JP3948227B2 - エンドレスベルト、画像形成装置用ベルト及び画像形成装置 - Google Patents

エンドレスベルト、画像形成装置用ベルト及び画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形寸法安定性及び耐屈曲性などの物性に優れた無端(エンドレス)のエンドレスベルト及び該エンドレスベルトを用いた、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等に利用される中間転写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルト等の画像形成装置用ベルト並びにこの画像形成装置用ベルトを含む画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりOA機器等などの画像形成装置として、感光体、トナーを用いた電子写真方式や感光体を用いずにトナーを直接エンドレスベルト上に転写させるトナージェット方式が考案され上市されている。これらの装置には継ぎ目の有無に関わらず感光体ベルト、中間転写ベルト、搬送転写ベルト、転写分離ベルト、帯電チューブ、現像スリーブ、定着用ベルト、トナー転写ベルト等の導電性、半導電性、絶縁性の各種電気抵抗に制御したエンドレスベルトが用いられている。
【0003】
例えば、中間転写装置は、中間転写体上にトナー像を一旦形成し、次に紙等へトナーを転写させるように構成されている。この中間転写体の表層におけるトナーへの帯電、除電のためにシームレスベルトよりなるエンドレスベルトが用いられている。このシームレスベルトは、マシーンの機種毎に異なった表面電気抵抗や厚み方向電気抵抗(体積電気抵抗)に設定(導電、半導電、絶縁)されている。
【0004】
また、搬送転写装置は、紙を一旦搬送転写体上に保持した上で感光体からのトナーを搬送転写体上に保持した紙上へ転写させ、さらに除電により紙を搬送転写体より離すように構成されている。この搬送転写体表層においては紙への帯電、除電のためにシーム有り、無しのエンドレスベルトが用いられている。このエンドレスベルトは、上記と同様にマシーン機種毎に異なった表面電気抵抗や厚み方向電気抵抗(体積電気抵抗)に設定されている。
【0005】
図5は従来のエンドレスベルトよりなる中間転写ベルトを用いた電子写真装置の側面図である。図中、1は感光ドラム、6は導電性エンドレスベルトである。1の感光ドラムの周囲には、帯電器2、半導体レーザー等を光源とする露光光学系3、トナーが収納されている現像器4及び残留トナーを除去するためのクリーナー5よりなる電子写真プロセスユニットが配置されている。導電性エンドレスベルト6は、搬送ローラ7,8,9に掛け渡されて、矢印方向に回転する感光ドラムと同調して矢印方向に移動するようになっている。
【0006】
次に、動作について説明する。まず矢印A方向に回転する感光ドラム1の表面を帯電器2により一様に帯電する。次に、光学系3により図示しない画像読み取り装置等で得られた画像に対応する静電潜像を感光ドラム1上に形成する。静電潜像は現像器4でトナー像に現像される。このトナー像を、静電転写機10により導電性エンドレスベルト6へ静電転写し、搬送ローラ9と押圧ローラ12の間で記録紙11に転写する。
【0007】
ところで、電子写真式複写機等の導電性エンドレスベルトの場合には、機能上2本以上のロールにより高張力で高電圧にて長時間駆動されるため、十分な機械的、電気的耐久性が要求される。
【0008】
特に、中間転写装置等に使用される転写ベルトの場合は、ベルト上でトナーによる画像を形成して紙へ転写するため、駆動時にベルトが弛んだり、伸びたり、蛇行したりすると、画像ズレの原因となるため、高寸法精度(ベルト幅方向の周長差が少ないことと厚みが均一であること)、高弾性率(引っ張りに対し伸びにくいこと)、高耐屈曲性(割れにくいこと)に優れたものが望まれている。
【0009】
また、感光体から転写ベルトへのトナーの転写(一次転写)や、転写ベルト上のトナーを紙へ転写(二次転写)するため、転写ベルトの電気抵抗特性が画質の鮮明さに影響を与え、ある程度の導電性(半導電)のレベルが必要なことと、エンドレスベルトの電気抵抗値のバラツキがある範囲以下の均一性であることが望まれている。
【0010】
さらには、近年、プリンターや複写機等については世界中に商品が出回るため、温度10〜30℃、湿度20%〜80%といった広い温度や湿度等の外部環境を想定した部品設計、マシーン設計をする必要があり、このような広い温度湿度環境下においても耐屈曲性、ヤング率等に代表される機械物性や、電気抵抗に代表される電気物性や、寸法特性を満足した低価格なエンドレスベルトが望まれている。
【0011】
特に、上質紙、再生紙、裏紙、OHPフィルムのような様々な用紙が用いられる画像形成装置においては、紙等の転写紙やトナーや、転写ベルトがそれぞれ温度,湿度の環境において電気抵抗値が変化することに起因する画像不良がしばしば報告されている。従来では、転写ベルトも紙もトナーも湿度により抵抗値が変化する傾向にあったため、低温低湿から高温高湿までの広い環境条件での使用を可能とするために、装置内部に環境センサーなる温度湿度センサーを入れ、それぞれの環境で転写電圧等の設定を変更する機構を取り入れる場合が多いが、この場合には装置が高価になるといった問題がある。このようなことから、転写ベルトにおいては、温湿度環境変動においても電気抵抗、寸法等が安定であることが望まれていた。
【0012】
このようなエンドレスベルトは、トナー画像を決定する重要部品であり、感光体、トナーとともに3大重要部品の一つと考えられている。
【0013】
そのため転写ベルトに要求される特性を整理すると次の▲1▼〜▲7▼が挙げられる。
▲1▼ 半導体領域にて所定の表面抵抗率と体積抵抗率を有し、抵抗バラツキが少ないこと。
▲2▼ トナー離型性を有していること。
▲3▼ 厚みが薄く均一であること。
▲4▼ 機械的強度が強い(伸びにくく、割れにくい)こと。
▲5▼ 環境(温度湿度)による抵抗値、寸法、機械強度の変動が少ないこと。
▲6▼ 低コストであること。
▲7▼ シームレスで真円(ベルト幅方向の周長差が少ない)ベルトであること。
【0014】
また、近年のマシーンの高速印刷化に伴い、ベルトを駆動する速度が速まり、特にベルトの耐久性を向上させる必要が出てきている。
【0015】
特に、感光体を4つ並べたタンデム型の搬送転写、中間転写ベルトやトナージェット用ベルトでは高速で印刷できる点で注目されており、特に耐久性と画像ズレが重要となっている。
【0016】
現在までエンドレスベルトとしては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル等の樹脂組成物中に、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを添加し、これを数十〜数百μm程度の厚さに成形することで所定の電気抵抗率(表面抵抗率、体積抵抗率)に設定したベルトを中間転写体用ベルト、紙搬送とトナー転写を兼ねた搬送転写用ベルトを得ていることが知られている(特開昭63−311267号公報、特開平5−170946号公報、特開平6−228335号公報等)。
【0017】
なお、エンドレスベルトの作製方法としては次のような方法が考えられている。
【0018】
(i) 回転成形法(又は遠心成形法とも表現する場合がある)
円筒状金型の内周面に溶液を溶かした樹脂を入れ、金型を回転させながら温度を加え、溶媒を半分以上揮発させてから金型の内部よりシームレス状のチューブを取り出す工程と、別の円筒状金型の外部にシームレスチューブを装着し、温度を加えて熱硬化反応をさせる工程とからなる(特開昭60−170862号公報)。この方法は、主にポリイミド製転写ベルトの製造に用いられる。
【0019】
(ii) 押出成形法
導電性フィラーをコンパウンドした樹脂を環状に溶融押出しする方法である。この方法は、主にエチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリイミド系転写ベルトの作製方法に用いられている。
【0020】
(iii) ディッピング法
樹脂溶液を円筒状又は円柱状金型外面にディッピング塗布等により一定厚みに塗布し、加熱成膜した後、金型より成膜したチューブ状フィルムを引き抜く方法である。この方法は、主にポリフッ化ビニリデン製転写フィルムの作製に用いられている。
【0021】
(iv) ゴム押出し成形法
ポリウレタンゴムを筒状に押し出し加硫した後、表面研磨し、再外層表面にフッ素樹脂等をコートする方法が報告されている(電子写真学会誌33(1)43(1994)。
【0022】
従来、このような導電性エンドレスベルトとしては、熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂にカーボンブラックや導電性金属フィラーなどの導電性フィラーを配合して成形したものやイオン導電性物質を配合して成形したものが主として用いられている。なかでも、熱可塑性樹脂を主成分にしたものは、連続成形が容易であり、低コスト化が狙える点で広く用いられてきた。熱可塑性樹脂の中でも熱可塑性非晶性樹脂は、熱可塑性結晶性樹脂よりも寸法精度に優れる。このような熱可塑性非晶性樹脂製エンドレスベルトとしては、例えばポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂に導電性のカーボンブラックを配合し、円筒ダイを用いて筒状フィルムに押出成形し、この筒状フィルムを輪切りにしたものが知られている(特開平3−89357号公報等)。
【0023】
しかしながら、熱可塑性樹脂非晶性樹脂は熱可塑性結晶性樹脂よりも寸法精度には優れるが、耐屈曲性に劣り、例えば中間転写ベルトなどとして電子写真に用いた場合、使用中にクラックが発生しやすい。
【0024】
この問題点を解決すべく、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートとを配合してなるエンドレスベルトが提案されている(特開平4−313757号公報、特開平6−149083号公報)。
【0025】
しかしながら、ポリカーボネート(以下、PCということがある。)とポリブチレンテレフタレート(以下、PBTということがある。)等のポリアルキレンテレフタレート(以下、PATということがある。)とを配合してなるエンドレスベルトは、上記のポリカーボネートからなるエンドレスベルトよりも耐屈曲性が改良されているものの、改良の効果がまだ不十分である。また、ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、結晶性が高いので、その配合量を多くするとエンドレスベルトの寸法精度が低くなる。
【0026】
なお、一般的な知見として、熱可塑性樹脂は結晶性熱可塑性樹脂と非晶性熱可塑性樹脂に大別でき、結晶性熱可塑性樹脂は耐屈曲性や耐薬品性に優れるが成形収縮率が大きいので寸法安定性が悪い。逆に非晶性熱可塑性樹脂は成形寸法安定性に優れるが耐屈曲性が悪く耐薬品性が劣るなどの問題点を有しているとされてきた。
【0027】
しかしながら、多くの場合、耐屈曲性や耐薬品性及び成形寸法安定性等の全ての特性において優れることが要求されている。なお、耐薬品性については、画像形成装置内ではシリコンオイルの揮発分が飛散しているため、必要となる。
【0028】
これらの要求を満たすために、これまで結晶性熱可塑性樹脂と非晶性熱可塑性樹脂とのアロイ化による物性改良の検討が種々なされ、一定の成果があげられてきた。
【0029】
これらの研究では、例えば熱可塑性エステル系樹脂の分野においてはエステル交換反応(共重合化)を促進させることで結晶性エステル系樹脂と非晶性エステル系樹脂を微分散化できることが報告されている。しかしながら、これまでの技術ではエステル交換(共重合化)を促進させると、解重合による低分子量体発生がエンドレスベルトの発泡を伴ったり、分子鎖切断が進行して分子量低下によるエンドレスベルトの機械物性低下(引張破断伸率が小さくなるなど)を伴う等の理由により事実上実用化されるには至っていなかった。
【0030】
このため、実際にはエステル交換反応を抑制することで物性低下を防いだ樹脂製品が実用品として用いられてきた。
