JP4451506B2 - 半導電性シームレスベルト - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンター、ファックス等に用いられる半導電性シームレスベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラー電子写真技術の進歩により、フルカラー複写機、およびカラープリンターが実用化され、感光体上に形成された潜像、あるいはトナー像を複写紙上へ転写するための中間転写体として、半導電性シームレスベルトが用いられるようになってきている。
この中間転写体には、様々な使用条件下において常に鮮明な画像を得るために、電気抵抗のバラツキが小さく、使用環境(温度、湿度)が変化しても電気抵抗の変化が小さく、電圧を繰り返し印加しても電気抵抗が変化しにくく、摩擦係数が小さい、等の性能が要求されている。
すなわち、シームレスベルトの電気抵抗は画像の濃淡に大きく影響し、同一のシームレスベルト内での位置による電気抵抗のバラツキが大きい場合、部分的な画像の濃淡を生じる。また環境(温度、湿度)の変化による電気抵抗の変化が大きいと使用環境の変動により画像全体の濃淡を生じる。
一方、複写機によるコピーやプリンターによる印刷を繰り返し行なうと、高電圧がシームレスベルトに繰り返し印加されるため、中間転写体の電気抵抗が変化し、画像の濃淡が発生するという問題もあった。
このような状況下、同一シームレスベルト内での位置による電気抵抗のバラツキが小さく、使用環境の変化による電気抵抗の変化が小さく、さらに電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化が小さい半導電性シームレスベルトが望まれていた。
【0003】
従来この用途には、合成樹脂へカーボンブラックや金属酸化物等の電子伝導性材料を添加し、体積固有抵抗を1×10〜1×1012Ω・cmに調整した半導電性シームレスベルトが用いられていた。これらの電子伝導性材料を添加したシームレスベルトは、使用環境の変化に対して電気抵抗の変化が少ないという特長を有するものの、電子伝導性材料の物理的接触によって導電性を発現させているため樹脂中への電子伝導性材料の分散が特に重要で、僅かの加工条件や添加量の違いにより電気抵抗が大きく変動し、同一シームレスベルト内でも位置により電気抵抗が大きく異なってしまうという問題があるとともに、電圧印加繰り返しにより電気抵抗が大きく変化するという問題があった。
【0004】
また、合成樹脂へポリエーテル系樹脂等のイオン伝導性材料を配合した組成物から得られるシームレスベルトが知られている。このようにして得られるシームレスベルトは、1010〜1013Ω・cmの範囲の体積固有抵抗を示し、電気抵抗のバラツキが小さいという特長を有している。しかしながら、イオン伝導性材料を一定レベル以上配合しても、さらなる電気抵抗の低下が小さく、特に1010Ω・cm以下の体積固有抵抗のものを得るには大量のイオン伝導性材料を添加しなければならず、合成樹脂本来の特性が失われ、加工性も悪化するという問題があった。また、高温高湿下における電気抵抗と低温低湿下における電気抵抗との差、いわゆる電気抵抗の環境依存性が大きいという問題もあった。
【0005】
一方、熱可塑性樹脂の一つであるフッ素系樹脂は、高い誘電率、非粘着性、非汚染性、低摩擦性、耐薬品性、耐オゾン性等の優れた特性を有しており、このような特異な性質に注目して、フッ素系樹脂に半導電性を付与してコピー機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真用部材として応用するという試みが進められている。しかしながら、フッ素系樹脂は絶縁性であり、フッ素系樹脂を用いた場合においても前記した問題はなんら解消されることはなく、その解決が望まれていた。
【0006】
このような問題を解決するために、特開平7−113029号公報にポリフッ化ビニリデン系樹脂、導電性フィラー、および熱可塑性ポリエーテル系樹脂からなる半導電性樹脂組成物が開示されている。この組成物は導電性フィラーと熱可塑性ポリエーテル系樹脂とを併用することにより、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、および導電性フィラーのみよりなる組成物に比べ半導電性を示す導電性フィラーの添加量範囲が拡大されている。しかしながら、電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化が大きく、電子写真方式の複写機やプリンター等に用いた場合、耐久性に難点があった。