JP3743288B2 - 画像形成装置の転写層用溶融押出材料 - Google Patents

画像形成装置の転写層用溶融押出材料 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の感光部の転写層の形成に適した溶融押出材料およびそれを用いて形成された感光部の転写ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は化学的、熱的安定性に加え表面潤滑性、電気的特性、機械的特性、耐摩耗性に優れており電子写真機分野の転写材担持体及び画像形成部において広く利用されている。
【0003】
フッ素樹脂組成物は1016Ω・cmを超える体積固有抵抗率を有する電気絶縁体であり、電子複写機内の加圧ローラや給紙ローラなどにおいては、静電気により紙葉が吸着したり、トナー粉が吸着あるいは飛散するといったトラブルの原因となっていた。
【0004】
このため、フッ素樹脂組成物に導電性物質を配合することが試みられている。導電性物質としては、カーボンブラック、黒鉛粉、炭素繊維のような炭素材料、金属粉などをあげることができる。
【0005】
ところが、導電性をうるのに充分な量のカーボンブラックを配合すると、カーボンブラックのストラクチャーのために樹脂粘度が高くなり、成形性を著しくそこなうという問題がある。黒鉛粉や炭素繊維のような非等方的な形状をもつ粉体を配合すると、樹脂表面の粗度が上昇するという問題があり、表面粗度が上昇するとドラムや紙葉との接触にムラが生じ、画像の乱れを生じる。金属粉を添加するとフッ素樹脂特有のすぐれた耐薬品性が損われるという問題点がある。
【0006】
また電子写真式複写機、プリンター、ファクシミリなどの中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置などにおいて、導電性ベルトが多用されている。導電性ベルトとして、たとえば熱可塑性樹脂に導電性のカーボンブラックを配合したものが一般的である。これをフィルム状に成形加工したものを繋ぎ合わせてベルト状にして使用する。また、筒状フィルムに押出成形し、この筒状フィルムを水平方向に輪切りしたものがシームレスベルトとして知られている(特開平2−233765号公報、特開平3−89357号公報及び特開昭64−26439号公報など)。
【0007】
導電性ベルトは、要求に応じてさまざまな熱可塑性樹脂が使用される。特にフッ素系重合体は、難燃性、耐久性、耐フィルミング性(トナー離型性)などが他の熱可塑性樹脂より優れているため多用されている。しかし、フッ素系重合体導電性ベルトを用いた複写機、プリンター、ファクシミリなどでは導電性ベルトの抵抗値が経時的に低下して画像が劣化する問題があった。たとえば複写機などの中間転写ベルトなどに使用したばあいにおいては、トナーをベルト表面に電気的に引きつけるために帯電させる必要があり、コロナ放電などにより繰り返し高電圧が印加される。この高電圧によりフッ素系重合体ベルトは、抵抗値が徐々に低下して、そのため、ベルトへのトナーの移行量が減少して画像に悪影響を及ぼす。フッ素系重合体ベルトにおいてこのような現象が起こるのは、導電性フィラーとフッ素系重合体との界面剥離及び重合体内部の結晶部欠陥などによる導電キャリアのトラップが原因となり空間電荷制限電流で抵抗値が低下すると考えられる。
【0008】
さらに、電子複写機における帯電ローラやベルト、転写ローラ、現像ローラのようないわゆる半導電性ローラやベルトにおいては特定の範囲の導電性が求められている。具体的にはローラやベルトにおいては体積固有抵抗率が108〜1013Ω・cmの範囲にコントロールされる必要がある。
【0009】
このような用途において、通常の導電性物質を配合したフッ素樹脂組成物を使用するためには、配合量の精密な制御と充分な混練を必要とする。それは通常の導電性物質をフッ素樹脂に配合していくと、ある配合量を境に急激に抵抗が下がってしまうため、108〜1013Ω・cmといったせまい範囲内にコントロールするのが困難であるためである。このため、配合量による抵抗の変化が急ではなく、しかも耐薬品性などのフッ素樹脂特有のすぐれた性質を損うことなく、また粘度の上昇などの力学的性質や表面粗度、非粘着性などの変化を最小限にとどめることができるような導電性・非粘着性フッ素樹脂組成物が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は画像形成装置の感光部の転写層の形成に適した溶融押出材料、特に体積固有抵抗率のコントロールが容易でかつ非粘着性に優れ、平滑性や強度に優れた含フッ素樹脂からなる溶融押出材料およびそれを用いた転写ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(A)少なくとも一部がフッ素化された炭素材料および(B)テトラフルオロエチレンおよびこれと共重合可能な少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体との共重合体またはポリビニリデンフルオライドからなる組成物であって、溶融押出成形によりえられる被膜の表面の体積固有抵抗率が108〜1013Ω・cm、対水接触角が96度以上および被膜の引張強度が25℃で400kgf/cm2以上であることを特徴とする画像形成装置の転写層用溶融押出材料、および該材料を用いて形成してなる転写ベルトに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の溶融押出材料は画像形成装置の感光部の各種のローラまたはベルト、特に高強度が要求される転写ベルトに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の溶融押出材料は、少なくとも一部がフッ素化された充填材(A)と含フッ素熱可塑性樹脂(B)とからなる。
