JP2006033969A - ハイブリッド車の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータによってエンジンの振動を制振する際に、バッテリの充電状態を一定に維持しつつ効果的にエンジンの振動を抑制する。
【解決手段】エンジントルクと逆位相のモータトルク(制振トルク)に、少なくともエンジンの振動トルクの変動周期以上の時間で積算した残存容量の変化量の積算値をゼロとするような直流トルク分を重畳させることにより、エンジントルクをモータトルクで吸収しながら残存容量を一定に保つ。これにより、エンジンの振動トルクを吸収しながらも、容易にバッテリの充電状態を一定に保つことができ、しかも、制振制御を行いつつ、バッテリの充電状態を設定した目標値に近づけることができる。また、温度条件等によりバッテリやモータ及びエンジンの制御パラメータが変動した場合にも、確実且つ容易に制振制御が可能となり、制御性を向上することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、エンジンの振動をモータによって抑制するハイブリッド車の制御装置に関する。
近年、自動車等の車両においては、ガソリン等を燃料とするエンジンを動力源とするものに対し、低公害、省資源の促進を目的として、バッテリからの電力によって駆動力を発生するモータをエンジンに加えて搭載し、エンジンとモータとを併用するハイブリッド車が開発されている。
このようなハイブリッド車では、モータは、エンジンと併用される動力源、或いはエンジンによって駆動される発電機(モータジェネレータ)として利用され、エンジンとモータとが機械的に連結されているのが一般的であることから、低速時等におけるエンジンのトルク変動に伴う振動をモータによって抑制する制振制御を採用するシステムが多い。
しかしながら、モータによるエンジンの制振制御を行うと、モータにエネルギーを供給するバッテリにおいて充放電が繰返される際、エネルギー収支のアンバランスが生じ、バッテリの蓄電量(残存容量)が減少してしまうという問題がある。
すなわち、モータによる制振制御は、エンジントルクと逆位相のモータトルクを発生させてエンジトルクを相殺するものであるが、例えば、図5に示すように、モータの制振トルクが力行側と回生側とで等しい場合、モータを駆動するインバータ等の効率によってバッテリの出力エネルギーが入力エネルギーを上回り、バッテリの充電状態で示される残存容量が時間の経過と共に減少してしまう。
これに対処するに、例えば、特許文献1には、バッテリの蓄電量(残存容量)が第1のしきい値より大きいとき制振制御を行う一方、第1のしきい値以下では制振制御を禁止し、バッテリの蓄電量が第1のしきい値より小さい第2のしきい値を下回ったとき、エンジンのアイドリング回転数を増加させることにより、蓄電量の減少を防止する技術が開示されている。
特開2001−50077号公報
特許文献1に開示の技術は、バッテリの充電状態を一定に保つことを前提としていないため、制振制御時にはバッテリの残存容量が常に変動することになり、バッテリの残存容量が減少したときには、エンジン回転数を増加させて発電トルクを得るようにしている。従って、突然のエンジン回転数の上昇によって乗員に不快感を与えるばかりでなく、しきい値の設定が適切でないと、車両発進時のモータのアシスト力が不足したり、煩雑な充放電を繰返すことに繋がり、更には、温度条件等によりバッテリやモータ及びエンジンの制御パラメータが変動した場合、制御性が悪化する虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、モータによってエンジンの振動を制振する際に、バッテリの充電状態を一定に維持しつつ効果的にエンジンの振動を抑制することのできるハイブリッド車の制御装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明によるハイブリッド車の制御装置は、エンジンの振動を、該エンジンに連結されたモータによって抑制するハイブリッド車の制御装置において、上記エンジンの振動トルクを抑制する制振トルクを上記モータから発生させるモータ制御手段と、上記モータに電力を供給するバッテリの設定時間当りのエネルギー収支を表すパラメータを積算し、該パラメータの積算値がゼロとなるよう、上記モータ制御手段の制御指令と上記エンジンを制御するエンジン制御手段の制御指令との少なくとも一方を補正する補正手段と備えたことを特徴とする。
