JPWO2005061444A1 - フラーレン誘導体 - Google Patents

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紳一郎 西村
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薫明 阿部
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Abstract

糖鎖の種類に関係なく特異的に糖鎖を結合し得る部位とフラーレン核を含むフラーレン誘導体を提供し、質量分析の際に雑多な生体分子の分子量領域から糖鎖のシグナルのみを大きくシフトさせるとの原理を利用した新しい糖鎖分析手法を提供すること。さらに、糖鎖捕捉フラーレン誘導体の膜特性を利用した糖鎖捕捉担体を作製し、糖鎖または糖鎖含有物質を効率よくおよび/または天然に存在する状態に忠実に分離、精製、濃縮または分析する方法、ならびにそれに供するシステム、装置を提供すること。本発明は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含む新規なフラーレン誘導体、ならびにそのフラーレン誘導体を含む糖鎖捕捉担体を用いて試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する方法を提供する。

Description

本発明は、糖鎖または糖鎖含有物質(例えば、糖タンパク質、糖脂質)の分離、濃縮、精製および分析に有用である糖鎖捕捉フラーレン誘導体に関する。本発明はまた、そのようなフラーレン誘導体を利用した糖鎖または糖鎖含有物質の分離、濃縮、精製および分析(例えば、マススペクトル法による)のための方法、装置およびシステムに関する。本発明はさらに、本発明の方法により精製された糖鎖組成物を用いた、医薬(例えば、ワクチン)、試薬、糖鎖アレイに関する。本発明はまた、本発明の方法により精製された糖鎖組成物を利用する、診断、治療、鑑別方法を提供する。
糖鎖とは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸、これらの誘導体である単糖がグリコシド結合で繋がった分子などを含む総称である。糖鎖は、非常に多様性に富んでおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。これらの糖鎖の機能研究または構造解析等の糖鎖解析技術の一つとして、電気泳動法により糖鎖を解析する方法が広く知られている(特許文献1など)。この方法は糖鎖泳動パターンを可視化して解析を行う方法である。
電気泳動ゲルで泳動された糖鎖を、半乾燥ブロット移動装置を用いて、膜に転写する方法が実施されている(特許文献2参照)。この方法では、蛍光検出の後、さらに、電気泳動により分離した糖鎖をPVDF(ポリビニリデンジフルオライド)の陰荷電誘導体などの膜へ転写して、膜上の糖鎖を解析することが試みられている。タンパク質または脂質と結合した状態でのみ行われていた糖鎖とレクチンあるいは抗体などとの反応を、糖鎖を膜へ転写することにより、タンパク質または脂質に影響されることなく、糖鎖とレクチンあるいは抗体などとの反応を行って、糖鎖を調べることが可能となっている。次に膜上の糖鎖バンドを切り取り、糖鎖を質量分析法へ応用することも可能である。しかし、この方法では、転写を電気的移動によって行うため、荷電された糖鎖は容易に膜を通過し、その結果、転写された糖鎖量は少量となるので正確な定量および解析に適さない。
自然界に広く分布している複合糖質の糖鎖は生体内の重要な構成成分であり、細胞間の相互作用に深く関わっていることが明らかにされつつある。このため様々な糖鎖構造の微量解析の技術が開発されており、これらの技術は、糖鎖の切り出し、糖鎖の分離、精製、糖鎖の標識などの工程を適宜組み合わせたものであるが、これらは非常に煩雑な手間を要する。特に切り出した後の混合物に微量に含まれる糖鎖の分離精製過程は困難を伴い、多くの経験が必要となる。一般的によく使われる手法としてイオン交換樹脂、逆相クロマトグラフィー、活性炭、ゲル濾過クロマトグラフィーなどがある。
糖タンパク質等の糖鎖構造を解析するための方法としては、糖タンパク質の糖鎖を遊離させて、液体クロマトグラフィーを用いて分離分析すると、その糖鎖構造に応じた溶出挙動をとる原理を利用して、この溶出挙動を既知糖鎖の溶出挙動データと比較することにより、未知試料の糖鎖構造を解析する方法がある。その他、一般的によく使われる手法として、イオン交換樹脂、逆相クロマトグラフィー、活性炭、ゲル濾過クロマトグラフィーなどがある。
しかしながら、これらの分離手法はいずれも、糖特異的に認識する方法ではないので、他成分(ペプチドまたはタンパク質など)のコンタミネーションが大きく、また糖鎖の構造によって回収率に違いが出てくるとの欠点がある。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の手法を応用した手法もある。2種類のモードのHPLCを組み合わせた二次元HPLC(非特許文献1を参照)による方法、および、試料を予めエキソグリコシダーゼなどの混合酵素系列で処理し、処理した試料をHPLCで分析することにより糖鎖構造を決定する方法(非特許文献2を参照)などを挙げることができる。これらは、糖鎖選択的な化学反応を行い、糖鎖を蛍光標識することによって糖鎖の検出を可能としている。さらに、HPLC分析において、微量な糖鎖を効率よく解析でき現在最も頻繁に使用されている手法として、ピリジルアミノ化(PA化)法がある。微量糖鎖をゲル濾過カラムクロマトグラフィーなどにより粗精製した後、アミノピリジンを還元剤存在下で糖鎖の還元末端にカップリングさせる。PA化された糖鎖は蛍光を有するので感度よくHPLCによって検出でき、経験的なピーク位置から糖鎖の構造を推定できる。以上のいずれの手法も、HPLCのクロマトグラムの保持時間を指標に糖鎖構造を決定する方法である。一方、糖識別能を有するレクチンを固定化したカラムを利用する分析方法(非特許文献3参照)についても報告されている。
しかしながら、HPLCの手法を利用した分析方法は、(1)ゲル濾過およびHPLCの溶出位置に対してあらかじめ経験が必要で、熟練者の同伴を要する、(2)糖鎖を蛍光あるいはラジオアイソトープなどで標識する必要があり時間と手間がかかる、(3)一回に一試料の解析しかできず、多数の試料を同時に解析することはできない、(4)HPLCの条件設定が微妙で保持時間がずれ、不正確になる可能性が高い、(5)HPLCをポストカラムリアクターまたはプレカラムリアクターと組み合わせたものは試薬を大量に消費する、(6)レクチン固定化カラムを用いると、レクチンの糖に対する親和性の変化のため吸着する糖ペプチドにも影響が生じる可能性がある、などの問題点を抱えている。
最終的には、得られた糖に関する確実な情報を得るためには、NMRスペクトルまたはMSスペクトルによる同定が必要である。特にMSスペクトルはナノからマイクログラムのオーダーの微少なサンプル量で分子量同定が可能であるため糖鎖解析の有力な手法となっている。しかしながら、タンパク質の分解物や脂質などの雑多な生体分子もそれらの分子量の領域に数多く含まれるので、糖鎖のシグナルはそれら夾雑物のために埋もれてしまい、質量分析による分析の際に糖鎖の精製が不可欠であるというのが現状である。
このように、糖鎖を直接、その種類に関係なく分離、分析することを可能にする技術はいまだに存在せず、そのような技術の中でも特に、糖鎖解析の最も有力な手法の1つであるマススペクトル法において、この手法特有の上記欠点を克服した新しい技術は、ポストゲノム、ポストプロテオミクス時代において非常に重要であり、その開発は渇望されている。
特表平5−500563号公報 特表平5−503146号公報 Anal.Biochem.,171,73(1988)富谷ら 化学と生物 32(10)661(1994)小西ら Anal.Biochem.,164,374(1987)原田ら
本発明の課題は、糖鎖の種類に関係なく特異的に糖鎖を結合し得る部位とフラーレン核を含むフラーレン誘導体を提供し、質量分析の際に、雑多な生体分子(タンパク質の分解物や脂質などの)の分子量領域から糖鎖のシグナルのみを大きくシフトさせるとの原理を利用した新しい糖鎖分析手法を提供することにある。
本発明の別の課題は、上記の糖鎖捕捉フラーレン誘導体を含む糖鎖捕捉担体を用いて、糖鎖または糖鎖含有物質を効率よくおよび/または天然に存在する状態に忠実に分離、精製、濃縮または分析する方法、ならびにそれに供するシステム、装置を提供することにある。
本発明の別の課題は、試料中に天然に存在する状態の糖鎖成分をその存在比率を反映させた形で利用することにある。
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものである。
本発明者らは鋭意研究を進める中で、例えば1000程度に分子量制御可能なフラーレンに着目し、糖鎖捕捉性能をもつカルベンをフラーレン核に付加したフラーレン誘導体を開発した。本発明の上記課題は、糖鎖と特異的に結合し得るフラーレン誘導体を提供することによって解決された。このフラーレン誘導体は、好ましくは、糖鎖による相違が実質的にないことにより、上述の課題のほぼすべての問題点を解決する。
本発明は、上記目的を達成するために、以下を提供する。
(1)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と、フラーレン核とを含む、フラーレン誘導体。
(2)任意の糖鎖と所定のレベル以上で特異的に相互作用し得る、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(3)前記糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と糖鎖との相互作用のレベルは、前記フラーレン核と糖鎖との相互作用のレベルよりも高い、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(4)前記フラーレン誘導体は、実質的にすべての糖鎖を含まない物質に対する相互作用のレベルよりも、糖鎖に対する相互作用のレベルが高い、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(5)前記フラーレン誘導体は、糖鎖以外の物質との非特異的相互作用を解離させる条件下に曝されるとき、少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存する、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(6)前記フラーレン誘導体と前記糖鎖との相互作用の程度は、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが少なくとも5eVである、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(7)任意の糖鎖と、最大と最小との間で、10倍以内の範囲内のレベルで特異的に相互作用し得る、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(8)前記糖鎖は、酸化された糖鎖および酸化されていない糖鎖を含む、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(9)前記糖鎖と、オキシム結合、ヒドラゾン結合、もしくはチオセミヒドラゾン結合またはチアゾリジン環を形成し得る官能基を含む、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(10)アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基を含む、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(11)以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Xは糖鎖捕捉部位であり、Yは親水性部位である]
を有するカルベンが前記フラーレン核の二重結合に付加した、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(12)前記カルベンのモノ付加体である、項目11に記載のフラーレン誘導体。
(13)前記糖鎖捕捉部位は、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基、チオセミカルバジド基およびシステイン残基ならびにそれらの誘導体からなる群より選択される官能基を含む、項目11に記載のフラーレン誘導体。
(14)前記親水性部位は、エステル基、4級アンモニウム塩および水酸基ならびにそれらの誘導体からなる群より選択される官能基を含む、項目13に記載のフラーレン誘導体。
(15)以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Rは、
−W−O−NH
−W−O−NH(CH)、
−W−O−W−O−NH
−W−O−W−O−NH(CH)、
−(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH
−(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH(CH)、
−W−C(=O)−NH−NH
−W−C(=S)−NH−NH
−W−NH−C(=O)−CH(NH)−W−SH、または
−W−NH−C(=S)−CH(NH)−W−SHであり;
およびWは、それぞれ独立してC1〜C12アルキレンまたはC2〜C12アルケニレンであり;
は、C1−C2アルキレンであり;
は、
−O−R
−O−(CH−N(R)(R)(R)、
−NH−CH−(CH−CH−O)−(CH−OH、または以下の式:
Figure 2005061444
で表される基であり;
は、低級アルキルであり;
、R、およびRは、それぞれ独立して、低級アルキルであり;
nは0〜10の整数であり、およびtは1〜3の整数である]
で表される置換基群から選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付加した、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(16)以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Rは、−(CH−O−NH、−(CH−O−NH(CH)、−(CH−O−(CH−O−NH、−(CH−O−(CH−O−NH(CH)、−(CH−CH−O)−(CH−O−NH、−(CH−CH−O)−(CH−O−NH(CH)、−(CH−C(=O)−NH−NH、−(CH−NH−C(=S)−NH−NH、または−(CH−NH−C(=O)−CH(NH)−(CH−SHであり;
は、−O−R、−O−(CH−N(R)(R)(R)、−NH−CH−(CH−CH−O)−(CH−OH、または以下の式:
Figure 2005061444
で表される基であり;
は、低級アルキルであり;
、R、およびRは、それぞれ独立して、低級アルキルであり;
nは0〜10の整数であり、mは1〜5の整数であり、pは1〜5の整数であり、aは1または2であり、rは1または2であり、およびtは1〜3の整数である]
で表される置換基群から選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付加した、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(17)前記フラーレン核は、純炭素フラーレンであるか、または以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Arはアリール、置換されたアリール、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールであり;QはCHまたはN原子であり;sは0〜3である]
で表される置換基が純炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体である、項目16に記載のフラーレン誘導体。
(18)QがN原子である場合、該N原子が低級アルキルによって4級化されている、項目17に記載のフラーレン誘導体。
(19)前記ヘテロアリールが、フラニル、チオフェニルまたはピリジルである、項目17に記載のフラーレン誘導体。
(20)以下の式:
Figure 2005061444
で表される置換基群から選択される置換基
(式中、Qは、CHまたはNであり;
sは0〜3であり;
は、
−W−O−NH
−W−O−NH(CH)、
−W−O−W−O−NH
−W−O−W−O−NH(CH)、
−(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH
−(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH(CH)、
−W−C(=O)−NH−NH
−W−C(=S)−NH−NH
−W−NH−C(=O)−CH(NH)−W−SH、
−W−NH−C(=S)−CH(NH)−W−SH、
−Z−Z−Z−Z−Z−O−NH
−Z−Z−Z−Z−Z−O−NH(CH)、
−Z−Z−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、
−Z−Z−Z−Z−CH(NH)−Z−SH、
−Z−O−Z−CH(NH)−Z−SH、
−Z−O−Z−O−NH
−Z−O−Z−O−NH(CH)、
−Z−O−Z−Z−Z−O−NH
−Z−O−Z−Z−Z−O−NH(CH)、
−Z−O−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、
−Z−O−Z−Z−CH(NH)−Z−SH、
−Z−Z−Z−Z−O−NH
−Z−Z−Z−Z−O−NH(CH)、
−Z−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、または
−Z−Z−Z−CH(NH)−Z−SHであり;
およびWは、それぞれ独立してC1〜C12アルキレンまたはC2〜C12アルケニレンであり;
は、C1〜C2アルキレンであり;
は、置換されていてもよいアリレンまたは置換されていてもよいヘテロアリレンであり;
は、含窒素複素環であり;
およびZは、それぞれ独立してC1−C12アルキレンであり;
は、−O−C(=O)、−O−C(=S)、−NH−C(=O)、−NH−C(=S)、−O−、または−S−であり;
は、C1−C2アルキレンであり;
nは1〜10の整数である)が前記フラーレン核の二重結合に付加した、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(21)
以下の式:
Figure 2005061444
で表される置換基群から選択される置換基
(式中、Qは、CHまたはNであり;
sは0〜3であり;
は、−(CH−O−NH、−(CH−O−NH(CH)、−(CH−CH−O)−(CH−O−NH、−(CH−C(=O)−NH−NH、−(CH−NH−C(=O)−CH(NH)−(CH−SH、ならびに以下:
Figure 2005061444
で表される基からなる群より選択され;
式中、WおよびW’は、それぞれ独立してCHまたはN原子であり;
Yは、O原子、S原子またはNHであり;
bは0または1であり、uは1〜5の整数であり、vは1〜5の整数であり、およびxは1〜3の整数である)が前記フラーレン核の二重結合に付加した、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(22)QがN原子である場合の該N原子が低級アルキルによって4級化されている、項目20または21に記載のフラーレン誘導体。
(23)少なくとも1000の分子量を有する、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(24)支持体上に平面展開可能である、項目1に記載のフラーレン誘導体。
(25)以下の工程:
A)以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Xは糖鎖捕捉部位であり、Yは親水性部位であり、Hは水素原子である]
で表される化合物から水素原子を脱離して、以下の式:
Figure 2005061444
で表されるカルベンを提供する工程;および
B)該カルベンと、フラーレン核とを、該カルベンが該フラーレン核の二重結合に付加し得る条件下で、接触させる工程、
を包含することを特徴とする、糖鎖捕捉部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を合成する方法。
(26)RN(R)CHCOOHと、R10CHOと、フラーレン核とを、接触させる工程[式中、Rは低級アルキルであり、Rは水素原子または低級アルキルであり、R10はC1〜C10アルキル、置換されたC1〜C10アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである]、
を包含することを特徴とする、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を合成する方法。
(27)以下の工程:
a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件下で、接触させる工程;
