JP2005306967A - 難燃性熱伝導シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 1013hPa、25℃で流動性を示す官能基含有アクリル系共重合体を架橋剤にて硬化してなるシートにおいて、その架橋密度がTHF抽出のゲル分率において80%以上であり、且つ充填剤として膨張黒鉛を含有する難燃性熱伝導シートとする。また、充填材として、膨張黒鉛と共に、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の結晶水を有する無機化合物を添加することにより、難燃性と熱伝導性の両方がさらに向上した難燃性熱伝導シートが得られる。
【選択図】 なし
Description
さらに詳しくは、局部発熱するICチップ、CPUチップ、GPUチップ等からの発熱をヒートシンク等の放熱部位に熱伝達するために使用されるものであり、ヒートシンク等の冷却部位に速やかに伝達することを特徴とする難燃性を有した熱伝導シートに関する。
これら冷却装置を発熱体に取り付ける際、両者間の接触を密にして熱を有効に冷却装置へ伝達させる必要がある。このような役割をするものとしては、熱伝導材がある。熱伝導材は、冷却装置と発熱体の間に介在して使用されるものであり、両者間の熱の伝達を改善するものである。
しかしながら、シリコーン系グリスは、高粘度液状物のため扱いにくく、発熱部品に塗布する場合の塗布量のコントロールが難しい上、さらに高温になるにつれグリスの流動性が高まるので流出(ポンプアウト)などの問題もある。また、大きな凹凸面に対しては密着性があまり良くないので実質的に使用することは困難である。さらに、シリコーン系材料であるため、シロキサンガスの発生があり、該ガスが電極接点などへ付着して二酸化珪素が生成することが原因となって、接点不良を発生させる可能性もある。
また、熱伝導率を高めたシリコーンゴムシートあるいは、それより低硬度のシリコーンゲルシートの場合、シリコーン樹脂そのものが高価であるばかりか、製造においても加硫工程を必要とするため容易には製造できないものである。さらに上記シリコーン系グリスの場合と同様にシロキサンガスの発生による接点不良の問題も発生する。
例えば、天然ゴム、合成ゴムなどのゴム系樹脂に熱伝導性充填材を混合しシート化したゴム系シートの場合、加硫工程を必要とするので製造工程数が増加するという問題があり、また熱伝導性充填材を高比率で混合することも難しく、さらに難燃性にも問題があるものであった。一方、加硫工程を必要としない熱可塑性エラストマーを用いたものであっても、やはり熱伝導性充填材を高比率で混合することが難しいばかりか、得られるシートの耐熱性が低いという問題点もあった。
さらにまた、アクリル系樹脂に金属系充填材を混合したシートの場合、従来は、既重合のいわゆるアクリルゴムを樹脂マトリックスとして使用していたため、金属系充填材を高比率で混合することが難しく、得られるシートの耐熱性が劣るものであった。一方、熱伝導性感圧接着剤として上市されている溶剤に溶解したアクリル樹脂あるいは水に分散させたエマルジョン系アクリル樹脂に金属系充填材を配合したものは、離型性フィルム等にコーティングすることにより薄膜化することも可能であるが、その反面、溶剤または水を除去する必要のため厚さを大きくすることが困難であり、300ミクロン程度の厚みが上限であった。ここで敢えて厚さを厚くする場合、溶剤または水を充分に乾燥できず、得られたシート又はフィルムに気泡が発生する場合があるが、この気泡がシート内部に生成されると熱伝導性は著しく低下してしまう。
そこで、耐熱性、難燃性、熱伝導性の全てを備える熱伝導シートの開発が望まれていた。
また、膨張黒鉛と結晶水を有する無機化合物を併用することによって、さらに難燃性と熱伝導性を向上させることができる。
また、絶縁体である官能基を有するアクリル系共重合体を主成分としているため、電子機器等の部品の熱を冷却装置に伝達するための放熱シートに適している。さらに、架橋密度が高く、耐熱性も良好なため、高温になる部品の熱を冷却する装置に伝達するための放熱シートにも好適に使用できる。
