JP2005298564A - 固体高分子電解質複合膜 - Google Patents

固体高分子電解質複合膜 Download PDF

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石川  淳一
Takehiko Onomi
毅彦 尾身
Masahiro Toriida
昌弘 鳥井田
Satoko Fujiyama
聡子 藤山
Kuniyuki Takamatsu
邦幸 高松
Masaji Tamai
正司 玉井
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Abstract

【課題】芳香族炭化水素系高分子化合物からなる固体高分子電解質膜と触媒電極表面との密着性を高め、電池特性の向上および電池の信頼性の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、芳香族炭化水素系高分子化合物からなる固体高分子電解質膜の表面に、塩基性官能基を有する化合物層を形成してなる固体高分子電解質複合膜であり、塩基性基とプロトン酸基との間でイオン結合を形成させることにより、もとの物性を損ねることなく簡便に固体高分子電解質膜と触媒層との接着性が向上することができる。

Description

本発明は水素、メタノールなどを燃料に用いる燃料電池などに適用できる、プロトン伝導性、耐水性、接着性に優れた固体高分子電解質複合膜に関する。
近年、環境問題の点から新エネルギー蓄電あるいは発電素子が社会で強く求められてきている。燃料電池もその1つとして注目されており、低公害、高効率という特徴から最も期待される発電素子である。特に、電解質として高分子膜を使用する固体高分子型燃料電池は、他の型の燃料電池に比べ動作温度が低温、小型化が容易、高出力などの利点から研究開発が盛んに行われている。
直接メタノール型燃料電池(以下、これを「DMFC」という。)は、メタノール水又はメタノール蒸気を燃料極に供給し、供給されたメタノールを燃料極の触媒層上で直接、反応させて発電を行うタイプの燃料電池である。DMFCは、純水素又は水素を含む改質ガスを燃料極に供給するタイプの燃料電池に比して、反応速度や出力密度は劣っているが、燃料の貯蔵が容易であり、改質器も不要であるという利点がある。そのため、DMFCは、システム全体の簡素化、負荷応答性の向上、低コスト化等の可能性を有しており、可搬型の小型発電器等への応用が期待されているものである。
DMFCは、中央に固体高分子電解質からなる薄い膜があり、その両側にバインダー樹脂を介して電極が接合された膜電極接合体となり、さらにその両側をセパレータで挟んだ構造をとる。これらが1つの燃料電池を形成し、これを多数重ね合わせたものが燃料電池スタックとなる。また、電極は、電極反応の反応場となる触媒層と、触媒層への反応物質の供給、電子の授受等を行うための拡散層の二層構造になっている。触媒層としては通常、白金等の触媒が担持された炭素微粒子をバインダー樹脂に分散させたものが使用される。燃料電池の特性を向上させるためには、電極と固体高分子電解質膜との界面の密着性が良好であることが重要となる。
DMFCは、燃料としてメタノールを用いるために、水素供給型の燃料電池にはない固有の問題がある。1つは、燃料として液体燃料であるメタノール水を使用する場合、燃料極におけるメタノールの拡散速度が遅いために、触媒層へのメタノールの拡散速度が電極反応を律速することである。もう1つは、固体高分子電解質とメタノールとの親和性が高いために、燃料極に供給されたメタノールがそのまま固体高分子電解質膜を透過して空気極側に達する、いわゆる「クロスオーバー」が発生し、燃料ロス及び出力低下を招くことである。
電極表面の触媒層については、電極層から燃料となるメタノールを効率良く移動させ、多くの水素イオンを固体高分子電解質膜に供給することが重要である。そのために、触媒層のバインダー樹脂としてはメタノールの透過性およびプロトンの伝導性が良いものが考えられ、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸が知られている。
他方、固体高分子電解質膜にはプロトンの伝導性とクロスオーバーを防ぐためのメタノールの遮断性が要求されるが、パーフルオロカーボンスルホン酸は好ましくない。このため、パーフルオロカーボンスルホン酸に代って、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアゾールなどの芳香族ポリマーをスルホン化した芳香族炭化水素系化合物、またはこれらの架橋体を用いた固体高分子電解質が研究されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、これらの芳香族炭化水素系高分子化合物は、一般にパーフルオロカーボンスルホン酸に比べTgが大幅に高いため、膜電極接合体を作製する際に膜と電極との融着が起こりにくく、電解質膜とバインダーに同じ樹脂を用いた場合でも、膜と触媒層の密着性が低い虞がある。さらに、バインダー樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸を用いると、接着性がさらに低下し、特に燃料極側と膜と触媒層の剥離が生じやすい虞がある。
一方、触媒粒子と電解質の混合体である触媒層において、触媒粒子と電解質の接触性を高めるために、触媒粒子の担体表面に塩基性官能基持つ有機化合物を修飾した層を形成することが知られているが、(例えば、特許文献2参照)、触媒層と電解質膜の接着性については何も触れられていない。
国際公開第03/33566号明細書 特開2000−228204号明細書
本発明は、芳香族炭化水素系高分子化合物からなる固体高分子電解質膜と触媒電極表面との密着性を高め、電池特性の向上および電池の信頼性の向上を図ることを目的とする。
