JP4076654B2 - ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、導電性ないし半導電性が要求される分野に好適に使用可能なポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物に関する。本発明において、半導電性樹脂組成物とは、103〜1013Ωcm程度の体積抵抗率を有する樹脂組成物をいう。
【0002】
本発明の樹脂組成物は、その導電性ないし半導電性を活かした用途に特に制限なく使用可能である。本発明の樹脂組成物は、例えば、電子写真方式の画像形成装置における帯電ロール、転写ロール、現像ロール、帯電ベルト、除電ベルトなど帯電部材の少なくとも表面層を形成する材料として好適に使用可能である。
【0003】
また、本発明の樹脂組成物は、その制電性、帯電防止性、塵埃吸着防止性などを活かした用途、例えば、電子部品包装用フィルム、壁紙、OA機器外装材、帯電防止の間仕切りとしても好適に使用可能である。更に、本発明の樹脂組成物は他の用途、例えば、二次電池における固体電解質等にも利用可能である。
【0004】
【従来の技術】
近年、電気・電子機器の分野において、体積抵抗率を精密に制御された半導電性樹脂材料への要求が益々高まりつつある。例えば、電子写真方式の複写機やファクシミリ、レーザービームプリンター等の画像形成装置(電子写真複写機、静電記録装置等)においては、帯電、露光、現像、転写、定着、除電の各工程を経て、画像が形成されている。これらの各工程では、紙の吸着・剥離、トナーの吸着・除去の観点から、体積抵抗率を精密に制御された樹脂材料が必要とされている。
【0005】
このような画像形成装置に装着されている帯電ロールまたはベルト、転写ロールまたはベルト、現像ロール、トナー層厚規制ブレード等の(帯電に関連する、あるいはトナーに接触する)部材には、通常、その表面層が半導電性であること、具体的には、103〜1013Ωcm程度の任意の体積抵抗率を有することが要求される場合が多い。
【0006】
例えば、上記の帯電ロールまたはベルトを用いた帯電方式では、電圧を印加した帯電ロールまたはベルトを感光体ドラム(静電潜像保持体)に接触させて、感光体ドラム表面に直接電荷を与え、該ドラムを一様にかつ均一に帯電させている。
【0007】
また、現像ロールを用いた現像方式では、現像ロールとトナー供給ロールとの間の摩擦力により、トナーを現像ロールの表面に帯電状態で吸着させ、これをトナー層厚規制ブレードで一様にならした後、感光体ドラム表面の静電潜像に対して電気吸引力により飛翔させて現像している。更には、転写ロールまたはベルトを用いる転写方式では、転写ロールまたはベルトにトナーと逆極性の電圧を印加して電界を発生させ、該電界によって生ずる電子吸引力によって感光体上のトナーを転写材(紙等)の上に転写させている。
【0008】
したがって、通常、画像形成装置における帯電ロールやベルト等の帯電部材には、適度の範囲の低く、且つ均一な体積抵抗率を有することが要求される。場所(局所)的に体積抵抗率が異なる帯電部材を用いた場合には、高品質のトナー画像を得ることができない。
【0009】
例えば、帯電ロールまたはベルトの体積抵抗率が均一でなければ、感光体表面を一様かつ均一に帯電させることができず、画像の品質が低下する。また、これらの帯電部材には、湿度の変化による体積抵抗率や表面抵抗率の変化が小さいことが望ましいとされる。通常の使用環境下での湿度変化によって、帯電部材の体積抵抗率や表面抵抗率が大幅に変化した場合には、安定して高品質の画像を得ることが困難となるからである。
【0010】
上記した画像形成装置の分野以外でも、所定の体積抵抗率を有する樹脂材料のニーズは高い。例えば、樹脂材料から形成されているOA機器の外装材や部品等は、塵埃やトナー等を吸引すると、外観を損ねたり、故障の原因となったりし易い。また、電子工業における半導体デバイスやLCD(液晶デバイス)等の製造工程で使用される樹脂性の装置や部品、ICやLSI等の電子部品を包装するためのフィルムや容器は、静電気により塵埃を吸着すると、該フィルムや容器によって包装される電子部品の品質を損なう虞が大きい。そのため、これらの用途に使用される樹脂材料に対しては、通常、103〜1013Ωcm程度の体積抵抗率を付与して、帯電防止性を持たせることが求められている。
【0011】
上記したような所定の体積抵抗率を付与すべき樹脂として、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が挙げられる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、通常、耐溶剤性、耐汚染性、加工性に優れているという特徴を有するため、このような目的に好適に使用される。
【0012】
従来より、ポリフッ化ビニリデン系樹脂やその成形品の電気抵抗(体積抵抗率)を下げる方法としては、(1)樹脂成形品の表面に有機系帯電防止剤を塗布する方法、(2)樹脂に有機系帯電防止剤を練り込む方法、(3)樹脂にカーボンブラックや金属粉等の導電性フィラーを練り込む方法、及び(4)樹脂にイオン電解質を練り込む方法、が知られている。
【0013】
