JP2005291958A - 糖鎖標識試薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、一連の糖鎖解析の過程で、クロマトグラフィーによる分離過程を排除し得る、高速に微量試料の解析を可能にする技術およびそれを可能にする糖鎖標識試薬、さらにこれにより可能となった新たな糖鎖解析プロトコルとシステムを提供することにある。
【解決手段】 アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、かつモル屈折の計算値が5以上である化合物を1または2以上含む、アルデヒド基を有する化合物を含有する試料を質量分析するための組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、タンパク質、ペプチド、脂質等の複雑な混合物中に存在する糖鎖をクロマトグラフィーによる分離操作なしに質量分析装置を用いて選択的に定性・定量する技術およびそれを可能にする糖鎖標識試薬に用いる物質に関する。本発明はさらに、上記発明により可能となった新たな糖鎖解析プロトコルとシステムに関する。本発明はまた、本発明による高速・高感度の診断、治療、鑑別方法を提供する。
糖鎖は通常タンパク質や脂質等との複合体として存在し、糖鎖構造は構成単糖、分岐、結合位置、アノメリシティ等の多様性により極めて複雑な上、糖鎖生合成は多数の糖鎖合成関連酵素により行われるため、遺伝子やタンパク質の発現解析でその発現パターンを明らかにすることができない。加えて、同一のタンパク質、脂質に結合する糖鎖構造には不均一性があり、しばしば1つのタンパク質に複数の糖鎖が結合するため、タンパク質よりも高感度の解析技術が必然的に必要となるが、糖鎖は構造上、光学・質量分析等の測定手法において高感度に検出することができない。
このため、糖鎖を測定するためには一般に蛍光標識試薬等による糖鎖の標識を測定前に施し解析する手法が用いられる。これらの技術は、糖鎖の切り出し、糖鎖画分の回収精製、糖鎖の標識、標識糖鎖の精製等の工程を組み合わせたもので、これらは非常に煩雑な手間を要する。特に糖鎖画分の回収精製と標識糖鎖の精製にはクロマトグラフィーによる分離過程が一般的であるが、一連の工程の律速となるとともに、微量にしか存在しない糖鎖の損失につながる恐れがある。
質量分析はその高い分解能と精密な分子量情報の提供により、糖鎖の解析にも広く用いられるようになってきたが、複雑な混合物の測定には弱く、クロマトグラフィーや電気泳動等の他の分離精製手法との組み合わせが必須とされてきた。
上記の工程を固定化酵素や各種クロマトグラフィー等と連結し、自動化を図る検討は様々に行われているが、分離過程が孕む高速解析の困難性、微量試料損失の課題を本質的に解決するものではない。現在、糖鎖解析に用いる手法の全てが、クロマトグラフィーによる分離過程を程度の差はあれ必要とする。一連の糖鎖解析の過程で、クロマトグラフィーによる分離過程を一切排除し、高速かつ高感度に糖鎖解析を可能にする技術はいまだに存在せず、そのような技術は翻訳後修飾解析を含めた次世代プロテオームを含めたグライコームにおいて極めて重要であり、その開発は渇望されている。
糖鎖標識試薬としては、Girard’sTと呼ばれる下式:
の化合物が知られているが(例えば、非特許文献1を参照のこと)、この化合物を標識試薬として使用した場合、質量分析感度はわずかしか向上せず、混合物の試料を使用した場合、タンパク質、ペプチド、脂質等の複雑な混合物中に存在する目的の糖鎖をより効率的かつ特異的に検出し得る標識試薬の開発が渇望されている。
Naven,T.J.P.;Harvey,D.J.,Cationic derivatization of oligosaccharides with Girard’s T reagent for improved performance in matrix−assisted laser desorption/ionization and electroscopy mass spectrometry. Rapid Communications in Mass Spectrometry (1996),10(7),829−834。
本発明の課題は、一連の糖鎖解析の過程で、クロマトグラフィーによる分離過程を排除し得る、高速に微量試料の解析を可能にする技術およびそれを可能にする糖鎖標識試薬、さらにこれにより可能となった新たな糖鎖解析プロトコルとシステムを提供することにある。
本発明の上記課題は、糖鎖を含む複雑な混合物試料を質量分析で測定する際に、糖鎖を選択的にイオン化し、混合物中の他の分子種のイオン化を抑制させることによって解決された。
本発明は、複雑な分子種で構成される混合物中で、糖鎖のみと選択的に反応し、そのイオン化効率を飛躍的に増大させる新規標識試薬を開発することで達成した。
このように、本発明では、以下を提供する。
(1) アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、かつモル屈折の計算値が5以上である化合物を1または2以上含む、アルデヒド基を有する化合物を含有する試料を質量分析するための組成物。
(2) 前記アルデヒド基を有する化合物が、糖または糖鎖である項目1記載の組成物。
(3) 前記アルデヒド基と特異的に反応する基が、−O−NH(R)、−C(=X)−NH−NH、または−CH(−NH)−X−SH(式中、Rは水素原子またはアルキル、Xは酸素原子または硫黄原子、およびXはメチレンまたはエチレン)で表される基である項目1記載の組成物。
(4) 前記イオン化を促進する官能基が、グアニジニウム基または4級窒素を有するオニウムである項目1記載の組成物。
(5) 前記アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物が、一般式(I):
[式中、Rは−NH−NHまたは式:
(式中、Rは−NH−NH)で表される基;
は水素原子、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、または式:
(式中、Rはフェニル、4−ヒドロキシフェニルまたはインドリル;Rは水素原子、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、または式:
(式中、Rはフェニル、4−ヒドロキシフェニルまたはインドリル;Rは水素原子、ベンゾイル、またはベンジルオキシカルボニル)で表される基)で表される基]
で表される化合物;または
式:
で表される化合物である、項目1に記載の組成物。
(6) 前記アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物が、以下:
1,2−ジオレイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、
1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、
Fmoc−Gln(Trt)−OH(Fmoc−N−γ−トリチル−D−グルタミン)、
1,2−ジステアロイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン、
1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、
1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン、
10−ノニルアクリジンオレンジ、
2,4,6−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ピラニリウム、
1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、
1,2−ジミリストイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン、
デヒドロコリダリン、
N−[2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]メチレン,N−{2−[2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)]メチレン−1−メチルヒドラジノ}エチルメタナミニウム(Methanaminium, N−[2−hydroxy−3−(2−propenyl)phenyl]methylene,N−{2−[2−hydroxy−3−(2−propenyl)phenyl]methylene−1−methylhydrazino}ethyl)、
ケレリスリン、
イソデスモシン、
デスモシン、
パルマチン、
5−(3−メトキシ−フェニル)−3,8−ジニトロ−ベンゾ[c]シンノリン、
サンギナリン、
ベンゼトニウム、
ノバシン(NOVACINE)(4,6−メタノ−6H,14H−インドロ[3,2,1−ij]オキセピノ[2,3,4−de]ピロロ[2,3−h]キノリン)(ストリキニジニウム)(4,6−Methano−6H,14H−indolo[3,2,1−ij]oxepino[2,3,4−de]pyrrolo[2,3−h]quinoline, strychnidinium)、
N−ベンジル−4−スチルバゾリウム、
N,N,N−トリメチルスフィンゴシン、
N,N,N−トリメチルフィトスフィンゴシン、
N,N,N−トリメチルスフィンガニン、
AAMC(N,N−ジエチル−7−メトキシ−N,4−ジメチル−2−オキソ−2H−1−ベンゾピラン)(2H−1−Benzopyran−3−ethanaminium, N,N−diethyl−7−methoxy−N,4−dimethyl−2−oxo−)、
N−(1,4−ジフェニル−2−オキソ−ブタ−3−エニリデン),N−メチルメタナミニウム(Methanaminium,N−(1,4−diphenyl−2−oxo−but−3−enylidene),N−methyl)、および
(1,1,2,2,3,3,4,4−オクタメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ナフチル)トリメチルアンモニウム、
からなる群から選択される化合物もしくはその塩、または該化合物においてアルデヒド基と特異的に反応する官能基を置換した化合物もしくは該化合物中の官能基をアルデヒド基と特異的に反応する官能基に変換した化合物である、項目1に記載の組成物。
(7) 以下の式:
で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
(8) 以下の工程:
1)アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である1または2以上の標識化合物と、アルデヒド基を有する被検体化合物を含有する試料とを、該標識化合物と該被検体化合物とが反応し得る条件下で接触して、該被検体化合物を標識する工程、および
2)工程1)で得られた試料の質量分析を行う工程、
を包含する、標識された被検体化合物を分析する方法。
(9) 前記被検体化合物が糖鎖である項目8記載の方法。
(10) アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である1または2以上の標識化合物が項目7記載の化合物である、項目8記載の方法。
(11) 前記標識化合物と前記被検体化合物とを10℃〜200℃で反応させる項目8記載の方法。
(12) 前記標識化合物と前記被検体化合物とを0.1時間〜3時間で反応させる項目8記載の方法。
(13) 前記標識化合物と前記被検体化合物との反応の反応液のpHが3〜9である項目8記載の方法。
(14) 前記質量分析をMALDI−TOF MSにより行う項目8記載の方法。
(15) 前記MALDI−TOF MSにより質量分析を行う工程において使用されるマトリックス試薬が、2,5−ジヒドロキシベンゾイックアシッド、α−シアノ−4−ヒドロキシ−ケイ皮酸、シナピン酸、trans−3−インドール−アクリル酸、1,5−ジアミノ−ナフタレン、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、9−ニトロ−アントラセン、2−ピコリン酸、3−ヒドロキシ−ピコリン酸、ニコチン酸、アントラニル酸、5−クロロ−サリチル酸、2’−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)安息香酸、ジスラノール、および3−アミノ−キノリンからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(16) 前記マトリックス試薬が、2,5−ジヒドロキシベンゾイックアシッドである、項目14に記載の方法。