本発明者らは、芳香族炭化水素系高分子化合物からなる固体高分子電解質膜表面に塩基性官能基を有する化合物層を形成し、塩基性官能基と触媒電極表面のプロトン酸基との間でイオン結合を形成させることにより、もとの物性を損ねることなく簡便に固体高分子電解質膜と触媒層との接着性が向上することを見い出し本発明に至った。
本発明は、以下の[1]〜[5]に記載した事項により特定される。
[1]プロトン酸基を有する芳香族炭化水素系高分子化合物からなる固体高分子電解質膜の表面に塩基性官能基を有する化合物層を形成してなる固体高分子電解質複合膜。
[2]芳香族炭化水素系高分子化合物が、カルボニル基及び芳香環に直接結合したアルキル基を有することを特徴とする[1]記載の固体高分子電解質複合膜。
[3]芳香族炭化水素系高分子化合物が全繰り返し構造単位に対し、下記式(1)で表される繰り返し構造単位10〜100モル%、および下記式(2)で表される繰り返し構造単位90〜0モル%を含み、R〜R10の少なくとも1つが−C2m+1(mは1〜10の整数)であり、かつX〜X10の少なくとも1つがプロトン酸基である芳香族ポリエーテルであることを特徴とする[2]記載の固体高分子電解質複合膜。

Figure 2005298564

Figure 2005298564

[式(1)および(2)中、R〜R10はそれぞれ独立して、Hまたは−C2m+1(mは1〜10の整数)、X〜X10は、それぞれ独立して、Hまたはプロトン酸基、A〜Aは、それぞれ独立して、直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−SO−または−CO−であり、i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示し、式(1)および(2)の芳香環の水素原子は、−C2m+1(mは1〜10の整数)、プロトン酸基、Cl、FまたはCFに置換されていても良い。]
[4]芳香族炭化水素系高分子化合物が架橋していることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜
[5]塩基性官能基を有する化合物が多価塩基性化合物であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜。
[6]塩基性官能基を有する化合物が、カルボニル基または芳香環に直結した炭素数1〜10のアルキル基或いはアルキレン基を有する反応基を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜
本発明の固体高分子電解質複合膜は、触媒電極との接着性がよいので剥離が生じ難くく、且つ、メタノールの透過性及びプロトンの伝導性が良い。このため、本発明の固体高分子電解質複合膜を用いた燃料電池は、電池の信頼性が向上し、触媒電極と固体高分子電解質膜との界面での接触抵抗が小さいので出力が高くなるなどの電池特性の向上が期待できる。本発明の固体高分子電解質複合膜は、DMFC用高分子電解質膜として好適である。
以下、本発明に係わる固体高分子電解質複合膜について具体的に説明する。本発明の固体高分子電解質複合膜は、プロトン酸基を有する芳香族炭化水素系高分子化合物からなる固体高分子電解質膜の表面に塩基性官能基を有する化合物層を形成することにより得られる。
[芳香族炭化水素系高分子化合物]
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物は、主鎖が脂肪族鎖を有さず、芳香環およびその連結基で構成される直鎖状芳香族樹脂であって、その構成単位の一部あるいは全部がプロトン酸基を有する化合物である。
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物は、1つ以上の芳香環を含む構造を有し、芳香環は1つ以上の芳香環又は複合環と縮合していても良い。また芳香環の炭素原子は一部が他の原子に置換されていても良い。置換する原子としては、窒素原子が好ましい。芳香環としては種々のものがあるが、具体的には、下記で示される構造が挙げられる。
Figure 2005298564
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物は、前記芳香環同士を直接結合又は連結基により連結してなる繰り返し構造単位からなる。連結基としては、具体的には、−CO−、−SO−、−S−、−CH−、−CF−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−NH−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、9,9−フルオレン基を挙げることができる。
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物を構成する繰り返し単位は、具体的には、芳香族ポリエーテル、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリアゾール、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。好ましいものとして、芳香族ポリエーテル、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド又は芳香族ポリアゾールを挙げることができる。芳香族ポリエーテルとしては、たとえば、ポリフェニレンオキシドなど芳香環の連結基がエーテル基のみからなる芳香族ポリエーテル、連結基がエーテル基とカルボニル基からなるポリエーテルケトン、連結基がエーテル基とスルホン基からなるポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルニトリル又はポリエーテルピリジンが挙げられる。本発明の芳香族炭化水素系高分子化合物は、上記の繰り返し単位を1つまたは2つ以上含み、繰り返し構造単位は同じ種類のみでも異なる種類のものを含んでいても良い。