さらに、最近この分野では高画質化が進み、さらなる電気抵抗のバラツキが小さい半導電性シームレスベルト、特に電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化が小さい半導電性シームレスベルトが要望されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、1×10〜1×1012Ω・cmの範囲の所定の体積固有抵抗を安定して精度良く発現することができるのみならず、電気抵抗の環境依存性が小さく、電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化が小さく、加工性に優れ、良好な物理的、機械的特性を有する半導電性シームレスベルトを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決する手段】
本発明者らは鋭意研究を行なった結果、熱可塑性フッ素系樹脂、グラフト化カーボンブラック、熱可塑性ポリエーテル系樹脂を所定量含む組成物を環状のダイスから押出して得られる半導電性シームレスベルトによって、また該組成物にさらにイオン電解質が添加された組成物を環状のダイスから押出して得られる半導電性シームレスベルトによって、前記課題が解決できることを見出し本発明に到った。すなわち本発明によれば、
熱可塑性フッ素系樹脂100重量部、およびグラフト化カーボンブラック1〜40重量部、および熱可塑性ポリエーテル系樹脂1〜15重量部よりなる組成物を環状のダイスより押出して得られることを特徴とする半導電性シームレスベルトが提供される。
【0009】
また、熱可塑性フッ素系樹脂100重量部、グラフト化カーボンブラック1〜40重量部、熱可塑性ポリエーテル系樹脂1〜15重量部、およびイオン電解質0.05〜2重量部よりなる組成物を環状のダイスより押出して得られることを特徴とする半導電性シームレルベルトが提供される。
【0010】
また、より好ましくは、熱可塑性フッ素系樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、およびフッ化ビニリデン共重合体のうちの1種以上であることを特徴とする前記いずれかの半導電性シームレスベルトが提供される。
【0011】
また、より好ましくは、熱可塑性ポリエーテル系樹脂が、ポリエーテルエステル、および/または、ポリエーテルエステルアミドであることを特徴とする前記いずれかの半導電性シームレスベルトが提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
即ち、本発明は、熱可塑性フッ素系樹脂へグラフト化カーボンブラック、および熱可塑性ポリエーテル系樹脂を添加した組成物を環状のダイスより押出して得られるシームレスベルトが、1×10〜1×1012Ω・cmの範囲、特に1×10〜1×1011Ω・cmの範囲において電気抵抗のバラツキが少なく、環境依存性が小さく、さらに電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化も小さいことが見出された結果完成されたものである。以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の半導電性シームレスベルトは、熱可塑性フッ素系樹脂、カーボンブラックの表面へグラフト鎖を導入したグラフト化カーボンブラック、および熱可塑性ポリエーテル系樹脂を所定量配合した組成物を環状のダイスより押出して得られるものである。このようにして得られるシームレスベルトは、熱可塑性ポリエーテル系樹脂の配合の効果により、電子伝導性材料であるカーボンブラックの成形体中での分散性が著しく向上しており、電気抵抗のバラツキが小さく、さらにグラフト化カーボンブラックを用いることにより電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化が小さくなるという特徴を有している。さらに、本発明の半導電性シームレスベルトは、広いグラフト化カーボンブラックの添加量範囲で1×10〜1×1012Ω・cmの範囲、特に1×10〜1×1011Ω・cmの範囲において安定した体積固有抵抗を示すのみならず、電気抵抗の環境依存性が小さく、物理的、機械的特性、加工性にも優れるという特徴も有している。
【0014】
なお、本発明でいう電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化とは、次の試験方法によって評価される。すなわち、試料に500Vの電圧を印加時間10秒間、非印加時間50秒間を1サイクルとして1000回繰り返し行い、試験前後の体積固有抵抗を印加電圧500Vで測定する。本発明の半導電性シームレスベルトは試験前後の体積固有抵抗の比が小さく、実質的にその比は10倍以内である。