【0014】
(A)成分である少なくとも一部がフッ素化された充填材としては、カーボンブラック、炭素繊維、石油コークス、黒鉛粉などの炭素材料をフッ素化したものが好ましい。
【0015】
これらのうち、カーボンブックをフッ素化してえられるフッ素化カーボンブラック、特に炭素原子に対するフッ素原子の比F/Cが0.1以上1.0未満、とりわけ0.1以上0.5未満であるフッ素化カーボンブラックが好ましい。
【0016】
成分(A)のフッ素化カーボンブラックのF/Cが0.1未満のときは、フッ素化の効果が不充分であり、フッ素化前の炭素材料のもつ問題点、すなわち、配合量に対する抵抗の変化率が非常に大きく導電性のコントロールが困難であること、また、発達したストラクチャーのためフッ素化カーボンブラックの分散が不均一となったり、えられる組成物が硬くなるといった問題点がそのまま残る。F/Cが1.0以上のときは、目的とする導電性を組成物に付与することができない。
【0017】
本発明において、F/Cはつぎのようにして測定される。フッ素化カーボンブラックを助燃剤Na22およびポリエチレンフィルムとともに濾紙に包みこみ、酸素を充填した密閉フラスコ内で燃焼し、発生したフッ化水素をフッ化物イオンメータ(オリオン社製:イオンアナライザ901)を用い、常法により測定する。この値からフッ素含有量を算出する。えられたフッ素含有量に基づいてF/Cを算出する。
【0018】
かかるフッ素化カーボンブラック(A)はポリ(カーボンモノフルオライド)が主成分をなすものであり、平均粒径0.01〜50μm、好ましくは0.01〜1μmのカーボンブラックをフッ素ガスによりフッ素化したものが好ましい。平均粒径が50μmを超える炭素材料、たとえば石油コークス、黒鉛粉末、炭素繊維などを原料としてえられるフッ素化カーボンブラックは、樹脂に導電性および非粘着性を付与するための量を多くしなければならず、えられる組成物に表面粗度の上昇、機械的強度の劣化、抵抗率の不均一などの不都合が生ずる傾向にある。
【0019】
フッ素化カーボンブラック(A)の炭素材料として適するものは前記の平均粒径を有するカーボンブラックである。カーボンブラックとしては、たとえばゴム用ファーネスブラック(たとえば旭カーボン(株)製の旭#55など)、カラー用チャネルブラック(たとえばコロンビアカーボン社製のレーベン7000)、サーマルブラック(コロンビアカーボン社製のセバカーボMT−C1)などの市販のものが使用できる。
【0020】
カーボンブラックのうち、とくに一般に導電性カーボンブラックと称されているものが好ましい。導電性カーボンブラックは、平均粒径が小さい(平均粒径0.1μm以下)、表面積が大きい(N2表面積50m2/g以上)、ストラクチャーが発達している(吸油量100cc/g以上)、不純物が少ない(灰分0.1%未満)、グラファイト化が進んでいる、というファクターで定義されるものであり、比較的少ない配合量で材料に導電性を付与できるため、広く使用されているものである。具体例としては、たとえばケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(以上、ケッチェンブラックインターナショナル(株))、ブラックパールズ2000、バルカンXC−72、CSX−99(以上、キャブラック(株))、デンカブラック(電気化学工業(株))、コンダクテックス950(コロンビアカーボン(株))などが市販されている。
【0021】
本発明において使用されるフッ素化カーボンブラック(A)は、こうした炭素材料を200〜600℃の範囲の温度で、より好ましくは300〜500℃の範囲の温度でフッ素ガスと接触させることによってえられる。この範囲より低い反応温度では、フッ素化反応の進行が遅い、フッ素化度が上がりにくい、熱安定性が充分ではない、フッ素化カーボンブラック特有の非粘着性、潤滑性などの特性が発揮されない、といった問題が起こる。逆に、この範囲よりも高い反応温度では熱分解反応がおこりやすく、えられるフッ素化カーボンブラックの収率が低くなる。また、ときとして急激な熱分解反応が生じ爆発にいたることがあるので充分注意する必要がある。
【0022】
反応に使用するフッ素ガスはチッ素、アルゴン、ヘリウム、四フッ化炭素などの不活性ガスで希釈されていてもよく、フッ化水素を含んでいてもよい。また、反応は常圧で行なうことができるが、減圧下あるいは加圧下であっても何らさしつかえない。
【0023】
