JP2001321366A - 血漿又は血清採取具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な構造で容易に血液濾過を行って血
漿又は血清試料を調製できる器具を提供する。 【解決手段】 上記課題は、真空採血管内に血液濾過ユ
ニットが収容され、該血液濾過ユニットの上方には被濾
過血液収容空間が設けられ、該血液濾過ユニットの下方
にはその奥部を真空室とする隔壁が設けられ、該血液濾
過ユニットの底部には該隔壁の気密を破壊する部材が設
けられていることを特徴とする血漿又は血清採取具によ
って解決される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は採血と血液濾過を同
時に行って血漿又は血清試料を調製する器具に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】血液中の構成成分例えば代謝産物、蛋白
質、脂質、電解質、酵素、抗原、抗体などの種類や濃度
の測定は通常全血を遠心分離して得られる血漿または血
清を検体として行われている。ところが、遠心分離は手
間と時間がかかる。特に少数の検体を急いで処理したい
ときや、現場検査などには、電気を動力とし、遠心分離
機を必要とする遠心法は不向きである。そこで、濾過に
より全血から血漿や血清を分離する方法が検討されてき
た。

【０００３】この濾過方法には、ガラス繊維濾紙をカラ
ムに充填し、カラムの一方から全血を注入し、加圧や減
圧を行なって他方から血漿や血清を得るいくつかの方法
が公知化されている（特公昭４４−１４６７３号公報、
特開平２−２０８５６５号公報、特開平４−２０８８５
６号公報、特公平５−５２４６３号公報等）。

【０００４】しかし、全血から濾過により自動分析等に
よる測定に必要な量の血漿または血清を得る方法に関し
ては血糖など一部の項目を除いては、いまだ試行の段階
にあり、広く実用化されるに至っていない。

【０００５】そこで、本発明者らは先に、微量な血液で
あっても血漿や血清を効率よく分離しうる血液濾過ユニ
ットとして、濾材にガラス繊維濾紙と微多孔性膜を組み
合わせるとともに濾材の血漿出口側にシール部材を設け
て濾過材料の開口面積を狭めた血液濾過ユニットを完成
した（特開平９−１９６９１１号公報）。

【０００６】また、その血液入口に採血針を接続し、血
漿出口側には血漿受槽を配設したものも開発した（特開
平１０−２２５４４８号公報）。

【０００７】一方、注射針が先端に装着され内部に血清
分離カラム又はフィルターを有する真空採血管と真空分
離血清採取管と両者を接合する接合針よりなる血液から
血清又は血漿成分を分離する器具も開発されている（特
開平４−２０８８５６号公報、特開平５−９３７２１号
公報、特開平５−１８８０５３号公報）。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明者らが先に開発
した血漿採取具は血液濾過ユニットに吸引アダプターや
シリンジを接続して採血と血液濾過を行うものであり、
操作や取扱性に問題があって実用化にはまだ不充分であ
った。

【０００９】また、真空採血管と真空分離血清採取管を
接合針で接合させる器具は４部材を連結させ、３個所あ
る針の挿通を順序正しく行う必要があって操作が煩瑣で
あった。

【００１０】本発明の目的は簡単な構造で容易に血液濾
過を行って血漿又は血清試料を調製できる器具を提供す
ることにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するべく鋭意検討の結果、真空採血管の内部に血液
濾過ユニットを収容するとともにその奥部に真空室を形
成する隔壁を設けて濾過する血液をこの採血管に入れた
後隔壁を破壊するようにすれば、採血した血液の濾過を
容易に行って必要量の血漿又は血清試料を調製できるこ
とを見出した。

【００１２】本発明はかかる知見に基づいてなされたも
のであり、真空採血管内に血液濾過ユニットが収容さ
れ、該血液濾過ユニットの上方には被濾過血液収容空間
が設けられ、該血液濾過ユニットの下方にはその奥部を
真空室とする隔壁が設けられ、該血液濾過ユニットの底
部には該隔壁の気密を破壊する部材が設けられているこ
とを特徴とする血漿又は血清採取具に関するものであ
る。

【００１３】

【発明の実施の形態】真空採血管自体は市販品と同様の
構造でよいが、奥部の真空室を別体として着脱可能にす
ることもできる。すなわち、材質はポリスチレン、ポリ
エステル、ポリメタアクリル酸エステル、ポリプロピレ
ン、ナイロン、ポリカーボネート等の合成樹脂、あるい
はガラス等で形成され、上部開口は蓋で閉止されて内部
は、５０〜６００程度の減圧状態にされる。蓋の中央と
採血管の底部には針挿通部が設けられる。

