JP2004100504A - アイドルストップ車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転速度制御部4aは、エンジン1と連結されたモータ5の回転速度制御を行うことにより、モータ5を駆動するためのトルク指令値Trefを算出する。回転速度制御ゲイン切換部4cは、アイドルストップ時に、モータ5の回転速度Nmが所定回転速度より小さくなると、通常の制御ゲインより大きい制御ゲインを選択する。これにより、エンジン1の低回転速度領域におけるモータ制御の応答性を向上させて、エンジン振動を抑制する。
【選択図】図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイドルストップ時に生じる車両振動を抑制するアイドルストップ車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
交差点等における一時停止時にアイドリングをストップするアイドルストップ車両において、アイドルストップ時に発生する車両振動を抑制する装置が知られている。例えば、特開2000−316205号公報に開示されている車両用動力装置では、エンジンが停止動作に入った時に、発電機を発電状態としてエンジンに負荷を与えて、エンジンの回転数を素早く変化させることにより、エンジンと車体の共振点を素早く通過させて、車両振動が発生するのを抑制している。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−316205号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の振動抑制方法では、エンジン停止時に負荷を与えてエンジンの回転数を素早く低下させるようにしているだけであるので、エンジンが停止する直前の極低回転領域では、振動を抑制することができない可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、アイドルストップ時に、エンジンの極低回転領域における車両振動を抑制するアイドルストップ車両の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)エンジンと、エンジンと連結されたモータとを備えるアイドルストップ車両の制御装置は、所定の条件が満たされた時にエンジンを停止させるためのアイドルストップ指令を出力するアイドルストップ指令出力手段と、モータを制御する制御手段と、モータの回転速度を検出する回転速度検出手段とを備える。制御手段は、アイドルストップ指令が出力された後、モータの回転速度が所定回転速度より大きい場合には第1の制御ゲインにてモータを制御し、モータの回転速度が所定回転速度より小さい場合には、第1の制御ゲインより大きい第2の制御ゲインにてモータを制御することにより、上記目的を達成する。
(2)エンジンと、エンジンと連結されたモータとを備えるアイドルストップ車両の制御装置は、所定の条件が満たされた時にアイドルストップ指令を出力するアイドルストップ指令出力手段と、モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、モータの回転速度を用いてモータの回転速度フィードバック制御を行う制御手段とを備える。制御手段は、アイドルストップ指令が出力された後、モータの回転速度が所定回転速度以下の場合には、エンジンの回転速度を用いてモータの回転速度フィードバック制御を行うことにより、上記目的を達成する。
(3)エンジンと、エンジンと連結されたモータとを備えるアイドルストップ車両の制御装置は、所定の条件が満たされた時にアイドルストップ指令を出力するアイドルストップ指令出力手段と、モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、モータを駆動するためのトルク指令値を算出するトルク指令値算出手段とを備える。トルク指令値算出手段は、アイドルストップ指令が出力された後、モータの回転速度が所定回転速度以下の場合には、エンジンフリクションを補償する補正トルク値も算出することにより、最終的なトルク指令値を算出し、上記目的を達成する。
(4)エンジンと、エンジンと連結されたモータとを備えるアイドルストップ車両の制御装置は、所定の条件が満たされた時にアイドルストップ指令を出力するアイドルストップ指令出力手段と、モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、モータの回転速度指令値を算出する回転速度指令値算出手段とを備える。回転速度指令値算出手段は、アイドルストップ指令が出力されると、所定回転速度までは第1の低下速度で低下させ、所定回転速度からは第1の低下速度より小さい第2の低下速度で低下させる回転速度指令値を算出することにより、上記目的を達成する。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような効果を奏する。
