JP2006009477A - 既存建物の中間免震構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 地震による既存建物の変形を、中間階に配置された免震支承に効率よく集中させて免震効果を発揮することができる既存建物の中間免震構造を提供する。
【解決手段】 既存建物の中間免震構造1は、既存建物Kの柱Pに介設された免震支承たる天然ゴム系積層ゴム支承10(以下、単に「積層ゴム支承10」という。)と、この積層ゴム支承10よりも下部に位置する下部構造体40と積層ゴム支承10よりも上部に位置する上部構造体50との間に連結された制震部材たるブレース型ダンパー20と、下部構造体40の構面内に設置された補強ブレース30とから構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、既存建物の中間免震構造に関する。
建物を免震構造にする技術としては、建物の基礎部に積層ゴム支承やすべり支承などからなる免震支承を設置し、建物全体を免震構造にするものがある。
また、基礎部の工事に制約条件の多い既存建物を免震構造に改修する場合には、既存建物の中間階の柱を切断してその切断部に免震支承を設置する中間免震工法が行われている(例えば特許文献1参照)。
特開2002−161648号公報(段落0004〜0007、図1)
しかしながら、中間階で免震した既存建物では、免震支承よりも下部に位置する下部構造体の剛性が低い場合や、高減衰型の免震支承や水平ばねを用いて、免震支承が設置された中間階層(以下、「免震層」という場合がある。)の地震時応答を抑制する場合には、当該下部構造体にも大きな変形が生じてしまい、地震による既存建物の変形を免震支承に効率よく集中させることができないという問題があった。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、地震による既存建物の変形を、中間階に配置された免震支承に効率よく集中させて免震効果を発揮することができる既存建物の中間免震構造を提供することを目的とする。
請求項1に係る既存建物の中間免震構造は、既存建物の中間階の柱を切断し、当該切断部に免震支承を設置することにより前記既存建物を免震化した既存建物の中間免震構造において、前記下部構造体を補強して剛性を高めたことを特徴とする。
かかる構成によれば、免震支承よりも下部に位置する下部構造体を補強することによりその剛性が高められていることから、下部構造体の変形が小さくなり、その分免震支承の変形が大きくなる。すなわち、地震による既存建物の変形を免震支承に集中させることができる。
ここで、下部構造体の補強形式としては、例えば、下部構造体の梁柱から構成される構面内にブレースや耐力壁を設置して、既存建物の変形が小さくなるように補強するのが好適である。また、下部構造体の梁柱や耐力壁を増打ちして、その断面積を大きくするようにしてもよい。
また、免震支承は、積層ゴム支承、すべり支承、ローラー支承およびこれらの複合支承の中から適宜選択して用いることができる。また、複数の種類の支承を組み合わせて用いてもよい。
さらに、免震支承は、いわゆる「減衰機能付免震支承」のように、免震支承としての機能とエネルギー吸収部材としての機能を併せ持ったものを用いてもよい。減衰機能付免震支承の例としては、鉛プラグ入り積層ゴム支承、高減衰積層ゴム支承、曲面すべり支承などを用いることができる。
なお、免震支承は、既存建物の中間階のすべての柱を切断して当該切断箇所に設置するのが最も好ましい。また、すべての柱に免震支承を設置しなくても、十分な免震効果を得ることができる場合には、中間階の一部の柱をそのまま残してもよい。
請求項2に係る既存建物の中間免震構造は、請求項1に記載の既存建物の中間免震構造であって、前記免震支承よりも上部に位置する上部構造体と前記免震支承よりも下部に位置する下部構造体との間に、制震部材を連結したことを特徴とする。