しかしながら、(1)の電防止剤を塗布する方法は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が非粘着性に優れているため、該樹脂からなる成形品表面を拭いたり洗浄したりすることによって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の表面に塗布された帯電防止剤が容易に脱落してしまう傾向がある。
【0014】
また、前記(2)の帯電防止剤を練り込む方法では、有機系帯電防止剤として、界面活性剤や親水性樹脂が用いられることが多い。このうち、界面活性剤を用いる方法では、成形品表面から界面活性剤をブリードアウトさせて(滲み出させて)帯電防止性を付与する機構を採用しているため、温度や湿度等の環境の変化によって該ブリードアウトの程度が変化して、体積抵抗率や帯電防止性が大きく変化することが避け難く、また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の長所である耐汚染性が損なわれる虞が大きくなる。他方、帯電防止剤として親水性樹脂を用いる方法では、所望の帯電防止効果を得るには、親水性樹脂を多量に配合する必要があるため、基材となるポリフッ化ビニリデン系樹脂本来の耐汚染性、耐候性、耐オゾン性、耐溶剤性等の物性が低下し、しかも、体積抵抗率や帯電防止性の湿度依存性が大きいという問題がある。
【0015】
これらの性質のうち、耐汚染性や耐溶剤性は、電子写真方式の画像形成装置に配置される部材において、トナーが付着した際に、それをクリーニングする場合に求められる性質でもある。コロナ放電装置等を装着した画像形成装置は、オゾンを発生するので、耐オゾン性も部材に求められる性質である。耐候性は、屋外で使用される看板や窓ガラスの表面保護材として使用される場合に求められる性質である。
【0016】
前記(3)の導電性フィラーを練り込む方法は、多くの分野で採用されている。例えば、帯電ロールは、樹脂に導電性フィラーを練り込んだ半導電性樹脂組成物を芯金上に被覆して成形されている。しかしながら、樹脂中に導電性フィラーを分散させた半導電性樹脂組成物は、一般に、体積抵抗率の分布が極めて不均一で、そのばらつきは、多くの場合、数桁(例えば、102倍以上)の差に相当するものであるため、実用性能上問題があった。特に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は表面エネルギーが小さいため、該樹脂中に導電性フィラーを分散させた場合、高電圧の印加等によって導電性フィラーが樹脂中を移動し、その結果、該樹脂の体積抵抗率が変動してしまうという問題があった。
【0017】
しかも、導電性フィラーを分散させたポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は一般に耐電圧が充分ではなく、高電圧を繰り返し印加する用途には必ずしも適していない。また、フィラーを用いて必要とされる半導電性の水準を達成するには、該フィラーの樹脂への充填量を多くする必要があり、そのため、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の成形加工性や機械的強度が低下したり、あるいは硬度が高くなり過ぎたりするという問題が生じる。さらに、導電性フィラーを分散させたポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、通常、導電性カーボンブラック等の導電性フィラー(それ自体が色を有する)によって着色しているため、例えば、OA機器の外装材や壁紙等の用途に適用するには不適当である。
【0018】
上記(4)の樹脂にイオン電解質を練り込む方法では、イオン電解質の添加に関しては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)がイオンの良導体であることが古くから知られていること(例えば特開昭51−32330、特開昭51−110658号公報、特開昭51−111337号公報、特開昭54−127872号公報)からみて、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に半導電性を付与するのに有効であることが期待される。
【0019】
ところが、電解質として代表的な塩化リチウムや塩化カリウム等の無機金属塩をポリフッ化ビニリデン系樹脂に練り込んだ樹脂組成物は、これらの無機金属塩が当該樹脂に僅かしか溶解しないため、体積抵抗率を1×1013Ωcm以下にするのは困難であった。さらに、過剰に添加した無機金属塩の凝集物が、いわゆるフィッシュアイ(透明または半透明樹脂中で、小さい球形の塊に見える現象)の原因になる等の問題があった。この凝集物をポリフッ化ビニリデン系樹脂に溶解させるために、混練温度を上げたり、混練時間を長くしたりすると、樹脂及び/または電解質が分解して、実質的な機械物性や外観を損なう虞が増大する。更に、Li塩のような潮解性のある金属塩を用いた場合、該金属塩を多量に充填すると、樹脂組成物が吸湿性を持つようになるため、湿度の変化によって体積抵抗率が大きく変化したり、ブリードアウトした金属塩の潮解物により成形品の表面がべたつくという問題が生じる。
【0020】