b)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との複合体を取り出す工程;および
c)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す工程、
を包含することを特徴とする、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する方法。
(28)以下の工程:
a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖とが反応し得る条件下で、接触させる工程;
b)所望のストリンジェンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す工程;および
c)該糖鎖捕捉担体と相互作用した物質を同定する工程、
を包含することを特徴とする、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する方法。
(29)a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が平面展開された支持体;および
b)糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料に由来する成分であって、該成分は該フラーレン誘導体に捕捉されている、成分、
を含むことを特徴とする、糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料の糖鎖レプリカ。
(30)以下の工程:
a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を支持体上に平面展開させる工程;
b)糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料を、該支持体に接触させる工程;および
c)該支持体の表面に存在する糖鎖を分析する工程、
を包含することを特徴とする、糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料上の糖鎖を分析する方法。
(31)以下の工程:
a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が平面展開された支持体を含む、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析するためのデバイスを用いて、該被験体に由来する試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する工程、
を包含することを特徴とする、被験体の検出または鑑別のための方法。
(32)以下の工程:
a)支持体を提供する工程;
b)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を該支持体上に所望の配列で配置する工程、
を包含することを特徴とする、糖鎖アレイを作製するための方法。
(33)糖鎖を含む試料を、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体で接触し、その後相互作用した試料中の糖鎖を分離することによって得られる、糖鎖含量が上昇した糖鎖組成物。
本発明によれば、質量分析の際に糖鎖捕捉フラーレン誘導体を使用することにより、夾雑物を含む雑多な生体分子(タンパク質の分解物や脂質など)の分子量領域から糖鎖由来のシグナルのみを所望の分子量だけ大きくシフトすることができる新しい糖鎖分析手法を提供することができる。この手法により、細胞または生体試料に由来する糖タンパク質、糖脂質などの複合糖脂質を効率よく分離・精製・濃縮し、夾雑するタンパク質、脂質などの成分を予め試料から除きとることができ、その結果、質量分析などの直接解析方法を容易にする。また、病理切片に由来する糖鎖を二次元像として写し取ることが可能になる。さらに、本発明により開示された糖鎖捕捉ポリマーを、in vivo酵素などとの組み合わせにより、適当な前処理を施した生体表面に接触させることにより、採取不可能であった腺組織に付属する管の細胞(乳管、胆管など)の内腔に由来する糖鎖を分取することができる。
本発明のフラーレン誘導体(7)の前駆体化合物(1)の合成経路。 本発明のフラーレン誘導体(7)の合成経路および糖鎖の捕捉。 本発明のフラーレン誘導体(11a)の合成経路。 本発明のフラーレン誘導体(11a、11b、12a、12b、13a、13b、14a、14b)。 本発明のフラーレン誘導体(15a、15b、16a、16b)。 本発明のフラーレン誘導体(11a)のマススペクトル。 本発明のフラーレン誘導体によるマンノースの捕捉を確認したマススペクトル。 本発明のフラーレン誘導体によるマンノトリオースの捕捉を確認したマススペクトル。 本発明のフラーレン誘導体によるマルトトリオースの捕捉を確認したマススペクトル。 本発明のフラーレン誘導体によるガラクトトリオースの捕捉を確認したマススペクトル。 本発明のフラーレン誘導体によるラクト−N−テトラオースの捕捉を確認したマススペクトル。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(用語)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書における「炭素クラスター」とは、フラーレンおよびカーボンナノチューブを含めたC分子の総称である。nは整数であり、炭素原子の個数を表す。
本明細書における「フラーレン」は、IUPAC(勧告 2002)での定義がそのまま適用され、20個以上の偶数個の炭素原子からなり12面の五角面と(n/2−10)枚の六角面を持つ閉多面体かご型分子、および20個以上の炭素原子を持ち炭素原子が全て三配位であるかご型分子を指す。
本発明における「フラーレン核」は、C60、C70、C76、C80、C84またはC120などの純炭素フラーレンであってもよいし、これら純炭素フラーレンが内部に金属(もしくは金属酸化物)を内包したものであってもよいし、任意の置換基で置換されたカルベンが原理上可能な範囲内の任意の個数で純炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体であってもよいし、上記カルベンの代わりに、フラーレンの二重結合に付加可能でかつ任意の置換基で置換された活性種が原理上可能な範囲内の任意の個数で純炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体であってもよいし、上記カルベンと上記活性種がそれぞれ独立して、原理上可能な範囲内の任意の個数で、純炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体であってもよいし、これらの混合物であってもよく、またこれらに限定されない。但し、この「カルベン」またはそれ以外の「活性種」の置換基は、この置換基と「糖鎖」との相互作用のレベルが、「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」と「糖鎖」との特異的相互作用のレベルを超えず、その特異的相互作用に不利に影響を及ぼさないように、選択され得る。また、この「置換」または「置換基」については、下記に示された通りである。本発明における「フラーレン核」として、供給および取り扱いの容易さの点から、C60、C70、C76、C80、C84またはC120などの純炭素フラーレンを使用することが好ましく、n=60の純炭素物質C60(通称:バッキーボール[buckyball]またはバックミンスターフラーレン[buckminster fullerene])を使用することが特に好ましい。本明細書における「フラーレン核」は、「フラーレン」と互換可能に使用され得る。
本明細書において「純炭素フラーレン」とは、炭素原子のみで構成されるフラーレン分子を意味する。この純炭素フラーレンは、本発明における「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体」のフラーレン核自体であるか、またはそのフラーレン核の一部を構成する。例えば、本発明における純炭素フラーレンの代表例であるC60純炭素フラーレンは、以下:
Figure 2005061444
の立体化学式で表すことができる。本明細書および図面における純炭素フラーレンは全て、便宜上、表の面のみが表示されており、裏の面の炭素構造は示していないが、本明細書および図面において、表の面のみで表示されたフラーレンは、表の面のほかに裏の面も有する立体構造体であることを意味する。
本明細書中における「フラーレン誘導体」は、「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」と「フラーレン核」とを、必ず含んでいる。このフラーレン誘導体は、「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」を有するカルベンまたはカルベン以外の活性種が「フラーレン核」に付加した付加体であるとも言い換えられ得る。従って、本明細書中における「フラーレン誘導体」は、「糖鎖捕捉フラーレン」と互換可能に使用され得る。本発明の「フラーレン誘導体」は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位を有するカルベンがフラーレン核の二重結合に付加した付加体であってもよいし、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位をカルベン以外の活性種がフラーレン核の二重結合に付加した付加体であってもよい。本発明では、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核との間の結合様式および反応機構は、特に限定されない。また、本明細書中における「フラーレン誘導体」は、塩を形成していてもよい。本発明の「塩」としては、製薬上許容される塩が好ましく、例えば無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基との塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩としては、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、乳酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩としては、アルギニン、リジン、オルニチン、それらの重合体などとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、それらの重合体などとの塩が挙げられる。
本発明の代表的なフラーレン誘導体として、図2の化合物(7)、図4の化合物(11a)、(11b)、(12a)、(12b)、(13a)、(13b)、(14a)、(14b)、図5の化合物(15a)、(15b)、(16a)および(16b)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書における「カルベン」とは、炭素上の2つの脱離基が1,1−脱離して生じる不安定中間体であり、炭素上に2個の非結合電子をもつ。カルベンは、通常、以下:
Figure 2005061444
の右式で表される一重項カルベン(sp混成軌道)または左式で表される三重項カルベン(sp混成軌道)のいずれかの形態をとり得る(基礎有機反応論−反応機構からみた有機化学−橋本ら(1989))。また、フラーレン核へのカルベンの付加は、モノ付加以外に、ジ付加、トリ付加などのポリ付加が可能である。例えば、モノ付加の場合、以下:
Figure 2005061444
の模式図に表されるように、通常、〔5,6〕付加または〔6,6〕付加のいずれかの付加体をとり得る(例えば、特開平9−25246号公報を参照)。この模式図から明らかなように、〔5,6〕モノ付加体は、5員環を構成する炭素間単結合にカルベンが付加した構造を有している。このような〔5,6〕モノ付加体において、X基は6員環側に偏向し、Y基は5員環側に偏向した構造となっている。また、この逆もあり得る。一方、〔6,6〕モノ付加体である場合、X基およびY基は等価となっている。
本明細書における「活性種」とは、フラーレン核の二重結合に付加し得る化学種全てを指す。この活性種は、任意の置換基で置換され得るが、置換基の種類は、該置換基と「糖鎖」との相互作用のレベルが、「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」と「糖鎖」との特異的相互作用のレベルを超えず、その特異的相互作用に不利に影響を及ぼさないように選択され得る。この「置換」または「置換基」については、下記に示された通りである。
本発明において糖鎖捕捉フラーレン誘導体を提供するに至るまでの概念は、フラーレン以外の炭素クラスター、例えば「カーボンナノチューブ」にも適用可能である。すなわち、本発明の原理を応用すれば、糖鎖の種類に関係なく特異的に糖鎖を結合し得る部位とカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ誘導体を提供することができる。
本発明において「カーボンナノチューブ」とは、1枚または複数枚のグライファイトのシートが円筒上に丸まってできた構造体を指す。カーボンナノチューブの構造は、直径、カイラル角および螺旋方向(右巻きまたは左巻き)の3つのパラメーターによって決定され、代表的な構造の型として、<5,5>アームチェアー型、<9,0>ジグザグ型および<9,1>カイラル型が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において「糖鎖」とは、単位糖(単糖および/またはその誘導体)が1つ以上連なってできた化合物をいう。単位糖が2つ以上連なる場合は、各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸ならびにそれらの複合体および誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。したがって、本明細書では、糖鎖は、「多糖(ポリサッカリド)」、「糖質」、「炭水化物」と互換可能に使用され得る。また、特に言及しない場合、本明細書において「糖鎖」は、糖鎖および糖鎖含有物質の両方を包含する。
本明細書において「単糖」とは、これより簡単な分子に加水分解されず、一般式C2nで表される化合物をいう。ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9および10であるものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノースおよびデコースという。一般に鎖式多価アルコールのアルデヒドまたはケトンに相当するもので、前者をアルドース,後者をケトースという。
本明細書において「単糖の誘導体」とは、単糖上の一つ以上の水酸基が別の置換基に置換され、結果生じる物質が単糖の範囲内にないものをいう。そのような単糖の誘導体としては、カルボキシル基を有する糖(例えば、C−1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D−グルコースが酸化されたD−グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D−グルコースが酸化されたD−グルクロン酸)、アミノ基またはアミノ基の誘導体(例えば、アセチル化されたアミノ基)を有する糖(例えば、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンなど)、アミノ基およびカルボキシル基を両方とも有する糖(例えば、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸)、N−アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などがあるがそれらに限定されない。あるいは、ヘミアセタール構造を形成した糖において、アルコールと反応してアセタール構造のグリコシドもまた、単糖の誘導体の範囲内にある。
本明細書において「糖鎖含有物質」とは、糖鎖および糖鎖以外の物質を含む物質をいう。このような糖鎖含有物質は、生体内に多く見出され、例えば、生体中に含有される多糖類の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「糖タンパク質」としては、例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、抗体、ワクチン、レセプター、血清タンパク質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「糖鎖を含まない物質」とは、糖鎖を全く含まないかまたは検出可能に含まれない物質をいう。そのような糖鎖を含まない物質としては、例えば、単純タンパク質、単純脂質などの糖鎖以外の有機化合物が包含されるがそれに限定されない。
本明細書において糖鎖または糖鎖含有物質に対する「特異性」または「特異的である」とは、ある物質の性質について言及され、その物質が糖鎖または糖鎖含有物質に対して相互作用をすることができるが、糖鎖および糖鎖含有物質以外の物質に対する相互作用が低いことをいう。
本明細書において「糖鎖と特異的に相互作用し得る」とは、糖鎖に対して、糖鎖を含まない物質に対するよりも高い特異性をもって相互作用することができる能力をいう。好ましくは、そのような糖鎖を含まない物質は、生体内の物質を含み得る。そのような能力は、糖鎖以外の物質との非特異的相互作用を解離させる条件下に曝されるとき、少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存することを判定することによって確認することができる。具体的には、例えば、そのような能力は、結合後の糖鎖−対象物質複合体をMALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが少なくとも約5eV、好ましくは少なくとも約10eV、最も好ましくは少なくとも約15eVであり、糖鎖を含まない物質と対象物質との複合体を同様の条件で照射したときには、有意な量多くの割合で相互作用が破壊されることによって確認することができる。本明細書において「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」とは、その部位の少なくとも一部または全体が、糖鎖に対して、糖鎖を含まない物質に対するよりも高い特異性をもって相互作用することができる能力を有することを意味する。「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」は、「糖鎖捕捉部位」と互換可能に使用され得る。具体的には、RおよびRで表わされる基が挙げられる。
本明細書において「親水性部位」とは、「フラーレン核」に親水性を付与する官能基であれば何でもよく、特に限定されない。
本明細書において「相互作用」とは、2つの物体について言及するとき、その2つの物体が相互に力を及ぼしあうことをいう。そのような相互作用としては、例えば、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、疎水性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、相互作用は、共有結合である。本明細書において「共有結合」とは、当該分野における通常の意味で用いられ、電子対が2つの原子に共有されて形成する化学結合をいう。このような共有結合としては、例えば、オキシム結合、ヒドラゾン結合、チオセミヒドラゾン結合およびチアゾリジン環形成などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において相互作用などの「レベル」とは、その相互作用など強さを示す程度をいい、「強度」ともいい、糖鎖に対する特異性を判断するために使用され得る。そのような相互作用のレベルは、例えば、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーを用いることができる。
本明細書において「所定のレベル」とは、ある目的に応じて設定される糖鎖との特異的相互作用の程度をいい、糖鎖に対する特異性を判断するために有用である任意のレベルをいう。そのような所定のレベルは、測定条件により変動するが、例えば、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが少なくとも少なくとも約5eV、好ましくは少なくとも約10eV、最も好ましくは少なくとも約15eVであることが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、そのような所定のレベルは、下限とともに上限を有し得る。従って、例えば、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが約5eV〜500eV、約10eV〜100eV、約15eV〜50eVなどの範囲内にあることが好ましくあり得る。あるいは、相対的に表現する場合、最大と最小との間のレベルの相違は、100倍以内、50倍以内、20倍以内、10倍以内、5倍以内、4倍以内、3倍以内、2倍以内、1.5倍以内の範囲内にあることが好ましくあり得る。
