JP2006024444A - 鉛蓄電池用正極板の製造方法 - Google Patents

鉛蓄電池用正極板の製造方法 Download PDF

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圭一 和田
Takafumi Kondo
隆文 近藤
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Abstract

【課題】 寿命特性を損なわない鉛蓄電池用正極板の製造方法を得る。
【解決手段】 格子体に活物質を充填した後、高濃度の溶存酸素を含む硫酸に浸漬し、しかる後に熟成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鉛丹を用いた鉛蓄電池用正極板の製造方法に関するものである。
鉛丹を用いた従来の鉛蓄電池用正極板の製造は、鉛丹と鉛粉を混合したものと硫酸をペースト混合機に供給し、得られた正極ペーストを用いて行っていた(例えば、特許文献1参照。)。
特開平5−242893号公報
しかしながら、鉛丹を用いた場合、鉛粉由来の金属鉛量の含有量が減少する。このため熟成時に金属鉛の酸化熱が減少し、熟成時の未化成正極板の温度上昇が低下する。発熱温度の低下は金属鉛の減少を遅らせ、熟成終了後の残存金属鉛量が増加する。また、活物質中の金属鉛の減少が遅れるため、格子体−活物質の界面の密着性も低下する。このことは、鉛蓄電池の寿命特性に悪影響を及ぼす問題となる。
本発明の目的は、寿命特性を損なわない鉛蓄電池用正極板の製造方法を提供することにある。
本発明は、正極活物質の原料として鉛粉と鉛丹を用いた鉛蓄電池用正極板の製造方法を対象としている。
本発明に係る鉛蓄電池用正極板の製造方法では、格子体に活物質を充填した後、高濃度の溶存酸素を含む硫酸に浸漬し、しかる後に熟成させることを特徴とする。
この場合、高濃度の溶存酸素を含む硫酸としては、水の電気分解で正極に生成される電解機能水を用いて作った希硫酸を用いることが好ましい。
また、電解機能水のpH値は、pH2.2〜2.7の範囲であることが好ましい。
本発明に係る鉛蓄電池用正極板の製造方法では、格子体に活物質を充填した後、高濃度の溶存酸素を含む硫酸に浸漬するので、硫酸は高い酸化作用を有し、このためこの硫酸中に浸漬した極板はその後の熟成工程において、高い酸化作用により金属鉛の酸化を促進し、短時間で金属鉛が減少する。また、金属鉛の減少が早いため、早い段階で格子体−活物質の界面の酸化反応が起こり、界面での密着性が向上する。
高濃度の溶存酸素を含む硫酸としては、水の電気分解で正極に生成される電解機能水を用いて作った希硫酸を用いる。硫酸中の溶存酸素の濃度は、11.0mg/ml以上である。
また、電解機能水のpH値は、pH2.2〜2.7の範囲である。これらpH値の範囲を外れると、前述した効果が得難くなる。
以下、本発明の最良の形態を実施例により、比較例と対比しながら説明する。
比較例1
この比較例1の鉛蓄電池は、次のようにして製造した。最初に負極板を作った。まず、鉛粉と、該鉛粉に対して13質量%の希硫酸(比重1.26:20℃)と、該鉛粉に対して12質量%の水とを混練して負極活物質ペーストを作った。次に、この負極活物質ペースト73gをPb−Ca0.05質量%−Sn0.6質量%のカルシウム合金の格子体からなる集電体に充填してから、温度50℃、湿度95%中に18時間放置して熟成した後、温度110℃中に2時間放置して乾燥して未化成負極板を作った。
次に、正極板を作った。まず、鉛粉と、該鉛粉に対して15質量%の鉛丹、該鉛粉に対して13質量%の希硫酸(比重1.26:20℃)、該鉛粉に対して12質量%の水とを混練して正極活物質ペーストを作った。次に、この正極活物質ペースト85gをPb−Ca0.07質量%−Sn2.0質量%のカルシウム合金の格子体からなる集電体に充填してから、温度50℃、湿度95%中に18時間放置して熟成した後、温度60℃中に24時間放置して乾燥して未化成正極板を作った。
次に、得られた未化成負極板8枚と未化成正極板7枚とをガラス繊維からなるセパレータを介して積層して各極板群を作った。そして、各極板群を電槽内に配置してから、該電槽に電解液を注液して各未化成鉛蓄電池を作った。なお、電解液は、比重1.240(20℃)の希硫酸である。
得られた未化成鉛蓄電池を22.5Aで12時間化成して鉛蓄電池を完成させた。
比較例2