電解質の樹脂に対する溶解性を向上させるための方法として、特開昭60―177064号公報及び特開昭61―72061号公報には、プロピレンカーボネイト等の極性溶剤を樹脂に含ませる方法が提案されている。しかしながら、この方法では、電解質と極性溶剤が容易にブリードアウトするために、樹脂の電気物性が不安定になったり、樹脂表面がべたつく等の問題があった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消した、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、103〜1013Ωcmの範囲で所定の体積抵抗率を安定して均一に精度よく再現し、且つ環境湿度変化による体積抵抗率の変化が小さいポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を提供することにある。
【0023】
本発明の更に他の目的は、このような半導電性に優れた樹脂組成物を用いて、ベルト、チューブ、シート、ファイバー、射出成形物等の各種の半導電性成形物を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に対して、導電性付与成分と組み合わて特定のアルキル四級アンモニウム塩を添加することが、上記の目的達成に極めて効果的なことを見いだした。
【0025】
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部と、パーフルオロアルキル基を有する酸のアルキル四級アンモニウム塩(B)0.1〜1000重量部と、導電性付与成分(C)0.01〜10重量部とを少なくとも含むものである。
【0026】
本発明者の知見によれば、上記アルキル四級アンモニウム塩(B)が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)と導電性付与成分(C)との組み合わせに対して、可塑剤的ないし溶媒的に作用して、これら3成分の適度な一体性を実現するため、ブリードアウトを抑制しつつ、好適な導電性が得られるものと推定される。
本発明者は上記知見に基づき更に研究を進めた結果、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に、パーフルオロアルキル基を有する酸のアルキル四級アンモニウム塩0.1〜30重量部および導電性付与成分0.1〜10重量部を添加することにより、上記の特徴に加えて、凝集物やフィッシュアイの生成がなく、加工性が良好であり、一般の溶融加工法によっても種々の成形品に成形することが可能な樹脂組成が得られることをも見いだした。
【0027】
本発明によれば、例えば、下記のような好ましい実施の態様が提供される。
(1)ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対して、パーフルオロアルキル基を有する酸のアルキル四級アンモニウム塩(B)0.1〜30重量部および導電性付与成分(C)0.1〜10重量部を含有する前記の樹脂組成物。
(2)上記アルキル四級アンモニウム塩(B)がパーフルオロアルキルスルホン酸のアルキル四級アンモニウム塩である前記の樹脂組成物。
(3)上記アルキル四級アンモニウム塩の分子量が500以上800未満である前記の樹脂組成物。
(4)上記アルキル四級アンモニウム塩がパーフルオロアルキルスルホン酸テトラブチルアンモニウムである前記の樹脂組成物。
(5)上記導電性付与成分(C)がアルキル四級アンモニウムの硫酸塩または亜硫酸塩である前記の樹脂組成物。
(6)上記体積抵抗率が103Ωcm以上1013Ωcm以下である前記の樹脂組成物。
(7)前記した各樹脂組成物からなるシート、ベルト、チューブ、ファイバー、ないし射出成形物。
(8)電子写真装置または静電記録装置用の帯電部材の形態を有する前記の樹脂組成物。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準とする。
【0029】
(ポリフッ化ビニリデン系樹脂)
本発明において使用可能なポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)は、フッ化ビニリデンのホモポリマー(すなわち、ポリフッ化ビニリデン;PVDF)、およびフッ化ビニリデンを主構成単位とするフッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体の双方を包含する。加工性(加工し易さ)の点からは、該ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(Mw)は、2×105〜6×105(更には3×105〜5×105)程度であることが好ましい。
【0030】
後者の共重合体においては、他の「共重合可能なモノマー」としては、耐溶剤性、耐汚染性の点からは、含フッ素モノマーが好適に使用可能である。上記の共重合体においては、該共重合体を構成するポリフッ化ビニリデン・モノマーのモル数を100とした場合に、他の「共重合可能なモノマー」のモル数は1〜50モル%(更には5〜15モル%)程度であることが好ましい。
【0031】
本発明において好適に使用可能なフッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等挙げられる。本発明においては、上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、それぞれ単独で、あるいは必要に応じて2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の中でも、耐汚染性、耐オゾン性、耐溶剤性の観点からは、フッ化ビニリデンのホモポリマーであるPVDFが好ましい。柔軟性や引き裂き強度の観点からは、フッ化ビニリデンを主構成要素とするフッ化ビニリデン共重合体を単独で、あるいはPVDFとブレンドして使用することが好ましい。
