JP3861850B2 - ハイブリッド自動車の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンと電動機との駆動力を用いて走行可能な、ハイブリッド自動車の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5はいわゆるISA(Integrated Starter Alternator)システムを採用したハイブリッド自動車の要部を模式的に示す図であって、エンジン2とトランスミッション6との間に電動機(モータ/ジェネレータ、以下、単にモータという)4が直列に配設されている。また、エンジン2にはスタータ10が付設されている。
【0003】
また、モータ4の出力軸とエンジン2の出力軸とは機械的に接続されており、モータ4が電力供給を受けて力行することによりエンジン2の駆動力がアシストされるようになっている。また、モータ4を発電機として機能させることで、エンジン2の駆動力を吸収したりエンジンブレーキ相当の回生ブレーキを作用させたりすることができ、このときに電力が回生されるようになっている。
【0004】
ところで、エンジンのみで走行する通常のエンジン車では、所定車速以上であって且つアクセルオフ(全閉)となると、エンジンへの燃料供給を停止するようにした燃料カット制御が広く知られている。
このような燃料カット制御は上述したようなハイブリッド自動車にも適用することができ、ハイブリッド自動車に燃料カット制御を組み合わせることで、ハイブリッド自動車の本来の燃費の良さに加えて燃料カットによる燃料の節約効果が得られ、全体としての燃費がさらに向上する。
【0005】
また、上述のような従来の燃料カット制御では、アクセルの急激な全閉時にはいわゆるダッシュポット制御が行なわれる。これは、アクセルの急激な全閉時に燃料カットを即座に実行すると減速ショックが生じるからであり、ダッシュポット制御はこのような減速ショックを緩和する目的で実行される。
以下、図6に示すタイムチャートを用いてダッシュポット制御について簡単に説明する。なお、以下では、「燃料カット制御の開始」とは、燃料噴射量が完全に0となった時点t2以降をいう。
【0006】
まず、図6(d)に示すように、ドライバがアクセルペダルを急激に閉じてアクセル全閉となると(時点t1)、その後すぐに燃料カットフラグ立ち上げて燃料カット制御を開始するのではなく、図6(b)に示すようにインジェクタの燃料噴射パルス幅(実エンジントルクに相当)を徐々に低減していくとともに、図6(c)に示すように、スロットル開度(要求トルクに相当)を所定の勾配で閉弁していく。なお、スロットル開度については、最初は比較的急激な第1の所定勾配で閉じていき、所定開度まで閉じた後は、上記第1の所定勾配よりも緩やかな第2の所定勾配で閉じていく。そして、燃料噴射のパルス幅が、これ以上短縮できない最小パルス幅まで低下すると(時点t2)、図6(a)に示すように、燃料カットフラグを立ち上げて、燃料供給を完全に停止するのである。
【0007】
そして、このようなダッシュポット制御を実行することにより、アクセルペダルを急激に全閉にしても、燃料噴射量が徐々に低減されるので、減速ショックを抑制することができドライバビリティが向上する。また、ダッシュポット制御は上述したようなハイブリッド自動車にももちろん適用可能であり、これによりハイブリッド自動車のドライバビリティも向上する。
【0008】
なお、例えば特許文献1にも燃料カット制御をハイブリッド自動車に適用した技術が開示されている。通常、燃料カット制御では、エンジン回転数が所定回転数以下となると燃料カットを中止するが、特許文献1の技術では、燃料カット時間を長く実施するために、上記の所定回転数を極力低く設定し、燃料カット制御中にエンジン回転数が所定回転数よりも低下した場合にはモータによりエンジン回転をアシストすることでエンジンストールを防止して、アイドル回転数に収束させるようにしている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−270406号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなダッシュポット制御では、アクセル全閉から燃料カットを開始するまでの間に減速ショックを緩和するために燃料を噴射しており、この分だけ余計に燃料を消費してしまうという課題がある。特に、ダッシュポット制御時は極低負荷の効率の低い運転領域であるため、燃費が良くないという課題がある。
