JP2005350621A - 半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物、半導電性樹脂成形物、及び該成形物の製造方法 - Google Patents

半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物、半導電性樹脂成形物、及び該成形物の製造方法 Download PDF

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秀樹 北村
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弘 佐藤
Takeshi Nakahira
武志 中平
Toshimi Murayama
利美 村山
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Abstract

【課題】 半導電性領域内での所望の体積抵抗率を安定して均一に精度よく発現し、高電圧の印加による体積抵抗率の変動が抑制され、高水準の引張弾性率を有し、溶融成形時の臭気が抑制されたポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリフッ化ビニリデン系樹脂、第四級アンモニウム塩、及び導電性カーボンブラックを含有し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対する第四級アンモニウム塩の配合割合が1〜4重量部で、導電性カーボンブラックの配合割合が10〜20重量部であり、かつ、第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックとの重量配合比が1/10〜1/2の範囲内にある半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物、該樹脂組成物の成形物、成形物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックとを含有する半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、絶縁体と金属導体との間の半導電性領域の体積抵抗率を有し、所望の体積抵抗率を安定して均一に精度よく発現することができ、高電圧の印加による体積抵抗率の変動が抑制された半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物に関する。
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を溶融加工して得られる半導電性樹脂成形物は、体積抵抗率の場所によるバラツキが小さく、体積抵抗率の電圧耐久性が良好で、高水準の引張弾性率を示し、溶融加工時における第四級アンモニウム塩の分解に起因する臭気や発泡が抑制されたものである。
また、本発明は、半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を特定の加工温度で溶融成形する半導電性樹脂成形物の製造方法に関する。本発明の製造方法によれば、溶融加工時における第四級アンモニウム塩の分解に起因する臭気や発泡を抑制することができる。
電気・電子機器の技術分野において、体積抵抗率が1.0×10〜1.0×1013(「1.0E+6〜1.0E+13」とも表記される)Ωcmの半導電性領域になるように精密に制御された樹脂材料が求められている。
例えば、電子写真方式の複写機やファクシミリ、レーザービームプリンタなどの画像形成装置(電子写真複写機や静電記録装置)では、帯電、露光、現像、転写、定着、除電の各工程を経て、画像が形成されている。これら各工程では、電荷制御のために、体積抵抗率が半導電性領域にある樹脂材料からなる各種樹脂部材が使用されている。このような用途に使用される半導電性樹脂材料には、体積抵抗率が所定の範囲内に精密に制御されていることが要求される。
具体的に、画像形成装置に装着されているロール部材(例えば、帯電ロール、転写ロール、搬送ロール、現像ロール)、ベルト部材(例えば、帯電ベルト、転写ベルト、搬送ベルト)、現像装置内のトナー層厚規制ブレードなどには、部材全体またはその表面層が半導電性領域内の所定の体積抵抗率を有することが要求されている。
帯電ロールを用いた帯電方式では、電圧を印加した帯電ロールを感光体ドラムと接触させて、感光体ドラム表面に直接電荷を与え、一様かつ均一に帯電させている。現像ロールを用いた現像方式では、現像ロールとトナー供給ロールとの間の摩擦力により、トナーを現像ロール表面に帯電状態で付着させ、これをトナー層厚規制ブレードで一様にならした後、感光体ドラム表面の静電潜像に対し、電気吸引力により付着させて現像している。現像に際し、感光体ドラムと現像ロールとの間にバイアス電圧が印加される。転写ベルトを用いる転写方式では、転写ベルトにトナーとは逆極性の電圧を印加して電界を発生させ、この電界によって生ずる電子吸引力によって、感光体ドラム上のトナーを転写材上に転写させている。
そのため、画像形成装置に配置されている樹脂部材には、半導電性領域の体積抵抗率を有し、電荷制御機能を発揮することが求められている。このような電荷制御機能を有する部材(「電荷制御部材」という)には、体積抵抗率が均一であり、場所による体積抵抗率のバラツキのないことが必要とされている。電荷制御部材の体積抵抗率が場所によって大きく異なると、高品質の画像を得ることができない。例えば、帯電ロールの体積抵抗率が均一でなければ、感光体ドラム表面を一様かつ均一に帯電させることができない。
これらの電荷制御部材には、環境湿度の変化による体積抵抗率の変化が小さいことが望まれる。使用環境下での湿度変化によって、電荷制御部材の体積抵抗率が大幅に変化すると、安定して高品質の画像を得ることができない。
樹脂材料から形成されているOA機器の外装材や部品などは、塵埃やトナーなどを吸引すると、外観を損ねたり、故障の原因となる。電子工業における半導体デバイスやLCDなどの製造工程で使用される樹脂製の装置や部品、ICやLSIなどの電子部品を包装もしくは搬送するためのフィルムや袋、容器は、静電気の発生により塵埃を吸着すると、電子部品の品質を損なう。そのため、これらの用途に使用される樹脂材料には、半導電性領域の体積抵抗率を持ち、電荷制御機能を有することが求められている。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐汚染性、非粘着性、成形加工性などに優れているため、電荷制御部材の樹脂材料として好適である。しかし、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、絶縁体であるため、電荷制御部材として使用するには、その電気抵抗を下げる必要がある。
絶縁性樹脂の電気抵抗を下げる方法として、成形物表面に有機系帯電防止剤を塗布する方法;樹脂に有機系帯電防止剤を練り込む方法;樹脂に導電性カーボンブラックや金属粉などの導電性フィラーを練り込む方法;及び樹脂にイオン電解質を練り込む方法が提案されている。
しかし、成形物表面に有機系帯電防止剤を塗布する方法は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が非粘着性に優れているため、成形物表面を拭いたり、洗浄したりすることによって、帯電防止剤が容易に脱落してしまうという問題がある。
有機系帯電防止剤として界面活性剤を練りこむ方法は、成形物表面から界面活性剤をブリードアウトさせることにより帯電防止性を付与する機構を採用しているため、温度や湿度などの環境の変化によって、体積抵抗率や帯電防止性が大きく変化し、しかもポリフッ化ビニリデン系樹脂の耐汚染性が損なわれる。
有機系帯電防止剤として親水性樹脂を練り込む方法では、所望の帯電防止効果を得るには、親水性樹脂を多量に配合する必要があるため、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の耐汚染性、耐オゾン性、耐溶剤性などの特性が損なわれ、しかも体積抵抗率や帯電防止性の湿度依存性が大きいという問題がある。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂に導電性フィラーを練り込む方法は、体積抵抗率の分布が極めて不均一で、場所による体積抵抗率のバラツキが極めて大きいという問題がある。