【0033】
接着性を向上させる等の目的で、官能基を導入したフッ化ビニリデン共重合体を必要に応じて使用してもよい。このような官能基としては、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、スルホン酸基、ニトロ基、アセチル基、ヒドロキシ基、アミノ基、等が挙げられる。
【0034】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂に対しては、アクリル樹脂や他のフッ素樹脂等のその他の熱可塑性樹脂を、本発明の目的を妨げない範囲内でブレンドして用いてもよい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂をブレンドした結果得られるブレンド樹脂(すなわち、ポリフッ化ビニリデン系樹脂+他の樹脂)全体の体積を100部とした場合、該「他の樹脂」の添加量は1〜50重量部(更には1〜30体積部)であることが好ましい。
【0035】
(パーフルオロアルキル基を有する酸のアルキル四級アンモニウム塩)
本発明において使用されるパーフルオロアルキル基を有する酸のアルキル四級アンモニウム塩(B)は、下記式(1):
【化1】
(上記式中、Aは酸を表し、R1はパーフルオロアルキルを表し、R2〜R5は、互いに同一または相異なるアルキル基、または含フッ素アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
で表される化合物である。
【0036】
これらのアルキル四級アンモニウム塩化合物の具体例として、例えば、(C2H5)4N+ 、(C3H7)4N+、(C4H9)4N+、(C5H11)4N+、(C2F5)4N+ 、(C3F7)4N+、(C4F9)4N+、(C5F11)4N+、等の四級アンモニウムカチオンと、C8F17SO4 -、C6F13SO4 -、C8F17SO3 -、C6F13SO3、C8F17COO-、C6F13COO-、等のパーフルオロアルキル基を含むアニオンからなる塩を挙げることができる。
【0037】
上記の四級アンモニウムカチオンの4つのアルキル基の炭素数の合計は通常8〜30(更には12〜24、特に15〜20)が好ましい。他方、パーフルオロアルキル基を含むアニオンの炭素数は、通常5〜20(更には5〜15、特に5〜10)が好ましい。アニオン/カチオンともに、炭素数が少なすぎると、アルキル四級アンモニウム塩(B)がブリードアウトを生じ易くなり、他方、炭素数が多すぎると導電性付与効果が小さくなる傾向が強まる。これらのバランスをとる点からは、パーフルオロアルキル基を有する酸のアルキル四級アンモニウム塩(B)の分子量は、500〜800程度(更には600〜700程度)が好ましい。
【0038】
更に、これらの化合物は、2種類以上のアニオンまたは/及びカチオンを組み合わせた塩であってもよい。また、四級アンモニウムが有する4つのアルキル基は、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。これらのなかでも、ブリードアウトし難さと導電性付与効果のバランスの点からは、パーフルオロアルキルスルホン酸の四級アンモニウム塩が好ましく、パーフルオロアルキルスルホン酸のテトラブチルアンモニウム塩が特に好ましい。
【0039】
本発明者の知見によれば、アルキル四級アンモニウム塩(B)を単独でポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)に添加するよりも、該四級アンモニウム塩(B)を導電性付与成分(C)と組み合わせてポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)に添加することにより導電性寄与効果が高められることが見出されている。これは、本発明者の知見によれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)に添加されたアルキル四級アンモニウム塩(B)の大部分は、(イオン解離せずに)塩の状態で当該樹脂中に分散しており、且つ、これと組み合わされた導電性付与成分(C)の電解質のイオンが、アルキル四級アンモニウム塩(B)由来のイオンの樹脂(A)中の移動を促進しているものと推定される。
【0040】
本発明の樹脂組成物を二次電池の固体電解質等に使用する態様においては、アルキル四級アンモニウム塩(B)の添加量は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対して、通常1〜1000重量部(更には10〜500重量部、特には30〜200重量部)であることが好ましい。該塩(B)の添加量が少な過ぎると、樹脂組成物の体積抵抗値が充分に低くなり難い傾向があり、他方、該添加量が多すぎると、二次電池等を構成する電極間での該樹脂組成物の形状の維持が困難になり難い傾向がある。
【0041】
