JP2005344215A - 紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた接着性、優れた解じょ性、糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に優れた性能を有し、かつデザインや外観の良好な紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維を提供する。
【解決手段】特定の割合の、(a)数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール、(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの鉱物油、及び(d)25℃における動粘度が5〜50センチストークスのジメチルシリコーンからなる処理剤が付着されている紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
【選択図】 なし
【解決手段】特定の割合の、(a)数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール、(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの鉱物油、及び(d)25℃における動粘度が5〜50センチストークスのジメチルシリコーンからなる処理剤が付着されている紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維に関する。詳しくは、紙おむつのゴム部に使用するのに好適な工程性と接着性に優れたポリウレタン弾性繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙おむつの腰部や脚部等に、いわゆるゴム部として、重ね合わせた不織布の間にラミネートして使用されるポリウレタン弾性繊維は、従来から各種の提案がなされている。
従来、紙おむつの製造工程性、すなわちポリウレタン弾性繊維がラミネートされるまでの工程での糸道変更用ガイド摩擦性を低減させるために、各種無機金属化合物がポリウレタン弾性繊維中に添加されていた。
しかしながら、これらの無機金属化合物はポリウレタン弾性繊維の透明感を損なう場合がある。
【0003】
近年、紙おむつのバックシートに小さな動物や花柄のデザインをプリントした紙おむつが使われるようになってきた。このような紙おむつの場合、デザイン上にポリウレタン弾性繊維が重なる部分においてはポリウレタン弾性繊維が透明感を有さないとデザインの美しさを損なう問題があった。そのため、紙おむつ用途にこれらの無機金属化合物を極力添加しないポリウレタン弾性繊維が要望されている。しかしながら、無機金属化合物の添加量が少ないポリウレタン弾性繊維は、ガイド摩擦性が劣るために製造工程の糸道ガイドで糸切れを多発し、紙おむつ用途への適用は困難であった。
【0004】
従来、紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維として、解じょ性や接着剤との接着性を改善する提案が種々なされており、例として処理剤の付着量が2重量%以下の、解じょ性と接着剤との接着性が良好な弾性糸巻糸体(例えば、特許文献1参照。)や、ポリプロピレングリコール系ポリオールよりなる処理剤を3.0〜10.0重量%付与された解じょ性と接着剤との接着性が良好な弾性糸巻糸体(例えば、特許文献2参照。)や、特定の表面張力を有する油剤を付与した解じょ性と接着性が良好な弾性糸巻糸体(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。しかしこれらの巻糸体における弾性糸においても、無機金属化合物を添加しない場合、摩擦性が劣るため、やはり紙おむつ用途への適用は困難であった。
【0005】
一方、良好な伸長性と回復性を兼ね備えた紙おむつを製造するために、弾性糸に4倍以上の伸長を与え、次に、収縮回復させた後、紙おむつ製造工程に供給する紙おむつの製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、この方法では、弾性繊維を巻取る際又は巻取り後、巻返す際に、伸長−収縮回復処理工程を経由する必要があるため、工程が煩雑となり、糸切れ等のロスが生じやすい。特に無機金属化合物を添加しない場合、摩擦性の低下による悪影響が発生しやすい。
このように、従来技術においては、紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維として透明感があり、摩擦による糸切れが少なく、解じょ性、接着性等の工程性能を満足できるものはなかった。
【0006】
【特許文献1】
特公平5−50429号公報
【特許文献2】
特開2000−327224号公報
【特許文献3】
特開平10−152264号公報
【特許文献4】
特開2001−29386号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ホットメルト剤との優れた接着性、巻き取りパッケージからの優れた解じょ性、および摩擦による糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に卓越し、さらに透明感を有する、紙おむつのゴム部に用いるポリウレタン弾性繊維を得ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のとおりである。
(1)有機ジイソシアネート化合物、数平均分子量が500〜5000のポリアルキレンエーテルジオール、並びにイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物から得られるポリウレタン重合体からなる弾性繊維からなり、下記の、成分(a)が15〜80質量%、(b)が2〜30質量%、(c)が3〜50質量%、及び(d)が10〜50質量%の組成からなる処理剤が付着していることを特徴とする紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(a)数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの鉱物油
(d)25℃における動粘度が5〜50センチストークスのジメチルシリコーン