本明細書において、最大と最小との間の相互作用のレベルの「範囲」は、上述のような方法を用いて測定された相互作用レベルの最大値と最小値との間の範囲をいい、最大の値の最小値に対する倍数で表すことができる。この値が小さいほど特異性は均一であるといえる。
本明細書において「MALDI−TOF(MS)」とは、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization −Time−of−Flight(Mass Spectrometer)の略語である。MALDIとは、田中らによって見いだされ、Hillenkampらによって開発された技法である(Karas M.,Hillenkamp,F.,Anal.Chem.1988,60,2299−2301)。この方法では、試料とマトリクス溶液をモル比で(10−2〜5×10−4):1に混合した後、混合溶液を標的上で乾固し、結晶状態にする。パルスレーザー照射により、大きなエネルギーがマトリクス上に与えられ、(M+H)、(M+Na)などの試料由来イオンとマトリクス由来イオンとが脱離する。微量のリン酸緩衝液、Tris緩衝液、グアニジンなどで汚染されていても分析可能である。MALDI−TOF(MS)は、MALDIを利用して飛行時間を元に質量を測定するものである。イオンが一定の加速電圧Vで加速される場合、イオンの質量をm、イオンの速度をv、イオンの電荷数をz、電気素量をe、イオンの飛行時間をtとしたとき、イオンのm/zは、
m/z=2eVt/L
で表すことができる。このようなMALDI−TOF測定には、島津/KratosのKOMPACT MALDI II/IIIなどを使用することができる。その測定の際には、製造業者が作成したパンフレットを参照することができる。MALDI−TOFの測定時に使用されるレーザー照射の照射エネルギーを本明細書において「解離エネルギー」という。
本明細書において、「酸化されていない糖鎖」とは、その糖鎖中に酸化された単糖も酸化された単糖の誘導体を含まないものをいう。単糖の誘導体に言及されるとき、酸化されていない単糖の誘導体とは、好ましくは、単糖に由来する部分が酸化されていない単糖の誘導体をいう。
本明細書において、「酸化された糖鎖」とは、その糖鎖中に酸化された単糖も酸化された単糖の誘導体を含むものをいう。酸化された単糖は上述したとおりであり、例えば、D−グルコン酸などが挙げられるがそれに限定されない。単糖の誘導体に言及されるとき、酸化された糖鎖の誘導体とは、好ましくは、単糖に由来する部分が酸化された糖鎖をいう。
本明細書において「支持体に結合可能である」とは、物質の性質に言及するとき、支持体に結合することができる能力をいう。
本明細書において使用される「支持体」および「基板」は、本明細書において、特に言及しない場合互換的に用いられ、別の物質を支持するように用いられるとき、流体(特に液体などの溶媒)の存在下でその別の物質を支持することができる材料(好ましくは固体)をいう。支持体の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明に物質に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられるがそれに限定されない。好ましくは、支持体は、常温(0℃〜30℃の間のいずれか)において固体であることが好ましい。より好ましくは、精製、濃縮、分離または分析がおこなわれる環境において固体状態を保つことが好ましい。そのような環境は、0℃未満であり得、あるいは30℃以上であり得る。高温としては、例えば、好ましくは100℃未満が挙げられ得る。支持体はまた、本発明の物質と相互作用をすることが想定される場合、強酸の存在下で、本発明の物質との相互作用が、通常少なくとも一部保持されること、より好ましくは半分以上が保持されること、さらに好ましくはほとんどの部分が保持されることが有利であり得る。本明細書において「基板」は、糖鎖チップについて用いられる場合には、チップとして適切な形状の支持体をさすことがある。
支持体として使用するための材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)、脂質などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、支持体は、疎水性表面を有する。支持体は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を複数使用することできるがそれに限定されない。支持体として使用するための材料としてはまた、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。ナイロン膜などを用いた場合は、簡便な解析システムを用いて結果を分析することができる。高密度のものを解析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。ある実施形態では、支持体としては、例えば、架橋したリポソーム、架橋ポリマーまたは非架橋ポリマーを用いることができるがそれらに限定されない。支持体は、磁性を有していてもよい。磁性を有することにより、磁性を用いた精製を行うことが容易となる。好ましい実施形態では、本発明において用いられる支持体は、架橋したリポソーム、架橋ポリマーまたは非架橋ポリマーで、水または有機溶媒中で分散可能な粒子で平均粒径が0.001ミクロン以上数百ミクロン未満のものであってもよい。
本発明のフラーレン誘導体は、上記のような別の物質を支持体として用いてそれと結合させて用いることもできるが、本発明の物質そのものが支持体の役割を果たしていていてもよい。
本明細書において「アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基」とは、糖鎖が水溶液などの流体中で形成する環状のヘミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡ならびに糖が有するアルデヒド基およびジオール基において、アルデヒド基およびジオール基と反応して特異的かつ安定な結合をつくることができる性質を有する官能基をいう。このような官能基としては、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基、チオセミカルバジド基およびシステイン残基ならびにそれらの誘導体が挙げられるがそれらに限定されない。より好ましくは、そのような官能基は、ヒドロキシルアミノ基およびシステイン残基である。ヒドロキシルアミノ基と糖との連結様式(オキシム結合)は特に酸性に弱く、糖鎖捕捉担体から糖鎖を切り出す工程が容易に行えるという利点があり、システイン残基は、糖のアルデヒド基とチアゾリジン環を形成するからである。ここでいう「それらの誘導体」とは、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基またはチオセミカルバジド基の1個または2個以上の水素原子が下記に示す置換基によって置換された官能基を意味する。
本明細書において「流体」は、本発明の物質が、糖鎖と相互作用をする環境を提供することができる流体であればどのようなものでも使用することができる。好ましくは、そのような流体はケト基を含む物質は実質的に含まない。なぜなら、ケト基を含む物質が有意に含有されている場合、流体中のアルデヒド基と本発明の物質との反応が充分に進まないからである。したがって、ケト基を含む物質を含まない形態は必須ではないが、好ましい実施形態である。
したがって、本明細書において使用される流体は、糖を環状のヘミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡にもたらすようなものであることが好ましい。そのような流体としては、例えば、水溶液、有機溶媒およびこれらの混合物などが挙げられるがそれに限定されない。好ましくは、流体は水溶液である。
本明細書において「平面展開する」とは、本発明のフラーレン誘導体について言及されるとき、膜状の形態をとることもしくは膜状の形態にすることをいう。そのような平面展開して形成された膜の形態としては、例えば、キャスト膜、単分子膜が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書において「キャスト膜」とは、キャスト法を用いて製造される膜をいい、そのようなキャスト膜は、フラーレン誘導体の材料を含む溶液をキャストし乾燥させることによって製造することができる。本明細書において「単分子膜」とは、気液界面もしくは固液界面に形成され得るnmオーダーの一分子層の膜を指す。本発明において、下記に示した「糖鎖捕捉担体」または「糖鎖レプリカ」を作製する際には、本発明のフラーレン誘導体を含む単分子膜を支持体に移しとるという手法がとられる。本発明では、上記の広義の意味での「単分子膜」の中でも特に、水面上に形成された本発明のフラーレン誘導体の単分子膜を水面上に形成し、任意の方法で固体基板上に移行させ累積してできるLangmuir−Blodgett膜(通称:LB膜)を採用することが好ましい。LB膜の形成方法の最も普遍的なものとして、一定表面圧に制御されている水面上単分子膜を横切って固体支持体(または固体基板)を垂直に上下させる技法が挙げられるが、これに限定されない。ほかの技法として、固体基板上に単分子膜を1層だけ固体支持体に移しとる水平付着法があるが、この方法も本発明において有用である。本発明において「累積」とは、固体支持体に単分子膜を移しとることを意味し、単分子膜が固体支持体に移しとられる回数は、一回であってもよいし、複数回であってもよい。単分子膜を固体支持体に水面上の膜状態または膜秩序を保ったまま累積するためには、当業者により様々な工夫がなされるが、少なくとも本発明のフラーレン誘導体が水面上で平面展開し、単分子膜を形成させる必要がある。そのためには、膜を構成するフラーレン誘導体は、両親媒性であることが好ましい。フラーレン核自体またはフラーレン核の構成成分である純炭素フラーレンは疎水性であるため、親水性の官能基が純炭素フラーレンに付加していることが好ましい。例えば、上記のようなX基とY基をもつカルベンをフラーレン核に付加させて本発明のフラーレン誘導体を得る場合は、少なくともいずれか一方の基が親水性であることが好ましい。さらに、フラーレン誘導体に付加した親水性基が例えば、正電荷(例えば、4級アンモニウム塩など)、または負電荷を有することが好ましい。親水性基が電荷を有すれば、その電荷と反対の電荷を有する官能基を有するモノマー単位から構成される水溶性高分子とポリイオンコンプレックスの形成が可能となる。このポリイオンコンプレックス化法は、膜の状態を保持したまま固体支持体上に膜を固定化することができ、さらに膜の物理的強度も増大するとの効果が得られる。このような効果が得られる限り、水溶性高分子の種類は特に限定されない。この手法は、下記の「糖鎖捕捉担体」または「糖鎖レプリカ」を構築する上で、大変有用である。
本明細書において「糖鎖捕捉担体」とは、糖鎖を捕捉するための担体をいう。そのような担体は、糖鎖を捕捉する分子に加え、担体として使用する部分を含む。糖鎖を捕捉する分子には、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を用いることができる。担体には、支持体を用いることもできるし、本発明の上記フラーレン誘導体そのものが担体としての働きを有していてもよい。
本明細書において「有機溶媒に不溶」とは、ある物質について言及するとき、有機化合物を含む溶媒に対して溶解しないかまたは実質的に溶解しない性質をいう。そのような有機溶媒としては、例えば、アルコール(メタノール、エタノールなど)、アセトン、アルカン(例えば、ヘキサン)などが挙げられるがそれらに限定されない。不溶であることは、その有機溶媒にその物質(溶質)を入れたときに、溶質1gまたは1mlを溶かすに要する溶媒量が1Lであること、好ましくは10L以上であることをいう。
本明細書において「自閉した」膜とは、膜の形状について言及するとき、リポソームのように球状、単層または多層に閉じている状態をいう。従って、そのような自閉した膜(例えば、脂質膜)としては、例えば、リポソームなどが挙げられるがそれに限定されない。
本明細書において、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を「分離」するとは、その糖鎖または糖鎖含有物質が、分離前に試料中に存在する状態から実質的に引き離すまたは精製することをいう。従って、試料から分離された糖鎖または糖鎖含有物質は、分離される前に含んでいた糖鎖または糖鎖含有物質以外の物質の含量が少なくとも低減している。
本明細書において、物質(例えば、糖鎖、核酸またはタンパク質などの生物学的因子)の「単離」とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の物質(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質である場合、糖鎖または糖鎖含有物質以外の因子、あるいは、目的とする糖鎖または糖鎖含有物質以外の糖鎖または糖鎖含有物質;核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」、糖鎖または糖鎖含有物質には、本発明の精製方法によって精製された糖鎖または糖鎖含有物質が含まれる。したがって、単離された糖鎖または糖鎖含有物質は、化学的に合成した糖鎖または糖鎖含有物質を包含する。
本明細書において、物質(例えば、糖鎖、核酸またはタンパク質などの生物学的因子)の「精製」とは、その物質に天然に随伴する因子の少なくとも一部を除去することをいう。したがって、精製および分離は、その形態が一部重複する。したがって、通常、精製された物質(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のような生物学的因子)におけるその物質の純度は、その物質が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)が、天然に随伴する因子が低減されている限り、濃縮されていない状態も「精製」の概念に包含される。
本明細書において物質(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のような生物学的因子)の「濃縮」とは、その物質が濃縮前に試料に含まれている含有量よりも高い濃度に上昇させる行為をいう。従って、濃縮もまた、精製および分離と、その概念が一部重複する。したがって、通常、濃縮された物質(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のような生物学的因子)は、その物質が通常存在する状態における不純物の含有量は低減されているが、目的とする物質の含有量が増加している限り、ある特定の不純物が増加していてもよく、「精製」されていない状態も「濃縮」の概念に包含される。
本明細書において「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件」とは、糖鎖捕捉担体と、糖鎖または糖鎖含有物質とが相互作用し得る(好ましくは、共有結合を形成する)のに十分な条件(例えば、緩衝剤、溶媒の極性、温度、pH、塩濃度、圧力など)をいう。このような条件を設定するのに必要なパラメータの設定は、当業者の技術範囲内であり、相互作用の種類、糖鎖または糖鎖含有物質の種類、糖鎖捕捉担体の種類(例えば、アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基)など相互作用に関連する諸パラメータを考慮することにより、当業者は、そのような条件を当該分野において周知の技術を用いて設定し、相互作用反応を行わせることができる。好ましい実施形態では、そのような条件は、糖鎖が水溶液などの流体中で形成する環状のヘミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡において、アルデヒド基と反応して特異的かつ安定な結合を形成させるような条件が挙げられるがそれに限定されない。あるいは、反応に供する流体にケト基が実質的に含まれていないこともまた1つの好ましい条件であり得る。そのような条件としては、例えば、pH5.6の酢酸緩衝液を常温常圧(例えば、20℃および1気圧)にて用いることなどが挙げられる。
本明細書において「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との複合体」とは、本発明の糖鎖捕捉担体と、糖鎖または糖鎖含有物質とが、相互作用をして複合体化したものをいう。好ましくは、そのような複合体は、本発明の糖鎖捕捉担体と、糖鎖または糖鎖含有物質とが共有結合している。従って、本明細書では、そのような共有結合によって2以上の部分が結合した物質もまた、複合体の概念に入る。
本明細書において、「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件」とは、本発明の糖鎖捕捉担体と、糖鎖または糖鎖含有物質との間に形成された相互作用(例えば、共有結合)が、少なくとも一部低減するようにさせる条件をいう。従って、上記相互作用が共有結合であるとき、「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件」は、糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との間に形成された共有結合が少なくとも一部、好ましくは全部を解除させる条件をいう。従って、このような条件としては、物理的手段(例えば、レーザーなど)、化学的手段(酸性条件)または生化学的手段(例えば、酵素)を用いることなどが挙げられるがそれらに限定されない。従って、この条件は、所望の糖鎖および糖鎖含有物質が識別可能な形態で分離される限り、どのような条件でもよく、所望の糖鎖または糖鎖含有物質が変性していてもよいが、好ましくは、変性させずに分離される、より好ましくは天然に存在する状態で分離されることが有利であり得る。このような条件は、具体的には、例えば、酸性条件に曝すことなどが挙げられ、好ましくは、プロトン型イオン交換樹脂、強カチオン交換樹脂と混合して分離することが簡便であり、有利であり得る。本発明において分離した結合物を物理的に切断するとは、糖鎖を分離する方法ならば、特に限定しないが、主として照射レーザーエネルギー強度を適宜調製することによりポリマーと糖鎖との結合を切ることをいう。
本明細書において、「糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件」とは、糖鎖含有物質において、糖鎖とそれ以外の物質(例えば、ペプチド、脂質など)との間に形成されている結合(例えば、共有結合)を除去するような条件をいう。従って、このような条件としては、物理的手段(例えば、レーザーなど)、化学的手段(酸性条件)または生化学的手段(例えば、グリコシダーゼなどの酵素)を用いることなどが挙げられるがそれらに限定されない。従って、この条件は、糖鎖含有物質の中の所望の糖鎖が識別可能な形態で分離される限り、どのような条件でもよく、所望の糖鎖は変性していてもよいが、好ましくは、変性させずに分離され、より好ましくは天然に存在する状態で分離されることが有利であり得る。このような条件は、具体的には、例えば、酸性条件に曝すことなどが挙げられ、好ましくは、プロトン型イオン交換樹脂、強カチオン交換樹脂と混合して分離することが簡便であり、有利であり得る。本発明において分離した結合物を物理的に切断するとは、糖鎖を分離する方法ならば、特に限定しないが、主として照射レーザーエネルギー強度を適宜調製することによりポリマーと糖鎖との結合を切ることをいう。従って、「糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件」は、「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件」と重複することもある。また、「糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件」は、アルデヒド基を遊離させる条件とも重複することもある。
本明細書において「容器」としては、流体を保持することができるような形状である限り、どのようなものでも使用することができる。容器の材料もまた、流体を保持することができ、本発明において行われる反応に耐え得るかまたはそのように加工することができる限り、どのような材料を用いてもよい。そのような材料は、常温(0℃〜30℃の間のいずれか)において固体であることが好ましい。より好ましくは、精製、濃縮、分離または分析がおこなわれる環境において固体状態を保つことが好ましい。そのような環境は、0℃未満であり得、あるいは30℃以上であり得る。高温としては、例えば、好ましくは100℃未満が挙げられ得る。そのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)、紙などが挙げられるがそれらに限定されない。そのような材料は、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。