本発明の樹脂組成物を電子写真方式の画像形成装置における帯電ロール、転写ロール、現像ロール、帯電ベルト、除電ベルト等帯電部材の少なくとも表面層を形成する材料、電子部品包装用フィルム、壁紙、OA機器外装材、帯電防止の間仕切り等、添加剤のブリードアウトへの制限がより厳しい用途に使用する態様においては、上記アルキル四級アンモニウム塩(B)の添加量は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対して、通常0.1〜30重量部(更には1〜20重量部、特に5〜10重量部)であることが好ましい。該塩(B)の添加量が少な過ぎると、充分に低くなり難い傾向があり、他方、該添加量が多すぎると樹脂組成物からのブリードアウトが発生し易くなる傾向がある。
【0042】
(導電性付与成分)
本発明においては導電性付与成分(C)として、アニオンとカチオンから成る塩であり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)中でイオン解離可能な電解質を用いる。ここで、導電性付与成分(C)が「樹脂(A)中でイオン解離可能」なことは、例えば、下記の方法により確認することができる。導電性付与効果の点からは、下記の方法による体積抵抗率の測定で、1015Ωcm以下(更には1012Ωcm以下)の体積抵抗率を与える成分(C)を用いることが好ましい。
【0043】
<イオン解離の確認方法>
フッ化ビニリデン・ホモポリマー(重量平均分子量Mw=3.6×105;数平均分子量Mn=1.8×105;商品名:呉羽化学工業(株)製、KF#1000)100重量部と、その導電性付与効果を確認すべき成分(C)1重量部とを、混合機(川田製作所社製、商品名:スーパーミキサー)に投入して、回転数1000rpmで約2分間充分に攪拌混合した後、得られた混合物を1軸スクリュー押出機(プラ技研社製)を用いて直径約3mm程度にペレット化する。このペレットをホットプレス((株)神藤金属工業所製、商品名:F−50型圧縮成形機)で成形した直後に20℃で急冷して、厚さ0.25mmのシートを得る。このようにして得たシートの体積抵抗率を23℃、50%RHの条件下で、後述する方法(レジシティビティセルを用いる方法)で測定する。
【0044】
本発明においては、成分(C)の分解を抑制する点からは、樹脂(A)の通常の溶融成形温度である200〜280℃で実質的に分解しないことが好ましい。また樹脂(A)の分解・変性を抑制する点からは、成分(C)の1%水溶液のpHが7以下(更にはpH6〜2程度)であることが好ましい。本発明において、上記「実質的に分解しないこと」ないしは「pHが7以下」であることは、例えば、下記の方法により確認することができる。
【0045】
<実質的に分解しないことの確認方法>
下記条件で熱重量測定をしたとき、加工温度(200〜280℃)での重量が、初期重量(30℃)の99.5%以上(更には99.9%)以上であることを確認する。
【0046】
導電性付与成分(C)を真空乾燥機(ヤマト科学社製、商品名:DP−43型真空定温乾燥機)を用い、60℃で24時間以上真空乾燥する。乾燥させた該成分(C)を、熱重量測定装置(セイコー電子工業社製、商品名:TG/DTA220)を用い、初期温度30℃、終了温度300℃、昇温速度10℃/分の条件で重量変化を測定する。
【0047】
<pHが7以下であることの確認方法>
99gの蒸留水に1gの導電性付与成分(C)を投入し、1重量%の水溶液を作成する(該成分(C)が蒸留水に完全に溶解しない場合は、未溶解物が沈殿している状態の飽和溶液を作成する)。メチルレッド試験紙と、クレゾールレット試験紙と、ブロムチモールブルー試験紙(全て東洋濾紙社製)との、それぞれにガラス棒を用いて上記1重量%の水溶液を付着させ、その直後の試験紙の色を標準変色表(東洋濾紙社製)と見比べて、PHが7以下であることを確認する。
【0048】
上記導電性付与成分(C)の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、ラウリル硫酸等の脂肪酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、アルキル燐酸、アルカンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテル硫酸、ジアルキルスフォサクシネート等のアニオンと、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、テトロフルオロボーレート、ヘキサフルオロホスフェート等のカチオンから成る、電解質が挙げられる。
特に、テトラプロピルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、テトラプロピルアンモニウムテトラフルオロボーレート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボーレート、テトラプロピルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート等の四級アンモニウム塩、または、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ルビジウム、パーフルオロアルキルスルホン酸セシウム、パーフルオロアルキルスルホン酸リチウム等のパーフルオロアルキルスルホン酸の塩が、好ましい導電性付与成分(C)として挙げられる。
【0049】
中でも更に、アルキル四級アンモニウム塩の硫酸塩または亜硫酸塩が、特に好ましい導電性付与成分(C)として挙げられる。