(1)請求項1の発明によれば、アイドルストップ指令が出力された後、モータの回転速度が所定回転速度より大きい場合には第1の制御ゲインにてモータを制御し、モータの回転速度が所定回転速度より小さい場合には、第1の制御ゲインより大きい第2の制御ゲインにてモータを制御するので、低回転速度領域におけるモータ制御の応答性を向上させて、エンジン振動を抑制することができる。
(2)請求項3の発明によれば、アイドルストップ指令が出力された後、モータの回転速度が所定回転速度以下の場合には、エンジンの回転速度を用いてモータの回転速度フィードバック制御を行うので、振動の原因となるエンジン回転速度を直接用いることにより、エンジン振動を効果的に抑制することができる。
(3)請求項4の発明によれば、アイドルストップ指令が出力された後、モータの回転速度が所定回転速度以下の場合には、エンジンフリクションを補償する補正トルク値を算出することによって最終的なトルク指令値を算出するので、エンジン振動を効果的に抑制することができる。
(4)請求項7の発明によれば、アイドルストップ指令が出力されると、所定回転速度までは第1の低下速度で低下させ、所定回転速度からは第1の低下速度より小さい第2の低下速度で低下させる回転速度指令値を算出するので、エンジンとモータの慣性力を小さくしてエンジン振動を抑制することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による制御装置を適用した一実施の形態のアイドルストップ車両の主要部の構成を示す図である。このアイドルストップ車両は、エンジン1の駆動力が自動変速機9を介して駆動輪10に伝達されることにより走行する。
【0009】
車両コントローラ(HCM)2は、エンジン1の始動指令・停止指令およびトルク指令を後述するエンジンコントローラ(ECM)3に出力するとともに、回転速度指令を後述するモータコントローラ(M/C)4に出力する。エンジン1の始動指令・停止指令には、信号待ち等により車両が一時的に停止する場合のアイドルストップの作動・解除指令が含まれる。後述するように、アイドルストップ時には、エンジン振動を抑制する回転速度指令値を算出して、モータコントローラ4に出力する。
【0010】
車両コントローラ2には、図示しないアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ12、図示しないブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ13、車両の速度を検出する車速センサ14が接続されている。エンジンコントローラ3に出力するエンジントルク指令値Te*は、各センサ12〜14で検出された検出値に基づいて算出される。
【0011】
車両コントローラ2には、さらに、バッテリ7の充電率(SOC)を検出する電圧センサ15が接続されている。車両コントローラ2は、各センサ12〜15で検出された検出値に基づいて、アイドルストップの実施/解除を決定する。具体的には、車速センサ14で検出した車速が所定車速以下であり、アクセルペダル操作量が0、ブレーキペダルがオン、かつ、バッテリ7のSOCが所定値以上の全ての条件が満たされた時に、アイドルストップを実施する。また、アイドルストップしている状態からいずれかの条件が満たされなくなった時に、アイドルストップを解除する。
【0012】
エンジンコントローラ3は、車両コントローラ2から送られてくるエンジン始動/停止指令に基づいて、エンジン1の始動/停止制御を行う。また、車両コントローラ2から送られてくるエンジントルク指令値Te*に基づいて、不図示のスロットルバルブ開閉装置、燃料噴射装置および点火時期制御装置を制御する。エンジンコントローラ3は、また、クランク角センサ11から送信される信号に基づいて、エンジン1のクランク角θengおよびエンジン回転速度Nengを算出し、モータコントローラ4に出力する。
【0013】
モータコントローラ4は、車両コントローラ2から送られてくる回転速度指令N*と、レゾルバ16で検出されるモータ回転速度Nmとに基づいて、フィードバック演算処理を行うことにより、モータ5を駆動するための最終的なトルク指令値T*を算出する。後述するように、車両のアイドルストップ時には、エンジン振動を抑制するトルク指令値T*を算出する。
【0014】
インバータ6は、モータコントローラ4にて算出される電圧指令値V*に基づいて、バッテリ7の直流電力を3相交流電力に変換してモータ5に供給し、モータ5を駆動(力行)運転する。モータ5は、プーリー&ベルト動力伝達機構8を介してエンジン1と連結されており、エンジン1を始動するために用いられるとともに、図示しない補機を駆動する。また、モータ5は、バッテリ7の電力が少なくなった場合には、モータコントローラ4からの指令に基づいて、エンジン1を動力源とする回生運転により発電も行う。発電された電力は、インバータ6で直流電力に変換されて、バッテリ7に蓄電される。
【0015】