本明細書において「コーティング」とは、支持体または容器にある特性を持たせるために施す表面加工または表面加工された物質をいう。そのようなコーティングは、例えば、耐水性、耐油性、耐有機溶媒性、耐酸性などを付与するために用いられる。そのようなコーティング材料としては、例えば、フッ素樹脂、シラン系水系塗料樹脂、官能基性有機シランカップリング剤および遷移金属カップリング剤などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明の糖鎖捕捉フラーレン誘導体をガラス基板または石英基板のような固体支持体に累積または結合させる場合、この支持体は官能基性有機シランカップリング剤または遷移金属カップリング剤で疎水処理コーティングされていることが好ましい。本発明のフラーレン誘導体の一部を構成するフラーレン核は疎水性であるため、フラーレン核と疎水処理コーティングされた支持体との間の疎水性相互作用により、フラーレン誘導体の単分子膜の支持体への累積が容易となり、しかもフラーレン誘導体の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位を糖鎖を含むか、または含むと予想される試料側、つまり支持体の反対側に向かせることが可能となる。有用な有用な官能基性有機シランカップリング剤の例として、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニル−トリアルコキシシラン、グリシドオキシプロピルトリアルコキシシランおよびウレイドプロピルトリアルコキシシランが挙げられる。好ましい官能基性有機シランカップリング剤には、A−187γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、A−174γ−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、A−1100γ−アミノプロピルトリエトキシシランシランカップリング剤、A−1108アミノシランカップリング剤およびA−1160γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(これらはそれぞれNew York,TarrytownのOSi Specialties,Inc.から市販されている)が挙げられる。適切な遷移金属カップリング剤として、チタニウム、ジルコニウム、イットリウムおよびクロムカップリング剤が挙げられる。適切なチタネートカップリング剤およびジルコネートカップリング剤は、Kenrich Petrochemical Companyから市販されている。適切なクロム錯体は、Delaware,WilmingtonのE.l.duPont de Nemoursから市販されている。アミノ含有Werner−型カップリング剤は、クロムのような三価核原子がアミノ官能基を有する有機酸と配位する錯体化合物である。当業者にとって公知の他の金属キレートおよび配位型カップリング剤が、本明細書において使用され得る。
本明細書において「試料中のアルデヒド基を遊離させる」とは、試料中に含まれるかまたは含まれると予測される糖鎖または糖鎖含有物質中のアルデヒドをむき出しにさせることをいう。試料中のアルデヒド基を遊離させることにより、その後、本発明の糖鎖と特異的に相互作用する物質と、その糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用反応の進行がより容易になる。あるいは、試料中のアルデヒド基を遊離させる条件に試料を曝すことにより、糖鎖含有物質中の糖鎖のみを分離して濃縮、精製または分析などを行うことができ、そのような状態が所望される場合、有利であり得る。
そのような試料中のアルデヒド基を遊離させるための条件としては、例えば、酵素処理および/または化学法による供プロトン反応が挙げられるがそれらに限定されない。そのような酵素処理としては、例えば、N−グリコシダーゼ(例えば、Flavobacterium meningosepticum由来の酵素をE.coli中で発現させたもの)、グリコペプチダーゼA(アーモンド)などの糖鎖遊離酵素により処理が挙げられるがそれに限定されない。本発明において用いられるこのような酵素には、植物、酵母、かび由来のグルコシダーゼ、好ましくはフラボバクテリウム由来のN−グルコシダーゼが包含されるがそれらに限定されない。化学法としては、例えば、ヒドラジン分解(液相または気相)が挙げられるがそれに限定されない。ヒドラジン分解では、例えば、試料(例えば、200〜1000μgの糖タンパク質含有試料)を凍結乾燥し(ネジ口バイアルまたはネジ口試験管を使用)、無水ヒドラジン(例えば、100〜200μlを加えて100℃で数時間ないし十数時間加熱する(例えば、ドライブロックヒーターまたはオーブンを使用)。その後、トルエンを数滴加え、デシケーターに試料バイアルを入れ、冷却トラップを付けた真空ポンプで数時間以上減圧しヒドラジンを共沸留去する。この共沸留去を数回繰り返し、ヒドラジンを完全に留去することによって、ヒドラジン分解が達成され、所望の糖鎖が分離される。
本明細書において、本発明の装置に用いられる「試料を導入する」とは、本発明の反応が起こるべき場所に、試料を移動させることをいう。試料導入部としては、試料を導入するのに適していれば、どのような形状のものを用いてもよい。また、試料を導入する方法としては、例えば、インジェクタを用いる方法、オンカラム法、試料を注入し移動相によってカラム内に流し込む方法、サンプルバルブによる方法などが挙げられるがそれらに限定されない。試料を導入する手段としては、サンプルインジェクタ、オートサンプラー、マイクロフィーダーなどが挙げられるがそれらに限定されない。クロマトグラフィーで用いられる場合は、「高速液体クロマトグラフィー」波多野博行編 化学の領域 増刊102号 南江堂;”高速液体クロマトグラフィーの装置及び付属装置”奥山典生、瀬田和夫著p11−40などを参照することができる。
本明細書において「流体相を収容し得る」とは、本発明の反応において用いられる流体相を、本発明の反応が起こるに十分な容積を有することをいう。好ましくは、流体相を収容し得る空間を有する容器は、実質的に損失なく、かつ、変性させることなく、流体相を保持することができる能力をいう。
本明細書において「流体連絡」するとは、流体連通とも呼ばれ、ある2つの容器の間で、各々の容器に収容される流体が少なくとも1方向好ましくは双方向で移動可能である状態をいう。従って、容器と試料導入部とが流体連絡している状態にある場合、試料導入部に試料が導入されると、少なくとも一部の試料がその容器内に導入される状態にある。流体連絡している場合は、常時その状態であってもよく、一時的にそのような状態であってもよい。一時的に流体連絡の状態にさせる場合、そのような状態を制御するコントローラを装置に設けることが好ましくあり得るが、手動で行えるようにしてもよい。
本明細書において支持体と容器との「結合」は、支持体が本発明において用いられる反応において固定された状態が保持される限りどのような形態であってもよい。好ましくは、共有結合であり得るが、疎水性相互作用など他の相互作用を用いるかまたは併用してもよい。
本明細書において「糖鎖捕捉担体と糖鎖との複合体を取り出す手段」としては、糖鎖捕捉担体と糖鎖との複合体を取り出すことができる限り、どのような手段でも用いることができる。そのような手段としては、遠心分離器、フィルター、クロマトグラフィー装置などが挙げられるがそれらに限定されない。担体が磁性を有する場合、磁性を利用した分離方法を用いてもよい。その場合、糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との複合体を取り出す手段は、磁石であり得る。あるいは、糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との複合体は、この担体を、担体と糖鎖との相互作用が分離しない程度のストリンジェンシー条件下に曝すことによって、取り出すことができる。
本明細書において「所望のストリンジェンシー(条件)」とは、糖鎖と特異的に相互作用する物質と、糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が解離しないような条件をいう。そのような条件は、当該分野において周知の技術を用い、用いる試薬、担体、糖鎖または糖鎖含有物質、糖鎖と特異的に相互作用する物質、形成される相互作用などの種々のパラメータを参酌しながら、当業者が適宜選定することができる。例えば、相互作用が共有結合である場合は、所望のストリンジェンシーは、水(例えば、超純水)または緩衝液(例えば、酢酸緩衝液)でリンスすることであってもよい。
本明細書において「同定」とは、物質の正体を明らかにすることをいう。そのような同定には、種々の測定方法を用いることができ、例えば、マススペクトル分析、NMR、X線解析、元素分析などの物理的分析、化学的特異的反応を観察することなどによる化学的分析、酵素の基質特異性などを判定することによる生化学的分析、あるいは、生物(例えば、細菌などの微生物)の反応を判定することなどによる生物学的分析などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「病因」とは、被検体の疾患、障害または状態(本明細書において、総称して「病変」ともいい、植物では病害ともいう)に関連する因子をいい、例えば、原因となる病原物質(病原因子)、病原体、病変細胞、病原ウイルスなどが挙げられるがそれらに限定されない。
そのような疾患、障害または状態としては、例えば、循環器系疾患(貧血(例えば、再生不良性貧血(特に重症再生不良性貧血)、腎性貧血、癌性貧血、二次性貧血、不応性貧血など)、癌または腫瘍(例えば、白血病、多発性骨髄腫)など);神経系疾患(痴呆症、脳卒中およびその後遺症、脳腫瘍、脊髄損傷など);免疫系疾患(T細胞欠損症、白血病など);運動器・骨格系疾患(骨折、骨粗鬆症、関節の脱臼、亜脱臼、捻挫、靱帯損傷、変形性関節症、骨肉腫、ユーイング肉腫、骨形成不全症、骨軟骨異形成症など);皮膚系疾患(無毛症、黒色腫、皮膚悪性リンパ腫、血管肉腫、組織球症、水疱症、膿疱症、皮膚炎、湿疹など);内分泌系疾患(視床下部・下垂体疾患、甲状腺疾患、副甲状腺(上皮小体)疾患、副腎皮質・髄質疾患、糖代謝異常、脂質代謝異常、タンパク質代謝異常、核酸代謝異常、先天性代謝異常(フェニールケトン尿症、ガラクトース血症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症)、無アルブミン血症、アスコルビン酸合成能欠如、高ビリルビン血症、高ビリルビン尿症、カリクレイン欠損、肥満細胞欠損、尿崩症、バソプレッシン分泌異常、侏儒症、ウオルマン病(酸リパーゼ(Acid lipase)欠損症)、ムコ多糖症VI型など);呼吸器系疾患(肺疾患(例えば、肺炎、肺癌など)、気管支疾患、肺癌、気管支癌など);消化器系疾患(食道疾患(たとえば、食道癌)、胃・十二指腸疾患(たとえば、胃癌、十二指腸癌)、小腸疾患・大腸疾患(たとえば、大腸ポリープ、結腸癌、直腸癌など)、胆道疾患、肝臓疾患(たとえば、肝硬変、肝炎(A型、B型、C型、D型、E型など)、劇症肝炎、慢性肝炎、原発性肝癌、アルコール性肝障害、薬物性肝障害)、膵臓疾患(急性膵炎、慢性膵炎、膵臓癌、嚢胞性膵疾患)、腹膜・腹壁・横隔膜疾患(ヘルニアなど)、ヒルシュスプラング病など);泌尿器系疾患(腎疾患(腎不全、原発性糸球体疾患、腎血管障害、尿細管機能異常、間質性腎疾患、全身性疾患による腎障害、腎癌など)、膀胱疾患(膀胱炎、膀胱癌など)など);生殖器系疾患(男性生殖器疾患(男性不妊、前立腺肥大症、前立腺癌、精巣癌など)、女性生殖器疾患(女性不妊、卵巣機能障害、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮癌、子宮内膜症、卵巣癌、絨毛性疾患など)など);循環器系疾患(心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈、弁膜症、心筋・心膜疾患、先天性心疾患(たとえば、心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存、ファロー四徴)、動脈疾患(たとえば、動脈硬化、動脈瘤)、静脈疾患(たとえば、静脈瘤)、リンパ管疾患(たとえば、リンパ浮腫)など)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「試料」とは、その中の少なくとも1つの成分(好ましくは糖鎖または糖鎖含有物質)の分離、濃縮、精製または分析を目的とするものであれば、どのような起源のものをも使用することができる。したがって、試料は、生物の全部または一部から取り出されたものであり得るが、それに限定されない。別の実施形態において、試料は、合成技術によって合成されたものであり得る。
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。そのような生体分子を含む試料を、本明細書において特に生体試料ということがある。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。従って、生体分子は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子などが包含されるがそれらに限定されない。本明細書では、生体分子は、好ましくは、糖鎖または糖鎖を含む複合分子(例えば、糖タンパク質、糖脂質など)であり得る。
そのような生体分子の供給源としては、生物由来の糖鎖が結合または付属する材料であれば特にその由来に限定はなく、動物、植物、細菌、ウイルスを問わない。より好ましくは動物由来生体試料が挙げられる。好ましくは、例えば、全血、血漿、血清、汗、唾液、尿、膵液、羊水、髄液等が挙げられ、より好ましくは血漿、血清、尿が挙げられる。生体試料には個体から予め分離されていない生体試料も含まれる。例えば外部から試液が接触可能な粘膜組織、あるいは腺組織、好ましくは乳腺、前立腺、膵臓に付属する管組織の上皮が含まれる。
(糖鎖アレイおよび糖鎖チップ)
本明細書において用いられる用語「アレイ」とは、基板または膜上の固定物体の固定されたパターンまたはパターン化された基板そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mmなど)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。また、アレイは、基盤の大きさまたは載せる生体分子の密度によって、マクロアレイおよびマイクロアレイなどにも分けられる。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望の生体分子(例えば、糖鎖)のセットで構成される。アレイは好ましくは異なる所望の生体分子(例えば、糖鎖)を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含む。これらの所望の生体分子(例えば、糖鎖)は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルプレート、384ウェルプレートなどのプレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。
従って、「アレイ」または「マイクロアレイ」とは、生体分子(例えば、糖鎖、タンパク質、核酸など)を基板上に整列(array)させて、固定させたデバイスであるとも説明することができる。本明細書では、特に断らない限り、アレイは、マイクロアレイと互換的に使用される。マクロとマイクロとの境界は厳密に決まっているわけではないが、一般に、「マクロアレイ」とは、メンブレン上に生体分子をスポットした高密度フィルター(high density filter)をいい、「マイクロアレイ」とは、ガラス、シリコンなどの基板表面に生体分子を載せたものをいう。
本明細書において「チップ」とは、アレイのうち、半導体集積回路製造のための技術を応用し、基板上で一度に複数種の糖鎖などの生体分子を合成することで作製されたものをいい、生体分子が糖鎖である場合半導体チップになぞらえて、特に「糖鎖チップ(chip)」という。生体分子がDNAの場合は、DNAチップとも呼ばれ、GeneChip(登録商標)(Affimetrix、CA、米国)などが挙げられ(Marshall Aら、(1998)Nat.Biotechnol.16:27−31およびRamsay Gら、(1998)Nat.Biotechnol.16 40−44を参照のこと)、チップの利用に関する技術は糖鎖チップにも応用され得る。糖鎖チップは、狭義には上記のように定義されるが、糖鎖アレイまたは糖鎖マイクロアレイ全体をいうこともあり、従って、糖鎖が高密度で配置されたチップもまた、糖鎖チップと呼ばれ得る。
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、生体分子の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある生体分子のスポットをある支持体に作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、そのような方法は当該分野において周知である。
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、分析物の量および/または利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1−2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
糖鎖アレイを用いたアッセイにおいては、糖鎖アレイ上でハイブリダイズした蛍光シグナルを蛍光検出器等で検出することが可能である。このような検出器は、現在までに種々の検出器が利用可能である。例えば、Stanford Universityのグループは、オリジナルスキャナを開発しており、このスキャナは、蛍光顕微鏡と稼動ステージとを組み合わせたものであり、DNAアレイに利用されており、糖鎖アレイにも利用可能である(http://cmgm.stanford.edu/pbrownを参照のこと)。従来型のゲル用蛍光イメージアナライザであるFMBIO(日立ソフトウェアエンジニアリング)、Storm(Molecular Dynamics)などでも、スポットがそれほど高密度でなければ、糖鎖アレイの読み取りを行い得る。その他に利用可能な検出器としては、ScanArray 4000、同5000(GeneralScanning;スキャン型(共焦点型))、GMS418 Array Scanner(宝酒造;スキャン型(共焦点型))、Gene Tip Scanner(日本レーザ電子;スキャン型(非共焦点型))、Gene Tac 2000(Genomic Solutions;CCDカメラ型))などが挙げられる。
アレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、DNAアレイに関して開発された各種検出システムに付属のソフトウェア(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)を利用することができる。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、DNAチップに対して開発された形式などを糖鎖向けに改変したものを利用することができる。
(糖鎖レプリカ)
本明細書において「糖鎖レプリカ」とは、ある物体(例えば、膜、固体箔)上に、標的となる被検体上にある糖鎖を天然に存在する状態、含有比、場所などをそのまま反映するような状態で、写し取ることおよびそれによって写し取られたもの(例えば、膜、固体箔)をいう。糖鎖レプリカでは、このように、糖鎖が天然に存在する状態、含有比、場所などが反映されていることから、この糖鎖レプリカを調査することによって、糖鎖レプリカが由来する被検体の状態を忠実にかつ簡便に検査することができる。
本明細書において「固体箔」は、固体の薄い箔をいう。固体箔は、糖鎖レプリカを製造することができるような材料でできており、検査に耐え得る形状をしている限り、どのような形状および材料からできていてもよい。そのような固体箔としては、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、検査の簡便から、透明な材料でできていることが有利であり得る。固体箔はまた、あるセンサーにより検出可能な標識を付すことができる材料でできていることが好ましい。
(診断)
本明細書において「検出」とは、被検体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定することをいう。
本明細書において「診断」とは、被検体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状を判定することをいう。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、糖鎖を同定することができ、同定された糖鎖に関する情報を用いて、被検体における疾患、障害、状態などの種々のパラメータを選定することができる。
本明細書において「鑑別」とは、被検体における疾患、障害、状態などの種々のパラメータを識別することをいう。従って、本明細書において「診断」および「鑑別」はその概念が一部重複する。
(有機化学)