その際、モータ制御手段の制御指令に対する補正として、バッテリの設定時間当りのエネルギー収支を表すパラメータの積算値がゼロとなるようモータによる制振トルクの直流レベルを調整することにより、バッテリの充電状態を一定に維持することができる。
また、バッテリの設定時間当りのエネルギー収支を表すパラメータとしては、バッテリの残存容量の変化量と充放電電流と直流電圧の変化量とモータの磁束軸及びトルク軸電流指令との何れかを用いることができ、設定時間は、少なくともエンジンの振動トルクの周期以上の時間とすることが望ましい。
本発明によるハイブリッド車の制御装置は、モータによってエンジンの振動を制振する際に、バッテリの充電状態を一定に維持しつつ効果的にエンジンの振動を抑制することができ、制御性を向上することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図4は本発明の実施の一形態に係り、図1はハイブリッド車の制御システムの構成図、図2は制振トルクと残存容量との関係を模式的に示す説明図、図3はモータによる制振制御処理のフローチャート、図4は周期タイマ処理のフローチャートである。
図1において、符号1はエンジン、符号2はエンジン1の出力軸に機械的に連結されるモータであり、例えば、パラレルハイブリッド車においては、走行条件に応じて単独或いはエンジン1と併用されて走行駆動力を発生するモータ、シリーズハイブリッド車においては、エンジン1によって駆動される発電用のモータジェネレータである。尚、図1において、太線は電力系統を示し、破線はデータ信号や制御信号の系統を示す。
エンジン1,モータ2は、それぞれ、エンジン制御装置3,モータ制御装置4により制御される。エンジン制御装置3は、エンジン1に備えられた各種センサ類やスイッチ類からの信号に基づいてエンジン1の運転状態を検出し、中央制御装置であるハイブリッド制御装置5からの指令により、エンジン1の燃焼噴射量・噴射時期、点火時期等を制御する。同様に、モータ制御装置4も、ハイブリッド制御装置5からの指令により、バッテリ6からの直流電力を交流電力に変換してモータ2に供給するインバータ7を制御し、このインバータ7を介してモータ2の制御を行う。
ハイブリッド制御装置5は、ハイブリッドシステム全体を統括して制御するものであり、エンジン制御装置3、モータ制御装置4、バッテリ6の充電状態で示される残存容量(State of charge;SOC)、バッテリ6における入出力可能な最大電力で示される入出力可能パワー量、バッテリ6の劣化度等のバッテリ状態を監視するバッテリ監視装置8、バッテリ6の高電圧の直流電圧を低電圧系(12V系)の直流電圧に変換するDC−DCコンバータ9、このDC−DCコンバータ9からの低圧電源によって作動する補機10等の各装置からの制御情報を入力し、各装置に対する制御指令を出力することにより、ハイブリッドシステム全体を制御する。
また、ハイブリッド制御装置5は、アイドリング運転時、低速走行、一定速度での走行時等におけるエンジン1の周期的なトルク変動に伴う振動を抑制するため、モータ2によるエンジン1の制振制御を実施する。この制振制御は、周知のように、エンジントルクと逆位相のモータトルクを発生させてエンジトルクを相殺するものであるが、モータ2にエネルギーを供給するバッテリ6において充放電が繰返される際、エネルギー収支のアンバランスが生じ、バッテリ6の電流・電圧・温度・内部抵抗等のパラメータから推定される残存容量SOCが変動し、制御性が悪化する虞がある。
このため、ハイブリッド制御装置5は、設定時間当りのバッテリ6のエネルギー収支を表すパラメータを積算し、このパラメータの積算値がゼロとなるように制振制御の制御指令を補正する補正手段としての機能により、エンジントルクをモータトルクで吸収しながらバッテリの残存容量SOCを一定に維持する。このような残存容量SOCを一定に維持する制振制御は、モータ制御手段としてのモータ制御装置4を介したモータ2のトルク制御や速度(回転数)制御、モータ制御装置4とエンジン制御手段としてのエンジン制御装置3とを介したモータ2及びエンジン1の協調制御によって実現する。
バッテリ6のエネルギー収支を表すパラメータとしては、残存容量SOCの変化量を代表的に用いることができる。すなわち、所定の周期で増減を繰返す残存容量SOCに対し、基準値をSOCcmdとすると、ある時間間隔tでの基準値SOCcmdに対する現在の残存容量SOCの変化量の積算値ΔSOCは、以下の(1)式によって表すことができる。