(2)動摩擦係数が1.6以下であることを特徴とする(1)の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(3)無機金属化合物の含有量がポリウレタン重合体100質量部に対して1.0質量部より少ないことを特徴とする(1)または(2)の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(4)処理剤の付着率が2.0質量%を越えることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリウレタン弾性繊維原料は、炭素数2〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がエーテル結合し、両末端が水酸基からなる数平均分子量500〜5000のポリアルキレンエーテルジオールであり、特に、テトラメチレン基からなるポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。
有機ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、脂環族及び芳香族のジイソシアネートの中で、反応条件下で溶解又は液状を示すものは、その全てが適用できる。
【0010】
例えば、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)、メチレン−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)、2,4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、1−アルキルフェニレン−2,4及び2,6−ジイソシアネート、3−(α−イソシアネートエチル)フェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニル−ジメチルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等が挙げられる。好ましくは、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)である。
【0011】
活性水素原子含有化合物としては、例えば、ヒドラジン、ポリヒドラジン、炭素原子数2〜10の、直鎖又は分岐した、脂肪族、脂環族又は芳香族の、活性水素を有するアミノ基を持つ化合物で、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、特開平5−155841号公報に記載されているウレア基を有するジアミン類等のジアミン、ヒドロキシルアミン、水、又は低分子量のグリコール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等を用いることができる。好ましくは、エチレンジアミン及び1,2−プロピレンジアミンである。
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、ジエチルアミンのようなジアルキルアミン等が用いられる。これらの鎖伸長剤、末端停止剤は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
【0012】
本発明において、ポリアルキレンエーテルジオール、ジイソシアネート化合物及び活性水素含有化合物によるポリウレタン重合体の製造には、公知のポリウレタン化重合反応の技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレンエーテルジオールと有機ジイソシアネートとを、1:1.2〜2.2(モル比)、好ましくは1:1.3〜1.8の割合で反応させ、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、ウレタン部分を得る。次いで、このウレタンプレポリマーをジアミン化合物又はグリコール化合物により鎖伸長反応を行い、ポリウレタン重合体を得ることができる。
ポリウレタン化反応の操作に関しては、ウレタンプレポリマー合成時やこのウレタンプレポリマーと活性水素含有化合物との反応時に、無溶媒、又はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の溶剤を用いてもよい。
【0013】
本発明で用いられる各種化合物の化学量論的割合は、ポリアルキレンエーテルジオールの水酸基とジアミン化合物等の活性水素の総和が、イソシアネート化合物のイソシアネート基に対して1.00〜1.07等量であることが好ましい。本発明のポリウレタン弾性繊維は、後述するように特定の滑剤性能を有する処理剤が付与されているため、無機金属化合物を含有しないか、または微量の含有であっても、十分な摩擦性を得ることができ、繊維の透明感を確保することができる。本発明のポリウレタン弾性繊維に用いられる場合の無機金属化合物としては、Ti、Mg、Al、Zn、Caの群から選ばれる金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩及びこれらの単体または無機金属複合塩などが挙げられる。好ましい無機金属化合物として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、ハンタイト等がある。摩擦性向上の観点から特に好ましくは、酸化チタンである。
【0014】
本発明のポリウレタン弾性繊維における無機金属化合物の含有量は、ポリウレタン固形分100質量部に対して、1.0質量部以下であることが好ましく、含有しなくても良い。より好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.3質量部以下である。添加量が1.0質量部以上であれば、ポリウレタン弾性繊維の透明感が低下する傾向にあり、微量の添加であれば摩擦による工程糸切れが改善される。
さらに、ポリウレタン重合体組成物には、前記以外の添加剤として、ポリウレタン弾性繊維に用いられる公知の有機又は無機の化合物、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、黄変防止剤、熱変色防止剤、粘着防止剤、顔料、帯電防止剤、防黴剤、着色剤、充填剤等を本発明の目的を損なわない範囲において、併用して添加してもよい。
【0015】
このようにして得られたポリウレタン重合体は、通常の方法で乾式紡糸、溶融紡糸又は湿式紡糸を行い、ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。
ポリウレタン弾性繊維の単糸数は限定されず、モノフィラメント又はマルチフィラメントのいずれでもよいが、接着性の観点から、単糸繊度が5〜15dt(デシテックス)であるマルチフィラメントが好ましい。弾性繊維の総繊度は180〜2200dtが好ましい。
