JP2005268059A - 固体高分子電解質膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、プロトン酸基を有する芳香族炭化水素系化合物とシリカ微粒子等の無機フィラーとを含む固体高分子電解質である。更には、芳香族炭化水素系化合物が、特定の繰り返し構造単位を有する芳香族ポリエーテルケトンである。
Description
本発明は、以下の[1]〜[6]に記載した事項により特定される。
[2] 芳香族炭化水素系高分子化合物が全繰り返し構造単位に対し、下記式(1)で表される繰り返し構造単位10〜100モル%、および下記式(2)で表される繰り返し構造単位90〜0モル%を含み、R1〜R10の少なくとも1つが−CmH2m+1(mは1〜10の整数)であり、かつX1〜X10の少なくとも1つがプロトン酸基である芳香族ポリエーテルケトンであることを特徴とする請求項1記載の固体高分子電解質膜。
[式(1)および(2)中、R1〜R10はそれぞれ独立して、Hまたは−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、X1〜X10は、それぞれ独立して、Hまたはプロトン酸基、A1〜A3は、それぞれ独立して、直接結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示し、式(1)および(2)の芳香環の水素原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、プロトン酸基、Cl、FまたはCF3に置換されていても良い。]
[3]芳香族炭化水素系化合物がが架橋していることを特徴とする[1]又は[2]記載の固体高分子電解質膜。
[4]無機フィラーが直径0.01〜20μmのシリカ微粒子であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
[5]膜表面の算術平均粗さRaが5〜1000nmであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
[6]芳香族炭化水素系固体高分子電解質膜の片面または両面に[1]〜[5]のいずれかに記載の無機フィラーを含有する固体高分子電解質膜が積層されていることを特徴とする固体電解質複合膜。
本発明にかかる芳香族炭化水素系高分子化合物は、主鎖が脂肪族鎖を有さず、芳香環およびその連結基で構成される直鎖状芳香族樹脂であって、その構成単位の一部あるいは全部がプロトン酸基を有する芳香族炭化水素系高分子化合物である。
(a)−CnH2n−SO3Y(nは0〜10の整数、YはH,NaまたはK)
(b)−CnH2n−COOY(nは0〜10の整数、YはH,NaまたはK)
(c)−CnH2n−PO3Y2(nは0〜10の整数、YはH,NaまたはK)
本発明の芳香族炭化水素系高分子化合物は、具体的には、下記一般式(1)および(2)よりなる、R1〜R10の少なくとも1つが−CmH2m+1(mは1〜10の整数)であり、かつX1〜X10の少なくとも1つがプロトン酸基である芳香族ポリエーテルが挙げられる。かかる一般式(1)及び(2)からなる芳香族ポリエーテルは、溶剤溶解性に優れ、架橋、製膜などの加工が容易であり、かつ熱水、酸、アルカリ水、アルコール類などによる加水分解を受けないため特に好ましいことが国際公開第03/33566号明細書に記載されている。
一般式(1)および(2)中、R1〜R10はそれぞれ独立して、Hまたは−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、X1〜X10は、それぞれ独立して、Hまたはプロトン酸基、A1〜A3は、それぞれ独立して、直接結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示し、一般式(1)および(2)の芳香環の水素原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、プロトン酸基、Cl、FまたはCF3に置換されていても良い。
により製造することができることが、国際公開第03/33566号明細書に記載されている。またその際使用される芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジハライド化合物及び芳香族ポリエーテルケトンについても前記明細書に記載したものを用いることができる。
本発明にかかる無機フィラーは、電気絶縁性で、非水溶性かつ酸に対して安定な無機化合物であればよく、例えば、ニ酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム或いは酸化亜鉛等の金属酸化物、炭化珪素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ホウ素等の金属炭化物、窒化珪素等の金属窒化物、硫酸バリウム等の非水溶性無機塩、ゼオライト、カオリン、タルク或いはマイカ等の複合酸化物が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。この中でも粒子径や形状の種類が豊富であり入手が容易なシリカが特に好ましい。本発明にかかるシリカは、種々の形状をとることができ、特に制限はないが、破砕シリカ、ゾルゲル法で合成したコロイダルシリカ、ヒュームドシリカなどが挙げられる。