【００１４】この真空採血管の被濾過血液収容空間は容
積が０．１〜２０ｍｌ程度、通常１〜１０ｍｌ程度でよ
い。

【００１５】血液濾過ユニットは血液濾過材料とその支
持部材よりなる。

【００１６】血液濾過材料の種類は問わないが、本発明
の濾過材料では、その表面のみで血球をトラップするい
わゆる表面濾過材料ではなく、ガラス繊維濾紙等の厚さ
方向に浸透するに従って、初めは大きな血球成分、後に
は小さな血球成分と徐々に空隙構造にからめ、厚さ方向
に全長にわたって血球を留め除去していく、いわゆる体
積濾過材料によるものが使用される。好ましいものはガ
ラス繊維濾紙等であり、ガラス繊維濾紙に微多孔性膜を
組み合わせたものが特に好ましい。

【００１７】ガラス繊維濾紙は密度が０．０２〜０．５
ｇ／ｃｍ^３程度、好ましくは０．０３〜０．２ｇ／ｃｍ
^３程度、特に好ましくは０．０５〜０．１３ｇ／ｃｍ^３
程度で、保留粒子径が０．６〜９μｍ程度、特に１〜５
μｍ程度のものが好ましい。ガラス繊維の表面を、特開
平２−２０８５６５号公報、同４−２０８８５６号公報
に記載された様な方法で、親水性高分子で処理すること
によって濾過をより速やかに円滑に行なうことができ
る。また、ガラス繊維の表面をレクチンで処理すること
もできる。

【００１８】表面を親水化されており血球分離能を有す
る微多孔性膜は、実質的に分析値に影響を与える程には
溶血することなく、全血から血球と血漿を特異的に分離
するものである。この微多孔性膜は孔径がガラス繊維濾
紙の保留粒子径より小さくかつ０．２μｍ以上、好まし
くは０．３〜５μｍ程度、より好ましくは０．５〜３μ
ｍ程度のものが適当である。また、空隙率は高いものが
好ましく、具体的には、空隙率が約４０％から約９５
％、好ましくは約５０％から約９５％、さらに好ましく
は約７０％から約９５％の範囲のものが適当である。微
多孔性膜の例としてはポリスルホン膜、弗素含有ポリマ
ー膜等がある。

【００１９】好ましい微多孔性膜はポリスルホン膜、酢
酸セルローズ膜等であり、特に好ましいのはポリスルホ
ン膜である。本発明の血液濾過材料においてはガラス繊
維濾紙が下側に配置され、微多孔性膜が上側に配置され
る。最も好ましい材料は下からガラス繊維濾紙、ポリス
ルホン膜をこの順に積層した積層体である。

【００２０】本発明で用いられる濾過材料は特開昭６２
−１３８７５６〜８号公報、特開平２−１０５０４３号
公報、特開平３−１６６５１号公報等に開示された方法
に従って各層を部分的に配置された接着剤で接着して一
体化することができる。

【００２１】ガラス繊維濾紙層の厚さは、回収すべき血
漿や血清の量とガラス繊維濾紙の密度（空隙率）及び面
積から定められる。分析を乾式分析素子を用いて複数項
目行なう場合の血漿や血清の必要量は１００〜５００μ
ｌであり、ガラス繊維濾紙の密度が０．０２〜０．２程
度、面積が１〜５ｃｍ^２程度が実用的である。この場合
ガラス繊維濾紙層の厚さは１〜１０ｍｍ程度、好ましく
は２〜８ｍｍ程度である。このガラス繊維濾紙は複数
枚、例えば２〜１０枚程度、好ましくは３〜８枚程度を
積層して上記厚さとすることができる。

【００２２】微多孔性膜の厚さは０．０５〜０．５ｍｍ
程度、特に０．１〜０．３ｍｍ程度でよく、通常は１枚
の微多孔性膜を用いればよい。しかしながら、必要によ
り複数枚を用いることもできる。

【００２３】血液濾過材料は通常は筒状部の軸と直角方
向の断面形状と同一あるいはそれよりやや小さい相似形
のディスク状、あるいは皿状をしている。

【００２４】血液濾過材料単独では、真空採血管の筒状
部内壁と接する周縁部から血球が漏出しやすいので、通
常は血液濾過材料の補強手段が必要である。この補強手
段としては、血液濾過材料の周縁部に樹脂を含浸させる
等の手段もとりうるが、枠体等の支持部材を併用するこ
とが好ましい。