導電性付与成分(C)の添加量は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)に対して、通常、少なくとも0.01重量部(更には少なくとも0.1重量部、更には少なくとも0.3重量部、より好ましくは少なくとも0.5重量部、特に好ましくは少なくとも1重量部)であることが好ましい。成分(C)の添加量の上限は、該樹脂を加工成形する際に分解発泡しない範囲であり、これは、通常、導電性付与成分(C)の種類によって異なる。例えば、成分(C)がテトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェードの場合、3重量部を超える添加量で樹脂が着色を始め、10重量部を超える添加量で発泡分解し、成形加工が困難となる。本発明において、この「分解発泡しない」ことは、例えば、下記の方法により確認することが可能である。
【0050】
<分解発泡しないことの確認方法>
「分解発泡」が生じた場合には、樹脂成形物中に気泡が混入したり、樹脂成形物中に着色物混入したり、樹脂全体の色が黒変したり、異臭(特に弗酸臭など)がしたりする現象が見られる。したがって、「分解発泡しないこと」は、これらの現象が見られないことにより、容易に確認できる。
【0051】
(他の添加物)
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)組成物には、必要に応じて、各種添加剤を配合することができる。このような「他の添加物」としては、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、カオリン、フェライト、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ニッケル、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス粉、石英粉末、カーボンブラック、黒鉛、無機顔料、有機金属塩、酸化金属等の粒状または粉末状フィラー;炭素繊維、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリ繊維、等の繊維状フィラー;等が挙げられる。これらのフィラーは、本発明の目的(ブリードアウトを抑制しつつ導電性を付与する)を阻害しない範囲で使用目的に応じて適宜配合することができる。
【0052】
更に、本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物には、例えば、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、有機顔料、無機顔料、紫外線吸収剤、界面活性剤、無機酸、有機酸、pH調整剤、架橋剤、カップリング剤等の汎用の添加剤を本発明の効果を阻害しない範囲内に適宜配合することができる。
【0053】
(樹脂組成物の製法)
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の調製法には、特に制限されない。組成の均一化の点からは、下記の(1)ないし(3)の方法が好適に使用可能である。
(1)フッ化ビニリデン樹脂粉末またはペレットと、アルキル四級アンモニウム塩(B)と導導電性付与成分(C)をミキサー混合機等で混合する方法、(2)各成分を混合機で混合した後、混合物を溶融押出し法によってペレット化する方法、(3)各成分を、水または水と水溶性溶剤との混合溶剤に溶解ないしは分散させ、ミキサー等の混合機で混合した後、乾燥し、得られた乾燥物を溶融押出してペレット化する方法。
【0054】
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、プレス成形法、溶融押出法、射出成形法、溶液流延法、塗布法等の各種成形法により、各種成形品や被覆成形品に成形加工することができる。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)に高濃度のアルキル四級アンモニウム塩(B)と導導電性付与成分(C)を含有させたマスタバッチを作成しておき、成形時に必要に応じた濃度に該樹脂(A)で希釈して成形加工することもできる。
【0055】
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物をシームレスベルトに押出成形する場合は、連続溶融押出成形法が好ましく用いられる。シームレスベルトの望ましい連続溶融押出成形法としては、1軸スクリュー押出機とスパイラル環状ダイスを用いて、ダイスのリップから直下に押出し、内部冷却マンドレル方式によって内径を制御しながら引き取る方法等があげられる。
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を用いてシートを製造する場合、連続押出し成形法として、1軸または2軸スクリュー押出機とTダイスとを用い、溶融状態の該樹脂組成物をリップから直下に押出し、冷却ドラム上にエアーナイフ等により密着させつつ冷却固化する方法を挙げることができる。
【0056】