得られたポリウレタン弾性繊維は、紙管パッケージに巻き取る前又は後に、ロールオイリング、ガイドオイリング、スプレーオイリング等の公知の方法によって処理剤を付与される。
【0016】
本発明は、特定のホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール及び高級アルコール、鉱物油、ジメチルシリコーンを含む処理剤を透明感のあるポリウレタン弾性繊維に付着させることにより、接着性、解じょ性、糸切れ性等といった加工性能が改善できる紙おむつ用途に特段の効果が付与されることを見出した。
本発明における処理剤は、下記の、成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含有する。
(a)数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール、
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの鉱物油、及び
(d)25℃における動粘度が5〜50センチストークスのジメチルシリコーン、である。
【0017】
成分(a)のホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール化合物は、本発明におけるポリウレタン重合体のソフトセグメントの非晶部に対して、滑剤としての効果をもつものと推測され、これにより弾性繊維の伸長時によりソフトな弾性特性が発現する。成分(a)は、数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であり、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを重合又は共重合するか、低分子のポリアルキレングリコールをエチレンオキシド、プロピレンオキシドを用いてさらに共重合して得られる。これらのなかで、プロピレンオキシド単独の重合物であるポリプロピレングリコール(PPG)が好ましい。ホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール化合物の数平均分子量が300未満であると飛散しやすく、数平均分子量が2000を越えると解じょ性が悪化する。また、融点が20℃を越えると冬場に解じょ性が悪化し、その結果、紙おむつ製造工程中で糸切れが多発する。
【0018】
成分(a)のみで構成される処理剤は、解じょ性と摩擦糸切れ性に劣るため、処理剤には、成分(a)のほかに、解じょ性の点から(c)成分及び、摩擦性の点から(d)成分である、鉱物油、ジメチルシリコーンが含まれる。成分(d)におけるジメチルシリコーンとしては、1)ジメチルシロキサン単位からなるポリジメチルシロキサン、2)ジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を含むジアルキルシロキサン単位とからなるポリジアルキルシロキサン類、3)ジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とからなるポリシロキサン類等が挙げられる。好ましくはポリジメチルシロキサンである。
成分(c)、成分(d)における、鉱物油及びジメチルシリコーンの、25℃における動粘度は、恒温水槽中キャノンフェンスケ粘度管を用いて定法で測定した時に5〜50センチストークスである。
さらに、(a)成分と(c)、(d)成分の相溶性を高めるために、(b)成分である、末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコールが含まれる。このようなアルコールとして、イソステアリルアルコール、イソアミルアルコール等の高級脂肪酸アルコールが好ましい。
【0019】
本発明のポリウレタン弾性繊維に、これら4成分からなる処理剤が付着されていることによって、はじめて解じょ性と工程性糸切れ性、接着性を同時に満足する透明感のある紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。処理剤中の4成分の割合は、(a)が15〜80質量%、(b)が2〜30質量%、(c)が3〜50質量%、(d)が10〜50質量%の範囲である。(a)成分が15質量%未満ではソフトな弾性特性が得られず、80質量%を越えると弾性繊維の解じょ性が低下する。(b)成分が2質量%未満では処理剤の相溶性を確保できず、30質量%を越えても処理剤の安定性が低下し、成分が相分離する。(c)成分が3質量%未満では解じょ性に劣り、50質量%を越えると(a)成分の比率が低下し、ソフトな弾性特性が低下し、不織布との接着性も低下する。(d)成分が10質量%未満では摩擦による糸切れ性が劣り、50質量%を越えると不織布との接着性が低下する。好ましくは、(a)成分が20〜70質量%、(b)成分が5〜20質量%、(c)成分が5〜20質量%、(d)成分が10〜40質量%の範囲である。
【0020】
処理剤の付着量は、弾性繊維の接着性、解じょ性、工程中での糸切れ性等、工程性能の点から、中の処理剤の付着率が2.0質量%を越えることが好ましく、より好ましくは、2.1〜5.0質量%、最も好ましくは2.3〜3.0質量%である。
上記の本発明の処理剤に、さらに、公知の配合剤である、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、上記成分以外のポリオルガノシロキサン、アミノ変性シリコーン、アミノエーテル変性シリコーン、タルク、シリカ、コロイダルアルミナ等の鉱物性徴粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、パラフィン、ポリエチレン、松脂等の常温で固体のワックスなどを本発明の目的、効果を損なわない限度において添加してもよい。
【0021】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、透明感を有しながら、摩擦性が良好であることを特徴とする。後述する方法による動摩擦係数(μd)が1.6以下であることが好ましく、1.5以下がより好ましく、1.3以下が特に好ましい。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、特定の滑剤性能を有する処理剤を付与しているため、紙おむつ製造工程に供給する前に伸長−収縮回復処理工程等を経由する必要なく、工程性能に優れ、ソフトな弾性性能を有し、透明感のある紙おむつのゴム部として好適に用いることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例などにより更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などによって何ら限定されるものではない。
