JP2005344214A - 紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】着脱しやすく、動きやすく、快適なフィット性を示し、さらに成長著しい子供の場合にも、体型変化に柔軟にサイズ適応ができる紙おむつを製造することができるポリウレタン弾性繊維を提供すること。
【解決手段】特定の割合の、(a)数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール,及び(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物からなる処理剤が付着されている紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
【選択図】 選択図なし。
【解決手段】特定の割合の、(a)数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール,及び(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物からなる処理剤が付着されている紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
【選択図】 選択図なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維に関する。詳しくは、紙おむつのゴム部に使用するのに好適なポリウレタン弾性繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙おむつの腰部や脚部等に、いわゆるゴム部として、重ね合わせた不織布の間にラミネートして使用されるポリウレタン弾性繊維は、従来から各種の提案がなされている。例えば、特許文献1には、処理剤の付着量が2重量%以下の、解じょ性と接着剤との接着性が良好な弾性糸巻糸体が提案されている。特許文献2には、ポリプロピレングリコール系ポリオールよりなる処理剤が3.0〜10.0重量%付与された解じょ性と接着剤との接着性が良好な弾性糸巻糸体が提案されている。特許文献3には、特定の表面張力を有する油剤を付与した解じょ性と接着性が良好な弾性糸巻糸体が提案されている。
【0003】
一方、良好な伸長性と回復性を兼ね備えた紙おむつを製造するために、例えば、特許文献4には、弾性糸に4倍以上の伸長を与え、次に、収縮回復させた後、紙おむつ製造工程に供給する紙おむつの製造方法が提案されている。しかし、この方法では、弾性繊維を巻取る際又は巻取り後、巻返す際に、伸長−収縮回復処理工程を経由する必要があるため、工程が煩雑となり、糸切れ等のロスが生じやすい。
このように、従来技術においては、紙おむつの着用快適性、解じょ性、接着性等の工程性能を同時に満足できるものはなかった。
【0004】
【特許文献1】
特公平5−50429号公報
【特許文献2】
特開2000−327224号公報
【特許文献3】
特開平10−152264号公報
【特許文献4】
特開2001−29386号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、着脱しやすく、動きやすく、かつ、快適なフィット性を示し、さらに成長著しい子供の場合にも、体型変化に柔軟にサイズ適応ができる紙おむつを製造することができる紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維を提供することである。
本発明の他の目的は、紙おむつ製造時に余分な工程を必要とせず、ホットメルト剤との優れた接着性、巻き取りパッケージからの優れた解じょ性、糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に卓越した紙おむつ、特に、紙おむつのゴム部、に用いる弾性繊維を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のとおりである。
(1) 有機ジイソシアネート化合物、テトラメチレン基及び炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状の1種以上の、前記テトラメチレン基とは異なるアルキレン基が、ブロック状又はランダム状にエーテル結合している、数平均分子量が500〜5000の共重合ポリアルキレンエーテルジオール、並びにイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物から得られるポリウレタン重合体からなる弾性繊維からなり、下記の、成分(a)が15〜95質量%、(b)が2〜30質量%、及び(c)が3〜80質量%の組成からなる処理剤が付着していることを特徴とする紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(a)数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物
(2) 弾性繊維100質量部に対して、2.0質量部を越える量の処理剤が付着していることを特徴とする(1)に記載の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
【0007】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明者は、特定の共重合ポリアルキレンエーテルジオールを用い、特定の処理剤が付着したポリウレタン弾性繊維を紙おむつのゴム部に用いた場合、着用者に快適な着脱性と優れた着用感を与えると共に、サイズ適用力にも優れることを見出だした。
本発明のポリウレタン弾性繊維の原料に用いる共重合ポリアルキレンエーテルジオールは、テトラメチレン基、及び炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状の1種以上の、前記テトラメチレン基とは異なるアルキレン基が、ブロック状又はランダム状にエーテル結合し、数平均分子量が500〜5000であることを特徴とする。
【0008】
テトラメチレン基をA、それ以外のアルキレン基をBとすると、共重合ポリアルキレンエーテルジオールの構造として、各々が1つずつ結合したHO−A−O―B−OH、Aのブロック及びBのブロックを有するHO−A−O―A−O―A−O―B−O―B−O―B−OH、A及びBが規則的に配列したHO−A−O―B−O―A−O―B−O―A−O―B−OH等や、これら以外にA、Bの配置がランダムな構造等を例示できる。