【0015】
本発明に用いられる熱可塑性フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン−フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体とフッ化ビニリデンとのグラフト共重合体、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリ三フッ化塩化エチレン等が挙げられ、特に、ポリフッ化ビニリデン、またはその共重合体が成形加工性の点で好ましい。
【0016】
本発明のグラフト化カーボンブラックに用いられるカーボンブラックとしては、通常のファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等を用いることができ、特に平均粒子径35nm以下のカーボンブラックが、少量の添加でシームレスベルトの電気抵抗を下げることができるので好ましい。
【0017】
グラフト化カーボンブラックを得るための方法として、電子伝導性材料であるカーボンブラックへ共有結合を介してグラフト鎖を導入する方法があげられる。すなわち、カーボンブラック表面に存在するフリーラジカル、カルボキシル基等を利用してグラフト鎖となるポリマー、オリゴマー、あるいはモノマーを化学的にカーボンブラックと結合すればよい。より具体的には、カーボンブラック存在下に重合性二重結合を有するモノマーをラジカル発生剤の存在下でラジカル重合を行い、ポリマーラジカルとカーボンブラック表面のラジカルとのカップリング反応によってポリマー鎖とカーボンブラックとを結合させる方法;エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基等の活性基と重合性二重結合とを同一分子中に有するモノマー、およびグラフト鎖となる重合性二重結合を有するモノマーをカーボンブラック存在下にラジカル重合し、グラフト鎖となるポリマーを生成させると同時にそのポリマー中のエポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基等とカーボンブラック表面の活性基とを反応させることによってカーボンブラック表面へポリマー鎖をグラフトさせる方法;エポキシ基、オキサゾリン基、あるいはアミノ基を含有するポリマーとカーボンブラックとを加熱混練することによってカーボンブラック表面へポリマー鎖をグラフトさせる方法等が挙げられる。
ここで用いられるエポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基等の活性基と重合性二重結合とを同一分子中に有するモノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、オキサゾリン(メタ)アクリレート、オキサゾリンマレート、アリルアミン等があげられる。また、グラフト鎖となる重合性二重結合を有するモノマーとしては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン等が、ポリマーとしては活性基を有するモノマーを単独、または共重合したものが挙げられ、熱可塑性を示すものであればいずれでもよい。
【0018】
このようにして得られるグラフト化カーボンブラック中のグラフト鎖の割合は特に限定されるものではないが、好ましくはグラフト化カーボンブラック中の10〜90重量%、さらには20〜80重量%が好ましい。グラフト鎖含量がこの範囲のグラフト化カーボンブラックは、半導電性シームレスベルトを得るためのグラフト化カーボンブラックの添加量が少なくてよく、加工性が低下しないので好ましい。
【0019】
グラフト化カーボンブラックの添加量は、熱可塑性フッ素系樹脂100重量部に対して1〜40重量部であり、1.5〜20重量部がより好ましい。その添加量が40重量部を超えると熱可塑性フッ素系樹脂の割合が相対的に少なくなるため、熱可塑性フッ素系樹脂の特性が失われるばかりでなく加工性が悪くなり好ましくない。また、1重量%未満では目的とする半導電性領域の電気抵抗を発現することができないので好ましくない。
【0020】
熱可塑性フッ素系樹脂へグラフト化カーボンブラックを添加するだけでは、半導電性を示すグラフト化カーボンブラックの添加量範囲が狭く、バラツキの少ない半導電性シームレスベルトを得るのは困難である。本発明の特徴の一つは、これら二組成に加えて熱可塑性ポリエーテル系樹脂を添加した組成物を環状のダイスより押出して得ることにある。熱可塑性ポリエーテル系樹脂を添加することにより、電気抵抗のバラツキが格段に少ない半導電性シームレスベルトが得られる。