【0031】
また、最近では、PC/PAT、PAT/PCのアロイの組み合わせだけではなく、PAr(ポリアリレート)/PET、PAT/PA(ポリアミド)、PC/PA、PSu(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)/PBT、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の各種のエンジニアリングプラスチックを組み合わせたアロイ系ベルトが提案されている。
【0032】
しかしながらこれらアロイ材料は、元来、耐屈曲性が悪い上に、半導電性を発現させるために、カーボン等の導電性物質を添加することでさらに耐屈曲性が悪くなるといった問題があった。また、低コスト化を狙う押出成形に用いた場合、耐熱性のエンジニアリングプラスチックであるために高温で加熱押し出しする必要があり、導電性物質そのものが劣化したり、樹脂との分解反応を促進させたりする場合が多く、分解ガスがベルト上に残り、ベルト外観を悪化させたり、分解により耐折れ性が極端に悪化したりするといった問題もあった。
【0033】
このようにフィルム状のエンドレスベルト材としての材料は、非常に制約が多く、エンドレスベルトの性能、価格を充たす樹脂が提供されていないのが現状であった。
【0034】
一方、導電性物質についても樹脂と同様、様々な研究がなされている。特に、半導電性の領域で電気抵抗値を均一に制御することは難しく、抵抗値のバラツキを均一化にする目的で様々な試みがなされている。
【0035】
例えば、特開2001−131410においては、カーボンブラックの特性として比表面積や吸油量が小さく、揮発分が大きいものが電気抵抗値が安定する旨報告されており、特開2001-47451では、揮発分10〜25%,pH4以下の酸性カーボンを用いたPI(ポリイミド)ベルトが、特開2001-51520では、粒径0.1μm以下のカーボンブラックを用いたベルトが、特開2000-338789では、揮発分2%以上のカーボンブラックを用いたベルトが、特開2000-309712では、揮発分2%〜30%のカーボンブラックを用いたベルトが、特開2000-264474では、樹脂被覆カーボンブラックを用いたベルトが、更に、特開2000-293047では、吸着水分量が8×10-3mg/m2以下のカーボンブラックを用いたベルトがそれぞれ報告されている。
【0036】
しかしながら、小粒径のカーボンブラックでは、絶縁樹脂中にカーボンブラックを配合する際にカーボンブラックが凝集しダマになりやすく、ベルトに加工する際に外観不良が発生しやすい。また、水分を吸着しやすいため、溶融加熱する際にカーボンブラックに吸着した水分がガスとなり樹脂中に残り、外観不良を発生するといった問題もあった。
【0037】
また、揮発分が大きいカーボンブラックでは、樹脂を溶融加熱した際に揮発分がガスとなり樹脂中に気泡が残り、外観不良を発生させる問題があった。
【0038】
樹脂被覆カーボンブラックでは、カーボンブラックに均一に樹脂被覆することが難しくロット毎のバラツキによるエンドレスベルトの抵抗のバラツキが発生しやすい問題があり、吸着水分量が低いカーボンは、分解ガスが出にくい利点はあるが、カーボンブラック自身の電気抵抗値が低いため、エンドレスベルトに加工した際に電気抵抗のバラツキが多くなるといった問題があった。
【0039】
従って、これらのカーボンブラックをエンジニアリングプラスチックに配合して押出成形するような高温加熱混練条件においては、ガスの発生、ダマの発生の問題や、抵抗値のバラツキの問題があり、実用化は困難であった。
【0040】
【発明が解決しようとする課題】
従来のエンドレスベルトのうち、市販されているポリカーボネート(PC)からなるエンドレスベルトでは、耐屈曲性が悪く、ローラーにてベルトを駆動させているうちにベルトにクラックが入り破損するといった問題があった。
【0041】
ポリアルキレンテレフタレート(PAT)からなるエンドレスベルトでは、PCベルトより耐屈曲性が改良されているものの近年の装置寿命まで使用できるエンドレスベルトとしての市場ニーズを十分満足させたレベルには達していなかった。
【0042】
フッ素樹脂からなるエンドレスベルトでは、耐屈曲性は満足させているもののヤング率が1000〜1400MPaと低く、張力を架けると伸び易く、色ズレを起こしたり、トナーが変形された状態で紙へ転写されることがあったりする問題があった。
【0043】
ポリイミド(PI)からなるエンドレスベルトでは、耐屈曲性は満足させているものの熱硬化性樹脂のため連続成形ができないことと、プラスチックの中で最も高価であること等により高価格のベルトになってしまう問題があるのに加え、弾性率が約6000MPaと高いため、ベルトを駆動する際にモータ負荷がかかるためか厚み設定を薄くするしかなく、一旦ローラーとベルト間にゴミが入り込んだり、感光体との摩擦による傷等が入るとクラックが入り易く信頼性に問題があった。
【0044】
ゴムからなるエンドレスベルトでは、トナー離型性が悪く、積層にする等の方法により解決しようと試みられているが、そのために加硫、表面研磨、外層フッ素樹脂コート等工程が複雑となってしまい高価格となり易いことと、弾性率が低く伸び易いこと等の問題があった。
【0045】
OA機器などの画像形成装置では、価格や、耐屈曲性、ヤング率といった機械特性に加え、電気特性が非常に重要であり、電気抵抗値がある範囲に均一にコントロールされていなければならない。そのためには、カーボンブラックや金属酸化物等の各種導電性フィラーを添加させる検討が多々報告されているが、導電性フィラーを樹脂に混ぜると導電性フィラーと樹脂との親和性が無いことが悪影響を及ぼし耐屈曲性等の機械物性が急激に低下するといった問題があるとともに電気抵抗値のコントロールが難しい。
【0046】
さらには、前述の如く、プリンターや複写機等については世界中に商品が出回るため温度10〜30℃、湿度20%〜80%といった広い温度や湿度等の外部環境を想定した部品設計、マシーン設計をする必要があり、このような広い温度湿度環境下においても耐屈曲性、ヤング率等に代表される機械物性や、電気抵抗に代表される電気物性や、寸法特性を満足した低価格なエンドレスベルトへの要求は益々高まっているが、未だ十分に満足しうるものが提供されておらず、中間転写ベルトや、搬送転写ベルトとして画像形成装置に組み込まれ場合には、夏場と冬場の外部環境温度、湿度の差によって画像が変化するといった問題や、一度夏場使用した画像形成装置は、冬場には画像特性が変化したり、収縮したり、耐久性が急激に悪化するといった問題が生起しているのが現状である。
【0047】
従って、本発明の目的は、耐屈曲性や耐薬品性、寸法安定性、電気抵抗及びこれらの特性の外部環境安定性にすぐれ、しかも安価なエンドレスベルトと、このエンドレスベルトを用いた画像形成装置用ベルト及び画像形成装置を提供するものである。
【0048】
【課題を解決するための手段】
本発明のエンドレスベルトは、樹脂及びカーボンブラックを主成分とする、100Vの印加電圧における表面抵抗率が1×10〜1×1014Ωであるか或いは体積抵抗率が1×10〜1×1014Ω・cmであるエンドレスベルトにおいて、該カーボンブラックが、DBP吸油量50〜300cm/100g、比表面積35〜500m/g、揮発分0〜20%、平均一次粒径20〜50nmであり、該カーボンブラックが下記(1)(2)の式を満たすように配合されている共に、樹脂として2種以上の樹脂を含み、該2種以上の樹脂による海島構造が形成されているエンドレスベルトであって、該エンドレスベルトの表面部と厚み方向の中央部とで異なる海島構造が形成されていることを特徴とする。
logY≧−X+20 …(1)
logY≦−X+30 …(2)
ただし、X,Yは以下の通り。
X:エンドレスベルト中のカーボンブラックの含有量(重量%)
Y:エンドレスベルトの100V印加電圧での表面抵抗率(Ω)
又は体積抵抗率(Ω・cm)
【0049】
なお、Y(Ω又はΩ・cm)は1×10〜1×1014(Ω又はΩ・cm)の範囲であり、従って、6≦logY≦14であるので、本発明において、XとlogYは、図1に示すX−Y座標において、斜線で示す領域の範囲内に存在する。
【0050】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、機械的ストレスや電気的なストレスによる耐久性に優れ、かつ画像形成装置が使用される温度湿度等の外部環境の変化による物理的寸法変化、電気特性変化、機械特性変化の少ないベルトの特性として、まず、1)導電性物質のカーボンブラックの分散性に着目した。
【0051】
多くの場合、プラスチックは絶縁性であるため、表面抵抗率1×10〜1×1014Ω又は体積抵抗率1×10〜1×1014Ω・cmの導電性材料或いは半導電性材料を作製する場合、絶縁性のプラスチック中の導電性物質を添加する。そのため、電気抵抗特性は、プラスチック中に導電性物質の分散形態に大きく起因する筈であり、また材料の機械的特性も導電性物質の分散形態に大きく起因する筈であると考えた。
【0052】
次に、電気抵抗値の変動の原因について、2)接触抵抗に着目した。
【0053】
即ち、従来のベルトの表面方向に流れる電気抵抗(表面電気抵抗)、ベルトの厚み方向に流れる電気抵抗(体積電気抵抗)という電気抵抗の考え方以外にもうひとつの電気抵抗の考え方が画像形成装置に用いられる半導電性ベルトには必要であると考えた。この電気抵抗の考え方とは、電極と被測定物との接触に関する抵抗(接触抵抗と称す。)である。
【0054】
半導電性のエンドレスベルトの電気抵抗は、本来のエンドレスベルト材の電気抵抗(表面電気抵抗、体積電気抵抗)と接触抵抗の和により決められると考え、特に接触抵抗が温度湿度環境により変化するため、転写ベルトの電気抵抗が変化するという考え方が必要であると考えた。
【0055】
この接触抵抗を小さくすることが、電気抵抗値の環境に対する安定化のためには必要であり、そのためにはエンドレスベルト表面上にカーボンブラックの分散が粗になるようないわゆるスキン層をなるべく作ることなく、電気抵抗値を半導電領域に制御することが重要であること、そのためには特定のカーボンブラックを用い、カーボンブラック添加量をできるだけ多く、しかも機械強度、ベルト外観を損なわない程度に配合することにより電気抵抗、機械強度を満足させたエンドレスベルトができるとの考えのもとに種々の実験を行い、以下の▲1▼〜▲4▼の知見を得た。
【0056】
▲1▼ 特定のカーボンブラック配合量にて得られた特定の電気抵抗を有する半導電性エンドレスベルトが、電気的環境安定性を満足させる。即ち、電気抵抗値レベルにあった適度な濃度を含有したカーボンブラックを配合し、溶融混練中或いは成形加工中に高剪断力を加えながら電気抵抗を制御して得られたエンドレスベルトが、外観を損なうことなく環境による電気抵抗変化が少なくなることを知見した。これは、このようにすることでエンドレスベルトの表面近傍にスキン層を作ることなく、カーボンブラックが点在するため、接触抵抗が非常に少なくなることによると推定される。
【0057】
▲2▼ 特定のストラクチャー(DBP吸油量)と粒径又は比表面積、揮発分のカーボンブラックが分散性が良く、従って、抵抗値のバラツキが少なく、かつガス発生を防止できる。
【0058】
▲3▼ エンドレスベルトの表面部と中央部のアロイ相構造に着目して検討した結果、結晶性樹脂のガス非透過性効果と非晶性樹脂の低収縮性特性を両立させかつ、機械的強度を有し、かつ電気特性が安定したエンドレスベルトに必要な相形態は、エンドレスベルトの表面部と中央部とでアロイ相構造の海島構造が異なることが重要である。
【0059】
即ち、ベルト断面における表面部と厚み方向中央部分とが同じ海島構造であるものよりも、これらが互いに異なる海島構造であることが、結晶性樹脂のガス非透過性効果と非晶性樹脂の低収縮性特性とを効果的に発揮させ、広範な外部環境条件下で寸法収縮が起こりにくく、電気的に安定であるとともに、耐屈曲性に優れたエンドレスベルトを実現する上で重要であること、特に、表面部分が層状で規則性があり、厚み方向の中央部分がランダム状の海島構造の相形態であることが好適であることが判明した。
【0060】
▲4▼ 重合触媒を加熱混合して得られたアロイが優れた耐折れ性を発現する。