【0009】
ポリアルキレンエーテルジオールが二種以上のアルキレン基を含むことにより、1種類のアルキレン基からなるポリアルキレンエーテルジオールを用いる場合に比べて伸長時に結晶化し難いために、柔軟性、低ヒステリシスロス特性及び低残留歪特性に優れるポリウレタン弾性繊維が得られる。これを紙おむつのゴム部に用いた場合、従来から一般に広く用いられているポリテトラメチレングリコールを原料に用いた場合と比較すると、快適な着脱と着用感、及びサイズ適応力のある紙おむつが得られる。
【0010】
本発明に用いられる共重合ポリアルキレンエーテルジオールは、得られるポリウレタン弾性繊維の耐水性、耐光性及び耐磨耗性の観点から、アルキレン基のうち一種がテトラメチレン基であり、もう一種以上がテトラメチレン基以外の炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。なかでも、テトラメチレンと、ネオペンチレン及び/又は2−メチルブチレンとの共重合ポリアルキレンエーテルジオール、すなわち、共重合ポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオール、共重合ポリ(テトラメチレン・2−メチルブチレン)エーテルジオールがより好ましい。弾性機能の観点から、最も好ましくは、共重合ポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオールである。
【0011】
テトラメチレン基と他のアルキレン基との共重合ポリアルキレンエーテルジオールにおいて、テトラメチレン以外のアルキレンユニットは、3モル%以上85モル%以下であることが好ましく、4モル%以上70モル%以下がより好ましい。テトラメチレン以外のアルキレンユニットが3モル%未満では、弾性機能の改善効果が充分でない場合があり、85モル%を越えると伸度及び強度が低下する場合がある。
【0012】
有機ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、脂環族及び芳香族のジイソシアネートの中で、反応条件下で溶解又は液状を示すもののは全て、適用できる。
例えば、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)、メチレン−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)、2,4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、1−アルキルフェニレン−2,4及び2,6−ジイソシアネート、3−(α−イソシアネートエチル)フェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニル−ジメチルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等が挙げられる。好ましくは、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)である。
【0013】
活性水素原子含有化合物としては、例えば、ヒドラジン、ポリヒドラジン、炭素原子数2〜10の、直鎖又は分岐した、脂肪族、脂環族又は芳香族の、活性水素を有するアミノ基を持つ化合物で、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、特開平5−155841号公報に記載されているウレア基を有するジアミン類等のジアミン、ヒドロキシルアミン、水、又は低分子量のグリコール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等を用いることができる。好ましくは、エチレンジアミン及び1,2−プロピレンジアミンである。
【0014】
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、ジエチルアミンのようなジアルキルアミン等が用いられる。これらの鎖伸長剤、末端停止剤は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
本発明において、共重合ポリアルキレンエーテルジオール、ジイソシアネート化合物及び活性水素含有化合物によるポリウレタン重合体の製造には、公知のポリウレタン化重合反応の技術を用いることができる。例えば、共重合ポリアルキレンエーテルジオールと有機ジイソシアネートとを、1:1.2〜1:2.2(モル比)、好ましくは1:1.3〜1:1.8の割合で反応させ、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、ウレタン部分を得る。次いで、このウレタンプレポリマーをジアミン化合物又はグリコール化合物により鎖伸長反応を行い、ポリウレタン重合体を得ることができる。
【0015】
ポリウレタン化反応の操作に関しては、ウレタンプレポリマー合成時やこのウレタンプレポリマーと活性水素含有化合物との反応時に、無溶媒、又はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の溶剤を用いてもよい。
本発明で用いられる各種化合物の化学量論的割合は、ポリアルキレンエーテルジオールの水酸基とジアミン化合物等の活性水素の総和が、イソシアネート化合物のイソシアネート基に対して1.00〜1.07等量であることが好ましい。
【0016】
ポリウレタン重合体組成物には、ポリウレタン弾性繊維に用いられる公知の有機又は無機の化合物、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、黄変防止剤、熱変色防止剤、粘着防止剤、顔料、帯電防止剤、防黴剤、着色剤、充填剤等を併用して添加してもよい。
このようにして得られたポリウレタン重合体は、通常の方法で乾式紡糸、溶融紡糸又は湿式紡糸を行い、ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。
【0017】
ポリウレタン弾性繊維の単糸数は限定されず、モノフィラメント及びマルチフィラメントのいずれでもよいが、接着性の観点から、単糸繊度が5〜15dt(デシテックス)であるマルチフィラメントが好ましい。弾性繊維の総繊度は180〜2200dtが好ましい。
得られたポリウレタン弾性繊維は、紙管パッケージに巻き取る前又は後に、ロールオイリング、ガイドオイリング、スプレーオイリング等の公知の方法によって処理剤を付与される。
【0018】