【0021】
熱可塑性ポリエーテル系樹脂としては、ポリアルキレンオキサイド鎖を有する分子量3000以上の高分子化合物であればいずれでも良く、例えばポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、エチレンオキサイドとエピクロルヒドリンとの共重合体、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルウレタン、ポリエチレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができ、特にポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルアミドが好ましい。これらの熱可塑性ポリエーテル系樹脂は単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。熱可塑性ポリエーテル系樹脂の添加量は、熱可塑性フッ素系樹脂100重量部に対し、1〜15重量部であり、2〜10重量部がより好ましい。その添加量が1重量部未満の場合は、得られたシームレスベルトの電気抵抗のバラツキが大きいので好ましくなく、逆に、15重量部を超えると加工性の低下に起因する品質の低下を招き好ましくない。
【0022】
また、本発明では上記した熱可塑性フッ素系樹脂、グラフト化カーボンブラック、熱可塑性ポリエーテル系樹脂の他に、イオン電解質が添加された半導電性シームレスベルトも提供される。イオン電解質の添加により該半導電性シームレスベルトの電気抵抗をさらに低下させることができるため、グラフト化カーボンブラックの添加量を少なくでき、加工時の溶融粘度の上昇が抑えられるという効果を有する。イオン電解質としては、アルカリ金属のチオシアン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、ハロゲンの酸素酸塩等を用いることができる。これらのうち、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウムは少量の添加で電気抵抗を低下させることができるので特に好ましい。そして、その添加量は、熱可塑性フッ素系樹脂への溶解性の観点より、熱可塑性フッ素系樹脂100重量部に対し0.05〜2重量部に設定される。
【0023】
本発明の半導電性シームレスベルトは、上記した組成の他に半導電性シームレスベルトに悪影響を及ぼさない範囲で合成樹脂の加工の際通常用いられる酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、加工助剤、顔料等を含有することができる。また、必要に応じて他の合成樹脂を、本発明の目的とする諸性質を損なわない範囲で含有することもできる。
【0024】
本発明の半導電性シームレスベルトは、上述した熱可塑性フッ素系樹脂、グラフト化カーボンブラック、熱可塑性ポリエーテル系樹脂、および必要に応じてイオン電解質等を通常のニーダー、ロール、バンバリーミキサー、二軸混練機等で混練することによって組成物とし、環状のダイスを付けた押出し機で所定厚みのチューブ状に押出して得られるチューブを、所定長さに切断して得ることができる。
【0025】
【作用】
本発明の半導電性シームレスベルトは、熱可塑性ポリエーテル系樹脂が併用されているため、成形体中でのグラフト化カーボンブラックの分散性が著しく向上している。このため本発明の半導電性シームレスベルトは、1×10〜1×1012Ω・cmの範囲の所定の体積固有抵抗を精度良く安定して発現することができるばかりでなく、使用環境の変化、および電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化が小さいという特長を有している。また、イオン電解質がさらに添加されて得られる半導電性シ−ムレスベルトは、電気抵抗をさらに低下させることができ、結果としてグラフト化カーボンブラックの添加量を低減でき、熱可塑性フッ素系樹脂が本来有する優れた特性が維持されるという特長を有する。
【0026】
【実施例】
次に、実施例によって、本発明を具体的に説明する。
体積固有抵抗は、三菱化学(株)製ハイレスタを用い、HRSプローブで測定した。なお、体積固有抵抗の測定は、特に断りがない限り、印加電圧250V、23℃、50%RH条件下で行った。体積固有抵抗のバラツキは、シームレスベルトの10箇所の体積固有抵抗を測定し、その最大値と最小値との比で表した。
【0027】
<環境依存性試験>
環境依存性は、30℃80%RHにおける体積固有抵抗と10℃30%RHにおけるそれとの比で表した。