かかる構成によれば、前記免震支承よりも上部に位置する上部構造体と前記免震支承よりも下部に位置する下部構造体との間に制震部材が連結されていることから、当該制震部材は、上部構造体の振動に伴って大きく伸縮することとなる。そのため、当該制震部材を効果的に機能させて、免震支承に集中させた地震等による振動エネルギーを吸収・消費することが可能となる。
制震部材としては、例えば、オイルダンパー、粘性体ダンパー、粘弾性体ダンパーなどの粘性付加型ダンパーや、鋼材ダンパー、摩擦ダンパーなどの履歴減衰型ダンパーを用いることができる。制震部材の設置形式としては、ブレース材に組み込むブレース型ダンパーや、間柱の間に挿入する間柱型ダンパーや、間仕切壁や耐力壁の間に組み込む壁式ダンパーなどの形式を用いることができる。
なお、制震部材は、免震支承と別体に設けてもよいし、前記した「減衰機能付免震支承」などを用いることにより、免震支承と一体に設けてもよい。さらに、「減衰機能付免震支承」のみでは減衰力が不足する場合には、「減衰機能付免震支承」と制震部材とを組み合わせて用いてもよい。
請求項3に係る既存建物の中間免震構造は、請求項2に記載の既存建物の中間免震構造であって、前記制震部材は、減衰力を調節可能な可変減衰ダンパーであることを特徴とする。
かかる構成によれば、既存建物に入力する水平力に応じて制震部材の減衰力を調節することができる。そのため、既存建物の揺れを効果的に抑制することが可能となる。
可変減衰ダンパーとしては、例えば、オイルの流体抵抗を減衰力として利用するオイルダンパーなどにおいて、調圧弁の開度を調節可能にしたものなどがある。
なお、減衰力の調節方法としては、例えば、任意の階に加速度計などのセンサを設置したり、免震支承やダンパーの変形をセンサで計測し、当該センサの計測値に応じて減衰力を調節する方法等が好適である。
請求項4に係る既存建物の中間免震構造は、請求項2または請求項3に記載の既存建物の中間免震構造であって、前記可変減衰ダンパーの減衰力は、通常時において、上限値またはその近傍に設定されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、可変減衰ダンパーの減衰力は、通常時において、上限値またはその近傍に設定されていることから、既存建物に一定以上の水平力が作用するまで免震支承の変形が拘束されることとなる。そのため、例えば、強風などによって建物が揺れることを防止することができる。
請求項5に係る既存建物の中間免震構造は、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の既存建物の中間免震構造であって、前記免震支承は、天然ゴム系積層ゴム支承、転がり支承または低摩擦型すべり支承からなることを特徴とする。
かかる構成によれば、これらの免震支承は、高減衰ゴムを用いた免震支承や鉛を降伏させて履歴による減衰を高めた鉛入り免震支承(LRB:Lead Rubber Bearing)に比べて、水平方向の剛性が低いことから、免震支承の変形を大きくすることができる。そのため、地震時の変形が免震支承に集中し、ひいては免震層の変形が大きくなり、当該免震層に設置された制震部材を伸縮させて減衰機能を効果的に発揮させることができる。
なお、免震支承として天然ゴム系積層ゴム支承、転がり支承または低摩擦型すべり支承を用いた場合には、免震支承とは別個に、ダンパー等の制震部材を上部構造体と下部構造体との間に架設するのが好適である。
また、前記下部構造体の少なくとも一の側面の高さと幅の比(高さ/幅)が1.0以下となるように前記免震支承を配置するのが好適である(請求項6)。なお、なるべく多くの下部構造体の側面の高さと幅の比が1.0以下となるのがより好ましく、下部構造体のすべての側面の高さと幅の比が1.0以下となるのが最も好ましい。
かかる構成によれば、下部構造体の高さよりも幅のほうが大きくなるようにしたので、下部構造体に多大な補強を施す必要がなく、躯体が元来保有する剛性に多少補強する程度で、水平方向の剛性が向上するため、下部構造体の補強量(例えば、補強のために設置するブレースや耐力壁の数)を削減することができる。なお、「下部構造体の一の側面の高さ」とは、地盤や基礎などの下部構造体を拘束するものの上面(拘束面)からの高さをいう。すなわち、既存建物の下端部が地下に埋設されている場合には、地盤表面からの高さが「下部構造体の一の側面の高さ」に相当する。