有機化学については、例えば、モリソン ボイド有機化学(上)(中)(下)第5版、東京化学同人発行(1989年)などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書においては、特に言及がない限り、「置換」は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう。水素原子を1つ除去して1価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原子を2つ除去して2価の置換基に置換することも可能である。
本発明のフラーレン誘導体の前駆体である「フラーレン核」に付加する「カルベン」またはカルベン以外の「活性種」が、置換Rによって置換されている場合、そのようなRは、単数または複数存在し、複数存在する場合は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、置換されたカルボキシ、アシル、置換されたアシル、チオカルボキシ、置換されたチオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される。好ましくは、Rは、複数存在する場合それぞれ独立して、水素、アルキルおよび置換されたアルキルからなる群より選択され得る。より好ましくは、独立して、Rは、複数存在する場合それぞれ独立して、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され得る。Rは、すべてが水素以外の置換基を有していても良いが、好ましくは、少なくとも1つの水素、より好ましくは、2〜n(ここでnはRの個数)の水素を有し得る。置換基のうち水素の数が多いことが好ましくあり得る。大きな置換基または極性のある置換基は本発明の効果(特に、アルデヒド基との相互作用)に障害を有し得るからである。従って、水素以外の置換基としては、好ましくは、C1〜C6アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C2アルキル、メチルなどであり得る。ただし、本発明の効果を増強し得ることもあることから、大きな置換基を有することもまた好ましくあり得る。さらにより好ましくはRのすべてが水素であり得る。上述したように、カルベンの置換基は、該置換基と「糖鎖」との相互作用のレベルが、「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」と「糖鎖」との特異的相互作用のレベルを超えず、その特異的相互作用に不利に影響を及ぼさないように、選択され得る。
Rがさらに置換されている場合、その置換基は、好ましくは、以下のように定義される。
ある置換基Rが置換されている場合、
Rは、R−(Rで表され、ここで、RはRからn個の水素が脱離した(n+1)価の基であり;
は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、置換されたカルボキシ、アシル、置換されたアシル、チオカルボキシ、置換されたチオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択され得る。
が置換されている場合、
は、R−(Rで表され、ここで、RはRからn個の水素が脱離した(n+1)価の基であり;
は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、置換されたカルボキシ、アシル、置換されたアシル、チオカルボキシ、置換されたチオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択され得る。
が置換されている場合、
は、R−(Rで表され、ここで、RはRからn個の水素が脱離した(n+1)価の基であり;
は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、置換されたカルボキシ、アシル、置換されたアシル、チオカルボキシ、置換されたチオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択され得る。
ここで、Rが置換されている場合は、
は、R−(Rで表され、ここで、Rは、Rからn個の水素が脱離した(n+1)価の基であり;
1HまたはR2Hは、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、置換されたカルボキシ、アシル、置換されたアシル、チオカルボキシ、置換されたチオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択され得る。
ここで、Rが置換されている場合は、Rについての置換と同様に置換され得、その
後の置換基についても同様に置換され得る。
なお、いうまでもなく、上述した置換基の数nは、すべて同一ではなく、それぞれ独立して選択され得る。nが2以上の場合、()で示される各置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
本明細書において「ヘテロ環(基)」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで,ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。ヘテロ環基は置換されていてもよい。
本明細書において「アルコール」とは、脂肪族炭化水素の1または2以上の水素原子をヒドロキシル基で置換した有機化合物をいう。本明細書においては、ROHとも表記される。ここで、Rは、アルキル基である。好ましくは、Rは、C1〜C6アルキルであり得る。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「アルキル」とは、メタン、エタン、プロパンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n+1−で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書において「置換されたアルキル」とは、以下に規定する置換基によってアルキルのHが置換されたアルキルをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C6アルキル、C1〜C7アルキル、C1〜C8アルキル、C1〜C9アルキル、C1〜C10アルキル、C1〜C11アルキルまたはC1〜C12アルキル、C1〜C2置換されたアルキル、C1〜C3置換されたアルキル、C1〜C4置換されたアルキル、C1〜C5置換されたアルキル、C1〜C6置換されたアルキル、C1〜C7置換されたアルキル、C1〜C8置換されたアルキル、C1〜C9置換されたアルキル、C1〜C10置換されたアルキル、C1〜C11置換されたアルキルまたはC1〜C12置換されたアルキルであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキルとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキルを意味し、メチル(CH−)、エチル(C−)、n−プロピル(CHCHCH−)、イソプロピル((CHCH−)、n−ブチル(CHCHCHCH−)、n−ペンチル(CHCHCHCHCH−)、n−ヘキシル(CHCHCHCHCHCH−)、n−ヘプチル(CHCHCHCHCHCHCH−)、n−オクチル(CHCHCHCHCHCHCHCH−)、n−ノニル(CHCHCHCHCHCHCHCHCH−)、n−デシル(CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH−)、−C(CHCHCHCH(CH、−CHCH(CHなどが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキルとは、C1〜C10アルキルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
本明細書において、「低級アルキル」は、C1〜C6アルキルであり、好ましくは、C1またはC2アルキルである。
本明細書において「シクロアルキル」とは、環式構造を有するアルキルをいう。「置換されたシクロアルキル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルキルのHが置換されたシクロアルキルをいう。具体例としては、C3〜C4シクロアルキル、C3〜C5シクロアルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C7シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C9シクロアルキル、C3〜C10シクロアルキル、C3〜C11シクロアルキル、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C4置換されたシクロアルキル、C3〜C5置換されたシクロアルキル、C3〜C6置換されたシクロアルキル、C3〜C7置換されたシクロアルキル、C3〜C8置換されたシクロアルキル、C3〜C9置換されたシクロアルキル、C3〜C10置換されたシクロアルキル、C3〜C11置換されたシクロアルキルまたはC3〜C12置換されたシクロアルキルであり得る。例えば、シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロヘキシルなどが例示される。
本明細書中、「アルキレン」とは、「アルキル」から導かれる2価の基であって、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナンメチレン、デカンメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン等が挙げられる。
本明細書において「アルケニル」とは、エチレン、プロピレンのような、分子内に二重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n−1−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルケニル」とは、以下に規定する置換基によってアルケニルのHが置換されたアルケニルをいう。具体例としては、C2〜C3アルケニル、C2〜C4アルケニル、C2〜C5アルケニル、C2〜C6アルケニル、C2〜C7アルケニル、C2〜C8アルケニル、C2〜C9アルケニル、C2〜C10アルケニル、C2〜C11アルケニルまたはC2〜C12アルケニル、C2〜C3置換されたアルケニル、C2〜C4置換されたアルケニル、C2〜C5置換されたアルケニル、C2〜C6置換されたアルケニル、C2〜C7置換されたアルケニル、C2〜C8置換されたアルケニル、C2〜C9置換されたアルケニル、C2〜C10置換されたアルケニル、C2〜C11置換されたアルケニルまたはC2〜C12置換されたアルケニルであり得る。ここで、例えばC2〜C10アルキルとは、炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルケニルを意味し、ビニル(CH=CH−)、アリル(CH=CHCH−)、CHCH=CH−などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルケニルとは、C2〜C10アルケニルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
本明細書において「シクロアルケニル」とは、環式構造を有するアルケニルをいう。「置換されたシクロアルケニル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルケニルのHが置換されたシクロアルケニルをいう。具体例としては、C3〜C4シクロアルケニル、C3〜C5シクロアルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、C3〜C7シクロアルケニル、C3〜C8シクロアルケニル、C3〜C9シクロアルケニル、C3〜C10シクロアルケニル、C3〜C11シクロアルケニル、C3〜C12シクロアルケニル、C3〜C4置換されたシクロアルケニル、C3〜C5置換されたシクロアルケニル、C3〜C6置換されたシクロアルケニル、C3〜C7置換されたシクロアルケニル、C3〜C8置換されたシクロアルケニル、C3〜C9置換されたシクロアルケニル、C3〜C10置換されたシクロアルケニル、C3〜C11置換されたシクロアルケニルまたはC3〜C12置換されたシクロアルケニルであり得る。例えば、好ましいシクロアルケニルとしては、1−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニルなどが例示される。
本明細書中、「アルケニレン」とは、「アルケニル」から導かれる2価の基であって、例えば、ビニレン、プロペニレン、ブテニレン等が挙げられる。
本明細書において「アルキニル」とは、アセチレンのような、分子内に三重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n−3−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルキニル」とは、以下に規定する置換基によってアルキニルのHが置換されたアルキニルをいう。具体例としては、C2〜C3アルキニル、C2〜C4アルキニル、C2〜C5アルキニル、C2〜C6アルキニル、C2〜C7アルキニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C9アルキニル、C2〜C10アルキニル、C2〜C11アルキニル、C2〜C12アルキニル、C2〜C3置換されたアルキニル、C2〜C4置換されたアルキニル、C2〜C5置換されたアルキニル、C2〜C6置換されたアルキニル、C2〜C7置換されたアルキニル、C2〜C8置換されたアルキニル、C2〜C9置換されたアルキニル、C2〜C10置換されたアルキニル、C2〜C11置換されたアルキニルまたはC2〜C12置換されたアルキニルであり得る。ここで、例えば、C2〜C10アルキニルとは、例えば炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルキニルを意味し、エチニル(CH≡C−)、1−プロピニル(CHC≡C−)などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルキニルとは、C2〜C10アルキニルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
本明細書において「アルコキシ」とは、アルコール類のヒドロキシ基の水素原子が失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n+1O−で表される(ここで、nは1以上の整数である)。「置換されたアルコキシ」とは、以下に規定する置換基によってアルコキシのHが置換されたアルコキシをいう。具体例としては、C1〜C2アルコキシ、C1〜C3アルコキシ、C1〜C4アルコキシ、C1〜C5アルコキシ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C7アルコキシ、C1〜C8アルコキシ、C1〜C9アルコキシ、C1〜C10アルコキシ、C1〜C11アルコキシ、C1〜C12アルコキシ、C1〜C2置換されたアルコキシ、C1〜C3置換されたアルコキシ、C1〜C4置換されたアルコキシ、C1〜C5置換されたアルコキシ、C1〜C6置換されたアルコキシ、C1〜C7置換されたアルコキシ、C1〜C8置換されたアルコキシ、C1〜C9置換されたアルコキシ、C1〜C10置換されたアルコキシ、C1〜C11置換されたアルコキシまたはC1〜C12置換されたアルコキシであり得る。ここで、例えば、C1〜C10アルコキシとは、炭素原子を1〜10個含む直鎖または分枝状のアルコキシを意味し、メトキシ(CHO−)、エトキシ(CO−)、n−プロポキシ(CHCHCHO−)などが例示される。
本明細書において「炭素環基」とは、炭素のみを含む環状構造を含む基であって、前記の「シクロアルキル」、「置換されたシクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「置換されたシクロアルケニル」以外の基をいう。炭素環基は芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換された炭素環基」とは、以下に規定する置換基によって炭素環基のHが置換された炭素環基をいう。具体例としては、C3〜C4炭素環基、C3〜C5炭素環基、C3〜C6炭素環基、C3〜C7炭素環基、C3〜C8炭素環基、C3〜C9炭素環基、C3〜C10炭素環基、C3〜C11炭素環基、C3〜C12炭素環基、C3〜C4置換された炭素環基、C3〜C5置換された炭素環基、C3〜C6置換された炭素環基、C3〜C7置換された炭素環基、C3〜C8置換された炭素環基、C3〜C9置換された炭素環基、C3〜C10置換された炭素環基、C3〜C11置換された炭素環基またはC3〜C12置換された炭素環基であり得る。炭素環基はまた、C4〜C7炭素環基またはC4〜C7置換された炭素環基であり得る。炭素環基としては、フェニル基から水素原子が1個欠失したものが例示される。ここで、水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよく、非芳香環上であってもよい。
本明細書において「ヘテロ環基」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで,ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換されたヘテロ環基」とは、以下に規定する置換基によってヘテロ環基のHが置換されたヘテロ環基をいう。具体例としては、C3〜C4炭素環基、C3〜C5炭素環基、C3〜C6炭素環基、C3〜C7炭素環基、C3〜C8炭素環基、C3〜C9炭素環基、C3〜C10炭素環基、C3〜C11炭素環基、C3〜C12炭素環基、C3〜C4置換された炭素環基、C3〜C5置換された炭素環基、C3〜C6置換された炭素環基、C3〜C7置換された炭素環基、C3〜C8置換された炭素環基、C3〜C9置換された炭素環基、C3〜C10置換された炭素環基、C3〜C11置換された炭素環基またはC3〜C12置換された炭素環基の1つ以上の炭素原子をヘテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基はまた、C4〜C7炭素環基またはC4〜C7置換された炭素環基の炭素原子を1つ以上へテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、イミダゾリル基、ピリジル基などが例示される。水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよく、非芳香環上であってもよい。
本明細書において「フェニル基」とは、C6芳香族系炭素環基であり、ベンゼンからHを1個欠失した官能基である。「置換されたフェニル基」とは、フェニル基のHが以下で定義される置換基で置換されたものをいう。
本明細書において、炭素環基またはヘテロ環基は、下記に定義されるように1価の置換基で置換され得ることに加えて、2価の置換基で置換され得る。そのような二価の置換は、オキソ置換(=O)またはチオキソ置換(=S)であり得る。
本明細書において「ハロゲン」とは、周期表7B族に属するフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などの元素の1価の基をいう。
本明細書において「ヒドロキシ」とは、−OHで表される基をいう。「置換されたヒドロキシ」とは、ヒドロキシのHが下記で定義される置換基で置換されているものをいう。
本明細書において「チオール」とは、ヒドロキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基(メルカプト基)であり、−SHで表される。「置換されたチオール」とは、メルカプトのHが下記で定義される置換基で置換されている基をいう。
本明細書において「シアノ」とは、−CNで表される基をいう。「ニトロ」とは、−NOで表される基をいう。「アミノ」とは、−NHで表される基をいう。「置換されたアミノ」とは、アミノのHが以下で定義される置換基で置換されたものをいう。
本明細書において「カルボキシ」とは、−COOHで表される基をいう。「置換されたカルボキシ」とは、カルボキシのHが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
本明細書において「チオカルボキシ」とは、カルボキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基をいい、−C(=S)OH、−C(=O)SHまたは−CSSHで表され得る。「置換されたチオカルボキシ」とは、チオカルボキシのHが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
本明細書中、「アシル」とは、カルボニルに前記「アルキル」が結合したアルキルカルボニル、アルキル部分が前記「シクロアルキル」が結合したシクロアルキルカルボニル、カルボニルに前記「アリール」が結合したアリールカルボニルを意味する。例えば、アセチル、n−プロパノイル、i−プロパノイル、n−ブチロイル、t−ブチロイル、シクロプロパノイル、シクロブタノイル、シクロペンタノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、α−ナフトイル、β−ナフトイルを意味する。「置換されたアシル」とは、アシルの水素を以下に定義される置換基で置換したものをいう。
