JP2002202668A - エンドレスベルト、画像形成装置用ベルト及び画像形成装置 - Google Patents

エンドレスベルト、画像形成装置用ベルト及び画像形成装置

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JP2002202668A
JP2002202668A JP2000401135A JP2000401135A JP2002202668A JP 2002202668 A JP2002202668 A JP 2002202668A JP 2000401135 A JP2000401135 A JP 2000401135A JP 2000401135 A JP2000401135 A JP 2000401135A JP 2002202668 A JP2002202668 A JP 2002202668A
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endless belt
belt
resin
sea
island structure
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JP2000401135A
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English (en)
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Makoto Morikoshi
誠 森越
Norihiro Otsu
紀宏 大津
Kouichi Sakogawa
佐子川  広一
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Yuka Denshi Co Ltd
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Yuka Denshi Co Ltd
Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐屈曲性や耐薬品性、成形寸法安定性、電気
抵抗安定性並びにこれらの特性の外部環境に対する安定
性に優れ、低価格なエンドレスベルトと、このエンドレ
スベルトを用いた画像形成装置用ベルトと、この画像形
成装置用ベルトを用いた画像形成装置を提供する。 【解決手段】 2種以上の樹脂で構成され、該2種以上
の樹脂による海島構造が形成されているエンドレスベル
トにおいて、該エンドレスベルトの表面部と厚み方向の
中央部とで異なる海島構造が形成されているエンドレス
ベルト。このエンドレスベルトを用いた画像形成装置用
ベルトと、この画像形成装置用ベルトを用いた画像形成
装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形寸法安定性及
び耐屈曲性などの物性に優れた無端(エンドレス)のエ
ンドレスベルト及び該エンドレスベルトを用いた、電子
写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミ
リ機等に利用される中間転写ベルト、搬送転写ベルト、
感光体ベルト等の画像形成装置用ベルト並びにこの画像
形成装置用ベルトを含む画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来よりOA機器等などの画像形成装置
として、感光体、トナーを用いた電子写真方式や感光体
を用いずにトナーを直接エンドレスベルト上に転写させ
るトナージェット方式が考案され上市されている。これ
らの装置には継ぎ目の有無に関わらず感光体ベルト、中
間転写ベルト、搬送転写ベルト、転写分離ベルト、帯電
チューブ、現像スリーブ、定着用ベルト、トナー転写ベ
ルト等の導電性、半導電性、絶縁性の各種電気抵抗に制
御したエンドレスベルトが用いられている。
【0003】例えば、中間転写装置は、中間転写体上に
トナー像を一旦形成し、次に紙等へトナーを転写させる
ように構成されている。この中間転写体の表層における
トナーへの帯電、除電のためにシームレスベルトよりな
るエンドレスベルトが用いられている。このシームレス
ベルトは、マシーンの機種毎に異なった表面電気抵抗や
厚み方向電気抵抗(体積電気抵抗)に設定(導電、半導
電、絶縁)されている。
【0004】また、搬送転写装置は、紙を一旦搬送転写
体上に保持した上で感光体からのトナーを搬送転写体上
に保持した紙上へ転写させ、さらに除電により紙を搬送
転写体より離すように構成されている。この搬送転写体
表層においては紙への帯電、除電のためにシーム有り、
無しのエンドレスベルトが用いられている。このエンド
レスベルトは、上記と同様にマシーン機種毎に異なった
表面電気抵抗や厚み方向電気抵抗(体積電気抵抗)に設
定されている。
【0005】図4は従来のエンドレスベルトよりなる中
間転写ベルトを用いた電子写真装置の側面図である。図
中、1は感光ドラム、6は導電性エンドレスベルトであ
る。1の感光ドラムの周囲には、帯電器2、半導体レー
ザー等を光源とする露光光学系3、トナーが収納されて
いる現像器4及び残留トナーを除去するためのクリーナ
ー5よりなる電子写真プロセスユニットが配置されてい
る。導電性エンドレスベルト6は、搬送ローラ7,8,
9に掛け渡されて、矢印方向に回転する感光ドラムと同
調して矢印方向に移動するようになっている。
【0006】次に、動作について説明する。まず矢印A
方向に回転する感光ドラム1の表面を帯電器2により一
様に帯電する。次に、光学系3により図示しない画像読
み取り装置等で得られた画像に対応する静電潜像を感光
ドラム1上に形成する。静電潜像は現像器4でトナー像
に現像される。このトナー像を、静電転写機10により
導電性エンドレスベルト6へ静電転写し、搬送ローラ9
と押圧ローラ12の間で記録紙11に転写する。
【0007】ところで、電子写真式複写機等の画像形成
装置の導電性エンドレスベルトの場合には、機能上2本
以上のロールにより高張力で長時間駆動されるため、十
分な耐久性が要求される。さらに、中間転写装置等に使
用される場合は、ベルト上でトナーによる画像を形成し
て紙へ転写するため、駆動時にベルトが弛んだり、伸び
たりすると、画像ズレの原因となる。また、トナーの転
写を静電気的に行うため、ある程度の導電性も必要であ
る。
【0008】このようなエンドレスベルトは、トナー画
像を決定する重要部品であり、感光体、トナーとともに
3大重要部品の一つと考えられている。
【0009】そのため中間転写ベルトには次の〜が
要求される。 半導体領域にて所定の表面抵抗率と体積抵抗率を有
していること。 トナー離型性を有していること。 厚みが薄く均一であること。 機械的強度が強い(割れにくい)こと。 環境(温度湿度)による抵抗値の変動が少ないこ
と。 低コストであること。 シームレスで真円なベルトであること。
【0010】また、近年のマシーンの高速印刷化に伴
い、ベルトを駆動する速度が速まり、ベルトの耐久性を
向上させる必要が出てきている。
【0011】特に、感光体を4つ並べたタンデム型の搬
送転写、中間転写ベルトやトナージェット用ベルトでは
高速で印刷できる点で注目されており、特に耐久性と画
像ズレが重要となっている。
【0012】現在までエンドレスベルトとしては、例え
ば、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、
エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリカーボ
ネート、ポリエステル等の樹脂組成物中に、アセチレン
ブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等
のカーボンブラックを添加し、これを数十〜数百μm程
度の厚さに成形することで所定の電気抵抗率(表面抵抗
率、体積抵抗率)に設定したベルトを中間転写体用ベル
ト、紙搬送とトナー転写を兼ねた搬送転写用ベルトを得
ていることが知られている(特開昭63−311267
号公報、特開平5−170946号公報、特開平6−2
28335号公報等)。
【0013】なお、エンドレスベルトの作製方法として
は次のような方法が考えられている。
【0014】(i) 回転成形法(又は遠心成形法とも表
現する場合がある) 円筒状金型の内周面に溶液を溶かした樹脂を入れ、金型
を回転させながら温度を加え、溶媒を半分以上揮発させ
てから金型の内部よりシームレス状のチューブを取り出
す工程と、別の円筒状金型の外部にシームレスチューブ
を装着し、温度を加えて熱硬化反応をさせる工程とから
なる(特開昭60−170862号公報)。この方法
は、主にポリイミド製転写ベルトの製造に用いられる。
【0015】(ii) 押出成形法 導電性フィラーをコンパウンドした樹脂を環状に溶融押
出しする方法である。この方法は、主にエチレンテトラ
フルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポ
リカーボネート系、ポリエステル系、ポリイミド系転写
ベルトの作製方法に用いられている。
【0016】(iii) ディッピング法 樹脂溶液を円筒状又は円柱状金型外面にディッピング塗
布等により一定厚みに塗布し、加熱成膜した後、金型よ
り成膜したチューブ状フィルムを引き抜く方法である。
この方法は、主にポリフッ化ビニリデン製転写フィルム
の作製に用いられている。
【0017】(iv) ゴム押出し成形法 ポリウレタンゴムを筒状に押し出し加硫した後、表面研
磨し、再外層表面にフッ素樹脂等をコートする方法が報
告されている(電子写真学会誌33(1)43(199
4))。
【0018】従来、このような導電性エンドレスベルト
としては、熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂にカーボン
ブラックなどの導電性フィラーを配合して成形したもの
が主として用いられている。なかでも、熱可塑性樹脂を
主成分にしたものは、連続成形が容易であり、広く用い
られてきた。熱可塑性樹脂の中でも熱可塑性非晶性樹脂
は、熱可塑性結晶性樹脂よりも寸法精度に優れる。この
ような熱可塑性非晶性樹脂製エンドレスベルトとして
は、例えばポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂に導
電性のカーボンブラックを配合し、円筒ダイを用いて筒
状フィルムに押出成形し、この筒状フィルムを輪切りに
したものが知られている(特開平3−89357号公報
等)。
【0019】しかしながら、熱可塑性樹脂非晶性樹脂は
熱可塑性結晶性樹脂よりも寸法精度には優れるが、耐屈
曲性に劣り、例えば中間転写ベルトなどとして電子写真
に用いた場合、使用中にクラックが発生しやすい。
【0020】この問題点を解決すべく、ポリカーボネー
トとポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテ
レフタレートとを配合してなるエンドレスベルトが提案
されている(特開平4−313757号公報、特開平6
−149083号公報)。
【0021】しかしながら、ポリカーボネート(以下、
PCということがある。)とポリブチレンテレフタレー
ト(以下、PBTということがある。)等のポリアルキ
レンテレフタレート(以下、PATということがあ
る。)とを配合してなるエンドレスベルトは、上記のポ
リカーボネートからなるエンドレスベルトよりも耐屈曲
性が改良されているものの、改良の効果がまだ不十分で
ある。また、ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、結
晶性が高いので、その配合量を多くするとエンドレスベ
ルトの寸法精度が低くなる。
【0022】なお、一般的な知見として、熱可塑性樹脂
は結晶性熱可塑性樹脂と非晶性熱可塑性樹脂に大別で
き、結晶性熱可塑性樹脂は耐屈曲性や耐薬品性に優れる
が成形収縮率が大きいので寸法安定性が悪く透明性を有
さず、逆に非晶性熱可塑性樹脂は成形寸法安定性及び透
明性に優れるが耐屈曲性が悪く耐薬品性が劣るなどの問
題点を有しているとされてきた。
【0023】しかしながら、多くの場合、耐屈曲性や耐
薬品性及び成形寸法安定性全てに優れることが要求され
ている。
【0024】これらの要求を満たすために、これまで結
晶性熱可塑性樹脂と非晶性熱可塑性樹脂とのアロイ化に
よる物性改良の検討が種々なされ、一定の成果があげら
れてきた。
【0025】これらの研究では、例えば熱可塑性エステ
ル系樹脂の分野においてはエステル交換反応(共重合
化)を促進させることで結晶性エステル系樹脂と非晶性
エステル系樹脂を微分散化できることが報告されてい
る。しかしながら、これまでの技術ではエステル交換
(共重合化)を促進させると、解重合による低分子量体
発生がエンドレスベルトの発泡を伴ったり、分子鎖切断
が進行して分子量低下によるエンドレスベルトの機械物
性低下(引張破断伸率が小さくなるなど)を伴う等の理
由により事実上実用化されるには至っていなかった。
【0026】このため、実際にはエステル交換反応を抑
制することで物性低下を防いだ樹脂製品が実用品として
用いられてきた。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】ポリカーボネート(以
下PCと記載する。)からなるエンドレスベルトでは、
耐屈曲性が悪く、ローラにてベルトを駆動させているう
ちにベルトにクラックが入り破損するといった問題があ
った。
【0028】ポリアルキレンテレフタレート(以下PA
Tとする)からなるエンドレスベルトでは、PCベルト
より耐屈曲性が改良されているものの近年の装置寿命ま
で使用できるエンドレスベルトとしての市場ニーズを十
分満足させたレベルには達していなかった。
【0029】フッ素樹脂からなるエンドレスベルトで
は、耐屈曲性は満足させているもののヤング率が100
0〜1400MPaと低く、張力を架けると伸び易く、
色ズレを起こしたり、トナーが変形された状態で紙へ転
写されることがあったりする問題があった。
【0030】ポリイミド(以下PI)からなるエンドレ
スベルトでは、耐屈曲性は満足させているものの熱硬化
性樹脂のため連続成形ができないことと、プラスチック
の中で最も高価であること等に高価格のベルトになって
しまう問題があるのに加え、弾性率が約6000MPa
と高いため、ベルトを駆動する際にモータ負荷がかかる
ためか厚み設定を薄くするしかなく、一旦ローラとベル
ト間にゴミが入り込んだり、感光体との摩擦による傷等
が入るとクラックが入り易く信頼性に問題があった。
【0031】ゴムからなるエンドレスベルトでは、トナ
ー離型性が悪く、積層にする等の方法により解決しよう
と試みられているが、そのために加硫、表面研磨、外層
フッ素樹脂コート等工程が複雑となってしまい高価格と
なり易いことと、弾性率が低く伸び易いこと等の問題が
あった。
【0032】OA機器などの画像形成装置では、価格
や、耐屈曲性、ヤング率といった機械特性に加え、電気
特性が非常に重要であり、電気抵抗値がある範囲に均一
にコントロールされていなければならない。そのために
は、カーボンブラックや金属酸化物等の各種導電性フィ
ラーを添加させる検討されているが、導電性フィラーを
樹脂に混ぜると樹脂との親和性の無さが影響し、益々耐
屈曲性等の機械物性が低下するといった問題があった。
【0033】さらには、近年プリンター、複写機等につ
いては世界中に商品が出回るため温度5〜40℃、湿度
20〜90%といった広い温度及び湿度等の外部環境を
想定した部品設計、マシーン設計をする必要がある。
【0034】しかしながら、このような広い温度や湿度
等の外部環境下においても、耐屈曲性、ヤング率等に代
表される機械物性や、電気抵抗に代表される電気物性
や、寸法特性を満足し得る低価格なエンドレスベルトは
未だ提供されていないのが現状である。
【0035】このため、従来のエンドレスベルトでは、
中間転写ベルトや搬送転写ベルトとして画像形成装置に
組み込まれた場合に、夏場と冬場の外部環境の差で画像
が変化するといった問題や、一度夏場使用した画像形成
装置は、冬場には画像特性が変化したり、耐久性が急激
に悪化するといった問題があった。
【0036】本発明の目的は、耐屈曲性や耐薬品性、寸
法安定性、電気抵抗及びこれらの特性の外部環境安定性
に優れ、しかも安価なエンドレスベルトと、このエンド
レスベルトを用いた画像形成装置用ベルト及び画像形成
装置を提供するものである。
【0037】
【課題を解決するための手段】本発明のエンドレスベル
トは、2種以上の樹脂で構成され、該2種以上の樹脂に
よる海島構造が形成されているエンドレスベルトにおい
て、該エンドレスベルトの表面部と厚み方向の中央部と
で異なる海島構造が形成されていることを特徴とする。
【0038】本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意
検討した結果、機械的ストレスや電気的なストレスによ
る耐久性に優れ、かつ画像形成装置が使用される温度、
湿度等の外部環境の変化による物理的寸法変化、電気特
性変化、機械特性変化の少ないベルトの特性として、エ
ンドレスベルトの断面における表面部と厚み方向中央部
分とのアロイ相構造に着目して検討した結果、結晶性樹
脂のガス非透過性効果と非晶性樹脂の低収縮性特性を両
立させ、かつ機械的強度を有し、しかも電気特性が安定
したエンドレスベルトに必要な相形態は、エンドレスベ
ルトの断面における表面部と厚み方向中央部分とのアロ
イ相構造の海島構造が異なることが重要であることを見
出した。
【0039】即ち、ベルト断面における表面部と厚み方
向中央部分とが同じ海島構造であるものよりも、これら
が互いに異なる海島構造であることが、結晶性樹脂のガ
ス非透過性効果と非晶性樹脂の低収縮性特性とを効果的
に発揮させ、広範な外部環境条件下で寸法収縮が起こり
にくく、電気的に安定であるとともに、耐屈曲性に優れ
たエンドレスベルトを実現する上で重要であること、特
に、表面部分が層状で規則性があり、厚み方向の中央部
分がランダム状の海島構造の相形態であることが好適で
あることが判明した。
【0040】以下にこの海島構造の検討経過について説
明する。
【0041】1) 機械特性とアロイ相構造について 高弾性率を有しながら耐屈曲性の優れた機械特性を得る
ために、まず、最近のエンプラ(エンジニアリングプラ
スチック)アロイのモルフォロジーに着目した。つま
り、結晶性エンプラと非晶性エンプラをアロイ化により
共重合(ランダム、グラフト或いはブロック共重合)さ
せた構成のエンドレスベルトが最も安価で耐屈曲性の優
れたエンドレスベルトができるはずであるとの知見に基
づいて鋭意検討した結果、結晶性ポリエステル系樹脂と
他樹脂(例えば非晶性ポリエステル系樹脂)とのアロイ
化においてある特殊なコンパウンド条件にてペレット化
し、ある特殊な成形条件にて作られた時に耐屈曲性の優
れ、高引張り弾性率を維持した低コストで伸びにくいク
ラックの入りにくいエンドレスベルトになりうることを
見出した。
【0042】一般に、通常のプラスチックスのアロイ
は、相溶性アロイと非相溶性アロイとの2種に大別でき
る。
【0043】非相溶性アロイでは、2種類の熱可塑性樹
脂を溶融混合しても完全には混じり合わず、海島構造を
とることが知られている。両熱可塑性樹脂の体積分率に
大きな差がある場合は体積分率の大きい方が海で体積分
率が小さい方が島の構造をとり易く、体積分率の差が小
さい場合は溶融粘度差が海島構造に影響を与え、溶融粘
度の小さい方が海に、大きい方が島になり易いといわれ
ている。
【0044】この非相溶性アロイでは、必ず異種材料間
の海島の境界面が存在するのでその界面が最も破断し易
く耐屈曲性を低下させる原因を作っていると推測され
る。そこで本発明者等はその界面をグラフト重合、ブロ
ック重合等で補強することにより耐屈曲性に優れたエン
ドレスベルトができあがるはずであると推量した。
【0045】一方、相溶性アロイでは、異種材料間の界
面が存在せず、通常海島構造が認められない。このよう
な相溶状態の材料は耐屈曲性に代表される機械物性等は
双方の材料の配合割合に準じた物性になるといわれてい
る。そのため飛躍的な耐屈曲性の改善は見込まれそうに
ないため、本発明者等は相溶し、かつ共重合化していれ
ば耐屈曲性に代表される機械物性は大幅に改善されるは
ずであると推量した。
【0046】つまり非相溶性、相溶性いずれのアロイ化
材料でも共重合状態を作ってやることが最も機械的物性
に優れたエンドレスベルトができあがるはずであるとの
考えに至り実証すべく鋭意検討した。
【0047】そこで、まず低価格であるポリエステル系
樹脂に着目した。
【0048】一般にポリエステル系樹脂のアロイでは、
エステル交換反応と呼ばれるお互いの分子切断が行われ
相互に交換し合うことが知られている。また、このエス
テル交換反応は、一般的に分子鎖分断を伴うので結果と
して発泡したり脆くなったりして機械的物性を低下させ
る原因となっているともいわれている。
【0049】しかし、本発明者等はこのエステル交換反
応には共重合的な反応も同時進行しているはずであると
考え、ある特定の条件を設定すれば、分子鎖切断等によ
る機械的物性低下を抑制しつつエステル交換反応をさら
に共重合反応へと移行させることができるのではないか
との推測のもとに材料、コンパウンド条件、成形条件を
検討した結果、同じ配合のエンプラを用いて、海島構
造を有する構造のもの、海島構造を有しているが界面
が共重合化している構造のもの、海島構造が見受けら
れないものができることがわかり、それぞれについて耐
屈曲性に代表される機械物性がよりが、またより
が高くなっていることが判明した。
【0050】さらには、或いはの構造体では、導電
性フィラー等の第3成分を添加しても機械的な強度低下
は殆どないことが判明した。