【0061】
上記▲1▼〜▲4▼の知見について、さらに以下に詳細に説明する。
【0062】
(カーボンブラックについて)
カーボンブラックには多種多様なものが存在し、カーボンブラックをゴムや樹脂に配合し分散させて導電性をコントロールする際の重要な因子は、カーボン粒子径(比表面積)、カーボン粒子が連続的に連なったカーボンストラクチャー(DBP吸油量)、カーボン粒子表面の物理化学的性質(揮発分)であると言われている。
【0063】
そこで、カーボンブラックの粒子径(比表面積)、DBP吸油量(ストラクチャー発達度に関係)、カーボンブラックの揮発分について実験を行った。
【0064】
1)カーボンブラックの粒子径(比表面積)について
カーボンブラックの比表面積が大きいほど、少ない添加重量で導電性が発現するため、得られるエンドレスベルトの割れにくさの点で有利となる反面、カーボンブラック添加量の多少の変化で導電性が急激に変化する傾向にあるため半導電領域にコントロールするためには±0.05%以内の配合精度が必要となり、エンドレスベルトの抵抗バラツキを±1オーダー以内で均一にすることが難しくなる。また、比表面積が大きいカーボンブラックは一般に粒径が小さいため、樹脂中に分散させる場合にカーボンブラック粒子がダマになりやすく、その結果、カーボン凝集体が成形品に混在し、カーボン凝集体の箇所に電気が集中し部分的な絶縁破壊を発生させやすいことが判明した。
【0065】
また、カーボンブラックの比表面積が小さすぎる(カーボン粒子が大きすぎる)と、カーボン凝集体を形成しにくいため、成形品の外観は平滑な反面、カーボン粒子間の接触により導電性発現が左右されやすくなり、電気抵抗値がバラツキやすくなることが判明した。
【0066】
2)カーボンブラックのDBP吸油量について
カーボンブラックのDBP吸油量が大きいほど、カーボンは数珠状に連なった連鎖(カーボンストラクチャー)を形成しやすく、カーボン凝集体が発生しにくく、また、少ない添加量で導電性を発現しやすいため低コストとなるという利点があるが、その反面、材料配合から成形加工の過程においてカーボンブラックを配合した樹脂に加えられる様々な剪断力によりカーボン連鎖が壊れて電気抵抗値がバラツキやすく安定しないといった問題点があった。
【0067】
反対にカーボンブラックのDBP吸油量が少なすぎると、カーボン連鎖を形成しにくいため導電性を発現させるためのカーボン添加量が多くなりすぎ、材料の耐屈曲性を損なう問題点がある。
【0068】
3)カーボンブラックの揮発分について
カーボンブラックの揮発分が多いほど、その表面特性により分散性は良好になる反面、加熱混練中にガスを発生させるため好ましくない。
【0069】
カーボンブラックの揮発分が少ないほど、加熱混練中のガスが発生しにくいため、成形性は良好である反面、分散性は悪化する傾向にある。
【0070】
本発明者等は、これらの実験を通して、電気抵抗の環境安定性、電気抵抗のバラツキ均一性、機械特性、外観平滑性をすべて満足させるある特定の電気抵抗のレベルにあった配合量があることを知見した。
【0071】
(海島構造について)
次に、ある特定のアロイ材が耐折性改良に優れた効果があること、ある特定の海島構造が環境安定性、低収縮性に優れた効果があること以下の経緯で見出した。
【0072】
1) 機械特性とアロイ相構造について
高弾性率を有しながら耐屈曲性の優れた機械特性を得るために、まず、最近のエンプラ(エンジニアリングプラスチック)アロイのモルフォロジーに着目した。つまり、結晶性エンプラと非晶性エンプラをアロイ化により共重合(ランダム、グラフト或いはブロック共重合)させた構成のエンドレスベルトが最も安価で耐屈曲性の優れたエンドレスベルトができるはずであるとの知見に基づいて鋭意検討した結果、結晶性ポリエステル系樹脂と他樹脂(例えば非晶性ポリエステル系樹脂)とのアロイ化において、ある特殊なコンパウンド条件にてペレット化し、ある特殊な成形条件にて作られた時に耐屈曲性の優れ、高引張弾性率を維持した低コストで伸びにくいクラックの入りにくいエンドレスベルトになりうることを見出した。
【0073】
一般に、通常のプラスチックのアロイは、相溶性アロイと非相溶性アロイとの2種に大別できる。
【0074】
非相溶性アロイでは、2種類の熱可塑性樹脂を溶融混合しても完全には混じり合わず、海島構造をとることが知られている。両熱可塑性樹脂の体積分率に大きな差がある場合は体積分率の大きい方が海で体積分率が小さい方が島の構造をとり易く、体積分率の差が小さい場合は溶融粘度差が海島構造に影響を与え、溶融粘度の小さい方が海に、大きい方が島になり易いといわれている。
【0075】
この非相溶性アロイでは、必ず異種材料間の海島の境界面が存在するのでその界面が最も破断し易く耐屈曲性を低下させる原因を作っていると推測される。そこで本発明者等はその界面をグラフト重合、ブロック重合等で補強することにより耐屈曲性に優れたエンドレスベルトができあがるはずであると推量した。
【0076】
一方、相溶性アロイでは、異種材料間の界面が存在せず、通常海島構造が認められない。このような相溶状態の材料は耐屈曲性に代表される機械物性等は双方の材料の配合割合に準じた物性になるといわれている。そのため飛躍的な耐屈曲性の改善は見込まれそうにないため、本発明者等は相溶し、かつ共重合化していれば耐屈曲性に代表される機械物性は大幅に改善されるはずであると推量した。
【0077】
つまり非相溶性、相溶性いずれのアロイ化材料でも共重合状態を作ってやることで、最も機械的物性に優れたエンドレスベルトができあがるはずであるとの考えに至り実証すべく鋭意検討した。
【0078】
そこで、まず低価格であるポリエステル系樹脂に着目した。
【0079】
一般にポリエステル系樹脂のアロイでは、エステル交換反応と呼ばれるお互いの分子切断が行われ相互に交換し合うことが知られている。また、このエステル交換反応は、一般的に分子鎖分断を伴うので結果として発泡したり脆くなったりして機械的物性を低下させる原因となっているともいわれている。
【0080】
しかし、本発明者等はこのエステル交換反応には共重合的な反応も同時進行しているはずであると考え、ある特定の条件を設定すれば、分子鎖切断等による機械的物性低下を抑制しつつエステル交換反応をさらに共重合反応へと移行させることができるのではないかとの推測のもとに材料、コンパウンド条件、成形条件を検討した結果、同じ配合のエンプラを用いて、(i)海島構造を有する構造のもの、(ii)海島構造を有しているが界面が共重合化している構造のもの、(iii)海島構造が見受けられないもの、ができることがわかり、それぞれについて耐屈曲性に代表される機械物性が(i)より(ii)が、また(ii)より(iii)が高くなっていることが判明した。
【0081】
さらには、(ii)或いは(iii)の構造体では、導電性フィラー等の第3成分を添加しても機械的な強度低下は殆どないことが判明した。
【0082】
さらには、導電性フィラーを添加し、ある特定の電気抵抗に制御させた場合でも、上記(ii)或いは(iii)の構造体であれば導電性フィラーが共重合化された樹脂成分に固定されているため、電気的にも安定であり経時的にも変化が少ないことが判明した。
【0083】
さらには、このような構造体であっても、導電性フィラーの濃度コントロールや成形加工の条件変更等による従来の技術を用いた電気抵抗制御にて任意に設定できることが判明したのである。
【0084】
また、これらの技術を用いることにより、引張弾性率、厚み、引張り破断伸びをコントロールするエンドレスベルトが可能となり、これらの物性とエンドレスベルトの画像ズレ、耐久性の関係を検証することができた。
【0085】
その結果、ある特定の引張弾性率、厚み、引張り破断伸び、耐屈曲性を有したベルトのみが長時間画像ズレ、クラックの発生しないエンドレスベルトになりうることを見出した。
【0086】
しかしながら、外部環境のうち、特に湿度条件により、ベルトの機械物性、寸法特性、電気特性にバラツキが発生することが判明したため、次にベルト断面方向のアロイ相構造に着目しガス透過性とアロイ構造について検討した。
【0087】
2) 外部環境特性とアロイ相構造について
外部環境のうち、特に湿度条件により、ベルトの機械物性、寸法特性、電気特性にバラツキが発生することが判明したため、何らかのガス透過性がベルト物性に影響を与えているのではないかと考え、ガス透過性に影響を与えない構造にするための相構造を検討した結果、単層構造体であってもベルト外表面側と中層側の海島構造が異なる場合には、温度、湿度の環境変動があっても、機械特性、電気特性、寸法特性を満足できる特性範囲に抑えることができることを見出し、本発明のエンドレスベルトに想到した。
【0088】
更には、エンドレスベルトをその円周方向に切断した厚み断面における相形態において、ベルト表面部の海島構造が略円形の島部分を有する海島構造であり、ベルト中央部の海島構造がベルト表面部と比較して楕円形状に近い形状(以下「略楕円形状」と称す。)の島部分を含有する海島構造であるエンドレスベルトが、低収縮性に大きく寄与していることから好ましく、とりわけ、エンドレスベルトをその幅方向に切断した厚み断面における相形態において、ベルト表面部の海島構造が該表面に沿う層状の島部分を有する海島構造であり、ベルト中央部の海島構造がベルト表面部と比較して楕円形状に近い形状、即ち略楕円形状の島部分を含有する海島構造であるエンドレスベルトが好ましいことが判明した。
【0089】
また、本発明者らは、結晶性樹脂と非晶性樹脂と重合触媒を加熱混練し、且つDSC(示差走査熱量測定)による1回目の昇温による融解ピークを示すピーク温度と冷却後2回目の昇温による融解ピークを示すピーク温度との差が30℃以下であるエンドレスベルトは、エステル交換反応などの反応を抑制するこれまでの手法で得たエンドレスベルトよりも長時間にわたり画像ズレがなく、クラックも発生しないことを見出し、本発明のエンドレスベルトに想到した。
【0090】
本発明の画像形成装置用ベルトは、このエンドレスベルトからなる中間転写ベルト、搬送転写ベルト又は感光体ベルト、定着用ベルトである。
【0091】
本発明の画像形成装置は、この画像形成装置用ベルトを含んでなるものである。
【0092】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のエンドレスベルトについて、各項目毎に詳細に説明する。
【0093】
(1)カーボンブラック及び表面抵抗率
本発明のエンドレスベルトは、樹脂とカーボンブラックを主成分とする、100Vの印加電圧における表面抵抗率が1×10〜1×1014Ωであるか、或いは体積抵抗率が1×10〜1×1014Ω・cmで、エンドレスベルト中のカーボンブラックの含有量(以下「カーボンブラック濃度」と称す場合がある。):X(重量%)と、100V印加電圧での表面抵抗率又は体積抵抗率:Y(Ω又はΩ・cm)の関係が
logY≧−X+20 …(1)
logY≦−X+30 …(2)
であり、X,logYが図1に示すX−Y座標において、斜線で示す領域の範囲内に存在するものである。
【0094】
即ち、カーボンブラック濃度は6重量%以上であり、例えば、表面抵抗率又は体積抵抗率が1×10(Ω又はΩ・cm)のベルトの場合は、カーボンブラック濃度は14〜24重量%であり、表面抵抗率又は体積抵抗率が1×1010(Ω又はΩ・cm)のベルトの場合は、カーボンブラック濃度は10〜20重量%であり、表面抵抗率又は体積抵抗率が1×1014(Ω又はΩ・cm)のベルトの場合は、カーボンブラック濃度6〜16重量%であることが高温高湿から低温低湿での環境変動に対する、電気抵抗値の変動が少ないエンドレスベルトとすることができる。
【0095】
X,Yは、特に
logY≧−X+21
logY≦−X+29
であることが好ましい。
【0096】
上記範囲を超えてカーボンブラック濃度が高いと、カーボンブラック自身の分解ガス等の発生により製品の外観を悪化させると共に、カーボンブラックと樹脂との反応により樹脂が分解して発泡に由来する傷が発生するため、外観上好ましくない。また、耐折れ性も悪化する。
【0097】