また、前記既存建物の中間階のうち、Is値が最も低い階層に前記免震支承を配置するのが好適である(請求項7)。
ここで、「Is値」とは、構造体の耐震性能を連続量であらわす指標(構造耐震指標)であり、数値が大きいほど耐震性能が高いことを表すものである。本発明においては、既存建物の階層ごとに計算される。
かかる構成によれば、もともと壁やブレース等の剛性の高い部材が少なく変形が生じやすい位置に免震支承を配置することとなるため、免震支承を効果的に変形させることができるとともに、制震部材を効果的に機能させることが可能となる。また、柱以外に撤去しなければならない部材も少なくてすむ。
また、前記下部構造体は、補強後のIs値が0.6程度またはそれ以上となるように補強されるのが好適である(請求項8)。
免震支承の下部の躯体が剛に近いほうが免震の効果をより発揮することができるが、Is値が0.6程度になるように補強すれば、免震効果を高めることができる。
また、前記免震支承は、当該免震支承が配置される中間階の垂れ壁の下端レベルと略同等の高さに設置されるのが好適である(請求項9)。
以上、本発明に係る既存建物の中間免震構造によれば、地震による既存建物の変形を、中間階に配置された免震支承に効率よく集中させることができる。そのため、既存建物の他の部分に生じる変形が非常に小さくなり、既存建物の損傷や破壊を防止することができる。また、免震支承を大きく変形させることにより、上部構造体と下部構造体との間に架け渡された制震部材を効果的に機能させることができるため、上部構造体の揺れを抑制することが可能となる。これにより、既存建物の地震に対する安全性や居住性を向上させることができる。
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本実施形態に係る既存建物の中間免震構造を備える既存建物を示した立面図である。図2は、既存建物の一部を拡大して示した図である。図3は、既存建物の一部を拡大して示した図である。なお、本実施形態において、既存建物Kは、図1に示すように、地上8階、地下1階建の鉄筋コンクリート造の建築物であり、主に、柱Pと梁Bとから構成されている。
<既存建物の中間免震構造1>
本実施形態に係る既存建物の中間免震構造1は、図1に示すように、既存建物Kの柱Pに介設された免震支承たる天然ゴム系積層ゴム支承10(以下、単に「積層ゴム支承10」という。)と、この積層ゴム支承10よりも下部に位置する下部構造体40と積層ゴム支承10よりも上部に位置する上部構造体50との間に連結された制震部材たるブレース型ダンパー20と、下部構造体40の構面内に設置された補強ブレース30とから構成されている。
(積層ゴム支承10)
積層ゴム支承10は、図1に示すように、既存建物Kの3階部分のすべての柱Pを切断して形成した切断部に介設されている。また、積層ゴム支承10は、図2に示すように、柱Pの上方の切断面に接合された上部プレート11と、柱Pの下方の切断面に接合された下部プレート12と、天然ゴム系のゴムシートと鉄板とを交互に積層して形成された天然ゴム系積層ゴム13とから構成されている。天然ゴム系積層ゴム13は、鉛直方向の剛性が非常に大きく、水平方向の剛性が非常に小さくなっている。そのため、地盤G(図1参照)から既存建物Kに水平力が入力すると、積層ゴム支承10が水平方向に変形する。これにより、下部構造体40の揺れが積層ゴム支承10よりも上層に位置する上部構造体50に伝わり難くなり、上部構造体50の揺れが長周期化される。
なお、上部プレート11及び下部プレート12は、後打ちアンカー(図示せず)を介して柱Pの切断面に接合されている。また、上部プレート11及び下部プレート12と柱Pの切断面との間に生じる隙間には、グラウト剤が注入されており、荷重の伝達がスムーズに行われるようになっている。
(ブレース型ダンパー20)
ブレース型ダンパー20は、図1に示すように、下部構造体40と上部構造体50との間にブレースのように斜めに架け渡されて設置されている。本実施形態では、ブレース型ダンパー20は、既存建物Kの3階部分の両端の構面内に設置されている。また、ブレース型ダンパー20は、図2に示すように、上部接合部材21と、下部接合部材22と、可変減衰ダンパー23とから構成されている。