【0011】
なお、上記の特許文献1の技術は、燃料カット時間を長く設定することを目的としており、このため燃料カットの開始が遅れるダッシュポット制御は適用されていない。このため、特許文献1の技術では急激なアクセルオフにより燃料カット条件が成立すると、すぐに燃料カットが開始されるため減速ショックを回避できないという課題がある。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、燃料カット突入時の減速ショックを抑制できるようにするとともに、さらなる燃費向上を図るようにした、ハイブリッド自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明のハイブリッド自動車の制御装置(請求項1)は、車両走行用の駆動力源としてエンジン及び電動機をそなえたハイブリッド自動車の制御装置において、上記電動機の作動状態を制御する電動機制御手段と、所定の走行条件が成立すると上記エンジンへの燃料供給を停止する燃料供給停止手段と、上記電動機に要求される出力トルクを設定する要求トルク設定手段と、上記要求トルク設定手段により設定された要求トルクに一次遅れ処理を施す一次遅れ手段と上記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御手段とを備え、上記電動機制御手段は、上記燃料供給停止手段により燃料供給が停止される際に上記電動機を駆動させて上記電動機の出力トルクを上記エンジンに付与し、上記電動機制御手段は、上記一次遅れ処理された要求トルクに応じて上記電動機を制御するとともに、上記所定の走行条件の成立にともない上記エンジンに対する上記電動機の出力トルクの付与を開始し、上記燃料供給停止手段は、上記電動機の出力トルクの付与が開始された後に上記燃料供給を停止し、上記点火時期制御手段は、上記電動機制御手段により上記電動機の出力トルクの付与が開始されてから上記燃料供給停止手段により燃料供給が停止されるまでの間点火時期をリタードさせることを特徴としている。
【0014】
したがって、燃料供給停止時(すなわち燃料カット制御の突入時)のエンジンのトルクの低下を電動機の出力トルクで補うことにより、減速ショックを抑制することができる。また、従来のダッシュポット制御を実行することなく速やかに燃料供給停止(燃料カット)を開始することができるため燃費が向上する。
【0015】
また、一次遅れ処理に起因する電動機の実際の応答遅れ相当分だけ、燃料供給停止の開始が遅延されることになり、電動機の作動タイミングと燃料供給停止のタイミングとを正確に一致させることができ、したがって、減速ショックをさらに抑制することができる。
【0016】
また、点火時期のリタード量に応じてエンジントルクが抑制されるので、燃料供給停止時に、エンジントルクから電動機の出力トルクへの移行がスムーズになり、ショックのさらなる低減を図ることもできる。
さらに、本発明のハイブリッド自動車の制御装置(請求項2)は、車両走行用の駆動力源としてエンジン及び電動機をそなえたハイブリッド自動車の制御装置において、
上記電動機の作動状態を制御する電動機制御手段と、所定の走行条件が成立すると上記エンジンへの燃料供給を停止する燃料供給停止手段と、上記電動機に要求される出力トルクを設定する要求トルク設定手段と、上記要求トルク設定手段により設定された要求トルクに一次遅れ処理を施す一次遅れ手段とを備え、上記電動機制御手段は、上記燃料供給停止手段により燃料供給が停止される際に上記電動機を駆動させて上記電動機の出力トルクを上記エンジンに付与するとともに、上記一次遅れ処理された要求トルクに応じて上記電動機を制御するとともに、上記所定の走行条件の成立にともない上記エンジンに対する上記電動機の出力トルクの付与を開始し、上記燃料供給停止手段は、上記電動機の出力トルクの付与が開始された後に上記燃料供給を停止することを特徴としている。