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物は、芳香環に結合するプロトン酸基を少なくとも1つ以上有し、プロトン酸基としては、具体的には、下記式(a)〜(c)で示されるスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基などが挙げられる。中でも下記式(a)で示されるスルホン酸基が好ましく、下記式(a)においてn=0で示されるスルホン酸基が特に好ましい。
(a)−C2n−SOY(nは0〜10の整数、YはH,NaまたはK)
(b)−C2n−COOY(nは0〜10の整数、YはH,NaまたはK)
(c)−C2n−PO(nは0〜10の整数、YはH,NaまたはK)
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物中のプロトン酸基含有量に特に制限はないが、好ましくは、イオン交換基当量にして200〜5000g/mol、より好ましくは200〜1000g/molである。ここで、イオン交換基当量とは、プロトン酸基1モル当たりの高分子化合物重量で定義され、高分子化合物単位重量当たりのプロトン酸基のモル数の逆数を意味する。すなわち、イオン交換基当量が小さいほど、高分子化合物単位重量当たりのプロトン酸基量が多いことを示す。
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物の分子量は、特に制限はないが、還元粘度(ηinh)では、0.1〜5.0dl/g、好ましくは0.2〜3.0dl/g、さらに好ましくは0.3〜1.8dl/g(溶媒中、ポリマーまたは前駆体濃度0.5g/dl、35℃で測定した場合)であることが好ましい。分子量が低すぎると固体高分子電解質膜を製造する際の機械特性が低下し、製膜時や取り扱い時に割れなどが発生し、良好な高分子固体電解質膜が得られない虞がある。
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物は、カルボニル基および芳香環に直接結合したアルキル基を有することが好ましく、かかるアルキル基が炭素原子数1〜10であることが更に好ましい。カルボニル基と芳香環に直接結合したアルキル基とは、架橋することで結合でき、芳香族炭化水素系高分子化合物同士を架橋反応させることができる。また本発明にかかる塩基性官能基を有する化合物が、芳香族炭化水素系高分子化合物中のアルキル基又は芳香環に直接結合したカルボニル基と架橋反応できる反応基を有する場合には、芳香族炭化水素系高分子化合物と塩基性官能基を有する化合物との間で、架橋反応が行われて、固体高分子電解質膜と塩基性官能基を有する化合物とを強固に結合させることができる。
架橋反応は、塩基性官能基を有する化合物層を固体高分子電解質膜の表面に形成する前或いは後に行うことができる。
[芳香族ポリエーテル]
本発明の芳香族炭化水素系高分子化合物は、R〜R10の少なくとも1つが−C2m+1(mは1〜10の整数)であり、かつX〜X10の少なくとも1つがプロトン酸基である、下記一般式(1)および(2)の繰り返し構造単位を有する芳香族ポリエーテルがあげられる。かかる一般式(1)及び(2)からなる芳香族ポリエーテルは、溶剤溶解性に優れ、架橋、製膜などの加工が容易であり、かつ熱水、酸、アルカリ水、アルコール類などによる加水分解を受けないため特に好ましいことが国際公開第03/33566号明細書に記載されている。
Figure 2005298564

一般式(1)および(2)中、R〜R10はそれぞれ独立して、Hまたは−C2m+1(mは1〜10の整数)、X〜X10は、それぞれ独立して、Hまたはプロトン酸基、A〜Aは、それぞれ独立して、直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−SO−または−CO−であり、i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示し、式(1)および(2)の芳香環の水素原子は、−C2m+1(mは1〜10の整数)、プロトン酸基、Cl、FまたはCFに置換されていても良い。
本発明にかかる芳香族ポリエーテルは、アルキル基およびプロトン酸基の両方の基が一般式(1)及び(2)の双方に含まれていても一方の式にのみ含まれていても良く、アルキル基又はプロトン酸基のいずれか一方の基が、一般式(1)及び(2)の双方の式に含まれていても一方の式にのみ含まれていても良い。また、一般式(1)および(2)がランダム共重合あるいはブロック共重合したものでもよい。
本発明にかかる芳香族ポリエーテルは、一般式(1)で表される繰り返し構造単位10〜100モル%および一般式(2)で表される繰り返し構造単位90〜0モル%を含んでいれば、一般式(1)および(2)と異なる構造単位を含んでいてもよい。
本発明にかかる芳香族ポリエーテルは、種々の方法で製造することができるが、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族ジハライド化合物とを縮合重合させる方法又は、芳香族ポリエーテルケトンもしくはポリエーテルエーテルケトンなどの芳香族ポリエーテルケトンに、公知のスルホン化或いはアルキルスルホン化などの方法により所望量のプロトン酸基を導入する方法により製造することができることが、国際公開第03/33566号明細書に記載されている。またその際使用される芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジハライド化合物及び芳香族ポリエーテルケトンについても前記明細書に記載したものを用いることができる。