【0051】さらには、導電性フィラーを添加しある特
定の電気抵抗に制御させた場合でも上記或いはの構
造体であれば導電性フィラーが共重合化された樹脂成分
に固定されているため、電気的にも安定であり経時的に
も変化が少ないことが判明した。
【0052】さらには、このような構造体であっても、
導電性フィラーの濃度コントロールや成形加工の条件変
更等による従来の技術を用いた電気抵抗制御にて任意に
設定できることが判明したのである。
【0053】また、これらの技術を用いることにより、
引張り弾性率、厚み、引張り破断伸びをコントロールす
るエンドレスベルトが可能となり、これらの物性とエン
ドレスベルトの画像ズレ、耐久性の関係を検証すること
ができた。
【0054】その結果、ある特定の引張り弾性率、厚
み、引張り破断伸び、耐屈曲性を有したベルトのみが長
時間画像ズレ、クラックの発生しないエンドレスベルト
になりうることを見出した。
【0055】しかしながら、外部環境のうち、特に湿度
条件により、ベルトの機械物性、寸法特性、電気特性に
バラツキが発生することが判明したため、次にベルト断
面方向のアロイ相構造に着目しガス透過性とアロイ構造
について検討した。
【0056】2) 外部環境特性とアロイ相構造につい
て 外部環境のうち、特に湿度条件により、ベルトの機械物
性、寸法特性、電気特性にバラツキが発生することが判
明したため、何らかのガス透過性がベルト物性に影響を
与えているのではないかと考え、ガス透過性に影響を与
えない構造にするための相構造を検討した結果、単層構
造体であってもベルト外表面側と中層側の海島構造が異
なる場合には、温度、湿度の環境変動があっても、機械
特性、電気特性、寸法特性を満足できる特性範囲に抑え
ることができることを見出し、本発明のエンドレスベル
トに想到した。
【0057】更には、エンドレスベルトをその円周方向
に切断した厚み断面における相形態において、ベルト表
面部の海島構造が略円形の島部分を有する海島構造であ
り、ベルト中央部の海島構造が略楕円形状の島部分を含
有する海島構造であるエンドレスベルトが、低収縮性に
大きく寄与していることから好ましく、とりわけ、エン
ドレスベルトをその幅方向に切断した厚み断面における
相形態において、ベルト表面部の海島構造が該表面に沿
う層状の島部分を有する海島構造であり、ベルト中央部
の海島構造が略楕円形状の島部分を含有する海島構造で
あるエンドレスベルトが好ましいことが判明した。
【0058】本発明の画像形成装置用ベルトは、このエ
ンドレスベルトからなる中間転写ベルト、搬送転写ベル
ト、感光体ベルト又は定着ベルトである。
【0059】本発明の画像形成装置は、この画像形成装
置用ベルトを含んでなるものである。
【0060】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のエンドレスベル
トについて、各項目毎に詳細に説明する。
【0061】(1) アロイ分散形態(海島構造) 一般に、2種類の熱可塑性樹脂を溶融混合すると、完全
に混じり合う場合(以下「完全相溶化」と称す場合があ
る。)と完全に混じり合わず海島構造をとる場合があ
る。
【0062】後者において、一般に両熱可塑性樹脂の体
積分率に大きな差がある場合は体積分率の大きい方が海
で体積分率が小さい方が島の構造をとりやすく、体積分
率の差が小さい場合は溶融粘度差が海島構造に影響をあ
たえ、溶融粘度の小さい方が海に、大きい方が島になり
やすいと言われている。
【0063】そして、海島構造体が形成されるように材
料調整を行った場合において、得られる海島構造の海と
島の形状は、成形加工条件によって、成形加工中に加わ
る溶融樹脂配向や溶融樹脂に加わる応力(剪断応力、剪
断速度)、或いは剪断履歴、溶融樹脂が冷却される過程
での配向、剪断応力、剪断速度等の影響で任意に変化す
る。
【0064】従って、エンドレスベルトとして最適な海
島構造体とするには、材料配合、材料混練条件、成形加
工条件を調整することが重要となる。
【0065】本発明のエンドレスベルトでは、機械的な
ストレスや電気的なストレスによる耐久性に優れ、かつ
画像形成装置が使用される温度、湿度等の外部環境の変
化による物理的寸法変化、電気特性変化、機械特性変化
の少ないベルトを得るアロイ相構成として、エンドレス
ベルトの表面部(この表面部とは、環状のエンドレスベ
ルトの外表面であっても内表面であっても良いが、少な
くとも外表面、好ましくは外表面と内表面である。)と
厚み方向中央部とで異なる海島構造を有するもの、より
好ましくは、エンドレスベルトをその円周方向に切断し
た厚み断面における相形態において、ベルト表面部の海
島構造が略円形の島部分を有する海島構造であり、ベル
ト中央部の海島構造が略楕円形状の島部分を含有する海
島構造であるもの、更に好ましくは、エンドレスベルト
をその幅方向に切断した厚み断面における相形態におい
て、ベルト表面部の海島構造が該表面に沿う層状の島部
分を有する海島構造であり、ベルト中央部の海島構造が
略楕円形状の島部分を含有する海島構造であるものとす
る。
【0066】即ち、前述の如く、結晶性樹脂のガス非透
過性効果と非晶性樹脂の低収縮性特性を両立させ、かつ
機械的強度を有し、更に電気特性が安定したエンドレス
ベルトに必要な相形態は、エンドレスベルトの表面部と
厚み方向の中央部とでアロイ相構造の海島構造が異なる
ことが重要であり、厚み方向の外層部分、中間層部分、
内層部分とも同じ海島構造の場合より、中間層部分と表
面層部分とが異なる海島構造であると、効果的にガス非
透過性を発揮し、広範囲の環境条件下で寸法収縮が起こ
りにくく、電気的に安定であるとともに、耐屈曲性に優
れたものとなる。
【0067】以下に、本発明に好適な海島構造につい
て、図面を参照して説明する。図1(a)はエンドレス
ベルトの斜視図であり、図1(b)は図1(a)の一部
21の断面における海島構造を示す模式図である。
【0068】図1中、A面はベルト円周方向の切断面を
示し、B面はベルト幅方向の切断面を示し、C面はベル
ト外表面を示し、D面はベルト内表面を示す。
【0069】このエンドレスベルト20の海島構造は、
その厚み方向の断面において、外表面部20a及び内表
面部20cと、中央部20bとで異なる海島構造が形成
されている。
【0070】即ち、エンドレスベルト20の円周方向に
沿う切断面であるA面においては、内外表面部20a,
20cは略円形の島部分を有する海島構造であり、中央
部20bはこの内外表面部20a,20cの島形状より
も楕円に近い形状の海島構造である。また、エンドレス
ベルトの幅方向の切断面であるB面において、内外表面
部20a,20cは表面に沿う層状の島部分を有する海
島構造であり、中央部20bはこの表面部20a,20
cの島形状よりも楕円に近い形状の海島構造であり、し
かもこの中央部20bでは、島部分がランダムに配向し
ている。
【0071】本発明において、エンドレスベルト20の
円周方向に沿う切断面であるA面において、内外表面部
20a,20cの海島構造の島部分は、平均直径が0.
03〜0.15μmで長径/短径の比が1〜5程度の略
円形であることが好ましく、また、中央部20bの海島
構造の島部分は平均直径(長径)が0.1〜4.0μm
で長径/短径の比が2〜50程度の略楕円形であること
が好ましい。
【0072】また、エンドレスベルトの幅方向の切断面
であるB面において、内外表面部20a,20cの海島
構造の島部分は、表面に沿ってほぼ同方向に配向した長
さ0.1〜4.0μmで厚さ0.03〜0.15μmの
層状であることが好ましく、中央部20bの海島構造の
島部分は平均直径(長径)が0.1〜4.0μmで長径
/短径の比が2〜50程度の略楕円形で一方向ではな
く、ランダムに配向したものであることが好ましい。
【0073】なお、このエンドレスベルトの内外表面部
20a,20cとは、エンドレスベルトの厚みMに対し
て概ね3〜6%の部分(即ち、M=M×0.03〜
0.06,M=M×0.03〜0.06)であり、中
央部20bは、エンドレスベルトの厚みMに対して概ね
3〜6%の部分(即ち、M=M×0.03〜0.0
6)であることが好ましい。
【0074】本発明の相形態によるエンドレスベルトに
おいては、単層ベルトであってもあたかも多層ベルトで
あるかのように、異なった海島構造が少なくとも2種積
層された状態となるため、画像形成装置が使用される温
度、湿度等の外部環境の変化による物理的寸法変化、電
気特性変化、機械特性変化の少ないエンドレスベルトと
することが可能である。
【0075】ところで、一般的な溶融混合、加熱押出条
件によっては、海島構造の島部分の分散粒径が50μm
〜100nm程度にまでしかならないが、加熱混合条件
や押し出し条件によっては分散粒径が数nm以下にまで
微細化することがありうる。しかし、特に、100nm
以下の分散粒径の海島構造体にあっては、2つの樹脂の
それぞれの特徴が発現せず、特に外部環境条件のうち水
分がエンドレスベルトに浸透することにより、ベルト物
性への悪影響を与えるため好ましくないことから、加熱
混合条件や押し出し条件を制御することにより、上述の
ような大きさの島部分を形成することが好ましい。
【0076】汎用エンジニアリングプラスチックの結晶
性樹脂と非晶性樹脂の2成分をアロイ化した場合を例に
とると、一般にPBT(ポリブチレンテレフタレート)
やPET(ポリエチレンテレフタレート)などの結晶性
樹脂は水蒸気を透過しない点で非晶性樹脂PC(ポリカ
ーボネート)やPAR(ポリアリレート)と比べて好ま
しいとされるが、上記の理由により海島構造によっては
全く透湿性に差が生じることがあるためアロイ相構造に
は特に注意が必要である。
【0077】また、結晶部分と非晶性部分をアロイ化し
た構造やフィラー等を添加した構成の場合、加熱溶融し
た高分子材料は、冷却過程において構造が変化する場合
がある。例えば、急激に冷却したり、フィラー等の存在
下では本来結晶化すべき材料が結晶化しきれずに非晶状
態で残る場合があるため、一旦成形された成形部材は、
高温にさらされると再度結晶化を進行させることがあ
り、極度に収縮したり、機械強度が極度に低下したりす
る場合があるため注意する必要がある。
【0078】このような状態を阻止するためには、アロ
イ化する成分のうち、結晶成分の材料においては成形部
材として結晶化させた状態の構造をとることが好まし
い。即ち、アニール処理をすることが好ましい。
【0079】エンドレスベルトのアニール処理は、ベル
トを2本以上のローラに張架させて駆動させながら熱を
かけてアニールしてもよいし、円筒状の型にエンドレス
ベルトを装着して熱処理してもよい。さらには、円筒状
のまま熱処理をしてもよい。
【0080】なお、本発明において、海島構造の島形状
の確認手法に特に制限はなく、エンドレスベルトを所定
の方向で切断して、四酸化ルテニウム(RuO)等の
染料で約2分以上染色して、超薄切片を作成しTEM
(透過電子顕微鏡)で観察するなどの公知の方法を用い
ることができる。