イオン電解質として塩化リチウムや塩化カリウムなどの無機金属塩を練り込む方法は、これらの無機金属塩がポリフッ化ビニリデン系樹脂に僅かしか溶解しないため、体積抵抗率を所望の水準にまで下げるのが困難である。また、未溶解の無機金属塩が凝集物を形成して、フィッシュアイの原因になる。無機金属塩をポリフッ化ビニリデン系樹脂に充分に溶解させるために、混練温度を上げたり、混練時間を長くしたりすると、樹脂または無機金属塩が分解して、成形物の物性や外観が損なわれる。
リチウム塩のような潮解性のある無機金属塩を多量に添加すると、樹脂組成物が吸湿性を持つようになるため、湿度の変化によって体積抵抗率が大きく変化したり、ブリードアウトした無機金属塩の潮解物により成形物表面がべたつくという問題が生じる。
イオン電解質の溶解性を向上させる方法として、プロピレンカーボネイトなどの極性溶剤を樹脂中に含ませる方法が提案されている(特許文献1−2)。しかし、この方法は、樹脂のヤング率が著しく低下したり、ブリードアウトしたイオン電解質と極性溶剤によって成形物表面がべたつくという問題があった。
イオン電解質として第四級アンモニウム塩を使用する方法が提案されている。例えば、第四級アンモニウム塩と樹脂を有機溶剤に溶解した帯電防止コーティング材が提案されている(特許文献3)。該コーティング材は、洗浄によって成形物表面から容易に脱落するため、帯電防止効果を持続させるのが困難である。
第四級アンモニウム塩をポリオレフィンに練り込んだ帯電防止性シートが提案されている(特許文献4)。しかし、この帯電防止性シートは、第四級アンモニウム塩が樹脂からブリードアウトすることによって帯電防止効果を発揮する機構を有するものであるため、温度や湿度などの環境変化によって導電性と帯電防止効果が大きく変動する。
第四級アンモニウム塩の中でもハロゲン化第四級アンモニウム塩は、熱安定性に劣るため、加工温度が高いポリフッ化ビニリデン系樹脂と混練して溶融成形すると、成形物に発泡や着色などの不具合が生ずる。
熱安定性が比較的良好なイオン電解質の場合でも、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の体積抵抗率を所望の半導電性領域にまで低下させるには、多量に添加する必要がある。ポリフッ化ビニリデン系樹脂に多量のイオン電解質を添加すると、成形物のヤング率などの機械的強度が低下したり、成形物表面にイオン電解質がブリードアウトしたり、成形加工が困難になったり、コスト高になったりするという問題があった。
多くの無機金属塩や第四級アンモニウム塩は、高湿度環境下でブリードアウトし易い。半導体デバイスの製造工程において、包装や搬送に用いられる制電性包装材料の表面に無機金属塩や第四級アンモニウム塩がブリードアウトすると、べたついた表面に金属不純物が付着し、それが製品不良化の原因になる。電子写真方式の画像形成装置に装着される樹脂部材は、イオン電解質のブリードアウトによる含有量の減少によって表面層の体積抵抗率が変化するため、充分な機能を発揮することが困難である。
本発明者らは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂にテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩など特定の第四級アンモニウム塩を添加することにより、半導電性領域の体積抵抗率を安定して均一に精度よく発現し、環境湿度変化による体積抵抗率と表面抵抗率の変化が小さいポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物が得られることを見出した(特許文献5)。
特許文献5に開示されている樹脂組成物は、半導電性領域内での体積抵抗率を低く設計するには、第四級アンモニウム塩の配合割合を大きくする必要がある。しかし、第四級アンモニウム塩の配合割合を大きくすると、可塑化効果によって樹脂組成物の引張弾性率が低下傾向を示す。第四級アンモニウム塩の配合割合を大きくしすぎると、高温高湿環境下で第四級アンモニウム塩のブリード現象が生じ易くなる。
本発明者らは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂にテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩など特定の第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックとを添加することにより、第四級アンモニウム塩の配合割合を小さくしても、半導電性領域内での体積抵抗率の設計幅を広げることができ、所望の体積抵抗率を安定して均一に精度よく発現し、体積抵抗率の場所によるバラツキも小さい半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物が得られることを見出した(特許文献6)。
特許文献6には、第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックの各配合割合について極めて広い開示があるものの、好ましい配合処方として実施例に具体的に示されているのは、導電性カーボンブラックの配合割合がポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対して10重量部未満の場合だけである。
特許文献6で具体的に採用されている配合処方の樹脂組成物は、引張弾性率が必ずしも充分ではない場合のあることが見出された。引張弾性率が低すぎると、ロール部材やベルト部材などの樹脂部材の物性と耐久性が低下する。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂樹脂組成物は、一般に、高温で溶融成形する必要があるため、溶融加工時に第四級アンモニウム塩が分解して、分解物による臭気により作業環境が悪化したり、成形物に発泡が生じたりすることがあった。
第四級アンモニウム塩の配合割合を、特許文献6に開示されている範囲内で小さくすれば、分解物による臭気の発生や発泡を緩和することができるものの、体積抵抗率の電圧耐久性が著しく低下する。すなわち、導電性カーボンブラックと共に小割合の第四級アンモニウム塩を含有する半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を溶融成形してなる成形物は、半導電性領域の体積抵抗率を有するものの、高電圧を印加すると、体積抵抗率が大きく変動することが判明した。
電子写真方式の画像形成装置に用いられる樹脂部材の多くは、電圧を印加する条件下で用いられているため、体積抵抗率の電圧耐久性が悪いと、樹脂部材の耐久性や信頼性に問題が生じ、高品質の画像形成も困難となる。
特開昭60−177064号公報 特開昭61−72061号公報 特開昭46−64989号公報 特開昭47−3835号公報 特開平11−323052号公報 特開2000−319470号公報
本発明の課題は、半導電性領域内で所望の体積抵抗率を安定して均一に精度よく発現し、高電圧の印加による体積抵抗率の変動が抑制され、高水準の引張弾性率を有し、溶融成形時の臭気の発生や発泡が抑制されたポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の課題は、このように優れた特性を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を溶融成形してなる半導電性樹脂成形物を提供することにある。
さらに、本発明の課題は、上記半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を溶融成形する半導電性樹脂成形物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂にテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩など特定の第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックとを配合してなる半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物が有する前記の如き諸問題について更なる検討を行った。
この半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、その成形物の引張弾性率を高めるために、第四級アンモニウム塩の配合割合を小さくすると、体積抵抗率の電圧耐久性が著しく低下する。第四級アンモニウム塩の配合割合を大きくすると、溶融成形時の熱分解による臭気の発生や発泡現象がひどくなる。