また、本発明のハイブリッド自動車の制御装置(請求項3)は、請求項2記載の内容において、上記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御手段を備え、上記点火時期制御手段は、上記電動機制御手段により上記電動機の出力トルクの付与が開始されてから上記燃料供給停止手段により燃料供給が停止されるまでの間点火時期をリタードさせることを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の一実施形態にかかるハイブリッド自動車の制御装置について説明すると、図1はその要部構成を示す模式的なブロック図である。図1において、12はハイブリッド自動車のエンジン2及び電動機4の作動を制御する制御手段であって、この制御手段12は、エンジン2の要求トルクを算出したりモータ4の要求トルクを算出して、ハイブリッドシステムを統括的に管理,制御するシステム管理手段(システムマネジメントユニット:SMU)13と、エンジン2に付設された電子制御スロットルバルブ(ETV)18の作動を制御する吸入空気量制御手段(スロットルバルブ制御手段又はETVコントローラ)16と、上記ETVコントローラ16に対する制御信号を設定するとともにエンジン2の作動を制御するエンジン制御手段(エンジンコントロールユニット:ECU)14と、モータ(モータ/ジェネレータ又はM/G)4の作動状態を制御する電動機制御手段(モータコントロールユニット:MCU)20とから構成されている。
【0018】
また、本実施形態においては、ハイブリッド自動車は、従来技術の欄で図5を用いて説明したようなISA(Integrated Starter Alternator)システムが適用されている。すなわち、モータ4の出力軸とエンジン2の出力軸とが機械的に接続され、MCU20によりモータ4の作動状態を制御することによりエンジン2にトルクを付与したり、エンジン2の発生トルクを吸収(回生)することができるようになっている。
【0019】
また、エンジン2とモータ4との間には、両者の出力軸を直結にしたり、遮断したりすることができるクラッチが配設されており、このクラッチを遮断状態としてモータ4のみの駆動力を駆動輪に出力したり、減速時に駆動輪の回転トルクを吸収(回生)したりすることが可能になっている。なお、クラッチをモータ4とトランスミッション6との間に設けてモータ4によるアシストや回生を行なうように構成してもよい。
【0020】
上述したSMU13には、エンジン2のエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ21や、ドライバのアクセル踏み込み量(アクセル開度;APS)を検出するアクセル開度センサ40や、バッテリ電流やバッテリ電圧に基づきバッテリの残存容量(SOC)を推定する残存容量推定手段42が接続されている。また、図示するように、SMU13内には、車両の走行トルクを決定する走行トルク設定手段131と、エンジン2の出力トルクを設定するエンジン要求トルク設定手段132と、モータ4の出力トルクを設定するモータ要求トルク設定手段133とが設けられている。
【0021】
このうち、走行トルク設定手段131は、ドライバの運転状態に基づいてエンジン2及びモータ4からなるパワープラント(動力源)全体の要求トルク(以下、走行トルクという)Tを設定する手段である。ここで、図示するように、この走行トルク設定手段131には、エンジン回転数センサ21及びアクセル開度センサ40により検出されたエンジン回転数Ne及びアクセル開度APSが入力されるようになっており、走行トルク設定手段131では、これらの情報(Ne,APS)に基づいてドライバがどのような加速を要求しているのかを判定するとともに、この加速を得るための走行トルクTを算出するようになっている。
【0022】
また、エンジン要求トルク設定手段132は、上記走行トルク設定手段131で設定された走行トルクTのうち、エンジン2が負担する走行トルク(エンジン要求トルク)Teを設定するものである。ここで、エンジン要求トルク設定手段132には、バッテリ残存容量推定手段42で得られるSOCと、走行トルク設定手段131で設定された走行トルクTとをパラメータとするマップが設けられており、これらの走行トルクTとSOCとに基づいてエンジン要求トルクTeが設定されるようになっている。
【0023】
また、このようにしてエンジン要求トルクTeが設定されると、上記走行トルク設定手段131で設定された走行トルクTから上記エンジン要求トルクTeを減算することで、モータ4が負担する走行トルク(モータ要求トルク)Tmが算出されるようになっている。なお、図1では演算子133がモータ要求トルク設定手段として機能する。
【0024】