本発明にかかる芳香族ポリエーテルは、具体的には、一般式(1)及び(2)で表される繰り返し構造単位がR1、R2、R6およびR7がHで、R〜R、R〜R10の少なくとも1つが−C2m+1(mは1〜10の整数)、X、X、XおよびXの少なくとも1つがプロトン酸基であり、かつ、Aが−SO−または−CO−であることが好ましい。かかる芳香族ポリエーテルは、プロトン酸基が電子吸引基である−SO−または−CO−が直接結合した芳香環に結合していることから、他の芳香環に結合したプロトン酸基よりも結合力が強く、分解や解離を受けにくい。なお、既存の芳香族ポリエーテルケトンを発煙硫酸などでスルホン化した場合には、電子吸引基である−SO−または−CO−に直接結合していない芳香環にスルホン酸基が導入されることが国際公開第03/33566号明細書により知られている。従って、プロトン酸基量を減少(イオン交換基当量を増大)させることなく、架橋密度を制御することができる点で、プロトン酸基から誘導されず、かつ脱離成分の生成なしに架橋し得る基を有する芳香族ポリエーテルであることが好ましい。
[固体高分子電解質膜]
本発明にかかる固体高分子電解質膜は、前記芳香族炭化水素系高分子化合物からなる。その膜厚に特に制限はないが、通常、10〜300μm、特には30〜150μmが好ましい。この範囲内であれば、十分な膜強度が得られ、かつ膜抵抗が実用上十分に低くなる。すなわち、燃料電池の正極と負極の燃料を遮断し、かつ、十分なイオン伝導性を有することで、燃料電池として優れた発電性能を得ることができる。膜の厚みが薄すぎる場合には、燃料のクロスオーバーを十分に抑制しきれない虞があり、厚すぎる場合には、膜抵抗が高く、発電性能に影響を与える虞がある。膜厚は、製膜時の条件、例えばプレス成形時の温度や圧力、キャスト時のワニス濃度や塗布厚などにより制御することができる。
本発明にかかる固体高分子電解質膜は、電池の物性に悪影響を及ぼさないの範囲でパーフルオロカーボンスルホン酸、PEEKやPESなどのプロトン酸基を有しない一般の芳香族樹脂、PTFEなどのフッ素化樹脂、その他の樹脂又は、リン酸或いは硫酸などの無機酸を含んでいてもよい。
[固体高分子電解質膜の製造方法]
本発明にかかる固体高分子電解質膜は、前記芳香族炭化水素系高分子化合物を種々公知の方法を適用して製造することができるが、芳香族炭化水素系高分子化合物またはその前駆体が溶解または懸濁したワニスを作成し、次いでワニスを支持体上に塗布等によりキャストし、溶媒を除去することにより得ることができる。
ワニスの溶媒としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モノグライム或いはジグライムなどのエーテル系溶媒、メトキシエタノール、エトキシエタノール、シクロヘキサノール或いはベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、シクロペンタノン或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、アニリン、ピリジン或いはピペリジンなどの塩基性溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド或いはN−メチル−2−ピロリドンなど非プロトン極性溶媒、または水を用いることができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で2種以上を混合して使用してもよい。また、溶解性を向上させる手段として、臭化リチウム、塩化リチウム或いは塩化アルミニウムなどのルイス酸を有機溶媒に添加したものを溶媒としてもよい。
ワニス中の芳香族炭化水素系高分子化合物の濃度は0.1〜40重量%の範囲であることが好ましい。濃度が低すぎると成型性が悪化する虞があり、濃度が高すぎると加工性が悪化する虞がある。好ましくは5〜30重量%である。
前記ワニスをキャストする支持体には、ガラス板、金属板、PETフィルム、ポリイミドフィルム又はテフロン(登録商標)板などキャスト膜用支持体として公知のものを用いることができる。ワニスの粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると混合分散液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。
キャストする際のワニスの厚みは特に制限されないが、20〜2000μmであることが好ましい。薄すぎると膜としての形態を保てなくなる虞があり、厚すぎると不均一な膜となる虞がある。より好ましくは100〜1000μmである。ワニスのキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にしてワニスの量や濃度で厚みを制御することができる。
本発明にかかる固体高分子電解質膜は、ワニスをキャスト時に使用した溶媒などが残存している場合には、イオン伝導性が低下する場合があるため、乾燥や、水、硫酸水、塩酸水などで溶媒を洗浄することが好ましい。乾燥する場合の乾燥雰囲気としては、空気、窒素或いはアルゴン等不活性ガスのいずれを用いても良く、気圧は常圧、加圧或いは減圧のいずれでも良い。また溶媒が有機溶媒の場合は、加熱又は減圧乾燥溶媒を留去させることが好ましく、溶媒が強酸の場合には、水、メタノール、アセトンなどに浸漬することが好ましい。
本発明にかかる固体高分子電解質膜は、前記溶媒の除去速度を調整することでより均一にすることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどしてポリマーの凝固速度を調整することができる。
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物のスルホン酸基は、H型の場合は熱により脱離し易いため、スルホン酸基がNaまたはKの塩の状態で製膜乾燥、架橋したのちに硫酸水溶液などによりプロトン交換を行いH型に戻す方法が特に好ましい。プロトン交換は、硫酸水溶液などにより酸処理し、蒸留水で洗浄し、乾燥することにより行うことができる。
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物のカルボニル基及び芳香環に直接結合したアルキル基は、芳香族炭化水素系高分子化合物同士間で架橋させるか、或いは、塩基性官能基を有する高分子化合物の反応基と架橋させることができる。架橋処理は、塩基性官能基を有する化合物層を固体高分子電解質膜表面に形成する前でも後でもいずれでも構わない。その架橋方法に特に制限はなく、光、熱、電子線などで行うことができる。