他方、導電性カーボンブラックの配合割合を大きくすると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなるため、溶融成形時の加工温度を高くする必要が生じ、第四級アンモニウム塩の熱分解による臭気の発生や発泡が更にひどくなるものと予想されていた。また、高電圧の印加による体積抵抗率の変動は、主として導電性カーボンブラックの分散状態の変化に起因するものと推定され、導電性カーボンブラックの配合割合を高くすると、電圧耐久性が大幅に低下するものと予想されていた。
ところが、驚くべきことに、第四級アンモニウム塩の配合割合を特定の低い範囲内に調整しつつ、導電性カーボンブラックの配合割合を高め、かつ、第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックの重量配合比を特定の範囲内とすることにより、電圧耐久性を高水準に保持しつつ、引張弾性率を充分に高くすることができ、しかも溶融成形時における第四級アンモニウム塩の熱分解に起因する臭気の発生や発泡を充分に抑制することができる半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の得られることを見出した。
溶融成形時における第四級アンモニウム塩の熱分解に起因する臭気の発生や発泡は、溶融成形時の加工温度を低くすることにより更に改善することができる。加工温度を低くするには、ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、特定のメルトフローレートを有するものを使用することが好ましい。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明によれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)、式1
Figure 2005350621
(式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基または水素原子である。)
で表されるテトラアルキルアンモニウム硫酸塩(B1)、及び式2
Figure 2005350621
(式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、R10は、アルキル基、フルオロアルキル基または水素原子である。)
で表されるテトラアルキルアンモニウム亜硫酸塩(B2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の第四級アンモニウム塩(B)、並びに導電性カーボンブラック(C)を含有する半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物において、
(I)ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対する第四級アンモニウム塩(B)の配合割合が1〜4重量部であり、
(II)ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対する導電性カーボンブラック(C)の配合割合が10〜20重量部であり、かつ、
(III)第四級アンモニウム塩(B)と導電性カーボンブラック(C)との重量配合比(B/C)が1/10〜1/2の範囲内にある
ことを特徴とする半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を成形してなる半導電性樹脂成形物が提供される。
さらに、本発明によれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対して、式1
Figure 2005350621
(式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基または水素原子である。)
で表されるテトラアルキルアンモニウム硫酸塩(B1)、及び式2
Figure 2005350621
(式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、R10は、アルキル基、フルオロアルキル基または水素原子である。)
で表されるテトラアルキルアンモニウム亜硫酸塩(B2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の第四級アンモニウム塩(B)1〜4重量部、並びに導電性カーボンブラック(C)10〜20重量部を含有し、第四級アンモニウム塩(B)と導電性カーボンブラック(C)との重量配合比(B/C)が1/10〜1/2の範囲内にある半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を、190〜235℃の範囲内の加工温度で溶融成形することを特徴とする半導電性樹脂成形物の製造方法が提供される。
本発明によれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に特定の第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックとを配合してなる半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物であって、電圧耐久性の要求水準を満足しつつ、引張弾性率を充分に高くすることができ、溶融成形時における第四級アンモニウム塩の熱分解に起因する臭気の発生や発泡を充分に抑制することができる半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、体積抵抗率の場所によるバラツキが小さく、体積抵抗率の電圧耐久性に優れ、高い引張弾性率を示し、第四級アンモニウム塩の分解に起因する臭気や発泡が抑制された半導電性樹脂成形物が提供される。
さらに、本発明によれば、半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を特定の加工温度で溶融成形してなる臭気が抑制された半導電性樹脂成形物の製造方法が提供される。
1.ポリフッ化ビニリデン系樹脂
本発明で使用するポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(すなわち、ポリフッ化ビニリデン;PVDF)、及びフッ化ビニリデンを主構成単位とするフッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体を挙げることができる。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が好適なものとして挙げられる。また、これらポリフッ化ビニリデン系樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で使用するフッ化ビニリデン共重合体としては、示差走査熱量計(DSC)による熱分析で120〜220℃の範囲に15J/g以上の結晶融解熱(ΔH)を1つ以上有する結晶性ポリマーが使用される。
フッ化ビニリデン共重合体は、共単量体(コモノマー)の共重合割合が大きくなるとエラストマーとなる。例えば、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体は、HFPの共重合割合が12モル%超過、通常20〜50モル%の範囲でエラストマーとなる。これに対して、本発明で使用するポリフッ化ビニリデン系樹脂は、結晶性のポリマーであり、例えば、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の場合、HFPの共重合割合が12モル%以下の樹脂が用いられる。
一般に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂をフィルムやシートなどの成形物に溶融成形する場合、230〜280℃程度の加工温度が採用されていた。ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、メルトフローレート(温度230℃及び荷重49.03Nの条件で測定)が2〜9g/10分の範囲内の高分子量ポリマーが用いられていた。ここで、メルトフローレートとは、押出形プラストメーターを用いた熱可塑性樹脂の流動性試験であり、規定の温度と圧力の条件下、ダイを通して押し出した材料の10分間当りの質量をいい、MFRと略記される。MFRの測定法は、JIS K7210に規定されている。