上部接合部材21及び下部接合部材22は、H形鋼などの鋼材で構成されている。上部接合部材21の一方の端部は、ブラケットBLを介して上部構造体50の梁Bの中央部に剛接合されている。また、下部接合部材22の一方の端部は、ブラケットBLを介して下部構造体40の梁柱接合部に剛接合されている。そして、可変減衰ダンパー23の両端部は、上部接合部材21及び下部接合部材22の他方の端部にそれぞれピン接合されている。すなわち、地震による水平力が既存建物Kに作用して、積層ゴム支承10が水平方向に変形すると、上部接合部材21と下部接合部材22との間隔が伸縮し、この伸縮に伴い可変減衰ダンパー23が伸縮するようになっている。つまり、地震が発生して上部構造体50が水平方向に振動すると、可変減衰ダンパー23が伸縮して振動エネルギーを吸収・消費し、上部構造体50の振動を減衰させるようになっている。
可変減衰ダンパー23は、本実施形態においては、オイルが調圧弁(図示せず)を通過するときの流体抵抗力を減衰力として利用するオイルダンパーで構成されている。そして、本実施形態の可変減衰ダンパー23は、オイルが通過する調圧弁を開閉可能に構成されている。そして、可変減衰ダンパー23は、図2に示すように、下部構造体40に固定された加速度センサSに接続されており、当該加速度センサSの計測値がある閾値以上になったときに、調圧弁が開放されるようになっている。
すなわち、可変減衰ダンパー23は、水平加速度が生じない通常時においては、調圧弁が閉じられており、流体抵抗力が最大(本実施形態では無限大)となっている。このとき、ブレース型ダンパー20は、下部構造体40に対して上部構造体50を固定するブレース材として機能する。また、地震時においては、調圧弁が開放され、可変減衰ダンパー23は一定の流体抵抗力(減衰力)を発揮する。このとき、ブレース型ダンパー20は、エネルギー吸収部材として機能する。
なお、可変減衰ダンパー23に複数の調圧弁を設け、水平加速度に応じて開放する調圧弁の数を増減させることにより、減衰力を段階的に調節できるようにしてもよい。
減衰力の大きさの調節方法としては、例えば、任意の層の変形に応じて制御することとし、当該変形が許容変形の1/2以下であれば、減衰力の大きさを下限に近い値に設定し、変形が大きくなるにつれて減衰力も大きくなるように変動させるようにしてもよい。
(補強ブレース30)
補強ブレース30は、図1、図2に示すように、鉄筋コンクリート造の長尺部材であり、下部構造体40の構面F内に設置されている。本実施形態では、補強ブレース30の上端部は、構面Fの上側の梁Bの中央部に剛接合されており、補強ブレース30の下端部は、構面Fの下側の梁Bと柱Pの接合部に剛結合されている。かかる補強ブレース30により、下部構造体40の各構面Fのせん断変形が拘束され、下部構造体40の剛性が強化される。すなわち、下部構造体40の変形量が小さくなる。
(下部構造体40)
下部構造体40は、図1に示すように、地盤Gの表面から積層ゴム支承10の下端までの高さHと、下部構造体40の幅Wとの比H/W(以下「アスペクト比」という場合がある。)が、1.0以下となるように構成されている。換言すれば、積層ゴム支承10は、下部構造体40のアスペクト比H/Wが1.0以下となる位置に配置されている。これにより、下部構造体40の水平方向の剛性が大きくなり、補強ブレース30の設置数やブレース材の断面積を削減することが可能となる。
また、下部構造体40は、下部構造体40の各階層の補強後の構造耐震指標Isが0.6以上となるように補強される。
構造耐震指標Isは、下式により計算される。
Is=E0×SD×T ・・・ (式1)
ただし、E0は保有性能基本指標を、SDは形状指標を、Tは経年指標をそれぞれ示す。各指標は、各種の設計基準に準拠して定まる値である。
例えば、下部構造体40の構面Fに、補強ブレース30や耐力壁(図示せず)などを構築すると、構造体の剛重比が改善され、形状指標SDが大きくなる。