前記条件のほか、反応時間、フッ素ガス流量などは原料の炭素材料のフッ素との反応性や希望するF/C(フッ素含有量)に応じて適宜調節すればよい。
【0024】
つぎに(B)成分の含フッ素熱可塑性樹脂について説明する。
【0025】
本発明の特徴は溶融押出成形が可能な含フッ素熱可塑性樹脂材料を提供することにある。従来、この分野ではフッ素ゴムやシリコーンゴムなどのゴム材料が使用されているが、これらのゴムを主体とする材料は溶融押出できない。
【0026】
含フッ素熱可塑性樹脂としてはテトラフルオロエチレン(TFE)およびこれと共重合可能な少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体(たとえばエチレン、プロピレンなどのオレフィン類、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレン、ビニルフルオライドなどのハロゲン化オレフィン類、パーフルオロアルキルビニルエーテル類など)との共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどがあげられる。特に好ましい含フッ素熱可塑性樹脂としては、水素原子を有する含フッ素熱可塑性樹脂が、高強度がえられる点、加工性が優れる点からあげられる。具体例としては、エチレン(ET)−テトラフルオロエチレン(TFE)系共重合体(ET/TFE=40/60〜60/40。モル比)、ビニリデンフルオライド系重合体(たとえばポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン共重合体)などがあげられる。特にエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオロライド(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が、高強度、加工性の点から好ましい。これらの含フッ素熱可塑性樹脂を用いるときは汎用樹脂と比較してすぐれた耐熱性、非粘着性、撥水撥油性、潤滑性、耐薬品性を有する組成物がえられるという効果が奏される。そうした汎用樹脂としては、たとえばポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリルなどの非フッ素系熱可塑性樹脂があげられる。
【0027】
成分(A)と成分(B)の配合割合は、1/99〜20/80(重量比。以下同様)である。成分(A)が少なくなるとフッ素化カーボンブラックを添加した効果が充分えられず、多くなりすぎると引張強度などの機械的強度が低下する傾向にある。また、成分(B)に加えて、前記非フッ素系の熱可塑性樹脂を本発明の効果が損なわれない範囲で配合してもよい。
【0028】
本発明の溶融押出材料の特徴は、可塑剤を添加しなくても良好な押出成形性がえられ、また界面活性剤を添加しなくても安定した半導電性がえられる点にある。したがって、従来、浸出(ブリーディング)が問題となり汚染の原因ともなっていた低電気抵抗性のエステル系可塑剤やフッ素系界面活性剤の添加が排除できる。
【0029】
本発明の組成物は、たとえばつぎの方法などの通常の方法で混合・調製することができる。
【0030】
樹脂とフッ素化カーボンブラックと、必要に応じて最小限の添加物をV型ブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサーなどの混合機で混合したのち、さらに二軸押出機などの溶融混練装置を用いて混合し、ペレット化する。こうしてえられたペレットは押出成形機によって所望形状の成形物、たとえばベルト、板状体、フィルムなどに成形される。
【0031】
本発明の溶融押出材料は、画像形成装置の感光部の転写層の形成材料として好適な物性を有している。
【0032】
すなわち、本発明の材料を溶融押出成形してえられる被膜(チューブ、フィルムなど)は、つぎの物性をもつ。
(1)表面の体積固有抵抗値が108〜1013Ω・cm、好ましくは1010〜1013Ω・cmのものである。この範囲にあるばあい、優れたトナー移動が奏される。また、同一被膜表面における体積固有抵抗率の最大値/最小値の比が10以下であり、半導電性が均一であって、絶縁破壊が生じにくい。
(2)対水接触角が96度以上、好ましくは98度以上である。対水接触角が大きいと非粘着性が良好である。
(3)引張強度(25℃)が350kgf/cm2以上、好ましくは360〜600kgf/cm2である。
【0033】
また、(4)表面粗度(Ra)が5μm以下、さらに0.5μm以下であることが好ましい。表面粗度(Ra)が小さい平滑な表面はトナーの残存が少なく画像形成性の点で優れている。
【0034】
本発明が対象とする転写ベルトは高速回転の際、大きなテンションがかかる。しかし、従来、前記の(1)、(2)、さらには(4)の特性を満たしたうえで大きな引張強度を与える転写ベルトはなく、本発明において初めて達成されたものである。
【0035】