上記範囲を超えてカーボンブラック濃度が低いと、導電性を発現できなくなる上に、カーボンブラック分散状態が粗くなり電気抵抗値がバラツキやすくなり、また、接触抵抗が大きく環境に左右されるようになり、画像形成装置にエンドレスベルトとして搭載した場合、環境によっては画像異常を発生させる場合がある。
【0098】
本発明では、環境安定性と電気抵抗値の均一性、外観を損なうことがないといった点から、カーボンブラックとしてDBP吸油量50〜300cm/100g、比表面積35〜500m/g、揮発分0〜20%、平均一次粒径20〜50nmを満たすカーボンブラックを用いる。
【0099】
カーボンブラックは、上記DBP吸油量、比表面積、揮発分、平均一次粒径を満たすものであれば、その種類には特に制限はなく、また、使用するカーボンブラックは1種類であっても2種類以上であっても良い。
【0100】
例えば、カーボンブラックの種類としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが好適に使用でき、この中でも不純物としての官能基が少なくカーボン凝集による外観不良を発生しにくいアセチレンブラックが特に好適に使用できる。また、樹脂を被覆したカーボンブラックや、加熱処理したカーボンブラックや黒鉛化処理したカーボンブラックや、酸性処理したカーボンブラック等の公知の後処理工程を施したカーボンブラックを用いても何ら問題はない。
【0101】
更に、分散性を向上させる目的、ガス発生を抑制させる目的でシラン系、アルミネート系、チタネート系、及びジルコネート系等のカップリング剤で処理したカーボンブラックを用いても良い。
【0102】
(2) アロイ分散形態(海島構造)
一般に、2種類の熱可塑性樹脂を溶融混合すると、完全に混じり合う場合(以下「完全相溶化」と称す場合がある。)と完全に混じり合わず海島構造をとる場合がある。
【0103】
後者において、一般に両熱可塑性樹脂の体積分率に大きな差がある場合は体積分率の大きい方が海で体積分率が小さい方が島の構造をとりやすく、体積分率の差が小さい場合は溶融粘度差が海島構造に影響をあたえ、溶融粘度の小さい方が海に、大きい方が島になりやすいと言われている。
【0104】
そして、海島構造体が形成されるように材料調整を行った場合において、得られる海島構造の海と島の形状は、成形加工条件によって、成形加工中に加わる溶融樹脂配向や溶融樹脂に加わる応力(剪断応力、剪断速度)、或いは剪断履歴、溶融樹脂が冷却される過程での配向、剪断応力、剪断速度等の影響で任意に変化する。
【0105】
従って、エンドレスベルトとして最適な海島構造体とするには、材料配合、材料混練条件、成形加工条件を調整することが重要となる。
【0106】
本発明のエンドレスベルトでは、機械的なストレスや電気的なストレスによる耐久性に優れ、かつ画像形成装置が使用される温度、湿度等の外部環境の変化による物理的寸法変化、電気特性変化、機械特性変化の少ないベルトを得るアロイ相構成として、エンドレスベルトの表面部(この表面部とは、環状のエンドレスベルトの外表面であっても内表面であっても良いが、少なくとも外表面、好ましくは外表面と内表面である。)と厚み方向中央部とで異なる海島構造を有するもの、より好ましくは、エンドレスベルトをその円周方向に切断した厚み断面における相形態において、ベルト表面部の海島構造が略円形の島部分を有する海島構造であり、ベルト中央部の海島構造が略楕円形状の島部分を含有する海島構造であるもの、更に好ましくは、エンドレスベルトをその幅方向に切断した厚み断面における相形態において、ベルト表面部の海島構造が該表面に沿う層状の島部分を有する海島構造であり、ベルト中央部の海島構造が略楕円形状の島部分を含有する海島構造であるものとする。
【0107】
即ち、前述の如く、結晶性樹脂のガス非透過性効果と非晶性樹脂の低収縮性特性を両立させ、かつ機械的強度を有し、更に電気特性が安定したエンドレスベルトに必要な相形態は、エンドレスベルトの表面部と厚み方向の中央部とでアロイ相構造の海島構造が異なることが重要であり、厚み方向の外層部分、中間層部分、内層部分とも同じ海島構造の場合より、中間層部分と表面層部分とが異なる海島構造であると、効果的にガス非透過性を発揮し、広範囲の環境条件下で寸法収縮が起こりにくく、電気的に安定であるとともに、耐屈曲性に優れたものとなる。
【0108】
以下に、本発明に好適な海島構造について、図面を参照して説明する。図2(a)はエンドレスベルトの斜視図であり、図2(b)は図2(a)の一部21の断面における海島構造を示す模式図である。
【0109】
図2中、A面はベルト円周方向の切断面を示し、B面はベルト幅方向の切断面を示し、C面はベルト外表面を示し、D面はベルト内表面を示す。
【0110】
このエンドレスベルト20の海島構造は、その厚み方向の断面において、外表面部20a及び内表面部20cと、中央部20bとで異なる海島構造が形成されている。
【0111】
即ち、エンドレスベルト20の円周方向に沿う切断面であるA面においては、内外表面部20a,20cは略円形の島部分を有する海島構造であり、中央部20bはこの内外表面部20a,20cの島形状よりも楕円に近い形状の海島構造である。また、エンドレスベルトの幅方向の切断面であるB面において、内外表面部20a,20cは表面に沿う層状の島部分を有する海島構造であり、中央部20bはこの表面部20a,20cの島形状よりも楕円に近い形状の海島構造であり、しかもこの中央部20bでは、島部分がランダムに配向している。
【0112】
本発明において、エンドレスベルト20の円周方向に沿う切断面であるA面において、内外表面部20a,20cの海島構造の島部分は、平均直径が0.03〜0.15μmで長径/短径の比が1〜5程度の略円形であることが好ましく、また、中央部20bの海島構造の島部分は平均直径(長径)が0.1〜4.0μmで長径/短径の比が2〜50程度の略楕円形であることが好ましい。
【0113】
また、エンドレスベルトの幅方向の切断面であるB面において、内外表面部20a,20cの海島構造の島部分は、表面に沿ってほぼ同方向に配向した長さ0.1〜4.0μmで厚さ0.03〜0.15μmの層状であることが好ましく、中央部20bの海島構造の島部分は平均直径(長径)が0.1〜4.0μmで長径/短径の比が2〜50程度の略楕円形で一方向ではなく、ランダムに配向したものであることが好ましい。
【0114】
なお、このエンドレスベルトの内外表面部20a,20cとは、エンドレスベルトの厚みMに対して概ね3〜6%の部分(即ち、M=M×0.03〜0.06,M=M×0.03〜0.06)であり、中央部20bは、エンドレスベルトの厚みMに対して概ね3〜6%の部分(即ち、M=M×0.03〜0.06)であることが好ましい。
【0115】
本発明の相形態によるエンドレスベルトにおいては、単層ベルトであってもあたかも多層ベルトであるかのように、異なった海島構造が少なくとも2種積層された状態となるため、画像形成装置が使用される温度、湿度等の外部環境の変化による物理的寸法変化、電気特性変化、機械特性変化の少ないエンドレスベルトとすることが可能である。
【0116】
ところで、一般的な溶融混合、加熱押出条件によっては、海島構造の島部分の分散粒径が50μm〜100nm程度にまでしかならないが、加熱混合条件や押し出し条件によっては分散粒径が数nm以下にまで微細化することがありうる。しかし、特に、100nm以下の分散粒径の海島構造体にあっては、2つの樹脂のそれぞれの特徴が発現せず、特に外部環境条件のうち水分がエンドレスベルトに浸透することにより、ベルト物性への悪影響を与えるため好ましくないことから、加熱混合条件や押し出し条件を制御することにより、上述のような大きさの島部分を形成することが好ましい。
【0117】
汎用エンジニアリングプラスチックの結晶性樹脂と非晶性樹脂の2成分をアロイ化した場合を例にとると、一般にPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)などの結晶性樹脂は水蒸気を透過しない点で非晶性樹脂PC(ポリカーボネート)やPAR(ポリアリレート)と比べて好ましいとされるが、上記の理由により海島構造によっては全く透湿性に差が生じることがあるためアロイ相構造には特に注意が必要である。
【0118】
また、結晶部分と非晶性部分をアロイ化した構造やフィラー等を添加した構成の場合、加熱溶融した高分子材料は、冷却過程において構造が変化する場合がある。例えば、急激に冷却したり、フィラー等の存在下では本来結晶化すべき材料が結晶化しきれずに非晶状態で残る場合があるため、一旦成形された成形部材は、高温にさらされると再度結晶化を進行させることがあり、極度に収縮したり、機械強度が極度に低下したりする場合があるため注意する必要がある。
【0119】
このような状態を阻止するためには、アロイ化する成分のうち、結晶成分の材料においては成形部材として結晶化させた状態の構造をとることが好ましい。即ち、アニール処理をすることが好ましい。
【0120】
エンドレスベルトのアニール処理は、ベルトを2本以上のローラに張架させて駆動させながら熱をかけてアニールしてもよいし、円筒状の型にエンドレスベルトを装着して熱処理してもよい。さらには、円筒状のまま熱処理をしてもよい。
【0121】
なお、本発明において、海島構造の島形状の確認手法に特に制限はなく、エンドレスベルトを所定の方向で切断して、四酸化ルテニウム(RuO)等の染料で約2分以上染色して、超薄切片を作成しTEM(透過電子顕微鏡)で観察するなどの公知の方法を用いることができる。
【0122】
なお、この観察には、エンドレスベルトの厚み断面の切断方向により海島構造の形態が変わるため特に注意が必要であり、エンドレスベルトの円周方向に切断した切片と幅方向に切断した切片それぞれについて外側0〜5μm付近、厚み中央部±5μm付近、内側0〜5μm付近の海島形態を観察する。
【0123】
(3) エンドレスベルトの物性
本発明によれば、以下のような物性を有するエンドレスベルトが提供される。
【0124】
(耐折回数)
本発明に用いるエンドレスベルトを例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合には、耐屈曲性が悪いとクラックが発生して画像が得られなくなるので耐屈曲性の良好なエンドレスベルトが好ましい。
【0125】
耐屈曲性の程度は、JIS P−8115の耐折回数の測定方法に従うことで定量的に評価でき、耐折回数の大きいエンドレスベルトほどクラックが入りにくく、耐屈曲性に優れていると判断することができる。
【0126】
具体的な数値としては、5000回を超えていれば装置寿命の間、エンドレスベルトとして優れた機能を発揮して使用することができるが、実用的には8000回以上が好ましく、10000回以上であればさらに好ましく、15000回以上であれば、特にクラックが発生しにくくなり、クラック防止用補強テープ等の二次加工を施さなくても十分な耐クラック性が得られるので特に好ましい。
【0127】
(引張弾性率)
エンドレスベルトの引張弾性率が低いと、例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合に張力により少し伸びが発生してしまい、色ズレなど不具合を発生することがあるため、引張弾性率は高い方が好ましいが、引張弾性率が高すぎる場合には、ベルトを駆動する際にモータ負荷がかかるため、厚み設定を薄くする必要が生じ、また、一旦ローラとベルト間にゴミが入り込んだり、感光体との摩擦による傷等が入るとクラックが入り易く信頼性に問題があるため好ましくない。従って、好ましい引張弾性率は、1500MPa以上5000MPa以下であり、特に好ましい引張弾性率は2000MPa以上4000MPa以下である。なお、この引張弾性率とは、温度23℃,湿度50%でのベルト円周方向の引張弾性率を示す。
【0128】
一般に柔らかいプラスチックは耐折回数が高いが引張弾性率が低くなりやすく、逆に硬いプラスチックは高い引張弾性率を得られるが脆くなりやすく耐折回数は低いものしか得られないことが多い。本発明ではPBTやPCの有する固有の高い引張弾性率の特性を維持したまま、高い耐折回数を得ることができる意味で有用であると言える。
【0129】
(引張弾性率の温度特性)