これらの構成から、UL−94において、V−0に合格するような高度に難燃化させた放熱シートさえも得ることができる。
さらにアクリル系モノマーと共重合可能なモノマーを重合させ、停止反応として官能基を有する分子により末端停止反応を行うことも可能である。
そのため、アクリル系共重合体の官能基は、分子末端にあっても、また、分子鎖中間に存在しても、また、側鎖上および主鎖上のどちらに存在してもよく、さらにランダムに共重合したものであっても、ブロック共重合したものであってもよい。さらにその構造も単一なものではなく、様々な繰り返し単位のアクリル系共重合体のブレンドであってもよい。
分子量が800より低いものでは、極低分子量体(モノマー、ダイマー、トリマー等)が重合物中に存在しやすく、硬化物とした際にブリードアウトする傾向にあるばかりか、硬化させる際にボイドを形成する原因にもなり好ましくない。
逆に分子量が20000を超えると重合物の流動性が悪化し、充填材の適量添加が難しくなり作業性に劣るためにやはり好ましくない。
酸価が20より少ない場合、架橋点が充分ではなく耐熱性や難燃性の向上が小さい場合がある。さらに酸価が150を越えると逆に架橋密度が高くなりやすく、可撓性が低下する場合がある。
さらに、架橋剤を反応させて得たシートにボイドが発生しないように、アクリル系共重合体と架橋剤は、実質的に溶剤分を含有しないものを使用するのが好ましい。
なお、本明細書で使用する粘度は、ブルックフィールドBH型回転粘度計での測定値である。前記アクリル系共重合体の流動特性はチキソトロピック流動を示す場合、剪断速度を上げた状態で粘度が90000mPa・s以下になれば好ましく、またダイラタント流動を示す場合、剪断速度が極低剪断の時においても粘度が90000mPa・s以下となるものが好ましい。
アクリル系共重合体が有する官能基が水酸基である場合には、イソシアネート基、グリシジル基、カルボジイミド基を有する架橋剤を用いるのが好ましい。また、アクリル系共重合体が有する官能基がアミノ基である場合には、グリシジル基、カルボジイミド基を有する架橋剤を用いるのが好ましい。
エポキシ当量が80以下であるとアクリルモノマーと反応させるために、架橋剤を多く添加する必要があり、またこれとは逆にエポキシ当量が400以上であると、反応速度が速すぎて成形が困難となる場合がある。
グリシジル基を含有する架橋剤の添加量が当量計算80より少ない場合、硬化が充分に進まず、耐熱性と難燃性が向上しにくい。逆に添加量が当量計算150より多い場合、未反応で過剰な架橋剤がシート中に残留するために、経時でのブリードアウトが起こる場合がある。
官能基としてカルボジイミド基を有する架橋剤としては、カルボジライト(日清紡社製)等の架橋剤として一般に使用されるものが使用できる。
分解温度が250℃より低いと、熱伝導シートの製造時に結晶水を有する無機化合物が分解したり、生産時の温度管理が難しくなり、生産効率が悪くなる場合がある。
なお、上記分解温度の測定方法は、充填材のみをTGA(Thermo Gravimetric Analyzer)により、大気雰囲気下、室温〜600℃まで、昇温速度10℃/minにより測定を行い、重量減少を生じる温度を測定し、分解温度とするものである。
これら充填材の大きさ、形状は特に制限されるものではないが、粒径はおよそ0.5〜30μm、形状は似球状のものが特に好ましく用いられる。
粒径が0.5μmよりも小さくなるとマトリックス樹脂中へ添加した際に液体の粘度が高くなり取り扱いにくくなる。また、逆に粒径が30μmよりも大きくなると、組成物を硬化させ成形体としたときに該充填材が均一に分散しにくくなる。
また、これらの充填材は、同じ組成であって粒径の異なるものを組み合わせることも可能である。充填材を多く添加したい場合などは、特に粒径の異なるものを数種類組み合わせることにより組成物の粘度を低下することができる。
結晶水を有する無機化合物の添加量が100重量部より少ない場合、膨張黒鉛のみを添加した熱伝導シートに比べ、熱伝導率は向上するが、膨張黒鉛と結晶水を有する無機化合物を併用したことによる難燃性のさらなる向上があまり期待できない。