(17) 前記試料が、
1)糖タンパク質をプロテアーゼで消化する工程、および
2)消化された糖タンパク質の糖鎖を遊離させる工程、により得られ、
前記被検体化合物が、遊離された糖鎖である、項目8に記載の方法。
(18) 以下の工程:
1)糖タンパク質をプロテアーゼで消化する工程、
2)消化された糖タンパク質の糖鎖を遊離させる工程、
3)遊離された糖鎖およびアルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である1または2以上の標識化合物を反応させ、糖鎖を標識する工程、および
4)標識された糖鎖の質量分析を行う工程
を包含する糖タンパク質の糖鎖を同定する方法。
本標識試薬は、ペプチド等の本来イオン化効率が高い分子種のイオン化を抑制させるほどの高いイオン化効率を糖鎖に付与することが必須となる。本発明においては、イオン化効率とモル屈折に高い相関を初めて見出し、モル屈折が5以上となるような標識試薬が本要件を満たす上で重要な因子の少なくとも1つであると結論した。
質量分析測定におけるイオン抑制効果は、程度の差はあるもののイオン化の手法(例えばエレクトロスプレー法、マトリクス支援レーザー脱離イオン化法)を問わず見出されており、共存する塩、界面活性剤、マトリクス分子、他に混在する同種・異種分子が測定対象分子の定性・定量的解析を妨害する現象として主に質量分析法の抱える問題点としての側面から取り上げられてきた。イオン抑制効果を積極的に利用し、イオン抑制を生じせしめるような標識を施し、複雑な混合物中で特定の分子種のみを選択的に検出することを可能にしたような報告はない。
イオン抑制は、しばしば混在する複数の分子種間で相互に相対感度を低下することに帰着するが、本発明で見出した例えばモル屈折が9.7の標識試薬(3−Et−1−(2−(2−ヒドラジノ−カルボニルメチル−1H−インドール−3−イル)−エチル)−ピリジニウム)は、ペプチド等の共存分子のイオン化を完全に抑制しながら、自身の検出感度はペプチド等の共存下でも全く低下させない特長を有する。
本発明は、タンパク質、ペプチド、脂質等に結合した糖鎖を切り出した後に一切の分離精製手段を経ずに、糖鎖のみを一段階もしくは二段階で効率的にモル屈折が5以上となるような標識試薬で標識し、煩雑な分離精製手段を経ずに直接質量分析による解析に供し、糖鎖発現解析を可能にする方法論を提供する。プロテオームで汎用されるタンパク質精製技術と併用すれば、本発明によりタンパク質の同定と糖鎖の発現プロファイルを同時かつ高速に与えることを可能にする。また、クロマトグラフィーによる分離過程を排除し得るため、前処理過程における損失を防ぐことができ、それにより、測定試料中の標的分子(糖鎖)を、全て測定試料中に含有させることが可能になる。
本発明ではクロマトグラフィーによる分離精製過程を必要としないため、従来の自動化を志向したシステムとは本質的に異なるシステム構成で容易に自動化システムを構築することができる。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(用語)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において「糖鎖」とは、単位糖(単糖および/またはその誘導体)が1つ以上連なってできた化合物をいう。単位糖が2つ以上連なる場合は、各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸ならびにそれらの複合体および誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。したがって、本明細書では、糖鎖は、「多糖(ポリサッカリド)」、「糖質」、「炭水化物」と互換可能に使用され得る。また、特に言及しない場合、本明細書において「糖鎖」は、糖鎖および糖鎖含有物質の両方を包含する。
本明細書において「単糖」とは、これより簡単な分子に加水分解されず、一般式C2nで表される化合物をいう。ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9および10であるものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノースおよびデコースという。一般に鎖式多価アルコールのアルデヒドまたはケトンに相当するもので、前者をアルドース,後者をケトースという。
本明細書において「単糖の誘導体」とは、単糖上の一つ以上の水酸基が別の置換基に置換され、結果生じる物質が単糖の範囲内にないものをいう。そのような単糖の誘導体としては、カルボキシル基を有する糖(例えば、C−1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D−グルコースが酸化されたD−グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D−グルコースが酸化されたD−グルクロン酸)、アミノ基またはアミノ基の誘導体(例えば、アセチル化されたアミノ基)を有する糖(例えば、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンなど)、アミノ基およびカルボキシル基を両方とも有する糖(例えば、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸)、N−アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などがあるがそれらに限定されない。あるいは、ヘミアセタール構造を形成した糖において、アルコールと反応してアセタール構造のグリコシドもまた、単糖の誘導体の範囲内にある。
本明細書において「糖鎖含有物質」とは、糖鎖および糖鎖以外の物質を含む物質をいう。このような糖鎖含有物質は、生体内に多く見出され、例えば、生体中に含有される多糖類の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「糖タンパク質」としては、例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、抗体、ワクチン、レセプター、血清タンパク質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「MALDI−TOF(MS)」とは、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization −Time−of−Flight(Mass Spectrometer)の略語である。MALDIとは、田中らによって見いだされ、Hillenkampらによって開発された技法である(Karas M.,Hillenkamp,F.,Anal.Chem.1988,60,2299−2301)。この方法では、試料とマトリクス溶液をモル比で(10−2〜5×10−4):1に混合した後、混合溶液を標的上で乾固し、結晶状態にする。パルスレーザー照射により、大きなエネルギーがマトリクス上に与えられ、(M+H)、(M+Na)などの試料由来イオンとマトリクス由来イオンとが脱離する。微量のリン酸緩衝液、Tris緩衝液、グアニジンなどで汚染されていても分析可能である。MALDI−TOF(MS)は、MALDIを利用して飛行時間を元に質量を測定するものである。イオンが一定の加速電圧Vで加速される場合、イオンの質量をm、イオンの速度をv、イオンの電荷数をz、電気素量をe、イオンの飛行時間をtとしたとき、イオンのm/zは、
m/z=2eVt/L
で表すことができる。このようなMALDI−TOF測定には、島津/KratosのKOMPACT MALDI II/IIIなどを使用することができる。その測定の際には、製造業者が作成したパンフレットを参照することができる。MALDI−TOFの測定時に使用されるレーザー照射の照射エネルギーを本明細書において「解離エネルギー」という。
本明細書において糖鎖または糖鎖含有物質に対する「特異性」または「特異的である」とは、ある物質の性質について言及され、その物質が糖鎖または糖鎖含有物質に対して相互作用をすることができるが、糖鎖および糖鎖含有物質以外の物質に対する相互作用が低いことをいう。
本明細書において「アルデヒド基と特異的に反応し得る」とは、アルデヒド基に対して、アルデヒド以外に対するよりも高い効率で結合することができる能力をいう。そのような能力は、アルデヒド基以外との非特異的結合を解離させる条件下に曝されるとき、少なくとも一定量のアルデヒド基との特異的結合が残存することを判定することによって確認することができる。具体的には、例えば、そのような能力は、結合後の被検体化合物−標識化合物複合体をMALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが少なくとも約5eV、好ましくは少なくとも約10eV、最も好ましくは少なくとも約15eVである。
本明細書において「相互作用」とは、2つの物体について言及するとき、その2つの物体が相互に力を及ぼしあうことをいう。そのような相互作用としては、例えば、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、疎水性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において「結合」は、共有結合の他に、水素結合、および配位結合を含み得、質量分析(例えば、MALDI−TOF)において少なくとも一部は解離されずに検出されるレベルを有する相互作用を意味する。本明細書中において、「共有結合」とは、当該分野における通常の意味で用いられ、電子対が2つの原子に共有されて形成する化学結合をいう。「結合」は、好ましくは共有結合である。このような共有結合としては、例えば、オキシム結合、ヒドラゾン結合、チオセミヒドラゾン結合などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において相互作用などの「レベル」とは、その相互作用など強さを示す程度をいい、「強度」ともいい、アルデヒド基を有する化合物に対する特異性を判断するために使用され得る。そのような相互作用のレベルは、例えば、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーを用いることができる。
本明細書において「所定のレベル」とは、ある目的に応じて設定されるアルデヒド基を有する化合物との特異的相互作用の程度をいい、アルデヒド基を有する化合物に対する特異性を判断するために有用である任意のレベルをいう。そのような所定のレベルは、測定条件により変動するが、例えば、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが少なくとも少なくとも約5eV、好ましくは少なくとも約10eV、最も好ましくは少なくとも約15eVであることが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、そのような所定のレベルは、下限とともに上限を有し得る。従って、例えば、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが約5eV〜500eV、約10eV〜100eV、約15eV〜50eVなどの範囲内にあることが好ましくあり得る。あるいは、相対的に表現する場合、最大と最小との間のレベルの相違は、100倍以内、50倍以内、20倍以内、10倍以内、5倍以内、4倍以内、3倍以内、2倍以内、1.5倍以内の範囲内にあることが好ましくあり得る。
本明細書において、最大と最小との間の相互作用のレベルの「範囲」は、上述のような方法を用いて測定された相互作用レベルの最大値と最小値との間の範囲をいい、最大の値の最小値に対する倍数で表すことができる。この値が小さいほど特異性は均一であるといえる。
本明細書において「アルデヒド基と特異的に反応する官能基」とは、アルデヒド基を有する化合物と接触された場合にそのアルデヒド基において特異的に反応して結合を形成する官能基をいい、好ましくは、糖鎖が水溶液またはマトリクス溶液などの流体中で形成する環状のヘミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡ならびに糖が有するアルデヒド基およびジオール基において、アルデヒド基およびジオール基と反応して特異的かつ安定な結合をつくることができる性質を有する官能基をいう。アルデヒド基との反応により形成される結合としては、オキシム結合、ヒドラゾン結合またはその誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。このような官能基としては、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基、チオセミカルバジド基およびシステイン残基ならびにそれらの誘導体が挙げられるがそれらに限定されない。より好ましくは、そのような官能基は、ヒドラジド基およびヒドロキシルアミノ基である。ここでいう「それらの誘導体」とは、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基、またはチオセミカルバジド基の1個または2個以上の水素原子が下記に示す置換基によって置換された官能基を意味する。
