JP2006001966A - 難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1013hPaおよび25℃において90000mPa・s以下の粘度を示す官能性アクリル系共重合体を、硬化剤により架橋してなるシート状物であって、架橋密度がTHF抽出のゲル分率において90%以上であること、および前記官能性アクリル系共重合体100重量部に基づいて250〜500重量部の金属水酸化物と、前記官能性アクリル系共重合体100重量部に対して15〜40重量部のポリリン酸アンモニウムを含有することを特徴とする、難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物。該シート状物は、UL−94V−0規格を満足できる程に高度に難燃化でき、内部に気泡を有さないため熱伝導率も高く、さらに耐熱性も良好で、十分な可饒性を兼備し、熱伝導性シート状物として好ましく使用できる。
【選択図】無し
Description
しかしながら、シリコーン系グリスは高粘度液状物のため取り扱いが困難であり、発熱体に塗布する際の塗布量の制御が難しい上、高温になるにつれてグリスの流動性が高まり流出(ポンプアウト)を起こす等の問題もある。また密着性が十分良好でないので、大きな凹凸面への使用は実質的に困難である。さらに、シリコーン系材料であるため、シロキサンガスの発生が僅かながら存在し、該ガスが電極接点等に付着すると二酸化ケイ素が生成して接点不良を発生させる惧れもある。
他方、熱伝導率を高めたシリコーンゴムシートや、より低硬度のシリコーンゲルシートは、原料となるシリコーン樹脂自体が高価であり、また加硫工程を必要とするため容易に製造することはできない。さらに前記シリコーン系グリスと同様に、シロキサンガスの発生に伴う問題もある。
例えば、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系樹脂に熱伝導性充填材を混合して得られるゴム系熱伝導材の場合、加硫工程が必要となり製造工程数が増加する、熱伝導性充填材を高比率で混合することが困難である、難燃性が低い等の問題点を有する。また加硫工程を必要としない熱可塑性エラストマーを用いた場合でも、やはり熱伝導性充填材を高比率で混合することは困難であり、さらに得られる熱伝導材の耐熱性は低い。
また、ウレタン系樹脂に熱伝導性充填材を混合した熱伝導材の場合、既重合のウレタンエラストマーを使用したものでは耐熱性に問題があり、また金属水酸化物充填材を混入した単分子ポリオールとイソシアネートとを反応させて得たものも、耐候性、耐熱性の面で長期使用には適さないものであった。
さらに、アクリル系樹脂に金属水酸化物充填材を混合した熱伝導材の場合、従来技術では既重合のアクリルゴムを樹脂マトリクスとして使用していたため、混練により、固形のアクリルゴムに金属水酸化物を添加しなくてはならず、流動性物質に添加する場合に比べて、金属水酸化物を高比率で混合することが困難であり、得られる熱伝導材の耐熱性も劣るものであった。
1013hPaおよび25℃において90000mPa・s以下の粘度を示す官能性アクリル系共重合体を、硬化剤により架橋してなるシート状物であって、
架橋密度がTHF抽出のゲル分率において80%以上であること、および
前記官能性アクリル系共重合体100重量部に基づいて250〜500重量部の金属水酸化物と、前記官能性アクリル系共重合体100重量部に対して15〜40重量部のポリリン酸アンモニウムを含有すること
を特徴とする、難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物
に関する。
熱伝導率が1W/mK以上であることを特徴とする、前記難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物、
厚さが500ないし3000μmであることを特徴とする、前記難燃性アクリル樹脂熱伝
導性シート状物、
前記金属水酸化物は水酸化アルミニウムであることを特徴とする、前記難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物、
前記官能性アクリル系共重合体が有する官能基はカルボキシル基であることを特徴とする、前記難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物、および
前記硬化剤は、1013hPaおよび25℃において90000mPa・s以下の粘度を示すグリシジル化合物であることを特徴とする、前記難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物
である。
上述の重合法のうち、溶液重合法(乳化重合法、懸濁重合法等)によって製造される共重合体は、反応溶媒や分散媒等の液体中で重合させるため、重合条件の制御が容易であり、目的とする重合体を均質かつ高効率で比較的容易に製造できる。しかしながら、液体中での重合方法は、生成する重合体が固化するならば比較的容易に分離を行えるが、液状の重合体が生成する場合には分離が難しく、分留、濾過、洗浄等の複雑な操作が必要となり、また重合体以外の液分を完全に除去することは容易でない。