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の成形方法は、特に制限されるものではなく、射出成形や溶融押出法等の公知の成形方法により、例えば、シート状や、ファイバー状にに成形加工することが可能である。加工後さらに、延伸や熱固定することも可能である。本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、それ単独で使用してもよく、また、必要に応じて他の樹脂層等と複合させて、積層シートや複合糸にして使用してもよい。
【0057】
(樹脂組成物の用途)
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、電子部品包装用の静電気防止フィルム、静電気防止容器、各種OA機器に使用される埃吸着防止部材、除電部材、半導電部材、導電部材等に好適に使用可能である。
【0058】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明する。
【0059】
【実施例】
下記の実施例において、物性は以下の測定法により測定した。
(1)厚み測定
成形物の厚みは、ダイヤルゲージ厚み計(小野測器社製、商品名:DG−911)で測定した。
(2)体積抵抗率
本発明において、体積抵抗率が1010Ωcm以上の試料は、リング状電極を有するレジシティビティセル(商品名:HP16008B、ヒューレットパッカード社製、内側の電極の外径26.0mm、外側の電極の内径38.0mm、外側電極の外径40.0mm)に荷重7kgでサンプルをはさみ、内側の電極と対向電極との間に1kVの電圧を1分間(厚み方向に)印加したときの体積抵抗率ρVを抵抗測定器(商品名:ハイレジスタンスメータHP4339A、ヒューレットパッカード社製)で求めた。このようなリング電極法による体積抵抗率測定法の詳細はJIS−K6911を参照することができる。
本発明において、体積抵抗率が1010Ωcm未満の試料は、リング状プローブ(商品名:HRSプローブ、三菱化学社製、内側の電極の外径5.9mm、外側の電極の内径11.0mm、外側電極の外径17.8mm)と測定ステージ(商品名:レジテーブルFL、三菱化学社製)との間に試料を挟み約3kg重の圧力で押さえつけつつ、プローブの内側の電極と測定ステージとの間に500Vの電圧を印加して抵抗率測定装置(商品名:ハイレスタIP、三菱化学社製)で求めた。このようなリング電極法による体積抵抗率測定法の詳細はJIS−K6911を参照することができる。
(3)平均値の算出
上記した厚み、および体積抵抗率の測定は、これらの値を測定すべき試料の表面積1m2当たり任意に選んだ20点の測定点、または、任意に選んだ20個の成形物について1個に付き1点(計20点)測定し、その最大値、最小値、平均値(算術平均)を求めた。
(4)体積抵抗率の湿度依存性
本発明においては、リング状電極を有するレジシティビティセル(商品名:HP16008B、ヒューレットパッカード社製、内側の電極の外径26.0mm、外側の電極の内径38.0mm、外側電極の外径40.0mm)に荷重7kgでサンプルをはさみ、所定の温度と湿度に調節された恒温恒湿槽(商品名:LH30−13M、ナガノ科学機械製作所製)中で24時間放置した後、内側の電極と対向電極との間に100Vの電圧を1分間(厚み方向に)印加したときの体積抵抗率ρVを抵抗測定器(商品名:ハイレジスタンスメータHP4339A、ヒューレットパッカード社製)で求めた。このようなリング電極法による体積抵抗率測定法の詳細はJIS−K6911を参照することができる。
体積抵抗率は、相対湿度30%、50%、70%、90%の順に、各湿度環境で24時間調湿した後、測定した。
(5)ブリードアウト
サンプルを23℃相対湿度50%の環境下に30日間放置した後、目視と手触りにより、添加物のブリードアウトの有無を確認した。この場合、目視での観察において、粉吹き、白化、再結晶物の析出が観察されず、且つ、(予めエタノールにより汗等を拭き取って正常化した後の手を用いる)手触りによってべたつきが無い場合に「ブリードアウトなし」と判定した。
(6)体積抵抗率の熱安定性
サンプルを60℃の環境下に150時間放置した後、体積抵抗率を測定し、試験前後の体積抵抗率の変化を比較した。但し、この体積抵抗率は23℃50%の環境下で、JIS−K6911準拠で測定した。
【0060】
実施例1〜8、比較例1〜9
下記(表1)に示す各組成(実施例1〜8、比較例1〜9;各略号の意味は後述する)の樹脂粉末と添加剤を、混合機(川田製作所社製、商品名:スーパーミキサー)に投入して、回転数1000rpmで約2分間充分に攪拌混合した。得られた混合物を1軸スクリュー押出機(プラ技研社製)を用いて直径約3mm程度にペレット化した。このペレットをホットプレス((株)神藤金属工業所社製、商品名:F−50型圧縮成形機)で成形した直後に20℃で急冷して、厚さ0.25mmのシートを得た。但し、実施例1〜8及び比較例5〜9は230℃で、比較例1及び2は220℃で、比較例3は190℃で、ペレット化及びプレス成形をおこなった。
【0061】
実施例9
実施例1と同様にして得られた原料を1軸スクリュー押出機(プラ技研社製)を用いて、リップクリアランス0.7mmのT型ダイス(ダイス温度240℃)に供給し、ダイスから押出された溶融樹脂を40℃の冷却ロールによってフィルムに成形した。得られた組成物の物性を表1に示す。
【0062】
実施例10