本発明の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維は、共重合成分を有するために、結晶性が低く、伸長時の弾性特性に優れる反面、通常、紙おむつに使用される処理剤では、付着した処理剤がウレタンポリマーの非晶部に吸収され、巻き取られた糸状体を数ヶ月保管しておくと糸条同士が癒着し解じょ性が悪化する。
本発明は、特定のホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、及び高級アルコールを含む処理剤をポリウレタン弾性繊維に付着させることにより、接着性、解じょ性、糸切れ性等といった加工性能が改善するだけでなく、糸の弾性性能が改善されるという特段の効果を付与するものである。
【0019】
本発明における処理剤は、下記の、成分(a)、(b)及び(c)を含有する。
(a)数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール、及び
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物。
【0020】
(a)のホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール化合物は、共重合ジオールを原料とした本発明におけるポリウレタン重合体のソフトセグメントの非晶部に対して、滑剤としての効果をもつものと推測され、これにより弾性繊維の伸長時によりソフトな弾性特性が発現する。(a)は、数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であり、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを重合又は共重合するか、低分子のポリアルキレングリコールをエチレンオキシド、プロピレンオキシドを用いてさらに共重合して得られる。これらのなかで、プロピレンオキシド単独の重合物が好ましい。ホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール化合物の数平均分子量が400未満であると飛散しやすく、数平均分子量が2000を越えると解じょ性が悪化する。また、融点が20℃を越えると冬場に解じょ性が悪化し、その結果、紙おむつ製造工程中で糸切れが多発する。
(a)のみで構成される処理剤は、解じょ性に劣るため、処理剤には、(a)のほかに、解じょ性を向上させるために、(c)成分である、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物が用いられる。
【0021】
(c)におけるジメチルシリコンとしては、1)ジメチルシロキサン単位からなるポリジメチルシロキサン、2)ジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を含むジアルキルシロキサン単位とからなるポリジアルキルシロキサン類、3)ジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とからなるポリシロキサン類等があげられる。好ましくはポリジメチルシロキサンである。
(c)における、鉱物油及びジメチルシリコンの、25℃における動粘度は、恒温水槽中キャノンフェンスケ粘度管を用いて定法で測定した時に5〜50センチストークスである。
さらに、(a)成分と(c)成分の相溶性を高めるために、(b)成分である、末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコールが用いられる。このようなアルコールとして、イソステアリルアルコール、イソアミルアルコール等の高級脂肪酸アルコールが好ましい。
【0022】
本発明のポリウレタン弾性繊維に、これら3成分からなる処理剤が付着されていることによって、はじめて着用快適性と工程性を同時に満足する紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。
処理剤中の3成分の割合は、(a)が15〜95質量%、(b)が2〜30質量%、(c)が3〜80質量%の範囲である。(a)成分が15質量%未満ではソフトな弾性特性が得られず、95質量%を越えると弾性繊維の解じょ性が低下する。(b)成分が2質量%未満では処理剤の相溶性を確保できず、30質量%を越えると処理剤の安定性が低下する。(c)成分が3質量%未満では解じょ性に劣り、80質量%を越えると(a)の比率が低下するため本発明の効果が得られない。好ましくは、(a)が20〜95質量%、(b)が2〜20質量%、(c)が3〜70質量%の範囲である。
【0023】
処理剤の付着量は、弾性繊維の接着性、解じょ性、工程中での糸切れ性等、工程性能の点から、弾性繊維100質量部に対して2.0質量部を越える量であることが好ましく、より好ましくは、2.1〜5.0質量部、最も好ましくは2.3〜3.0質量部である。
上記の本発明の処理剤に、さらに、公知の配合剤である、ポリエステル変性シリコン、ポリエーテル変性シリコン、上記成分以外のポリオルガノシロキサン、アミノ変性シリコン、アミノエーテル変性シリコン、タルク、シリカ、コロイダルアルミナ等の鉱物性徴粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、パラフィン、ポリエチレン、松脂等の常温で固体のワックス等を本発明の効果を損なわない限度において添加してもよい。
【0024】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、特定のウレタンポリマーからなり、かつ、特定の滑剤性能を有する処理剤を付与しているため、紙おむつ製造工程に供給する前に伸長−収縮回復処理工程等を経由する必要なく、ソフトな弾性性能を有する紙おむつのゴム部として好適に用いることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明に用いられる評価方法は以下の通りである。
(1)解じょ性
紡糸され、紙管に巻き取られた1240dt/144フィラメントの弾性繊維4kg巻糸体を、25℃、65%RHの雰囲気で1ヶ月間放置後、15℃、40%RHで2日間、更に25℃、65%RHの雰囲気で1ヶ月間放置したのちに評価を行う。
巻糸体を梨地ローラー上に置き、ローラーを回転させながら、ローラー表面速度100m/分で弾性繊維を送り出し、50cm離れた所に設置された同じ径の梨地ローラー上に巻き取る。巻き取るローラー上の表面速度を200m/分から徐々に低下させて、送り出すローラー上の弾性繊維が逆巻きを開始する時点の速度を測定する。この値が小さいほど巻糸体から糸離れがよいことを示し、これを解じょ性が良好と判断する。