系共重合体とのブレンド、またはアクリル系共重合体同士のブレンドをも含み得る。ここで、該アクリル系共重合体は、共重合体を構成する成分のうち、少なくとも主成分のポリマーのガラス転移温度(Tg)がDSC法により測定される値で−60〜−20℃であることが好ましく、全てのポリマーのガラス転移温度が該温度範囲内であってもよい。主成分のポリマーのガラス転移温度が高すぎると、得られる熱伝導性シート状物が硬度が高くなり好ましくない。熱伝導性シート状物の硬度としては、ASKER−Cで50以下、好ましくは40以下である。
ート(メタクリル酸プロピル)、iso−プロピルメタクリレート(メタクリル酸−iso−プロピル)、n−ブチルメタクリレート(メタクリル酸−n−ブチル)、iso−ブチルメタクリレート(メタクリル酸−iso−ブチル)、tert−ブチルメタクリレート(メタクリル酸−tert−ブチル)、2−エチルヘキシルメタクリレート(メタクリル酸−2−エチルヘキシル)、オクチルメタクリレート(メタクリル酸オクチル)、iso−オクチルメタクリレート(メタクリル酸−iso−オクチル)、デシルメタクリレート(メタクリル酸デシル)、イソデシルメタクリレート(メタクリル酸イソデシル)、イソノニルメタクリレート(メタクリル酸イソノニル)、ネオペンチルメタクリレート(メタクリル酸ネオペンチル)、トリデシルメタクリレート(メタクリル酸トリデシル)、ラウリルメタクリレート(メタクリル酸ラウリル)等のメタクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロデシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等の脂環式アルキルメタクリレート等が挙げられる。
また、硬化剤は1013hPa、25℃において液状であり、かつ1013hPa下で、150℃で10分間加熱した後の重量滅少値が、加熱前の重量に対して3%以下である実質的に溶媒を含まないものが望ましい。重量減少値が3%より大きいと、硬化剤との反応による鎖延長の障害となる上、得られるシート状物の内部に気泡を発生させる原因とな
る惧れがある。なお、本明細書で使用する加熱重量減少値は、メトラー・トレド株式会社製HG53型ハロゲン水分計を用い、常圧(1013hPa)下で、試料5gを150℃、10分間加熱したときの重量変化を測定し、加熱前後の重量比較により減少率を算出したものである。
なお、本明細書における分解温度の測定は、金属水酸化物のみを熱重量計(TGA:Thermo Gravimetric Analyzer)により、大気雰囲気下、窒温から600℃まで昇温速度10℃/分で昇温しする際、重量減少を生じる温度を測定して分解温度とするものである。
また、同じ種類で粒径の異なる金属水酸化物を組み含わせて使用することも可能である。金属水酸化物の添加量を増加させる必要がある等の場合には、特に粒径の異なるものを数種類組み合わせて使用することにより、アクリル系共重合体の粘度を低いまま維持することができるので好ましい。
より多い場合、金属水酸化物を添加した架橋前のアクリル系共重合体の粘度が高くなり過ぎ、加工性が劣る上、高硬度となり発熱体との密着性が悪化する。
ポリリン酸アンモニウムの添加量としては、アクリル系共重合体100重量部に対して20重量部以上、好ましくは25重量部以上である。また、ポリリン酸アンモニウムを40重量部以上添加しても難燃性の向上は見られない。
前記3級アミン塩としては、具体的には、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
前記イミダゾール化合物としては、具体的には、1,2−ジメチルイミダゾール(1,2DMZ)、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(1B2MZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ−CN)等が挙げられる。
前記DBUまたはその塩としては、具体的には、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)およびそのアルキル酸塩等が挙げられる。
前記リン系化合物として、具体的には、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
前記ルイス酸としては、具体的には、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化錫、三フッ化ホウ素等が挙げられ、特に好ましくは三フッ化ホウ素のモノエチルアミンおよびエタノールアミン化合物が挙げられる。
化剤が有する官能基がグリシジル基である場合、イミダゾール化合物は双方の官能基間の反応触媒として作用すると共に、余剰のグリシジル基と連鎖的に反応できるため、未反応の硬化剤による物性の低下を防止できるものと考えらえる。
反応性触媒の添加量は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量部である。
反応性触媒を添加する方法としては、アクリル系共重合体に、反応性触媒を予め添加しておき、その後、硬化剤を混合することが好ましい。
また、混合攪拌後、未分散の金属水酸化物等を除去する目的で、必要により濾過してもよい。さらに、混合攪拌中に生じた気泡を滅圧下で脱泡してもよい。
本発明の熱伝導性シート状物の厚さは、0.5〜3.0mm、さらに好ましくは1.0〜2.0mmとすることが好ましい。0.5mmより薄いと十分な難燃性を得ることはできない。熱伝導性シート状物は所要により切断でき、任意の形状に成形して熱伝導が必要な部位に容易に貼着させることが可能である。