本明細書において「アミド」とは、アンモニアの水素を酸基(アシル基)で置換した基
であり、好ましくは、−CONHで表される。「置換されたアミド」とは、アミドが置換されたものをいう。
本明細書において「カルボニル」とは、アルデヒドおよびケトンの特性基である−(C=O)−を含むものを総称したものをいう。「置換されたカルボニル」は、下記において選択される置換基で置換されているカルボニル基を意味する。
本明細書において「チオカルボニル」とは、カルボニルにおける酸素原子を硫黄原子に置換した基であり、特性基−(C=S)−を含む。チオカルボニルには、チオケトンおよびチオアルデヒドが含まれる。「置換されたチオカルボニル」とは、下記において選択される置換基で置換されたチオカルボニルを意味する。
本明細書において「スルホニル」とは、特性基である−SO−を含むものを総称したものをいう。「置換されたスルホニル」とは、下記において選択される置換基で置換されたスルホニルを意味する。
本明細書において「スルフィニル」とは、特性基である−SO−を含むものを総称したものをいう。「置換されたスルフィニル」とは、下記において選択される置換基で置換されているスルフィニルを意味する。
本明細書において「アリール」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいい、本明細書において、「炭素環基」に包含される。例えば、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、アンスニル、インデニル、フェナンスリル等が挙げられる。「置換されたアリール」とは、下記において選択される置換基で置換されているアリールを意味する。
本明細書において「ヘテロアリール」とは、ヘテロ原子を含有する芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいい、本明細書において、「ヘテロ環基」に包含される。例えば、フラニル、チオフェニル、ピリジル等が挙げられる。「置換されたヘテロアリール」とは、下記において選択される置換基で置換されているヘテロアリールを意味する。
本明細書中、「アリレン」とは、例えば、フェニレン、ナフチレン等が挙げられる。さらに詳しくは、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等が挙げられる。
本明細書中、「ヘテロアリレン」とは、例えば、チオフェンジイル、フランジイル、ピリジンジイル等が挙げられる。さらに詳しくは、2,5−チオフェンジイル、2,5−フランジイル等が挙げられる。
本明細書において「ヒドロキシルアミノ」とは、ヒドロキシルアミンNHOHから水素原子を除いてできる1価の基をいう。「置換されたヒドロキシルアミノ」とは、下記において選択される置換基で置換されているヒドロキシルアミノを意味する。
本明細書において「N−アルキルヒドロキシルアミノ」とは、ヒドロキシルアミンの窒素原子に結合する水素原子をアルキル基で置換したヒドロキシルアミノを意味する。
本明細書において「ヒドラジド」とは、−CONHNHで表される基をいう。「置換されたヒドラジド」とは、下記において選択される置換基で置換されているヒドラジドを意味する。
本明細書において「チオセミカルバジド」とは、HNCSNHNHで表される基をいう。「置換されたチオセミカルバジド」とは、下記において選択される置換基で置換されているチオセミカルバジドを意味する。
本明細書において「エステル」とは、特性基である−COO−を含むものを総称したものをいう。「置換されたエステル」とは、下記において選択される置換基で置換されているエステルを意味する。
本明細書において「4級アンモニウム塩」とは、−N(R)(R)(R)で表される基であり、R、RおよびRは低級アルキル基を意味する。ここでいう「低級アルキル」とは上記で定義したとおりである。通常、「4級アンモニウム塩」は、−N(R)(R)(R)とハロゲン化物イオンとが対をなして塩を形成する。
本明細書において「水酸基」とは、−OHで表される基をいう。「水酸基」は、「ヒドロキシル基」と互換可能である。
本発明において、「アルデヒド」とは、特性基である−CHOを含むものを総称したものをいう。「置換されたアルデヒド」とは、下記において選択される置換基で置換されているアルデヒドを意味し、「アルデヒド誘導体」と互換可能に使用され得る。
本発明において、「カルボン酸」とは、特性基である−COOHを含むものを総称したものをいう。「置換されたカルボン酸」とは、下記において選択される置換基で置換されているカルボン酸を意味し、「アルデヒド誘導体」と互換可能に使用され得る。
本明細書において、C1、C2、、、Cnは、炭素数を表す。従って、C1は炭素数1個の置換基を表すために使用される。
本明細書において、「光学異性体」とは、結晶または分子の構造が鏡像関係にあって、重ねあわせることのできない一対の化合物の一方またはその組をいう。立体異性体の一形態であり、他の性質は同じであるにもかかわらず、旋光性のみが異なる。
本明細書においては、特に言及がない限り、置換は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう。水素原子を1つ除去して1価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原子を2つ除去して2価の置換基に置換することも可能である。
置換基としては、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、カルバモイル、置換されたカルボキシ、アシル、アシルアミノ、置換されたアシル、チオカルボキシ、置換されたチオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルまたは置換されたスルフィニルが挙げられるがそれらに限定されない。置換基が置換された場合は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシアルキル、ハロゲノアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アシル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、チオカルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、置換されていてもよいアミノで置換され得る。この「置換されていてもよいアミノ」は、アルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルで1または2ヶ所置換されていてもよいアミノを意味する。
本明細書において「保護反応」とは、Bocのような保護基を、保護が所望される官能基に付加する反応をいう。保護基により官能基を保護することによって、より反応性の高い官能基の反応を抑制し、より反応性の低い官能基のみを反応させることができる。
本明細書において「脱保護反応」とは、Bocのような保護基を脱離させる反応をいう。脱保護反応としては、トリフルオロ酢酸(TFA)による反応およびPd/Cを用いる還元反応のような反応が挙げられる。
本発明の各方法において、目的とする生成物は、反応液から夾雑物(未反応減量、副生成物、溶媒など)を、当該分野で慣用される方法(例えば、抽出、蒸留、洗浄、濃縮、沈澱、濾過、乾燥など)によって除去した後に、当該分野で慣用される後処理方法(例えば、吸着、溶離、蒸留、沈澱、析出、クロマトグラフィーなど)を組み合わせて処理して単離し得る。
(本明細書において用いられる一般技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、マイクロフルイディクス、微細加工、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science andEngineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.,et al.eds,Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac ,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Press;Method in Enzymology 230、242、247、Academic Press、1994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997;畑中、西村ら、糖質の科学と工学、講談社サイエンティフィク、1997;糖鎖分子の設計と生理機能 日本化学会編、学会出版センター、2001などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
(スクリーニング)
本明細書において、「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ物質または生物などを、特定の操作および/または評価方法で多数の候補から選抜することをいう。本明細書では、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体、そのフラーレン誘導体を含む糖鎖捕捉担体を含む本発明の装置、システム、糖鎖アレイなどを用いることによって、スクリーニングを行うことができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
(糖鎖の測定)
本発明の方法、装置およびシステムによって分離、精製、濃縮された糖鎖は、種々の物理学的方法(マススペクトル分析、NMR、X線解析、元素分析など)、化学的方法(化学的特異的反応の観察など)、生化学的方法(酵素の基質特異性などを判定)または生物学的方法(生物(例えば、細菌などの微生物)の反応)によって同定することができる。
物理学的方法として使用される、マススペクトル分析、NMR分析の技術は当該分野において周知であり、例えば、丹羽、最新のマススペクトロメトリー、化学同人、1995;Modern NMR Spectroscopy:A guide for Chemists,J.K.M.Sanders and B.K.Hunter (2nd Ed.,Oxford University Press,New York,1993);Spectrometric Identification of Organic Compounds,R.M.Silverstein,G.Clayton Bassler,and Terrence C.Morill (5th Ed.,John Wiley & Sons,New York,1991)などを参照することができる。
(糖鎖の定量または定性分析に用いられるプローブ)
別の実施形態では、本発明の方法などによって分離された糖鎖は、生化学的な方法を用いて分析することができる。
そのような生化学的方法において、本明細書における糖鎖解析のために使用される試験プローブは、糖鎖に特異的に結合し、検出可能に標識されているようなものであれば、どのようなものであってもよい。そのようなプローブとしては、例えば、本発明の糖鎖と特異的に相互作用する物質、レクチン、糖鎖認識抗体などであって、標識されているものが挙げられるがそれらに限定されない。
糖鎖の定量は、絶対的または相対的であり得る。絶対的な定量は、1つ以上の既知濃度の標的糖鎖を標準として、例えば、標準曲線の作成によって行うことができる。あるいは、相対定量は、転写物の2つ以上の糖鎖種のシグナル強度の比較によって達成され得る。このような解析は、コンピュータシステムを用いて行うことができる。そのような解析を行うソフトウェアとしては、例えば、ArrayGauge Ver.1.2,ImageGauge Ver.3.45(ともに富士フィルム株式会社)が挙げられるがそれらに限定されない。
「標識」および「マーク」は本明細書において同じ意味で使用され、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(たとえば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。
(医薬・化粧品など、およびそれを用いる治療、予防など)
別の局面において、本発明は、医薬(例えば、ワクチン等の医薬品、健康食品、残さタンパク質又は脂質は抗原性を低減した医薬品)および化粧品に関する。この医薬および化粧品は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバント挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、単離された多能性幹細胞、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、そして以下が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))。
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
本発明の処置方法において使用される糖鎖組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本発明が化粧品として使用されるときもまた、当局の規定する規制を遵守しながら化粧品を調製することができる。
(農薬)
本発明の組成物は、農薬の成分としても用いることができる。農薬組成物として処方される場合、必要に応じて、農学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤などを含み得る。
本発明の組成物が、農薬として使用される場合は、除草剤(ピラゾレートなど)、殺虫・殺ダニ剤(ダイアジノンなど)、殺菌剤(プロベナゾールなど)、植物成長調整剤(例、パクロブトラゾールなど)、殺線虫剤(例、ベノミルなど)、共力剤(例、ピペロニルブトキサイドなど)、誘引剤(例、オイゲノールなど)、忌避剤(例、クレオソートなど)、色素(例、食用青色1号など)、肥料(例、尿素など)などもまた必要に応じて混合され得る。
(保健・食品)
本発明はまた、保健・食品分野においても利用することができる。このような場合、上述の経口医薬として用いられる場合の留意点を必要に応じて考慮すべきである。特に、特定保健食品のような機能性食品・健康食品などとして使用される場合には、医薬に準じた扱いを行うことが好ましい。好ましくは、本発明の糖鎖組成物は、低アレルゲン食品としても用いることができる。
本発明は上記のように、医療以外にも、食品検査、検疫、医薬品検査、法医学、農業、畜産、漁業、林業などで、生体分子の検査が必要なものに全て適応可能である。本発明においては特に、食料の安全目的のための(たとえば、BSE検査)使用も企図される。
(検査)
本発明の方法、装置、システムは、種々の糖鎖の検出に使用することができ、検出する糖鎖の種類は特に限定されないことから種々の検査、診断、鑑定、鑑別にも用いることができる。そのような検出される糖鎖としては、例えば、ウイルス病原体(たとえば、肝炎ウイルス(A、B、C、D、E、F、G型)、HIV、インフルエンザウイルス、ヘルペス群ウイルス、アデノウイルス、ヒトポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパルボウイルス、ムンプスウイルス、ヒトロタウイルス、エンテロウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、HTLVを含むがそれらに限定されない)の遺伝子;細菌病原体(たとえば、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ菌、ヘリコバクターピロリ菌、カンピロバクター、コレラ菌、赤痢菌、サルモネラ菌、エルシニア、淋菌、リステリア菌、レプトスピラ、レジオネラ菌、スピロヘータ、肺炎マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアを含むがそれらに限定されない)の遺伝子、マラリア、赤痢アメーバ、病原真菌、寄生虫、真菌などに特異的な糖鎖の検出に用いることができる。
あるいは、本発明はまた、生化学検査データを検出するために用いられ得る。生化学検査の項目としては、コリンエステラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ロイシンアミノペプチターゼ、γ−グルタミルトランスペプチターゼ、クレアチニンフォスキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アミラーゼなどの糖鎖が関連すると考えられるデータ項目を挙げることができるがそれらに限定されない。
(高分子材料)
本発明はまた、生体分子とは関係ない分野においても応用することができる。このような場合、本発明が達成した、任意の糖鎖に対して実質的に差別なく相互作用し、分離、精製、濃縮および分析することができるという利点を生かして、材料調製を行うことができる。特に、本発明の糖鎖捕捉フラーレン誘導体を用いて捕捉された糖鎖または糖鎖含有物質が、生分解性ポリマーのような材料として用いられるとき、試料として提供された状態の糖鎖比を保持することが所望される場合に、本発明は有利であり得る。あるいは、バルクで糖鎖または糖鎖含有物質を合成したときに、その合成したときの組成比を保持しながらそのような糖鎖および糖鎖含有物質を精製することが好ましい場合にも本発明の物質、方法、装置およびシステムは有利であり得る。
このように、本発明の方法、装置およびシステムは、例えば、診断、法医学、薬物探索(医薬品のスクリーニング)および開発、分子生物学的分析(例えば、アレイベースの糖鎖分析)、糖鎖特性および機能の分析、薬理学、グリコミクス、環境調査ならびにさらなる生物学的および化学的な分析において使用され得る。
(好ましい実施形態の説明)
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
1つの局面において、本発明は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と、フラーレン核とを含むフラーレン誘導体を提供する。好ましくは、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と糖鎖との相互作用のレベルは、フラーレン核と糖鎖との相互作用のレベルよりも高い。すなわち、本発明におけるフラーレン核は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位以外の官能基が付加していてもよいため、この官能基が付加したフラーレン核と糖鎖との間の相互作用のレベルは、糖鎖と、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位との相互作用のレベルを超えないことが好ましい。このフラーレン誘導体は、さらに好ましくは、実質的にすべての、糖鎖を含まない物質よりも、糖鎖に対する特異性が高いという性質を有する。先行技術において、糖鎖または糖鎖含有物質に優先的に結合するという性質を有するものが多数知られているが、そのような物質は、糖鎖および糖鎖含有物質以外の物質に対しても特異性を有することがあった。本発明は、そのような特異性をさらに高めるという効果ももたらす。
ここで、本発明にいう相互作用は、好ましくは、共有結合を含む。共有結合することによって、精製、分離、濃縮および分析といった本発明の特徴をより有利にかつ簡便に行うことができるからである。より好ましくは、このような共有結合は、オキシム結合、ヒドラゾン結合、チオセミヒドラゾン結合およびチアゾリジン結合からなる群より選択される結合を含む。このような結合は、糖鎖への特異性が高いことから、特異性を担保するために有利に作用するからである。
特に、支持体(特に、固体支持体)に累積または結合可能である、糖鎖と特異的に相互作用し得る本発明のフラーレン誘導体は、先行技術において知られていないどころか、そのような物質を作製しようという試みもなく、本発明がそのような物質を提供するという点で、顕著な効果を示すものといえる。ここで、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体は、好ましくは、支持体と前記フラーレン誘導体とは、少なくとも一部が相転移し得るような性質を有する。好ましくは、そのような支持体とフラーレン誘導体とは全部が相転移するような性質を有していてもよい。支持体として使用するためには、流体中での反応を行う場合に、相転移していないと、平衡状態に戻り、結合が解除してしまい、所望の反応・アッセイを行うことができないか、非効率的になってしまうからである。このような支持体は、通常、常温で固体であるが、濃縮、精製、分離または分析に使用することができる限り、液体または気体のような流体であってもよい。
さらに、本発明の糖鎖捕捉担体において使用される支持体は、好ましくは、有機溶媒に不溶であり得る。