【0026】
(2)糸切れ回数
紡糸され、紙管に巻き取られた470dtの弾性繊維500g巻糸体を300本、リバー社製の弾性糸用整経機に取り付け、弾性繊維送り出し速度150m/分、ビーム巻き取り速度300m/分にて整経し、完了するまでに発生した弾性繊維の糸切れ回数を評価する。ただし、糸切れが発生した場合も、切れた糸は結んでつなぎ、300本の状態で再びスタートさせる。ほぼ同時に複数本糸切れした場合も糸切れ回数は1回としてカウントする。
【0027】
(3)接着性
2倍に伸長させた1240dtの弾性繊維1本にホットメルト接着剤を0.1g/m付着させ、両サイドをポリプロピレンの不織布で挟み込み、その上から130℃の熱物体で弾性繊維とスパンボンドを熱圧着させる。これを一週間、40℃の条件で放置後、200mm長に熱圧着体を切断し、体温相当の35℃雰囲気下で、24時間放置後の弾性繊維の長さを測定する。接着性が良好な場合は収縮が小さく、まったく収縮しない場合は200mm、完全に収縮した場合は100mmとなり、数値が大きいほど接着性は良好である。
【0028】
(4)着脱性
紡糸され、紙管に巻き取られた470dtの弾性繊維を公知の方法で紙おむつ製造工程に供し、腰部及び脚部のゴム部に弾性繊維を用いた紙おむつを製造する。生後9ケ月〜13ケ月の乳幼児15人に、ブラインドテストにより、同条件で試作した紙おむつを乳幼児に使用させ、着用時及び排尿後に脱がせる時の着脱容易性をその母親に比較評価させる。以下の点数をつけその平均値で表す。
5点:着脱性が大変よい
4点:着脱性よい
3点:着脱性普通
2点:着脱性やや悪い
1点:着脱性悪い
【0029】
(5)サイズ適応性
生後13ケ月の乳幼児5人に、ブラインドテストにより、同条件で試作した紙おむつを使用させ、排尿後に脱がせ、腹部及び股部のレッドマークの有無と尿漏れの有無について調査する。
レッドマークについては、目視による判定で程度によって以下の記号をつける。
○:レッドマークなし。
△:レッドマーク薄くある。
×:レッドマークはっきり認められる。
【0030】
【実施例1〜7】
数平均分子量1800の共重合ポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオール(ネオペンチレンの共重合率11モル%)400gと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート91.7gとを乾燥窒素雰囲気下、80℃で3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温に冷却した後、ジメチルアセトアミド720gを加えて溶解し、ポリウレタンプレポリマー溶液を調整した。一方、エチレンジアミン8.11g及びジエチルアミン1.37gをジメチルアセトアミド390gに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温下で添加して、粘度4000ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液を得た。
【0031】
この操作を繰り返して得たポリウレタン溶液に、ポリウレタン固形分に対して、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1質量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールを0.5質量%添加し、紡糸用原液を準備した。
このようにして得られた紡糸用原液を、紡糸口金の細孔から熱風中に押しだして溶剤を蒸発させた。乾燥された糸条をリング仮撚り機を通過する過程で仮撚りし、ゴデットローラを経てオイリングローラ上で処理剤を付与し、毎分500m/分の速度で紙管に巻き取った。紡糸口金、紡糸条件を適宜、変更して、1240dt(144フィラメント)及び470dt(56フィラメント)の2種類のポリウレタン弾性繊維を製造した。
【0032】
表1に示すように、処理剤の組成及び付着量を変え、実施例1〜7のポリウレタン弾性繊維を製造した。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。表1中の鉱物油は15センチストークスのものであり、ジメチルシリコンは10センチストークスのポリジメチルシロキサンである。
【0033】
【比較例1〜4】
表1に示すように、処理剤の組成及び付着量を変えた以外は実施例1と同様にして、比較例1〜4のポリウレタン弾性繊維を製造した。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。
【0034】
【比較例5〜6】
実施例1の数平均分子量1800の共重合ポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオールの代わりに、数平均分子量1800のポリテトラメチレングリコールを用いて同様にして得た粘度4100ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液に、ポリウレタン固形分に対して、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1質量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールを0.5質量%添加し、紡糸用原液を準備した。この紡糸用原液を実施例1と同様にして表1に示す処理剤を付着させたポリウレタン弾性繊維を製造した。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明のポリウレタン弾性繊維を用いた紙おむつは、着脱しやすく、動きやすく、かつ、快適なフィット性を示す。また、成長著しい子供の場合にも、体型変化に柔軟にサイズ適応ができる。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、紙おむつ製造時に、ホットメルト剤との優れた接着性、巻き取りパッケージからの優れた解じょ性、糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に優れた性能を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維に関する。詳しくは、紙おむつのゴム部に使用するのに好適なポリウレタン弾性繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙おむつの腰部や脚部等に、いわゆるゴム部として、重ね合わせた不織布の間にラミネートして使用されるポリウレタン弾性繊維は、従来から各種の提案がなされている。例えば、特許文献1には、処理剤の付着量が2重量%以下の、解じょ性と接着剤との接着性が良好な弾性糸巻糸体が提案されている。特許文献2には、ポリプロピレングリコール系ポリオールよりなる処理剤が3.0〜10.0重量%付与された解じょ性と接着剤との接着性が良好な弾性糸巻糸体が提案されている。特許文献3には、特定の表面張力を有する油剤を付与した解じょ性と接着性が良好な弾性糸巻糸体が提案されている。