本発明に用いられる評価方法は以下の通りである。
(1)逆巻き解じょ性速度比
紡糸され、紙管に巻き取られた310dt/36フィラメントの弾性繊維4.0kg巻糸体を、25℃、65%RHの雰囲気下で1ヶ月間放置後、15℃、40%RHで2日間、更に25℃、65%RHの雰囲気下で1ヶ月間放置したのちに評価を行う。図1に示した装置にて測定する。
【0023】
巻糸体を梨地ロール上に置き、送り出しロール(A)を回転させながら、ロール表面速度20m/分で弾性繊維を送り出し、80cm離れた所に設置された同じ径の梨地ロール上に巻き取る。弾性糸を3回巻きつけた中間に有るプレドラフトロール(B)上の表面速度を100m/分から徐々に低下させて、送り出すロール上の弾性繊維が逆巻きを起こし、糸が金属棒に接触する時点の(B)の速度を測定し、この速度を送り出し速度20m/分で除した速度比を逆巻き解じょ性速度比とする。
この値が小さいほど巻糸体から糸離れがよいことを示し、解じょ性が良好と判断する。
【0024】
(2)糸切れ評価
紡糸され、紙管に巻き取られた470dtの弾性繊維2.0kg巻糸体を図2に示す装置を用いて測定する。弾性繊維送り出しロール(A)速度50m/分、弾性糸を3回巻きつけたプレドラフトロール(B)の速度80m/分、巻き取りロール(E)の速度80m/分にて巻き取る。(F)の部位での弾性繊維の挙動を20分間目視観察し、次の基準で評価する。
○:糸揺れ幅1cm未満。 △:糸揺れ幅1cm以上。 ×:糸切れ。
【0025】
(3)接着性
2倍に伸長させた470dtの弾性繊維1本にホットメルト接着剤を0.1g/m付着させ、両サイドをポリプロピレンの不織布で挟み込み、その上から130℃の熱物体で弾性繊維とスパンボンドを熱圧着させる。これを一週間、40℃の条件で放置後、200mm長に熱圧着体を切断し、体温相当の38℃雰囲気下で、20時間放置後の弾性繊維の長さを測定する。接着性が良好な場合は収縮が小さく、まったく収縮しない場合は200mm、完全に収縮した場合は100mmとなり、数値が大きいほど接着性は良好である。
【0026】
(4)摩擦性
紡糸され、紙管に巻き取られた310dtの弾性繊維2.0kg巻糸体を図3に示す装置を用いて測定する。弾性繊維送り出しロール(A)速度50m/分、弾性糸を3回巻きつけたプレドラフトロール(B)の速度80m/分、(C)の速度150m/分にて巻き取る。このときの糸走行時の応力T1とT2を測定して、次式で動摩擦係数(μd)を求める。
μd=ln(T2/T1)/0.5π
μdが小さい程、セラミックフックガイドとの摩擦が少なく良好である。
【0027】
(5)透明度評価
バックシートに動物の絵柄デザインのある市販紙おむつの絵柄の上に10本の310dtのポリウレタン弾性繊維を並べて絵柄が見えにくくなる程度を目視にて次の基準で判定した。
○:透明性あり良好。 △:やや透明性に劣る。 ×:透明感がない。
【0028】
【実施例1〜6】
数平均分子量1800のポリオキシテトラメチレングリコール400gと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート91.7gとを乾燥窒素雰囲気下、80℃で3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温に冷却した後、ジメチルアセトアミド720gを加えて溶解し、ポリウレタンプレポリマー溶液を調整した。一方、エチレンジアミン8.11g及びジエチルアミン1.37gをジメチルアセトアミド390gに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温下で添加して、粘度4010ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液を得た。
このポリウレタン溶液に、ポリウレタン固形分に対して、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1質量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールを0.5質量%添加し、紡糸用原液を得た。
【0029】
また、実施例3においては、ポリウレタン固形分100質量部に対して酸化チタン0.3質量部を追加した。このようにして得られた紡糸用原液を、紡糸口金の細孔から熱風中に押しだして溶剤を蒸発させた。乾燥された糸条をリング仮撚り機を通過する過程で仮撚りし、ゴデットローラを経て、紡糸用原液中の固形分に対して所定の付着率となるようにオイリングローラの回転数を調整して、オイリングローラ上で処理剤を付与し、毎分500m/分の速度で紙管に巻き取った。紡糸口金、紡糸条件を適宜、変更して、470dt/56フィラメント、および310dt/36フィラメントの2種類のポリウレタン弾性繊維を得た。
表1に示すように、処理剤の組成を変え、実施例1〜6のポリウレタン弾性繊維を得た。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。表1中の鉱物油は15センチストークスのものであり、ジメチルシリコーンは10センチストークスのポリジメチルシロキサンである。
【0030】
【比較例1〜6】
表1に示すように、処理剤の組成及び付着量を変えた以外は実施例1と同様にして、比較例1〜6のポリウレタン弾性繊維を得た。ただし、比較例3においては、酸化チタンを固形分100質量部に対して、1.5質量部をさらに添加したポリウレタン溶液を紡糸した。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】
本発明による透明感のあるポリウレタン弾性繊維は、紙おむつ製造時に、ホットメルト剤との優れた接着性、巻き取りパッケージからの優れた解じょ性、糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に優れた性能を有し、かつデザインや外観の良好な紙おむつを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリウレタン弾性繊維の逆巻き解じょ性速度比を測定する装置の一例である。
【図2】本発明のポリウレタン弾性繊維の糸切れ性能を測定する装置の一例である。