【0028】
<電圧印加繰り返し試験>
電圧印加繰り返しによる体積固有抵抗の変化は、試料に500Vの電圧を、印加時間10秒間、非印加時間50秒間を1サイクルとして1000回繰り返し行い、試験前後の体積固有抵抗の比で表した。
【0029】
[参考例1]
熱可塑性フッ素系樹脂(商品名:「セフラルソフトG−180」、フッ化ビニリデン系グラフト共重合体、セントラル硝子(株)製)95重量部とカーボンブラック(商品名:「ケッチェンブラック」、ケッチェンブラックインターナショナル社製)5重量部とを単軸混練機を用いて混練造粒し、カーボンブラックマスターバッチ(以下CB・MBと表す)を調製した。
【0030】
[製造例1〜3]
攪拌装置、および窒素ガス導入管を取り付けた反応容器へ、表1に示すグラフト鎖用モノマーであるスチレン、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレートと、エポキシ基を含有するモノマーであるグリシジルメタクリレートとを合計で100重量部、連鎖移動剤として四臭化炭素0.5重量部、ラジカル発生剤であるアゾビスイソブチロニトリル1重量部、および1%ポリビニルアルコール水溶液100重量部を仕込み、窒素気流下に80℃で激しく攪拌しながら10時間重合を行った。生成物は、ろ過、洗浄、乾燥してグラフト鎖用ポリマー(g−P1、g−P2、g−P3)を得た。
このようにして得られたグラフト鎖用ポリマー、および参考例1で調製したカーボンブラックマスターバッチを表2に示す割合で加圧式ニーダーに仕込み、180℃で30分間混練することによりグラフト化カーボンブラック(g−CB1、g−CB2、g−CB3)を調製した。
【0031】
【表1】
Figure 0004451506
【0032】
【表2】
Figure 0004451506
【0033】
[実施例1〜5]
表3に示す組成の熱可塑性フッ素系樹脂、製造例1〜3で得られたグラフト化カーボンブラック、熱可塑性ポリエーテル系樹脂、および実施例5ではイオン電解質である過塩素酸リチウムをさらに加えた組成を、二軸混練機で混練、ペレット化後、直径120mmの環状ダイスより押出し、厚さ150μm、周長470mmのチューブ状フィルムを得た。半導電性シームレスベルトは、このチューブ状フィルムを所定の長さに切断することにより得た。得られた半導電性シームレスベルトの体積固有抵抗、そのバラツキ、環境依存性試験、および電圧印加繰り返し試験の結果を表4に示す。
【0034】
[比較例1]
熱可塑性フッ素系樹脂(商品名:「KYNAR710」、ポリフッ化ビニリデン、アトケム社製)56重量部、および参考例1で得られたカーボンブラックマスターバッチ44重量部を二軸混練機で混練、ペレット化後、実施例1と同様にして厚さ150μm、周長470mmのシームレスベルトを得た。得られたシームレスベルトの体積固有抵抗は1本の中で5×10〜3×1010Ω・cm(印加電圧10Vで測定)と10000倍近いバラツキがあり、実用に適さないものであった。
【0035】
[比較例2]
表3に示す組成の熱可塑性フッ素系樹脂、参考例1で得られたカーボンブラックマスターバッチ、熱可塑性ポリエーテル系樹脂を二軸混練機で混練、ペレット化後、実施例1と同様にして厚さ150μm、周長470mmのシームレスベルトを得た。得られたシームレスベルトの体積固有抵抗、およびそのバラツキ、環境依存性試験、電圧印加繰り返し試験の結果を表4に併せて示す。
【0036】
【表3】
Figure 0004451506
【0037】
[比較例3]
表3に示す組成の熱可塑性フッ素系樹脂、製造例1で得られたグラフト化カーボンブラックを二軸混練機で混練、ペレット化後、実施例1と同様にして厚さ150μm、周長470mmのシームレスベルトを得た。得られたシームレスベルトの体積固有抵抗、およびそのバラツキ、環境依存性試験、電圧印加繰り返し試験の結果を表4に併せて示す。
【0038】
【表4】
Figure 0004451506
【0039】
熱可塑性フッ素系樹脂へカーボンブラックを添加した比較例1のシームレスベルトは、測定位置による体積固有抵抗のバラツキが10000倍近くありもあり、実用に適さないものであった。また、比較例2のシームレスベルトは、カーボンブラックと熱可塑性ポリエーテル系樹脂とを併用することにより体積固有抵抗のバラツキが10倍以下になっているものの、電圧印加繰り返しによる体積固有抵抗の変化が10倍以上と大きい。また、比較例3のシームレスベルトは、熱可塑性ポリエーテル系樹脂が添加されていないため体積固有抵抗のバラツキが10倍以上あり、さらに電圧印加繰り返しによる体積固有抵抗の変化も10倍以上と大きい。これに対し本発明の実施例1〜4の半導電性シームレスベルトは、熱可塑性フッ素系樹脂へグラフト化カーボンブラックと熱可塑性ポリエーテル系樹脂とを併用することにより、体積固有抵抗のバラツキが10倍以内、環境依存性試験、電圧印加繰り返し試験による体積固有抵抗の変化がいずれも10倍以内であり、電子写真用の半導電性シームレスベルトとして優れた特性を有することがわかる。