【0003】
一方、良好な伸長性と回復性を兼ね備えた紙おむつを製造するために、例えば、特許文献4には、弾性糸に4倍以上の伸長を与え、次に、収縮回復させた後、紙おむつ製造工程に供給する紙おむつの製造方法が提案されている。しかし、この方法では、弾性繊維を巻取る際又は巻取り後、巻返す際に、伸長−収縮回復処理工程を経由する必要があるため、工程が煩雑となり、糸切れ等のロスが生じやすい。
このように、従来技術においては、紙おむつの着用快適性、解じょ性、接着性等の工程性能を同時に満足できるものはなかった。
【0004】
【特許文献1】
特公平5−50429号公報
【特許文献2】
特開2000−327224号公報
【特許文献3】
特開平10−152264号公報
【特許文献4】
特開2001−29386号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、着脱しやすく、動きやすく、かつ、快適なフィット性を示し、さらに成長著しい子供の場合にも、体型変化に柔軟にサイズ適応ができる紙おむつを製造することができる紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維を提供することである。
本発明の他の目的は、紙おむつ製造時に余分な工程を必要とせず、ホットメルト剤との優れた接着性、巻き取りパッケージからの優れた解じょ性、糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に卓越した紙おむつ、特に、紙おむつのゴム部、に用いる弾性繊維を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のとおりである。
(1) 有機ジイソシアネート化合物、テトラメチレン基及び炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状の1種以上の、前記テトラメチレン基とは異なるアルキレン基が、ブロック状又はランダム状にエーテル結合している、数平均分子量が500〜5000の共重合ポリアルキレンエーテルジオール、並びにイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物から得られるポリウレタン重合体からなる弾性繊維からなり、下記の、成分(a)が15〜95質量%、(b)が2〜30質量%、及び(c)が3〜80質量%の組成からなる処理剤が付着していることを特徴とする紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(a)数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物
(2) 弾性繊維100質量部に対して、2.0質量部を越える量の処理剤が付着していることを特徴とする(1)に記載の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
【0007】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明者は、特定の共重合ポリアルキレンエーテルジオールを用い、特定の処理剤が付着したポリウレタン弾性繊維を紙おむつのゴム部に用いた場合、着用者に快適な着脱性と優れた着用感を与えると共に、サイズ適用力にも優れることを見出だした。
本発明のポリウレタン弾性繊維の原料に用いる共重合ポリアルキレンエーテルジオールは、テトラメチレン基、及び炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状の1種以上の、前記テトラメチレン基とは異なるアルキレン基が、ブロック状又はランダム状にエーテル結合し、数平均分子量が500〜5000であることを特徴とする。
【0008】
テトラメチレン基をA、それ以外のアルキレン基をBとすると、共重合ポリアルキレンエーテルジオールの構造として、各々が1つずつ結合したHO−A−O―B−OH、Aのブロック及びBのブロックを有するHO−A−O―A−O―A−O―B−O―B−O―B−OH、A及びBが規則的に配列したHO−A−O―B−O―A−O―B−O―A−O―B−OH等や、これら以外にA、Bの配置がランダムな構造等を例示できる。
【0009】
ポリアルキレンエーテルジオールが二種以上のアルキレン基を含むことにより、1種類のアルキレン基からなるポリアルキレンエーテルジオールを用いる場合に比べて伸長時に結晶化し難いために、柔軟性、低ヒステリシスロス特性及び低残留歪特性に優れるポリウレタン弾性繊維が得られる。これを紙おむつのゴム部に用いた場合、従来から一般に広く用いられているポリテトラメチレングリコールを原料に用いた場合と比較すると、快適な着脱と着用感、及びサイズ適応力のある紙おむつが得られる。
【0010】
本発明に用いられる共重合ポリアルキレンエーテルジオールは、得られるポリウレタン弾性繊維の耐水性、耐光性及び耐磨耗性の観点から、アルキレン基のうち一種がテトラメチレン基であり、もう一種以上がテトラメチレン基以外の炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。なかでも、テトラメチレンと、ネオペンチレン及び/又は2−メチルブチレンとの共重合ポリアルキレンエーテルジオール、すなわち、共重合ポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオール、共重合ポリ(テトラメチレン・2−メチルブチレン)エーテルジオールがより好ましい。弾性機能の観点から、最も好ましくは、共重合ポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオールである。
【0011】