本明細書において「流体」は、本発明の物質が、糖鎖と相互作用をする環境を提供することができる流体であればどのようなものでも使用することができる。好ましくは、そのような流体はケト基を含む物質は実質的に含まない。なぜなら、ケト基を含む物質が有意に含有されている場合、流体中のアルデヒド基と本発明の物質との反応が充分に進まないからである。したがって、ケト基を含む物質を含まない形態は必須ではないが、好ましい実施形態である。
したがって、本明細書において使用される流体は、糖を環状のヘミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡にもたらすようなものであることが好ましい。そのような流体としては、例えば、水溶液、有機溶媒およびこれらの混合物などが挙げられるがそれに限定されない。好ましくは、流体は水溶液である。
本明細書において「イオン化を促進する官能基」とは、被検体のイオン化を促進し得る官能基をいう。イオン化を促進するとは、少なくとも、その官能基を含まない(すなわち、水素で置換されている)化合物と比較した場合に、イオン化を促進する官能基が存在する化合物においてイオン化効率が有意に向上することをいう。「イオン化を促進する官能基」は、その官能基自体がイオン性(カチオンまたはアニオン)であってもよいし、その官能基自体は中性であるが質量分析のイオン化プロセスに供された場合にイオン化するものでもよい。すなわち、本発明の状況において、イオン性官能基を有する標識化合物が、アルデヒドを有する被検体と反応して結合を生成し、この標識された被検体について質量分析において標識しない場合よりもイオン化効率が向上し得る。あるいは、中性のイオン化を促進し得る官能基を有する標識化合物をアルデヒド基を有する被検体と反応させて得られた標識された被検体について、標識しない場合よりも、質量分析においてイオン化効率が向上し得る。このような官能基としては、4級窒素、3級酸素、カチオン性硫黄原子などのイオン性部分を含むオニウム官能基(複素環を含む);プロトン化またはメタレーション等によってカチオンを生成する官能基;脱プロトン化などによってアニオンを形成する官能基などが挙げられる。イオン化を促進する官能基は、好ましくは、トリアルキルアンモニウム基、ピリジニウム基またはグアニジニウム基であるが、これらに限定されない。
本明細書において「モル屈折の計算値(Calculate Molar Refractivity)(CMR)」とは、計算化学用ソフトウエアを使用して計算したモル屈折値をいう。計算化学用ソフトウエアとしては、当該分野において一般的なものであれば使用できるが、例えば、CS Chem3D(CambridgeSoft Corporation;HULINKS社)に搭載された計算機能を利用してCMR値が得られる。CMRに関する情報については、例えば、BioByte Corp社のWebサイトhttp://clogp.pomona.edu/medchem/chem/papers/13−cmr.htmlに記載される。その内容および引用される文献が本明細書中に参考として援用される(例えば、A.I.Vogel,J.Chem.Soc.,1833(1948);A.I.Vogelら、Chem.&Indust.,358(1950);およびG.H.Jefferyら、J.Chem.Soc.,570(1961)を参照のこと)。CMR値を計算するための他の方法としては、三浦らによる計算がある。この方法は、モル屈折(molar refractivity)をR、屈折率(refractive index)をn、真空中の誘電率Σ、分極率を<α>体積V中の分子数をN、分子の質量(molar mass)、Nをボルツマン定数、ρを物質の密度としたときにLorenz−Lorenzの方程式
を利用し、R
と表現される(例えば、戸田盛和、宮島龍興編、物理学ハンドブック第2版、A. Hinchliffe and H. J. SocunMachado,Int. J. Mol. Sci.,(2000),1,39などを参照のこと)。よって、モル屈折は分極率<α>の定数倍である。この相関(比例)関係を利用して分極率の計算に、分子軌道計算用ソフトウエアであるgaussian03(M. J. Frischら、Gaussian, Inc., Pittsburgh PA, 2003)を使用する。分子軌道法によって分極率は行列の形で得られ、そのトレースが<α>である。分子軌道法の計算方法としては例えばハートリーフォック法を、および基底関数として例えばSTO−3Gを使用する。
本明細書において「標識化合物と被検体化合物とが反応し得る条件」とは、その標識化合物と、アルデヒド基を有する化合物(すなわち、被検体化合物)(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質)とが結合を形成し得るのに十分な条件(例えば、反応時間、緩衝剤、溶媒の極性、温度、pH、塩濃度、圧力など)をいう。このような条件を設定するのに必要なパラメータの設定は、当業者の技術範囲内であり、形成される結合の種類、糖鎖または糖鎖含有物質の種類、化合物の種類(例えば、アルデヒド基と特異的に反応する官能基の種類)など反応に関連する諸パラメータを考慮することにより、当業者は、そのような条件を当該分野において周知の技術を用いて設定し、反応を行わせることができる。好ましい実施形態では、そのような条件は、糖鎖が水溶液などの流体中で形成する環状のヘミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡において、アルデヒド基と反応して特異的かつ安定な結合を形成させるような条件が挙げられるがそれに限定されない。あるいは、反応に供する流体にケト基が実質的に含まれていないこともまた1つの好ましい条件であり得る。
本明細書において「試料」とは、その中の少なくとも1つの成分(好ましくは糖鎖または糖鎖含有物質)の分離、濃縮、精製または分析を目的とするものであれば、どのような起源のものをも使用することができる。したがって、試料は、生物の全部または一部から取り出されたものであり得るが、それに限定されない。別の実施形態において、試料は、合成技術によって合成されたものであり得る。
本明細書において「被検体」とは、質量分析の対象となる試料中の目的物質をいう。
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。そのような生体分子を含む試料を、本明細書において特に生体試料ということがある。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。従って、生体分子は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子などが包含されるがそれらに限定されない。本明細書では、生体分子は、好ましくは、糖鎖または糖鎖を含む複合分子(例えば、糖タンパク質、糖脂質など)であり得る。
そのような生体分子の供給源としては、生物由来の糖鎖が結合または付属する材料であれば特にその由来に限定はなく、動物、植物、細菌、ウイルスを問わない。より好ましくは動物由来生体試料が挙げられる。好ましくは、例えば、全血、血漿、血清、汗、唾液、尿、膵液、羊水、髄液等が挙げられ、より好ましくは血漿、血清、尿が挙げられる。生体試料には個体から予め分離されていない生体試料も含まれる。例えば外部から試液が接触可能な粘膜組織、あるいは腺組織、好ましくは乳腺、前立腺、膵臓に付属する管組織の上皮が含まれる。
(診断)
本明細書において「検出」とは、例えば、質量分析の文脈においては、観測されるスペクトルにおいてシグナルとして認識されるピークを見出すことをいう。認識された対象となるピークが特定の被検体に対応する場合は、その被検体のピークが検出されたという。あるいは、診断に関連する文脈においては、被験体における疾患、障害、病因、状態などに関連する種々のパラメータを同定することをいう。
本明細書において「診断」とは、被験体における疾患、障害、病因、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状を判定することをいう。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、糖鎖を同定することができ、同定された糖鎖に関する情報を用いて、被験体における疾患、障害、病因、状態などの種々のパラメータを選定することができる。
本明細書において「鑑別」とは、被験体における疾患、障害、病因、状態などの種々のパラメータを識別することをいう。従って、本明細書において「診断」および「鑑別」はその概念が一部重複する。
本明細書において「病因」とは、被験体の疾患、障害または状態(本明細書において、総称して「病変」ともいい、植物では病害ともいう)に関連する因子をいい、例えば、原因となる病原物質(病原因子)、病原体、病変細胞、病原ウイルスなどが挙げられるがそれらに限定されない。
そのような疾患、障害または状態としては、例えば、循環器系疾患(貧血(例えば、再生不良性貧血(特に重症再生不良性貧血)、腎性貧血、癌性貧血、二次性貧血、不応性貧血など)、癌または腫瘍(例えば、白血病、多発性骨髄腫)など);神経系疾患(痴呆症、脳卒中およびその後遺症、脳腫瘍、脊髄損傷など);免疫系疾患(T細胞欠損症、白血病など);運動器・骨格系疾患(骨折、骨粗鬆症、関節の脱臼、亜脱臼、捻挫、靱帯損傷、変形性関節症、骨肉腫、ユーイング肉腫、骨形成不全症、骨軟骨異形成症など);皮膚系疾患(無毛症、黒色腫、皮膚悪性リンパ腫、血管肉腫、組織球症、水疱症、膿疱症、皮膚炎、湿疹など);内分泌系疾患(視床下部・下垂体疾患、甲状腺疾患、副甲状腺(上皮小体)疾患、副腎皮質・髄質疾患、糖代謝異常、脂質代謝異常、タンパク質代謝異常、核酸代謝異常、先天性代謝異常(フェニールケトン尿症、ガラクトース血症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症)、無アルブミン血症、アスコルビン酸合成能欠如、高ビリルビン血症、高ビリルビン尿症、カリクレイン欠損、肥満細胞欠損、尿崩症、バソプレッシン分泌異常、侏儒症、ウオルマン病(酸リパーゼ(Acid lipase)欠損症)、ムコ多糖症VI型など);呼吸器系疾患(肺疾患(例えば、肺炎、肺癌など)、気管支疾患、肺癌、気管支癌など);消化器系疾患(食道疾患(たとえば、食道癌)、胃・十二指腸疾患(たとえば、胃癌、十二指腸癌)、小腸疾患・大腸疾患(たとえば、大腸ポリープ、結腸癌、直腸癌など)、胆道疾患、肝臓疾患(たとえば、肝硬変、肝炎(A型、B型、C型、D型、E型など)、劇症肝炎、慢性肝炎、原発性肝癌、アルコール性肝障害、薬物性肝障害)、膵臓疾患(急性膵炎、慢性膵炎、膵臓癌、嚢胞性膵疾患)、腹膜・腹壁・横隔膜疾患(ヘルニアなど)、ヒルシュスプラング病など);泌尿器系疾患(腎疾患(腎不全、原発性糸球体疾患、腎血管障害、尿細管機能異常、間質性腎疾患、全身性疾患による腎障害、腎癌など)、膀胱疾患(膀胱炎、膀胱癌など)など);生殖器系疾患(男性生殖器疾患(男性不妊、前立腺肥大症、前立腺癌、精巣癌など)、女性生殖器疾患(女性不妊、卵巣機能障害、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮癌、子宮内膜症、卵巣癌、絨毛性疾患など)など);循環器系疾患(心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈、弁膜症、心筋・心膜疾患、先天性心疾患(たとえば、心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存、ファロー四徴)、動脈疾患(たとえば、動脈硬化、動脈瘤)、静脈疾患(たとえば、静脈瘤)、リンパ管疾患(たとえば、リンパ浮腫)など)などが挙げられるがそれらに限定されない。
(有機化学)