ところで、上述のようにしてエンジン要求トルクTeが設定されると、このエンジン要求トルクTeがECU14に入力されるようになっており、ECU14に設けられたETV開度設定手段143により、上記エンジン要求トルクTeを出力するためのETV18の開度が設定(又は算出)されるようになっている。すなわち、ECU14では、エンジン要求トルクTeとエンジン回転数Neとから、必要とされるエンジン2の正味平均有効圧Peと、そのときのエンジン2のフリクションに相当する負荷トルクPfとを求め、これらPe,Pfを下式(1)に代入することでよりエンジン2の目標トルクPiを設定するようになっている。
Pi=Pe+Pf・・・・・(1)
また、ETV開度設定手段143には、上記目標トルクPiとエンジン回転数NeとからETV開度を設定するマップが設けられており、式(1)により目標トルクPiが設定されると、このマップからETV開度が算出されるようになっている。
【0025】
そして、ETV開度が算出されると、ETVコントローラ16では、上記ECU14で設定されたETV開度となるように図示しないETVアクチュエータをフィードバック制御するようになっている。
そして、このようにしてETV18により吸入空気量が制御されることにより、エンジン要求トルク設定手段132で設定されたトルクがエンジン2から出力されるようになっている。
【0026】
一方、SMU13には、ローパスフィルタ(一次遅れ処理手段、以下LPFという)135が設けられており、モータ要求トルク設定手段133でモータ要求トルクTmが設定されると、このモータ要求トルクTmはLPF135において下式(2)により一次遅れ処理が施されてから出力されるようになっている。なお、式(2)において、αは重み付け係数(0<α<1)である。
Tmn =(1−α)Tmn +αTmn-1 ・・・(2)
また、LPF135から出力されたモータ要求トルクTmはMCU20に入力されるようになっており、このMCU20において、上述により設定されたモータ要求トルクTmとなるようにモータ4への電流値が制御されるようになっている。
【0027】
なお、LPF135における一次遅れ処理は、エンジン2の空気量変化に起因する応答遅れをモータ4においても擬似的に再現させるための処理であり、このような一次遅れ処理を施すことにより、モータ要求トルクTmが、いわゆるなまされた状態でモータ4から出力されて、エンジン2の出力トルク特性とモータ4の出力トルク特性とを走行トルク設定手段131で算出される走行トルクTに応じたものとすることができ、エンジン2とモータ4との協調制御を適正に実行することができる。
【0028】
ところで、本実施形態においては、車速センサ41,アクセル開度センサ40及びエンジン回転数センサ21からの情報に基づいて所定の走行条件が成立したと判定されると、エンジン2への燃料供給を停止するいわゆる燃料カット制御(又はF/Cという)が実行されるようになっている。なお、所定の走行条件とは、例えばアクセル開度が0(全閉)で且つ所定車速(V1)以上のときである。また、燃料カット制御中にアクセルの踏み込みが検出されるか、又は、エンジン回転数が所定値以下となったことが検出されると、燃料カット制御が中止されて通常の運転状態に復帰するようになっている。
【0029】
以下、さらに詳しく説明すると、図示するように、SMU13にはエンジン回転数センサ21,アクセル開度センサ40及び車速センサ41からの情報に基づいて車両の運転状態を判定する運転状態判定手段44が設けられており、この運転状態判定手段44により、上述の所定の走行条件(アクセル全閉、且つ所定車速以上)が成立しているか否かが判定されるようになっている。また、運転状態判定手段44は、所定の走行条件を満たしていると判定すると、ECU14及びMCU20に対して燃料カット制御の開始や燃料カット制御から通常運転への復帰を指示する機能も有している。
【0030】
ここで、ECU14には、上述したETV開度設定手段143以外にも、インジェクタ(図示省略)の作動を制御するインジェクタ制御手段141及び点火プラグ(同じく図示省略)の点火時期を制御する点火時期制御手段142が設けられている。そして、運転状態判定手段44によりアクセルの急激な全閉により上記所定の走行条件が成立したと判定されると、インジェクタ制御手段141及び点火時期制御手段142によりインジェクタ及び点火プラグの作動が制御されるとともに、MCU20によりモータ4の作動が制御されて、燃料カット状態に円滑に移行するようになっている。