テトラメチレン基と他のアルキレン基との共重合ポリアルキレンエーテルジオールにおいて、テトラメチレン以外のアルキレンユニットは、3モル%以上85モル%以下であることが好ましく、4モル%以上70モル%以下がより好ましい。テトラメチレン以外のアルキレンユニットが3モル%未満では、弾性機能の改善効果が充分でない場合があり、85モル%を越えると伸度及び強度が低下する場合がある。
【0012】
有機ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、脂環族及び芳香族のジイソシアネートの中で、反応条件下で溶解又は液状を示すもののは全て、適用できる。
例えば、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)、メチレン−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)、2,4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、1−アルキルフェニレン−2,4及び2,6−ジイソシアネート、3−(α−イソシアネートエチル)フェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニル−ジメチルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等が挙げられる。好ましくは、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)である。
【0013】
活性水素原子含有化合物としては、例えば、ヒドラジン、ポリヒドラジン、炭素原子数2〜10の、直鎖又は分岐した、脂肪族、脂環族又は芳香族の、活性水素を有するアミノ基を持つ化合物で、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、特開平5−155841号公報に記載されているウレア基を有するジアミン類等のジアミン、ヒドロキシルアミン、水、又は低分子量のグリコール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等を用いることができる。好ましくは、エチレンジアミン及び1,2−プロピレンジアミンである。
【0014】
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、ジエチルアミンのようなジアルキルアミン等が用いられる。これらの鎖伸長剤、末端停止剤は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
本発明において、共重合ポリアルキレンエーテルジオール、ジイソシアネート化合物及び活性水素含有化合物によるポリウレタン重合体の製造には、公知のポリウレタン化重合反応の技術を用いることができる。例えば、共重合ポリアルキレンエーテルジオールと有機ジイソシアネートとを、1:1.2〜1:2.2(モル比)、好ましくは1:1.3〜1:1.8の割合で反応させ、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、ウレタン部分を得る。次いで、このウレタンプレポリマーをジアミン化合物又はグリコール化合物により鎖伸長反応を行い、ポリウレタン重合体を得ることができる。
【0015】
ポリウレタン化反応の操作に関しては、ウレタンプレポリマー合成時やこのウレタンプレポリマーと活性水素含有化合物との反応時に、無溶媒、又はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の溶剤を用いてもよい。
本発明で用いられる各種化合物の化学量論的割合は、ポリアルキレンエーテルジオールの水酸基とジアミン化合物等の活性水素の総和が、イソシアネート化合物のイソシアネート基に対して1.00〜1.07等量であることが好ましい。
【0016】
ポリウレタン重合体組成物には、ポリウレタン弾性繊維に用いられる公知の有機又は無機の化合物、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、黄変防止剤、熱変色防止剤、粘着防止剤、顔料、帯電防止剤、防黴剤、着色剤、充填剤等を併用して添加してもよい。
このようにして得られたポリウレタン重合体は、通常の方法で乾式紡糸、溶融紡糸又は湿式紡糸を行い、ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。
【0017】
ポリウレタン弾性繊維の単糸数は限定されず、モノフィラメント及びマルチフィラメントのいずれでもよいが、接着性の観点から、単糸繊度が5〜15dt(デシテックス)であるマルチフィラメントが好ましい。弾性繊維の総繊度は180〜2200dtが好ましい。
得られたポリウレタン弾性繊維は、紙管パッケージに巻き取る前又は後に、ロールオイリング、ガイドオイリング、スプレーオイリング等の公知の方法によって処理剤を付与される。
【0018】
本発明の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維は、共重合成分を有するために、結晶性が低く、伸長時の弾性特性に優れる反面、通常、紙おむつに使用される処理剤では、付着した処理剤がウレタンポリマーの非晶部に吸収され、巻き取られた糸状体を数ヶ月保管しておくと糸条同士が癒着し解じょ性が悪化する。
本発明は、特定のホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、及び高級アルコールを含む処理剤をポリウレタン弾性繊維に付着させることにより、接着性、解じょ性、糸切れ性等といった加工性能が改善するだけでなく、糸の弾性性能が改善されるという特段の効果を付与するものである。
【0019】
本発明における処理剤は、下記の、成分(a)、(b)及び(c)を含有する。
(a)数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール、
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール、及び
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物。
【0020】