このようにポリフッ化ビニリデン系樹脂の加工温度は、一般に、かなり高いものである。さらに、導電性カーボンブラックなどの添加剤成分を配合したポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂単独の場合に比べて、溶融加工時の粘度が増大するため、加工温度を10〜20℃程度高めて溶融成形するのが通常であった。例えば、前記の特許文献6の実施例には、Tダイ温度(加工温度;溶融加工時の樹脂の最高温度)を240℃に設定して、フィルム(シート)を溶融押出成形したことが示されている。この加工温度240℃は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂単独での加工温度の下限値230℃より10℃だけ高い温度であり、樹脂や添加剤成分の分解を避けるために加工温度の上昇を抑制していることがわかる。
ところが、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を高温で溶融成形すると、第四級アンモニウム塩の一部が熱分解し、分解臭が作業環境を悪化させたり、フィルムに発泡が生じたりする。第四級アンモニウム塩の分解による臭気の発生や発泡を抑制するには、第四級アンモニウム塩の配合割合を抑制することが有効であるが、配合割合を小さくしすぎると、体積抵抗率の電圧耐久性が低下する。
本発明では、特許文献6で実際に採用している導電性カーボンブラックの配合割合より高い配合割合を採用しているため、加工温度を240℃から更に上昇させる必要があると考えられていた。
しかし、本発明者らの検討結果によれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対する導電性カーボンブラックの配合割合を10〜20重量部と大きくしても、第四級アンモニウム塩の配合割合を1〜4重量部とし、かつ、第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックとの重量配合比を1:10〜1:2とすることにより、240℃程度の加工温度で溶融成形することができ、第四級アンモニウム塩の熱分解による臭気の発生や発泡を抑制できることが見出された。
本発明者らがさらに検討した結果、ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、MFRが好ましくは10〜60g/10分、より好ましくは15〜50g/10分、特に好ましくは18〜30g/10分と大きいものを使用すると、導電性カーボンブラックの配合割合を10〜20重量部に高めても、樹脂組成物の加工温度を240℃未満、好ましくは190〜235℃、より好ましくは190〜230、特に好ましくは190〜220℃という低い温度にすることができ、それによって、第四級アンモニウム塩の熱分解による臭気の発生と発泡を効果的に抑制できることが見出された。
しかも、このようにMFRが大きく、分子量が比較的低いポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いても、機械物性に優れた成形物を得ることができる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMFRを大きくすると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の引張弾性率が高くなるため、例えば、該樹脂組成物を溶融成形してなるフィルム(シート)を、電子写真方式の画像形成装置に配置される転写ベルトとして好適に使用することができる。
このようにポリフッ化ビニリデン系樹脂のMFRを大きくすることが溶融加工性、作業環境の保護、成形物の機械物性などの観点から好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMFRが大きすぎると、成形物の機械物性が低下する。MFRが大きすぎるポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いると、例えば、厚み斑の少ないフィルムに加工することが困難になることに加え、引裂き強度などの機械物性が低下する。したがって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMFRは、前記範囲内とすることが好ましい。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の中でも、耐汚染性、耐オゾン性、耐溶剤性の観点から、フッ化ビニリデンの単独重合体(PVDF)が好ましい。柔軟性や引き裂き強度の観点からは、フッ化ビニリデンを主構成要素とするフッ化ビニリデン共重合体を単独で、あるいはPVDFとブレンドして使用することが好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の他材料に対する接着性を向上させるには、官能基を導入したフッ化ビニリデン共重合体を好適に使用することができる。本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物には、アクリル樹脂や他のフッ素樹脂などのその他の熱可塑性樹脂を、本発明の目的を妨げない範囲内でブレンドしてもよい。
2.第四級アンモニウム塩
本発明で使用するテトラアルキルアンモニウム硫酸塩(B1)は、式1
Figure 2005350621
(式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基、または水素原子である)
で表される第四級アンモニウム塩である。本発明で使用するテトラアルキルアンモニウム亜硫酸塩(B2)は、式2
Figure 2005350621
(式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、R10は、アルキル基、フルオロアルキル基、または水素原子である)
で表される第四級アンモニウム塩である。これらの第四級アンモニウム塩の中でも、安定性に優れることから、テトラアルキルアンモニウム硫酸塩(B1)が好ましい。
これらの第四級アンモニウム塩(B)において、R〜R及びR〜Rにおけるアルキル基の炭素原子数の合計は、4以上であり、好ましくは8〜30、より好ましくは12〜24、特に好ましくは15〜20である。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの短鎖アルキル基を挙げることができる。R及びR10がアルキル基である場合には、メチル基やエチル基などの短鎖アルキル基が代表的なものである。R及びR10がフルオロアルキル基である場合には、CF、Cなどの短鎖フルオロアルキル基が代表的なものである。
第四級アンモニウム塩(B)の具体例としては、例えば、(C、(C、(C、(C11等の第四級アンモニウムカチオンと、CFSO 、CHSO 、HSO 、CFSO 、CHSO 、HSO などの硫酸または亜硫酸を含むアニオンとからなる塩を挙げることができる。これらの第四級アンモニウム塩(B)は、2種類以上のアニオン及びカチオンを組み合わせた塩であってもよい。第四級アンモニウムカチオンが有する4つのアルキル基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
これらの中でも、テトラアルキルアンモニウム硫酸水素塩が好ましく、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩〔(CN(HSO)〕が特に好ましい。これらの第四級アンモニウム塩は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
3.導電性カーボンブラック(C)
本発明で使用する導電性カーボンブラック(C)としては、例えば、導電性オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどを挙げることができる。これらの導電性カーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で使用する導電性カーボンブラック(C)の性状の代表例は、以下のとおりである。
(1)DBP吸油量は、通常50ml/100g以上、好ましくは50〜400ml/100g、より好ましくは100〜400ml/g、