本発明の材料は溶融押出成形法により種々の形態の成形品を提供できる。たとえば、フィルム状、チューブ状、板状、ベルト状などの成形品とすることができる。こうした溶融押出成形品は溶融成形性に優れなければ、均質なものがえられない。この点、フッ素化されていないカーボンブラックを配合したばあい、前述のとおり、そのストラクチャーのため溶融粘度が著しく大きくなり、溶融混練が不充分となり、分散が不均一となる。本発明の材料は、溶融成形性の指標の一つであるメルトフローレート(MFR)が許容される範囲内(0.5g/10分以上、好ましくは0.7g/10分以上。ETFE:297℃、PVdF:230℃、荷重5kg)にあり、溶融成形性とともに分散性(混練性)も良好である。
【0036】
本発明はまた、画像形成装置の感光部の転写ベルトに関する。
【0037】
本発明における画像形成装置としては、電子写真複写機、ファクシミリ、レーザープリンタなどがあげられるが、こらに限られるものではなく、静電複写に基づいてトナーの転写を行なう装置が含まれる。
【0038】
画像形成装置、たとえば電子写真複写機の感光部には通常、半導電性ローラである帯電ローラ、現像ローラ、転写ベルト(またはローラ)がある。
【0039】
転写ベルトは通常、エンドレスとなった転写ベルトが3個のローラで感光体ドラムに転写紙を押しつけることにより、感光体ドラム上のトナー像を転写紙に転写させる働きをしている。
【0040】
かかる転写ベルトは、単一のエンドレスベルト(厚さは通常50〜250μm)であったり、耐熱性樹脂織布上に転写層(厚さ約10〜50μm)を設けたエンドレスベルトであったりするが、本発明の転写ベルトはそれら従来の構造に適用できるものである。
【0041】
また、本発明の溶融押出材料は転写ベルト以外にも、転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラなどの抵抗体層としても有用である。
【0042】
こうしたローラは、導電性支持体上にまず導電性弾性体層が形成されている。この導電性弾性体層用の材料はとくに制限されるものではなく、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴムなどの合成ゴム中に導電性粉末や導電性繊維(カーボンブラック、金属粉末、カーボン繊維など)などを混入した組成物によって形成され、体積固有抵抗率が105Ω・cm以下、好ましくは103Ω・cm以下であって、かつゴム硬度(JIS A)が20〜50度、好ましくは25〜40度の範囲のものが使用される。なお、導電性粉末などの混入の際、抵抗調整やゴム硬度調整の目的で、可塑剤や界面活性剤などを使用するのは好ましくない。と言うのは、これらの薬剤は経時的に滲み出し、感光体などの表面の汚染およびローラ表面のトナーフィルミングの発生原因となるためである。
【0043】
導電性支持体の材料はとくに制限されるものではなく、アルミニウムもしくはアルミニウムを主成分とする合金またはステンレスが使用できる。
【0044】
ついで本発明の溶融押出材料は、通常の溶融押出成形法によりチューブ状に製膜される。必要なら延伸してもよいし、熱収縮性を有していてもよいが、通常では延伸や熱収縮性はなくてもよい。このようなチューブの厚さは0.01〜0.15mmの範囲にあることを必要とし、この値をはずれると好ましい感光部用のローラはえられない。
【0045】
つぎに、本発明の感光部用ローラの製造についての具体例を述べることにする。すなわちまず筒状成形体の内部に芯金と本発明に係る溶融押出材料とからなるチューブとを間隔を置いて配置し、かつ筒状成形体の内表面とチューブの外表面とが接触するように配置しておき、前記した間隔に導電性弾性体層用の材料を流し込み、必要なら加硫することにより本発明の感光部用のローラをうることができる。もちろん、必要なときに筒状成形体から被覆されたチューブを含むローラ部分を取り出しておかねばならない。この際、チューブの内表面にゴム部分と接触しやすいようにあらかじめエッチング処理、プライマー処理などを施しておいてもよい。またあらかじめ導電性弾性体層を作製しておき、その表面に本発明に置けるチューブを被覆してもよい。この際は、チューブとしては熱収縮性を有するものを使用するほうがよい。このようにローラの製造法については特に限定はない。
【0046】
以上のように本発明の溶融押出材料は画像形成装置の感光部の各種のローラまたはベルト、特に高強度が要求される転写ベルトに好適である。
【0047】
つぎに実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、部は重量部を表わす。
【0048】
実施例1
カーボンブラック(電気化学工業(株)製のデンカブラック。平均粒径0.04μm)をフッ素化してF/Cが0.1のフッ素化カーボンブラックを作製した。
【0049】
このフッ素化カーボンブラック10部とETFE(エチレン/テトラフルオロエチレン=48/52。モル比)90部とをヘンシェルミキサーにより30℃で混合したのち、二軸押出機(東洋精機(株)製のラボプラストミル)にて300℃で溶融混練して押し出し、ペレットをえた。このペレットを押出成形機(田辺プラスチック(株)製の30φ単軸押出機)でフィルム状に溶融押出しし(300℃)、厚さ150μmのフィルムを作製した。