(a)のホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール化合物は、共重合ジオールを原料とした本発明におけるポリウレタン重合体のソフトセグメントの非晶部に対して、滑剤としての効果をもつものと推測され、これにより弾性繊維の伸長時によりソフトな弾性特性が発現する。(a)は、数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であり、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを重合又は共重合するか、低分子のポリアルキレングリコールをエチレンオキシド、プロピレンオキシドを用いてさらに共重合して得られる。これらのなかで、プロピレンオキシド単独の重合物が好ましい。ホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール化合物の数平均分子量が400未満であると飛散しやすく、数平均分子量が2000を越えると解じょ性が悪化する。また、融点が20℃を越えると冬場に解じょ性が悪化し、その結果、紙おむつ製造工程中で糸切れが多発する。
(a)のみで構成される処理剤は、解じょ性に劣るため、処理剤には、(a)のほかに、解じょ性を向上させるために、(c)成分である、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物が用いられる。
【0021】
(c)におけるジメチルシリコンとしては、1)ジメチルシロキサン単位からなるポリジメチルシロキサン、2)ジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を含むジアルキルシロキサン単位とからなるポリジアルキルシロキサン類、3)ジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とからなるポリシロキサン類等があげられる。好ましくはポリジメチルシロキサンである。
(c)における、鉱物油及びジメチルシリコンの、25℃における動粘度は、恒温水槽中キャノンフェンスケ粘度管を用いて定法で測定した時に5〜50センチストークスである。
さらに、(a)成分と(c)成分の相溶性を高めるために、(b)成分である、末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコールが用いられる。このようなアルコールとして、イソステアリルアルコール、イソアミルアルコール等の高級脂肪酸アルコールが好ましい。
【0022】
本発明のポリウレタン弾性繊維に、これら3成分からなる処理剤が付着されていることによって、はじめて着用快適性と工程性を同時に満足する紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。
処理剤中の3成分の割合は、(a)が15〜95質量%、(b)が2〜30質量%、(c)が3〜80質量%の範囲である。(a)成分が15質量%未満ではソフトな弾性特性が得られず、95質量%を越えると弾性繊維の解じょ性が低下する。(b)成分が2質量%未満では処理剤の相溶性を確保できず、30質量%を越えると処理剤の安定性が低下する。(c)成分が3質量%未満では解じょ性に劣り、80質量%を越えると(a)の比率が低下するため本発明の効果が得られない。好ましくは、(a)が20〜95質量%、(b)が2〜20質量%、(c)が3〜70質量%の範囲である。
【0023】
処理剤の付着量は、弾性繊維の接着性、解じょ性、工程中での糸切れ性等、工程性能の点から、弾性繊維100質量部に対して2.0質量部を越える量であることが好ましく、より好ましくは、2.1〜5.0質量部、最も好ましくは2.3〜3.0質量部である。
上記の本発明の処理剤に、さらに、公知の配合剤である、ポリエステル変性シリコン、ポリエーテル変性シリコン、上記成分以外のポリオルガノシロキサン、アミノ変性シリコン、アミノエーテル変性シリコン、タルク、シリカ、コロイダルアルミナ等の鉱物性徴粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、パラフィン、ポリエチレン、松脂等の常温で固体のワックス等を本発明の効果を損なわない限度において添加してもよい。
【0024】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、特定のウレタンポリマーからなり、かつ、特定の滑剤性能を有する処理剤を付与しているため、紙おむつ製造工程に供給する前に伸長−収縮回復処理工程等を経由する必要なく、ソフトな弾性性能を有する紙おむつのゴム部として好適に用いることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明に用いられる評価方法は以下の通りである。
(1)解じょ性
紡糸され、紙管に巻き取られた1240dt/144フィラメントの弾性繊維4kg巻糸体を、25℃、65%RHの雰囲気で1ヶ月間放置後、15℃、40%RHで2日間、更に25℃、65%RHの雰囲気で1ヶ月間放置したのちに評価を行う。
巻糸体を梨地ローラー上に置き、ローラーを回転させながら、ローラー表面速度100m/分で弾性繊維を送り出し、50cm離れた所に設置された同じ径の梨地ローラー上に巻き取る。巻き取るローラー上の表面速度を200m/分から徐々に低下させて、送り出すローラー上の弾性繊維が逆巻きを開始する時点の速度を測定する。この値が小さいほど巻糸体から糸離れがよいことを示し、これを解じょ性が良好と判断する。
【0026】
(2)糸切れ回数
紡糸され、紙管に巻き取られた470dtの弾性繊維500g巻糸体を300本、リバー社製の弾性糸用整経機に取り付け、弾性繊維送り出し速度150m/分、ビーム巻き取り速度300m/分にて整経し、完了するまでに発生した弾性繊維の糸切れ回数を評価する。ただし、糸切れが発生した場合も、切れた糸は結んでつなぎ、300本の状態で再びスタートさせる。ほぼ同時に複数本糸切れした場合も糸切れ回数は1回としてカウントする。
【0027】
(3)接着性
2倍に伸長させた1240dtの弾性繊維1本にホットメルト接着剤を0.1g/m付着させ、両サイドをポリプロピレンの不織布で挟み込み、その上から130℃の熱物体で弾性繊維とスパンボンドを熱圧着させる。これを一週間、40℃の条件で放置後、200mm長に熱圧着体を切断し、体温相当の35℃雰囲気下で、24時間放置後の弾性繊維の長さを測定する。接着性が良好な場合は収縮が小さく、まったく収縮しない場合は200mm、完全に収縮した場合は100mmとなり、数値が大きいほど接着性は良好である。
【0028】
(4)着脱性