【0031】
すなわち、図2(a)〜(f)のタイムチャートに示すように、時点t1において、アクセルの急激な全閉により上記所定の走行条件が成立する〔図2(f)参照〕と、まず従来のダッシュポット制御と同様にインジェクタ制御手段141によりエンジン2のインジェクタパルス幅(実トルク)が徐々に低減される〔図2(c)参照〕とともに、ETV開度設定手段143によりETV開度が比較的急激な勾配で閉じられる〔図2(d)参照〕。また、エンジントルクのさらなる低減を図るべく点火時期制御手段142により点火時期も徐々にリタードされる〔図2(e)参照〕。
【0032】
そして、このときのエンジン2の実トルクの低下分を補うべく、時点t1からモータ4を作動させて、モータ4の出力トルクをエンジン2に付与する〔図2(b)参照〕とともに、モータ4から十分なトルクが出力されると(時点t2)、速やかにインジェクタの駆動パルスを0にして燃料カットを開始する〔図2(c)参照〕ようになっている。つまり、燃料カット開始前に、モータ4でエンジン2をアシストすることにより、エンジン2のトルクの落ち込みをカバーして減速ショックを抑制するとともに、燃料カットへ速やかに移行することができる。
【0033】
さらに具体的に説明すると、本来はモータ4はエンジン2に比べると制御応答性が極めて高いものであるが、本実施形態においては、上述のようにLPF135によりモータ4の要求トルクに対して一次遅れ処理を施しているため、図2(b)に示すように、モータ4のトルク(M/Gトルク)は速やかに立ち上がるのではなく、徐々に大きくなる。つまり、本実施形態ではエンジン2の応答性を擬似的に再現させるべく一時遅れ処理を実行しており、その分僅かながら応答遅れが生じている(Δt参照)。
【0034】
したがって、この遅れ分Δtを考慮せずにアクセルが全閉となった時点(燃料カット条件成立時点)t1ですぐに燃料カットを実行すると、この時点ではモータ4の駆動トルクが不足しているためトルク段差が生じ、減速ショックを回避できない。
そこで、本発明では、モータ4の応答性を考慮して、アクセル開度全閉時t1から上記Δtだけ遅延させて燃料カットを開始するようにしているのである。具体的には、図2(f)に示すように、時点t1でアクセルオフとなると、インジェクタ駆動時間(燃料噴射パルス幅)を低減しながら〔図2(c)参照〕、ETV開度を閉じていくとともに〔図2(d)参照〕、さらに点火時期も徐々にリタードしていく〔図2(e)参照〕。また、時点t1からモータ4を作動させトルクを発生させて、エンジンのトルク低減分をアシストする〔図2(b)参照〕。
【0035】
そして、時点t1から所定時間Δtだけ経過したら、図2(a)に示すように、ECU14内で燃料カットフラグを立ち上げて、インジェクタの駆動を停止する〔図2(c)参照〕とともに点火時期のリタードを中止して〔図2(e)参照〕、燃料カット制御を開始するようになっているのである。
以上のように、本願発明では燃料カット突入時のトルク段差を効率の良いモータ4を用いて補償することにより減速ショックの低減と燃費の向上とを図ることができるのである。つまり、図2において、時点t3は従来のダッシュポット制御時の燃料カットフラグの立ち上げタイミングであるが、本願発明によれば、このタイミングを時点t2まで早めることで、この間噴射していた燃料を節約でき燃費の向上を図ることができる。また、時点t2以降は一時的にモータ4を作動させることになり、この分エネルギを消費することになるが、このようなモータ4の作動による燃費の低下代と燃料噴射の停止を早めることによる燃費の向上代とでは、燃費向上代の方が大きく、結果的に燃費の向上を図ることができる。
【0036】
また、モータ4の一次遅れ分を考慮して、燃料カット制御の成立時点t1からΔtだけ遅延させてから燃料カットを開始するので、さらなるショックの低減を図ることができ、ドライバビリティが大きく向上する。
本発明の一実施形態にかかるハイブリッド自動車の制御装置は、上述のように構成されているので、燃料カット制御突入時の作用を説明すると以下のようになる。すなわち、図3に示すように、まずSMU13では、燃料カット制御の開始条件が成立したか否かを判定し(ステップS11)、上記の条件が成立していれば、従来と同様に所定勾配でETV開度を閉じる、いわゆるダッシュポット制御を開始する(ステップS12)。