ここで、図3を用いて積層ゴム支承10の設置位置について説明する。
図3は、既存建物Kの一部を拡大して示した図である。積層ゴム支承10が設置された既存建物Kの3階部分の中央の構面Fには間仕切壁Mが構築されており(図1参照)、間仕切壁Mには開口部Oが形成されている。かかる間仕切壁Mのうち、開口部Oの上端よりも上方の部分は、いわゆる垂れ壁Dを構成する。そして、積層ゴム支承10は、この垂れ壁Dの下端レベルDaと同じ高さ位置に設置されている。すなわち、積層ゴム支承10は、積層ゴム支承10の中心から下方の梁Bまでの高さL1と、垂れ壁Dの下端レベルDaから下方の梁Bまでの高さL2とが略等しくなるように設置されている。
免震支承である積層ゴム支承10の設置高さは、各階層の柱Pの柱頭、柱脚のみならず、その間のどのレベルに配置することも技術的に可能であるが、改修後の建物の使い勝手や、垂れ壁Dの位置、及び、開口部Oのサッシの収まり等を考慮すると、上部構造と下部構造との間で水平方向に相対的なずれ変位が生じる境界を垂れ壁Dの下端レベルDaに合わせるのが好適である。
(積層ゴム支承10の設置方法)
つづいて、積層ゴム支承10の設置方法について簡単に説明する。
(1)はじめに、サポート部材(図示省略)を用意し、切断しようとする柱Pの切断箇所の上部と下部をサポート部材でバイパスして連結する。このとき、当該柱Pに作用している軸力を負担できるだけの部材強度および接合強度を有するように、サポート部材の断面積や本数、連結方法を決定する。
(2)つぎに、コンクリートカッターを用いて柱Pを切断し、積層ゴム支承10の高さの分だけ柱Pを撤去する。このとき、上部構造体50からの鉛直荷重は、サポート部材をバイパスして下部構造体40の柱Pに伝達される。
(3)そして、当該切断箇所に積層ゴム支承10を設置する。このとき、積層ゴム支承10の上部プレート11と柱Pの上側の切断面とを、後打ちアンカーを介して連結する。また、積層ゴム支承10の下部プレート12と柱Pの下側の切断面とを、後打ちアンカーを介して連結する。
(4)つぎに、積層ゴム支承10の上部プレート11と柱Pの上側の切断面との隙間、及び、積層ゴム支承10の下部プレート12と柱Pの下側の切断面との隙間にグラウト剤を注入する。これにより、上部構造体50の鉛直荷重が、局所的に作用することがなくなり、荷重の伝達がスムーズになる。
(5)そして、サポート部材を取り外すことにより、積層ゴム支承10の柱Pへの設置が完了する。
なお、かかる積層ゴム支承10の柱Pへの設置は、ブレース型ダンパー20の設置や、補強ブレース30の設置よりも先行して行ってもよいし、あとから行ってもよいし、同時に行ってもよい。
本実施形態にかかる既存建物の中間免震構造1によれば、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、下部構造体40は、補強ブレース30によって補強されているため、その変形量が小さくなる。そのため、地震による既存建物Kの変形は、免震支承である積層ゴム支承10に集中して発生することとなる。換言すれば、下部構造体40を補強しない場合に比べて、積層ゴム支承10の変形量、ひいては免震層の変形が大きくなる。免震層の変形量が大きくなると、ブレース型ダンパー20によって吸収・消費される振動エネルギーも大きくなり、エネルギー吸収効率が向上する。
また、せん断剛性の低い天然ゴム系積層ゴム支承10によって免震支承を構成していることから、高減衰積層ゴム支承や鉛入り積層ゴム支承(LRB)に比べて免震支承における変形量は一層大きくなる。そのため、ブレース型ダンパー20によって吸収・消費される振動エネルギーも大きくなる。
また、制震部材として可変減衰ダンパー23を用いるとともに、通常時において、その減衰力を上限値に設定していることから、水平方向のせん断剛性が小さい天然ゴム系積層ゴム支承10を用いても、一定以上の水平力が既存建物Kに作用しない限り、上部構造体50が大きく振動するようなことがない。そのため、強風時などにおいても良好な居住性を維持することができるとともに、地震時においては応答に応じて減衰力を調節することで優れた免震性能を発揮することができる。