本発明の固体高分子電解質膜は、芳香族炭化水素系高分子化合物と無機フィラーを含み、その混合比率は特に制限はないが、芳香族炭化水素系高分子化合物100重量部に対して無機フィラーの含有比率が0.01〜50重量部であることが好ましく、0.1〜20重量部であることがより好ましい。無機フィラーの含有比率が低すぎると表面粗化の効果が十分に発現せず、また、含有比率が高すぎると材料の脆弱化やプロトン伝導性の低下の虞がある。また、固体高分子電解質膜の物性に悪影響を及ぼさないの範囲でパーフルオロカーボンスルホン酸、PEEKやPESなどのプロトン酸基を有しない一般の芳香族樹脂、PTFEなどのフッ素化樹脂、その他の樹脂又は、リン酸或いは硫酸などの無機酸を含んでいてもよい。
本発明の固体高分子電解質膜は、前記芳香族炭化水素系高分子化合物と無機フィラーとを用いて、種々公知の方法を適用して製造することができるが、以下の方法をとることが好ましい。
(a)芳香族炭化水素系高分子化合物またはその前駆体と無機フィラーとが溶解または懸濁したワニスを作製し、次いでワニスを支持体上に塗布等によりキャストし、溶媒を除去する方法。
(b)芳香族炭化水素系高分子化合物またはその前駆体と無機フィラーまたはその前駆体を機械的に混練し、次いで溶融成膜する方法 。
本発明の固体高分子電解質膜は、種々公知の無機フィラーを含まない固体高分子電解質膜の表面に積層して高分子固体電解質複合膜とすることができる。そうすることによって無機フィラーを含まない固体高分子電解質膜の表面粗度を大きくすることができ、触媒層との結着力を向上させることができる。無機フィラーを含まない固体高分子電解質膜は、本発明の固体高分子電解質膜と同じ芳香族炭化水素系高分子化合物であっても、異なる高分子化合物であってよいが、2つの固体高分子電解質膜の剥離を防ぐために両者とも架橋性の芳香族炭化水素系高分子化合物を用いることが好ましく、2つの固体高分子電解質膜を積層した後に紫外線照射等による架橋処理を行うことが好ましい。
実施例中の各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
芳香族炭化水素系電解質粉末0.50gをジメチルスルホキシド(DMSO)100mlに溶解させ、35℃において測定した。
表面形状測定装置(DEKTAK3、日本真空技術(株))を用いて、固体高分子電解質膜表面の平均算術粗さ(Ra)を測定した。
固体高分子電解質膜を幅5mm、長さ40mmに切り出した後、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ホルダー上に設置し、4本の電極を圧接し、4端子法の交流インピーダンス法で求まるCole−Coleプロットの円弧から抵抗率を測定した。電圧端子間は20mmとした。インピーダンスの測定はLCRメーター(日置電機(株)製3532)を使用した。温度変化は電極を接続したサンプルをアルミブロック製の恒温槽内に設置することにより行い、30℃から110℃の範囲の伝導度を測定した。加湿は常圧の恒温槽内への蒸気の導入により行い、水蒸気発生器にて測定温度が100℃未満では恒温槽温+5℃、100℃以上では120℃の一定温度に蒸留水を加熱し、生成する蒸気を使用した。また、イオン伝導度の計算に必要な膜厚は乾燥状態でマイクロメータを用いて測定した。
室温にて蒸留水と、1mol/Lメタノール水溶液を、直径23mmφのプロトン伝導膜を介して接し、3時間までの蒸留水側のメタノール濃度変化をガスクロにて測定した。得られたメタノール濃度増加直線の傾きより、膜厚50μmでのメタノール透過性を計算した。
5wt%ナフィオン溶液(Aldrich社製)を表面に塗布した電解質膜2枚を温度140℃、圧力10kg/cm2でホットプレスして貼り合わせた。得られた接着膜を30%メタノール水溶液に浸漬して剥離試験を行った。
5wt%ナフィオン溶液(Aldrich社製)と炭素微粒子(デンカブラック;電気化学社製)とを重量比で1:2の割合で混ぜ、50℃にて3時間超音波分散器で分散することによりペースト状にした。このペーストをカーボンペーパー上にスクリーン印刷法で塗布した後、100℃で加熱乾燥した。次に、このカーボンペーパーを電解質膜の片面に温度140℃、圧力10kg/cm2でホットプレスし接合体を作製した。これらの接合体を10v/v%メタノール水溶液に24時間浸漬後、100℃にて乾燥した。得られたサンプルについてテープによる剥離試験を行った。
攪拌器、温度計および冷却管を装備した反応フラスコに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(0.525mol)と、50%発煙硫酸210mlを装入した後、100℃で12時間反応した。これを、1000gの氷水に排出した後、NaOH210gで中和した。次に、NaClを210g加え、加熱溶解した後放冷し一夜放置した。析出した結晶を濾過した後、水400ml、エタノール400mlを加えて加熱溶解後放冷し、再結晶を行った。析出した結晶を濾過後、100℃で6時間乾燥して5,5’−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)の白色結晶を得た。収量155.2g(0.386mol、収率70%)。