この比較例2の鉛蓄電池は、比較例1の正極格子体であるカルシウム合金の格子体からなる集電体に正極活物質ペーストを充填した後、温度40℃、湿度95%中に36時間放置して熟成した後、温度60℃中に24時間放置して乾燥して未化成正極板を作った。そのほかは、比較例1と同様に比較例2の鉛蓄電池を完成させた。
実施例1の鉛蓄電池は、次のようにして完成させた。比較例1の正極格子体であるカルシウム合金の格子体からなる集電体に正極活物質ペーストを充填した後、高濃度の溶存酸素を含む硫酸、即ち強酸性電解機能水を用いて調整した比重1.05の硫酸中に約30秒浸漬する。その後、温度50℃、湿度95%中に18時間放置して熟成した後、温度60℃中に24時間放置して乾燥して未化成正極板を作った。そのほかは、比較例1と同様に実施例1の鉛蓄電池を完成させた。 強酸性電解機能水は、次のようにして生成した。隔膜で陰極側と陽極側に仕切った電解槽に硫酸を入れ、電気分解によって陽極に生成した水を取り出し、強酸性電解機能水を得た。電解電力は、20A、35Vとした。電極は、チタン板に白金皮膜したものを用いた。得られた強酸性電解機能水は、pH2.2〜2.7、酸化還元電位960〜1200mV、溶存酸素濃度約22.4mg/ml(通常の水:7.0mg/ml)の性質を持つ。
実施例2の鉛蓄電池は、次のようにして完成させた。実施例1の正極格子体であるカルシウム合金の格子体からなる集電体に正極活物質ペーストを充填した後、温度40℃、湿度95%中に36時間放置して熟成した後、温度60℃中に24時間放置して乾燥して未化成正極板を作った。そのほかは、実施例1と同様に実施例2の鉛蓄電池を完成させた。
図1は、熟成中における比較例1,2と実施例1,2の未化成正極板の金属鉛量変化を示した。なお、この図1中で、実1は実施例1を示し、実2は実施例2を示し、比1は比較例1を示し、比2は比較例2を示す。
未化成活物質中の金属鉛量は、活物質中の水に含まれる溶存酸素により酸化を受け、徐々に減少する。金属鉛量が約7%以下になると、格子体−活物質の界面での酸化反応が進行し、該格子体−活物質の界面での密着性が増す。しかしながら、酸化反応は活物質中の水分量が約3%以上(約10%以下)ないと進行しない。このため金属鉛の減少が早く、熟成時間に対して金属鉛量7%以下の時間が長い実施例1,2が比較例1,2に比べ格子体−活物質の界面での密着性がよくなる。
次に、完成させた各鉛蓄電池に対して深放電での耐久性を確認した。試験条件は25℃の周囲温度で、11Aにて5.2時間放電(実容量の80%)した後に、11Aにて7.8時間放電(放電容量の150%)する充放電サイクルとし、図2に各サイクルの放電末期電圧変化を示した。
実施例1,2は比較例1,2に比べサイクル中の放電末期電圧の低下が遅く、特に実施例2の電圧の低下が遅くなっている。これは、格子体−活物質の界面での酸化反応が進行する図1中に示した密着時間と関連し、格子体−活物質の界面の密着性が良好なものほど、放電サイクル中の電圧低下が少なくなっている。
図1に示した充放電サイクル試験は放電が実容量の80%と深いため、サイクル中に活物質の深部まで放電が進行する。比較例1,2のように格子体−活物質の界面の密着性が不足しているものは、格子体−活物質の界面に硫酸が入り込み易く、界面での放電が起き易くなる。
このため図2に示したように、格子体−活物質の界面の密着性が良好な実施例1,2に比べ、比較例1,2は早期に容量が低下した。
熟成中における比較例1,2と実施例1,2の未化成正極板の金属鉛量変化を示す図である。 比較例1,2と実施例1,2の鉛蓄電池の充放電サイクルを繰り返したときの放電末期電圧変化を示す図である。

Claims (3)

  1. 正極活物質の原料として鉛粉と鉛丹を用いた鉛蓄電池用正極板の製造方法において、
    格子体に活物質を充填した後、高濃度の溶存酸素を含む硫酸に浸漬し、しかる後に熟成させることを特徴とする鉛蓄電池用正極板の製造方法。
  2. 前記高濃度の溶存酸素を含む硫酸は、水の電気分解で正極に生成される電解機能水を用いて作った希硫酸であることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池用正極板の製造方法。
  3. 前記電解機能水のpH値は、pH2.2〜2.7の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の鉛蓄電池用正極板の製造方法。
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