ΔSCO=∫(SOC−SOCcmd)dt…(1)
このとき、積算値ΔSOCは、残存容量SOCが一定であれば、時間間隔tを振動トルクの周期よりも十分に大きい時間間隔とすることにより、ゼロとなる。しかしながら、例えば、図2に破線で示すように、エンジントルクと逆位相のモータの制振トルクΔTが力行側と回生側とで等しい場合には、インバータ7の効率によってバッテリ6の出力エネルギーが入力エネルギーを上回ってしまい、積算値ΔSOCはマイナス値を取ることになる。
従って、エンジン1の制振制御をモータ2のトルク制御によって行う場合、以下の(2)式に示すように、モータの制振トルクを発生させるトルク指令(或いは電流指令)ΔTに、少なくともエンジンの振動トルクの変動周期以上の時間で積算した積算値ΔSOCをゼロとするような補正を加える。この補正は、積算値ΔSOCに応じて直流トルク分を発生させるための係数Kを用いた補正値(ΔSOC×K)によって行い、補正したトルク指令(或いは電流指令)Tcmdによってモータ2の制御を行うことにより、バッテリ6の入出力エネルギーを等しくする(残存容量SOCの変化量の積算値ΔSOCをゼロとする)ことができ、残存容量SOCを一定に維持することが可能となる。
Tcmd=ΔT+ΔSOC×K…(2)
すなわち、図2に実線で示すように、エンジントルクと逆位相のモータトルク(制振トルク)に直流トルク分(ΔSOC×K)を重畳させて直流レベルを調整することにより、エンジントルクをモータトルクで吸収しながら残存容量SOCを一定に保つことができる。積算値ΔSOCを算出する際の基準値SOCcmdは、所望の値に設定することができ、係数Kを適切に設定することにより、所望の残存容量SOCに保って安定化させることができる。
同様に、エンジン1の制振制御をモータ2の速度制御によって行う場合には、エンジントルクの周期的な変動を吸収しつつ残存容量SOCの変化がゼロとなるエンジン・モータ回転数を、残存容量SOCの変化量に応じた補正値で補正する。すなわち、残存容量SOCの変化がゼロとなるエンジン・モータ回転数があるとき、この回転数とモータ回転数とが異なる場合、モータ回転数が大きいときには、モータから見てエンジンが負荷となってバッテリの残存容量SOCが減少することになり、逆に、モータ回転数が小さいときには、バッテリの残存容量SOCは増加することになる。
従って、残存容量SOCの変化がゼロとなる回転数への速度指令(回転数指令)ΔVを、積算値ΔSOCに応じてモータ2の回転数を増減させるための係数K’を用いた補正値(ΔSOC×K’)によって補正し、モータ2への速度指令Vcmdとする(Vcmd=ΔV+ΔSOC×K’)。積算値ΔSOCがマイナス(バッテリ6は放電)ならば、モータ2の速度指令ΔVcmdを速度指令ΔVよりも減少させ、積算値ΔSOCがプラス(バッテリ6は充電)ならば、モータ2の速度指令ΔVcmdを速度指令ΔVよりも増加させることにより、モータ2の負荷を調整してバッテリ6の残存容量SOCを安定化することができる。
この場合、残存容量SOCの変化量の積算値ΔSOCに代えて、残存容量SOCよりも変化を捉えやすいパラメータを積算するようにしても良く、制振制御の応答性をより向上することができる。例えば、残存容量SOCの変化量の積算値ΔSOCに代えて、バッテリ6の充放電電流の積算値、バッテリ6或いはインバータ7で観測した直流電圧の変化量の積算値を用いることができ、また、モータ2の制御としてベクトル制御を採用している場合には、インバータ7の効率を考慮した上で、d軸(磁束軸)及びq軸(トルク軸)電流指令の積算値を用いることができる。
更に、以上の補正値(ΔSOC×K,ΔSOC×K’)によるモータ2の負荷調整を、エンジン1とモータ2との協調制御によって行うようにして良く、例えば、補正値(ΔSOC×K,ΔSOC×K’)に相当するエンジン1のトルク補正や回転数補正を、燃料噴射量、吸入空気量の調整により行い、残存容量SOCの変化量の積算値ΔSOCをゼロとするようにしても良い。
尚、バッテリ6の負荷として、インバータ7以外の機器、例えばDC−DCコンバータ9が作動している場合には、このDC−DCコンバータ9の作動によるバッテリ6のエネルギー収支に応じて、制振制御の制御指令を補正することが望ましい。
次に、バッテリ6の残存容量SOCを一定に維持する制振制御のソフトウエア処理について、図3及び図4に示すフローチャートを用いて説明する。尚、図3及び図4は、モータ2単独での制振制御の例である。