有機化学については、例えば、モリソン ボイド有機化学(上)(中)(下)第5版(東京化学同人発行(1989年))、March,Advanced Organic Chemstry 第4版(Wiley Intersience,JOHN WILEY & SONS,1992)などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書においては、特に言及がない限り、「置換」は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう。水素原子を1つ除去して1価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原子を2つ除去して2価の置換基に置換することも可能である。
本明細書において「アルキル」とは、メタン、エタン、プロパンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n+1−で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書において「置換されたアルキル」とは、以下に規定する置換基によってアルキルのHが置換されたアルキルをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C6アルキル、C1〜C7アルキル、C1〜C8アルキル、C1〜C9アルキル、C1〜C10アルキル、C1〜C11アルキルまたはC1〜C12アルキル、C1〜C2置換されたアルキル、C1〜C3置換されたアルキル、C1〜C4置換されたアルキル、C1〜C5置換されたアルキル、C1〜C6置換されたアルキル、C1〜C7置換されたアルキル、C1〜C8置換されたアルキル、C1〜C9置換されたアルキル、C1〜C10置換されたアルキル、C1〜C11置換されたアルキルまたはC1〜C12置換されたアルキルであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキルとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキルを意味し、メチル(CH−)、エチル(C−)、n−プロピル(CHCHCH−)、イソプロピル((CHCH−)、n−ブチル(CHCHCHCH−)、n−ペンチル(CHCHCHCHCH−)、n−ヘキシル(CHCHCHCHCHCH−)、n−ヘプチル(CHCHCHCHCHCHCH−)、n−オクチル(CHCHCHCHCHCHCHCH−)、n−ノニル(CHCHCHCHCHCHCHCHCH−)、n−デシル(CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH−)、−C(CHCHCHCH(CH、−CHCH(CHなどが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキルとは、C1〜C10アルキルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
本明細書において、「低級アルキル」は、好ましくは、C1〜C6アルキルであり、より好ましくは、C1またはC2アルキルである。
本明細書において「アリール」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいい、本明細書において、「炭素環基」に包含される。例えば、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、アンスラニル、インデニル、フェナンスリル等が挙げられる。「置換されたアリール」とは、下記において選択される置換基で置換されているアリールを意味する。
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。
本明細書において「ヒドロキシルアミノ」とは、ヒドロキシルアミンNHOHから水素原子を除いてできる1価の基をいう。「置換されたヒドロキシルアミノ」とは、下記において選択される置換基で置換されているヒドロキシルアミノを意味する。
本明細書において「N−アルキルヒドロキシルアミノ」とは、ヒドロキシルアミンの窒素原子に結合する水素原子をアルキル基で置換したヒドロキシルアミノを意味する。
本明細書において「ヒドラジド」とは、−CONHNHで表される基をいう。「置換されたヒドラジド」とは、下記において選択される置換基で置換されているヒドラジドを意味する。
本発明において、「アルデヒド」とは、特性基である−CHOを含むものを総称したものをいう。「置換されたアルデヒド」とは、下記において選択される置換基で置換されているアルデヒドを意味し、「アルデヒド誘導体」と互換可能に使用され得る。
本発明において、「カルボン酸」とは、特性基である−COOHを含むものを総称したものをいう。「置換されたカルボン酸」とは、下記において選択される置換基で置換されているカルボン酸を意味し、「アルデヒド誘導体」と互換可能に使用され得る。
本明細書において、C1、C2、、、Cnは、炭素数を表す。従って、C1は炭素数1個の置換基を表すために使用される。
本明細書において、「官能基」とは、有機化合物を特性付ける原子団であり、例えば、カルボキシル基(エステルを含む)、水酸基、アルデヒド(ホルミル)基、カルボニル基、アミノ基、またはヘテロアリール基もしくは複素環式基などが挙げられる。
本明細書において、「光学異性体」とは、結晶または分子の構造が鏡像関係にあって、重ねあわせることのできない一対の化合物の一方またはその組をいう。立体異性体の一形態であり、他の性質は同じであるにもかかわらず、旋光性のみが異なる。
本明細書においては、特に言及がない限り、置換は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう。水素原子を1つ除去して1価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原子を2つ除去して2価の置換基に置換することも可能である。
置換基としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、アシル、アシルアミノ、チオカルボキシ、アミド、カルボニル、チオカルボニル、スルホニルまたはスルフィニルが挙げられるがそれらに限定されない。置換基が置換された場合は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシアルキル、ハロゲノアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アシル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、チオカルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、置換されていてもよいアミノで置換され得る。この「置換されていてもよいアミノ」は、アルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルで1または2ヶ所置換されていてもよいアミノを意味する。
本明細書において「保護反応」とは、Boc(t−ブトキシカルボニル)、アセチル、ベンジル、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)のような保護基を、保護が所望される官能基に付加する反応をいう。保護基により官能基を保護することによって、より反応性の高い官能基の反応を抑制し、より反応性の低い官能基のみを反応させることができる。
本明細書において「脱保護反応」とは、上で列挙したような保護基を脱離させる反応をいう。脱保護反応としては、Boc(t−ブトキシカルボニル)に対してはトリフルオロ酢酸(TFA)による反応およびベンジルエーテルに対してはH、Pd/Cを用いる還元反応のような反応が挙げられる。「保護反応」および「脱保護反応」については、例えば、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS、第3版(JOHN WILEY&SONS,Inc.(1999))に詳細に記載され、その内容は、本明細書中に参考として援用される。
本発明の各方法において、目的とする生成物は、反応液から夾雑物(未反応減量、副生成物、溶媒など)を、当該分野で慣用される方法(例えば、抽出、蒸留、洗浄、濃縮、沈澱、濾過、乾燥など)によって除去した後に、当該分野で慣用される後処理方法(例えば、吸着、溶離、蒸留、沈澱、析出、クロマトグラフィーなど)を組み合わせて処理して単離し得る。
(本明細書において用いられる一般技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、分析化学、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.,et al.eds,Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac ,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Press;Method in Enzymology 230、242、247、Academic Press、1994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997;畑中、西村ら、糖質の科学と工学、講談社サイエンティフィク、1997;糖鎖分子の設計と生理機能 日本化学会編、学会出版センター、2001などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
(スクリーニング)
本明細書において、「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ物質または生物などを、特定の操作および/または評価方法で多数の候補から選抜することをいう。本明細書では、本発明のアルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が組成物、5以上である化合物を1または2以上含む組成物、その組成物を使用して標識された被検体化合物の分子量を測定する方法などを用いることによって、スクリーニングを行うことができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
(糖鎖の測定)
本発明の方法において使用される質量分析(マススペクトル分析)の技術は当該分野において周知であり、例えば、丹羽、最新のマススペクトロメトリー、化学同人、1995;Modern NMR Spectroscopy:A guide for Chemists,J.K.M.Sanders and B.K.Hunter (2nd Ed.,Oxford University Press,New York,1993);Spectrometric Identification of Organic Compounds,R.M.Silverstein,G.Clayton Bassler,and Terrence C.Morill (5th Ed.,John Wiley & Sons,New York,1991)などを参照することができる。
本発明は上記のように、医療以外にも、食品検査、検疫、医薬品検査、法医学、農業、畜産、漁業、林業などで、生体分子の検査が必要なものに全て適応可能である。本発明においては特に、食料の安全目的のための(たとえば、BSE検査)使用も企図される。
(検査)
本発明の化合物、組成物および方法は、種々の糖鎖の検出に使用することができ、検出する糖鎖の種類は特に限定されないことから種々の検査、診断、鑑定、鑑別にも用いることができる。そのような検出される糖鎖としては、例えば、ウイルス病原体(たとえば、肝炎ウイルス(A、B、C、D、E、F、G型)、HIV、インフルエンザウイルス、ヘルペス群ウイルス、アデノウイルス、ヒトポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパルボウイルス、ムンプスウイルス、ヒトロタウイルス、エンテロウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、HTLVを含むがそれらに限定されない)の遺伝子;細菌病原体(たとえば、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ菌、ヘリコバクターピロリ菌、カンピロバクター、コレラ菌、赤痢菌、サルモネラ菌、エルシニア、淋菌、リステリア菌、レプトスピラ、レジオネラ菌、スピロヘータ、肺炎マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアを含むがそれらに限定されない)の遺伝子、マラリア、赤痢アメーバ、病原真菌、寄生虫、真菌などに特異的な糖鎖の検出に用いることができる。