以上、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態においては、補強ブレース30を用いて下部構造体40を補強したが、これに限られるものではなく、下部構造体40の構面F内に耐震壁(耐力壁)を構築することにより下部構造体40を補強してもよい。また、本実施形態では、下部構造体40のすべての構面Fに補強ブレース30を設置したが、これに限られるものではなく、下部構造体40の補強後のIs値や変形量を考慮して、補強箇所を適宜設定するのが好適である。
また、本実施形態においては、免震支承として水平せん断弾性係数の低い天然ゴム系積層ゴム支承10を用いたが、これに限定されるものではなく、高減衰型の積層ゴム支承やLRBよりも剛性の低い転がり支承(直動案内型を含む)や低摩擦型すべり支承を用いてもよい。これらの免震支承によれば、免震支承の水平変位を比較的大きくすることができる。
また、本実施形態においては、制震部材としてブレース型ダンパー20を用いたが、これに限られるものではなく、間柱型ダンパーや壁型ダンパーを用いてもよい。また、必要な制震力(減衰力)が得られる場合は、制震部材としての機能を兼ね備える免震支承を用いて、制震部材を省略してもよい。また、本実施形態においては、可変減衰ダンパーとして調圧弁を開閉可能なオイルダンパーを用いたが、これに限られるものではない。
本実施形態に係る既存建物の中間免震構造を備える既存建物を示した立面図である。 既存建物の一部を拡大して示した図である。 既存建物の一部を拡大して示した図である。
符号の説明
1 既存建物の中間免震構造
10 天然ゴム系積層ゴム支承(免震支承)
20 ブレース型ダンパー(制震部材)
30 補強ブレース
40 下部構造体
50 上部構造体
K 既存建物

Claims (9)

  1. 既存建物の中間階の柱を切断し、当該切断部に免震支承を設置することにより前記既存建物を免震化する既存建物の中間免震構造において、
    前記免震支承よりも下部に位置する下部構造体を補強して剛性を高めたことを特徴とする既存建物の中間免震構造。
  2. 前記免震支承よりも上部に位置する上部構造体と前記下部構造体との間に、制震部材を連結したことを特徴とする請求項1に記載の既存建物の中間免震構造。
  3. 前記制震部材は、減衰力を調節可能な可変減衰ダンパーであることを特徴とする請求項2に記載の既存建物の中間免震構造。
  4. 前記可変減衰ダンパーの減衰力は、通常時において、上限値またはその近傍に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の既存建物の中間免震構造。
  5. 前記免震支承は、天然ゴム系積層ゴム支承、転がり支承または低摩擦型すべり支承からなることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の既存建物の中間免震構造。
  6. 前記下部構造体の少なくとも一の側面の高さと幅の比が1.0以下となるように前記免震支承を配置することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の既存建物の中間免震構造。
  7. 前記既存建物の中間階のうち、Is値が最も低い階層に前記免震支承を配置することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の既存建物の中間免震構造。
  8. 前記下部構造体は、補強後のIs値が0.6程度またはそれ以上となるように補強されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の既存建物の中間免震構造。
  9. 前記免震支承は、当該免震支承が配置される中間階の垂れ壁の下端レベルと略同等の高さに設置されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の既存建物の中間免震構造。
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