【0050】
えられたフィルムについて、つぎの物性を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(体積固有抵抗率)
JIS K 6911に準じ、(株)アドバンスト製の抵抗測定セル(レジスティビィティ・チャンバR12702A)および抵抗計(デジタル超高抵抗計R8340A)を用いて測定する。
【0052】
(対水接触角)
協和界面科学(株)製の接触角計により測定する。
【0053】
(引張強度)
ASTM D 638に従い、測定する。
【0054】
(表面粗度)
東京精密(株)製の表面粗度測定器(Surfcom470A)を用い、触針先端2μmRのダイヤモンドピックアップによりサンプルの表面2.5mmをピックアップ速度0.3mm/秒で自動測定する。RaはJIS B 0601−1982に規定される中心線平均粗さである。
【0055】
また、本発明の溶融押出材料の溶融成形性を調べるため、ASTM D 3307に従い、メルトフローレート(MFR)(ETFE:297℃、PVdF:230℃、荷重5kg)を調べた。結果を表1に示す。
【0056】
実施例2〜6
表1に示すF/Cをもつフッ素化カーボンブラックを同表に示す量用いたほかは実施例1と同様にしてペレットをえ、溶融押出成形してフィルムを作製し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
実施例7
ETFEに代えてポリビニリデンフルオライド(PVdF)を用いたほかは実施例1と同様にしてペレットをえ、溶融押出成形してフィルムを作製し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
実施例1においてフッ素化カーボンブラックを配合せずにETFE単独で溶融押出成形してフィルムを作製し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
比較例2〜3
実施例1においてフッ素化カーボンブラックに代えてフッ素化されていない原料カーボンブラック(電気化学工業(株)製のデンカブラック。平均粒径0.04μm)を表1に示す量配合したほかは実施例1と同様にして溶融押出成形してフィルムを作製し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
比較例4
実施例1においてフッ素化カーボンブラックに代えて完全フッ素化カーボンブラック(F/C=1.1)を表1に示す量配合したほかは実施例1と同様にして溶融押出成形してフィルムを作製し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 0003743288
【0062】
表1から明らかなように、本発明の溶融押出材料は溶融成形性に優れ(MFR)、しかもフッ素化カーボンブラックの配合量を変化させても体積固有抵抗率の変化が少なく(実施例1と2、3と4、5と6を比較)、非粘着性(対水接触角)および平滑性(表面粗度)に優れ、充分な強度をもつ感光部の転写ベルトまたはローラに適用した成形品を与える。

Claims (7)

  1. (A)少なくとも一部がフッ素化された炭素材料および(B)テトラフルオロエチレンおよびこれと共重合可能な少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体との共重合体またはポリビニリデンフルオライドからなる組成物であって、溶融押出成形によりえられる被膜の表面の体積固有抵抗率が108〜1013Ω・cm、対水接触角が96度以上および被膜の引張強度が25℃で400kgf/cm2以上であることを特徴とする画像形成装置の転写層溶融押出材料。
  2. 記被膜の表面粗度Raが0.5μm以下である請求の範囲第1項記載の溶融押出材料。
  3. (A)が炭素原子に対するフッ素原子の比F/Cが0.1以上1.0未満であるフッ素化されたカーボンブラックであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶融押出材料。
  4. (A)が炭素原子に対するフッ素原子の比F/Cが0.1以上0.5未満であるフッ素化されたカーボンブラックであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶融押出材料。
  5. (A)の含有量が、1〜20重量%であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶融押出材料。
  6. (B)がエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体またはビニリデンフルオライド系重合体であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶融押出材料。
  7. 請求の範囲第1項記載の溶融押出材料を用いて形成してなる画像形成装置の感光部の転写ベルト。
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