膨張黒鉛を添加することによる難燃性発現機構は完全には解明されていないが、燃焼時の熱により層間に入っている化合物がガス化することにより鱗片状黒鉛が膨張してチャー形成し、難燃性能を発現することが予想される。
さらに、本発明に用いる膨張黒鉛の膨張温度は、200℃以上が望ましく、さらに望ましくは270℃以上である。熱伝導シートが使用される環境は様々で、中には最高で120〜150℃の温度条件に達する場合もあるため、200℃未満で膨張する膨張黒鉛を使用すると、使用中の長期間の加熱により膨張してしまう可能性がある。またアクリル系樹脂を架橋硬化させるための加熱温度条件下でも膨張せずに安定化していることが必要である。
また、該膨張黒鉛の粒径に関しては特に制限はないが、アクリル系共重合体樹脂マトリックスへの分散性、およびシートへの加工性を考え、10〜50μm程度が好ましい。粒径が小さすぎると作業時に膨張黒鉛の粉が舞いやすく、作業しにくくなる傾向がある。また、粒径が大きすぎると難燃性が低くなる場合がある。
3級アミンとして、具体的には、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
リン系化合物として、具体的には、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
ルイス酸として、具体的には、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化錫、三フツ化ホウ素等が使用され、特に好適には3フツ化ホウ素のモノエチルアミンおよびエタノールアミン化合物が挙げられる。
添加する触媒成分の配合量は、アクリル系共重合体の100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量部である。
組成物に触媒を混合する方法としては、アクリル系共重合体に、触媒を予め配合しておいて、その後、架橋剤を混合することが好ましい。
また、混合攪拌された配合物は必要に応じて未分散の結晶水を有する無機化合物等の固まりを除去する目的で濾過してもよい。
さらに、混合攪拌で液中に生じた気泡は減圧下で脱泡してもよい。
成形加工時の加熱温度は特に限定されるものではないが、例えば120℃〜180℃程度に設定される。
攪拌機で攪拌した後、減圧脱泡により攪拌時に混入した気泡分を取り除くと硬化物中に気泡が少なく、良好な熱伝導率を有する熱伝導性シートを得ることができる。
さらに、本願発明の熱伝導性シートを得るためには、剥離処理がなされたフィルム(セパレーターフィルム)や紙(離型紙)の上にこれらベースト状混合物を所定の厚みにコーティングすることにより賦型され、その後オーブン等の加熱装置により加熱硬化させることによりシート状成形体としても良い。
これらシート状成形体は、必要に応じて切断することが可能であり、任意の形状に打ち抜いたり、プレス加工等することにより、熱伝導が必要な部位の形状に合わせることができる。
ゲル分率[%]=(THF浸漬後の不溶解分の重量[g])/(浸漬前の重量[g])×100
この様にして測定される架橋密度が80%を下回る場合、燃焼時にバインダー成分が融解又は分解し、燃焼時に滴下する傾向があり難燃性を悪化させるために好ましいものではない。
UL−94 V−0の規格では、シートを12.7mm(幅)×127mm(長さ)にカットしたものを試料とし、次の5項目をクリアーする事を規定している。
1)10秒間接炎後10秒以内に消炎すること。
2)5試料1組として、10回の接炎で燃焼時間の合計が50秒以上にならないこと。
3)試料をはさんだ先端まで燃え続けないこと。
4)ドリップ(滴下炎)があったとしても、12インチ下に置かれている脱脂綿を燃焼させないこと。
5)2回目の接炎(Second Application)後のGlowing timeが30秒を越えないこと。
表1及び表2に示す配合にて、アクリル系共重合体、膨張黒鉛、結晶水を有する無機化合物、触媒を表2に示す割合で配合し、混合攪拌後充分に脱泡した。さらに表1に示す架橋剤を表2に示す割合で混合攪拌し、再度減圧脱泡した組成物を表面がシリコーン離型処理されているポリエステルフィルム上に、厚みが1mmになるようにナイフコーターによりコーティングした。