図2は、車両コントローラ2およびモータコントローラ4で行われる制御の詳細内容を示す制御システム図である。初めに、車両コントローラ2で行われる制御内容について説明する。
【0016】
上述したアイドルストップのための条件が満たされると、車両コントローラ2は、エンジン1を停止させるために、モータ5の回転速度指令N*をモータコントローラ4に出力する。回転速度指令N*は、回転速度指令演算部2aで演算する。回転速度指令演算部2aは、エンジン回転速度が所定回転速度NLまで低下する時のモータ5の回転速度指令N*の低下速度と、所定回転速度NL以下になった時の回転速度指令N*の低下速度とを異なる値とする。
【0017】
すなわち、アイドルストップを開始した時の時刻をt1、エンジン回転速度がアイドリング時のエンジン回転速度Niから所定回転速度NLに低下した時の時刻をt2、エンジン1が停止した時の時刻をt3とすると、モータ5の回転速度指令N*は、次式(1)にて表すことができる。
・t1≦t≦t2
N*=K・(Ni+(NL−Ni)/(t2−t1)・(t−t1))
・t2≦t≦t3
N*=K・(NL−NL/(t3−t2)・(t−t2))
・t>t3
N*=0 …(1)
ただし、Kは、エンジン回転速度とモータ回転速度との比である。
【0018】
図3(a)は、アイドルストップを開始してから、一定の低下速度による回転速度指令N*を出力する場合のエンジン1の目標回転速度と実回転速度との関係を示す図である。この場合、エンジン回転速度の低下速度が大きいため、エンジン1が停止する間際にエンジン1とモータ5の慣性力によって、エンジン1の実回転速度が目標回転速度に対してアンダーシュートし、エンジン停止後に振動が持続する場合がある。この振動を防止するために、モータトルクを大きくすることによって対応することも考えられるが、モータの外形寸法が大きくなってしまう。
【0019】
図3(b)は、エンジン1の停止間際における回転速度指令N*の低下速度を小さくする場合のエンジン1の目標回転速度と実回転速度との関係を示す図である。時刻t1でアイドルストップを開始してから、時刻t2までにエンジン回転速度をNLまで低下させ、その後徐々に0まで低下させる。モータ5の回転速度指令N*は、図3(b)に示すエンジン1の目標回転速度に比例(K倍)する値となる。このように、モータ5の回転速度指令N*の低下速度を所定回転速度K・NLまでは第1の低下速度とし、所定回転速度K・NL以下では第1の低下速度より小さい第2の低下速度とすることにより、エンジン1とモータ5の慣性力を小さくして、アイドルストップ指令後のエンジン振動を低減する。
【0020】
モータコントローラ4は、内部で行う演算処理の機能上、回転速度制御部4aと、回転速度フィードバック選択部4bと、回転速度ゲイン切換部4cと、エンジンフリクション演算部4dと、電流制御部4eと、減算部4fとを備える。回転速度制御部4aは、車両コントローラ2から送られてくる回転速度指令N*と後述する回転速度フィードバック指令Nとに基づいて、回転速度制御を行い、トルク指令値Trefを算出する。回転速度制御は、次式(2)による比例・積分制御(PI制御)とする。
Tref=Kp(N*−N)+Ki∫(N*−N)dt …(2)
ただし、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲインであり、後述する回転速度制御ゲイン切換部4cから送られてくる。
【0021】
回転速度フィードバック選択部4bは、レゾルバ16で検出されるモータ回転速度Nmの大きさに基づいて、回転速度制御部4aで行われるPI制御で用いる回転速度フィードバック指令Nを選択する。すなわち、モータ回転速度Nmが所定回転速度K・NLより大きい場合は、回転速度フィードバック指令Nとしてモータ回転速度Nmを選択し、モータ回転速度NmがK・NL以下の場合は、K・Nengを選択する。従って、回転速度フィードバック指令Nは、次式(3)で表せる。なお、エンジン回転速度Nengは、上述したように、エンジンコントローラ3から送られる。
N=Nm (N>K・NL)
N=K・Neng (N≦K・NL) …(3)
【0022】
モータ5は、プーリー&ベルト動力伝達機構8を介してエンジン1と連結されているので、エンジン回転速度Nengとモータ回転速度Nmとの間には、必ずしもNm=K・Nengの関係が成り立たない。従って、モータ5の回転速度制御を行うに際し、エンジン1の低回転速度領域において、回転速度フィードバック指令Nとしてエンジン回転速度Nengを直接用いることにより、プーリー&ベルト動力伝達機構8の影響を受けない制御が可能となる。すなわち、振動の原因となるエンジン回転速度Nengの変動を直接制御することにより、エンジン振動を抑制する。なお、エンジン1の低回転速度領域では回転速度変動周期が長いので、エンジンコントローラ3からモータコントローラ4にエンジン回転速度Nengが送信される時間、すなわち通信時間が回転速度制御に及ぼす影響は小さい。
【0023】