(2)平均粒径は、通常1〜100nm、好ましくは10〜100nm、
(3)灰分の含有量は、通常0. 2%以下、好ましくは0.1%以下、
(4)体積抵抗率は、通常10Ωcm以下、好ましくは10−1Ωcm以下、より好ましくは10−2Ωcm以下。
DBP吸油量とは、導電性カーボンブラック100g当たりに包含されるジブチルフタレートのmlを表す(ジブチルフタレートアプソープトメータにより測定)。平均粒径は、粒度(d50)を表す。
導電性カーボンブラックは、成形品の外観を損なわないように、樹脂に対する分散性の良いものが好ましい。このような観点から、本発明で使用する導電性カーボンブラックとしては、アセチレンブラックが特に好ましい。
導電性カーボンブラックとしては、市販品を使用することができる。導電性オイルファーネスブラックとしては、例えば、キャボット社製のバルカンXC−72、バルカンPなど;ライオン社製のケッチェンブラックECなどを挙げることができる。アセチレンブラックとしては、電気化学工業社製のデンカブラックなどを挙げることができる。
導電性カーボンブラックを2種類以上組み合わせて使用する場合には、高導電性の導電性カーボンブラック(好ましくは、アセチレンブラック)を主成分とし、比較的導電性が低い導電性カーボンブラックを少量成分として配合すると、樹脂組成物の電気物性が均一になり易く好ましい。
導電性カーボンブラックの導電性は、一般に、比表面積及びストラクチャーに比例し、揮発分に反比例する。DBP吸油量は、導電性カーボンブラックのストラクチャーの程度を示すものであり、一般に、DBP吸油量が大きいほど、導電性が高くなる。
導電性カーボンブラックを2種類以上組み合わせて使用する場合、例えば、DBP吸油量が100〜400ml/100gの導電性カーボンブラック(C1)55〜95重量%、好ましくは60〜90重量%と、DBP吸油量が50ml/100g以上、100ml/100g未満の導電性カーボンブラック(C2)5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%とを組み合わせて使用することが望ましい。
4.半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)と第四級アンモニウム塩(B)と導電性カーボンブラック(C)とを必須成分として含有する樹脂組成物である。
第四級アンモニウム塩の配合割合は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、1〜4重量部、好ましくは1.0〜3.5重量部、より好ましくは1.5〜3.0重量部、特に好ましくは2.0〜2.5重量部である。第四級アンモニウム塩の配合割合が小さすぎると、体積抵抗率の電圧耐久性が低下し、体積抵抗率の場所によるバラツキが大きくなる傾向を示す。第四級アンモニウム塩の配合割合が大きすぎると、ブリードアウトしたり、溶融成形時に分解したり、
導電性カーボンブラックの配合割合は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、10〜20重量部、好ましくは10重量部超過20重量部以下、より好ましくは11〜18重量部、特に好ましくは11〜16重量部である。導電性カーボンブラックの配合割合が小さすぎると、体積抵抗率を低くする効果が小さく、半導電性領域内での体積抵抗率の設計幅を広げることが困難になることに加えて、引張弾性率を充分に向上させることが困難になる。導電性カーボンブラックの配合割合が大きくなりすぎると、体積抵抗率が低くなりすぎたり、成形加工性や機械的強度が低下する。特に導電性カーボンブラックの配合割合が20重量部を超えて大きくなると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物が増粘するため、加工温度を高くする必要が生じ、その結果、第四級アンモニウム塩の熱分解による臭気の発生や発泡の問題が生じ易くなる。
第四級アンモニウム塩単独でポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の体積抵抗率を制御しようとすると、第四級アンモニウム塩の可塑化効果によって、樹脂組成物の引張弾性率が低下する。第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックとを併用すると、可塑化効果を抑制することができるものの、従来技術水準では充分ではなかった。
本発明では、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対する導電性カーボンブラックの配合割合を10〜20重量部という高水準に設定し、他方、第四級アンモニウム塩の配合割合を1〜4重量部と低く抑制し、さらに、第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックとの重量配合比(B/C)を1/10〜1/2の範囲内に調整することにより、第四級アンモニウム塩の可塑化効果を抑制して引張弾性率を高めると共に、第四級アンモニウム塩の熱分解による臭気や発泡の問題を解決することができる。 また、このような各成分の組成割合を選択することにより、半導電性領域内で所望の体積抵抗率を安定して均一に精度よく発現し、高電圧の印加による体積抵抗率の変動が抑制されたポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を得ることができる。
第四級アンモニウム塩(B)と導電性カーボンブラック(C)の重量配合比B/Cは、1/10〜1/2、好ましくは1/8〜1/3、より好ましくは1/7〜1/4の範囲である。第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックを特定の比率で併用することにより、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の体積抵抗率を、通常1.0×10〜1.0×1013Ωcm、好ましくは1.0×10〜1.0×1012Ωcm、特に好ましくは1.0×10〜1.0×1011Ωcmの範囲内に制御することができる。
(2)導電性カーボンブラックを単独で使用した場合に比べて、場所による体積抵抗率のバラツキがなく、しかも半導電性領域内の所望の体積抵抗率を安定して精度良く発現させることができる。
(3)第四級アンモニウム塩の配合割合が小さくても、良好な半導電性を示すため、凝集物やフィッシュアイの生成がなく、ブリードアウトもない。
(4)ポリフッ化ビニリデン系樹脂が本来有している耐熱性、耐薬品性、非粘着性、耐汚染性、機械的強度などの諸特性を高度に保持させることができ、成形加工性も良好である。
(5)比較的高電圧を印加しても、樹脂組成物の体積抵抗率が低下し難い。
この重量配合比(B/C)が1/10よりも小さいと、樹脂組成物に高電圧が印加されることによって体積抵抗率が低下し易くなる。重量配合比(B/C)が1/2よりも大きいと、導電性カーボンブラックの体積抵抗率への寄与が少なくなり、第四級アンモニウム塩の配合比を増加させなければならなくなる。
第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックを前記各配合割合でかつ特定の重量配合比で配合した場合に、高電圧を印加しても、樹脂組成物の体積抵抗率が低下し難くなることの理由は、現段階では必ずしも明らかでない。高電圧の印加による体積抵抗率の低下が、導電性カーボンブラック粒子間のミクロ的な絶縁破壊によるものであると仮定すると、電流が樹脂組成物中をイオン導電と電子伝導とで並列的に流れるために、導電性カーボンブラック粒子間にかかる電圧が低減されることに因ると考えられる。よって、第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックの重量配合比は、イオン導電と電子伝導が同程度に樹脂組成物の抵抗に寄与するようにさせることが好ましい。
5.その他の添加物