引張弾性率の温度特性としては、同一の湿度条件において、40℃で引張弾性率が5℃での引張弾性率に対し60%以上であり、60℃での引張弾性率が5℃での引張弾性率に対し20%以上であることが重要である。言い換えると5℃〜40℃間では、引張弾性率の変化は少なく、40〜60℃の間では、適度に低下することが好ましい。
【0130】
40℃での引張弾性率が5℃での引張弾性率に対し60%未満であると、夏場或いは高温条件下でのプリンタや複写機等使用時にベルトが伸びてしまい画像がずれたり、クリープ変形しやすくなったりする。好ましくは、40℃での引張弾性率が5℃での引張弾性率に対し70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
【0131】
また、60℃での引張弾性率が5℃での引張弾性率に対し20%以上であることが重要である。60℃での引張弾性率が5℃での引張弾性率に対し20%未満ならば、数日〜数年にかけての経時的にベルトのクリープ、寸法変化が発生し易いため好ましくない。
【0132】
特に好ましくは、60℃での引張弾性率が5℃での引張弾性率に対し40%以上であり、更に好ましくは60%以上である。
【0133】
(DSCによる融解ピーク特性)
DSC(示差走査熱量測定)による1回目の昇温による融解ピークを示すピーク温度と冷却後2回目の昇温による融解ピークを示すピーク温度との差が30℃以下であることが好ましい。
【0134】
上記ピークは、成形部材が経時的に変化する状態であるのかどうか(未反応状態である部分が残っているかどうか)を示す指標となり、このピーク差が大きいとエンドレスベルトは経時による寸法、機械物性等の経時変化が大きいと考えられるため好ましくない。
【0135】
DSCによる高分子の熱的特性では、熱を与えることにより高分子のミクロなセグメント運動からマクロな運動までの動きを捉えることができる。これに対して、ガラス転移点ではミクロなブラウン運動を、融点では折り畳み運動などを見ている。
【0136】
DSC測定では、まず一定速度で昇温し、次に一定速度で冷却し、更に一定速度で昇温し、融解時での吸熱ピーク点を測定する。その結果、1回目の昇温過程での融解ピーク点の温度と2回目の昇温過程での融解ピーク点の温度差が30℃より大きいと、恐らくはまだ反応しきれずに残っている樹脂量が多いために、高温時での引張弾性率の低下が大きく、高温環境下或いは、数日〜数年の経時によりベルトが伸びてしまうことやクリープによる変形が生じてしまうことがあることが認められた。そして、逆に、この温度差が30℃以下であると、高温時での引張弾性率の低下が小さく、クリープも著しく小さいことが認められる。
【0137】
好ましいピーク温度差は20℃以下であり10℃以下が特に好ましい。
【0138】
常温下でいくら耐久性、引張弾性率等の機械物性が良くても経時的に変化しては部品として使用できるものではないため上記手法による融解ピーク差がある特定範囲に入っていることが重要である。
【0139】
(収縮率)
エンドレスベルトの収縮率特性としては、▲1▼温度50℃、湿度90%で24hr放置後に、温度23℃、湿度50%で測定したベルト円周方向の収縮率と、▲2▼温度50℃、湿度50%で24hr放置後に、温度23℃、湿度50%で測定したベルト円周方向の収縮率と、▲3▼温度50℃、湿度20%で24hr放置後に、温度23℃、湿度50%で測定したベルト円周方向の収縮率がともに0.4%以下であることが好ましい。これらの条件範囲より収縮率が大きいと、エンドレスベルトを輸送、保管中に寸法変化が大きくなり使用できなくなるばかりか、電気特性、機械特性も変化することがあるため好ましくない。
【0140】
さらに好ましい収縮率特性は、▲1▼の条件では0.20%以下、▲2▼の条件では0.25%以下、▲3▼の条件では0.30%以下であり、特に好ましくは、▲1▼,▲2▼,▲3▼の条件とも0.20%以下である。
【0141】
(表面抵抗率と体積抵抗率)
本発明のエンドレスベルトはカーボンブラックを配合することにより導電性を得る。
【0142】
抵抗領域は前述の如く、100Vにおける印加電圧における表面抵抗率1×10〜1×1014Ω又は体積抵抗率1×10〜1×1014Ω・cmの範囲から目的により選定される。
【0143】
さらに好ましい範囲は用途により異なるが、例えば感光体ベルトとして用いる場合には必要に応じて外表面の電荷を内表面に逃がせるように表面抵抗率又は体積抵抗率1×10〜1×10(Ω又はΩ・cm)と低い抵抗率が好ましく、中間転写ベルトとして用いる場合には帯電−転写の容易にできる表面抵抗率又は体積抵抗率1×10〜1×1013(Ω又はΩ・cm)が好ましく、搬送転写ベルトとして用いる場合には帯電しやすく高電圧でも破損しにくい表面抵抗率又は体積抵抗率1×1010〜1×1014(Ω又はΩ・cm)と高い領域が好ましい。
【0144】
また、エンドレスベルト1本中の表面抵抗率又は体積抵抗率の分布は狭い方が好ましく、それぞれの好ましい抵抗率領域において、1本中の最大値と最小値の差が2桁以内であること(最大値が最小値の100倍以下であること)が好ましい。
【0145】
また、表面抵抗率又は体積抵抗率は、温度10℃,湿度20%における印加電圧100Vでの表面抵抗率又は体積抵抗率をRとし、温度30℃,湿度80%における印加電圧100Vでの表面抵抗率又は体積抵抗率をRとしたときに、R/R(以下「電気抵抗環境変動率」と称す)が30以下であることが好ましい。この比が30を超えると温度湿度環境に対する抵抗値の変動が大きく、好ましくない。電気抵抗環境変動率R/Rは特に20以下であることが好ましい。
【0146】
エンドレスベルトの表面抵抗率や体積抵抗率は例えばダイヤインスツルメント(株)製ハイレスタ(商品名),ロレスタ(商品名)やアドバンテスト(株)製R8340A(機種名)などにより容易に測定することができる。
【0147】
(エンドレスベルトの厚み)
エンドレスベルトの厚みが過度に大きいと、ローラとの曲率が大きい場合、ベルト外側と内側の変形差が大きく割れ易くなる。また、外側部に転写されたトナーが変形し、飛散し画像が変形するようになる。一方、エンドレスベルトの厚みが過度に小さいと、わずかなローラとベルト間に入り込んだゴミ、或いは感光体等との接触による傷によりクラックが入り易くベルトが破損し易くなる。従って、エンドレスベルトの平均厚みは70〜300μmであることが好ましく、100〜200μmであればより好ましい。
【0148】
(4) カーボンブラック以外のエンドレスベルト材料
本発明においては、前述の表面抵抗率とカーボンブラックとの関係において、基本的に引張弾性率、引張り破断伸び、耐屈曲性、厚みがある範囲を満たしていれば良く、材料の種類において制限はなく公知の熱可塑性、熱硬化性樹脂を主成分とすることができる。ただし、材料のもつ引張弾性率は1500MPa以上が好ましく、アロイ化する場合でも、それぞれのベース材料の引張弾性率が1500MPa以上が好ましい。
【0149】
特に、本発明の機械物性を得るための好ましい材料は、水酸基、カルボン酸基及びエステル結合の少なくとも1つを有する結晶性樹脂、水酸基、カルボン酸基及びエステル結合の少なくとも1つを有する非晶性樹脂並びに重合触媒を含んでいる。
【0150】
(結晶性樹脂)
本発明のエンドレスベルトに用いる結晶性樹脂は、水酸基、カルボン酸基及びエステル結合の少なくとも1つを有するものであり、結晶化度が10%以上100%以下であれば特に制限はなく汎用の樹脂を用いることができる。
【0151】
具体的には結晶性樹脂の中でもPAT(ポリアルキレンテレフタレート)が好ましく、なかでもPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)はより好ましく、PBTは結晶加速度が速いので成形条件による結晶化度の変化が少なく、一般に30%前後と結晶化度で安定しているので特に好ましい。
【0152】
また、本発明に用いる結晶性樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で共重合成分を導入することもできる。具体的な例としてエステル結合を主鎖とし、ポリメチレングリコールなどエステル結合を導入したものなどを挙げることができる。
【0153】
本発明のエンドレスベルトに用いる結晶性樹脂の分子量に特に制限はなく、例えば、重量平均分子量10,000〜100,000など一般的な分子量の樹脂を用いることができるが、引張破断伸など機械物性の高い要求がある場合には高分子量のものが好ましい。具体的には20,000以上が好ましく、25,000以上であればさらに好ましく、30,000以上であれば特に好ましい。
【0154】
(非晶性樹脂)
本発明のエンドレスベルトに用いる非晶性樹脂は、水酸基、カルボン酸基及びエステル結合の少なくとも1つを有するものであり、結晶化度が0%以上、10%未満であれば特に制限はなく汎用の樹脂を用いることができる。
【0155】
具体的にはPC(ポリカーボネート)やPAr(ポリアリレート)などのポリエステルやPMMA(ポリメチルメタクリレート)などの側鎖にエステル結合を有する樹脂が好適な例として挙げることができる。なかでもポリエステルが好ましく、PCは特に好適に用いることができる。
【0156】
また、本発明のエンドレスベルトに用いる非晶性樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で共重合成分を導入することができる。具体的な例としてエステル結合を主鎖とし、ポリメチレングリコールなどエステル結合を導入したものなどを挙げることができる。
【0157】
本発明のエンドレスベルトに用いる非晶性樹脂の分子量に特に制限はなく、例えば、重量平均分子量10,000〜100,000など一般的な分子量の樹脂を用いることができるが、引張破断伸など機械物性の高い要求がある場合には高分子量のものが好ましい。具体的には20,000以上が好ましく、25,000以上であればさらに好ましく、30,000以上であれば特に好ましい。
【0158】
(結晶性樹脂と非晶性樹脂の重量比)
本発明のエンドレスベルトに用いる結晶性樹脂と非晶性樹脂の重量比に特に制限はない。ただし、一般に結晶性樹脂は耐薬品性,耐屈曲性に優れ、非晶性樹脂は成形寸法安定性に優れるので、使用目的に応じ、任意の比率を設定することができるが、なかでも、結晶性樹脂/非晶性樹脂の重量比が1/99〜99/1が好ましく、40/60〜97/3がより好ましく、60/40〜95/5がさらに好ましく、70/30〜90/10が特に好ましい。
【0159】
特に好ましい比率として結晶性樹脂の比率を多く選択しているのは、非晶性樹脂は少しの配合で十分に成形寸法安定性の改良効果が期待できること、非晶性樹脂のわずかな配合過多で塗装時の溶剤などの耐薬品性悪化の影響が顕著に出ることがあるなどの理由による。
【0160】
(結晶性樹脂と非晶性樹脂の粘度差)
両樹脂の粘度差が大きすぎると、製造条件を調整しても良好な分散が得られず、均一分散に至ることができなくなることがあるので、粘度差は小さい方が好ましい。
【0161】
具体的には両樹脂を同一条件でMFR測定し、値が1/20〜20/1程度の範囲に収まることが好ましく、1/10〜10/1の範囲となればさらに好ましい。
【0162】
測定方法としてはJIS K−7210に準拠し、測定温度条件は樹脂の加工温度に近い条件を選択することが好ましい。
【0163】
例えばPBTとPCを選択した場合、加工温度となる260℃を測定温度として設定し、両樹脂の粘度差を比較することが好ましい。また、荷重としては例えば2.16kgを選択することで好適に測定できる。
【0164】
(重合触媒)
本発明では、少なくとも2成分以上の樹脂とを単に混合したもの、重合段階から2成分以上の樹脂を混合したもの、2成分以上の樹脂を触媒を反応させながら混合したもの等公知のアロイ化技術を用いることができるが、重合触媒を用いて加熱混合したものがコストの観点から最も好ましい。
【0165】
重合触媒は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を重合する能力を有していれば特に制限はない。
【0166】
重合触媒のなかでもTi系重合触媒は好ましく、アルキルチタネートなどが好適に用いることができる。
【0167】
アルキルチタネートの中でもテトラブチルチタネート又はテトラキス(2−エチルヘキシル)オルソチタネートが好ましく、これらはTYZOR TOT(DuPont製)やTYZOR TBT(DuPont製)として市販品を容易に入手することができる。
