JP3582486B2 - 成形部材、エンドレスベルト、画像形成装置用ベルト及び画像形成装置 - Google Patents

成形部材、エンドレスベルト、画像形成装置用ベルト及び画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性、寸法精度、耐屈曲性及び引張破断伸びなどの物性に優れ、OA機器の構成部品,機能部材、自動車の外装部品,内装材、家電機器の構成部材、フィルム及び、これらを成形するために用いる樹脂組成物ペレットなどをはじめ、エンジニアリングプラスチックの用いられる全ての用途に適用可能な成形部材と、このように優れた物性を有する無端(エンドレス)のエンドレスベルト及び該エンドレスベルトを用いた、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等に利用される中間転写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルト等の画像形成装置用ベルト並びにこの画像形成装置用ベルトを含む画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、OA機器の構成部品,機能部材、自動車の外装部品,内装材、家電機器の構成部材などには、各種熱可塑性樹脂が用いられてきた。
【0003】
熱可塑性樹脂は熱可塑性結晶性樹脂と熱可塑性非晶性樹脂に大別でき、熱可塑性結晶性樹脂は耐屈曲性や耐薬品性に優れるが成形収縮率が大きいので寸法安定性が悪く透明性を有さず、逆に熱可塑性非晶性樹脂は成形寸法安定性及び透明性に優れるが耐屈曲性が悪く耐薬品性が劣るなどの問題点を有しているとされてきた。しかしながら、多くの場合、成形部材には、耐屈曲性や耐薬品性及び成形寸法安定性等の全てに優れることが要求されていることから、従来においては、熱可塑性結晶性樹脂と熱可塑性非晶性樹脂とのアロイ化による物性改良の検討が種々なされ、一定の成果があげられてきた。
【0004】
これらの研究では、例えば熱可塑性エステル系樹脂の分野においてはエステル交換反応(共重合化)を促進させることで結晶性エステル系樹脂と非晶性エステル系樹脂を微分散化できることが報告されている。しかしながら、これまでの技術では、エステル交換(共重合化)を促進させると、解重合による低分子量体の生成が進行し、これにより得られる成形部材の発泡を伴ったり、分子鎖切断が進行して分子量低下による成形部材の機械物性低下(引張破断伸び率が小さくなるなど)を伴う等の不具合があり、エステル交換反応の促進による両樹脂の微分散化は、実用化されるには至っていない。
【0005】
このため、実際には、エステル交換反応を抑制することにより物性低下を防いだ成形部材が実用品として用いられているのが現状である。
【0006】
なお、ポリアミドとポリブチレンテレフタレートからなる樹脂組成物を固相状態で重合させることにより大きな引張破断伸びが得られる技術が知られている(特開昭51−103191号公報)が、同公報の比較例に示されるように、ポリアミドとポリエチレンテレフタレートとでは固相重合をしても良好な物性は得られないなど、特定の樹脂の組み合わせ以外に応用することは難しいとされてきた。
【0007】
ところで、OA機器等などの画像形成装置として、感光体、トナーを用いた電子写真方式や感光体を用いずにトナーを直接エンドレスベルト上に転写させるトナージェット方式が考案され上市されている。これらの装置には継ぎ目の有無に関わらず感光体ベルト、中間転写ベルト、搬送転写ベルト、転写分離ベルト、帯電チューブ、現像スリーブ、定着用ベルト、トナー転写ベルト等の導電性、半導電性、絶縁性の各種電気抵抗に制御したエンドレスベルトが用いられている。
【0008】
例えば、中間転写装置は、中間転写体上にトナー像を一旦形成し、次に紙等へトナーを転写させるように構成されている。この中間転写体の表層におけるトナーへの帯電、除電のためにエンドレスベルトよりなるエンドレスベルトが用いられている。このエンドレスベルトは、マシーンの機種毎に異なった表面抵抗率や厚み方向電気抵抗(体積固有抵抗率)に設定(導電、半導電、絶縁)されている。
【0009】
また、搬送転写装置は、紙を一旦搬送転写体上に保持した上で感光体からのトナーを搬送転写体上に保持した紙上へ転写させ、さらに除電により紙を搬送転写体より離すように構成されている。この搬送転写体表層においては紙への帯電、除電のためにシーム有り、無しのエンドレスベルトが用いられている。このエンドレスベルトは、上記と同様にマシーン機種毎に異なった表面抵抗率や厚み方向電気抵抗(体積固有抵抗率)に設定されている。
【0010】
図1は従来の中間転写装置の側面図である。図中、1は感光ドラム、6は導電性エンドレスベルトである。1の感光ドラムの周囲には、帯電器2、半導体レーザー等を光源とする露光光学系3、トナーが収納されている現像器4及び残留トナーを除去するためのクリーナー5よりなる電子写真プロセスユニットが配置されている。導電性エンドレスベルト6は、搬送ローラ7,8,9に掛け渡されて、矢印方向に回転する感光ドラムと同調して矢印方向に移動するようになっている。
【0011】
次に、動作について説明する。まず矢印A方向に回転する感光ドラム1の表面を帯電器2により一様に帯電する。次に、光学系3により図示しない画像読み取り装置等で得られた画像に対応する静電潜像を感光ドラム1上に形成する。静電潜像は現像器4でトナー像に現像される。このトナー像を、静電転写機10により導電性エンドレスベルト6へ静電転写し、搬送ローラ9と押圧ローラ12の間で記録紙11に転写する。
【0012】