架橋密度=(THF浸積12時間後の不溶解分の重量g)/(浸積前の重量g)
UL−94V−0の規格では、シートを127mm×127mmに切断したものを試料とし、以下の5項目を満足することを規定している:
1)10秒間接炎後10秒以内に消炎すること、
2)5試料1組として10回の接炎で燃焼時間の合計が50秒以下であること、
3)試料を挟んだ先端まで燃え続けないこと、
4)ドリップ(滴下炎)があっても12インチ下に置かれた脱脂綿を燃焼させないこと、5)2回目の接炎後のGlowing timeが30秒を越えないこと。
尚、表中において、「不合格」とは、UL−94 V−2に合格しないことを意味する。
実施例1〜13および比較例1〜7
以下の表に示す成分のうち硬化剤以外の成分を混合攪拌して十分に脱泡した後、硬化剤を添加し、再度減圧脱泡したペースト状混合物を表面がシリコン離型処理されているポリエステルフィルム上にコーティングした。コーティング後、170℃のオーブン中で7分間加熱することにより混合物を架橋させ、さらに常温にて24時間放置することにより養生して熱伝導性シート状物を得た。
各成分を混合したペースト状混合物について、粘度および脱泡性を、また得られた熱伝導性シート状物について、架橋性、気泡の発生、硬度、高温圧縮による変形、ブリードアウト、耐熱性および難燃性について評価した。
各実施例および各比較例の熱伝導性シート状物の組成および評価結果を以下の表に示す。なお、表中での各成分の量は重量部で表す。
*2:アクトフローCB−3098、綜研化学株式会社製、官能基:−COOH、粘度:45000mPa・s
*3:アクトフローUT−3001、綜研化学株式会社製、官能基:−OH、粘度:18000mPa・s
*4:グリシジル硬化剤、SR−MK3、阪本薬品工業株式会社製、粘度:1250mPa・s
*5:グリシジル硬化剤、SR−TMP、阪本薬品工業株式会社製、粘度:125mPa・s
*6:イソシアネート硬化剤、コロネート−1040、日本ポリウレタン工業株式会社製*7:テラージュC−60、チッソ株式会社製、平均粒径=7.5μm
*8:2−エチル−4−メチルイミダゾール、キュアゾール2E4MEZ、四国化成工業株式会社製
*9:錫メルカプタイド、U−340、日東化成株式会社製
それに対し、比較例1は、実施例と同様のアクリル系共重合体を使用しているが、その配合割合やアクリル系共重合体の種類、硬化剤の種類、アクリル系共重合体と硬化剤の組み合わせにより、THFゲル分率が変化し、金属水酸化物とポリリン酸アンモニウムが好ましい添加量であるにも関わらず、THFゲル分率が低下することに起因して難燃性が悪化した。
また、比較例2は、THFゲル分率が80%以上であり、金属水酸化物の添加量が好ましい範囲であるにも関わらず、ポリリン酸アンモニウムの添加量が少ないことに起因して難燃性が悪化した。
比較例3は、THFゲル分率が80%以上であり、ポリリン酸アンモニウムの添加量が好ましい範囲であるにも関わらず、金属水酸化物の添加量が少ないことに起因して熱伝導率が低くなると共に難燃性が悪化した。
以上のことから、本発明の熱伝導性シート状物は、金属水酸化物の添加量、ポリリン酸アンモニウムの添加量、THFゲル分率の全てが条件を満たすことにより、これらの相乗効果として、熱伝導性と難燃性の両方に優れた熱伝導性シート状物を得ることができることが解る。
Claims (6)
- 1013hPaおよび25℃において90000mPa・s以下の粘度を示す官能性アクリル系共重合体を、硬化剤により架橋してなるシート状物であって、
架橋密度がTHF抽出のゲル分率において80%以上であること、および
前記官能性アクリル系共重合体100重量部に基づいて250〜500重量部の金属水酸化物と、前記官能性アクリル系共重合体100重量部に対して15〜40重量部のポリリン酸アンモニウムを含有すること
を特徴とする、難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物。 - 熱伝導率が1W/mK以上であることを特徴とする、請求項1記載の難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物。
- 厚さが500ないし3000μmであることを特徴とする、請求項1記載の難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物。
- 前記金属水酸化物は水酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1記載の難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物。
- 前記官能性アクリル系共重合体が有する官能基はカルボキシル基であることを特徴とする、請求項1記載の難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物。
- 前記硬化剤は、1013hPaおよび25℃において90000mPa・s以下の粘度を示すグリシジル化合物であることを特徴とする、請求項1記載の難燃性アクリル樹脂熱伝導性シート状物。
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