処理測定値:
内蔵演算式に前記の補正値を導入して、その後に測定値(BNa(mEq/L))を得た。
【0074】
得られた結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
確認された補正量は、
であった。
【0077】
[実施例2]
実施例1と同じ血液濾過ユニットおよび遠心機を用いて病院外来患者血50検体の血液を分離し、各血漿を得た。
【0078】
この血漿を富士ドライケムシステムFDC−5000と総蛋白分析スライド(TP−P)を用いて測定した。
【0079】
得られた結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
また、表3より、生化学分析項目TPの平均補正値として−0.223が得られた。50検体より得たそれぞれの遠心測定値に補正値を加算して得た値とPF値とから補正式を作成した。未知全血検体のTP測定に対する補正式Y=0.9839X+0.3475を得た。有効な結果を得ることが出来た。複数検体を用いてこの補正値が有効であることが確認できた(図4参照)。
【0082】
【発明の効果】
本発明により、血液をガラス繊維フィルターで濾過して目的成分項目を簡便かつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例で使用した血液濾過ユニットの縦断面図である。
【図2】 上記血液濾過ユニットを構成する蓋体の組み立てる前の状態の平面図である。
【図3】 上記血液濾過ユニットを構成する蓋体の組み立てる前の状態の底面図である。
【図4】 補正値加算後の相関係数を示すグラフである。
Claims (2)
- 血液をガラス繊維フィルターで濾過して得られた血漿検体または血清検体を分析する際に、予め当該ガラス繊維フィルターを用いて濾過して得られた血漿または血清の分析値Xと標準となる血液分離方法で得られた血漿または血清の分析値Yとの関係式
Y=aX+b
におけるaとbを求めておき、当該血漿検体または血清検体の分析値Xtから上記式により補正された分析値Ytを算出することを特徴とする血液成分の分析方法 - 血液成分が電解質、蛋白、アンモニア態窒素又は酵素である請求項1記載の分析方法
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