回転速度制御ゲイン切換部4cは、レゾルバ16で検出されるモータ回転速度Nmの大きさに基づいて、次式(4)により、回転速度制御部4aで行われるPI制御で用いられる比例ゲインKpと積分ゲインKiとを切り換える。
Kp=Kp1、Ki=Ki1 (Nm>K・NL)
Kp=Kp2、Ki=Ki2 (Nm≦K・NL) …(4)
ただし、Kp1<Kp2、Ki1<Ki2である。
【0024】
図4は、モータ回転速度Nmと、比例ゲインKpおよび積分ゲインKiとの関係を示す図である。図4では、ゲインの切り換えに際し、ヒステリシスを設けているが、モータ回転速度Nmが低下して所定回転速度K・NL以下になると、式(4)に示すように、比例ゲインKpおよび積分ゲインKiを共に大きくしている。
【0025】
式(4)に示すように、エンジン1の低回転速度領域において、モータ5のPI制御の制御ゲインを大きくすることにより、式(2)により算出されるトルク指令値Trefは大きくなる。これにより、モータ制御の応答性を向上させて、エンジン1の振動を抑制することができる。一方、振動の問題が発生しにくい高回転領域では、制御ゲインを小さくすることにより、回転速度偏差(N*−N)に対するトルク指令値Trefを小さくして、バッテリ7からモータ5に供給される電力量(消費電力)を少なくする。
【0026】
エンジンフリクション演算部4dは、まず、エンジン1のクランク角θengに基づいて、エンジンフリクションTLを算出する。クランク角θengとエンジンフリクションTLとの間には、図5に示す関係があるので、クランク角θengとエンジンフリクションTLとを対応付けたテーブルを予め用意しておき、このテーブルを用いてエンジンフリクションTLを算出する。
【0027】
次に、エンジンフリクション演算部4dは、モータ回転速度Nmに対する減衰率G(0≦G≦1)を求める。本実施の形態では、図6に示すように、モータ回転速度Nmと減衰率Gとを対応付けたテーブルを予め用意しておき、このテーブルを用いて減衰率Gを算出する。減衰率Gを式で表すと、次式(5)のようになる。
G=0 (Nm>K・NL)
G=Nm/(K・NL) (Nm≦K・NL) …(5)
【0028】
エンジンフリクション演算部4dは、上述したエンジンフリクションTLと減衰率Gとを掛け合わせることにより、エンジンフリクションを補償するためのトルク補正値TL1を算出する。すなわち、トルク補正値TL1は、次式(6)で表せる。
TL1=TL×G …(6)
【0029】
減算部4fは、回転速度制御部4aで算出されるトルク指令値Trefからトルク補正値TL1を減算することにより、最終的なトルク指令値T*を算出する。すなわち、モータ回転速度NmがK・NL以下の時には、エンジンフリクションTLを補償するトルク補正値TL1を算出することによって最終的なトルク指令値T*を求めるので、エンジン1の振動を効果的に抑制することができる。ここで、減衰率Gが一定の値であると、エンジン1が停止する間際には、テーブル化したフリクション値と実際のエンジンフリクションとの差に起因して、逆に振動を持続させてしまう可能性がある。従って、本実施の形態では、モータ回転速度Nmに比例させて、モータ回転速度Nmが小さくなるほど減衰率Gが小さくなるようにしている。これにより、エンジン停止間際でのエンジン回転速度の振動持続を小さくすることができる。
【0030】
なお、エンジン1の低回転速度領域では回転速度変動周期が長いので、エンジンコントローラ3からモータコントローラ4にエンジン1のクランク角θengが送信される時間、すなわち通信時間がトルク補正値演算に及ぼす影響は小さい。
【0031】
電流制御部4eは、減算部4fから出力される最終的なトルク指令値T*に基づいて、インバータ6に出力するための電圧指令値V*を算出する。インバータ6は、電圧指令値V*に基づいて、バッテリ7の直流電力を3相交流電力に変換してモータ5に供給し、モータ5を駆動する。
【0032】
本実施の形態におけるアイドルストップ車両の制御装置による制御方法、すなわち、アイドルストップ指令時に、エンジン1の低回転速度領域におけるエンジン振動の抑制方法についてまとめておく。
【0033】
(1)車両コントローラ2の回転速度指令演算部2aは、アイドルストップ指令が出力された後のモータ5の回転速度指令N*の低下速度を所定回転速度K・NLまでは第1の低下速度とし、所定回転速度K・NL以下では第1の低下速度より小さい第2の低下速度とした。これにより、車両の乗員がエンジン振動を体感しやすい低回転速度領域におけるエンジン1の速度変化を小さくして、エンジン1とモータ5の慣性力を小さくし、エンジン振動を低減することができる。
【0034】
(2)モータコントローラ4の回転速度フィードバック選択部4bは、モータ5の回転速度フィードバック制御に用いる回転速度フィードバック指令Nとして、モータ5の回転速度Nmが所定回転速度K・NLより大きいときは回転速度Nmを選択し、所定回転速度K・NL以下のときはK・Nengを用いた。すなわち、アイドルストップ時に、モータ5の回転速度Nmが所定回転速度K・NL以下のときにエンジン回転速度Nengを用いてモータ5の回転速度制御を行うので、エンジン1とモータ5との間に介在しているプーリー&ベルト動力伝達機構8の影響を受けない制御が可能となり、エンジン1の振動を効果的に抑制することができる。