架橋方法は種々公知の方法で行うことができる。光により架橋する場合は、用いる光源としては、特に限定されないが、通常、紫外線光或いは可視光の波長範囲の光が照射可能な光源を用いる。具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ或いはメタルハライド灯などが挙げられる。また照射する線量は、光の波長、プロトン酸基を有する芳香族炭化水素系高分子化合物の種類および含有比率、膜厚等により異なるが、通常、500〜100000mJ/cm、好ましくは1000〜30000mJ/cmである。
熱により架橋する場合は、熱供給方法は特に限定されず、例えばオーブンなどによる加熱で行うことができる。加熱時の温度及び時間は、架橋する化合物の種類、含有比率又は膜厚等により異なるが、通常、120〜300℃、好ましくは150〜250℃で、0.1〜180分間、好ましくは1〜60分間である。
[塩基性官能基を有する化合物]
本発明にかかる塩基性官能基を有する化合物は、アミノ基などの塩基性を分子内に有するものであって、分子量は特に制限がなく、低分子化合物であっても高分子化合物であっても良い。本発明にかかる塩基性官能基を有する化合物は、分子内に塩基性官能基を1個或いは2個以上有すればよいが、分子内に塩基性官能基を2個以上有する多価塩基性化合物を有することが好ましい。
本発明にかかる塩基性官能基としては、アミノ基、アミド基、イミノ基、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、イソインドール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、フタラジノン環、キノキサリン環、キナゾリン環、カルバゾール環又はピロリジン環等が挙げられる。これらの塩基性官能基はそのままの塩基性官能基の状態でも、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸、安息香酸或いはフェノール等の無機酸または有機酸との塩を形成した状態でも構わない。
本発明の塩基性官能基を有する化合物は、種々のものがあり、具体的には以下の多価塩基性の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
低分子化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル―1,6―ヘキサンジアミン、ドデカンジアミン、ウンデカンジアミン、ビス(ジメチルアミノ)ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン化合物、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン或いは2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジアミン化合物、N,N−ジメチルジプロピレントリアミン、トリス(4−アミノフェニル)メタン、トリス(3−アミノフェニル)メタン、トリス(4−アミノフェニル)メチルアルコール、トリス(4−アミノフェニル))アミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−アミノフェニルベンジジン)、N,N,N’,N’−テトラキス(3−アミノフェニルベンジジン)、1,3,5−トリス(4’−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’−アミノベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4’−アミノベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4’−アミノベンゾイル)ベンゼン或いは1,3,5−トリス(1−(4’−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン等のトリアミン化合物、ピロメリティックジイミド又は2,4,6―トリ(2―ピリジル)トリアジン等が挙げられる。
高分子化合物としては、塩基性官能基が主鎖にあっても側鎖にあっても良い。高分子化合物の主鎖に塩基性官能基を含有するものの具体例としては、ポリエーテルピリジン、ポリフェニルキノキサリン或いはポリ(フタラジノンエーテルケトン)などの塩基性ポリエーテル類、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール或いはポリベンゾチアゾールなどのポリアゾール類、ポリピロール類、ポリアニリンなどのポリフェニレンイミン類、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)、ポリ(キノリン)又はポリ(キノサリン)などが挙げられる。
高分子化合物の側鎖に塩基性官能基を含有するものの具体例としては、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(4−アミノスチレン)、ポリ(ビニルカルバゾール)或いはポリ(ビニルピロリドン)などの塩基性ポリビニル類又は、アミノ基含有ポリエーテル類などが挙げられる。アミノ基含有ポリエーテル類は、ポリエーテルケトン又はポリエーテルスルホンなどの既知の芳香族ポリエーテル類を公知の方法でニトロ化した後、得られたニトロ基含有芳香族ポリエーテル類を水素などで還元することにより得ることができる。これらの高分子化合物は、単一の繰り返し単位のみを有するホモポリマー、複数種の繰り返し単位を有するコポリマーのいずれでも構わない。
本発明の塩基性官能基を有する化合物は、固体高分子電解質膜を構成する芳香族炭化水素系高分子化合物がカルボニル基及び芳香環に直接結合するアルキル基を有する場合には、塩基性官能基を有する化合物が、芳香族炭化水素系高分子化合物中のカルボニル基及び芳香環に直接結合するアルキル基と反応し得る反応基を有することが更に好ましい。この場合には、塩基性官能基を有する化合物の分子中の塩基性官能基の数が1個であっても架橋結合の密度が向上するので、好ましい良い効果が得られる。