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物には、所望により、その他の添加物を含有させることができる。その他の添加物としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、カオリン、フェライト、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ニッケル、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス粉、石英粉末、黒鉛、無機顔料、有機金属塩、酸化金属などの粒状または粉末状フィラー;炭素繊維、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリ繊維などの繊維状フィラー;などが挙げられる。これらのフィラーは、本発明の目的を阻害しない範囲で使用目的に応じて適宜配合することができる。
また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物には、例えば、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、有機顔料、無機顔料、紫外線吸収剤、界面活性剤、無機酸、有機酸、pH調整剤、カップリング剤、あるいはステアリン酸リチウムやステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸の金属塩を、本発明の効果を阻害しない範囲内で適宜配合することができる。
6.半導電性成形物
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を成形して得られるフィルム、シート、チューブ、ベルトなどの成形物を、電子写真方式の画像形成装置におけるロール部材(例えば、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、搬送ロール)やベルト部材(例えば、帯電ベルト、現像ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、除電ベルト)、トナー層厚規制部材などの電荷制御部材として使用する場合、その厚みは、通常20μm〜1mm、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは30μm〜200μm、特に好ましくは40μm〜100μmである。フィルムの場合、厚みが200μm以下であることが好ましく、20〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
成形物の体積抵抗率は、通常1.0×10〜1.0×1013Ωcm、好ましくは1.0×10〜1.0×1012Ωcm、特に好ましくは1.0×10〜1.0×1011Ωcmの範囲内である。多くの場合、1.0×10〜1.0×1010Ωcmの範囲内とすることにより、満足すべき物性を備えた成形物を得ることができる。
高電圧印加による体積抵抗率の低下は、少ないほど好ましい。高電圧印加による体積抵抗率の変動の評価は、実施例に記載の測定方法により体積抵抗率(初期体積抵抗率)を測定した後、同一部分に500Vの電圧を10秒間印加して、その直後に同一部分の体積抵抗率を測定し、500Vの電圧の印加前と後の体積抵抗率を比較することで評価した。具体的には、下記式(I)
X=(初期体積抵抗率)/(500Vの電圧印加後の体積抵抗率) (I)
により高電圧印加による体積抵抗率の変動比率Xを求め、21点での測定値に基づくXの中央値を電圧耐久性とする。本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の電圧耐久性の値は、通常0.1〜50、好ましくは0.5〜10、特に好ましくは1〜5の範囲内である。
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を成形して得られるフィルム、シート、チューブ、ベルトなどの成形物を、電子写真方式の画像形成装置におけるロール部材やベルト部材などの電荷制御部材として使用する場合、引張弾性率は、通常1.0GPa以上、好ましくは1.3GPa以上、より好ましくは1.6GPa以上である。
7.樹脂組成物の調製法及び成形物の製造方法
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の調製法には、特に制限がなく、好適な方法としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の粉末またはペレットと、第四級アンモニウム塩及び導電性カーボンブラックとをミキサーなどの混合機で混合する方法;各成分を混合機で混合した後、混合物を溶融押出法によってペレット化する方法;各成分を、水または水と水溶性溶剤との混合溶剤に溶解ないしは分散させ、ミキサーなどの混合機で混合した後、乾燥し、得られた乾燥物を溶融押出してペレット化する方法;ポリフッ化ビニリデン系樹脂と第四級アンモニウム塩とを混合しペレット化したものと、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と導電性カーボンブラックとを混合しペレット化したものとを、ミキサーなどの混合機で混合する方法;などが挙げられる。
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、プレス成形法、溶融押出法、射出成形法、溶液流延法、塗布法などの各種成形法により、各種成形物や被覆成形物に成形加工することができる。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂に第四級アンモニウム塩及びカーボンブラックを高濃度で含有させたマスターバッチを作成しておき、成形時に、各成分が必要な濃度となるように該樹脂で希釈してから成形加工することができる。
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物をシームレスベルトに押出成形する場合は、連続溶融押出成形法が好ましく用いられる。シームレスベルトの望ましい連続溶融押出成形法としては、単軸スクリュー押出機とスパイラル環状ダイスを用いて、ダイスのリップから直下に押し出し、内部冷却マンドレル方式によって内径を制御しながら引き取る方法等が挙げられる。
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を用いてフィルムまたはシートを製造する方法としては、単軸または2軸スクリュー押出機とTダイスとを用い、溶融状態の樹脂組成物をリップから直下に押し出し、冷却ドラム上にエアーナイフなどにより密着させつつ冷却固化する連続押出成形法を挙げることができる。本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を溶融状態から固化させる際には、冷却温度を通常−30〜170℃、好ましくは90〜140℃の範囲内に制御することが望ましい。
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、押出成形や射出成形によりロールに成形することができる。本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物からなるチューブ、フィルムまたはシートを芯金上に被覆することにより、被覆ロールを得ることができる。溶液流延法や塗布法により、芯金上に樹脂組成物からなる被覆層を形成してもよい。このような被覆層は、芯金上に直接設けることができるが、必要に応じて、他の樹脂層及び/またはゴム層を介して設けてもよい。
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を用いて、押出成形などの溶融成形加工法により成形物を製造する場合、該樹脂組成物の加工温度を、好ましくは190〜235℃、より好ましくは190〜230、特に好ましくは190〜220℃という低い温度にすることが、第四級アンモニウム塩の熱分解による臭気の発生と発泡を効果的に抑制する上で望ましい。加工温度は、溶融成形時の樹脂温度(最高樹脂温度)であり、押出成形の場合、一般に、Tダイスでの樹脂温度である。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、温度230℃及び荷重49.03Nの条件で測定したMFRが好ましくは10〜60g/10分、より好ましくは15〜50g/10分、特に好ましくは18〜30g/10分と大きいものを使用すると、溶融成形時の加工温度を前記範囲内に低くすることが容易である。
8.用途
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、電子写真方式の画像形成装置における帯電ロール、現像ロール、転写ロール、搬送ロールなどのロール部材;帯電ベルト、現像ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、除電ベルトなどのベルト部材;トナー層厚規制部材などの電荷制御部材として好適である。