合成例1で合成したNa型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン4.00g及び粒子径5μmのシリカ(Wakogel LC-5H)0.04gをDMSO28g中に入れ、攪拌および超音波照射により溶解および分散させてワニスを得た。このワニスをガラス板上にキャストし、イナートオーブンにて、窒素雰囲気中、0.7℃/minの速さで室温から200℃まで昇温し、200℃で4時間保持することによりDMSOを除去して膜を得た。この膜の両面に、メタルハライドランプを用いて片面7000mJ/cm2の紫外線照射して光架橋させた後、プロトン交換をして、シリカを含有したH型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋物からなる、可撓性に富み強靭な高分子固体電解質膜を得た。プロトン交換では、光架橋させた膜を2N−硫酸に24時間浸漬して酸処理し、蒸留水に24時間浸して蒸留水で洗浄し、これを150℃で2時間乾燥した。
粒子径5μmのシリカ(Wakogel LC-5H)に代えて平均粒子径2.5μmシリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア310P)を用いた他は実施例1と同様にしてシリカ含有したH型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋物からなる可撓性に富み強靭な高分子固体電解質膜を得た。得られた高分子固体電解質膜の表面粗度はRa=54nmであり、プロトン伝導度及びメタノール透過性は実施例1と同じ値であった。接着性については、接着性評価1では24時間後において3点中1点が剥離し、接着性評価2では3点とも剥離しなかった。
合成例1で得られたNa型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン粉を実施例1と同様のプロトン交換を行い、H型スルホン酸基含有ポリエーテルケトンを得た。得られたH型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン2.00g及び平均粒子径2.5μmシリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア310P)0.50gをメトキシエタノール50gに溶解および分散させたシリカ含有ワニスを得た。
シリカとして、平均粒子径2.5μmシリカを用いる代わりに、ヒュームドシリカ(Aldrich社製品、表面積255m2/g)を用い、メトキシエタノールの変わりにテトラヒドロフラン25gと水25gとの混合溶剤を用いた他は、実施例3と同様にして、高分子固体複合電解質膜を作製した。その表面粗度はRa=104nmで、プロトン伝導度及びメタノール透過性は実施例1と同じ値であった。接着性については、接着性評価1では24時間後において3点とも剥離せず、接着性評価2では3点とも剥離しなかった。
シリカの混合量を0.12gとした他は、実施例1と同様にして、シリカを含有したH型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋物からなる可撓性に富み強靭な高分子固体電解質膜を得た。その表面粗度はRa=283nmであった。接着性については、接着性評価1では24時間後において3点とも剥離せず、接着性評価2では3点とも剥離しなかった。
粒子径5μmのシリカを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてH型スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋物からなる、可撓性に富み強靭な高分子固体電解質膜を得た。得られた膜は、表面粗度がRa=4nm、プロトン伝導度が0.02S/cm(30℃)、メタノール透過性が1.4μmol/cm2・minであった。また接着性については、接着性評価1では3点とも15分以内で剥離し、接着性評価2では3点とも剥離した。
Claims (6)
- プロトン酸基を有する芳香族炭化水素系高分子化合物100重量部と無機フィラー0.01〜50重量部を含む固体高分子電解質膜
- 芳香族炭化水素系高分子化合物が全繰り返し構造単位に対し、下記式(1)で表される繰り返し構造単位10〜100モル%、および下記式(2)で表される繰り返し構造単位90〜0モル%を含み、R1〜R10の少なくとも1つが−CmH2m+1(mは1〜10の整数)であり、かつX1〜X10の少なくとも1つがプロトン酸基である芳香族ポリエーテルケトンであることを特徴とする請求項1記載の固体高分子電解質膜
[式(1)および(2)中、R1〜R10はそれぞれ独立して、Hまたは−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、X1〜X10は、それぞれ独立して、Hまたはプロトン酸基、A1〜A3は、それぞれ独立して、直接結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示し、式(1)および(2)の芳香環の水素原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、プロトン酸基、Cl、FまたはCF3に置換されていても良い。] - 芳香族炭化水素系高分子化合物が架橋してなる請求項1又は2記載の固体高分子電解質膜
- 無機フィラーが粒子径0.01〜20μmのシリカ微粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子電解質膜
- 固体高分子電解質膜の表面粗さ(Ra)が5〜1000nmである請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子電解質膜
- 請求項1〜5のいずれかに記載の固体高分子電解質膜を少なくとも1層有する固体高分子電解質複合膜
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