かかる反応基としては、カルボニル基や、芳香環に結合したアルキル基またはアルキレン基等が挙げられる。かかるアルキル基またはアルキレン基は、芳香環に直結した炭素に水素が1〜3個結合している、即ち芳香環と結合した1級、2級または3級炭素を有する炭素数1〜10の脂肪族鎖であることが好ましい。
塩基性官能基を有する化合物が、カルボニル基と塩基性基を1個以上有する化合物としては、特にベンゾフェノン骨格を有する化合物が好ましい。具体的には、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン又は4−モルホリノベンゾフェノン等が挙げられる。
塩基性官能基を有する化合物が、芳香環に結合したアルキル基またはアルキレン基と、塩基性基を1個以上有する化合物としては、例えば、4−メチルアニリン、4−エチルアニリン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3―ジフェニルプロピルアミン 4―ベンジルピリジン 4−(3−フェニルプロピル)ピリジン、6―ベンジルアミノプリン、1―ベンジル―3―ピロリジノン又はジフェンヒドラミン等が挙げられる。
本発明にかかる塩基性官能基を有する化合物の塩基性基の含有量に特に制限はないが、好ましくは、イオン交換基当量にして60〜5000g/mol、より好ましくは100〜1000g/molである。本発明で使用できる塩基性樹脂の分子量に特に制限はない。
[固体高分子電解質複合膜]
本発明の固体高分子電解質複合膜は、固体高分子電解質膜の表面に塩基性官能基を有する化合物層を形成してなる。本発明の固体高分子電解質複合膜は、固体高分子電解質膜を形成する芳香族炭化水素系高分子化合物中のプロトン酸基と、塩基性官能基を有する化合物の塩基性基がイオン結合してなる。更には、固体高分子電解質膜を形成する芳香族炭化水素系高分子化合物と塩基性官能基を有する化合物とが、架橋結合してなる。また、電極を構成するプロトン性の高分子化合物と、塩基性官能基を有する化合物の塩基性基とがイオン結合するので、固体高分子電解質膜と電極とが強固に接着し、剥離するのを防止することが出来る。
本発明の固体高分子電解質複合膜の製造方法は、固体高分子電解質膜を、通常の膜の表面処理方法により行うことが使用できる。たとえば、以下のような方法がある。
(A)塩基性官能基を有する化合物を溶解または分散させた溶液に固体高分子電解質膜を含浸する方法。
(B)塩基性官能基を有する化合物を溶解または分散させた溶液を固体高分子電解質膜表面に塗布又は噴霧し、溶媒を揮発させる方法。
本発明にかかる塩基性官能基を有する化合物は、溶媒で希釈し溶液の状態で使用することが好ましいが、塩基性官能基を有する化合物が常温で液体または融点が100℃以下の場合は、加熱等により液状にして溶媒で希釈せずに使用しても構わない。溶液の状態で使用する場合、塩基性官能基を有する化合物の濃度に特に制限はないが、0.1〜40重量%の範囲であることが好ましい。塩基性官能基を有する化合物溶解させる溶媒としては、水、酢酸水溶液或いは塩酸水溶液などの酸性水溶液、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、モノグライム或いはジグライムなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、シクロヘキサノール或いはベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、ブタノン、シクロペンタノン或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒、アニリン、ピリジン或いはピペリジンなどの塩基性溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド或いはN−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン極性溶媒を用いることができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。
本発明の固体高分子電解質複合膜は、上記(A)の製造方法で行う場合、含浸する温度や含浸時間に特に制限はなく、0〜100℃の範囲で1秒〜100時間含浸すれば良い。上記(B)の製造方法で行う場合には、塗布又は噴霧の方法に特に制限はなく、一般的な方法が使用でき、例えば、コーターやアプリケータを用いた塗布、刷毛塗りによる塗布、スプレー等を用いた噴霧による塗布、スクリーン印刷などが挙げられる。
本発明の固体高分子電解質複合膜は、固体高分子電解質膜表面への塩基性官能基を有する化合物層の形成は燃料極側のみの片面に行っても、両面に行っても構わない。本発明の固体高分子電解質複合膜は、塩基性官能基を有する化合物層を形成した後そのまま使用しても構わないが、過剰な塩基性官能基を有する化合物が付着していると、固体高分子電解質複合膜の電池物性が変化する恐れがあるので、最後に固体高分子電解質複合膜を溶媒で洗浄することにより余分な塩基性化合物または塩基性樹脂を除去することが好ましい。
本発明の固体高分子電解質複合膜は、固体高分子電解質膜を形成する芳香族炭化水素系高分子化合物のプロトン酸基が、酸の状態または塩の状態のいずれであっても構わないが、塩基性官能基を有する化合物が反応基を有しない場合には、固体高分子電解質複合膜のプロトン酸基が酸の状態のままで処理することが好ましい。塩基性官能基を有する化合物が反応基を有する場合には、固体高分子電解質複合膜のプロトン酸基が塩で且つ未架橋の状態で処理し、その後、架橋処理およびプロトン交換を行うことが好ましい。架橋方法は、種々の方法で行うことができ、例えば前記の固体高分子電解質膜の架橋方法をとることができる。架橋の手段、使用する光源、照射線量、加熱温度又は過熱時間等の条件は、架橋する化合物の種類、含有比率、膜圧等により、前記の架橋方法同様適宜選択することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