好ましい実施形態において、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体は、任意の糖鎖と所定のレベル以上で特異的に相互作用し得る。ここで、所定のレベルとは、糖鎖に対する特異的相互作用を行うかどうかを判定するのに十分なレベルをいう。任意の糖鎖と所定のレベル以上で特異的に相互作用し得るという性質によって、特定の糖鎖に対して特異的に相互作用するという働きを持つ性質に比べて、以下のような効果を挙げることができる:例えば、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用することにより、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができ、あるいは、その含有比を分析することができる。天然の状態を反映することができることにより、糖鎖により判定することができる被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料から簡便に判定することができる。
具体的には、上記のような物質と糖鎖との間の相互作用のレベルは、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときに必要な解離エネルギーによって判定することができる。そのような場合、必要な解離エネルギーは、少なくとも約5eV、好ましくは少なくとも約10eV、最も好ましくは少なくとも約15eVである。
あるいは、相互作用のレベルは、別の物理学的な方法によって判定することもできる。例えば、物理学的な方法としては、例えば表面プラズモン共鳴法によって糖鎖の結合量を見積もる手法、および糖鎖/糖鎖捕捉担体間に生じたオキシム結合由来のNMRプロトンシグナル強度によるレベル判定などが挙げられる。
あるいは、相互作用のレベルは、化学的な方法によって判定することもできる。例えば、化学的な手法としては、薄層クロマトグラフィー(TLC)の分離パターンにより相互作用のレベルを見積もることが出来る。
あるいは、相互作用のレベルは、生化学的な方法によって判定することもできる。例えば、生化学的な方法としては、糖鎖特異的な抗体を用いるELISA法によって相互作用のレベルを判定することができる。
好ましくは、本発明の物質は、糖鎖以外の物質との非特異的相互作用を解離させる条件下に曝されるとき、少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存する。このように少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存することによって、本発明の物質は、糖鎖および糖鎖含有物質の精製、濃縮、分離、および分析に利用することができる。特に、糖鎖以外の物質との非特異的相互作用を解離させる条件下に曝されても、少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存することができるという性質により、糖鎖以外の物質を低減または除去することが可能になる。
好ましい実施形態では、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体は、任意の糖鎖と、最大と最小との間で、一定のレベルの範囲内の特異性を有することが好ましい。そのような範囲としては、例えば、最大と最小との間のレベルの相違が、通常約10倍以内、好ましくは約5倍以内、より好ましくは約3倍以内、さらに好ましくは約2倍以内、あるいは約1.5倍以内の範囲内のレベルで特異的に相互作用し得る。上記範囲は、相互作用のレベルの測定方法によって変動することがあるが、ある実施形態では、MALDI−TOFにおいてレーザー照射したときに必要な解離エネルギーによって判定され得る。
好ましい実施形態において、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が対象とする糖鎖は、酸化された糖鎖および酸化されていない糖鎖を含み得る。このような性質を有することにより、本発明の物質は、酸化された糖鎖のみに特異的に相互作用することができるばかりでなく、満遍なくどのような糖鎖に対しても相互作用することができ、糖鎖および糖鎖含有物質の精製、濃縮、分離、および分析に有利に利用することができる。このことにより、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができ、あるいは、その含有比を分析することができる。天然の状態を反映することができることにより、特に、酸化された糖鎖と酸化されていない同族の糖鎖との比率がある特定の状態を反映する場合、そのような被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料から簡便に判定することができる。このようなものは、酸化した糖鎖にしか相互作用しない物質では達成できなかった効果といえる。
本発明の糖鎖に特異的に反応するフラーレン誘導体は、通常、アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基を含み得る。ここで、この流体はケト基(カルボニル基)を含む物質を実質的に含まないことが好ましい。特に、流体は、水溶液、有機溶媒およびこれらの混合物からなる群より選択されるものが有利であり得る。より好ましくは、流体は水溶液である。糖鎖は、一般に、アルデヒド型におけるアルデヒド基またはケトース型におけるケトン基のようなカルボニル基を有し、その中で、環状のヘミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡関係が成立していることから、そのような状態に特異性を有させることによって、糖鎖に対して特異的に相互作用することができるようになる。従って、アルデヒド基と反応することができる限り、流体はどのようなもの(有機溶媒、気体など)でも使用することができる。
好ましい実施形態では、本発明における糖鎖との特異的相互作用は、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基、チオセミカルバジド基およびシステイン残基ならびにそれらの誘導体からなる群より選択される結合を含むがそれらに限定されない。ヒドロキシルアミノ基と糖との連結様式(オキシム結合)は特に酸性に弱く、糖鎖捕捉担体から糖鎖を切り出す工程が容易に行えるという利点があるからである。当業者であれば、アルデヒド基と反応して特異的かつ安定な結合をつくることができる性質を有する官能基を理解することができ、そのような官能基を有する物質を理解することができる。また、当業者は、そのような官能基を有する物質を、当該分野において周知の技術を単独でまたは組み合わせて利用して、製造することができる。
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Xは糖鎖捕捉部位であり、Yは親水性部位である]
を有するカルベンがフラーレン核の二重結合に付加した付加体である。フラーレン核へのカルベンの付加数は特に限定されないが、本発明ではモノ付加が好ましい。
本発明において、糖鎖捕捉部位(X)と親水性部位(Y)との組み合わせは、互いに実質的に反応しないものが好ましい。ここでいう「糖鎖捕捉部位」は、上記の「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」と互換可能に使用され得る。
好ましい実施形態において、糖鎖捕捉部位(X)は、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基、チオセミカルバジド基およびシステイン残基ならびにそれらの誘導体からなる群より選択される官能基を含み、親水性部位(Y)は、−C(=O)R[式中、Rは、−O−R、−O−(CH−N(R)(R)(R)、または−NH−CH−(CH−CH−O)−(CH−OHであり;Rは、低級アルキルであり;R、R、およびRは、それぞれ独立して、低級アルキルであり;nは1〜10の整数であり、およびtは1〜3の整数である]で表される官能基である。
さらに好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Rは、−W−O−NH、−W−O−NH(CH)、−W−O−W−O−NH、−W−O−W−O−NH(CH)、−(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH、−(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH(CH)、−W−C(=O)−NH−NH、−W−C(=S)−NH−NH、−W−NH−C(=O)−CH(NH)−W−SH、または−W−NH−C(=S)−CH(NH)−W−SHであり;WおよびWは、それぞれ独立してC1〜C12アルキレンまたはC2〜C12アルケニレンであり;Wは、C1−C2アルキレンであり;Rは、−O−R、−O−(CH−N(R)(R)(R)、−NH−CH−(CH−CH−O)−(CH−OH、または以下の式:
Figure 2005061444
で表される基であり;Rは、低級アルキルであり;R、R、およびRは、それぞれ独立して、低級アルキルであり;nは0〜10の整数であり、およびtは1〜3の整数である]で表される置換基群から選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付加したフラーレン誘導体である。
なおさらに好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下:
Figure 2005061444
[式中、Rは、−(CH−O−NH、−(CH−O−NH(CH)、−(CH−O−(CH−O−NH、−(CH−O−(CH−O−NH(CH)、−(CH−CH−O)−(CH−O−NH、−(CH−CH−O)−(CH−O−NH(CH)、−(CH−C(=O)−NH−NH、−(CH−NH−C(=S)−NH−NH、または−(CH−NH−C(=O)−CH(NH)−(CH−SHであり;Rは、−O−R、−O−(CH−N(R)(R)(R)、−NH−CH−(CH−CH−O)−(CH−OH、または以下の式:
Figure 2005061444
で表される基であり;Rは、低級アルキルであり;R、R、およびRは、それぞれ独立して、低級アルキルであり;nは0〜10の整数であり、mは1〜5の整数であり、pは1〜5の整数であり、aは1または2であり、rは1または2であり、およびtは1〜3の整数である]で表される置換基群から選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付加したフラーレン誘導体である。
この実施形態における最も好ましい代表的なフラーレン誘導体は、以下の構造式:
Figure 2005061444
で表され、nは1〜6の整数であり、アルキルおよび置換されたアルキルは下記に定義された通りである。
別の好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体のフラーレン核は、純炭素フラーレンであるか、または以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Arはアリール、置換されたアリール、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールであり;QはCHまたはN原子であり;sは0〜3である]で表される置換基が純炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体である。ここで、ヘテロアリールは、好ましくはフラニル、チオフェニルまたはピリジルである。さらに、QがN原子である場合、このN原子が低級アルキルによって4級化されていることが好ましい。
さらに別の好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下の式:
Figure 2005061444
で表される置換基群から選択される置換基(式中、Qは、CHまたはNであり;sは0〜3であり;Rは、−W−O−NH、−W−O−NH(CH)、−W−O−W−O−NH、−W−O−W−O−NH(CH)、−(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH、−(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH(CH)、−W−C(=O)−NH−NH、−W−C(=S)−NH−NH、−W−NH−C(=O)−CH(NH)−W−SH、−W−NH−C(=S)−CH(NH)−W−SH、−Z−Z−Z−Z−Z−O−NH、−Z−Z−Z−Z−Z−O−NH(CH)、−Z−Z−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、−Z−Z−Z−Z−CH(NH)−Z−SH、−Z−O−Z−CH(NH)−Z−SH、−Z−O−Z−O−NH、−Z−O−Z−O−NH(CH)、−Z−O−Z−Z−Z−O−NH、−Z−O−Z−Z−Z−O−NH(CH)、−Z−O−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、−Z−O−Z−Z−CH(NH)−Z−SH、−Z−Z−Z−Z−O−NH、−Z−Z−Z−Z−O−NH(CH)、−Z−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、または−Z−Z−Z−CH(NH)−Z−SHであり;WおよびWは、それぞれ独立してC1〜C12アルキレンまたはC2〜C12アルケニレンであり;Wは、C1〜C2アルキレンであり;Zは、置換されていてもよいアリレンまたは置換されていてもよいヘテロアリレンであり;Zは、含窒素複素環であり;ZおよびZは、それぞれ独立してC1−C12アルキレンであり;Zは、−O−C(=O)、−O−C(=S)、−NH−C(=O)、−NH−C(=S)、−O−、または−S−であり;Zは、C1−C2アルキレンであり;nは1〜10の整数である)が前記フラーレン核の二重結合に付加したフラーレン誘導体である。
は、好ましくはフェニレン、フランジイル、チオフェンジイルまたはピリジンジイルである。Zは、好ましくはピペリジン、ピロリジンまたはピペラジンである。ZおよびZが両方とも存在する場合は、両者の炭素数の総和がC12までであることが好ましい。
なおさらに別の好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下の式:
Figure 2005061444
で表される置換基群から選択される置換基(式中、Qは、CHまたはNであり;sは0〜
3であり;Rは、−(CH−O−NH、−(CH−O−NH(CH)、−(CH−CH−O)−(CH−O−NH、−(CH−C(=O)−NH−NH、−(CH−NH−C(=O)−CH(NH)−(CH−SH、ならびに以下:
Figure 2005061444
で表される基からなる群より選択され;式中、WおよびW’は、それぞれ独立してCHまたはN原子であり;Yは、O原子、S原子またはNHであり;bは0または1であり、uは1〜5の整数であり、vは1〜5の整数であり、およびxは1〜3の整数である)が前記フラーレン核の二重結合に付加したフラーレン誘導体である。ここで、含窒素複素環のN原子が低級アルキルによって4級化されていることが好ましい。
この実施形態における最も好ましい代表的なフラーレン誘導体は、以下の構造式:
Figure 2005061444
で表される化合物[式中、nは1〜6の整数であり、アルキルおよび置換されたアルキルは下記に定義された通りである]であるか、あるいは、以下の構造式:
Figure 2005061444
で表される化合物[式中、nは1〜6の整数であり、アルキル、置換されたアルキル、アリールおよび置換されたアリールは下記に定義された通りである]である。
本発明のフラーレン誘導体は、好ましくは、少なくとも750の分子量、さらに好ましくは800以上、最も好ましくは少なくとも1000の分子量を有するように分子量制御されている。
別の局面において、本発明は、糖鎖捕捉部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を合成する方法を提供する。この方法は、A)以下の式:
Figure 2005061444
[式中、Xは糖鎖捕捉部位であり、Yは親水性部位であり、Hは水素原子である]
で表される化合物から水素原子を脱離して、以下の式:
Figure 2005061444
で表されるカルベンを提供する工程;およびB)該カルベンと、フラーレン核とを、該カルベンが該フラーレン核の二重結合に付加し得る条件下で、接触させる工程、を包含する。
これまでに、フラーレンの誘導体化の方法の1つとして、C60フラーレンとマロン酸エステルとのカップリング反応が報告されている(例えば、C.Bingel,Chem.Ber.,126,1957−1959,(1993)、J.−F.Nierengarten and J.−F. Nicoud,Terahedron Lett.,38,7737−7740,(1997))。このカップリング反応原理は、マロン酸エステルを活性化してカルベン種を形成させ、これをC60フラーレンに付加させるというものである。この原理は、本発明のフラーレン誘導体を合成する際にも適用することができる。同様に、カルベン種を形成させてこれをC60フラーレンと反応させ、C60をジアルキル化する方法も報告されている(例えば、特開平9−25246号公報)。具体的には、スルホン酸ヒドラゾンのアルカリ金属塩とC60フラーレンとをクロロベンゼン等の溶媒中で加熱することにより、スルホン酸ヒドラゾンのアルカリ塩のC=N結合が開裂してジアルキルカルベン(:C(R))を生成し、これがC60フラーレンの5員環の炭素間結合に挿入反応して〔5,6〕モノ付加体を得ている。例えば、図1および2の本発明のフラーレン誘導体(7)は、以上の反応原理を用いて合成することができる。
別の局面において、本発明のフラーレン誘導体は、アルデヒド誘導体とカルボン酸誘導体とをC60と反応させてC60フラーレンの二重結合上で環化反応を起こさせるという反応原理を用いて合成することができる。本発明によれば、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を合成する方法であって、以下:RN(R)CHCOOHと、R10CHOと、フラーレン核とを、接触させる工程[式中、Rは低級アルキルであり、Rは水素原子または低級アルキルであり、R10はC1〜C10アルキル、置換されたC1〜C10アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである]、を包含する、方法が提供される。好ましくは、RはCHであり、Rは水素原子であり、R10は、以下:
Figure 2005061444
からなる群より選択される。式中、WおよびW’は、それぞれ独立してCHまたはN原子であり;Yは、O原子、S原子またはNHであり;bは0または1であり、uは1〜5の整数であり、vは1〜5の整数であり、およびxは1〜3の整数である。具体的な環化反応については、図3に示されている。図4の本発明のフラーレン誘導体(11a、11b、12a、12b、13a、13b、14aおよび14b)は、以上の反応原理を用いて合成することができる。
さらに別の局面において、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン核に上記カルベンの付加と上記環化反応を組み合わせて反応させてことでも合成することができる。本発明によれば、上記カルベンの付加と上記環化反応との順番は、特に限定されない。このような反応の組み合わせによって得られる具体的なフラーレン誘導体は、図5に示されるが、これらに限定されない。
別の局面において、本発明は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体と、支持体とを含む、糖鎖捕捉担体を提供する。このような支持体は、例えば、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製するか、あるいは分析するために用いることができる。本発明の糖鎖捕捉担体は、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用することにより、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができ、あるいは、その含有比を分析することができる。取り出した試料中の糖鎖および/または糖鎖含有物質の状態は、実質的に天然の状態を反映していることから、糖鎖により判定することができる被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料から簡便に判定することができる。
別の実施形態において、本発明の糖鎖捕捉担体において、フラーレン誘導体は平面展開されている。平面展開は、当該分野において周知の方法を応用して実行することができる。好ましくは、この平面展開したフラーレン誘導体は、キャスト膜または単分子膜の形態をとることが有利であり得る。このような膜は、マススペクトルのようなプレート上での反応を必要とする技術、糖鎖レプリカを製造する方法、糖鎖チップを製造する際などに有用である。これら列挙した技術においては、膜状の支持体上で糖鎖を捕捉することが有利あるいは必要とされるからである。キャスト膜および単分子膜を製造する技術は、当該分野において周知であり、例えば、LB単分子膜法、型にキャストし自然蒸発する方法、水面上に脂質材料を浮かべて支持体を成型する方法などが挙げられるがそれらに限定されない。具体的には、例えば、そのような方法としては、例えば、MALDI−TOF MSにおいて用いる場合、糖鎖捕捉担体の溶液(好ましくは、酢酸緩衝液などの緩衝液)に、必要に応じて糖鎖または糖鎖含有物質あるいはそれを含む試料を加え、その後、メタノールのようなアルコールを加え、MALDI−TOF MSのプレートにキャストし、自然蒸発することによって相互作用させることができる。