紡糸され、紙管に巻き取られた470dtの弾性繊維を公知の方法で紙おむつ製造工程に供し、腰部及び脚部のゴム部に弾性繊維を用いた紙おむつを製造する。生後9ケ月〜13ケ月の乳幼児15人に、ブラインドテストにより、同条件で試作した紙おむつを乳幼児に使用させ、着用時及び排尿後に脱がせる時の着脱容易性をその母親に比較評価させる。以下の点数をつけその平均値で表す。
5点:着脱性が大変よい
4点:着脱性よい
3点:着脱性普通
2点:着脱性やや悪い
1点:着脱性悪い
【0029】
(5)サイズ適応性
生後13ケ月の乳幼児5人に、ブラインドテストにより、同条件で試作した紙おむつを使用させ、排尿後に脱がせ、腹部及び股部のレッドマークの有無と尿漏れの有無について調査する。
レッドマークについては、目視による判定で程度によって以下の記号をつける。
○:レッドマークなし。
△:レッドマーク薄くある。
×:レッドマークはっきり認められる。
【0030】
【実施例1〜7】
数平均分子量1800の共重合ポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオール(ネオペンチレンの共重合率11モル%)400gと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート91.7gとを乾燥窒素雰囲気下、80℃で3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温に冷却した後、ジメチルアセトアミド720gを加えて溶解し、ポリウレタンプレポリマー溶液を調整した。一方、エチレンジアミン8.11g及びジエチルアミン1.37gをジメチルアセトアミド390gに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温下で添加して、粘度4000ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液を得た。
【0031】
この操作を繰り返して得たポリウレタン溶液に、ポリウレタン固形分に対して、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1質量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールを0.5質量%添加し、紡糸用原液を準備した。
このようにして得られた紡糸用原液を、紡糸口金の細孔から熱風中に押しだして溶剤を蒸発させた。乾燥された糸条をリング仮撚り機を通過する過程で仮撚りし、ゴデットローラを経てオイリングローラ上で処理剤を付与し、毎分500m/分の速度で紙管に巻き取った。紡糸口金、紡糸条件を適宜、変更して、1240dt(144フィラメント)及び470dt(56フィラメント)の2種類のポリウレタン弾性繊維を製造した。
【0032】
表1に示すように、処理剤の組成及び付着量を変え、実施例1〜7のポリウレタン弾性繊維を製造した。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。表1中の鉱物油は15センチストークスのものであり、ジメチルシリコンは10センチストークスのポリジメチルシロキサンである。
【0033】
【比較例1〜4】
表1に示すように、処理剤の組成及び付着量を変えた以外は実施例1と同様にして、比較例1〜4のポリウレタン弾性繊維を製造した。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。
【0034】
【比較例5〜6】
実施例1の数平均分子量1800の共重合ポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオールの代わりに、数平均分子量1800のポリテトラメチレングリコールを用いて同様にして得た粘度4100ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液に、ポリウレタン固形分に対して、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1質量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールを0.5質量%添加し、紡糸用原液を準備した。この紡糸用原液を実施例1と同様にして表1に示す処理剤を付着させたポリウレタン弾性繊維を製造した。弾性繊維の各種性能評価結果を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明のポリウレタン弾性繊維を用いた紙おむつは、着脱しやすく、動きやすく、かつ、快適なフィット性を示す。また、成長著しい子供の場合にも、体型変化に柔軟にサイズ適応ができる。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、紙おむつ製造時に、ホットメルト剤との優れた接着性、巻き取りパッケージからの優れた解じょ性、糸の走行時糸切れが少ない工程性能等に優れた性能を有する。
Claims (2)
- 有機ジイソシアネート化合物、テトラメチレン基及び炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状の1種以上の、前記テトラメチレン基とは異なるアルキレン基が、ブロック状又はランダム状にエーテル結合している、数平均分子量が500〜5000の共重合ポリアルキレンエーテルジオール、並びにイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物から得られるポリウレタン重合体からなる弾性繊維からなり、下記の、成分(a)が15〜95質量%、(b)が2〜30質量%、及び(c)が3〜80質量%の組成からなる処理剤が付着していることを特徴とする紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
(a)数平均分子量400〜2000、かつ、融点が20℃以下であるホモ又は共重合ポリアルキレンエーテルジオール
(b)末端にOH基を有し、炭素数が8〜25の高級アルコール
(c)25℃における動粘度が5〜50センチストークスの、鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物 - 弾性繊維100質量部に対して、2.0質量部を越える量の処理剤が付着していることを特徴とする請求項1記載の紙おむつ用ポリウレタン弾性繊維。
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