【0035】
(3)モータコントローラ4の回転速度制御ゲイン切換部4cは、モータ5の回転速度Nmが所定回転速度K・NL以下になると、モータ5の回転速度制御で用いられる制御ゲイン、すなわち、比例ゲインKpと積分ゲインKiの値を大きくした。これにより、アイドルストップ時の低回転速度領域におけるモータ制御の応答性を向上させて、エンジン1の振動を低減させることができる。
【0036】
(4)モータコントローラ4のエンジンフリクション演算部4dは、モータ5の回転速度Nmが所定回転速度K・NL以下の場合に、エンジン1のクランク角θengに基づくエンジンフリクションTLを補償するためのトルク補正値TL1を算出する。モータ5を駆動するための最終的なトルク指令値T*は、モータ5の回転速度制御により算出されるトルク指令値Trefからトルク補正値TL1を減算することにより算出されるので、モータ回転速度NmがK・NL以下の時には、エンジンフリクションTLを補償することにより、エンジン1の振動を効果的に抑制することができる。また、モータ5の回転速度Nmの低下に伴ってトルク補正値TL1を小さくすることにより、エンジン停止間際におけるエンジン回転速度の振動持続を低減することができる。
【0037】
本発明は、上述した一実施の形態に限定されることはない。例えば、上述した一実施の形態では、回転速度指令演算部2a、回転速度フィードバック選択部4b、回転速度制御ゲイン切換部4c、および、エンジンフリクション演算部4dのそれぞれにおいて、アイドルストップ時のエンジン1の低回転速度領域におけるエンジン振動を抑制するための制御を行ったが、いずれか1つの制御を行うようにしてもいし、複数の制御を組み合わせるようにしてもよい。
【0038】
回転速度制御ゲイン切換部4cは、モータ5の回転速度Nmが所定回転速度K・NL以下になると、比例ゲインKpと積分ゲインKiの値をそれぞれ大きくしたが、例えば、比例ゲインKpの値のみを大きくすることもできる。また、回転速度制御部4aにおいて、モータ5の回転速度に対してPID制御を行うような場合には、比例ゲインKpと積分ゲインKiとともに、微分ゲインKdの値を大きくすることもできる。すなわち、モータ5の回転速度Nmが所定回転速度K・NL以下になったときに、モータ制御の応答性を向上させるようにすればよい。
【0039】
回転速度指令演算部2a、回転速度フィードバック選択部4b、回転速度制御ゲイン切換部4c、および、エンジンフリクション演算部4dは、モータの回転速度Nmの大きさに基づいてそれぞれ制御を行っているが、エンジン1とモータ5の回転速度比が一定(K)であることから、エンジンの回転速度Nengの大きさに基づいて制御を行うこともできる。
【0040】
モータ5はエンジン1とプーリー&ベルト動力伝達機構8を介して連結されているものとして説明したが、エンジン1と直結されているものでもよい。また、モータ5の用途により本発明が限定されることも無い。
【0041】
特許請求の範囲の構成要素と一実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、車両コントローラ2がアイドルストップ指令出力手段および回転速度指令値算出手段を、レゾルバ16がモータ回転速度検出手段を、エンジンコントローラ3がエンジン回転速度検出手段を、モータコントローラ4が制御手段およびトルク指令値算出手段をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による制御装置を適用した一実施の形態のアイドルストップ車両の主要部の構成を示す図
【図2】車両コントローラおよびモータコントローラの制御システム構成を示す図
【図3】図3(a)は、一定の低下速度による回転速度指令N*を出力する場合のエンジンの目標回転速度と実回転速度との関係を示す図、図3(b)はエンジンの停止間際における回転速度指令N*の低下速度を小さくする場合のエンジンの目標回転速度と実回転速度との関係を示す図
【図4】モータの回転速度と比例ゲインKpおよび積分ゲインKiとの関係を示す図
【図5】エンジンのクランク角とエンジンフリクショントルクとの関係を示す図
【図6】モータ回転速度とトルク補正値TL1を算出する際に用いる減衰率Gとの関係を示す図
【符号の説明】
1…エンジン、2…車両コントローラ、3…エンジンコントローラ、4…モータコントローラ、5…モータ、6…インバータ、7…バッテリ、8…プーリー&ベルト動力伝達機構、9…自動変速機、10…駆動輪、11…クランク角センサ、12…アクセルセンサ、13…ブレーキセンサ、14…車速センサ、15…電圧センサ、16…レゾルバ、2a…回転速度指令演算部、4a…回転速度制御部、4b…回転速度フィードバック選択部、4c…回転速度制御ゲイン切換部、4d…エンジンフリクション演算部、4e…電流制御部、4f…減算部