【0040】
さらに、実施例5の半導電性シームレスベルトは、体積固有抵抗のバラツキが8.1倍と小さいばかりでなく、さらに環境依存性試験、および電圧印加繰り返し試験による電気抵抗の変化も5倍以下であり、電子写真用の半導電性シームレスベルトとして優れた特性を有している。また、イオン電解質を併用しているため1.6重量部と極めて少ないグラフト化カーボンブラックの添加量で半導電性シームレスベルトを得ることができる。このことは、本発明の半導電性シームレスベルトの加工性が低下しないというばかりでなく、熱可塑性フッ素系樹脂本来の特性を失わないという特長をも有している。
【0041】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性フッ素系樹脂、グラフト化カーボンブラック、および熱可塑性ポリエーテル系樹脂、必要に応じてイオン電解質を配合してなる半導電性シームレスベルトは、グラフト化カーボンブラックと熱可塑性ポリエーテル系樹脂との相互作用により半導電性領域において電気抵抗のバラツキが少なく、また温度湿度の変化、即ち環境依存性試験、および電圧印加繰り返しによる電気抵抗の変化が小さいという特長を有している。さらに、本発明の半導電性シームレスベルトは、合成樹脂として熱可塑性フッ素系樹脂を用いているためフッ素系樹脂の特徴である高い誘電率、非粘着性、防汚性、耐熱性、耐オゾン性、難燃性等をも有している。従って、本発明の半導電性シームレスベルトは、特に正確な半導電性領域の電気抵抗が要求されるカラーコピー、カラープリンター等の電子写真用半導電性シームレスベルトとして好適に使用されるものである。

Claims (3)

  1. 熱可塑性フッ素系樹脂100重量部、エポキシ基、オキサゾリン基、またはアミノ基の中から選ばれた活性基と重合性二重結合とを同一分子中に有するモノマー、およびグラフト鎖となる重合性二重結合を有するモノマーとを共重合させたポリマー鎖を、該活性基とカーボンブラック表面の活性基とを反応させることによって、カーボンブラック表面へ結合させたグラフト化カーボンブラック1〜40重量部、および、ポリエーテルエステルおよび/またはポリエーテルエステルアミド1〜15重量部よりなる組成物を、環状のダイスより押出して得られ、電圧印加繰り返し試験による体積固有抵抗の変化が10倍以内であることを特徴とする半導電性シームレスベルト。
    但し、電圧印加繰り返し試験による体積固有抵抗の変化は、500Vの電圧を印加時間10秒間、非印加時間50秒間を1サイクルとして1000回繰り返し行い、印加電圧500Vで測定した試験前後の体積固有抵抗の比である。
  2. 熱可塑性フッ素系樹脂100重量部、エポキシ基、オキサゾリン基、またはアミノ基の中から選ばれた活性基と重合性二重結合とを同一分子中に有するモノマー、およびグラフト鎖となる重合性二重結合を有するモノマーとを共重合させたポリマー鎖を、該活性基とカーボンブラック表面の活性基とを反応させることによって、カーボンブラック表面へ結合させたグラフト化カーボンブラック1〜40重量部、ポリエーテルエステルおよび/またはポリエーテルエステルアミド1〜15重量部、およびイオン電解質0.05〜2重量部よりなる組成物を環状のダイスより押出して得られ、電圧印加繰り返し試験による体積固有抵抗の変化が10倍以内であることを特徴とする半導電性シームレスベルト。
    但し、電圧印加繰り返し試験による体積固有抵抗の変化は、500Vの電圧を印加時間10秒間、非印加時間50秒間を1サイクルとして1000回繰り返し行い、印加電圧500Vで測定した試験前後の体積固有抵抗の比である。
  3. 熱可塑性フッ素系樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、およびフッ化ビニリデン系共重合体のうちの1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導電性シームレスベルト。
JP32009198A 1998-11-11 1998-11-11 半導電性シームレスベルト Expired - Lifetime JP4451506B2 (ja)

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