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、電子部品包装用の静電気防止フィルム、静電気防止容器、各種OA機器に使用される塵埃吸着防止部材、除電部材、導電部材などにも好適に用いられる。
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の成形方法は、特に制限されるものではなく、射出成形や溶融押出などの公知の成形方法により、例えば、フィルム、シート、ファイバーに成形加工することが可能である。フィルム、シート、ファイバーなどの成形物は、一次加工後、さらに延伸や熱固定することも可能である。本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、それ単独で使用してもよく、また、必要に応じて他の樹脂層などと複合化させて、積層フィルム、積層シート、積層ベルト、複合糸などにして使用することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。物性の測定法は、下記のとおりである。測定は、成形後7日以上経過したサンプルを、温度23℃、相対湿度(RH)50%に調整された室内で行った。
(1)厚み測定
成形物の厚みは、ダイヤルゲージ厚み計(小野測器社製、商品名:DG−911)を用いて測定した。
(2)体積抵抗率
体積抵抗率ρvは、リング状プローブ(三菱化学社製、商品名「URSプローブ」、内側電極の直径5.9mm、外側電極の内径11.0mm、外側電極の外径17.8mm)と測定ステージ(三菱化学社製、商品名「レジテーブルFL」)との間に試料を挟み、約3kg重の圧力で押さえつけつつ、プローブの内側電極と測定ステージとの間に100Vの電圧を10秒間印加して、抵抗率測定装置(三菱化学社製、商品名「ハイレスタUP」)で求めた。
プローブの内側の電極と測定ステージの表面に、各々の電極サイズと同じサイズの導電性ゴム(コクゴ社製、商品名「REP−2」、厚み1mm、体積抵抗率87Ωcm)を導電性粘着シート(応研商事社製、商品名「T−9181」、厚み0.13mm)で貼り付けてある。リング電極法による体積抵抗率の測定法の詳細は、JIS−K6911に規定されている。
(3)最大値、最小値、中央値
上記した厚みと体積抵抗率の測定では、これらの値を測定すべき試料の表面積1m当たり任意に選んだ21点を測定し、その最大値、最小値、中央値(メジアン)を求めた。
(4)電圧耐久性
高電圧印加による体積抵抗率の変動の評価は、前記(2)の測定方法で初期体積抵抗率を測定した直後に、同一部分に500Vの電圧を10秒間印加して、その直後に、同一部分の体積抵抗率を前記(2)の方法で測定し、500Vの印加前と後の体積抵抗率を比較することで評価した。500Vの電圧の印加方法は、印加電圧を100Vから500Vに変更した他は、前記(2)の測定方法と同様である。下記式
X=(初期体積抵抗率)/(500Vの電圧印加後の体積抵抗率)
により高電圧印加による体積抵抗率の変動比率Xを求め、前記(3)の方法で求めた中央値を電圧耐久性とした。
(5)引張弾性率
JIS K7113に準拠し、幅10mm、長さ100mmの短冊型試験片を用い、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS−1KNJ型)により、引張速度50mm/分、つかみ具間距離50mmの条件で測定した。試験片は、シートの長手方向に対して並行方向と直角方向で各5枚切り出し、合計10枚の試験結果の算術平均値を引張弾性率とした。
(6)臭気
ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物をフィルムに加工する際に発生する臭気について、下記の4段階で評価した。
A: 臭気が殆ど気にならない、
B: 臭気が気になる、
C: 臭気がかなり気になる、
D: 臭気が酷い。
(7)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重49.03Nの条件で、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMFRを測定した。
[実施例1]
ポリフッ化ビニリデン〔フッ化ビニリデンの単独重合体;呉羽化学工業(株)製、商品名「KF#850」、MFR=23g/10分〕100重量部に対し、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(「TBAHS」と略記)2.3重量部、アセチレンブラック〔電気化学工業(株)製、商品名「デンカブラック」、DBP吸油量=190ml/100g、平均粒径(d50)=42nm、灰分=0. 06%;「AB」と略記〕8.5重量部、カーボンブラック〔旭カーボン(株)製、商品名「旭カーボンブラック#50」、DBP吸油量=63ml/100g、平均粒径(d50)=80nm、灰分=0. 2%;「AC」と略記〕2.8重量部、及びステアリン酸リチウム0.1重量部を撹拌混合した。次いで、混合物を2軸押出機に供給し混練及び造粒して、直径約5mmのペレットを作製した。
ペレットを単軸スクリュー押出機(プラ技研社製)を用いて、リップクリアランス0. 7mmのT型ダイス〔加工温度(ダイス温度)200℃〕に供給し、ダイスから溶融樹脂を押し出し、130℃の冷却ロールによって冷却して、厚み50〜55μmのフィルムを成形した。物性の測定結果を表1に示す。
[実施例2〜4、及び比較例1〜6]
各成分の種類と配合割合、加工温度を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、フィルムを成形した。配合処方及び物性の測定結果を表1に示す。
Figure 2005350621
脚注:
(1)KF#850: ポリフッ化ビニリデン〔呉羽化学工業(株)製、MFR=23g/10分〕
(2)KF#1000: ポリフッ化ビニリデン〔呉羽化学工業(株)製、MFR=8g/10分〕
(3)TBAHS:(CN(HSO)〔広栄化学工業(株)製〕
(4)AB:アセチレンブラック〔電気化学工業(株)製、商品名「デンカブラック」、DBP吸油量=190ml/100g、平均粒径(d50)=42nm、灰分=0. 06%、体積抵抗率10−1Ωcm以下〕
(5)AC:カーボンブラック〔旭カーボン(株)製、商品名「旭カーボンブラック#50」、DBP吸油量=63ml/100g、平均粒径(d50)=80nm、灰分=0. 2%、体積抵抗率10−1Ωcm以下〕
表1の結果から明らかなように、本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物(実施例1〜4)は、体積抵抗率が適度に低く、場所による体積抵抗率のバラツキも少ないものである。また、本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物(実施例1〜4)は、電圧耐久性に優れている。
さらに、本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物(実施例1〜4)は、第四級アンモニウム塩(イオン電解質)の配合割合を低減することができるため、可塑化による成形物の軟化も少なく、高い配合割合の導電性カーボンブラックによる効果も加わり、1.6GPa以上の引張弾性率を示す。また、本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物(実施例1〜4)は、成形加工性も良好で、添加剤のブリードアウトも観察されなかった。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、MFRが10g/10分以上のポリフッ化ビニリデン〔呉羽化学工業(株)製、商品名「KF#850」、MFR=23g/10分〕を用いて、加工温度200℃で成形した場合(実施例1〜3)は、MFRが小さいポリフッ化ビニリデン〔呉羽化学工業(株)製、商品名「KF#1000」、MFR=8g/10分〕を用いて、加工温度240℃で成形した場合(実施例4)に比べて、臭気を効果的に抑制することができ、引張弾性率の改善効果にも優れている。