あるいは、本発明はまた、生化学検査データを検出するために用いられ得る。生化学検査の項目としては、コリンエステラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ロイシンアミノペプチターゼ、γ−グルタミルトランスペプチターゼ、クレアチニンフォスキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アミラーゼなどの糖鎖が関連すると考えられるデータ項目を挙げることができるがそれらに限定されない。
このように、本発明の方法、装置およびシステムは、例えば、診断、法医学、薬物探索(医薬品のスクリーニング)および開発、分子生物学的分析(例えば、アレイベースの糖鎖分析)、糖鎖特性および機能の分析、薬理学、グリコミクス、環境調査ならびにさらなる生物学的および化学的な分析において使用され得る。
(好ましい実施形態の説明)
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
1つの局面において、本発明は、アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物を1または2以上含む、アルデヒド基を有する化合物を含有する試料を質量分析するための組成物を提供する。本発明の組成物は、アルデヒドを含有する試料を質量分析する際に有用である。本発明の組成物に含まれる、アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物は、その官能基の存在に起因してアルデヒド基を含有する化合物と特異的に反応し得、それにより、アルデヒド基を有する化合物を「標識」し得る。本発明の組成物に含まれる「標識化合物」は、イオン化を促進する官能基として、例えば、グアニジニウム基または4級窒素を有するオニウム(アンモニウム)を有し、かつ計算値で5以上と規定される高いモル屈折特性を有するため、質量分析のイオン化プロセスにおいて非常に効率的にイオン化されるという利点を有する。すなわち、これらの標識化合物で標識されたアルデヒド基を有する化合物もまた、質量分析のイオン化プロセスにおいて効率的にイオン化され、結果としてアルデヒド基を有する化合物のMSスペクトルにおけるピークの相対強度が増す。加えて、過剰の標識試薬の存在により、標識されたアルデヒド基を有する化合物のピーク強度は維持したまま、それ以外の分子のイオン化を大幅に抑制し、従って、本発明の組成物を使用して調製した試料は、クロマトグラフィー等の分離工程を経なくても、直接質量分析に供することが可能である。本発明の標識化合物により標識された糖鎖の検出感度は典型的にはfmolのオーダーであり、既存のプロテオームの感度レベルと同等以上である。イオン化を促進する官能基としてグアニジニウム基を有する場合には、シアル酸を含有するような酸性糖鎖も中性糖鎖と同等の感度で検出することができる。酸性糖鎖と中性糖鎖の高感度検出を同等に可能にする標識試薬は、これまで存在しなかった。
本発明において、「質量分析するための組成物」とは、質量分析に直接または間接的に関連して使用される組成物を意味する。この組成物は、例えば、被検体化合物を含む試料を質量分析のために前処理するために使用され得、必ずしも質量分析計に直接導入される試料に限定されない。
本発明の組成物において、アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物(本明細書において「標識化合物」とも呼ばれる)は、単独で含まれてもよいし、異なる構造を有する(すなわち、異なる分子量を有する)1つ以上の標識化合物と一緒に含まれてもよい。異なる2種以上の標識化合物が使用される場合、本発明の組成物を使用して調製した試料に対して測定したMSスペクトルにおいて、2種以上の標識化合物の分子量差に対応する1種以上の既知の分子量差を有するピークの組が観測されることとなり、試料中の被検体化合物の同定が容易になる。従って、特に、ノイズが存在する試料の場合に試料中の被検体化合物の同定が容易になる。
一実施形態において、アルデヒド基を有する化合物は、糖または糖鎖である。この糖または糖鎖は、試料中に遊離した(すなわち、還元末端がある)状態で存在しても、試料中に糖鎖含有物質(例えば、多糖類、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質など)として存在し、質量分析前の任意の時点で糖鎖含有物質から分解または誘導された糖または糖鎖であってもよい。
本発明の組成物は、任意成分として、溶媒またはマトリックス試薬を含み得る。すなわち、標識化合物は、溶液もしくは懸濁液の状態で存在し得る。溶液または懸濁液の溶媒としては、水、有機溶媒(単独でも混合物でもよい)(例えば、アルコール、エーテル、アセトニトリル等が挙げられるがこれらに限定されない)、または含水有機溶媒が使用され得る。マトリックス試薬またはマトリックス試薬と他の溶媒との混合物を反応溶媒として使用することもできる。溶媒またはマトリックス試薬は、好ましくは、ケト基を含む物質は実質的に含まない。なぜなら、ケト基を含む物質が有意に含有されている場合、流体中のアルデヒド基と本発明の物質との反応が充分に進まないからである。標識化合物は、溶液または懸濁液の状態で保存されて、被検体化合物を含有する試料と直接接触されてもよいし、揮発性溶媒またはマトリックス試薬で希釈されてから試料と接触されてもよい。あるいは、標識化合物は、ニート(固体または液体)状態で保存され、試料との接触の前に溶媒またはマトリックス試薬で希釈されてもよい。
本発明の組成物は、緩衝剤、保存剤等の他の添加剤を任意に含有し得るが、好ましくは、本発明の組成物は、質量分析において被検体化合物の検出を妨害する物質、または標識化合物と被検体との反応を妨害する物質を含まない。
本発明の組成物に含まれる化合物において、アルデヒド基と特異的に反応する官能基は、好ましくは、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基、システイン残基などまたはそれらの誘導体であり、より好ましくは、−O−NH(R)、−C(=X)−NH−NH、または−CH(−NH)−X−SH(式中、Rは水素原子またはアルキル、Xは酸素原子または硫黄原子、およびXはメチレンまたはエチレン)で表される基である。
モル屈折の計算値については、一般に、モル屈折の計算値が高いほど、イオン化効率か高くなる傾向がある。従って、本発明においては、モル屈折のより高い化合物を使用することが有利である。好ましい実施形態において、モル屈折の計算値は、5以上であり、より好ましくは、6以上であり、さらに好ましくは7.0以上であり、さらにより好ましくは8.0以上であり、なおさらにより好ましくは9.0以上であり、最も好ましくは10.0以上である。モル屈折値の上限については、アルデヒド基との特異的反応を妨害しない分子構造であれば特に制限はないが、溶解度、合成の困難さ等を考慮して選択され得る。
好ましい実施形態において、イオン化を促進する官能基は、グアニジニウム基または4級窒素を有するオニウム(アンモニウム)基である。
「アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物」(標識化合物)とは、分子中にアルデヒド基と特異的に反応する基を少なくとも1つ、およびイオン化を促進する官能基を少なくとも1つ有し、かつその分子のモル屈折計算値が5以上である化合物をいう。当業者であれば、本明細書の開示と技術常識とを考慮して、「アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物」を適宜選択または設計し得、それらを合成するかまたは化学品供給業者から購入することにより入手し、そして使用することができる。
一実施形態において、この標識化合物は、アルギニンまたはアルギニン誘導体であり、好ましくはアルギニンカルボキシ末端をヒドラジド基またはヒドロキシルアミノ基に誘導した化合物である。別の実施形態において、この標識化合物は、アルギニン残基のN末端に1つのアミノ酸単位を伸長したジペプチド骨格を有し、アルデヒド基と特異的に反応する官能基を分子内に有する、ジペプチド誘導体であり得る。好ましい実施形態において、このジペプチド誘導体は、下式:
Z−AA−Arg−Y
で表され得る。式中、AAはアミノ酸残基であり、Zは、好ましくは水素原子、アリールオキシ、アリールカルボニル、またはアリールアルキルオキシカルボニルであり得、より好ましくは、水素原子、ベンゾイル、またはベンジルオキシカルボニルであり得る。C末端置換基Yは、好ましくはヒドロキシ、アルキルオキシ、アリールオキシ、−NH−NHであり得る。
好ましい実施形態において、「アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基(グアニジニウム基)を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物」は、一般式(I):
で表される。
式(I)において、Rは、単独または隣接するカルボニル基と共に「アルデヒド基と特異的に反応する官能基」を構成しても「アルデヒド基と特異的に反応する官能基」でなくてもよい。好ましくは、Rは、単独または隣接するカルボニル基と共に「アルデヒド基と特異的に反応する官能基」を構成する。より好ましくは、Rは−NH−NHまたは式:
で表される基であり、ここで、Rは単独または隣接するカルボニル基と共に「アルデヒド基と特異的に反応する官能基」を構成しても「アルデヒド基と特異的に反応する官能基」でなくてもよい。好ましくは、Rは、単独または隣接するカルボニル基と共に「アルデヒド基と特異的に反応する官能基」を構成する。より好ましくは、−NH−NHである。
式(I)において、Rは単独または隣接するアミノ基と共に「アルデヒド基と特異的に反応する基」を構成しても「アルデヒド基と特異的に反応する基」でなくてもよいが、好ましくは、「アルデヒド基と特異的に反応する基」以外の基であり、より好ましくは、Rは、好ましくは水素原子、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールアルキルオキシカルボニルまたはアミノ酸残基であり得、さらにより好ましくは、水素原子、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、または式:
で表される基である。ここで、Rはフェニル、4−ヒドロキシフェニルまたはインドリルで表される基である。ここで、Rは単独または隣接するアミノ基と共に「アルデヒド基と特異的に反応する基」を構成しても「アルデヒド基と特異的に反応する基」でなくてもよいが、好ましくは、「アルデヒド基と特異的に反応する基」以外の基であり、より好ましくは、Rは、好ましくは水素原子、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールアルキルオキシカルボニルまたはアミノ酸残基であり得、さらにより好ましくは、水素原子、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、または式:
で表される基である。ここで、Rは、好ましくは、アリール、またはヘテロアリールであり、より好ましくは、フェニル、4−ヒドロキシフェニルまたはインドリルであり;Rは、好ましくは、水素原子、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニルであり、より好ましくは、水素原子、ベンゾイル、またはベンジルオキシカルボニルである。
本発明の化合物、または本発明の組成物もしくは方法において使用される標識化合物は、一般に、当該分野で知られるプロセスにより調製される。特に、本発明の標識化合物が、アミノ酸残基(好ましくは、アルギニン残基)を含む場合には、ペプチド合成の分野で知られる合成技術(アミノ酸の官能基化、保護・脱保護反応、ペプチド結合形成反応等)を使用して合成し得る。例として、ジペプチド構造を含む化合物は、カルボキシ末端にZ基を導入したアミノ酸(Z−AA)を、任意のペプチド結合形成反応(例えば、N−メチルモルホリンおよびギ酸イソブチルを使用する)によりカルボキシ末端をエステルに変換したアルギニン(例えば、Arg−OMe)と反応させてジペプチド骨格を形成し、次いで、必要に応じてアルギニン残基のエステルをアルデヒド基と特異的に反応する官能基に置換し得る(例えば、ヒドラジンを用いてヒドラジドに誘導し得る)。同様のプロセスを繰り返すことにより、トリペプチド骨格を有する化合物も合成し得る。