【００２５】枠体の基本形状は環であり、この環は丸
棒、角棒、板等で形成される。断面形状でいえば、円
形、楕円形、４角形、短冊形、台形、Ｌ形、コ字形等で
あり、血液濾過材料と接する角部は丸めておくことが好
ましい。環は血球の漏出が起こらない範囲で断点があっ
てもよい。環の内側には血液濾過材料の下面を保持して
濾過の際の吸引による変形、脱落を防止する部材、例え
ば抑止杆を格子状、放射状等に設けたり、ネットを張っ
たり、打抜穴を全体として開口面積が大きくなるように
設けた板を張ったり、抑止突起を設けたりすることが好
ましい。

【００２６】この枠体は、血液濾過材料の周縁を真空採
血管の筒状部内壁に押し付けて血液濾過材料の周縁部を
密接させる形態でもよく、あるいは枠体自体の周縁部を
筒状部内壁に密接させる形態でもよい。

【００２７】前者の場合、血液濾過材料の一部又は全部
の層を皿状として枠体をその凹所に押し込んで周縁部を
外側に、すなわち筒状部内壁に押し付けてもよく、ある
いは血液濾過材料の一部又は全部の層を筒状部内径より
大径としてこれを筒状部に押し込むことによって皿状に
折り曲げて周縁部を筒状部内壁に押し付けてもよい。枠
体は血液濾過材料に接着させてもさせなくてもよい。し
かしながら、少なくとも枠体の周縁部には血液濾過材料
を接着させておくことが好ましい。

【００２８】前者の例を図２(イ)〜(ニ)に示す。図２
(イ)の例の枠体８は丸棒のリングであり、血液濾過材料
７の周縁部をおさえている。血液濾過材料７は複数枚の
ガラス繊維濾紙７１と１枚の微多孔性膜７２からなって
いる。最上層のガラス繊維濾紙７１と微多孔性膜７２が
筒状部（図示されていない。）の内径より大径にされ、
枠体８が押し込まれることによってこれらが下方に折り
曲げられて筒状部内壁に密接している。

【００２９】図２(ロ)の例の枠体８は平板のリングであ
る。血液濾過材料７のうち最下層のガラス繊維濾紙７１
と微多孔性膜７２が筒状部の内径より大径にされて折り
曲げられ、上側のガラス繊維濾紙７１は最下層のガラス
繊維濾紙に散点状に接着されている。

【００３０】図２(ハ)の例の枠体８は断面Ｌ字形のリン
グであり、リングの内側開口には十字状に抑止杆１３が
設けられている。

【００３１】図２(ニ)の例の枠体８は皿状をしていて下
面には開口面積の大きい穴１１が複数設けられている。
下面の処処からは上方に抑止突起１３が形成されてい
る。

【００３２】後者の場合、枠体は、筒状部内壁に密接し
て血球の漏出を阻止する部分と、血液濾過材料を支持す
る部分とを有し、血液濾過材料と枠体の間から血球が漏
出しない構造になっている。筒状部内壁に密接する面、
すなわち、枠体の外周面にはシール機構を設けることが
好ましい。このシール機構としては、周溝を設けてそこ
にＯ−リング等を嵌込んだり、枠体自体を弾性を有する
材質で作製し、外周面には突条を形成してこれにシール
作用を発揮させたりする。血液濾過材料の支持は血液濾
過材料の周縁を抱持あるいは掴持したり、接着したりし
て行う。枠体と血液濾過材料の間に隙間があって血球が
そこを通過するおそれがあるときは、シール材を充填し
たり、血液濾過材料を枠体に接着したりして隙間をなく
すようにする。しかしながら、血液濾過材料を隙間を生
じないよう裁断することが最も簡便である。

【００３３】後者の例を図２(ホ)〜(ト)に示す。図２
(ホ)の例の枠体８は溝形材でリングを形成しており、そ
の上下の内フランジ間に血液濾過材料を抱持している。
枠体８の外周面には２本の周溝が刻設され、そこにＯ−
リング１４が嵌め込まれている。

【００３４】図２(ヘ)の例の枠体８は断面Ｌ字形のリン
グであり、その上端縁からは数個所爪１２が内方に突設
され、これで血液濾過材料を支持している。枠体８の外
周面には周リブ１５が２本設けられ、これが筒状部内壁
との間のシール機能を発揮している。また、枠体８下部
には十字状に抑止杆１３が設けられている。