電子写真式複写機等の導電性エンドレスベルトの場合には、機能上2本以上のロールにより高張力で長時間駆動されるため、十分な耐久性が要求される。さらに、中間転写装置等に使用される場合は、ベルト上でトナーによる画像を形成して紙へ転写するため、駆動時にベルトが弛んだり、伸びたりすると、画像ズレの原因となる。また、トナーの転写を静電気的に行うため、ある程度の導電性も必要である。
【0013】
このようなエンドレスベルトは、トナー画像を決定する重要部品であり、感光体、トナーとともに3大重要部品の一つと考えられている。
【0014】
そのため中間転写ベルトには次の▲1▼〜▲7▼が要求される。
▲1▼ 半導体領域にて所定の表面抵抗率と体積固有抵抗率を有していること。
▲2▼ トナー離型性を有していること。
▲3▼ 厚みが薄く均一であること。
▲4▼ 機械的強度が強い(割れにくい)こと。
▲5▼ 環境(温度湿度)による抵抗値の変動が少ないこと。
▲6▼ 低コストであること。
▲7▼ シームレスで真円なベルトであること。
【0015】
また、近年のマシーンの高速印刷化に伴い、ベルトを駆動する速度が速まり、ベルトの耐久性を向上させる必要が出てきている。
【0016】
特に、感光体を4つ並べたタンデム型の搬送転写、中間転写ベルトやトナージェット用ベルトでは高速で印刷できる点で注目されており、特に耐久性と画像ズレが重要となっている。
【0017】
このようなことから、画像形成装置の分野においては、上記要求特性を満たし、しかも安価な画像形成装置用エンドレスベルトの開発が望まれているが、従来においては、価格や、耐屈曲性等に代表される機械物性や、電気抵抗に代表される電気物性をすべて満足させるエンドレスベルトが未だ見出されていないのが現状である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形性、寸法精度、耐屈曲性及び引張破断伸びなどの物性に優れ、しかも安価でエンドレスベルトとして好適な成形部材及びエンドレスベルトと、このエンドレスベルトを用いた画像形成装置用ベルト及び画像形成装置を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の成形部材は、熱可塑性結晶性エステル系樹脂、熱可塑性非晶性エステル系樹脂及び重合触媒を加熱混練した後固化させ、その後、150℃以上、該熱可塑性結晶性エステル系樹脂の融点未満の温度で熱処理を施したことを特徴とする。
【0020】
即ち、本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、安価な熱可塑性エステル系樹脂に着目し、熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂と重合触媒を、加熱混練し、固化させた後、所定の温度で熱処理を施した成形部材は、屈曲特性などの物性が優れることを見出し、本発明に到達した。
【0021】
本発明における熱処理による作用効果は次の通りである。
【0022】
即ち、単なる2種類の樹脂を溶融混合して固相重合せしめるだけでは、前述のポリアミドとポリブチレンテレフタレートなどの特定の組み合わせでしか物性向上の効果は得られないことが知られている。
【0023】
本発明では、組み合わせる樹脂を熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂に特定し、エステルの重合能力を持つ重合触媒を混合した上で熱処理を施すことで、共重合化と高分子量化が進行し、安定に良好な物性が得られる。
【0024】
熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂とエステルの重合能力を持つ重合触媒を加熱混練、溶融成形すると、樹脂が受ける熱履歴により共重合化と高分子量化が進行し、高物性が発現するが、解重合も競争反応として生起する可能性があるので、「共重合化と高分子量化を促進し、解重合を抑制する熱履歴を与える加工条件」をその組成毎に見出さなければならず、適用可能な好条件範囲も狭く、使いこなしが難しい材料と言わざるを得なかった。
【0025】
しかしながら、熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂とエステルの重合能力を持つ重合触媒を、共重合化も高分子量化も解重合も抑制した低熱履歴条件で加熱混練してペレット等の固化物を得、この固化物に適切な熱処理を施した上で溶融成形に用いると、溶融加工に比べて緩やかな条件での熱処理で、共重合化と高分子量化が緩やかに進行する。このため、このペレットを溶融成形して得た成形部材は屈曲性に優れるなど高物性を発現する。また、熱処理が緩やかな条件であるため、熱処理中には解重合はほとんど進行しない。このような熱処理を施したペレット等の固化物を溶融成形する際も、非熱処理品に比べて解重合が進行しにくくなる。熱処理により、溶融成形時に解重合が進行しにくくなる理由の詳細は明らかではないが、熱処理時の共重合化と高分子量化の反応時に、成分中の重合触媒が触媒能を使い果たし、溶融成形時には、共重合化や高分子量化に対してもまた解重合に対しても触媒として既に作用し得なくなるためと推察される。
【0026】
本発明においては、この熱処理後に溶融成形して成形部材とするのが好ましい。また、この熱処理は不活性雰囲気下にて、更には減圧条件下にて行うのが好ましい。
【0027】
本発明において、各成分の配合割合は下記条件を満たしていることが好ましい。
【0028】
熱可塑性結晶性エステル系樹脂/熱可塑性非晶性エステル系樹脂の重量比が1/99〜99/1
重合触媒中の金属の全樹脂成分に対する含有割合が1ppm〜10000ppm
また、重合触媒はTi元素、特に、Ti元素とMg元素とを含有することが好ましい。
【0029】