別の実施形態において、本発明の組成物または方法において有用な標識化合物は、分子内に4級窒素基とアルデヒド基と特異的に反応する基とを含む化合物である。これら3つの部分構造は、それぞれ互いに直接結合されてもアルキレン基などの連結基を介して連結されてもよい。好ましい実施形態において、この標識化合物は、含窒素ヘテロアリール部分(例えば、インドール、キノリン等)を含む。より好ましい実施形態において、この標識化合物は、4級アンモニウム部分と含窒素ヘテロアリール部分とが直接結合または低級アルキレン基で連結され、その含窒素ヘテロアリール基とアルデヒド基と特異的に反応する基(例えば、ヒドラジド)とが直接結合または低級アルキレン基で連結された構造を有する化合物である。4級窒素含有部分としては、例えば、ジアルキルアンモニウム基、トリアルキルアンモニウム基、ピリジニウム基が挙げられるがこれらに限定されない。このような4級窒素含有標識化合物の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
このような4級窒素を有するオニウム(アンモニウム)標識化合物の対アニオンは、アルデヒド基との特異的反応に不利に影響しなければ、任意の無機アニオンまたは有機アニオンであり得るが、溶解度およびアンモニウム塩の安定性、入手・合成の容易さ等を考慮して選択され得る。対アニオンとしては、例えば、ハロゲン化物イオン(例えば、Cl、Br、またはI)、パークロレート、テトラフルオロボレート、スルフェート、ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
本発明の化合物、または本発明の組成物もしくは方法において使用される標識化合物は、一般に、当該分野で知られるプロセスにより調製されるが、このような4級窒素を有する化合物もまた、公知の合成技術(例えば、アミノ基の4級化反応、ヘテロアリールへの官能基導入等)を使用して合成され得る。例として、4窒素含有標識化合物は、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基)を有するアンモニウム化合物を、購入または合成し、ヒドラジンと反応させてヒドラジド誘導体とすることにより得られる。
本発明の化合物、または本発明の組成物もしくは方法において使用される標識化合物は、公知の化合物ライブラリー(例えばAvailable Chemical directory)からモル屈折の計算値が5以上である化合物を検索により選択し、それらの化合物がアルデヒド基と特異的に反応する基を含有していない場合は、適切な官能基変換反応によりアルデヒド基と特異的に反応する基を導入するか、または公知の合成経路において、出発物質として、アルデヒド基と特異的に結合する官能基を有するかもしくはアルデヒド基と特異的に反応する基に変換可能な基を有するものを選択することにより得られる。
別の好ましい実施形態において、「アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物」は、以下:
1,2−ジオレイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン[Toronto Research Chemicals]、
1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン[Avanti Polar Lipids, Inc.]、
Fmoc−Gln(Trt)−OH(Fmoc−N−γ−trityl−D−glutamine)[NOVABIOCHEM]、
1,2−ジステアロイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン[Avanti Polar Lipids, Inc.]、
1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(1,2−DIPALMITOYL−3−TRIMETHYLAMMONIUM−PROPANE)[参考文献:国際公開第WO01/032218A1号パンフレット;CAN 134:344613 AN 2001:338387 CAPLUS]、
1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(1,2−DIPALMITOYL−3−TRIMETHYLAMMONIUM−PROPANE)[参考文献:国際公開第WO95/11670A1号パンフレット;CAN 123:93286 AN 1995:698951 CAPLUS]、
10−ノニルアクリジンオレンジ[Fluka]、
2,4,6−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ピラニリウム[SciFinder Registry Number:201415−58−9]、
1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン[参考文献:国際公開第WO01/032218A1号パンフレット;CAN 134:344613 AN 2001:338387 CAPLUS]、
1,2−ジミリストイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン、
デヒドロコリダリン[参考文献:特開平7−010764号公報;CAN 122:196955 AN 1995:452260 CAPLUS]、
N−[2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]メチレン,N−{2−[2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)]メチレン−1−メチルヒドラジノ}エチルメタナミニウム(Methanaminium, N−[2−hydroxy−3−(2−propenyl)phenyl]methylene,N−{2−[2−hydroxy−3−(2−propenyl)phenyl]methylene−1−methylhydrazino}ethyl)、
ケレリスリン[Apin Chemicals]、
イソデスモシン[SIGMA]、
デスモシン[MP Biomedicals Product List]、
パルマチン[Apin Chemicals]、
5−(3−メトキシ−フェニル)−3,8−ジニトロ−ベンゾ[c]シンノリン、
サンギナリン[Apin Chemicals]、
ベンゼトニウム[Fluka]、
ノバシン(NOVACINE)(4,6−Methano−6H,14H−indolo[3,2,1−ij]oxepino[2,3,4−de]pyrrolo[2,3−h]quinoline, strychnidinium)[参考文献:Biochem.Physiol.Alkaloide,Int.Symp.,4th(1972),Meeting Date 1969,379−86]、
N−ベンジル−4−スチルバゾリウム[KOEI Chemical]、
N,N,N−トリメチルスフィンゴシン[参考文献:FEBS letters(1995 Jun 26),367(2),205−9]、
N,N,N−トリメチルフィトスフィンゴシン[参考文献:欧州特許出願公開第1291340号明細書;CAN 138:215282 AN 2003:201513 CAPLUS]、
N,N,N−トリメチルスフィンガニン[SciFinder Registry Number:474943−87−8]、
AAMC(2H−1−Benzopyran−3−ethanaminium, N,N−diethyl−7−methoxy−N,4−dimethyl−2−oxo−)[参考文献:国際公開第WO00/004008A1号パンフレット;CAN 132:119571 AN 2000:68445 CAPLUS]、
N−(1,4−ジフェニル−2−オキソ−ブタ−3−エニリデン),N−メチルメタナミニウム(Methanaminium,N−(1,4−diphenyl−2−oxo−but−3−enylidene),N−methyl)、
(1,1,2,2,3,3,4,4−オクタメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ナフチル)トリメチルアンモニウム[SALOR]、
からなる群から選択される化合物もしくはその塩、またはこれらの化合物においてアルデヒド基と特異的に反応する官能基を置換した化合物である。[ ]内にこれらの化合物の入手先、参考文献またはその他の情報を記載した。これらの化合物は、いずれもイオン化を促進する官能基として4級窒素を有するオニウム部分を有し、かつ5以上のモル屈折を有しており、これらの化合物骨格にアルデヒド基と特異的に反応する基を導入することにより、本発明の標識化合物として有用な化合物が得られる。アルデヒド基と特異的に反応する基の導入は、化合物のモル屈折を有意に低下(例えば、5未満にする)しない限り、任意の様式で行われ得る。これらの化合物の合成は、公知化合物であってかつ分子内にアルデヒド基と特異的に反応する基を有する場合は、上で示した入手先から購入するかまたはそれぞれ参考文献に記載の公知の合成法により合成して直接本発明において使用される。骨格が公知であるがアルデヒド基と特異的に反応する基を有していない場合には、官能基変換によりアルデヒド基と特異的に反応する基を導入するか、または出発物質として、アルデヒド基と特異的に反応する基またはアルデヒド基と特異的に反応する基に変換可能な基を有する化合物を使用して、公知の合成方法に従って、合成し得る。
別の局面において、本発明は、以下の新規化合物に関する:
これらの本発明の化合物は、質量分析においてアルデヒド基を有する被検体化合物(例えば、糖または糖鎖)の標識試薬として非常に有用である。本発明の化合物は、分子内にアルデヒド基と特異的に反応する官能基を有しているため、複雑な混合物中においても糖鎖等のアルデヒド基を有する化合物と特異的に反応し得る。すなわち、本発明の化合物でアルデヒド基含有化合物を標識し得る。本発明の化合物は、高いCMR値を有しているため、本発明の化合物で標識された化合物(標識された被検体化合物)は、質量分析に供すると、効率よくイオン化され得、それによりたとえ被検体化合物が複雑な混合物中に存在していても、目的の被検体化合物の分子量を検出し得るという利点を有する。
本発明の化合物および本発明の組成物に使用される標識化合物は、業者から市販されるか、または有機化学の当業者であれば、市販の出発物質および試薬を用いて、一般的な合成技術により合成することができる。例えば、アルギニン残基を含む化合物については、通常のペプチド合成において使用される官能基化、ペプチド結合生成、保護・脱保護反応等を組み合わせて合成され得、そして分離、精製および同定され得る。これらは当業者の技術範囲内である。例として、本発明の化合物は、以下の実施例において詳細に記載するように合成され得る。
(モル屈折の計算値(Calculate Molar Refractivity)(CMR))
本発明において有用な代表的な標識化合物のCMR値を以下に示す:
ZWRh 14.0828
ZYRh 13.1184
ZFRh 12.9653
EHIEP 9.75
BRh 8.0414
HEITA 7.82
Rh 5.0307
Girard’sT(従来技術) 3.73
これらのCMR値は、CSChem3Dに搭載されたBioByte Corp社提供による計算機能を使用して算出した。
上記の表において使用される化合物の略号(本明細書全体を通して使用される)は、以下の各化合物に対応する:
別の局面において、本発明は、以下の工程:
1)アルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である1または2以上の標識化合物と、アルデヒド基を有する被検体化合物を含有する試料とを、該標識化合物と該被検体化合物とが反応し得る条件下で接触して、被検体化合物を標識する工程、および
2)工程1)で得られた試料の質量分析を行う工程
を包含する、標識された被検体化合物の分子量を測定する方法に関する。
本発明の方法における被検体化合物は、アルデヒド基を有する化合物であれば特に限定されないが、好ましい実施形態において、上記被検体化合物は、糖または糖鎖である。
標識化合物と被検体化合物とが反応し得る条件は、アルデヒド基と特異的に反応する官能基が、被検体化合物のアルデヒド基と特異的に反応する条件である。この反応条件は、反応温度、反応時間、標識化合物および被検体化合物の濃度、反応媒体(溶媒、マトリクス溶液等の流体)、反応容器、pH、塩濃度、圧力などのパラメータを適切に設定することにより、当業者に適宜選択され得る。