【００３５】図２(ト)の例の枠体８は断面Ｌ字形のリン
グの内側に皿部を連設したものである。リングの外周面
にはリブは設けられていない。逆皿部の下面には開口面
積の大きい穴１１が複数設けられ、下面の処処からは上
方に抑止突起１３が形成されている。

【００３６】枠体の材質は、血液に影響を与えず、相当
程度強度を有するものがよく、ステンレス、アルミニウ
ム等の金属やフッ素樹脂、ナイロン、ポリエチレン、ポ
リスチレン、ポリプロピレン等のプラスチック等が好ま
しい。

【００３７】枠体は下方に移動可能であり、その底部に
は隔壁の気密を破壊する部材を設ける。この部材は、
針、ナイフ等であり、その内部には濾過液である血漿や
血清の通路が設けられる。血液濾過ユニットが移動しな
いで隔壁を破壊する手段として隔壁と血液濾過ユニット
の間の周壁を二重筒にして上下に摺動させるとか、ある
いはこの二重筒の互いに対向する面に螺条を設けて両者
を螺合させ、これをまわすことによって上下動させても
よい。

【００３８】血液濾過器の下方にはその奥方を別の真空
室とする隔壁を設ける。この隔壁には、天然ゴムや合成
ゴム、シリコン等のゴムシート、アルミニウム箔等の金
属箔、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着膜等を含む積
層プラスチックシート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニ
リデン、ポリエステル、ポリアミド等の各種の単層、あ
るいは積層シート又は板等が使用される。厚さは１０μ
ｍ〜２ｃｍ程度、通常１００〜２０００μｍ程度が適当
である。隔壁の下には血液濾過ユニットの移動を阻止す
るストッパーを設ける。

【００３９】本発明の血漿又は血清採取具は真空採血管
の上部から針を挿通して血液を注入し、その後空気を流
入させると内部圧が一気に上昇して血液濾過ユニットが
その圧力で下降し、隔壁の気密を破壊する部材が隔壁を
破壊し、その真空を利用して血液濾過を行わせることが
できる。

【００４０】

【実施例】本発明の一実施例である血漿又は血清採取具
の縦断面図を図１に示す。

【００４１】この採取具は真空採血管１の内部に摺動可
能な血液濾過ユニット２が挿入され、その下方には隔壁
３がストッパー４上に張設されている。この真空採血管
１の上部開口には蓋５が装着されている。この蓋５の中
央部には針挿通部６が設けられている。

【００４２】血液濾過ユニット２は血液濾過材料７とそ
れを支持する枠体８よりなっている。血液濾過材料は６
枚のガラス繊維濾紙と１枚のポリスルホン多孔性膜が積
層されている。枠体８は筒状の周壁と皿状の底部よりな
っている。この底部からは上方に複数個の突起９が設け
られ、血液濾過材料を底面から空間を保って支持してい
る。底部の中央からは隔壁の気密を破壊する円筒形ナイ
フ１０が下方に突出形成されている。

【００４３】

【発明の効果】本発明の血漿又は血清採取具により血液
を容易に濾過して必要量の血漿又は血清を取得すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施例である血漿又は血清採取具
の縦断面図である。

【図２】 各種の血液濾過ユニットの構造を示す部分断
面図である。

【符号の説明】

１…真空採血管 ２…血液濾過ユニット ３…隔壁 ４…ストッパー ５…蓋 ６…針挿通部 ７…血液濾過材料 ８…枠体 ９…突起 １０…ナイフ １１…貫通穴 １２…爪 １３…抑止部材 １４…シール材 １５…周リブ ７１…ガラス繊維濾紙 ７２…微多孔性膜

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｇ０１Ｎ 33/48 Ａ６１Ｂ 5/14 ３００Ｅ Ａ６１Ｊ 1/00 ３１３Ｎ Ｆターム(参考） 2G045 AA13 BA08 BA10 BB04 BB06 BB10 CA25 CA26 FA05 HA04 HA06 HA13 HA14 HB03 HB05 HB07 4C038 TA01 UA06 UB07 4C077 AA30 BB02 DD11 KK25 LL13 MM09 NN02 PP28

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 真空採血管内に血液濾過ユニットが収容
   され、該血液濾過ユニットの上方には被濾過血液収容空
   間が設けられ、該血液濾過ユニットの下方にはその奥部
   を真空室とする隔壁が設けられ、該血液濾過ユニットの
   底部には該隔壁の気密を破壊する部材が設けられている
   ことを特徴とする血漿又は血清採取具