コーティング後、140℃のオーブン中で17分間加熱することにより硬化させた。さらに、常温にて24時間放置することにより養生し熱伝導性シートを得た。
なお熱伝導率の測定には、熱伝導率計(京都電子工業製QTM−500)を使用した。
アクリル系共重合体1:メタクリル酸とアクリル酸−n−ブチルの共重合体、商品名CB−3060(綜研化学社製)数平均分子量3000、酸価60、粘度8000cps
アクリル系共重合体2:アクリル酸とアクリル酸−2−エチルヘキシルの共重合体、商品名CB−3098(綜研化学社製)数平均分子量3500、酸価95.8、粘度13000cps
アクリル系共重合体3:アクリル酸とアクリル酸−n−ブチルの共重合体、数平均分子量3500、酸価75、粘度12000cps
架橋剤1:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、商品名SR−TMP(阪本薬品工業社製)
架橋剤2:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルの2量体、商品名SR−MK3(阪本薬品工業社製)
架橋剤3:プロピレングリコールジグリシジルエーテル、商品名SR−4PG(阪本薬品工業社製)
無機化合物1:水酸化アルミニウム水和物、商品名ハイジライトH−32(昭和電工社製)
無機化合物2:水酸化マグネシウム水和物、商品名:キスマ5A(協和化学工業社製)
膨張黒鉛1:膨張開始温度が150℃の膨張黒鉛、商品名SYZR−501(三洋貿易社製)
膨張黒鉛2:膨張開始温度が300℃の膨張黒鉛、商品名SYZR−1003(三洋貿易社製)
触媒1:2−エチル−4−メチルイミダゾール、商品名2E4MZ(四国化成工業社製)
触媒2:2−メチルイミダゾール、商品名2M−G(四国化成工業社製)
また、実施例2と比較例3を比較してみると、架橋剤の配合が変わるだけでゲル分率が変わってくる、これは、架橋剤の反応性が異なるためである。
このように、アクリル系共重合体の種類や酸価、分子量等、さらに架橋剤の種類や反応性等によりゲル分率は変化する。従って、どのような範囲の配合量であればTHFゲル分率が80%以上となるかは特定できないが、THFゲル分率が80%以上となることが難燃性に大きく寄与していることは間違いないと考えられる。
また、膨張黒鉛と共に、結晶水を有する無機化合物を添加することにより、難燃性と熱伝導性の両方が向上することが分かった。
Claims (7)
- 1013hPa、25℃で流動性を示す官能基含有アクリル系共重合体を架橋剤にて硬化してなるシートにおいて、その架橋密度がTHF抽出のゲル分率において80%以上であり、且つ充填剤として膨張黒鉛を含有する難燃性熱伝導シート。
- 充填材として、膨張黒鉛と結晶水を有する無機化合物とを含有する請求項1記載の難燃性熱伝導シート。
- アクリル系共重合体100重量部に対して、結晶水を有する無機化合物を100〜500重量部、膨張黒鉛を20〜200重量部配合してなる請求項2記載の難燃性熱伝導シート。
- 官能基が水酸基、カルボキシル基、グリシジル基から選ばれる1種以上であるアクリル系共重合体と、1分子中に少なくとも2個の官能基を有している架橋剤とを反応させて得られる請求項1〜3いずれか1項記載の難燃性熱伝導シート。
- アクリル系共重合体の官能基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃性熱伝導シート。
- 架橋剤が1013hPa、25℃で流動性を示すグリシジル基含有化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性熱伝導シート。
- 膨張黒鉛が、200℃以上で膨張する膨張黒鉛であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の難燃性熱伝導シート。
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