本発明の方法において、標識化合物と被検体化合物との反応の温度は、標識化合物および被検体化合物の分解を引き起こさず、かつアルデヒド基と官能基との反応が特異的な様式で進行する限り、任意の温度であり得るが、好ましくは、10℃〜200℃、より好ましくは、40℃〜100℃、なおより好ましくは70℃〜100℃の範囲である。
本発明の方法において、標識化合物と被検体化合物との反応の時間は、標識化合物および被検体化合物の分解を引き起こさず、かつアルデヒド基と官能基との反応が特異的な様式で進行する限り、任意の時間であるが、好ましくは、0.1時間〜3時間、より好ましくは、0.5時間〜2時間、なおより好ましくは0.5時間〜1時間の範囲である。
本発明の方法において、標識化合物と被検体化合物との反応のpHは、標識化合物および被検体化合物の分解を引き起こさず、かつアルデヒド基と官能基との反応が特異的な様式で進行する限り、任意の時間であるが、好ましくは、反応液のpHは、3〜9、より好ましくは4〜8、なおより好ましくは、6〜8である。
上述した方法により、被検体化合物のアルデヒド基と標識化合物の「アルデヒド基と特異的に反応する基」とが反応して、被検体化合物に標識化合物が結合した化合物が得られる。アルデヒド基と標識化合物中のアルデヒド基と特異的に反応する官能基とが反応すると、例えば、オキシム結合またはヒドラゾン結合など(これらに限定されない)が形成される。従って、本発明の方法の標識する工程において得られた試料中には、糖もしくは糖鎖部分が、例えばオキシムまたはヒドラゾンのような結合を介して標識部分(標識化合物中のアルデヒド基と特異的に反応する基以外の部分)に連結された化合物が存在することとなり、質量分析工程では、この化合物由来のピーク(分子イオンピークおよびフラグメントピークを含む)が観測され得る。
本発明の方法における質量分析には、任意のイオン化手法(例えば、エレクトロスプレー(ESI)法、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法)を使用する当該分野一般的に利用される任意の質量分析方法が利用できる。本発明の方法における質量分析には、任意の質量分離方式(例えば、飛行時間型(TOF)、四重極型、磁場型、)が使用され得る。好ましい実施形態において、質量分析は、MALDI−TOF MSにより行われる。
好ましくは、質量分析工程においてマトリックス試薬が使用される。マトリックス試薬は、一般的に質量分析に使用されるものであれば、使用可能であるが、好ましくは、ケト基を含む物質は実質的に含まない。なぜなら、ケト基を含む物質が有意に含有されている場合、流体中のアルデヒド基と本発明の物質との反応が充分に進まないからである。したがって、好ましい実施形態において、質量分析に供される試料は、ケト基を含む物質を含まない。好ましいマトリックス試薬としては、2,5−ジヒドロキシベンゾイックアシッド、α−シアノ−4−ヒドロキシ−ケイ皮酸、シナピン酸、trans−3−インドール−アクリル酸、1,5−ジアミノ−ナフタレン、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、9−ニトロ−アントラセン、2−ピコリン酸、3−ヒドロキシ−ピコリン酸、ニコチン酸、アントラニル酸、5−クロロ−サリチル酸、2’−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、ジスラノール、および3−アミノ−キノリンが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましい実施形態において、マトリックス試薬は、2,5−ジヒドロキシベンゾイックアシッドである。
本発明の方法において、標識化合物は、アルデヒド基を有する被検体化合物を含有する試料とニート(固体または液体)で、または溶液もしくは懸濁液の状態で接触され得る。溶液または懸濁液の溶媒としては、水、有機溶媒(単独でも混合物でもよい)(例えば、アルコール、エーテル、アセトニトリル等が挙げられるがこれらに限定されない)、または含水有機溶媒が使用され得る。マトリックス試薬またはマトリックス試薬と他の溶媒との混合物を反応溶媒として使用することもできる。標識化合物と被検体化合物との反応の際の濃度と、質量分析に供される試料の濃度とは、同じであっても異なってもよく、それぞれ反応条件および測定条件が適切になるように適宜選択され得る。
本発明の方法に使用される試料は、前述のとおりであるが、1つの実施形態では、糖ペプチドを含む試料または糖もしくは糖鎖とペプチドとを含む試料である。ペプチドを含む試料の場合、ペプチドのために糖鎖を分析することが困難であるが、本発明の方法によれば、標識化合物の添加によりペプチドのピークの相対強度が小さくなり、それによりペプチドのピークが実質的に検出されなくなり、糖または糖鎖のみのピークを容易に検出することができる。
本発明の方法において、質量分析に供される試料は、標識化合物と被検体化合物を含む試料との反応液の一部または全部をその反応液を含む容器から、例えばシリンジ、ピペット、または自動サンプリング装置等の手段を介して質量分析計に導入してもよいし、反応液を移すことなく質量分析用のプレート(例えば、MALDI用384マイクロプレート)上で反応を行って直接分析することもできる。
好ましい実施形態において、試料は、
糖タンパク質をプロテアーゼで消化する工程、および
2)消化された糖タンパク質の糖鎖を遊離させる工程、により得られ、そして被検体化合物が、遊離された糖鎖である。
さらに別の局面において、本発明は、以下の工程:
1)糖タンパク質をプロテアーゼで消化する工程、
消化された糖タンパク質の糖鎖を遊離させる工程、
3)遊離された糖鎖およびアルデヒド基と特異的に反応する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である1または2以上の標識化合物を反応させ、糖鎖を標識する工程、および
4)質量分析を行う工程
を包含する糖タンパク質の糖鎖を同定する方法に関する。
本発明の方法において使用され得るプロテアーゼには、一般に糖タンパク質の処理に使用されてタンパク質部分のペプチド結合を切断を触媒し得る任意のプロテアーゼが含まれる。好ましいプロテアーゼとしては、例えば、トリプシン、リジルエンドペプチダーゼ、アルギニルエンドペプチダーゼ、キモトリプシンが挙げられる。
糖タンパク質をプロテアーゼで消化する工程の条件については、生化学の当業者であれば、温度、反応時間、pH、塩濃度等のパラメーターを消化反応が適切に進行するように適宜選択し得る。
本発明の方法の好ましい実施形態において、糖タンパク質をプロテアーゼで消化した後、消化された糖タンパク質から糖鎖部分を遊離させる(すなわち、還元末端を露出させる)ための処理を行う。この処理工程において、好ましくは、ペプチドに結合した非還元末端を切断し得るように、N−グリコシダーゼが使用される。しかしながらN−グリコシダーゼには限定されず、種々のグリコシダーゼが使用可能であり、特定のグリコシダーゼを単独または複数(同時かまたは規定された順序)で使用することにより、糖鎖配列に関する情報が得られる。
一実施形態において、プロテアーゼで消化する工程、糖鎖を遊離させる工程、および標識化合物と反応させる工程は、単一の容器(すなわち、ワンポット)で行われる。代替の実施形態において、これらの工程の間に、被検体化合物を実質的に損失しない濾過等の比較的単純な精製操作を行うこともできる。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[新規標識化合物合成法]
((3−(2−(ヒドラジノカルボニル)エチル)−2−インドリル)トリメチルアンモニウム(HEITA)の合成)
ヨウ化(3−(2−(メトキシカルボニル)エチル)−2−インドリル)トリメチルアンモニウム(Sigma−Aldrich) 21.7mg(55.9umol)を2.8mLのMeOHに溶解し(20mM)、ヒドラジン1水和物500uL(10.3nmol)を加え、室温で16時間撹拌した。Nガスで溶媒留去し、トルエンを加えて共沸を繰り返してヒドラジンを除去した後、TLC(展開溶媒 クロロフォルム/メタノール/酢酸/水=50:50:12:12)で原料のスポットが消失し、新たなスポットを認めた。MALDI−TOFによる解析により、目的物のMイオンをm/z261に計測した。
(3−Et−1−(2−(2−ヒドラジノカルボニルメチル−1H−インドール−3−イル)−エチル)−ピリジニウム(EHIEP)の合成)
3−Et−1−(2−(2−メトキシカルボニルメチル−1H−インドール−3−イル)−エチル)−ピリジニウム パークロレート(Sigma−Aldrich)11.1mg(26.2umol)を1.31mLのMeOHに溶解し(20mM)、ヒドラジン1水和物300uL(6.2nmol)を加え、室温で16時間撹拌した。Nガスで溶媒留去し、トルエンを加えて共沸を繰り返してヒドラジンを除去した後、TLC(展開溶媒 クロロフォルム/メタノール/酢酸/水=50:50:12:12)で原料のスポットが消失し、新たなスポットを認めた。MALDI−TOFによる解析により、目的物のMイオンをm/z323に計測した。
(Z−Trp−Argヒドラジド(ZWRh)、Z−Tyr−Argヒドラジド(ZYRh)の合成)
Z−アミノ酸(Z−TrpまたはZ−Tyr)(2.5mmol)のテトラヒドロフラン(6ml)溶液を−20℃に冷却した。ついでN−メチルモルホリン(3.0mmol)とギ酸イソブチル(3.0mmol)を添加し、溶液を室温に戻し、15分攪拌することで混合酸無水物を調製した。反応溶液を再び0℃へ冷却し、別の反応容器にてArg−OMe−2HCl(3.0mmol)を水(3ml)に溶解し、炭酸水素ナトリウム(3.0mmol)を添加することにより調製したArg−OMe溶液を混合し1時間攪拌した。反応用液を減圧濃縮し、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロフォルム/メタノール=5:1)により精製することでZ−AA−Arg−OMeを得た。
ZWR−OMe5.4mg(5.9umol)を531uLのMeOHに溶解し(20mM)、ヒドラジン1水和物100uL(1.0nmol)を加え、室温で4時間撹拌した。Nガスで溶媒留去し、トルエンを加えて共沸を繰り返してヒドラジンを除去した後、TLC(展開溶媒 クロロフォルム/メタノール=1:1)で原料のスポットが消失し、新たなスポットを認めた。MALDI−TOFによる解析により、目的物の[M+H]イオンをm/z509に計測した。
ZYR−OMe5.2mg(6.2umol)を536uLのMeOHに溶解し(20mM)、ヒドラジン1水和物100uL(1.0nmol)を加え、室温で4時間撹拌した。Nガスで溶媒留去し、トルエンを加えて共沸を繰り返してヒドラジンを除去した後、TLC(展開溶媒 クロロフォルム/メタノール=1:1)で原料のスポットが消失し、新たなスポットを認めた。MALDI−TOFによる解析により、目的物の[M+H]イオンをm/z486に計測した。
(Z−Arg−ヒドラジド(Z−Rh)の合成)
Arg−OMe(261mg,1.0mmol)を水(5ml)に溶解し、炭酸水素ナトリウム(161mg,2.0mmol)とZクロリド(313μl,1.0mmol)添加し室温で12時間攪拌した後、反応溶液をクロロフォルムで希釈した。反応混合物を飽和重曹水、飽和食塩水の順で洗浄し、減圧濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロフォルム/メタノール=5:1)により精製することでZ− Arg−OMeを得た。ZR−OMe3.0mg(9.3umol)を465uLのMeOHに溶解し(20mM)、ヒドラジン1水和物100uL(1.0nmol)を加え、室温で4時間撹拌した。Nガスで溶媒留去し、トルエンを加えて共沸を繰り返してヒドラジンを除去した。MALDI−TOFによる解析により、目的物の[M+H]イオンをm/z323に計測した。
(ベンゾイル−Arg−ヒドラジド(BRh)の合成)
N−α−ベンゾイル−L−アルギニンメチルエステル炭酸水素塩(Sigma) 4.5mg (10.3umol)を770uLのMeOHに溶解し(20mM)、ヒドラジン1水和物 280uL (3.9nmol)を加え、室温で4時間撹拌した。Nガスで溶媒留去し、トルエンを加えて共沸を繰り返してヒドラジンを除去した。MALDI−TOFによる解析により、目的物の[M+H]イオンをm/z 293に計測した。
(実施例1:糖タンパク質のトリプシンおよびペプチドN−グリコシダーゼ消化物の3−Et−1−(2−(2−ヒドラジノカルボニルメチル−1H−インドール−3−イル)−エチル)−ピリジニウム標識による糖鎖発現解析)