【図3】本発明のポリウレタン弾性繊維の摩擦性能を測定する装置の一例である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維に関する。詳しくは、紙おむつのゴム部に使用するのに好適な工程性と接着性に優れたポリウレタン弾性繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙おむつの腰部や脚部等に、いわゆるゴム部として、重ね合わせた不織布の間にラミネートして使用されるポリウレタン弾性繊維は、従来から各種の提案がなされている。
従来、紙おむつの製造工程性、すなわちポリウレタン弾性繊維がラミネートされるまでの工程での糸道変更用ガイド摩擦性を低減させるために、各種無機金属化合物がポリウレタン弾性繊維中に添加されていた。
しかしながら、これらの無機金属化合物はポリウレタン弾性繊維の透明感を損なう場合がある。
【0003】
近年、紙おむつのバックシートに小さな動物や花柄のデザインをプリントした紙おむつが使われるようになってきた。このような紙おむつの場合、デザイン上にポリウレタン弾性繊維が重なる部分においてはポリウレタン弾性繊維が透明感を有さないとデザインの美しさを損なう問題があった。そのため、紙おむつ用途にこれらの無機金属化合物を極力添加しないポリウレタン弾性繊維が要望されている。しかしながら、無機金属化合物の添加量が少ないポリウレタン弾性繊維は、ガイド摩擦性が劣るために製造工程の糸道ガイドで糸切れを多発し、紙おむつ用途への適用は困難であった。
【0004】
従来、紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維として、解じょ性や接着剤との接着性を改善する提案が種々なされており、例として処理剤の付着量が2重量%以下の、解じょ性と接着剤との接着性が良好な弾性糸巻糸体(例えば、特許文献1参照。)や、ポリプロピレングリコール系ポリオールよりなる処理剤を3.0〜10.0重量%付与された解じょ性と接着剤との接着性が良好な弾性糸巻糸体(例えば、特許文献2参照。)や、特定の表面張力を有する油剤を付与した解じょ性と接着性が良好な弾性糸巻糸体(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。しかしこれらの巻糸体における弾性糸においても、無機金属化合物を添加しない場合、摩擦性が劣るため、やはり紙おむつ用途への適用は困難であった。
【0005】
一方、良好な伸長性と回復性を兼ね備えた紙おむつを製造するために、弾性糸に4倍以上の伸長を与え、次に、収縮回復させた後、紙おむつ製造工程に供給する紙おむつの製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、この方法では、弾性繊維を巻取る際又は巻取り後、巻返す際に、伸長−収縮回復処理工程を経由する必要があるため、工程が煩雑となり、糸切れ等のロスが生じやすい。特に無機金属化合物を添加しない場合、摩擦性の低下による悪影響が発生しやすい。
このように、従来技術においては、紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維として透明感があり、摩擦による糸切れが少なく、解じょ性、接着性等の工程性能を満足できるものはなかった。
【0006】
【特許文献1】
特公平5−50429号公報
【特許文献2】
特開2000−327224号公報
【特許文献3】
特開平10−152264号公報
【特許文献4】
特開2001−29386号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ホットメルト剤との優れた接着性、巻き取りパッケージからの優れた解じょ性、および摩擦による糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に卓越し、さらに透明感を有する、紙おむつのゴム部に用いるポリウレタン弾性繊維を得ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のとおりである。
(1)有機ジイソシアネート化合物、数平均分子量が500〜5000のポリアルキレンエーテルジオール、並びにイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物から得られるポリウレタン重合体からなる弾性繊維からなり、下記の、成分(a)が15〜80質量%、(b)が2〜30質量%、(c)が3〜50質量%、及び(d)が10〜50質量%の組成からなる処理剤が付着していることを特徴とする紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(a)数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの鉱物油
(d)25℃における動粘度が5〜50センチストークスのジメチルシリコーン
(2)動摩擦係数が1.6以下であることを特徴とする(1)の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(3)無機金属化合物の含有量がポリウレタン重合体100質量部に対して1.0質量部より少ないことを特徴とする(1)または(2)の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(4)処理剤の付着率が2.0質量%を越えることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリウレタン弾性繊維原料は、炭素数2〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がエーテル結合し、両末端が水酸基からなる数平均分子量500〜5000のポリアルキレンエーテルジオールであり、特に、テトラメチレン基からなるポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。
有機ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、脂環族及び芳香族のジイソシアネートの中で、反応条件下で溶解又は液状を示すものは、その全てが適用できる。
【0010】
例えば、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)、メチレン−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)、2,4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、1−アルキルフェニレン−2,4及び2,6−ジイソシアネート、3−(α−イソシアネートエチル)フェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニル−ジメチルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等が挙げられる。好ましくは、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)である。