また、熱可塑性結晶性エステル系樹脂としてはPAT(ポリアルキレンテレフタレート)、特に、PBT(ポリブチレンテレフタレート)が好ましく、熱可塑性非晶性エステル系樹脂としてはPC(ポリカーボネート)が好ましい。
【0030】
本発明の成形部材は、更に、導電性フィラーを1〜50重量%含有することが好ましい。
【0031】
本発明のエンドレスベルトはこのような本発明の成形部材よりなるものであり、この場合において、表面抵抗率が1〜1016Ωであり、かつ1本のエンドレスベルトにあっては該抵抗率の最大値が最小値の100倍以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の画像形成装置用ベルトは、このエンドレスベルトからなる中間転写ベルト、搬送転写ベルト又は感光体ベルトである。
【0033】
本発明の画像形成装置は、この画像形成装置用ベルトを備えるものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0035】
まず、本発明における各配合成分及びその配合割合について説明する。
【0036】
(熱可塑性結晶性エステル系樹脂)
本発明に用いる熱可塑性結晶性エステル系樹脂としては特に制限はなく、熱可塑性樹脂で主鎖又は側鎖にエステル骨格を有し、結晶性を有するものであれば良く、汎用の樹脂を用いることができる。なお、本発明で用いる熱可塑性結晶性エステル系樹脂とは、結晶化度が10%以上100%以下であるものを指す。
【0037】
具体的には熱可塑性結晶性エステル系樹脂の中でもPAT(ポリアルキレンテレフタレート)が好ましく、なかでもPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)はより好ましく、PBTは結晶化速度が速いので成形条件による結晶化度の変化が少なく、一般に30%前後と結晶化度が安定しているので特に好ましい。
【0038】
また、本発明に用いる熱可塑性結晶性エステル系樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で共重合成分を導入することもできる。具体的な例としてエステル結合を主鎖とし、ポリメチレングリコールなどのエステル結合を導入したものなどを挙げることができる。
【0039】
本発明に用いる熱可塑性結晶性エステル系樹脂の分子量に特に制限はなく、例えば、重量平均分子量10,000〜100,000程度の一般的な分子量の樹脂を用いることができるが、引張破断伸びなどの機械物性の高い要求がある場合には高分子量のものが好ましい。この場合の分子量は20,000以上が好ましく、25,000以上であればさらに好ましく、30,000以上であれば特に好ましい。
【0040】
(熱可塑性非晶性エステル系樹脂)
本発明に用いる熱可塑性非晶性エステル系樹脂としては特に制限はなく、熱可塑性樹脂で主鎖又は側鎖にエステル骨格を有し、非晶性のものであれば良く、汎用の樹脂を用いることができる。なお、本発明で用いる熱可塑性非晶性エステル系樹脂とは、結晶化度が10%未満であるものを指す。
【0041】
具体的にはPC(ポリカーボネート)やPAr(ポリアリレート)などのポリエステルやPMMA(ポリメチルメタクリレート)などの側鎖にエステル結合を有する樹脂を好適な例として挙げることができる。なかでもポリエステルが好ましく、特にPCは好適に用いることができる。
【0042】
また、本発明に用いる熱可塑性非晶性エステル系樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で共重合成分を導入することができる。具体的な例としてエステル結合を主鎖とし、ポリメチレングリコールなどエステル結合を導入したものなどを挙げることができる。
【0043】
本発明に用いる熱可塑性非晶性エステル系樹脂の分子量に特に制限はなく、例えば、重量平均分子量10,000〜100,000程度の一般的な分子量の樹脂を用いることができるが、引張破断伸びなどの機械物性の高い要求がある場合には高分子量のものが好ましい。この場合の分子量は20,000以上が好ましく、25,000以上であればさらに好ましく、30,000以上であれば特に好ましい。
【0044】
(熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂との重量比(以下「結合性樹脂/非晶性樹脂重量比」と称する場合がある。)
本発明に用いる熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂との重量比に特に制限はなく、結晶性樹脂/非晶性樹脂重量比1/99〜99/1の幅広い範囲を採用することができる。ただし、一般に熱可塑性結晶性エステル系樹脂は耐薬品性、耐屈曲性に優れ、熱可塑性結晶性エステル系樹脂は成形寸法安定性に優れるので、使用目的に応じ、任意の比率を設定することができるが、なかでも、結晶性樹脂/非晶性樹脂重量比が40/60〜97/3が好ましく、60/40〜95/5がさらに好ましく、70/30〜90/10が特に好ましい。
【0045】
このように、特に好ましい比率として熱可塑性結晶性エステル系樹脂の比率を多く選択しているのは、熱可塑性非晶性エステル系樹脂は少しの配合で十分に成形寸法安定性の改良効果が期待できること、熱可塑性非晶性エステル系樹脂のわずかな配合過多で塗装時の溶剤などの耐薬品性悪化の影響が顕著に出ることがあるなどの理由による。
【0046】
(熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂との粘度差)
両樹脂の粘度差が大きすぎると、製造条件を調整しても良好な分散が得られず、均一分散に至ることができなくなることがあるので、粘度差は小さい方が好ましい。