【0081】なお、この観察には、エンドレスベルトの
厚み断面の切断方向により海島構造の形態が変わるため
特に注意が必要であり、エンドレスベルトの円周方向に
切断した切片と幅方向に切断した切片それぞれについて
外側0〜5μm付近、厚み中央部±5μm付近、内側0
〜5μm付近の海島形態を観察する。
【0082】(2) エンドレスベルトの物性 本発明によれば、以下のような物性を有するエンドレス
ベルトが提供される。
【0083】(耐折回数)本発明に用いるエンドレスベ
ルトを例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用い
る場合には、耐屈曲性が悪いとクラックが発生して画像
が得られなくなるので耐屈曲性の良好なエンドレスベル
トが好ましい。
【0084】耐屈曲性の程度は、JIS P−8115
の耐折回数の測定方法に従うことで定量的に評価でき、
耐折回数の大きいエンドレスベルトほどクラックが入り
にくく、耐屈曲性に優れていると判断することができ
る。
【0085】具体的な数値としては、5000回を超え
ていれば装置寿命の間、エンドレスベルトとして優れた
機能を発揮して使用することができるが、実用的には8
000回以上が好ましく、10000回以上であればさ
らに好ましく、15000回以上であれば、特にクラッ
クが発生しにくくなり、クラック防止用補強テープ等の
二次加工を施さなくても十分な耐クラック性が得られる
ので特に好ましい。
【0086】(引張り弾性率)エンドレスベルトの引張
り弾性率が低いと、例えば中間転写ベルトとして画像形
成装置に用いる場合に張力により少し伸びが発生してし
まい、色ズレなど不具合を発生することがあるため、引
張り弾性率は高い方が好ましいが、引張り弾性率が高す
ぎる場合には、ベルトを駆動する際にモータ負荷がかか
るため、厚み設定を薄くする必要が生じ、また、一旦ロ
ーラとベルト間にゴミが入り込んだり、感光体との摩擦
による傷等が入るとクラックが入り易く信頼性に問題が
あるため好ましくない。従って、好ましい引張り弾性率
は、1500MPa以上5000MPa以下であり、特
に好ましい引張り弾性率は2000MPa以上4000
MPa以下である。
【0087】一般に柔らかいプラスチックは耐折回数が
高いが引張り弾性率が低くなりやすく、逆に硬いプラス
チックは高い引張り弾性率を得られるが脆くなりやすく
耐折回数は低いものしか得られないことが多い。本発明
ではPBTやPCの有する固有の高い引張り弾性率の特
性を維持したまま、高い耐折回数を得ることができる意
味で有用であると言える。
【0088】(引張り弾性率の温度特性)引張り弾性率
の温度特性としては、40℃で引張り弾性率が5℃での
引張り弾性率に対し60%以上であり、60℃での引張
り弾性率が5℃での引張り弾性率に対し20%以上であ
ることが重要である。言い換えると5℃〜40℃間で
は、引張り弾性率の変化は少なく、40〜60℃の間で
は、適度に低下することが好ましい。
【0089】40℃での引張り弾性率が5℃での引張り
弾性率に対し60%未満であると、夏場或いは高温条件
下でのプリンタや複写機等使用時にベルトが伸びてしま
い画像がずれたり、クリープ変形しやすくなったりす
る。好ましくは、40℃での引張り弾性率が5℃での引
張り弾性率に対し70%以上であり、更に好ましくは8
0%以上である。
【0090】また、60℃での引張り弾性率が5℃での
引張り弾性率に対し20%以上であることが重要であ
る。60℃での引張り弾性率が5℃での引張り弾性率に
対し20%未満ならば、数日〜数年にかけての経時的に
ベルトのクリープ、寸法変化が発生し易いため好ましく
ない。
【0091】特に好ましくは、60℃での引張り弾性率
が5℃での引張り弾性率に対し40%以上であり、更に
好ましくは60%以上である。
【0092】(DSCによる融解ピーク特性)DSC
(示差走査熱量測定)による1回目の昇温による融解ピ
ークを示すピーク温度と冷却後2回目の昇温による融解
ピークを示すピーク温度との差が30℃以下であること
が好ましい。
【0093】上記ピークは、成形部材が経時的に変化す
る状態であるのかどうか(未反応状態である部分が残っ
ているかどうか)を示す指標となり、このピーク差が大
きいとエンドレスベルトは経時による寸法、機械物性等
の経時変化が大きいと考えられるため好ましくない。
【0094】DSCによる高分子の熱的特性では、熱を
与えることにより高分子のミクロなセグメント運動から
マクロな運動までの動きを捉えることができる。これに
対して、ガラス転移点ではミクロなブラウン運動を、融
点では折り畳み運動などを見ている。
【0095】DSC測定では、まず一定速度で昇温し、
次に一定速度で冷却し、更に一定速度で昇温し、融解時
での吸熱ピーク点を測定する。その結果、1回目の昇温
過程での融解ピーク点の温度と2回目の昇温過程での融
解ピーク点の温度差が30℃より大きいと、恐らくはま
だ反応しきれずに残っている樹脂量が多いために、高温
時での引張り弾性率の低下が大きく、高温環境下或い
は、数日〜数年の経時によりベルトが伸びてしまうこと
やクリープによる変形が生じてしまうことがあることが
認められた。そして、逆に、この温度差が30℃以下で
あると、高温時での引張り弾性率の低下が小さく、クリ
ープも著しく小さいことが認められる。
【0096】好ましいピーク温度差は20℃以下であり
10℃以下が特に好ましい。
【0097】常温下でいくら耐久性、引張り弾性率等の
機械物性が良くても経時的に変化しては部品として使用
できるものではないため上記手法による融解ピーク差が
ある特定範囲に入っていることが重要である。
【0098】(収縮率)エンドレスベルトの収縮率特性
としては、温度50℃、湿度90%で24hr放置後
に、温度23℃、湿度50%で測定したベルト円周方向
の収縮率と、温度50℃、湿度50%で24hr放置
後に、温度23℃、湿度50%で測定したベルト円周方
向の収縮率と、温度50℃、湿度20%で24hr放
置後に、温度23℃、湿度50%で測定したベルト円周
方向の収縮率がともに0.4%以下であることが好まし
い。これらの条件範囲より収縮率が大きいと、エンドレ
スベルトを輸送、保管中に寸法変化が大きくなり使用で
きなくなるばかりか、電気特性、機械特性も変化するこ
とがあるため好ましくない。
【0099】さらに好ましい収縮率特性は、の条件で
は0.20%以下、の条件では0.25%以下、の
条件では0.30%以下であり、特に好ましくは、,
,の条件とも0.20%以下である。
【0100】(表面抵抗率と体積抵抗率)本発明に用い
るエンドレスベルトは必要に応じて導電性フィラー等の
導電性を付与する物質を配合することにより導電性を得
ることができる。
【0101】抵抗領域は目的により異なるが、表面抵抗
率1×10〜1×1016Ω又は体積抵抗率1×10
〜1×1016Ω・cmの範囲から選定される。
【0102】さらに好ましい範囲は用途により異なる
が、例えば感光体ベルトとして用いる場合には必要に応
じて外表面の電荷を内表面に逃がせるように表面抵抗率
1×10〜1×10Ω又は体積抵抗率1×10
1×10Ω・cmと低い抵抗率が好ましく、中間転写
ベルトとして用いる場合には帯電−転写の容易にできる
表面抵抗率1×10〜1×1013Ω又は体積抵抗率
1×10〜1×10 Ω・cmが好ましく、搬送転
写ベルトとして用いる場合には帯電しやすく高電圧でも
破損しにくい1×1010〜1×1016Ω又は体積抵
抗率1×1010〜1×1016Ω・cmと高い領域が
好ましい。
【0103】また、エンドレスベルト1本中の表面抵抗
率の分布は狭い方が好ましく、それぞれの好ましい表面
抵抗率領域において、1本中の最大値と最小値の差が2
桁以内であること(最大値が最小値の100倍以下であ
ること)が好ましい。
【0104】フィルムの表面抵抗率や体積抵抗率は例え
ばダイヤインスツルメント(株)製ハイレスタ(商品
名),ロレスタ(商品名)やアドバンテスト(株)製R
8340A(機種名)などにより容易に測定することが
できる。
【0105】(エンドレスベルトの厚み)シームレスベ
ルトの厚みが過度に大きいと、ローラとの曲率が大きい
場合、ベルト外側と内側の変形差が大きく割れ易くな
る。また、外側部に転写されたトナーが変形し、飛散し
画像が変形するようになる。一方、シームレスベルトの
厚みが過度に小さいと、わずかなローラとベルト間に入
り込んだゴミ、或いは感光体等との接触による傷により
クラックが入り易くベルトが破損し易くなる。従って、
エンドレスベルトの厚みは70〜300μmであること
が必要であり、100〜200μmであれば特に好まし
い。
【0106】(3) エンドレスベルト材料 本発明においては、基本的に引張り弾性率、引張り破断
伸び、耐屈曲性、厚みがある範囲を満たしていれば良
く、材料の種類において制限はなく公知の熱可塑性、熱
硬化性樹脂を主成分とすることができる。ただし、材料
のもつ引張り弾性率は1500MPa以上が好ましく、
アロイ化する場合でも、それぞれのベース材料の引張り
弾性率が1500MPa以上が好ましい。
【0107】特に、本発明の機械物性を得るための好ま
しい材料は、水酸基、カルボン酸基及びエステル結合の
少なくとも1つを有する結晶性樹脂、水酸基、カルボン
酸基及びエステル結合の少なくとも1つを有する非晶性
樹脂並びに重合触媒を含んでいる。
【0108】(結晶性樹脂)本発明のエンドレスベルト
に用いる結晶性樹脂は、水酸基、カルボン酸基及びエス
テル結合の少なくとも1つを有するものであり、結晶化
度が10%以上100%以下であれば特に制限はなく汎
用の樹脂を用いることができる。
【0109】具体的には結晶性樹脂の中でもPAT(ポ
リアルキレンテレフタレート)が好ましく、なかでもP
BT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエ
チレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタ
レート)はより好ましく、PBTは結晶加速度が早いの
で成形条件による結晶化度の変化が少なく、一般に30
%前後と結晶化度で安定しているので特に好ましい。
【0110】また、本発明に用いる結晶性樹脂は、本発
明の効果を著しく損なわない範囲で共重合成分を導入す
ることもできる。具体的な例としてエステル結合を主鎖
とし、ポリメチレングリコールなどエステル結合を導入
したものなどをあげることができる。
【0111】本発明のエンドレスベルトに用いる結晶性
樹脂の分子量に特に制限はなく、例えば、重量平均分子
量10,000〜100,000など一般的な分子量の
樹脂を用いることができるが、引張破断伸など機械物性
の高い要求がある場合には高分子量のものが好ましい。
具体的には20,000以上が好ましく、25,000
以上であればさらに好ましく、30,000以上であれ
ば特に好ましい。
【0112】(非晶性樹脂)本発明のエンドレスベルト
に用いる非晶性樹脂は、水酸基、カルボン酸基及びエス