【0011】
活性水素原子含有化合物としては、例えば、ヒドラジン、ポリヒドラジン、炭素原子数2〜10の、直鎖又は分岐した、脂肪族、脂環族又は芳香族の、活性水素を有するアミノ基を持つ化合物で、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、特開平5−155841号公報に記載されているウレア基を有するジアミン類等のジアミン、ヒドロキシルアミン、水、又は低分子量のグリコール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等を用いることができる。好ましくは、エチレンジアミン及び1,2−プロピレンジアミンである。
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、ジエチルアミンのようなジアルキルアミン等が用いられる。これらの鎖伸長剤、末端停止剤は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
【0012】
本発明において、ポリアルキレンエーテルジオール、ジイソシアネート化合物及び活性水素含有化合物によるポリウレタン重合体の製造には、公知のポリウレタン化重合反応の技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレンエーテルジオールと有機ジイソシアネートとを、1:1.2〜2.2(モル比)、好ましくは1:1.3〜1.8の割合で反応させ、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、ウレタン部分を得る。次いで、このウレタンプレポリマーをジアミン化合物又はグリコール化合物により鎖伸長反応を行い、ポリウレタン重合体を得ることができる。
ポリウレタン化反応の操作に関しては、ウレタンプレポリマー合成時やこのウレタンプレポリマーと活性水素含有化合物との反応時に、無溶媒、又はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の溶剤を用いてもよい。
【0013】
本発明で用いられる各種化合物の化学量論的割合は、ポリアルキレンエーテルジオールの水酸基とジアミン化合物等の活性水素の総和が、イソシアネート化合物のイソシアネート基に対して1.00〜1.07等量であることが好ましい。本発明のポリウレタン弾性繊維は、後述するように特定の滑剤性能を有する処理剤が付与されているため、無機金属化合物を含有しないか、または微量の含有であっても、十分な摩擦性を得ることができ、繊維の透明感を確保することができる。本発明のポリウレタン弾性繊維に用いられる場合の無機金属化合物としては、Ti、Mg、Al、Zn、Caの群から選ばれる金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩及びこれらの単体または無機金属複合塩などが挙げられる。好ましい無機金属化合物として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、ハンタイト等がある。摩擦性向上の観点から特に好ましくは、酸化チタンである。
【0014】
本発明のポリウレタン弾性繊維における無機金属化合物の含有量は、ポリウレタン固形分100質量部に対して、1.0質量部以下であることが好ましく、含有しなくても良い。より好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.3質量部以下である。添加量が1.0質量部以上であれば、ポリウレタン弾性繊維の透明感が低下する傾向にあり、微量の添加であれば摩擦による工程糸切れが改善される。
さらに、ポリウレタン重合体組成物には、前記以外の添加剤として、ポリウレタン弾性繊維に用いられる公知の有機又は無機の化合物、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、黄変防止剤、熱変色防止剤、粘着防止剤、顔料、帯電防止剤、防黴剤、着色剤、充填剤等を本発明の目的を損なわない範囲において、併用して添加してもよい。
【0015】
このようにして得られたポリウレタン重合体は、通常の方法で乾式紡糸、溶融紡糸又は湿式紡糸を行い、ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。
ポリウレタン弾性繊維の単糸数は限定されず、モノフィラメント又はマルチフィラメントのいずれでもよいが、接着性の観点から、単糸繊度が5〜15dt(デシテックス)であるマルチフィラメントが好ましい。弾性繊維の総繊度は180〜2200dtが好ましい。
得られたポリウレタン弾性繊維は、紙管パッケージに巻き取る前又は後に、ロールオイリング、ガイドオイリング、スプレーオイリング等の公知の方法によって処理剤を付与される。
【0016】
本発明は、特定のホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール及び高級アルコール、鉱物油、ジメチルシリコーンを含む処理剤を透明感のあるポリウレタン弾性繊維に付着させることにより、接着性、解じょ性、糸切れ性等といった加工性能が改善できる紙おむつ用途に特段の効果が付与されることを見出した。
本発明における処理剤は、下記の、成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含有する。
(a)数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール、
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの鉱物油、及び
(d)25℃における動粘度が5〜50センチストークスのジメチルシリコーン、である。
【0017】