【0047】
具体的には両樹脂を同一条件でMFR測定し、値が1/20〜20/1程度の範囲に収まることが好ましく、1/10〜10/1の範囲となればさらに好ましい。
【0048】
測定方法としてはJIS K−7210に準拠し、測定温度条件は樹脂の加工温度に近い条件を選択することが好ましい。
【0049】
例えばPBTとPCを選択した場合、加工温度となる260℃を測定温度として設定し、両樹脂の粘度差を比較することが好ましい。また、荷重としては例えば2.16kgを選択することで好適に測定できる。
【0050】
(重合触媒)
重合触媒は、有機酸と水酸基とを縮合できる能力を有するものであれば、特に制限はなく、ポリエステル系重合触媒を用いることができる。重合触媒のなかでも、Ti系重合触媒は好ましく、Ti系重合触媒のなかでも活性が高いことからアルキルチタネートが好ましく、アルキルチタネートの中でもテトラブチルチタネート又はテトラキス(2−エチルヘキシル)オルソチタネートが特に好ましい。これらはTYZOR TOT(DuPont製)やTYZOR TBT(DuPont製)として市販品を容易に入手することができる。
【0051】
また、Ti系重合触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属含有化合物又は亜鉛含有化合物と組み合わせることで、より有効に作用するので好ましく、なかでもMg元素を含有する化合物を併用することが好ましい。
【0052】
Mg元素を含む化合物としては特に制限はないが有機酸Mg塩が特に好ましく、酢酸Mgが特に好ましい。
【0053】
(重合触媒の配合量)
重合触媒の含有量としては、少なすぎると有効に作用せず、熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂とが均一分散状態にならないことがあるので、ある程度高くする必要があり、重合触媒中の金属、例えばTi元素の重量割合が成形原料中の重合割合(熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂)に対し1ppm以上とするが、この割合が10ppm以上であればさらに好ましく、20ppm以上であれば特に好ましい。一方、エステル系樹脂は重金属の多量存在下により、解重合を起こすことがあるので、この割合はある程度は小さくする必要があり、上記金属元素割合が10000ppm以下とするが、この割合が1000ppm以下、特に500ppm以下であればさらに好ましい。なお、以下において、Ti系重合触媒のTi元素の成形原料中の重量割合を「Ti濃度」と称す場合がある。
【0054】
また、Ti系重合触媒を酢酸Mg等のMg含有化合物と併用する場合、その使用量は、Tiに対するMgのモル比でTi/Mg=8/2〜2/8が好ましく、5/5程度が最も好ましい。
【0055】
なお、重合触媒は結晶性エステル系樹脂あるいは非晶性エステル系樹脂に残査として存在している分を反応に利用することもできるが、樹脂中の残査だけでは十分な反応性を得られないことがあるので、加熱混練時に必要量を添加するのが好ましい。
【0056】
(導電性フィラー)
本発明において電気抵抗値を調整する必要がある場合には導電性フィラーを配合しても良い。特に画像形成装置に用いられるシームレスベルト等においては電気的にトナーや紙等を吸着、転写させるため、表面抵抗率や体積固有抵抗率を用途に合わせて調整する必要がある。
【0057】
配合する導電性フィラーとしては、用途に要求される性能を満たすものであれば特に制限はなく、各種のものを用いることができるが、具体的には、カーボンブラックやカーボンファイバー、グラファイトなどのカーボン系フィラー、金属系導電性フィラー、金属酸化物系導電性フィラーなどが用いられる。
【0058】
特に好ましい導電性フィラーは、分散性に優れているカーボンブラックである。
【0059】
カーボンブラックの種類としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが好適に使用でき、この中でも不純物としての官能基が少なくカーボン凝集による外観不良を発生しにくいアセチレンブラックが特に好適に使用できる。さらに一次粒子径が10〜100nm、比表面積10〜200m/g,pH値3〜11のものがより好ましい。
【0060】
また、使用するカーボンブラックは1種類であっても2種類であっても良い。さらには、カーボンブラックには樹脂を被覆したカーボンブラックや、黒鉛化処理したカーボンブラックや、酸性処理したカーボンブラック等の公知の後処理工程を施したカーボンブラックを用いても何ら問題はない。
【0061】
また、導電性フィラーの分散性を向上させる目的でシラン系、アルミネート系、チタネート系、又はジルコネート系等のカップリング剤で処理したカーボンブラック等の導電性フィラーを用いても良い。
【0062】
配合量としては、使用するカーボンブラックの物性により発現する抵抗値は変化するので、所望する抵抗値が得られるカーボンブラック濃度を見極めて設定する必要がある。本発明においては、成形原料中のカーボンブラックの割合(以下、「カーボンブラック濃度」と称す場合がある。)が、1〜50重量%、特に3〜30重量%、とりわけ10〜25重量%とするのが好ましい。上記範囲を超えると、製品の外観が悪くなり、また、材料強度が低下して好ましくない。
【0063】
(付加的配合材;任意成分)
本発明の成形部材を構成する樹脂組成物には、各種目的に応じて任意の配合成分を配合することができる。
【0064】
具体的には、イルガホス168,イルガノックス1010,リン系酸化防止剤(PEPQ)などの酸化防止剤、熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0065】