実施例中の各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
(i)還元粘度
芳香族炭化水素系高分子化合物の粉末0.50gをジメチルスルホキシド(DMSO)100mlに溶解させ、35℃において測定した。
(ii)プロトン伝導度
固体高分子電解質膜を幅5mm、長さ40mmに切り出した後、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ホルダー上に設置し、4本の電極を圧接し、4端子法の交流インピーダンス法で求まるCole−Coleプロットの円弧から抵抗率を測定した。電圧端子間は20mmとした。インピーダンスの測定はLCRメーター(日置電機(株)製3532)を使用した。温度変化は電極を接続したサンプルをアルミブロック製の恒温槽内に設置することにより行い、30℃から110℃の範囲の伝導度を測定した。加湿は常圧の恒温槽内への蒸気の導入により行い、水蒸気発生器にて測定温度が100℃未満では恒温槽温+5℃、100℃以上では120℃の一定温度に蒸留水を加熱し、生成する蒸気を使用した。また、イオン伝導度の計算に必要な膜厚は乾燥状態でマイクロメータを用いて測定した。
(iii)メタノール透過性
室温にて蒸留水と、1mol/Lメタノール水溶液を、直径23mmφの膜を介して接し、3時間までの蒸留水側のメタノール濃度変化をガスクロにて測定した。得られたメタノール濃度増加直線の傾きより、膜厚50μmでのメタノール透過性を計算した。
(iv)接着性評価1
5wt%ナフィオン溶液(Aldrich社製)を表面に塗布した電解質膜2枚を温度140℃、圧力10kg/cmでホットプレスして貼り合わせた。得られた接着膜を64wt%メタノール水溶液に浸漬して剥離試験を行った。
(v)接着性評価2
5wt%ナフィオン溶液(Aldrich社製)と炭素微粒子(デンカブラック;電気化学社製)とを重量比で1:2の割合で混ぜ、50℃にて3時間超音波分散器で分散することによりペースト状にした。このペーストをカーボンペーパー上にスクリーン印刷法で塗布した後、100℃で加熱乾燥した。次に、このカーボンペーパーを電解質膜の片面に温度140℃、圧力10kg/cmでホットプレスし接合体を作製した。これらの接合体を10v/v%メタノール水溶液に24時間浸漬後、100℃にて乾燥した。得られたサンプルについてテープによる剥離試験を行った。
[合成例1]
攪拌器、温度計および冷却管を装備した反応フラスコに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(0.525mol)と、50%発煙硫酸210mlを装入した後、100℃で12時間反応した。これを、1000gの氷水に排出した後、NaOH210gで中和した。次に、NaClを210g加え、加熱溶解した後放冷し一夜放置した。析出した結晶を濾過した後、水400ml、エタノール400mlを加えて加熱溶解後放冷し、再結晶を行った。析出した結晶を濾過後、100℃で6時間乾燥して5,5’−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)の白色結晶を得た。収量155.2g(0.386mol、収率70%)。
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた500mlの5つ口反応器に、上記方法で得られた5,5’−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)11.82g(28mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン 11.35g(52mmol)、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン20.51g(80mmol)および炭酸カリウム13.82g(100mmol)を秤取した。これにジメチルスルホキシド(DMSO)200mlとトルエン160mlを加え、窒素雰囲気下で撹拌し、135℃で8時間加熱し、生成する水を系外に除去した後、トルエンを留去した。引き続き、160℃で6時間反応を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。得られた溶液にDMSO80mlを加えて希釈した後セライト濾過した。このポリマー溶液をアセトン2000mlに排出し、析出したポリマー粉を濾過後、50℃で8時間乾燥および150℃で4時間乾燥してスルホン酸Na基含有ポリエーテルケトン粉34.28g(収率85%)を得た。得られたポリエーテルケトン粉の還元粘度は1.20dl/gであった。
[実施例1]
合成例1で合成したNa型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン4.00gをDMSO28g中入れ、攪拌および超音波照射により溶解させてワニスを得た。このワニスをガラス板上にキャストし、イナートオーブンにて、窒素雰囲気中、0.7℃/minの速さで室温から200℃まで昇温し、200℃で4時間保持することによりDMSOを除去して固体高分子電解質膜を得た。得られた固体高分子電解質膜を、膜の両面にメタルハライドランプを用いて片面7000mJ/cmの紫外線照射をして光架橋し、次にプロトン交換して、H型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋膜を得た。プロトン交換では光架橋させた膜を2N−硫酸に24時間浸漬して酸処理し、蒸留水に24時間浸して蒸留水で洗浄し、150℃で2時間乾燥した。得られた固体高分子電解質膜をオクチルジアミンの2wt%エタノール溶液に30秒間浸漬し、エタノールで洗浄することにより、表面にオクチルジアミン層を形成してなる固体高分子電解質複合膜を得た。