成分(a)のホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール化合物は、本発明におけるポリウレタン重合体のソフトセグメントの非晶部に対して、滑剤としての効果をもつものと推測され、これにより弾性繊維の伸長時によりソフトな弾性特性が発現する。成分(a)は、数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であり、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを重合又は共重合するか、低分子のポリアルキレングリコールをエチレンオキシド、プロピレンオキシドを用いてさらに共重合して得られる。これらのなかで、プロピレンオキシド単独の重合物であるポリプロピレングリコール(PPG)が好ましい。ホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール化合物の数平均分子量が300未満であると飛散しやすく、数平均分子量が2000を越えると解じょ性が悪化する。また、融点が20℃を越えると冬場に解じょ性が悪化し、その結果、紙おむつ製造工程中で糸切れが多発する。
【0018】
成分(a)のみで構成される処理剤は、解じょ性と摩擦糸切れ性に劣るため、処理剤には、成分(a)のほかに、解じょ性の点から(c)成分及び、摩擦性の点から(d)成分である、鉱物油、ジメチルシリコーンが含まれる。成分(d)におけるジメチルシリコーンとしては、1)ジメチルシロキサン単位からなるポリジメチルシロキサン、2)ジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を含むジアルキルシロキサン単位とからなるポリジアルキルシロキサン類、3)ジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とからなるポリシロキサン類等が挙げられる。好ましくはポリジメチルシロキサンである。
成分(c)、成分(d)における、鉱物油及びジメチルシリコーンの、25℃における動粘度は、恒温水槽中キャノンフェンスケ粘度管を用いて定法で測定した時に5〜50センチストークスである。
さらに、(a)成分と(c)、(d)成分の相溶性を高めるために、(b)成分である、末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコールが含まれる。このようなアルコールとして、イソステアリルアルコール、イソアミルアルコール等の高級脂肪酸アルコールが好ましい。
【0019】
本発明のポリウレタン弾性繊維に、これら4成分からなる処理剤が付着されていることによって、はじめて解じょ性と工程性糸切れ性、接着性を同時に満足する透明感のある紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。処理剤中の4成分の割合は、(a)が15〜80質量%、(b)が2〜30質量%、(c)が3〜50質量%、(d)が10〜50質量%の範囲である。(a)成分が15質量%未満ではソフトな弾性特性が得られず、80質量%を越えると弾性繊維の解じょ性が低下する。(b)成分が2質量%未満では処理剤の相溶性を確保できず、30質量%を越えても処理剤の安定性が低下し、成分が相分離する。(c)成分が3質量%未満では解じょ性に劣り、50質量%を越えると(a)成分の比率が低下し、ソフトな弾性特性が低下し、不織布との接着性も低下する。(d)成分が10質量%未満では摩擦による糸切れ性が劣り、50質量%を越えると不織布との接着性が低下する。好ましくは、(a)成分が20〜70質量%、(b)成分が5〜20質量%、(c)成分が5〜20質量%、(d)成分が10〜40質量%の範囲である。
【0020】
処理剤の付着量は、弾性繊維の接着性、解じょ性、工程中での糸切れ性等、工程性能の点から、中の処理剤の付着率が2.0質量%を越えることが好ましく、より好ましくは、2.1〜5.0質量%、最も好ましくは2.3〜3.0質量%である。
上記の本発明の処理剤に、さらに、公知の配合剤である、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、上記成分以外のポリオルガノシロキサン、アミノ変性シリコーン、アミノエーテル変性シリコーン、タルク、シリカ、コロイダルアルミナ等の鉱物性徴粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、パラフィン、ポリエチレン、松脂等の常温で固体のワックスなどを本発明の目的、効果を損なわない限度において添加してもよい。
【0021】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、透明感を有しながら、摩擦性が良好であることを特徴とする。後述する方法による動摩擦係数(μd)が1.6以下であることが好ましく、1.5以下がより好ましく、1.3以下が特に好ましい。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、特定の滑剤性能を有する処理剤を付与しているため、紙おむつ製造工程に供給する前に伸長−収縮回復処理工程等を経由する必要なく、工程性能に優れ、ソフトな弾性性能を有し、透明感のある紙おむつのゴム部として好適に用いることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例などにより更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などによって何ら限定されるものではない。
本発明に用いられる評価方法は以下の通りである。
(1)逆巻き解じょ性速度比
紡糸され、紙管に巻き取られた310dt/36フィラメントの弾性繊維4.0kg巻糸体を、25℃、65%RHの雰囲気下で1ヶ月間放置後、15℃、40%RHで2日間、更に25℃、65%RHの雰囲気下で1ヶ月間放置したのちに評価を行う。図1に示した装置にて測定する。
【0023】
巻糸体を梨地ロール上に置き、送り出しロール(A)を回転させながら、ロール表面速度20m/分で弾性繊維を送り出し、80cm離れた所に設置された同じ径の梨地ロール上に巻き取る。弾性糸を3回巻きつけた中間に有るプレドラフトロール(B)上の表面速度を100m/分から徐々に低下させて、送り出すロール上の弾性繊維が逆巻きを起こし、糸が金属棒に接触する時点の(B)の速度を測定し、この速度を送り出し速度20m/分で除した速度比を逆巻き解じょ性速度比とする。
この値が小さいほど巻糸体から糸離れがよいことを示し、解じょ性が良好と判断する。
【0024】
(2)糸切れ評価
紡糸され、紙管に巻き取られた470dtの弾性繊維2.0kg巻糸体を図2に示す装置を用いて測定する。弾性繊維送り出しロール(A)速度50m/分、弾性糸を3回巻きつけたプレドラフトロール(B)の速度80m/分、巻き取りロール(E)の速度80m/分にて巻き取る。(F)の部位での弾性繊維の挙動を20分間目視観察し、次の基準で評価する。