更に、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、第2,第3成分として各種熱可塑性樹脂、各種エラストマー、熱硬化性樹脂、フィラー等の配合材を配合することができる。
【0066】
付加成分としての熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロック又はランダム共重合体、ゴム又はラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンスチレンブロック共重合体又は、その水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ポリフッ素化ビニリデン、ポリフッ素化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種又はこれらの混合物からなるものが使用できる。
【0067】
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の1種又はこれらの混合物からなるものが使用できる。
【0068】
また、各種フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム(重質、軽質)、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラス繊維、ガラスビーズ、ベントナイト、アスベスト、中空ガラス玉、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、炭素繊維、アルミニウム繊維、スチレンスチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩等のフィラーの他、添加剤として酸化防止剤(フェノール系、硫黄系、リン酸エステル系など)、滑剤、有機・無機の各種顔料、紫外線防止剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、銅害防止剤、難燃剤、架橋剤、流れ性改良剤等を挙げることができる。
【0069】
(溶融混練、成形)
本発明においては、前述の熱可塑性結晶性エステル系樹脂、熱可塑性非晶性エステル系樹脂、重合触媒及び必要に応じて添加されるカーボンブラックや上記付加成分を加熱混練して固化させた後、熱処理を施して成形部材を得ることもできるが、これらの成分を加熱混練により成形部材として一度ペレット形状、ストランド形状、ブロック形状等の任意の形状に成形し、これを熱処理し、その後再度溶融成形して所望の形状の成形部材に成形しても良い。
【0070】
いずれの場合でも、溶融状態でないと、十分な分散ができないので、加熱温度はある程度は高い方が好ましく、具体的には結晶性エステル系樹脂の融点を目安に用いて、結晶性エステル系樹脂の融点以上とすることが好ましく、融点+20度以上であるとさらに好ましい。また、加熱温度が高すぎると熱分解を引き起こして物性劣化を招くことがあるので、ある程度は低い方が好ましく、具体的には結晶性エステル系樹脂の融点を目安に用いて、結晶性エステル系樹脂の融点+80度以下が好ましく、融点+60度以下であることがさらに好ましい。
【0071】
加熱混練の手段は、特に制限はなく公知の技術を用いることができる。例えば、まず結晶性エステル系樹脂、非晶性エステル系樹脂、重合触媒等の原料を加熱混練して樹脂組成物とする場合には、一軸押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、ブラストグラフ、ニーダーなどを用いることができる。また、こうして得た樹脂組成物から成形部材を得る場合でも公知の技術を用いることができる。例えば射出成形機、押し出し成形機などを用いることができる。
【0072】
また、特殊な場合として、先に熱可塑性結晶性エステル系樹脂と熱可塑性非晶性エステル系樹脂と重合触媒等により共重合化、高分子量化、解重合いずれも抑制した条件で成形して成形部材とした後で熱処理を施す手法も用いることができる。
【0073】
(熱処理)
本発明の熱処理は事実上固相重合に相当する処理であり、溶融すると解重合が促進することがあるので、処理温度は融点を有する結晶性エステル系樹脂の融点を指標とし、この融点未満とする。また、温度が低いと熱処理の効果が十分でないことから、150℃以上とし、好ましくは170℃以上、より好ましくは190℃以上とする。
【0074】
また、熱処理時に酸素が存在すると酸化劣化を伴うことがあるので酸素は少ない方が好ましく、窒素雰囲気下あるいはアルゴン雰囲気下あるいは減圧条件下で施すと好ましい。
【0075】
減圧条件下であれば、縮合時に副生する水や低分子量体を除去して固相重合を促進する効果も併せ持つので、低い温度で処理が可能になる或いは短い時間で処理が可能になるなどの利点があり、好ましい。
【0076】
減圧の程度に制限はないが、660hPa以下にすると減圧効果が発揮されるので好ましく、130hPa以下であるとさらに好ましく、13hPa以下であるとさらに好ましく、1.3hPa以下であると十分に効果が得られるので特に好ましい。
【0077】
なお、熱処理時間は、熱処理温度等によっても異なるが、通常は1〜100時間程度で十分である。
【0078】
(本発明の成形部材の用途)
本発明の成形部材の用途に特に制限はなく、OA機器の構成部品,機能部材、自動車の外装部品,内装材、家電機器の構成部材、汎用フィルムなどとして幅広く用いることができる。
【0079】