テル結合の少なくとも1つを有するものであり、結晶化
度が0%以上、10%未満であれば特に制限はなく汎用
の樹脂を用いることができる。
【0113】具体的にはPC(ポリカーボネート)やP
Ar(ポリアリレート)などのポリエステルやPMMA
(ポリメチルメタクリレート)などの側鎖にエステル結
合を有する樹脂が好適な例としてあげることができる。
なかでもポリエステルが好ましく、PCは特に好適に用
いることができる。
【0114】また、本発明のエンドレスベルトに用いる
非晶性樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で
共重合成分を導入することができる。具体的な例として
エステル結合を主鎖とし、ポリメチレングリコールなど
エステル結合を導入したものなどをあげることができ
る。
【0115】本発明のエンドレスベルトに用いる非晶性
樹脂の分子量に特に制限はなく、例えば、重量平均分子
量10,000〜100,000など一般的な分子量の
樹脂を用いることができるが、引張破断伸など機械物性
の高い要求がある場合には高分子量のものが好ましい。
具体的には20,000以上が好ましく、25,000
以上であればさらに好ましく、30,000以上であれ
ば特に好ましい。
【0116】(結晶性樹脂と非晶性樹脂の重量比)本発
明のエンドレスベルトに用いる結晶性樹脂と非晶性樹脂
の重量比に特に制限はない。ただし、一般に結晶性樹脂
は耐薬品性,耐屈曲性に優れ、非晶性樹脂は成形寸法安
定性に優れるので、使用目的に応じ、任意の比率を設定
することができるが、なかでも、結晶性樹脂/非晶性樹
脂の重量比が1/99〜99/1が好ましく、40/6
0〜97/3がより好ましく、60/40〜95/5が
さらに好ましく、70/30〜90/10が特に好まし
い。
【0117】特に好ましい比率として結晶性樹脂の比率
を多く選択しているのは、非晶性樹脂は少しの配合で十
分に成形寸法安定性の改良効果が期待できること、非晶
性樹脂のわずかな配合過多で塗装時の溶剤などの耐薬品
性悪化の影響が顕著に出ることがあるなどの理由によ
る。
【0118】(結晶性樹脂と非晶性樹脂の粘度差)両樹
脂の粘度差が大きすぎると、製造条件を調整しても良好
な分散が得られず、均一分散に至ることができなくなる
ことがあるので、粘度差は小さい方が好ましい。
【0119】具体的には両樹脂を同一条件でMFR測定
し、値が1/20〜20/1程度の範囲に収まることが
好ましく、1/10〜10/1の範囲となればさらに好
ましい。
【0120】測定方法としてはJIS K−7210に
準拠し、測定温度条件は樹脂の加工温度に近い条件を選
択することが好ましい。
【0121】例えばPBTとPCを選択した場合、加工
温度となる260℃を測定温度として設定し、両樹脂の
粘度差を比較することが好ましい。また、荷重としては
例えば2.16kgを選択することで好適に測定でき
る。
【0122】(重合触媒)本発明では、少なくとも2成
分以上の樹脂とを単に混合したもの、重合段階から2成
分以上の樹脂を混合したもの、2成分以上の樹脂を触媒
を反応させながら混合したもの等公知のアロイ化技術を
用いることができるが、重合触媒を用いて加熱混合した
ものがコストの観点から最も好ましい。
【0123】重合触媒は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を
重合する能力を有していれば特に制限はない。
【0124】重合触媒のなかでもTi系重合触媒は好ま
しく、アルキルチタネートなどが好適に用いることがで
きる。
【0125】アルキルチタネートの中でもテトラブチル
チタネート又はテトラキス(2−エチルヘキシル)オル
ソチタネートが好ましく、これらはTYZOR TOT
(DuPont製)やTYZOR TBT(DuPon
t製)として市販品を容易に入手することができる。
【0126】また、Ti系重合触媒は、アルカリ金属、
アルカリ土類金属含有化合物又は亜鉛含有化合物と組み
合わせることで、より有効に作用するので好ましく、な
かでもMg含有化合物を重合触媒として有することは特
に好ましい。
【0127】Mgを含む化合物として特に制限はないが
有機酸Mg塩が特に好ましく、酢酸Mgが特に好まし
い。
【0128】重合触媒の含有量としては、少なすぎると
有効に作用しないことがあるので、ある程度高い方が好
ましく、具体的には重合触媒中の金属分の質量が全樹脂
に対し1ppm以上が好ましく、10ppm以上であれ
ばさらに好ましく、20ppm以上であれば特に好まし
い。一方、エステル系樹脂は重金属の多量存在下によ
り、解重合を起こすことがあると知られているので、あ
る程度は小さい方が好ましく、具体的には10000p
pm以下が好ましく、1000ppm以下であればさら
に好ましく、500ppm以下であれば特に好ましい。
【0129】(キレーター)本発明では重合触媒の活性
が高すぎると、樹脂の解重合を促進して分子量低下によ
る機械的物性低下,低分子量体発生に伴う発泡などが問
題になることがある。
【0130】本発明では、重合触媒中の金属にキレート
する能力を有するキレーターが存在すると、解重合を抑
制することができる。
【0131】キレーターの種類としては特に制限はな
く、公知のキレーターを用いることができる。
【0132】例としては、亜リン酸エステル、リン酸エ
ステル、リン酸塩、ヒドラジン類を挙げることができ、
これらは例えば、イルガホス168(日本チバガイギー
(株)製)、PEP36(旭電化工業(株)製)、PE
PQ(クラリアントジャパン(株)製)の亜リン酸エス
テル、IRGANOX MD1024(日本チバガイギ
ー(株)製)、CDA−6(旭電化工業(株)製)のヒ
ドラジン類などとして容易に市場から入手することがで
きる。
【0133】本発明では成形条件の適正化により解重合
及び低分子量体発生を抑制することもできるので、キレ
ーター無添加とすることもできるが、解重合の抑制が必
要な場合にはキレーターの添加量は、樹脂100重量部
に対して0.001重量部以上添加することが好まし
く、より効果を得るには0.1重量部以上添加すること
が好ましい。
【0134】キレーターの量が多すぎると重合触媒が活
性を失い良好な物性のエンドレスベルトを得られないこ
とがあるので添加過多にはならない方が好ましく、樹脂
100重量部に対し、10重量部以下が好ましく、5重
量部以下であるとさらに好ましい。
【0135】一般的にはキレーターの使い方としては樹
脂100重量部に対して0.1重量部以下の少量添加で
使うことが好ましいとされるが、本発明でキレーターを
使う場合には、特に好ましい使い方の例としては、重合
触媒の添加量を50〜500ppmと多く添加し、キレ
ーターも0.1〜3重量部、好ましくは0.3〜1重量
部と常識より高い量を用いて、さらにエンドレスベルト
を得るための成形条件(温度,滞留時間など)を適正化
すると、結晶性樹脂と非晶性樹脂の化学結合生成及び分
子量増加を促進しつつ、解重合を抑制でき、従来に無い
物性の優れたエンドレスベルトを得ることができる。
【0136】(付加的配合材;任意成分)本発明のエン
ドレスベルトには、各種目的に応じて任意の配合成分を
配合することができる。
【0137】具体的には、イルガホス168,イルガノ
ックス1010,リン系酸化防止剤などの酸化防止剤、
熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和
剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ
剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各
種添加剤を添加することができる。
【0138】さらに、本発明の効果を著しく損なわない
範囲内で、第2,第3成分として各種熱可塑性樹脂、各
種エラストマー、熱硬化性樹脂、フィラー等の配合材を
配合することができる。
【0139】熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン、ポ
リエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密
度)、プロピレンエチレンブロック又はランダム共重合
体、ゴム又はラテックス成分、例えばエチレン・プロピ
レン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレ
ン・ブタジエン・スチレンスチレンブロック共重合体又
は、その水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブ
チレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセター
ル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、
液晶性ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレン
サルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエー
テルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、
ポリフッ素化ビニリデン、ポリフッ素化ビニル、ポリク
ロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエ
チレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレンテトラフル
オロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレンパーフ
ルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸ア
ルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合
体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミ
ド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種又はこれら
の混合物からなるものが使用できる。熱硬化性樹脂とし
ては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール
樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の1種又はこれらの混
合物からなるものが使用できる。また、各種フィラーと
しては、例えば炭酸カルシウム(重質、軽質)、タル
ク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、
ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラス繊
維、ガラスビーズ、ベントナイト、アスベスト、中空ガ
ラス玉、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、炭素繊
維、アルミニウム繊維、スチレンスチール繊維、黄銅繊
維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、金属粉、導電性
金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩等のフィラー
の他、添加剤として酸化防止剤(フェノール系、硫黄
系、リン酸エステル系など)、滑剤、有機・無機の各種
顔料、紫外線防止剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発
泡剤、可塑剤、銅害防止剤、難燃剤、架橋剤、流れ性改
良剤等をあげることができる。
【0140】(導電性物質)本発明において電気抵抗値
を調整する必要がある場合には導電性物質を配合しても
良い。特に画像形成装置に用いられるシームレスベルト
等においては電気的にトナーや紙等を吸着、転写させる
ため、表面抵抗値や体積抵抗値を用途に合わせて調整す
る必要がある。
【0141】配合する導電性物質としては、用途に要求
される性能を満たすものであれば特に制限はなく、各種
のものを用いることができるが、具体的には、導電性フ
ィラーとして、カーボンブラックやカーボンファイバ
ー、グラファイトなどのカーボン系フィラー、金属系導
電性フィラー、金属酸化物系導電性フィラーなどが用い
られ、導電性フィラーの他には、イオン導電性物質、た
とえば四級アンモニウム塩等が例示される。
【0142】特に好ましい導電性物質は、分散性に優れ
ているカーボンブラックである。
【0143】カーボンブラックの種類としては、アセチ
レンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラッ
クなどが好適に使用でき、この中でも不純物としての官
能基が少なくカーボン凝集による外観不良を発生しにく
いアセチレンブラックが特に好適に使用できる。さらに
一次粒子径が10〜100nm、比表面積10〜200
/g,pH値3〜11のものがより好ましい。
【0144】また、使用するカーボンブラックは1種類
であっても2種類であっても良い。さらには、カーボン
ブラックには樹脂を被覆したカーボンブラックや、黒鉛
化処理したカーボンブラックや、酸性処理したカーボン
ブラック等の公知の後処理工程を施したカーボンブラッ
クを用いても何ら問題はない。
【0145】また、導電性フィラーの分散性を向上させ
る目的でシラン系、アルミネート系、チタネート系、又
はジルコネート系等のカップリング剤で処理したカーボ
ンブラック等の導電性フィラーを用いても良い。
【0146】このようなカーボンブラックの配合量はベ
ルト中の含有量で3〜30重量%とすることが好ましく
上記範囲内で特に好ましい範囲は、10〜25重量%で
ある。上記範囲を超えると、製品の外観が悪くなり、ま
た、材料強度が低下して好ましくない。
【0147】(4) エンドレスベルトの製造方法 (加熱混練)本発明においては、結晶性樹脂、非晶性樹
脂、重合触媒、キレーター及び必要に応じて添加される
任意成分を加熱混練して樹脂組成物とした後にエンドレ
スベルトを成形することも、結晶性樹脂、非晶性樹脂、
重合触媒、キレーター及び必要に応じて添加される任意
成分を加熱混練してそのままエンドレスベルトを得るこ
ともできる。
【0148】この場合、樹脂組成物を得る段階での加熱
混練か樹脂組成物をエンドレスベルトに成形する段階で
の加熱混練いずれかで結晶性樹脂と非晶性樹脂の結合が
生成できるように条件を調節すれば良い。いずれの場合
でも、加熱温度は溶融状態でないと十分な分散ができな
いので、ある程度は高い方が好ましく、具体的には結晶
性樹脂の融点を目安に用いて、結晶性樹脂の融点以上と
することが好ましく、融点+10℃以上であるとさらに
好ましい。また、加熱温度が高すぎると熱分解を引き起
こして物性劣化を招くことがあるのである程度は低い方
が好ましく、具体的には結晶性樹脂の融点を目安に用い
て、結晶性樹脂の融点+80℃以下が好ましく、融点+
60℃以下であることがさらに好ましい。
【0149】また、加熱混練前には原料の乾燥をするこ
とによりより良い物性のエンドレスベルトを得られるこ
とがあるので乾燥は施しておいた方が好ましい。
【0150】また、場合によっては、加熱混練して樹脂
組成物とした後に、融点以下で熱処理を施してエステル
結合を生成させた後、エンドレスベルトに成形すること
もできる。
【0151】本発明においては重合触媒が結晶性樹脂及
び非晶性樹脂の反応を促して物性の優れたエンドレスベ
ルトを得られると考えられる。促される反応は加熱混練
時の温度、圧力及び熱を受ける時間が重要となるので、
得られるエンドレスベルトの分散形態を把握しつつ、加
熱混練条件を設定することが必要になる。この反応時に
副生成物として低分子量体が発生し、系中から除去でき
ないとこれが分子量低下、成形品発泡を引き起こすので
注意が必要である。一方、これらの製品発泡などが起き
る直前が最も良好な反応状態であると考えられるので、
例えば、滞留時間を種々検討し、発泡の生じる滞留時間
を見極め、その時の時間より少し短くなるように滞留時
間を設定すると、より良好な加熱混練条件が得られるの
で好ましい。
【0152】加熱混練の手段であるが、これにも特に制
限はなく公知の技術を用いることができる。例えば、ま
ず結晶性樹脂、非晶性樹脂、重合触媒を加熱混練して樹
脂組成物とするのであれば、一軸押出機、二軸混練押出
機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラ
ストグラフ、ニーダーなどを用いることができる。ま
た、こうして得た樹脂組成物からエンドレスベルトを得
る場合でも公知の技術を用いることができる。例えば射
出成形機,押し出し成形機などである。
【0153】(成形方法)エンドレスベルトを得るに
は、結晶性樹脂、非晶性樹脂、及び重合触媒等を例えば
二軸混練押出機により混合し、ペレット化した後にエン
ドレスベルトとなるように成形する手法が特に好ましく
用いられる。
【0154】成形方法については、特に限定されるもの
ではなく、連続溶融押出成形法、射出成形法、ブロー成
形法、或いはインフレーション成形法など公知の方法を
採用して得ることができるが、特に望ましいのは、連続
溶融押出成形法である。特に、環状ダイより押し出した
チューブの内径を高精度で制御可能な下方押出方式の内
部冷却マンドレル方式或いはバキュームサイジング方式
が好ましく、内部冷却マンドレル方式が、シームレスな
エンドレスベルトを簡単に得ることができるため画像形
成装置用としては最も好ましい。
【0155】また、インフレーション成形法により一旦
折り目有りのフィルムを作成したのち、後加工にて折り
目を見かけ上無くした状態でエンドレスベルトとして用
いても何ら問題はなく、帯状のシートを一旦加工した
後、つないでシーム有りのエンドレスベルトとしても良
い。
【0156】このような成形方法において、この成形時
の温度,滞留時間の適正化により、より良好な物性のエ
ンドレスベルトを得ることができるので各配合にあわせ
て条件を調整することが好ましい。
【0157】(熱処理)得られたエンドレスベルトを熱
処理することにより、より物性の向上した形成部材とす
ることが可能となる。特に、耐折回数や引張り弾性率の
向上が見られる。
【0158】熱処理条件は用いる原料樹脂にもよるが、
通常60〜200℃の温度、好ましくは70〜120℃
の温度で5〜60分、好ましくは10〜30分程度であ
る。
【0159】(5) エンドレスベルトの化学特性 (結晶性樹脂の分子鎖と非晶性樹脂の分子鎖間の化学結
合)本発明のエンドレスベルトにおいては、結晶性樹脂
の分子鎖と非晶性樹脂の分子鎖間の化学結合を形成する
ことにより、両樹脂間の親和性の向上、形態の微分散化
を促し、結晶性樹脂の高耐屈曲性、非晶性樹脂の寸法安
定性、(条件によっては透明性)を併せ持つエンドレス
ベルトを得ることができる。
【0160】化学結合の存在比率としては特に制限は無
いが、基本的には多い方が好ましく、具体的には結晶性
樹脂の分子鎖と非晶性樹脂の分子鎖間の化学結合1mo
lあたりの、結晶性樹脂と非晶性樹脂合計質量が、1,
000,000g以下となることが好ましく、300,
000g以下となることがさらに好ましく、100,0
00g以下となると特に好ましい。
【0161】化学結合の量の測定方法に特に制限はない
が、例えばNMRにより測定することができる。
【0162】結晶性樹脂としてPBT、非晶性樹脂とし
てPCを用いた場合の測定例を次に示す。
【0163】 測定機種 JEOLGSX400 溶媒 1,1,1,2,2,2−ヘキサフルオロイソプロパノール/ d−クロロホルム=3/7(VOL) 積算回数 128回 基準 TMS
【0164】この測定により、図2,3に示すチャート
を得た。なお、図3は図2のIII部分を拡大したもので
ある。
【0165】テレフタル酸(TPA)のベンゼン環水素
はカルボン酸がブタンジオールと結合している場合とビ
スフェノールA(BPA)とで化学シフトが異なる。
【0166】一般にPBT分子中のTPAベンゼン環水
素(d)は、化1の通り4個とも等価であり、化学シフ
ト8.07にシングレットピークを示す。
【0167】
【化1】
【0168】一方、化2の如くPCのBPAと結合した
PBTのTPA中のベンゼン環水素は、化学シフトが変
化し、水素(b)は8.25にダブレット,(c)は
8.13にダブレットピークを示す。
【0169】
【化2】
【0170】(d):{(b)+(c)}の面積比によ
り、PBT分子中のTPAと、PCと結合しているTP
Aの比を求めることができる。
【0171】本例では面積比は(d):{(b)+
(c)}=100:{0.4654+0.5635}≒
99.01:0.99となるので、PBT構成単位10
0molあたり、0.99molのTPA(PBT由
来)−BPA(PC由来)結合を有していることが解
る。また、本樹脂組成物中には同量のブタンジオール
(PBT由来)−炭素(PC)結合が存在することが容
易に推測できるので、合計でPBT構成単位100mo
lあたり1.98molのPBT−PC結合が存在する
ことが解る。
【0172】化3の通り、PBT構成単位(ブタンジオ
ール+TPA)の式量は220なので、PBT2200
0(220×100mol)gあたり、1.98mol
のPBT−PC結合が存在する。
【0173】PBT−PC結合1molあたりのPBT
の質量は約11000(22000/1.98)と計算
できる。
【0174】本例ではPBTとPCの重量比が7/3な
ので、PBT−PC結合1molあたりの樹脂分(PB
T質量+PC質量)は16000g(11000/0.