【0168】
また、Ti系重合触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属含有化合物又は亜鉛含有化合物と組み合わせることで、より有効に作用するので好ましく、なかでもマグネシウム含有化合物を重合触媒として有することは特に好ましい。
【0169】
マグネシウムを含む化合物として特に制限はないが有機酸マグネシウム塩が特に好ましく、酢酸マグネシウムが特に好ましい。
【0170】
重合触媒の含有量としては、少なすぎると有効に作用しないことがあるので、ある程度高い方が好ましく、具体的には重合触媒中の金属分の質量が全樹脂に対し1ppm以上が好ましく、10ppm以上であればさらに好ましく、20ppm以上であれば特に好ましい。一方、エステル系樹脂は重金属の多量存在下により、解重合を起こすことがあると知られているので、ある程度は小さい方が好ましく、具体的には10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下であればさらに好ましく、500ppm以下であれば特に好ましい。なお、以下において、全樹脂に対する重合触媒のTi,Mgの重量割合を「Ti濃度」,「Mg濃度」と称す場合がある
【0171】
(キレーター)
重合触媒の活性が高すぎると、樹脂の解重合を促進して分子量低下による機械的物性低下,低分子量体発生に伴う発泡などが問題になることがあるが、重合触媒中の金属にキレートする能力を有するキレーターが存在すると、解重合を抑制することができるため、必要に応じてキレーターを用いることが好ましい。
【0172】
キレーターの種類としては特に制限はなく、公知のキレーターを用いることができる。
【0173】
例としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル、リン酸塩、ヒドラジン類を挙げることができ、これらは例えば、イルガホス168(日本チバガイギー(株)製)、PEP36(旭電化工業(株)製)、サンドスタブP−EPQ(クラリアントジャパン(株)製)の亜リン酸エステル、IRGANOX MD1024(日本チバガイギー(株)製)、CDA−6(旭電化工業(株)製)のヒドラジン類などとして容易に市場から入手することができる。
【0174】
本発明では成形条件の適正化により解重合及び低分子量体発生を抑制することもできるので、キレーター無添加とすることもできるが、解重合の抑制が必要な場合にはキレーターの添加量は、樹脂100重量部に対して0.001重量部以上添加することが好ましく、より良好な効果を得るには0.1重量部以上添加することが好ましい。
【0175】
キレーターの量が多すぎると重合触媒が活性を失い良好な物性のエンドレスベルトを得られないことがあるので添加過多にはならない方が好ましく、樹脂100重量部に対し、10重量部以下が好ましく、5重量部以下であるとさらに好ましい。
【0176】
一般的にはキレーターの使い方としては樹脂100重量部に対して0.1重量部以下の少量添加で使うことが好ましいとされるが、本発明でキレーターを使う場合には、特に好ましい使い方の例としては、重合触媒の添加量を50〜500ppmと多く添加し、キレーターも0.1〜3重量部、好ましくは0.3〜1重量部と常識より高い量を用いて、さらにエンドレスベルトを得るための成形条件(温度,滞留時間など)を適正化すると、結晶性樹脂と非晶性樹脂の化学結合生成及び分子量増加を促進しつつ、解重合を抑制でき、従来に無い物性の優れたエンドレスベルトを得ることができる。
【0177】
(付加的配合材;任意成分)
本発明のエンドレスベルトには、各種目的に応じて任意の配合成分を配合することができる。
【0178】
具体的には、イルガホス168,イルガノックス1010,リン系酸化防止剤などの酸化防止剤、熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0179】
また、導電性物質として、前述のカーボンブラック以外に金属フィラーやイオン導電性物質等の導電性物質を配合しても良い。特に画像形成装置に用いられるエンドレスベルトにおいては電気的にトナーや紙等を吸着、転写させるため、表面抵抗値や体積抵抗値を用途に合わせて調整する必要があるため、目的に応じて、これらを配合する。配合する導電性物質としては、用途に要求される性能を満たすものであれば特に制限はファイバー、グラファイトなどのカーボン系フィラー、金属系導電性フィラー、金属酸化物系導電性フィラーなどが用いられ、導電性フィラーの他には、イオン導電性物質、例えば四級アンモニウム塩等が例示される。
【0180】
さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、第2,第3成分として各種熱可塑性樹脂、各種エラストマー、熱硬化性樹脂、フィラー等の配合材を配合することができる。
【0181】
熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロック又はランダム共重合体、ゴム又はラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンスチレンブロック共重合体又は、その水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ポリフッ素化ビニリデン、ポリフッ素化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレンテトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種又はこれらの混合物からなるものが使用できる。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の1種又はこれらの混合物からなるものが使用できる。
【0182】
また、各種フィラーとしては、上記導電性フィラーを含め、例えば炭酸カルシウム(重質、軽質)、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラス繊維、ガラスビーズ、ベントナイト、アスベスト、中空ガラス玉、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、炭素繊維、アルミニウム繊維、スチレンスチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩等のフィラーの他、添加剤として酸化防止剤(フェノール系、硫黄系、リン酸エステル系など)、滑剤、有機・無機の各種顔料、紫外線防止剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、銅害防止剤、難燃剤、架橋剤、流れ性改良剤等を挙げることができる。
【0183】
(5) エンドレスベルトの製造方法
(加熱混練)
本発明においては、結晶性樹脂、非晶性樹脂、カーボンブラック、重合触媒、その他キレーター及び必要に応じて添加される任意成分を加熱混練して樹脂組成物とした後にエンドレスベルトを成形することも、結晶性樹脂、非晶性樹脂、カーボンブラック、重合触媒、その他キレーター及び必要に応じて添加される任意成分を加熱混練してそのままエンドレスベルトを得ることもできる。
【0184】
この場合、樹脂組成物を得る段階での加熱混練か樹脂組成物をエンドレスベルトに成形する段階での加熱混練いずれかで結晶性樹脂と非晶性樹脂の結合が生成できるように条件を調節すれば良い。いずれの場合でも、加熱温度は溶融状態でないと十分な分散ができないので、ある程度は高い方が好ましく、具体的には結晶性樹脂の融点を目安に用いて、結晶性樹脂の融点以上とすることが好ましく、融点+10℃以上であるとさらに好ましい。また、加熱温度が高すぎると熱分解を引き起こして物性劣化を招くことがあるのである程度は低い方が好ましく、具体的には結晶性樹脂の融点を目安に用いて、結晶性樹脂の融点+80℃以下が好ましく、融点+60℃以下であることがさらに好ましい。
【0185】
また、加熱混練前には原料の乾燥をすることによりより良い物性のエンドレスベルトを得られることがあるので乾燥は施しておいた方が好ましい。
【0186】
また、場合によっては、加熱混練して樹脂組成物とした後に、融点以下で熱処理を施してエステル結合を生成させた後、エンドレスベルトに成形することもできる。
【0187】
本発明においては重合触媒が結晶性樹脂及び非晶性樹脂の反応を促して物性の優れたエンドレスベルトを得られると考えられる。促される反応は加熱混練時の温度、圧力及び熱を受ける時間が重要となるので、得られるエンドレスベルトの分散形態を把握しつつ、加熱混練条件を設定することが必要になる。この反応時に副生成物として低分子量体が発生し、系中から除去できないとこれが分子量低下、成形品発泡を引き起こすので注意が必要である。一方、これらの製品発泡などが起きる直前が最も良好な反応状態であると考えられるので、例えば、滞留時間を種々検討し、発泡の生じる滞留時間を見極め、その時の時間より少し短くなるように滞留時間を設定すると、より良好な加熱混練条件が得られるので好ましい。
【0188】
加熱混練の手段にも特に制限はなく、公知の技術を用いることができる。例えば、まず結晶性樹脂、非晶性樹脂、カーボンブラック、重合触媒を加熱混練して樹脂組成物とするのであれば、一軸押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダーなどを用いることができる。また、こうして得た樹脂組成物からエンドレスベルトを得る場合でも公知の技術を用いることができる。例えば射出成形機,押し出し成形機などである。
【0189】
(成形方法)
エンドレスベルトを得るには、結晶性樹脂、非晶性樹脂、カーボンブラック及び重合触媒等を例えば二軸混練押出機により混合し、ペレット化した後にエンドレスベルトとなるように成形する手法が特に好ましく用いられる。
【0190】
成形方法については、特に限定されるものではなく、連続溶融押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、或いはインフレーション成形法など公知の方法を採用して得ることができるが、特に望ましいのは、連続溶融押出成形法である。特に、環状ダイより押し出したチューブの内径を高精度で制御可能な下方押出方式の内部冷却マンドレル方式或いはバキュームサイジング方式が好ましく、内部冷却マンドレル方式が、シームレスなエンドレスベルトを簡単に得ることができるため画像形成装置用としては最も好ましい。
【0191】
また、インフレーション成形法により一旦折り目有りのフィルムを作成したのち、後加工にて折り目を見かけ上無くした状態でエンドレスベルトとして用いても何ら問題はなく、帯状のシートを一旦加工した後、つないでシーム有りのエンドレスベルトとしても良い。
【0192】
このような成形方法において、この成形時の温度,滞留時間の適正化により、より良好な物性のエンドレスベルトを得ることができるので各配合にあわせて条件を調整することが好ましい。
【0193】
(熱処理)
得られたエンドレスベルトを熱処理することにより、より物性の向上したエンドレスベルトとすることが可能となる。特に、耐折回数や引張弾性率の向上が見られる。
【0194】
熱処理条件は用いる原料樹脂にもよるが、通常60〜200℃の温度、好ましくは70〜120℃の温度で5〜60分、好ましくは10〜30分程度である。
【0195】
(6) エンドレスベルトの化学特性
(結晶性樹脂の分子鎖と非晶性樹脂の分子鎖間の化学結合)
本発明のエンドレスベルトにおいては、結晶性樹脂の分子鎖と非晶性樹脂の分子鎖間の化学結合を形成することにより、両樹脂間の親和性の向上、形態の微分散化を促し、結晶性樹脂の高耐屈曲性、非晶性樹脂の寸法安定性、(条件によっては透明性)を併せ持つエンドレスベルトを得ることができる。
【0196】
化学結合の存在比率としては特に制限は無いが、基本的には多い方が好ましく、具体的には結晶性樹脂の分子鎖と非晶性樹脂の分子鎖間の化学結合1molあたりの、結晶性樹脂と非晶性樹脂合計質量が、1,000,000g以下となることが好ましく、300,000g以下となることがさらに好ましく、100,000g以下となると特に好ましい。