Claims (7)
- エンジンと、前記エンジンと連結されたモータとを備えるアイドルストップ車両の制御装置において、
所定の条件が満たされた時に前記エンジンを停止させるためのアイドルストップ指令を出力するアイドルストップ指令出力手段と、
前記モータを制御する制御手段と、
前記モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記アイドルストップ指令が出力された後、前記モータ回転速度検出手段にて検出された前記モータの回転速度が所定回転速度より大きい場合には第1の制御ゲインにて前記モータを制御し、前記モータの回転速度が前記所定回転速度より小さい場合には、前記第1の制御ゲインより大きい第2の制御ゲインにて前記モータを制御することを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置。 - 請求項1に記載のアイドルストップ車両の制御装置において、
前記制御手段は、前記回転速度検出手段により検出された前記モータの回転速度と目標値とを一致させるためにPI制御を行うことにより前記モータを制御し、前記制御ゲインは比例ゲインおよび積分ゲインの少なくともいずれか一方であることを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置。 - エンジンと、前記エンジンと連結されたモータとを備えるアイドルストップ車両の制御装置において、
所定の条件が満たされた時に前記エンジンを停止させるためのアイドルストップ指令を出力するアイドルストップ指令出力手段と、
前記モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
前記モータ回転速度検出手段により検出された前記モータの回転速度を用いて、前記モータの回転速度フィードバック制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記アイドルストップ指令が出力された時に、前記モータ回転速度検出手段により検出された前記モータの回転速度が所定回転速度以下の場合には、前記エンジン回転速度検出手段により検出された前記エンジンの回転速度を用いて、前記モータの回転速度フィードバック制御を行うことを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置。 - エンジンと、前記エンジンと連結されたモータとを備えるアイドルストップ車両の制御装置において、
所定の条件が満たされた時に前記エンジンを停止させるためのアイドルストップ指令を出力するアイドルストップ指令出力手段と、
前記モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、
前記モータを駆動するためのトルク指令値を算出するトルク指令値算出手段とを備え、
前記トルク指令値算出手段は、前記アイドルストップ指令が出力された後、前記モータ回転速度検出手段により検出された前記モータの回転速度が所定回転速度以下の場合には、エンジンフリクションを補償する補正トルク値を算出することにより、最終的なトルク指令値を算出することを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置。 - 請求項4に記載のアイドルストップ車両の制御装置において、
前記トルク指令値算出手段は、前記モータの回転速度フィードバック制御を行うことにより算出されるトルク指令値と、前記補正トルク指令値とに基づいて、前記最終的なトルク指令値を算出することを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置。 - 請求項4または5に記載のアイドルストップ車両の制御装置において、
前記トルク指令値算出手段は、前記モータの回転速度が低下するほど前記補正トルク値を小さくすることを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置。 - エンジンと、前記エンジンと連結されたモータとを備えるアイドルストップ車両の制御装置において、
所定の条件が満たされた時に前記エンジンを停止させるためのアイドルストップ指令を出力するアイドルストップ指令出力手段と、
前記モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、
前記モータの回転速度指令値を算出する回転速度指令値算出手段とを備え、
前記回転速度指令値算出手段は、前記アイドルストップ指令が出力されると、所定回転速度までは第1の低下速度で低下させ、前記所定回転速度からは前記第1の低下速度より小さい第2の低下速度で低下させる回転速度指令値を算出することを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置。
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