これに対し、第四級アンモニウム塩(TBAHS)を単独で配合した場合(比較例1)には、電圧耐久性に優れるものの、引張弾性率が不充分である。導電性カーボンブラックを単独で配合した場合(比較例2)には、体積抵抗率にばらつきが見られることに加えて、電圧耐久性が著しく悪くなることがわかる。
第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックを併用しても、第四級アンモニウム塩の配合割合を小さくした場合(比較例3)には、臭気の問題は改善されるものの、電圧耐久性が著しく悪化する。
第四級アンモニウム塩の配合割合を大きくした場合(比較例4)には、加工温度を200℃に低下させても、可塑化効果によって樹脂組成物の粘度が低くなりすぎて成形不良となり、しかも溶融成形時の臭気の発生が酷く、作業を中断せざるを得なかった。
導電性カーボンブラックの配合割合を大きくした場合(比較例5)には、加工温度を240℃に上げても、組成物の粘度が高くなりすぎて成形不良となり、しかも溶融成形時の臭気の発生が酷く、作業を中断せざるを得なかった。
第四級アンモニウム塩と導電性カーボンブラックを併用しても、従来技術水準のように、導電性カーボンブラックの配合割合を小さくした場合(比較例5)には、引張弾性率が充分ではなく、臭気も感じられる程度になる。
本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、体積抵抗率のバラツキが小さく、引張弾性率の低下が少ないので、これらの特徴を活かした用途、例えば、電子写真方式の画像形成装置におけるロール部材(例えば、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、搬送ロール)やベルト部材(例えば、帯電ベルト、現像ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、除電ベルト)などの電荷制御部材の少なくとも表面層を形成する樹脂材料として利用することができる。
また、本発明の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、制電性、帯電防止性、塵埃吸着防止性などを活かした用途、例えば、電子部品包装材料(フィルム、シート、袋、容器など)、壁紙、OA機器外装材、帯電防止の間仕切りなどの電荷制御部材として利用することができる。

Claims (15)

  1. ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)、式1
    Figure 2005350621
    (式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基または水素原子である。)
    で表されるテトラアルキルアンモニウム硫酸塩(B1)、及び式2
    Figure 2005350621
    (式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、R10は、アルキル基、フルオロアルキル基または水素原子である。)
    で表されるテトラアルキルアンモニウム亜硫酸塩(B2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の第四級アンモニウム塩(B)、並びに導電性カーボンブラック(C)を含有する半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物において、
    (I)ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対する第四級アンモニウム塩(B)の配合割合が1〜4重量部であり、
    (II)ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対する導電性カーボンブラック(C)の配合割合が10〜20重量部であり、かつ、
    (III)第四級アンモニウム塩(B)と導電性カーボンブラック(C)との重量配合比(B/C)が1/10〜1/2の範囲内にある
    ことを特徴とする半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物。
  2. ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)が、温度230℃及び荷重49.03Nの条件で測定したメルトフローレートが10〜60g/10分の範囲内のものである請求項1記載の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物。
  3. ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)が、フッ化ビニリデンの単独重合体である請求項1または2記載の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物。
  4. 第四級アンモニウム塩(B)が、式(1)においてRが水素原子であるテトラアルキルアンモニウム硫酸水素塩である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物。
  5. テトラアルキルアンモニウム硫酸水素塩が、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩〔(CN(HSO)〕である請求項4記載の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物。
  6. 導電性カーボンブラック(C)が、アセチレンブラックである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物。
  7. 1.0×10〜1.0×1013Ωcmの範囲内の体積抵抗率を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を成形してなる半導電性樹脂成形物。
  9. フィルム、シート、チューブ、シームレスベルト、ファイバー、ロール、容器または射出成形品である請求項8記載の半導電性樹脂成形物。
  10. 少なくとも表面層が半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物から形成された電荷制御部材である請求項8記載の半導電性樹脂成形物。
  11. 電荷制御部材が、電子写真方式の画像形成装置において用いられる帯電部材または除電部材である請求項10記載の半導電性樹脂成形物。
  12. 電荷制御部材が、厚み200μm以下のフィルムである請求項10または11記載の半導電性樹脂成形物。
  13. フィルムが、1.0GPa以上の引張弾性率を有するものである請求項12記載の半導電性樹脂成形物。
  14. ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対して、式1
    Figure 2005350621
    (式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基または水素原子である。)
    で表されるテトラアルキルアンモニウム硫酸塩(B1)、及び式2
    Figure 2005350621
    (式中、R〜Rは、互いに同一または相異なるアルキル基であり、R10は、アルキル基、フルオロアルキル基または水素原子である。)
    で表されるテトラアルキルアンモニウム亜硫酸塩(B2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の第四級アンモニウム塩(B)1〜4重量部、並びに導電性カーボンブラック(C)10〜20重量部を含有し、第四級アンモニウム塩(B)と導電性カーボンブラック(C)との重量配合比(B/C)が1/10〜1/2の範囲内にある半導電性ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を、190〜235℃の範囲内の加工温度で溶融成形することを特徴とする半導電性樹脂成形物の製造方法。
  15. ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)が、温度230℃及び荷重49.03Nの条件で測定したメルトフローレートが10〜60g/10分の範囲内のものである請求項14記載の製造方法。
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