鶏卵由来卵白アルブミン(シグマ社製)を0.1%の界面活性剤RapiGest SF(ウオーターズ社製)を含む50mM炭酸水素アンモニウムに溶解し、トリプシン(プロメガ社製)を添加し、37℃で1時間温置した。反応液を一部とり、マトリクス溶液(2,5−ジヒドロキシ安息香酸、10mg/mL 30%アセトニトリル溶液)で10倍に混合し、MALDI−TOF MS(Bruker社製、UltraFLEX)で質量分析した結果を図1(a)に示す。反応液を100℃で3分加熱し、室温まで冷却した後ペプチドN−グリコシダーゼ(ロシュ社製)を添加し、37℃で一晩温置した。反応液を一部とり、マトリクス溶液で10倍に混合し、MALDI−TOF MSで質量分析した結果を図1(b)に示す。反応液を一部とり、3−Et−1−(2−(2−ヒドラジノカルボニルメチル−1H−インドール−3−イル)−エチル)−ピリジニウム(EHIEP)を加え、90℃で1時間加熱した。冷却後、反応液をマトリクス溶液(2,5−ジヒドロキシ安息香酸、10mg/mL 30%アセトニトリル溶液)で10倍に混合し、MALDI−TOF MS(Bruker社製、UltraFLEX)で直接質量分析することによって、標識糖鎖のみからなるスペクトルを得た結果を図1(c)に示す。図1(a)に示したペプチドパターンからタンパク質の同定が可能であり、図1(b)では全く検出できなかった糖鎖のシグナルが図1(c)では独占的にスペクトル上に検出された。
(実施例2:電気泳動(SDS−PAGE)で分離したヒトα−酸性糖タンパク質のトリプシンおよびペプチドN−グリコシダーゼ消化物のZFRh標識による糖鎖発現解析)
ヒトα−酸性糖タンパク質(シグマ社製)を定法に従い、SDS−PAGEで分離し、クマシーブルーで染色後に、染色されたゲル上のスポットを切り出した。十分量の0.2M重炭酸アンモニウム−アセトニトリル(50:50)で洗浄し、乾燥後トリプシン(プロメガ社製)の50mM炭酸水素アンモニウム溶液を添加し、37℃で16時間温置した。反応液を100℃で3分加熱し、室温まで冷却した後ペプチドN−グリコシダーゼ(ロシュ社製)を添加し、37℃で一晩温置した。反応液を一部とり、ZFRhを加え、90℃で1時間加熱した。冷却後、反応液をマトリクス溶液(2,5−ジヒドロキシ安息香酸、10mg/mL 30%アセトニトリル溶液)で10倍に混合し、MALDI−TOF MS(Bruker社製、UltraFLEX)で直接質量分析することによって、標識糖鎖のみからなるスペクトルを得た。 (実施例3:MALDI用384マイクロプレート(Bruker社製)上での糖タンパク質由来糖鎖の標識による糖鎖発現解析)
ウシ血清由来アシアロフェツイン(シグマ社製)を0.1%の界面活性剤RapiGest SF(ウオーターズ社製)を含む50mM炭酸水素アンモニウムに溶解し、トリプシン(プロメガ社製)を添加し、37℃1時間温置した。100℃で3分加熱し、室温まで冷却した後ペプチドN−グリコシダーゼ(ロシュ社製)の50mM炭酸水素アンモニウムを滴下し、37℃で一晩温置した。反応液の一部をMALDI用384マイクロプレートに滴下し、3−Et−1−(2−(2−ヒドラジノカルボニルメチル−1H−インドール−3−イル)−エチル)−ピリジニウムおよびマトリクス溶液(2,5−ジヒドロキシ安息香酸、10mg/mL 30%アセトニトリル溶液)を直接滴下し、90℃1時間加熱した。冷却後、MALDI−TOF MS(Bruker社製、UltraFLEX)で直接質量分析することによって、標識糖鎖のみからなるスペクトルを得た。
このように、本発明では、複雑な混合物中で糖鎖と選択的に反応し、質量分析において標識糖鎖を優先的にイオン化し、他の分子種のイオン化を抑制させる標識試薬を提供する。分離精製過程を一切排除した糖鎖解析プロトコルが可能となる。また、本発明の組成物を含む、質量分析のためのアッセイキットもまた本発明により企図される。本発明の方法により、複雑な混合物中の糖鎖解析を行うシステムが提供される。パラレルに酵素反応、化学反応を行うための反応プレート、および緩衝液、試薬溶液等の分注、サンプリングを行うためのリキッドハンドリング装置等も企図される。
実施例1における(a)トリプシン処理後;(b)ペプチドN−グリコシダーゼ処理後;および(c)EHIEPとの反応後の試料のMALDI−TOF MSスペクトル。

Claims (18)

  1. アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、かつモル屈折の計算値が5以上である化合物を1または2以上含む、アルデヒド基を有する化合物を含有する試料を質量分析するための組成物。
  2. 前記アルデヒド基を有する化合物が、糖または糖鎖である請求項1記載の組成物。
  3. 前記アルデヒド基と特異的に反応する基が、−O−NH(R)、−C(=X)−NH−NH、または−CH(−NH)−X−SH(式中、Rは水素原子またはアルキル、Xは酸素原子または硫黄原子、およびXはメチレンまたはエチレン)で表される基である請求項1記載の組成物。
  4. 前記イオン化を促進する官能基が、グアニジニウム基または4級窒素を有するオニウムである請求項1記載の組成物。
  5. 前記アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物が、一般式(I):
    [式中、Rは−NH−NHまたは式:
    (式中、Rは−NH−NH)で表される基;
    は水素原子、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、または式:
    (式中、Rはフェニル、4−ヒドロキシフェニルまたはインドリル;Rは水素原子、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、または式:
    (式中、Rはフェニル、4−ヒドロキシフェニルまたはインドリル;Rは水素原子、ベンゾイル、またはベンジルオキシカルボニル)で表される基)で表される基]
    で表される化合物;または
    式:
    で表される化合物である、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である化合物が、以下:
    1,2−ジオレイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、
    1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、
    Fmoc−N−γ−トリチル−D−グルタミン、
    1,2−ジステアロイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン、
    1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、
    1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン、
    10−ノニルアクリジンオレンジ、
    2,4,6−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ピラニリウム、
    1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、
    1,2−ジミリストイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン、
    デヒドロコリダリン、
    N−[2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]メチレン,N−{2−[2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)]メチレン−1−メチルヒドラジノ}エチルメタナミニウム、
    ケレリスリン、
    イソデスモシン、
    デスモシン、
    パルマチン、
    5−(3−メトキシ−フェニル)−3,8−ジニトロ−ベンゾ[c]シンノリン、
    サンギナリン、
    ベンゼトニウム、
    4,6−メタノ−6H,14H−インドロ[3,2,1−ij]オキセピノ[2,3,4−de]ピロロ[2,3−h]キノリン (ストリキニジニウム)、
    N−ベンジル−4−スチルバゾリウム、
    N,N,N−トリメチルスフィンゴシン、
    N,N,N−トリメチルフィトスフィンゴシン、
    N,N,N−トリメチルスフィンガニン、
    N,N−ジエチル−7−メトキシ−N,4−ジメチル−2−オキソ−2H−1−ベンゾピラン−3−エタナミニウム、
    N−(1,4−ジフェニル−2−オキソ−ブタ−3−エニリデン),N−メチルメタナミニウム、および
    (1,1,2,2,3,3,4,4−オクタメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ナフチル)トリメチルアンモニウム、
    からなる群から選択される化合物もしくはその塩、または該化合物においてアルデヒド基と特異的に反応する官能基を置換した化合物もしくは該化合物中の官能基をアルデヒド基と特異的に反応する官能基に変換した化合物である、請求項1に記載の組成物。
  7. 以下の式:
    で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
  8. 以下の工程:
    1)アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である1または2以上の標識化合物と、アルデヒド基を有する被検体化合物を含有する試料とを、該標識化合物と該被検体化合物とが反応し得る条件下で接触して、該被検体化合物を標識する工程、および
    2)工程1)で得られた試料の質量分析を行う工程、
    を包含する、標識された被検体化合物を分析する方法。
  9. 前記被検体化合物が糖鎖である請求項8記載の方法。
  10. アルデヒド基と特異的に反応する官能基およびイオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である1または2以上の標識化合物が請求項7記載の化合物である、請求項8記載の方法。
  11. 前記標識化合物と前記被検体化合物とを10℃〜200℃で反応させる請求項8記載の方法。
  12. 前記標識化合物と前記被検体化合物とを0.1時間〜3時間で反応させる請求項8記載の方法。
  13. 前記標識化合物と前記被検体化合物との反応の反応液のpHが3〜9である請求項8記載の方法。
  14. 前記質量分析をMALDI−TOF MSにより行う請求項8記載の方法。
  15. 前記MALDI−TOF MSにより質量分析を行う工程において使用されるマトリックス試薬が、2,5−ジヒドロキシベンゾイックアシッド、α−シアノ−4−ヒドロキシ−ケイ皮酸、シナピン酸、trans−3−インドール−アクリル酸、1,5−ジアミノ−ナフタレン、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、9−ニトロ−アントラセン、2−ピコリン酸、3−ヒドロキシ−ピコリン酸、ニコチン酸、アントラニル酸、5−クロロ−サリチル酸、2’−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)安息香酸、ジスラノール、および3−アミノ−キノリンからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
  16. 前記マトリックス試薬が、2,5−ジヒドロキシベンゾイックアシッドである、請求項14に記載の方法。
  17. 前記試料が、
    1)糖タンパク質をプロテアーゼで消化する工程、および
    2)消化された糖タンパク質の糖鎖を遊離させる工程、により得られ、
    前記被検体化合物が、遊離された糖鎖である、請求項8に記載の方法。
  18. 以下の工程:
    1)糖タンパク質をプロテアーゼで消化する工程、
    2)消化された糖タンパク質の糖鎖を遊離させる工程、
    3)遊離された糖鎖およびアルデヒド基と特異的に反応する官能基、イオン化を促進する官能基を有し、モル屈折の計算値が5以上である1または2以上の標識化合物を反応させ、糖鎖を標識する工程、および
    4)標識された糖鎖の質量分析を行う工程
    を包含する糖タンパク質の糖鎖を同定する方法。
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