なおでも寸法精度,耐屈曲性,引張破断伸びなど要求物性の厳しいOA機器分野、特に機能部材には好適に用いることができ、例えばエンドレスベルト形状として、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等の画像形成装置に中間転写ベルト,搬送転写ベルト,感光体ベルトなどとして用いると、割れ,伸びなど不具合が少ないので好適である。
【0080】
(エンドレスベルト)
本発明の成形部材の好適な使用例の一例としてエンドレスベルトを挙げることができる。
【0081】
エンドレスベルトを得るには、熱可塑性結晶性エステル系樹脂、熱可塑性非晶性エステル系樹脂、重合触媒及び必要に応じて配合されるカーボンブラックやその他の付加成分を例えば二軸混練押出機により混合し、ペレット化した後に熱処理を施し、その後、エンドレスベルトとなるように成形する手法が特に好ましく用いられる。
【0082】
成形方法については、特に限定されるものではなく、連続溶融押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、あるいはインフレーション成形法など公知の方法を採用して得ることができるが、特に望ましいのは、連続溶融押出成形法である。特に押し出したチューブの内径を高精度で制御可能な下方押出方式の内部冷却マンドレル方式あるいはバキュームサイジング方式が好ましく、内部冷却マンドレル方式が最も好ましい。
【0083】
(エンドレスベルトの物性)
本発明によれば、以下のような物性を有するエンドレスベルトを得ることができる。
【0084】
・耐折回数
本発明に用いるエンドレスベルトを例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合には、耐屈曲性が悪いとクラックが発生して画像が得られなくなるので耐屈曲性の良好なエンドレスベルトが好ましい。
耐屈曲性の程度は、JIS P−8115の耐折回数の測定方法に従うことで定量的に評価でき、耐折回数の大きいエンドレスベルトほどクラックが入りにくく、耐屈曲性に優れていると判断することができる。
具体的な数値としては、500回以上あれば一応エンドレスベルトとして機能を発揮して使用することができるが、実用的には5000回以上が好ましく、10000回以上であれば更に好ましく、30000回以上であれば、特にクラックが発生しにくくなるので特に好ましい。
【0085】
・引張弾性率
エンドレスベルトの引張弾性率が低いと、例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合に張力により少し伸びが発生してしまい、色ズレなど不具合を発生することがあるので引張弾性率が高い方が好ましく、具体的には1000MPa以上が好ましく、1500MPa以上だとさらに好ましく、2000MPa以上だとさらに好ましく、2500MPa以上であれば色ズレなどの不具合を大幅に抑えることができるので特に好ましい。
一般に柔らかいプラスチックは耐折回数が高いが引張弾性率が低くなりやすく、逆に硬いプラスチックは高い引張弾性率を得られるが脆くなりやすく耐折回数は低いものしか得られないことが多い。本発明ではPBTやPCの有する固有の高い引張弾性率の特性を維持したまま、高い耐折回数を得ることができる意味で有用であると言える。
【0086】
・表面抵抗率
本発明に用いるエンドレスベルトでは、好ましくはカーボンブラックを配合することにより導電性を得ることができる。
抵抗領域は目的により異なるが、表面抵抗率1〜1×1016Ωの範囲から選定することが好ましい。
更に好ましい範囲は用途により異なるが、例えば感光体ベルトとして用いる場合には必要に応じて外表面の電荷を内表面に逃がせるように1〜1×10Ωと低い表面抵抗率が好ましく、中間転写ベルトとして用いる場合には帯電−転写の容易にできる1×10〜1×1011Ωが好ましく、搬送転写ベルトとして用いる場合には帯電しやすく高電圧でも破損しにくい1×1010〜1×1016Ωと高い領域が好ましい。
また、エンドレスベルト1本中の表面抵抗率の分布は狭い方が好ましく、それぞれの好ましい表面抵抗率領域において、1本中の最大値が最小値の100倍以内であることが好ましく、10倍以内であることが特に好ましい。
ベルトの表面抵抗率は例えばダイヤインスツルメント(株)製ハイレスタ,ロレスタやアドバンテスト(株)製R8340Aなどにより容易に測定することができる。
【0087】
・エンドレスベルトの厚み
エンドレスベルトの厚みは1〜1000μmが好ましく、10〜500μmが更に好ましく、100〜200μmであれば特に好ましい。
【0088】
(エンドレスベルトの用途)
本発明のエンドレスベルトは、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等の画像形成装置に中間転写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルトなどとして用いた場合、割れ、伸びなど不具合が少なく、長期に亘り安定に使用することができる。
【0089】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0090】
以下の実施例及び比較例では、下記の原料及び成形条件でエンドレスベルトを製造し、その評価を行なって結果を表1に示した。
【0091】
(原料)
原料は下記のものを用い、配合割合は表1の通りとした。
PBT:重量平均分子量40,000;PS換算重量平均分子量122,000
PC:重量平均分子量28,000;PS換算重量平均分子量 64,00
重合触媒:チタニウム(IV)ブトキシド,酢酸Mg
酸化防止剤:PEPQ(テトラキス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)4,4’−ビフェニリレンジホスホナイト);クラリアント ジャパン(株)製