【0197】
化学結合の量の測定方法に特に制限はないが、例えばNMRにより測定することができる。
【0198】
結晶性樹脂としてPBT、非晶性樹脂としてPCを用いた場合の測定例を次に示す。
測定機種 JEOLGSX400
溶媒 1,1,1,2,2,2−ヘキサフルオロイソプロパノール/d−クロロホルム=3/7(VOL)
積算回数 128回
基準 TMS
【0199】
この測定により、図3,4に示すチャートを得た。なお、図4は図3のIV部分を拡大したものである。
【0200】
テレフタル酸(TPA)のベンゼン環水素はカルボン酸がブタンジオールと結合している場合とビスフェノールA(BPA)とで化学シフトが異なる。
【0201】
一般にPBT分子中のTPAベンゼン環水素(d)は、化1の通り4個とも等価であり、化学シフト8.07にシングレットピークを示す。
【0202】
【化1】
Figure 0003948227
【0203】
一方、化2の如くPCのBPAと結合したPBTのTPA中のベンゼン環水素は、化学シフトが変化し、水素(b)は8.25にダブレット,(c)は8.13にダブレットピークを示す。
【0204】
【化2】
Figure 0003948227
【0205】
(d):{(b)+(c)}の面積比により、PBT分子中のTPAと、PCと結合しているTPAの比を求めることができる。
【0206】
本例では面積比は(d):{(b)+(c)}=100:{0.4654+0.5635}≒99.01:0.99となるので、PBT構成単位100molあたり、0.99molのTPA(PBT由来)−BPA(PC由来)結合を有していることが解る。また、本樹脂組成物中には同量のブタンジオール(PBT由来)−炭素(PC)結合が存在することが容易に推測できるので、合計でPBT構成単位100molあたり1.98molのPBT−PC結合が存在することが解る。
【0207】
化3の通り、PBT構成単位(ブタンジオール+TPA)の式量は220なので、PBT22000(220×100mol)gあたり、1.98molのPBT−PC結合が存在する。
【0208】
PBT−PC結合1molあたりのPBTの質量は約11000(22000/1.98)と計算できる。
【0209】
本例ではPBTとPCの重量比が7/3なので、PBT−PC結合1molあたりの樹脂分(PBT質量+PC質量)は16000g(11000/0.7)と求めることができる。
【0210】
【化3】
Figure 0003948227
【0211】
(分子量)
本発明においては、結晶性樹脂、非晶性樹脂、カーボンブラック、重合触媒、その他キレーター及び必要に応じて添加される任意成分を加熱混練し、結晶性樹脂の分子鎖と、非晶性樹脂の分子鎖間に化学結合を生成し、かつ、樹脂組成物としての総合の分子量を維持或いは増加させることで、得られるエンドレスベルトの物性向上が図れると考えられるので、分子量は高い方が好ましい。
【0212】
分子量の測定方法であるが、本発明のように共重合体が存在する場合には分子量の真値を求めることが難しい。
【0213】
そこで本発明では全ての樹脂をGPCにより同一条件で測定し、PS換算重量平均分子量として得た値を共通の代表値として用いることとした。
【0214】
測定条件としては、試料20mgを0.5mlの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールと0.2mlのクロロホルムで一晩溶解し、さらに移動相の溶媒25mlを加え、0.22μmのフィルターにて濾過し、SEC測定溶液とした。移動相を加えてから測定終了まで12時間以内に行った。
【0215】
SEC測定条件
溶媒 クロロホルム/酢酸:99.5:0.5(vol/vol)
流速 1.0ml/分
注入量 0.02ml
カラム AD806M/S 2本(昭和電工社製)
カラム温度 30℃
検出器 UV 254nm
【0216】
分子量500(A−500)から2,890,000(F−288)までの分子量の異なる単分散標準ポリスチレン(東ソー社製)12試料用い、較正曲線を作成し、ポリスチレン換算の分子量を計算した。
【0217】
本手法でした、結晶性樹脂と、非晶性樹脂と、重合触媒を加熱混練した後に得られる樹脂組成物のPS換算重量平均分子量(Mwとする)の値としては、具体的には、結晶性樹脂の配合比率をX重量部,ポリスチレン(PS)換算重量平均分子量をMw、非晶性樹脂の配合比率をY重量部,PS換算重量平均分子量をMwとして、
【0218】
【数2】
Figure 0003948227
であることが好ましく、
【0219】
【数3】
Figure 0003948227
であるとさらに好ましく、
【0220】
【数4】
Figure 0003948227
であると、十分に高い物性を得られるので特に好ましい。
【0221】
また、本発明においてはMwが加熱混合によりMwとMwの算術平均値よりも高くなっていることが重要で、初めから高いMwやMwの樹脂を用いても、加熱混合時に分子量低下していては最終的なMwが高くても良好な物性は期待できないと考えられるので、Mwの絶対値に特に制限はないが、それでも総合的観点からは高い方が好ましく、具体的にはPS換算重量平均分子量で130,000以上が好ましく、140,000以上であるとさらに好ましく、150,000以上であると特に好ましい。
【0222】
なお、重量平均分子量真値とPS換算重量平均分子量の相関の例を挙げると、重量平均分子量40,000のPBTを上記手法で測定するとPS換算重量平均分子量122,000の値が得られ、重量平均分子量28,000のPCを上記手法で測定するとPS換算重量平均分子量64,000の値が得られることがわかっている。
【0223】
(7) エンドレスベルトの用途
このエンドレスベルトの用途に特に制限はないが、寸法精度,耐屈曲性,引張弾性率など要求物性の厳しいOA機器分野、特に機能部材には好適に用いることができる。このエンドレスベルトをシームレスベルト形状とした場合、割れ,伸びなど不具合が少ないので好適である。
【0224】
本発明のエンドレスベルトは、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等の画像形成装置に、中間転写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルト、定着ベルトなどとして好適に用いることができる。
【0225】
本発明のエンドレスベルトはそのままベルトとして使用しても良いし、ドラム或いはロール等に巻き付けて使用しても良い。
【0226】
また、端面補強等の目的のために、このエンドレスベルトの外側及び/又は内側に、必要に応じて側縁に沿って耐熱テープ等の補強テープを貼り合わせてもよい。補強テープとしては、2軸延伸ポリエステルテープがコスト、強度の点で好ましく、そのテープ幅は4〜20mmが装置レイアウト上コンパクトになり好ましい。補強テープの厚みは、20〜200μmがフレキシブルを維持するため低テンションでエンドレスベルトが駆動できる点と耐クラック発生防止の点で好ましい。
【0227】
また、エンドレスベルトの蛇行防止目的で、エンドレスベルトの側縁に、ウレタンゴムやシリコンゴム等のゴム製のシート(蛇行防止ガイド)を接着剤にて張り合わせてもよい。この場合、用いるゴム製シートの好ましいシート幅は2〜10mmで装置のレイアウト上及び接着強度の点より3〜8mmが特に好ましい。また、蛇行防止の観点より蛇行防止ゴムの厚みは0.5〜3mmが好ましく、特に0.7〜2mmが蛇行防止の貼り合わせの簡易さと蛇行防止効果の点より好ましい。
【0228】
さらには、上記補強テープと組み合わせて、補強テープをエンドレスベルトに貼り合わせた上で蛇行防止ガイドを貼り合わせた方がベルト耐クラック発生防止効果とベルト蛇行防止効果があるため好ましい。
【0229】
【実施例】
本発明を実施例、比較例を用いて、より具体的に説明する。
【0230】
(原料)
原料は下記のものを用い、配合割合は表2又は表4の通りとした。
Figure 0003948227
【0231】
【表1】
Figure 0003948227
【0232】
(加熱混練)
各原料を、二軸混練押出機(IKG(株)製 PMT32)を用いて表1,2に示す条件で加熱混練して材料ペレット化した。
【0233】
(エンドレスベルトの成形方法)
この材料ペレットを乾燥し、直径φ180mm、リップ幅1mmの6条スパイラル型環状ダイ付き40mmφの押出機により、環状ダイ下方に溶融チューブ状態で押し出し、押し出した溶融チューブを、環状ダイと同一軸線上に支持棒を介して装着した外径170mmの冷却マンドレルの外表面に接しめて冷却固化させつつ、次に、シームレスベルトの中に設置されている中子と外側に設置されているロールにより、シームレスベルトを円筒形に保持した状態で引き取りつつ340mm長の長さで輪切りにして、各表記載の厚み、滞留時間となるよう押出量、引き取り速度を調整し、直径169mmの樹脂製シームレスベルトとした。
【0234】
成形温度,滞留時間などの条件は各表2又は4の通りとした。
【0235】
(評価)
評価は必要に応じ、エンドレスベルトを必要な大きさに切り開いて実施し、結果は表3,5に示した。
【0236】
・耐屈曲性(耐折れ性)
JISP−8115に準拠し、試験片を幅15mm、長さ100mmの大きさに切断し、MIT試験機にて折り曲げ速度175回/分、回転角度135°左右、引張り荷重1.5Kgfの条件にて破壊回数を測定した。
【0237】
・引張弾性率
ISO R1184−1970に準拠し、試験片を幅15mm、長さ150mmに切断し、引張り速度1mm/min、つかみ具間距離を100mmとした。測定温度は表3,4に示す温度とし、湿度はいずれも50%とした。
【0238】
・収縮率
エンドレスベルトを200mmの一定幅に輪切り切断後、更に幅方向1ヶ所を切断する。つぎに得られたサンプルを温度23℃、湿度50%に24時間放置したのち、エンドレスベルトの円周方向の長さの3次元寸法測定器(ニコン社製マイクロスコープを取り付けた東京精密社製GJ800A)にて測定する。この測定値をイ)とする。
【0239】
次に、所定の温度、湿度条件に設定した恒温恒湿室に上述のサンプルを24時間放置し、取り出した後、更に温度23℃、湿度50%へ24時間放置したのち、エンドレスベルトの円周方向の長さを3次元寸法測定器を用いて測定する。この測定値をロ)とする。
【0240】
23℃、50%に対する各温度湿度条件放置後のサンプルの収縮率は、以下の式より求めた数値を用いた。
収縮率=(イ−ロ)/イ×100
【0241】
・DSC
セイコー電子工業(株)製SSC−5200(商品名)を使用し、昇温速度10℃/minにて測定した。1つの試料を300℃までDSC測定した後、室温まで、速度10℃/minで冷却し、その後再度同一条件で第2回目のDSC測定を行い、第1回目の融解ピーク温度と第2回目の融解ピーク温度との差を求めた。
【0242】
・厚み
東京精密(株)製のマイクロメータを用いてエンドレスベルトの円周方向20mmピッチにて測定した。
【0243】
・表面抵抗率(Ω)及び体積抵抗率(Ω・cm)
ダイヤインスツルメント(株)製 ハイレスタ(商品名)(UR端子)を使用し、100V、10秒の条件にて20mmピッチにてベルト円周方向を測定した。
【0244】
・電気抵抗環境変動率(R/R
表面抵抗率と体積抵抗率のそれぞれについて、温度10℃,湿度20%に20時間放置後(LL条件)の電気抵抗率Rと、温度30℃,湿度80%に20時間放置後(HH条件)の電気抵抗率Rを求め、電気抵抗環境変動率R/Rを算出した。
【0245】
・エンドレスベルトとしての耐久性
得られたエンドレスベルトを中間転写ベルトとして画像形成装置に搭載し、連続で画像出力をし、何枚出力した段階でエンドレスベルトにクラックが発生するかを評価した。
【0246】
・アロイ分散構造の観察
RuO染色によるTEM観察により海島構造の形成の有無を調べた。また、ベルトの円周方向及び幅方向の切断面において、外表面側(外表面から厚み5μmの部分)、内表面側(内表面から厚み5μmの部分)及び中央部分(厚み方向の中央部分の厚み10μmの部分)について、海島構造の島部分の形状を調べた。