下記表1に示す組成(実施例10)の樹脂粉末と添加剤とジメチルアセトアミド250重量部を、ガラスビーカーに投入し、120℃に加熱しながらガラス棒で攪拌し、全体を均一に溶解させた。この溶液を注射器(ノズル径1mm)を用いて水中に押出してストランド状にした。
【0063】
得られたストランドを48時間水に浸し、樹脂中のジメチルアセトアミドを水に置換した後、ストランドを取り出し、95℃で24時間、120℃で80時間乾燥した。更に、このストランドを適当な長さに切断して230℃のホットプレスで成形した直後に20℃で急冷して、厚さ0.25mmのシートを得た。
【0064】
比較例10
PVDFペレットを250℃でプレス成形した後20℃で急冷して、厚さ0.25mmのシートを得た。得られた組成物の物性を表1に示す。
【0065】
比較例11
VDFPペレットを250℃でプレス成形した後20℃で急冷して、厚さ0.25mmのシートを得た。得られた組成物の物性を表1および2に示す。
【0066】
【表1】
【表2】
上記の実施例1〜10において、試料(製造された組成物)を目視により観察したが、該試料中に凝集物、フィッシュアイ、等は観察されなかった。
【0067】
上記表中で用いた各略号の意味は、以下の通りである。
PVDF:ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業(株)製、KF#1000)
VDFP:フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(呉羽化学工業(株)製、KF#2300)
TBAHS:テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート((C4H9)4NHSO4)
PFASC:パーフルオロアルキルスルホン酸セシウム(C8F17SO3Cs)
PFASTEA:パーフルオロアルキルスルホン酸テトラエチルアンモニウム(C8F17SO3N(C2H5)4)
PFASTPA:パーフルオロアルキルスルホン酸テトラプロピルアンモニウム(C8F17SO3N(C3H7)4)
PFASTBA:パーフルオロアルキルスルホン酸テトラブチルアンモニウム(C8F17SO3N(C4H9)4)
EC:エチレンカーボネート
PC:プロピレンカーボネート
NMP:N−メチルピロリドン
PDE:フタル酸ジエチル
【0068】
(体積抵抗率の湿度依存性の評価)
実施例2で調製したサンプルを用いて体積抵抗率の湿度依存性を測定した。結果を図1に示す。図1から明らかなように、本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物から得られたシートは、体積抵抗率の湿度依存性が小さい。
【0069】
(ブリードアウトの評価)
上記した実施例1〜9及び比較例5〜11では添加剤のブリードアウトは観察されなかったが、実施例10及び比較例1〜4で添加剤のブリードウトが観察された。
【0070】
(体積抵抗率の熱安定性)
体積抵抗率の熱安定性評価結果を、下記(表3)に示す。表3から明らかなように、本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物から得られたシートは、60℃の環境下に150時間放置した後にも、体積抵抗率の変化が小さい。
【0071】
【表3】
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、103〜1013Ωcmの範囲で所定の体積抵抗率を安定して均一に精度よく再現し、且つ環境湿度変化による体積抵抗率の変化が小さいポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、半導電性に優れたチューブ、ベルト、シート、ファイバー射出成形物等の半導電性の各種成形物を提供することができる。
【0073】
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物は、電子写真方式の画像形成装置における帯電ロール、転写ロール、現像ロール、帯電ベルト、除電ベルト等の少なくとも表面層を形成する材料として好適である。また、電子部品包装用フィルム、壁紙、OA機器外装材、粉体塗装材の搬送チューブ等として好適である。さらに、二次電池における固体電解質として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で調製したサンプルを用いて、湿度と体積抵抗率との関係を求めた場合の結果を示すグラフである。
Claims (3)
- ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部と、パーフルオロアルキルスルホン酸テトラブチルアンモニウム(PFASTBA)(B)5〜50重量部と、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート(TBAHS)(C)1〜3重量部とを少なくとも含むポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物。
- 請求項1記載の樹脂組成物からなる樹脂成形物であって、シート、ベルト、チューブ、ファイバー、および射出成形物からなる群から選択される樹脂成形物。
- 電子写真装置または静電記録装置用の帯電部材の形態を有する請求項2に記載の樹脂成形物。
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