図3はモータ2による制振制御処理を示し、先ず、ステップS1において、一定に維持する目標残存容量の初期値を設定する。この初期値は、例えば、制振制御開始時の残存容量SOC或いは所望の値に設定することができる。次に、ステップS2へ進み、図4に示す周期タイマ処理をスタートさせ、残存容量SOCの変化量の積算を開始する。そして、ステップS3で、この周期タイマ処理によって算出された補正値を読込み、モータ2の制御指令を算出してモータ制御を行う。このモータ制御は、上述したように、残存容量SOCの変化量の積算値ΔSOCをゼロとするように補正されたモータ2のトルク指令、電流指令、速度指令によって行われ、残存容量SOCを目標値に保ちながら、エンジントルクの変動をモータトルクによって吸収する。
一方、図4の周期タイマ処理では、最初のステップS11において、目標残存容量を基準値として、この基準値に対する残存容量SOCの変化量を積算し、ステップS12で積算回数がN回に達したか否かを調べる。このN回の積算回数は、少なくともエンジンの振動トルクの変動周期以上の時間を与える回数である。そして、N回の積算が完了していない場合には、ステップS11へ戻って残存容量SOCの変化量の積算を続行し、N回の積算が完了したとき、ステップS13へ進む。
ステップS13では、残存容量SOCの変化量の積算値に基づいてモータ制御における制御指令の補正値を算出する。この補正値は、上述したように、モータ2のトルク制御においては、補正値(ΔSOC×K)による直流トルク分であり、モータ2の速度制御においては、補正値(ΔSOC×K’)による回転数増減分である。そして、ステップS14で、残存容量SOCの変化量の積算値をクリアし、周期タイマ処理を終了する。
このように、本実施の形態においては、エンジンの振動トルクを吸収しながらも、容易にバッテリの充電状態(残存容量)を一定に保つことができ、しかも、制振制御を行いつつ、バッテリの充電状態を設定した目標値に近づけることができる。また、温度条件等によりバッテリやモータ及びエンジンの制御パラメータが変動した場合にも、確実且つ容易に制振制御が可能となり、制御性を向上することができる。
ハイブリッド車の制御システムの構成図 制振トルクと残存容量との関係を模式的に示す説明図 モータによる制振制御処理のフローチャート 周期タイマ処理のフローチャート 従来の制振トルクと残存容量との関係を模式的に示す説明図
符号の説明
1 エンジン
2 モータ
3 エンジン制御装置(エンジン制御手段)
4 モータ制御装置(モータ制御手段)
5 ハイブリッド制御装置(補正手段)
6 バッテリ
SOC 残存容量
ΔSOC 積算値
ΔT 制振トルク
ΔSOC×K 直流トルク分(直流レベル)
代理人 弁理士 伊 藤 進

Claims (4)

  1. エンジンの振動を、該エンジンに連結されたモータによって抑制するハイブリッド車の制御装置において、
    上記エンジンの振動トルクを抑制する制振トルクを上記モータから発生させるモータ制御手段と、
    上記モータに電力を供給するバッテリの設定時間当りのエネルギー収支を表すパラメータを積算し、該パラメータの積算値がゼロとなるよう、上記モータ制御手段の制御指令と上記エンジンを制御するエンジン制御手段の制御指令との少なくとも一方を補正する補正手段と備えたことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
  2. 上記補正手段は、
    上記パラメータの積算値がゼロとなるよう、上記モータ制御手段の制御指令を補正して上記制振トルクの直流レベルを調整することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車の制御装置。
  3. 上記補正手段は、
    上記バッテリの残存容量の変化量と充放電電流と直流電圧の変化量と上記モータの磁束軸及びトルク軸電流指令との何れかを上記パラメータとして用いることを特徴とする請求項1又は2記載のハイブリッド車の制御装置。
  4. 上記補正手段は、
    上記設定時間を、少なくとも上記エンジンの振動トルクの周期以上の時間とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載のハイブリッド車の制御装置。
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