7)と求めることができる。
【0175】
【化3】
【0176】(分子量)本発明においては、結晶性樹
脂、非晶性樹脂、重合触媒、キレーター及び必要に応じ
て添加される任意成分を加熱混練し、結晶性樹脂の分子
鎖と、非晶性樹脂の分子鎖間に化学結合を生成し、か
つ、樹脂組成物としての総合の分子量を維持或いは増加
させることで、得られるエンドレスベルトの物性向上が
図れると考えられるので、分子量は高い方が好ましい。
【0177】分子量の測定方法であるが、本発明のよう
に共重合体が存在する場合には分子量の真値を求めるこ
とが難しい。
【0178】そこで本発明では全ての樹脂をGPCによ
り同一条件で測定し、PS換算重量平均分子量として得
た値を共通の代表値として用いることとした。
【0179】測定条件としては、試料20mgを0.5
mlの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−
プロパノールと0.2mlのクロロホルムで一晩溶解
し、さらに移動相の溶媒25mlを加え、0.22μm
のフィルターにて濾過し、SEC測定溶液とした。移動
相を加えてから測定終了まで12時間以内に行った。
【0180】 SEC測定条件 溶媒 クロロホルム/酢酸:99.5:0.5(vol/vol) 流速 1.0ml/分 注入量 0.02ml カラム AD806M/S 2本(昭和電工社製) カラム温度 30℃ 検出器 UV 254nm
【0181】分子量500(A−500)から2,89
0,000(F−288)までの分子量の異なる単分散
標準ポリスチレン(東ソー社製)12試料用い、較正曲
線を作成し、ポリスチレン換算の分子量を計算した。
【0182】本手法でした、結晶性樹脂と、非晶性樹脂
と、重合触媒を加熱混練した後に得られる樹脂組成物の
PS換算重量平均分子量(Mwとする)の値として
は、具体的には、結晶性樹脂の配合比率をX重量部,ポ
リスチレン(PS)換算重量平均分子量をMw、非晶
性樹脂の配合比率をY重量部,PS換算重量平均分子量
をMwとして、
【0183】
【数2】 であることが好ましく、
【0184】
【数3】 であるとさらに好ましく、
【0185】
【数4】 であると、十分に高い物性を得られるので特に好まし
い。
【0186】また、本発明においてはMwが加熱混合
によりMwとMwの算術平均値よりも高くなってい
ることが重要で、初めから高いMwやMwの樹脂を
用いても、加熱混合時に分子量低下していては最終的な
Mwが高くても良好な物性は期待できないと考えられ
るので、Mwの絶対値に特に制限はないが、それでも
総合的観点からは高い方が好ましく、具体的にはPS換
算重量平均分子量で130,000以上が好ましく、1
40,000以上であるとさらに好ましく、150,0
00以上であると特に好ましい。
【0187】なお、重量平均分子量真値とPS換算重量
平均分子量の相関の例を挙げると、重量平均分子量4
0,000のPBTを上記手法で測定するとPS換算重
量平均分子量122,000の値が得られ、重量平均分
子量28,000のPCを上記手法で測定するとPS換
算重量平均分子量64,000の値が得られることがわ
かっている。
【0188】(6) エンドレスベルトの用途 このエンドレスベルトの用途に特に制限はないが、寸法
精度,耐屈曲性,引張破断伸など要求物性の厳しいOA
機器分野、特に機能部材には好適に用いることができ
る。このエンドレスベルトをシームレスベルト形状とし
た場合、割れ,伸びなど不具合が少ないので好適であ
る。
【0189】本発明のエンドレスベルトは、電子写真式
複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等
の画像形成装置に、中間転写ベルト、搬送転写ベルト、
感光体ベルト、定着ベルトなどとして好適に用いること
ができる。
【0190】本発明のエンドレスベルトはそのままベル
トとして使用しても良いし、ドラム或いはロール等に巻
き付けて使用しても良い。
【0191】また、端面補強等の目的のために、このエ
ンドレスベルトの外側及び/又は内側に、必要に応じて
側縁に沿って補強テープを貼り合わせてもよい。補強テ
ープとしては、2軸延伸ポリエステルテープがコスト、
強度の点で好ましく、そのテープ幅は4〜20mmが装
置レイアウト上コンパクトになり好ましい。補強テープ
の厚みは、20〜200μmがフレキシブルを維持する
ため低テンションでエンドレスベルトが駆動できる点と
耐クラック発生防止の点で好ましい。
【0192】また、エンドレスベルトの蛇行防止目的
で、エンドレスベルトの側縁に、ウレタンゴムやシリコ
ンゴム等のゴム製のシート(蛇行防止ガイド)を接着剤
にて張り合わせてもよい。このとき、上記補強テープと
組み合わせて、補強テープをエンドレスベルトに張り合
わせた上で蛇行防止ガイドを張り合わせた方がベルト耐
クラック発生防止効果とベルト蛇行防止効果があるため
好ましい。
【0193】
【実施例】本発明を実施例、比較例を用いて、より具体
的に説明する。
【0194】(原料)原料は下記のものを用い、配合割
合は表1又は表2の通りとした。 PBT;重量平均分子量40,000;PS換算重量平均分子量122,000 PC ;重量平均分子量28,000;PS換算重量平均分子量 64,000 重合触媒;チタニウム(IV)ブトキシド 酢酸マグネシウム 熱安定剤;リン酸化酸化防止剤PEPQ クラリアントジャパン(株)社製 (なお、PEPQの配合割合は、樹脂100重量部に対する配合重量 部である。) カーボンブラック;デンカブラック 電気化学(株)製
【0195】(加熱混練)各原料を、二軸混練押出機
(IKG(株)製 PMT32)を用いて表1,2に示
す条件で加熱混練して材料ペレット化した。
【0196】(エンドレスベルトの成形方法)この材料
ペレットを乾燥し、直径φ180mm、リップ幅1mm
の6条スパイラル型環状ダイ付き40mmφの押出機に
より、環状ダイ下方に溶融チューブ状態で押し出し、押
し出した溶融チューブを、環状ダイと同一軸線上に支持
棒を介して装着した外径170mmの冷却マンドレルの
外表面に接しめて冷却固化させつつ、次に、シームレス
ベルトの中に設置されている中子と外側に設置されてい
るロールにより、シームレスベルトを円筒形に保持した
状態で引き取りつつ340mm長の長さで輪切りにし
て、各表記載の厚み、滞留時間となるよう押出量、引き
取り速度を調整し、直径169mmの樹脂製シームレス
ベルトとした。
【0197】成形温度,滞留時間などの条件は各表1又
は2の通りとした。
【0198】(評価)評価は必要に応じ、エンドレスベ
ルトを必要な大きさに切り開いて実施した。
【0199】・耐屈曲性(耐折れ性) JISP−8115に準拠し、試験片を幅15mm、長
さ100mmの大きさに切断し、MIT試験機にて折り
曲げ速度175回/分、回転角度135°左右、引張り
荷重1.5Kgfの条件にて破壊回数を測定した。
【0200】・引張り弾性率 ISO R1184−1970に準拠し、試験片を幅1
5mm、長さ150mmに切断し、引張り速度1mm/
min、つかみ具間距離を100mmとした。
【0201】・収縮率 エンドレスベルトを200mmの一定幅に輪切り切断
後、更に幅方向1ヶ所を切断する。つぎに得られたサン
プルを温度23℃、湿度50%に24時間放置したの
ち、エンドレスベルトの円周方向の長さの3次元寸法測
定器(ニコン社製マイクロスコープを取り付けた東京精
密社製GJ800A)にて測定する。この測定値をイ)
とする。
【0202】次に、所定の温度、湿度条件に設定した恒
温恒湿室に上述のサンプルを24時間放置し、取り出し
た後、更に温度23℃、湿度50%へ24時間放置した
のち、エンドレスベルトの円周方向の長さを3次元寸法
測定器を用いて測定する。この測定値をロ)とする。
【0203】23℃、50%に対する各温度湿度条件放
置後のサンプルの収縮率は、以下の式より求めた数値を
用いた。 収縮率=(イ−ロ)/イ×100
【0204】・DSC セイコー電子工業(株)製SSC−5200(商品名)
を使用し、昇温速度10℃/minにて測定した。1つ
の試料を300℃までDSC測定した後、室温まで、速
度10℃/minで冷却し、その後再度同一条件で第2
回目のDSC測定を行い、第1回目の融解ピーク温度と
第2回目の融解ピーク温度との差を求めた。
【0205】・厚み 東京精密(株)製のマイクロメータを用いてエンドレス
ベルトの円周方向20mmピッチにて測定した。
【0206】・表面抵抗率 Ω 表面抵抗率は測定器により好適に測定できる領域が異な
るので以下のように使い分けた。
【0207】表面抵抗率が1〜1×10Ωとなるサン
プル:ダイヤインスツルメント(株)製 ロレスタ(商
品名)を使用し、20mmピッチにてベルト円周方向を
測定した。
【0208】表面抵抗率が10〜1×1013Ωとな
るサンプル:ダイヤインスツルメント(株)製 ハイレ
スタ(商品名)(HA端子)を使用し、500V、10
秒の条件にて20mmピッチにてベルト円周方向を測定
した。
【0209】表面抵抗率が1013〜1×1016Ωと
なるサンプル:アドバンテスト(株) 微小電流測定器
R8340A(機種名)(JIS電極)を使用し、50
0V、10秒の条件にて100mmピッチにてベルト円
周方向を測定した。
【0210】・体積固有抵抗(Ω・cm) 高抵抗計ハイレスタHRSプローブ(ダイヤインスツル
メンツ(株)社製)を用い、測定電圧100V、測定時
間10秒でベルト円周方向に20mmピッチにて測定し
た。
【0211】・エンドレスベルトとしての耐久性 得られたエンドレスベルトを中間転写ベルト、搬送転写
ベルト、或いは感光体ベルトとして画像形成装置に搭載
し、連続で画像出力をし、何枚出力した段階でエンドレ
スベルトにクラック或いは画像ズレが発生するかを評価
した。
【0212】・アロイ分散構造の観察 RuO染色によるTEM観察により海島構造の形成の
有無を調べた。また、ベルトの円周方向及び幅方向の切
断面において、外表面側(外表面から厚み5μmの部
分)、内表面側(内表面から厚み5μmの部分)及び中
央部分(厚み方向の中央部分の厚み10μmの部分)に
ついて、海島構造の島部分の形状を調べた。
【0213】〔実施例1〜7〕PBT,PC,テトラブ
チルチタネート,酢酸マグネシウム,熱安定剤及びカー
ボンブラックを事前に130℃程度で予備乾燥し、その
後に加熱混練し、材料ペレットを得た。
【0214】このときの加熱混練条件は表1,2に示す
ものとし、樹脂温度と混練機内での滞留時間を調節し、
混練機内での反応は抑制するようにした。
【0215】この材料ペレットを押出成形してエンドレ
スベルトを製造した。
【0216】なお、この押出成形機内で反応が好ましい