【0247】
〔実施例1,2〕
表2記載のPBT,PC,テトラブチルチタネート,酢酸マグネシウム,熱安定剤、カーボンブラックを事前に130℃程度で予備乾燥し、その後に加熱混練し、材料ペレットを得た。
【0248】
このときの加熱混練条件は表2に示すものとし、樹脂温度と混練機内での滞留時間を調節し、混練機内での反応は抑制すると同時に電気抵抗が半導電領域になるよう混練条件を調節した。
【0249】
この材料ペレットを押出成形してエンドレスベルトを製造した。
【0250】
なお、この押出成形機内で反応が好ましい程度に促進し、エンドレスベルトが得られるよう、また、電気抵抗が半導電領域になるよう成形条件等を調節し、表2に示す押出成形条件として樹脂温度と滞留時間等を調節した。
【0251】
表3の通り、得られたエンドレスベルトは表面抵抗率1×1010Ω、体積抵抗率1×1010Ω・cm程度であり、中間転写ベルトとして画像形成装置に搭載したところ良好に画像を得ることができた。また、この状態で20万枚画像出力してもクラックが発生することは無く、電気抵抗環境変動率は小さく、抵抗バラツキも少なかった。
【0252】
〔実施例3,4〕
カーボンブラックの種類を変更し、カーボン濃度条件を変更した以外は、実施例1,2と同様にしてエンドレスベルトを製造した。表3の通り実施例1と同様、良好な物性を得ることができた。
【0253】
更に、得られたエンドレスベルトを80℃で10分間熱処理したところ、引張弾性率が7%向上した。
【0254】
〔実施例5,6〕
カーボンブラックの種類を変更し、カーボン濃度条件を変更した以外は、実施例1,2と同様にしてエンドレスベルトを製造した。表3の通り、本実施例5,6でも外観に優れ、環境による抵抗値変化や抵抗値バラツキが少ないエンドレスベルトを得ることができた。
このエンドレスベルトを画像形成装置に搭載したところ、良好な画像を得ることができた。更に、得られたエンドレスベルトを80℃で10分間熱処理したところ、引張弾性率が5%向上した。
【0255】
〔比較例1〕
カーボンブラック濃度を少なくして電気抵抗が半導電領域になるようカーボンブラックとして比表面積、DBP吸油量の大きいものを使用し、配合量、混練条件、成形条件等を表4に示すように調節して、実施例1と同様にしてエンドレスベルトを製造した。
【0256】
その結果、発泡ガスが発生し、この部分が傷となり、荒れた外観状態となった。
【0257】
〔比較例2〕
カーボンブラックとして粒径の大きいものを使用し、比較例1と同様にエンドレスベルトを製造した。その結果、カーボン配合量、混練条件、成形条件等を調節しても、抵抗バラツキの少ないエンドレスベルトを得ることができず、環境による電気抵抗環境変動率も大きかった。
【0258】
〔比較例3〕
カーボンブラックは実施例3,4と同一のものを用い、重合触媒を含まないこと以外は同様にしてエンドレスベルトを製造した。
【0259】
その結果、カーボンブラック濃度が多いため、環境による電気抵抗環境変動率は少ないが、重合触媒が添加されていない点で耐屈曲性が小さく、耐久性は劣り、割れやすく用途範囲が限定されるため、実用上十分とは言えなかった。
【0260】
〔比較例4〕
カーボンブラックは実施例3,4と同一のものを用い、熱安定剤の配合、混練条件、成形条件を変更させ、海島構造のないエンドレスベルトとしたこと以外は、他の実施例と同様にしてエンドレスベルトを製造した。
【0261】
その結果、得られたエンドレスベルトは収縮率が大きい点で使用範囲、用途が限定されるため、実用上十分とは言えなかった。
【0262】
〔比較例5〕
カーボン濃度を多くして電気抵抗値が発現するように、カーボンブラックとして粒径が小さく、比表面積が大きいものを用いたこと以外は、他の実施例と同様にしてエンドレスベルトを製造した。
【0263】
その結果、発泡ガスが発生したため、この部分が傷となり、荒れた外観状態となった。
【0264】
【表2】
Figure 0003948227
【0265】
【表3】
Figure 0003948227
【0266】
【表4】
Figure 0003948227
【0267】
【表5】
Figure 0003948227
【0268】
【発明の効果】
以上の実施例及び比較例からも明らかな通り、本発明によると、耐屈曲性や耐薬品性、成形寸法安定性、電気抵抗安定性並びにこれらの特性の外部環境に対する安定性に優れ、低価格なエンドレスベルトと、このエンドレスベルトを用いた画像形成装置用ベルトと、この画像形成装置用ベルトを用いた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエンドレスベルトのカーボンブラック濃度X(重量%)と表面抵抗率又は体積抵抗率Yの対数logYとの関係を示すグラフである。
【図2】図2(a)はエンドレスベルトの斜視図であり、図2(b)は図2(a)の一部21の断面における海島構造を示す模式図である。
【図3】PBTとPCとの混合反応物のNMRチャートである。
【図4】図3のIV部分の拡大図である。
【図5】従来の中間転写装置の側面図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム
2 帯電器
3 露光光学系
4 現像器
5 クリーナー
6 導電性エンドレスベルト
7,8,9 搬送ローラ
10 静電転写機
11 記録紙
12 押圧ローラ
20 エンドレスベルト

Claims (21)

  1. 樹脂及びカーボンブラックを主成分とする、100Vの印加電圧における表面抵抗率が1×10〜1×1014Ωであるか或いは体積抵抗率が1×10〜1×1014Ω・cmであるエンドレスベルトにおいて、
    該カーボンブラックが、DBP吸油量50〜300cm/100g、比表面積35〜500m/g、揮発分0〜20%、平均一次粒径20〜50nmであり、該カーボンブラックが下記(1)(2)の式を満たすように配合されていると共に、樹脂として2種以上の樹脂を含み、該2種以上の樹脂による海島構造が形成されているエンドレスベルトであって、
    該エンドレスベルトの表面部と厚み方向の中央部とで異なる海島構造が形成されていることを特徴とするエンドレスベルト。
    logY≧−X+20 …(1)
    logY≦−X+30 …(2)
    ただし、X,Yは以下の通り。
    X:エンドレスベルト中のカーボンブラックの含有量(重量%)
    Y:エンドレスベルトの100V印加電圧での表面抵抗率(Ω)
    又は体積抵抗率(Ω・cm)
  2. エンドレスベルトをその円周方向に切断した厚み断面における相形態において、ベルト表面部の海島構造が略円形の島部分を有する海島構造であり、ベルト中央部の海島構造が、ベルト表面部の海島構造の島部分と比較して楕円形状に近い形状の島部分を含有する海島構造であることを特徴とする請求項に記載のエンドレスベルト。
  3. エンドレスベルトをその幅方向に切断した厚み断面における相形態において、ベルト表面部の海島構造が該表面に沿う層状の島部分を有する海島構造であり、ベルト中央部の海島構造が、ベルト表面部の海島構造の島部分と比較して楕円形状に近い形状の島部分を含有する海島構造であることを特徴とする請求項又はに記載のエンドレスベルト。
  4. 温度10℃,湿度20%における印加電圧100Vでの表面抵抗率又は体積抵抗率Rを、温度30℃,湿度80%における印加電圧100Vでの表面抵抗率又は体積抵抗率Rで除した値R/Rが30以下であり、
    温度23℃,湿度50%でのベルト円周方向の引張弾性率が1500〜5000MPaであり、
    ベルトの平均厚みが70〜300μmであり、
    JIS P−8115の耐折回数が5000回以上であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  5. 40℃でのベルト円周方向引張弾性率が5℃での同引張弾性率に対し60%以上であり、60℃でのベルト円周方向引張弾性率が5℃での同引張弾性率に対し20%以上であり、
    1本のエンドレスベルトにあっては表面抵抗率又は体積抵抗率の最大値が最小値の100倍以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  6. 水酸基、カルボン酸基及びエステル結合の少なくとも1つを有する結晶性樹脂と、水酸基、カルボン酸基及びエステル結合の少なくとも1つを有する非晶性樹脂と、重合触媒と、カーボンブラックとを加熱混合し、成形してなることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  7. DSC(示差走査熱量測定)による1回目の昇温による融解ピークを示すピーク温度と冷却後2回目の昇温による融解ピークを示すピーク温度との差が30℃以下であることを特徴とする請求項に記載のエンドレスベルト。
  8. 結晶性樹脂の分子鎖と、非晶性樹脂の分子鎖間に化学結合が存在することを特徴とする請求項又はに記載のエンドレスベルト。
  9. 結晶性樹脂の分子鎖と非晶性樹脂の分子鎖間の化学結合1molあたりの、結晶性樹脂と非晶性樹脂の合計質量が、300,000g以下であることを特徴とする請求項に記載のエンドレスベルト。
  10. 成分の重量比が下記条件を満たしていることを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
    結晶性樹脂/非晶性樹脂の重量比が、1/99〜99/1
    重合触媒中の金属が、結晶性樹脂及び非晶性樹脂の合計重量に対し、1〜10000ppm
  11. 結晶性樹脂の配合比率をX重量部,ポリスチレン(PS)換算重量平均分子量をMw、非晶性樹脂の配合比率をY重量部,PS換算重量平均分子量をMw、結晶性樹脂、非晶性樹脂及び重合触媒を加熱混練した後に得られる樹脂組成物のPS換算重量平均分子量をMwとしたとき、下記関係を満たすことを特徴とする請求項ないし10のいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
    Figure 0003948227
  12. PS換算重量平均分子量が130,000以上であることを特徴とする請求項ないし11のいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  13. 重合触媒がTiを含有することを特徴とする請求項ないし12のいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  14. 重合触媒が、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び亜鉛よりなる群の少なくとも1種と、Tiとを含有することを特徴とする請求項13に記載のエンドレスベルト。
  15. 重合触媒がMgとTiとを含有することを特徴とする請求項14に記載のエンドレスベルト。
  16. 結晶性樹脂がPAT(ポリアルキレンテレフタレート)であることを特徴とする請求項ないし15のいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  17. PATがPBT(ポリブチレンテレフタレート)であることを特徴とする請求項16に記載のエンドレスベルト。
  18. 非晶性樹脂がPC(ポリカーボネート)であることを特徴とする請求項ないし17のいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  19. 環状ダイスから加熱押し出し成形されてなることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1項に記載のエンドレスベルト。
  20. 請求項1ないし19のいずれか1項に記載のエンドレスベルトからなる画像形成装置用中間転写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルト、又は定着ベルトである画像形成装置用ベルト。
  21. 請求項20に記載の画像形成装置用ベルトを含むことを特徴とする画像形成装置。
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