【0037】
次に、エンジン要求トルクが所定値T1以下であるか否かを判定し(ステップS13)、上記エンジン要求トルクが所定値T1以下であればSMU13内において燃料カットフラグが成立して(ステップS14)、この燃料カットフラグをECU14に送信する(ステップS15)。そして、モータ4を作動させてエンジントルクの低下分のアシスト(モータ4による補償)を実行する(ステップS16)。
【0038】
なお、エンジン要求トルクが所定値T1より大きい場合には、燃料カットフラグを不成立として(ステップS17)リターンする。
一方、ECU14側では、図4に示すように、まず燃料カット制御の開始条件が成立すると、燃料カット前の点火時期リタード条件が成立しているか否かを判定する(ステップS21)。なお、点火時期リタード条件は、例えば車速が所定値以上、アクセル全閉、エンジン回転数が所定値以下、且つエンジン要求トルクが所定値T2(>T1)以下であるときに成立する。
【0039】
そして、点火時期リタード条件が成立していれば、点火時期を所定勾配でリタードさせていき(ステップS22)、リタード後の点火時期が所定値よりも遅角側になると(ステップS23)、点火時期が上記所定値にクリップされる(ステップS24)。
その後、MCU13から燃料カットフラグを受信したか否かを判定し(ステップS25)、燃料カットフラグを受信していれば燃料カットフラグ受信から所定時間経過(図2のΔt参照)したか否かを判定し(ステップS26)、所定時間経過していれば、ECU14内で燃料カットフラグが成立して実際に燃料カットを実行する。つまり、この場合は、インジェクタパルス幅(燃料噴射量)を0とする(ステップS27)とともに、点火時期リタードを終了させて(ステップS28)、さらにスロットルを全閉とする(ステップS29)。
【0040】
なお、ステップS25においてMCU13から燃料カットフラグを受信していない場合、及びステップS26において燃料カットフラグ受信から所定時間経過していないと判定された場合には、ECU14内での燃料カット制御を不成立としてリターンする(ステップS30)。
そして、このような制御を実行することにより、燃費のさらなる向上と燃料カット開始時のショックの抑制とを両立できるという利点がある。すなわち、燃料カット突入時には、トルク段差を効率の良いモータ4を用いて補償することにより減速ショックを低減でき、ドライバビリティが大きく向上する。また、これによりインジェクタの燃料噴射を早期に停止でき、この分の燃費が向上する。
【0041】
また、モータ4の一次遅れ分を考慮して、燃料カット制御を遅延させて開始するので、モータ4の作動タイミング(すなわち燃料カットの実施によるエンジントルクの低下分のアシストを実際に実行するタイミング)と燃料カット開始タイミングとを正確に一致させることができ、さらなるショックの低減を図ることができる。また、燃料カット突入時には、点火時期をリタードさせることでエンジントルクが抑制されて、エンジントルクからモータトルクへの移行がスムーズになり、さらにショックの低減を図ることができる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば上記の実施形態においては、本発明をいわゆるISAタイプのハイブリッド自動車に適用した場合について説明したが、本発明は、少なくともモータとエンジンとの出力軸が接続された車両に広く適用できる。なお、この場合モータの出力軸とエンジンの出力軸が直接接続されたもの以外にも、例えばギアやベルト等の出力伝達手段を介して接続されたものにも適用可能であるのは言うまでもない。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のハイブリッド自動車の制御装置によれば、燃料供給停止の突入時には、電動機によりエンジントルクを補償することにより減速ショックを大幅に低減することができる。また、これにより燃料噴射を早期に停止することができ、燃費のさらなる向上を図ることができる。また、ドライバビリティも大きく向上する(請求項1)。
【0044】
また、電動機の一次遅れ分を考慮して、燃料カット制御を遅延させて開始するので、電動機の作動タイミングと燃料供給停止の開始タイミングとを正確に一致させることができ、さらなるショックの低減を図ることができるという利点がある(請求項1および2)。