程度に促進し、エンドレスベルトが得られるように、表
1に示す押出成形条件として樹脂温度と滞留時間等を調
節した。
【0217】表1,2にエンドレスベルトの形態、特
性、外観を示す。
【0218】〔比較例1〕海島構造が生じないように混
練条件、押出条件を選定した、表1の比較例1に示す条
件とすることにより、PBTとPCとが均一に分散した
非海島構造のエンドレスベルトを製造した。
【0219】表2にこの比較例1のエンドレスベルトの
形態、特性、外観を示す。
【0220】〔比較例2〕海島構造がエンドレスベルト
の外表面側と厚み方向の中央部と内表面側とで、いずれ
も島部が略円形状となるように表1の比較例2に示す混
練条件、押出条件を選定しエンドレスベルトを製造し
た。
【0221】表2にこの比較例2のエンドレスベルトの
形態、特性、外観を示す。
【0222】
【表1】
【0223】
【表2】
【0224】表1,2の通り、ベルト断面における海島
構造の島形状がベルト表面側と中央部とで異なる本発明
例に係るエンドレスベルトは、いずれも広い温度範囲に
わたって引張り弾性率が高く、また、湿度条件の変化に
よる収縮率も小さく、ベルト耐久性にも優れ、屈曲性が
良好である。これに対し、比較例1は、重合触媒を添加
してはいるものの、混練及び成形時の温度が高目に設定
され非海島構造となっているために、1回目と2回目の
DSC融解温度差が大きく、そのために高温域(60
℃)での引張り弾性率が小さい。そして、この結果、6
万枚の複写により、エンドレスベルトの伸びによる画像
ズレが生じた。また、海島構造が形成されていてもその
島形状が均一な比較例2では、耐久性が著しく劣る。
【0225】
【発明の効果】以上の実施例及び比較例からも明らかな
通り、本発明によると、耐屈曲性や耐薬品性、成形寸法
安定性、電気抵抗安定性並びにこれらの特性の外部環境
に対する安定性に優れ、低価格なエンドレスベルトと、
このエンドレスベルトを用いた画像形成装置用ベルト
と、この画像形成装置用ベルトを用いた画像形成装置が
提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)はエンドレスベルトの斜視図であ
り、図1(b)は図1(a)の一部21の断面における
海島構造を示す模式図である。
【図2】PBTとPCとの混合反応物のNMRチャート
である。
【図3】図2のIII部分の拡大図である。
【図4】従来の中間転写装置の側面図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム 2 帯電器 3 露光光学系 4 現像器 5 クリーナー 6 導電性エンドレスベルト 7,8,9 搬送ローラ 10 静電転写機 11 記録紙 12 押圧ローラ 20 エンドレスベルト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大津 紀宏 三重県四日市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市事業所内 (72)発明者 佐子川 広一 三重県四日市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市事業所内 Fターム(参考) 2H032 BA09 BA18 2H033 AA21 BA11 BA12 2H035 CA05 CB06

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2種以上の樹脂で構成され、該2種以上
    の樹脂による海島構造が形成されているエンドレスベル
    トにおいて、該エンドレスベルトの表面部と厚み方向の
    中央部とで異なる海島構造が形成されていることを特徴
    とするエンドレスベルト。
  2. 【請求項2】 エンドレスベルトをその円周方向に切断
    した厚み断面における相形態において、ベルト表面部の
    海島構造が略円形の島部分を有する海島構造であり、ベ
    ルト中央部の海島構造が略楕円形状の島部分を含有する
    海島構造であることを特徴とする請求項1に記載のエン
    ドレスベルト。
  3. 【請求項3】 エンドレスベルトをその幅方向に切断し
    た厚み断面における相形態において、ベルト表面部の海
    島構造が該表面に沿う層状の島部分を有する海島構造で
    あり、ベルト中央部の海島構造が略楕円形状の島部分を
    含有する海島構造であることを特徴とする請求項1又は
    2に記載のエンドレスベルト。
  4. 【請求項4】 ベルト円周方向のJIS P−8115
    による耐屈曲性が5000回を超え、 温度23℃、湿度50%でのベルト円周方向の引張り弾
    性率が1500〜5000MPaであり、 温度23℃、湿度50%におけるベルト円周方向の収縮
    率において、温度50℃、湿度90%で24hr放置後
    の該収縮率と、温度50℃、湿度50%で24hr放置
    後の該収縮率と、温度50℃、湿度20%で24hr放
    置後の該収縮率がともに0.4%以下であることを特徴
    とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエンド
    レスベルト。
  5. 【請求項5】 40℃でのベルト円周方向引張り弾性率
    が5℃での同引張り弾性率に対し60%以上であり、6
    0℃でのベルト円周方向引張り弾性率が5℃での同引張
    り弾性率に対し20%以上であり、ベルトの平均厚みが
    70〜300μmであり、表面電気抵抗率が1×10
    〜1×1016Ωであるか又は体積電気抵抗率が1×1
    〜1×1016Ω・cmであり、かつ1本のエンド
    レスベルトにあっては該抵抗率の最大値が最小値の10
    0倍以下であることを特徴とする請求項1ないし4のい
    ずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  6. 【請求項6】 水酸基、カルボン酸基及びエステル結合
    の少なくとも1つを有する結晶性樹脂と、水酸基、カル
    ボン酸基及びエステル結合の少なくとも1つを有する非
    晶性樹脂と、重合触媒とを加熱混合し、成形してなるこ
    とを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載
    のエンドレスベルト。
  7. 【請求項7】 DSC(示差走査熱量測定)による1回
    目の昇温による融解ピークを示すピーク温度と冷却後2
    回目の昇温による融解ピークを示すピーク温度との差が
    30℃以下であることを特徴とする請求項1ないし6の
    いずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  8. 【請求項8】 結晶性樹脂の分子鎖と、非晶性樹脂の分
    子鎖間に化学結合が存在することを特徴とする請求項6
    又は7に記載のエンドレスベルト。
  9. 【請求項9】 結晶性樹脂の分子鎖と非晶性樹脂の分子
    鎖間の化学結合1molあたりの、結晶性樹脂と非晶性
    樹脂の合計質量が、300,000g以下であることを
    特徴とする請求項8に記載のエンドレスベルト。
  10. 【請求項10】 成分の重量比が下記条件を満たしてい
    ることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に
    記載のエンドレスベルト。結晶性樹脂/非晶性樹脂の重
    量比が、1/99〜99/1重合触媒中の金属が、結晶
    性樹脂及び非晶性樹脂の合計重量に対し、1ppm〜1
    0000ppm
  11. 【請求項11】 結晶性樹脂の配合比率をX重量部,ポ
    リスチレン(PS)換算重量平均分子量をMw、非晶
    性樹脂の配合比率をY重量部,PS換算重量平均分子量
    をMw、結晶性樹脂、非晶性樹脂及び重合触媒を加熱
    混練した後に得られる樹脂組成物のPS換算重量平均分
    子量をMwとしたとき、下記関係を満たすことを特徴
    とする請求項6ないし10のいずれか1項に記載のエン
    ドレスベルト。 【数1】
  12. 【請求項12】 PS換算重量平均分子量が130,0
    00以上であることを特徴とする請求項6ないし11の
    いずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  13. 【請求項13】 重合触媒がTiを含有することを特徴
    とする請求項6ないし12のいずれか1項に記載のエン
    ドレスベルト。
  14. 【請求項14】 重合触媒が、アルカリ金属、アルカリ
    土類金属及び亜鉛よりなる群の少なくとも1種と、Ti
    とを含有することを特徴とする請求項13に記載のエン
    ドレスベルト。
  15. 【請求項15】 重合触媒がMgとTiとを含有するこ
    とを特徴とする請求項14に記載のエンドレスベルト。
  16. 【請求項16】 結晶性樹脂がPAT(ポリアルキレン
    テレフタレート)であることを特徴とする請求項6ない
    し15のいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  17. 【請求項17】 PATがPBT(ポリブチレンテレフ
    タレート)であることを特徴とする請求項16に記載の
    エンドレスベルト。
  18. 【請求項18】 非晶性樹脂がPC(ポリカーボネー
    ト)であることを特徴とする請求項6ないし17のいず
    れか1項に記載のエンドレスベルト。
  19. 【請求項19】 カーボンブラックを3〜30重量%含
    有することを特徴とする請求項1ないし18のいずれか
    1項に記載のエンドレスベルト。
  20. 【請求項20】 シームレスベルトであることを特徴と
    する請求項1ないし19のいずれか1項に記載のエンド
    レスベルト。
  21. 【請求項21】 請求項1ないし20のいずれか1項に
    記載のエンドレスベルトからなる画像形成装置用中間転
    写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルト、又は定着ベ
    ルトである画像形成装置用ベルト。
  22. 【請求項22】 請求項21に記載の画像形成装置用ベ
    ルトを含むことを特徴とする画像形成装置。
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