○:糸揺れ幅1cm未満。 △:糸揺れ幅1cm以上。 ×:糸切れ。
【0025】
(3)接着性
2倍に伸長させた470dtの弾性繊維1本にホットメルト接着剤を0.1g/m付着させ、両サイドをポリプロピレンの不織布で挟み込み、その上から130℃の熱物体で弾性繊維とスパンボンドを熱圧着させる。これを一週間、40℃の条件で放置後、200mm長に熱圧着体を切断し、体温相当の38℃雰囲気下で、20時間放置後の弾性繊維の長さを測定する。接着性が良好な場合は収縮が小さく、まったく収縮しない場合は200mm、完全に収縮した場合は100mmとなり、数値が大きいほど接着性は良好である。
【0026】
(4)摩擦性
紡糸され、紙管に巻き取られた310dtの弾性繊維2.0kg巻糸体を図3に示す装置を用いて測定する。弾性繊維送り出しロール(A)速度50m/分、弾性糸を3回巻きつけたプレドラフトロール(B)の速度80m/分、(C)の速度150m/分にて巻き取る。このときの糸走行時の応力T1とT2を測定して、次式で動摩擦係数(μd)を求める。
μd=ln(T2/T1)/0.5π
μdが小さい程、セラミックフックガイドとの摩擦が少なく良好である。
【0027】
(5)透明度評価
バックシートに動物の絵柄デザインのある市販紙おむつの絵柄の上に10本の310dtのポリウレタン弾性繊維を並べて絵柄が見えにくくなる程度を目視にて次の基準で判定した。
○:透明性あり良好。 △:やや透明性に劣る。 ×:透明感がない。
【0028】
【実施例1〜6】
数平均分子量1800のポリオキシテトラメチレングリコール400gと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート91.7gとを乾燥窒素雰囲気下、80℃で3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温に冷却した後、ジメチルアセトアミド720gを加えて溶解し、ポリウレタンプレポリマー溶液を調整した。一方、エチレンジアミン8.11g及びジエチルアミン1.37gをジメチルアセトアミド390gに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温下で添加して、粘度4010ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液を得た。
このポリウレタン溶液に、ポリウレタン固形分に対して、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1質量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールを0.5質量%添加し、紡糸用原液を得た。
【0029】
また、実施例3においては、ポリウレタン固形分100質量部に対して酸化チタン0.3質量部を追加した。このようにして得られた紡糸用原液を、紡糸口金の細孔から熱風中に押しだして溶剤を蒸発させた。乾燥された糸条をリング仮撚り機を通過する過程で仮撚りし、ゴデットローラを経て、紡糸用原液中の固形分に対して所定の付着率となるようにオイリングローラの回転数を調整して、オイリングローラ上で処理剤を付与し、毎分500m/分の速度で紙管に巻き取った。紡糸口金、紡糸条件を適宜、変更して、470dt/56フィラメント、および310dt/36フィラメントの2種類のポリウレタン弾性繊維を得た。
表1に示すように、処理剤の組成を変え、実施例1〜6のポリウレタン弾性繊維を得た。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。表1中の鉱物油は15センチストークスのものであり、ジメチルシリコーンは10センチストークスのポリジメチルシロキサンである。
【0030】
【比較例1〜6】
表1に示すように、処理剤の組成及び付着量を変えた以外は実施例1と同様にして、比較例1〜6のポリウレタン弾性繊維を得た。ただし、比較例3においては、酸化チタンを固形分100質量部に対して、1.5質量部をさらに添加したポリウレタン溶液を紡糸した。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】
本発明による透明感のあるポリウレタン弾性繊維は、紙おむつ製造時に、ホットメルト剤との優れた接着性、巻き取りパッケージからの優れた解じょ性、糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に優れた性能を有し、かつデザインや外観の良好な紙おむつを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリウレタン弾性繊維の逆巻き解じょ性速度比を測定する装置の一例である。
【図2】本発明のポリウレタン弾性繊維の糸切れ性能を測定する装置の一例である。
【図3】本発明のポリウレタン弾性繊維の摩擦性能を測定する装置の一例である。
Claims (4)
- 有機ジイソシアネート化合物、数平均分子量が500〜5000のポリアルキレンエーテルジオール、並びにイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物から得られるポリウレタン重合体からなる弾性繊維であり、下記の、成分(a)が15〜80質量%、(b)が2〜30質量%、(c)が3〜50質量%、及び(d)が10〜50質量%の組成からなる処理剤が付着していることを特徴とする紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(a)数平均分子量300〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの鉱物油
(d)25℃における動粘度が5〜50センチストークスのジメチルシリコーン - 動摩擦係数が1.6以下であることを特徴とする請求項1記載の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
- 無機金属化合物の含有量がポリウレタン重合体100質量部に対して1.0質量部より少ないことを特徴とする請求項1または2記載の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
- 処理剤の付着率が2.0質量%を越えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
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