【0092】
【化1】
Figure 0003582486
【0093】
カーボンブラック:デンカブラック;電気化学(株)製
【0094】
(加熱混練)
各原料を、二軸混練押出機(IKG(株)製 PMT32)を用いて樹脂組成物をペレット化した。混練条件は混練機の設定温度を240℃とし、スクリュー回転数100rpm、吐出速度15g/hとした。本条件での混練機内での溶融状態での滞留時間は平均で約2分程度である。
【0095】
(エンドレスベルトの成形方法)
この材料ペレットを130℃で8時間乾燥し、直径φ180mm、リップ幅1mmの6条スパイラル型環状ダイ付き40mmφの押出機により、環状ダイ下方に溶融チューブ状態で押し出し、押し出した溶融チューブを、環状ダイと同一軸線上に支持棒を介して装着した外径170mmの冷却マンドレルの外表面に接しめて冷却固化させつつ、次に、シームレスベルトの中に設置されている中子と外側に設置されているロールにより、シームレスベルトを円筒形に保持した状態で引き取りつつ340mm長の長さで輪切りにして下記記載の厚み及び滞留時間となるよう押出量、引き取り速度を調整し、直径169mmの樹脂製シームレスベルトとした。なお、エンドレスベルトの物性の滞留時間依存性を評価するため、滞留時間を調節し、下記の2種類の条件で成形した。
【0096】
条件A;滞留時間12分、厚み150μmを目標とし、±15μmとなるように調整して成形
条件B;滞留時間24分、厚み150μmを目標とし、±15μmとなるように調整して成形
この条件Bでは、条件Aより滞留時間が長くなるようスクリューの回転を遅くして成形すると共に、条件Aとベルト厚みが同じになるように引取速度も遅く調整して成形した。
【0097】
(評価)
評価は必要に応じ、エンドレスベルトを適当な大きさに切り開いて実施した。
【0098】
・耐折回数
JIS P−8115準拠
各サンプルで3回づつ測定し、平均値(有効数字2桁)を代表値とした。耐折回数は耐屈曲疲労性の指標で数字が大きいほど割れにくく丈夫であることを意味する。
【0099】
・厚み
東京精密(株)製のマイクロメーターを用いてシームレスベルトの円周方向20mmピッチで測定
【0100】
・表面抵抗率
表面抵抗率は測定器により好適に測定できる領域が異なるので以下のように使い分けた。測定時間は10秒とし、得られたベルトの円周方向20mmピッチにて測定した。
【0101】
1〜10Ωとなるサンプル :ダイヤインスツルメント(株)製 ロレスタ(商品名)
10〜1013Ωとなるサンプル :ダイヤインスツルメント(株)製 ハイレスタ(商品名)(印加電圧500V)
1013〜1016Ωとなるサンプル:アドバンテスト(株)製 微少電流測定器 R8340A (商品名)(JIS電極)(印加電圧500V)
【0102】
比較例1
表1の配合で、まず、成形条件Aで表面抵抗を10Ω程度に調整してエンドレスベルトを成形した。この表面抵抗のエンドレスベルトは中間転写ベルトとして好適に用いることができる。
【0103】
この比較例1では、Ti系重合触媒は配合しなかったので、共重合化、高分子量化の反応は生じなかったと考えられる。得られた成形部材の耐折回数は2800回であった。また、成形条件Bにおいても条件A品とほぼ同物性のエンドレスベルトを得ることができた。
【0104】
本比較例のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして画像形成装置に搭載したところ、良好な初期画像を得た。さらに連続で画像出力を続けたが、約2万枚出力した時点でエンドレスベルトにクラックが発生し、画像出力ができなくなった。
【0105】
本樹脂組成物ペレットは成形条件が多少変化してもベルトの物性があまり変化しないので熱的に安定で扱いやすい意味で好ましい材料といえる。
【0106】
ただし、耐折回数2800回程度なので、中間転写ベルトとしては初期物性は実用性能を有するが、連続使用によりクラックが発生するので、市場では、交換部品として扱わざるを得ず、物性的には不十分であるといえる。
【0107】
比較例2
比較例1の配合を基準とし、Ti系重合触媒をTi濃度98ppm配合し、2種類の条件でエンドレスベルト成形を試みた。
【0108】
その結果、条件Aでは、比較例1と異なり成形品の耐折回数は12000万回と飛躍的に高い値を得ることができた。これは、樹脂の受けた熱履歴が、樹脂の共重合化と高分子量化を促進し、高物性に寄与していることが考えられる。
【0109】
しかしながら、成形条件Bの成形では、ダイ出口から出てきた樹脂は劣化が激しく、ドローダウンしてしまい、エンドレスベルトを得ることはできなかった。これは長時間の滞留では競争反応となる解重合の方が優先してしまったと考えられる。
【0110】
本比較例2は成形条件を選べば良好なエンドレスベルトを得ることができる点で優れているが、良好なエンドレスベルトを得ることのできる成形条件幅が狭く、成形条件が好適な範囲からずれると極度に劣化してしまい、全く使うことができなくなるので、実用上扱いにくい点が問題となる。
【0111】
実施例1
比較例2と同様にして製造したペレットを熱風乾燥機にて200℃で22時間熱処理した後、乾燥槽から取り出し、常温まで冷ました。この熱処理は、解重合を伴わない緩やかな条件で共重合化と高分子量化を施すための処置で、溶融成形中に加水分解をさせないために吸水水分を除去するための乾燥処置とは根本的に異なる。
【0112】
次に、この熱処理を施したペレットを用い、2種類の条件でエンドレスベルト成形を試みた。各成形前に吸水水分除去を目的に改めて熱処理ペレットを、120℃で6時間熱風乾燥機で乾燥した。
【0113】