また、燃料カット突入時に点火時期をリタードさせることでエンジントルクが抑制されて、エンジントルクからモータトルクへの移行がスムーズになり、さらにショックの低減を図ることができる利点がある(請求項1および3)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド自動車の制御装置の要部構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド自動車の制御装置の作用を説明するタイムチャートである。
【図3】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド自動車の制御装置の作用を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド自動車の制御装置の作用を説明するフローチャートである。
【図5】いわゆるISA(Integrated Starter Alternator)システムを採用したハイブリッド自動車の要部を模式的に示す図である。
【図6】燃料カット開始時に実行されるいわゆるダッシュポット制御について説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
2 エンジン
4 モータ(電動機)
20 MCU(電動機制御手段)
133 要求トルク設定手段
135 一次遅れ手段
141 インジェクタ制御手段(燃料供給停止手段)
142 点火時期制御手段
Claims (3)
- 車両走行用の駆動力源としてエンジン及び電動機をそなえたハイブリッド自動車の制御装置において、
上記電動機の作動状態を制御する電動機制御手段と、
所定の走行条件が成立すると上記エンジンへの燃料供給を停止する燃料供給停止手段と、
上記電動機に要求される出力トルクを設定する要求トルク設定手段と、
上記要求トルク設定手段により設定された要求トルクに一次遅れ処理を施す一次遅れ手段と、
上記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御手段とを備え、
上記電動機制御手段は、上記燃料供給停止手段により燃料供給が停止される際に上記電動機を駆動させて上記電動機の出力トルクを上記エンジンに付与し、
上記電動機制御手段は、上記一次遅れ処理された要求トルクに応じて上記電動機を制御するとともに、上記所定の走行条件の成立にともない上記エンジンに対する上記電動機の出力トルクの付与を開始し、
上記燃料供給停止手段は、上記電動機の出力トルクの付与が開始された後に上記燃料供給を停止し、
上記点火時期制御手段は、上記電動機制御手段により上記電動機の出力トルクの付与が開始されてから上記燃料供給停止手段により燃料供給が停止されるまでの間点火時期をリタードさせる
ことを特徴とする、ハイブリッド自動車の制御装置。 - 車両走行用の駆動力源としてエンジン及び電動機をそなえたハイブリッド自動車の制御装置において、
上記電動機の作動状態を制御する電動機制御手段と、
所定の走行条件が成立すると上記エンジンへの燃料供給を停止する燃料供給停止手段と、
上記電動機に要求される出力トルクを設定する要求トルク設定手段と、
上記要求トルク設定手段により設定された要求トルクに一次遅れ処理を施す一次遅れ手段とを備え、
上記電動機制御手段は、上記燃料供給停止手段により燃料供給が停止される際に上記電動機を駆動させて上記電動機の出力トルクを上記エンジンに付与するとともに、上記一次遅れ処理された要求トルクに応じて上記電動機を制御するとともに、上記所定の走行条件の成立にともない上記エンジンに対する上記電動機の出力トルクの付与を開始し、
上記燃料供給停止手段は、上記電動機の出力トルクの付与が開始された後に上記燃料供給を停止する
ことを特徴とする、ハイブリッド自動車の制御装置。 - 上記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御手段を備え、
上記点火時期制御手段は、上記電動機制御手段により上記電動機の出力トルクの付与が開始されてから上記燃料供給停止手段により燃料供給が停止されるまでの間点火時期をリタードさせる
ことを特徴とする、請求項2記載のハイブリッド自動車の制御装置。
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