得られた固体高分子電解質複合膜は、プロトン伝導度が0.02S/cm(30℃)、メタノール透過性が1.3μmol/cm2・minであった。また接着性については、接着性評価1では24時間後において3点とも剥離せず、接着性評価2でも3点とも剥離しなかった。
[実施例2]
オクチルジアミンの2wt%エタノール溶液の代わりにドデカンジアミンの2wt%エタノール溶液を用いた他は実施例1と同様にして、表面にドデカンジアミン層を形成してなる固体高分子電解質複合膜を作製した。得られた固体高分子電解質複合膜は、プロトン伝導度が0.02S/cm(30℃)、メタノール透過性が1.4μmol/cm2・minであった。また接着性については、接着性評価1では24時間後において3点中1点が剥離しており、接着性評価2では3点とも剥離しなかった。
[実施例3]
オクチルジアミンの2wt%エタノール溶液の代わりにポリビニルピリジン(Aldrich社製、分子量60,000)の2wt%酢酸水溶液(酢酸濃度10wt%)を用いた他は実施例1と同様にして、表面にポリビニルピリジン層を形成してなる固体高分子電解質複合膜を作製した。得られた固体高分子電解質複合膜は、プロトン伝導度が0.02S/cm(30℃)、メタノール透過性が1.4μmol/cm2・minであった。接着性については、接着性評価1では24時間後において3点とも剥離せず、接着性評価2でも3点とも剥離しなかった。
[実施例4]
合成例1で合成したNa型スルホン酸基含有ポリエーテルケトンから実施例1と同様にして固体高分子電解質膜を得た。得られた固体高分子電解質膜を、ジフェンヒドラミン塩酸塩の2wt%水溶液に30秒間含浸し、風乾後、膜の両面にメタルハライドランプを用いて片面7000mJ/cmの紫外線照射をして光架橋させた膜をプロトン交換をして、表面にジフェンヒドラミン塩酸塩層を形成してなる固体高分子電解質複合膜を作製した。プロトン交換では光架橋させた膜を2N−硫酸に24時間浸漬して酸処理し、蒸留水に24時間浸して蒸留水で洗浄し、150℃で2時間乾燥した。
得られた固体高分子電解質複合膜は、プロトン伝導度が0.02S/cm(30℃)、メタノール透過性が1.3μmol/cm2・minであった。接着性については、接着性評価1では24時間後において3点とも剥離せず、接着性評価2では3点とも剥離しなかった。
[比較例1]
合成例1で合成したNa型スルホン酸基含有ポリエーテルケトンから実施例1と同様にして固体高分子電解質膜を得た。得られた固体高分子電解質膜を、膜の両面にメタルハライドランプを用いて片面7000mJ/cmの紫外線照射をして光架橋し、次にプロトン交換して、H型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋膜を得た。プロトン交換では光架橋させた膜を2N−硫酸に24時間浸漬して酸処理し、蒸留水に24時間浸して蒸留水で洗浄し、150℃で2時間乾燥した。得られたH型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋膜は、プロトン伝導度が0.02S/cm(30℃)、メタノール透過性が1.4μmol/cm2・minであった。接着性については、接着性評価1では3点とも15分以内で剥離し、接着性評価2では3点とも剥離した。
以上の実施例および比較例の結果より、本発明の固体高分子電解質複合膜が接着性に優れていることは明らかである。本発明の固体高分子電解質複合膜は、プロトン伝導性、メタノール遮断性を損ねることなく触媒層との接着性を向上させるもので、DMFC用高分子電解質膜として好適である。

Claims (6)

  1. プロトン酸基を有する芳香族炭化水素系高分子化合物からなる固体高分子電解質膜の表面に塩基性官能基を有する化合物層を形成してなる固体高分子電解質複合膜
  2. 芳香族炭化水素系高分子化合物が、カルボニル基及び芳香環に直接結合したアルキル基を有することを特徴とする請求項1記載の固体高分子電解質複合膜
  3. 芳香族炭化水素系高分子化合物が全繰り返し構造単位に対し、下記式(1)で表される繰り返し構造単位10〜100モル%、および下記式(2)で表される繰り返し構造単位90〜10モル%を含み、R〜R10の少なくとも1つが−C2m+1(mは1〜10の整数)であり、かつX〜X10の少なくとも1つがプロトン酸基である芳香族ポリエーテルであることを特徴とする請求項2記載の固体高分子電解質複合膜

    Figure 2005298564

    Figure 2005298564

    [式(1)および(2)中、R〜R10はそれぞれ独立して、Hまたは−C2m+1(mは1〜10の整数)、X〜X10は、それぞれ独立して、Hまたはプロトン酸基、A〜Aは、それぞれ独立して、直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−SO−または−CO−であり、i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示し、式(1)および(2)の芳香環の水素原子は、−C2m+1(mは1〜10の整数)、プロトン酸基、Cl、FまたはCFに置換されていても良い。]
  4. 芳香族炭化水素系高分子化合物が架橋していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜
  5. 塩基性官能基を有する化合物が多価塩基性化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜
  6. 塩基性官能基を有する化合物が、カルボニル基または芳香環に直結した炭素数1〜10のアルキル基或いはアルキレン基を有する反応基を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜
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