その結果、成形条件Aでは比較例2と同様、耐折回数の高い良好なエンドレスベルトを得ることができた。
【0114】
また、比較例2と異なり、成形条件Bでもドローダウンすることなく、耐折回数の高い良好なエンドレスベルトを得ることができた。
【0115】
本実施例1は、成形条件が変わっても、安定して良好な物性のエンドレスベルトを得ることができる点で、比較例2より優れると云える。即ち、好適な成形条件の範囲が広いことは実用性が高く、高価値である。これは、実施例1での熱処理は融点より低い温度での緩やかな条件での反応なので、競争反応となる解重合の進行が緩く、事実上、高耐久化を発現する共重合化と高分子量化の反応のみが優先して進行したと考えられる。また、熱処理を施したペレットが溶融成形時の長時間の熱履歴で解重合による劣化が急激に進行しない理由は明らかではないが、熱処理時の共重合化と高分子量化の反応時に成分中の重合触媒が触媒能を使い果たし、共重合化と高分子量化に対しても解重合に対しても触媒として既に作用し得なくなったためではないかと考えられる。
【0116】
実施例2
比較例2で得た混練ペレットを熱風乾燥機にて2.6×10Paの減圧下、150℃で6時間熱処理を施した後、熱処理を施したペレットを乾燥機から取り出し、常温まで冷ました。次に、この熱処理を施したペレットを用い、2種類の条件でエンドレスベルト成形を試みた。各成形前に吸水水分除去を目的に改めて熱処理ペレットを、120℃で6時間熱風乾燥機で乾燥した。
【0117】
その結果、実施例1と同様、良好なエンドレスベルトを得ることができた。
【0118】
実施例1が常温で熱処理したのに対し、実施例2では減圧環境下で熱処理を施した。共重合化や高分子量化は脱水反応となるので、減圧することは発生する水を除去できるのでドライビングフォースとなっている。そのため、150℃で6時間と云う実施例1に比べて低温短時間で同様の効果を得ることができたと考えられる。
【0119】
【表1】
Figure 0003582486
【0120】
【発明の効果】
以上の実施例及び比較例からも明らかな通り、本発明によると、成形性、寸法精度、耐屈曲性及び引張破断伸びなどの物性に優れ、溶融混合時の反応による物性劣化を抑えたエンドレスベルト等の成形部材と、このエンドレスベルトを用いた画像形成装置用ベルトと、この画像形成装置用ベルトを用いた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の中間転写装置の側面図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム
2 帯電器
3 露光光学系
4 現像器
5 クリーナー
6 導電性エンドレスベルト
7,8,9 搬送ローラ

Claims (15)

  1. 熱可塑性結晶性エステル系樹脂、熱可塑性非晶性エステル系樹脂及び重合触媒を加熱混練した後固化させ、その後、150℃以上、該熱可塑性結晶性エステル系樹脂の融点未満の温度で熱処理を施したことを特徴とする成形部材。
  2. 請求項1において、該熱処理後に、溶融成形してなることを特徴とする成形部材。
  3. 請求項1又は2において、該熱処理を不活性雰囲気下で施したことを特徴とする成形部材。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、該熱処理を減圧条件下で施したことを特徴とする成形部材。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、各成分の配合割合が下記条件を満たしていることを特徴とする成形部材。
    熱可塑性結晶性エステル系樹脂/熱可塑性非晶性エステル系樹脂の重量比が1/99〜99/1
    重合触媒中の金属の全樹脂成分に対する含有割合が1ppm〜10000ppm
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において該重合触媒がTi元素を含有することを特徴とする成形部材。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項においてTi元素とMg元素とを含有することを特徴とする成形部材。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項において、熱可塑性結晶性エステル系樹脂がPAT(ポリアルキレンテレフタレート)であることを特徴とする成形部材。
  9. 請求項8において、該PATがPBT(ポリブチレンテレフタレート)であることを特徴とする成形部材。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項において、熱可塑性非晶性エステル系樹脂がPC(ポリカーボネート)であることを特徴とする成形部材。
  11. 請求項1ないし10のいずれか1項において、導電性フィラーを1〜50重量%含有することを特徴とする成形部材。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の成形部材よりなることを特徴とするエンドレスベルト。
  13. 請求項12において、表面抵抗率が1〜1×10Ωであり、かつ1本のエンドレスベルトにあっては該抵抗率の最大値が最小値の100倍以下であることを特徴とするエンドレスベルト。
  14. 請求項12又は13のエンドレスベルトからなる画像形成装置用中間転写ベルト、搬送転写ベルト、又は感光体ベルトである画像形成装置用ベルト。
  15. 請求項14に記載の画像形成装置用ベルトを含むことを特徴とする画像形成装置。
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