別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する方法を提供する。この方法は、a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件下で、接触させる工程;b)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との複合体を取り出す工程;およびc)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す工程、を包含する。この方法では、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体が使用されることから、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用することにより、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができるという従来達成不可能であった効果が奏される。あるいは、本発明の上記方法により、その含有比を分析することができる試料を提供することができる。このように、天然の状態を反映することができることにより、例えば、糖鎖により判定することができる被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料から簡便に判定することができる。あるいは、天然に存在する状態を反映した糖鎖が濃縮されているということにより、医薬、農業、保健、食品、化粧品など、生体分子が関与する分野において有利に使用することができる糖鎖組成物を提供することが可能となった。このような糖鎖組成物は、糖鎖組成がオリジナルの糖鎖結合状態と実質的に同一の組成比を有している点で、従来の分解生成物と区別することが可能であり、オリジナルの糖鎖を反映させることが必要な種々の局面において多大な効果をもたらす。
上述の方法における工程a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件下で、接触させる工程は、本発明の糖鎖捕捉担体と、試料とを、混合し、混合したものを糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件下に曝すことによって達成することが可能である。試料は、所望の生物または合成物から当該分野において周知の技術を用いて調製することができる。疾患、障害または状態を検査することが所望される場合、そのような検査対象となる生体から試料(例えば、血液、尿など)を入手することによって調製することができる。そのような試料は、そのまま用いることも可能であり、あるいは、糖鎖含有物質から糖鎖を遊離させる反応に供した後に使用することも可能である。糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件は、本明細書において定義されるとおりであり、使用される物質の性質、量などを考慮して、当該分野において周知の技術を用いて、当業者が適宜調節することができる。
上述の方法における工程b)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との複合体を取り出す工程において、流体は、水溶液、有機溶媒およびこれらの混合物からなる群より選択されるものが有利であり得る。より好ましくは、流体は水溶液である。特に、ここで使用される流体は、複合体が破壊しないような緩衝液(例えば、pHが中性付近の緩衝液)を用いることが好ましい。工程b)では、好ましくは、遠心分離を行うことも可能である。
上述の方法における工程c)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す工程は、形成した複合体の性質(特に、相互作用の形式)を考慮することにより、当該分野において周知の技術を用いて、当業者が適宜行うことができる。そのような条件としては、例えば、強酸の存在などが挙げられるがそれらに限定されない。ただし、この条件では、糖鎖そのものが破壊されないことが好ましくあり得る。糖鎖の状態を天然のまま保持することが所望される場合、このような条件は特に好ましくあり得る。しかし、糖鎖が破壊されるような条件もまた、精製、分離または濃縮後の目的に応じて使用可能である。好ましくは、上記解消は、全部であり得る。
上記方法において、工程a)、b)およびc)は、同一の容器内で行われることが好ましくあり得るが、別々の容器において行うこともまた別の実施形態において好ましくあり得る。同一の容器で行うことにより、糖鎖および糖鎖含有物質の精製、濃縮および分離が、ストリームライン化された手順で行うことが可能となり、自動化も行うことができるようになる。ただし、使用する反応条件、流体などが異なる場合、別々の容器で行うことが有利であることもある。
本発明の試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する方法において、上記工程a)の前に、前記試料中のアルデヒド基を遊離させる工程を包含することが好ましくあり得る。これは、例えば、糖鎖のアルデヒド基が保護されている場合などにおいて、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が有利に相互作用することができるようになるからである。そのようなアルデヒド基を遊離させる工程は、好ましくは、酵素処理および/または化学法による供プロトン反応を包含する。酵素処理としては、例えば、グリコシダーゼによる処理が挙げられ、化学法による処理としては、ヒドラジン分解を挙げることができる。本発明の方法では、酵素処理および化学法をそれぞれ単独で用いてもよく、両方組み合わせて用いてもよい。酵素は、単数の種類であってもよく、複数種類のものであってもよい。酵素は、どのようなものでもよく、例えば、植物、酵母、かび由来のグルコシダーゼ、好ましくはフラボバクテリウム由来のN−グルコシダーゼが挙げられるがそれらに限定されない。ヒドラジン分解が好ましい。酵素ではN型糖鎖のみが分離され得るが、ヒドラジン分解ではN型糖鎖およびO型糖鎖の両方を分離、分析することができるからである。ヒドラジン分解は、気相であっても液相であってもよい。液相によるヒドラジン分解は、操作は容易であるが、多数の試料を処理するには向かず、試薬に接する危険性があることから安全性に問題がある。ヒドラジン除去に時間がかかる点も難点である。必要な機器としては、ブロックヒータ、ネジ口バイアル、真空ポンプがある。糖鎖含有物質が糖ペプチドの場合、ペプチド自体はアミノ酸ヒドラジドに分解される。気相ヒドラジン分解は、操作が容易であり、多数の試料を同時に処理することが可能である。必要な器具としては、気相式ヒドラジン分解装置、真空ポンプがある。気相ヒドラジン分解は、多検体からの疾病マーカーの探索、プロテオーム
解析(翻訳後修飾)などのハイスループット処理に向いているといえる。従って、本発明では、これら分離技術を単独で、または組み合わせて用いることが可能である。
本発明の試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する方法において、さらに、d)前記糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件に、前記試料を供する工程、を包含することが好ましくあり得る。このように試料中に含まれている糖鎖含有物質の糖鎖部分を単離することにより、糖鎖の分析が容易になったり、糖鎖自体を他の目的に使用することができるという点で有利になる。
糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件は、本明細書において定義されるとおりである。そのような条件としては、例えば、物理的手段(例えば、レーザーなど)、化学的手段(酸性条件)または生化学的手段(例えば、グリコシダーゼなどの酵素)を用いることなどが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、ヒドラジン分解またはグリコシダーゼによる酵素処理が挙げられるがそれらに限定されない。
別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する装置を提供する。この装置は、a)試料導入部;b)流体相を収容し得る空間を有する容器;c)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体;を備え、該容器は、該試料導入部と流体連絡している。この装置は、本発明のフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体を利用して、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製することから、例えば、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用する性質に起因して、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができる。また、天然に存在する状態を反映しながら含有比を分析することができる試料を提供することができる。本発明の装置を用いることによって、天然の状態を反映することができることにより、糖鎖により判定することができる被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料から簡便に判定することができる。このような利点を有する装置は、医薬、農業、保健、食品、化粧品など、生体分子が関与する分野において有利に使用することができる糖鎖組成物を提供するために使用することができる。本発明の装置は、糖鎖組成がオリジナルの糖鎖結合状態と実質的に同一の組成比を有しているが、糖鎖以外の物質が低減した新規糖鎖組成物を提供することができるという点で、従来の装置にない優れた利点を提供する。
本発明の装置において使用されるa)試料導入部は、試料を導入することができる部分であれば、どのような形態でもよい。分離、濃縮または精製が目的とされることから、試料導入部は、汚染されていないことが好ましいが、糖鎖でも糖鎖含有物質でも汚染されていなければ、他の物質(単純タンパク質など)で汚染されていてもよい。
本発明の装置において使用されるb)流体相を収容し得る空間を有する容器は、糖鎖と、本発明の糖鎖捕捉担体との間の相互作用を完全に排除しないようなものであれば、どのような容器を用いてもよい。好ましくは、そのような相互作用に影響を与えないものであり得る。より好ましくは、糖鎖捕捉担体が結合していることが有利であり得る。そのような担体との結合は、担体中の支持体を介して行われることが好ましい。また、この糖鎖捕捉担体において、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体と支持体とは結合(好ましくは共有結合)していることが好ましい。このような容器は、想定される反応および装置の使用目的に鑑みて、当該分野において周知の技術の技術を用いて、当業者は容易に製造することができる。
本発明の装置において使用されるc)上記フラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体は、本発明の糖鎖捕捉担体であれば、どのようなものを使用してもよい。したがって、このような糖鎖捕捉担体としては、本明細書において記載される実施形態に関するものであれば、どのようなものでも使用することが可能であり、当業者は、必要に応じて、装置への応用のために改変を施すことができる。そのような改変もまた本発明の範囲内にあることは当然である。そのような改変としては、本発明の糖鎖捕捉担体を、容器への固定に適したように改変することが挙げられるがそれらに限定されない。そのような改変としては、例えば、反応性官能基をさらに加え、容器上にそのような反応性官能基と反応する官能基を配置し、それらを反応させることが挙げられるがそれらに限定されない。
別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製するシステムを提供する。このシステムは、A)a)試料導入部;b)流体相を収容し得る空間を有する容器;c)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体;を備え、該容器は、該試料導入部と流体連絡している、装置;B)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖との複合体を取り出す手段;ならびにC)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す手段、を備える。このようなシステムを提供することによって、本発明は、医薬、農業、保健、食品、化粧品など、生体分子が関与する分野において有利に使用することができる糖鎖組成物を提供するために使用することができる。
本発明のシステムにおいて用いられるA)装置としては、上述の本発明の装置を用いることができる。ただし、この装置は、B)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖との複合体を取り出す手段、およびC)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す手段を収容または連結することができるようにするか、あるいはそれらの手段とともに提供される形状に改変されることが好ましい。
好ましい実施形態において、上記手段C)は、アルデヒドを遊離させる手段である。この手段C)は、好ましくは、アルデヒドを遊離させる酵素(グリコシダーゼなどの酵素)または化学物質(例えば、ヒドラゾン分解に用いられる試薬)である。
本発明のシステムにおいて用いられるB)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖との複合体を取り出す手段は、複合体を取り出すことができる手段であれば、どのようなものであっても用いることができる。当業者は、複合体の性質、装置の構成など種々のパラメータを考慮して、当該分野で周知の技術を参酌することによって、適切な複合体取り出し手段を選択することができる。そのような手段の好ましい例としては、遠心分離器、フィルター、クロマトグラフィー装置が挙げられるがそれらに限定されない。より好ましくは、フィルターであり得る。そのようなフィルターは、好ましくは、複合体を残し、複合体化されていない成分は通過するような構成であることが好ましくあり得る。そのような構成をとるフィルターとしては、例えば、複合体の粒径および存在すると予想される成分の粒径を算出し、その中間のサイズのポアサイズを有するものを用いることができる。
本発明のシステムにおいて用いられる、C)複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す手段は、そのような条件を提示することができる手段であれば、どのような手段であってもよい。溶液を交換することによってそのような条件を提示することができるのであれば、そのような溶液を収容する容器がそのような手段として適切であり得る。新たな成分(固体または液体)を添加することによってそのような条件を達成することができるのであれば、上記手段は、そのような成分を収容する容器であり得る。そのような手段または容器は、上記提示すべき条件を考慮することで、当該分野において周知の技術を用いて当業者は、容易に製造および取り扱いをすることができる。
好ましい実施形態において、本発明のシステムは、さらに、D)前記糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件に、前記試料を供する手段、を備える。このような手段は、上記分離が達成されるような条件を提示することができる手段であれば、どのようなものであってもよい。溶液を交換することによってそのような条件を提示することができるのであれば、そのような溶液を収容する容器がそのような手段として適切であり得る。新たな成分(固体または液体)を添加することによってそのような条件を達成することができるのであれば、上記手段は、そのような成分を収容する容器であり得る。そのような手段または容器は、上記提示すべき条件を考慮することで、当該分野において周知の技術を用いて当業者は、容易に製造および取り扱いをすることができる。
別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する装置を製造する方法を提供する。この方法は、a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を提供する工程;b)該糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体と該支持体とを相互作用させて糖鎖捕捉担体を作製する工程;c)該糖鎖捕捉担体を容器に固定する工程、を包含する。この方法は、本発明の糖鎖捕捉担体を使用することから、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用することにより、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができる装置をこの方法によって製造することができる。
本発明の方法において行われるa)上記フラーレン誘導体および支持体を提供する工程では、本明細書において記載される糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が使用され得る。支持体もまた、本明細書において記載されるものが使用され得る。糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体として好ましい実施形態もまた、本明細書において記載されており、そのような好ましい実施形態もまた、上記方法において用いることができる。支持体として好ましい実施形態もまた、本明細書において記載されており、そのような好ましい実施形態もまた、上記方法において用いることができる。
本発明の方法において行われるb)上記フラーレン核とを含むフラーレン誘導体と該支持体とを相互作用させて糖鎖捕捉担体を作製する工程もまた、当該分野において周知の技術を組み合わせて実施することができる。このような糖鎖捕捉担体の作製は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体と支持体とが、相互作用する十分な条件(例えば、緩衝剤、溶媒の極性、温度、pH、塩濃度、圧力など)に、これら両物質を曝すことによって達成することができる。このような条件を設定するのに必要なパラメータの設定は、当業者の技術範囲内であり、相互作用の種類、糖鎖の種類、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体(例えば、アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基を有する物質)および支持体(脂質)の種類など相互作用に関連する諸パラメータを考慮することにより、当業者は、そのような条件を当該分野において周知の技術を用いて設定し、相互作用反応を行わせることができる。
本発明の方法において行われるc)該糖鎖捕捉担体を容器に固定する工程もまた、当該分野において周知の技術を組み合わせて実施することができる。このような固定は、糖鎖捕捉担体と容器とが、相互作用する十分な条件(例えば、緩衝剤、溶媒の極性、温度、pH、塩濃度、圧力など)に、これら両物質を曝すことによって達成することができる。このような条件を設定するのに必要なパラメータの設定は、当業者の技術範囲内であり、相互作用の種類、糖鎖捕捉担体および容器の材質の種類など相互作用に関連する諸パラメータを考慮することにより、当業者は、そのような条件を当該分野において周知の技術を用いて設定し、固定を行わせることができる。
別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する方法を提供する。この方法は、a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖とが反応し得る条件下で、接触させる工程;b)所望のストリンジェンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す工程;およびc)該糖鎖捕捉担体と相互作用した物質を同定する工程、を包含する。この方法では、本発明の糖鎖捕捉担体が使用されることから、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用するという特性により、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質をその含有比などを分析することができる。このように、天然の状態を反映することができることにより、例えば、糖鎖により判定することができる被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料から簡便に判定することができる。あるいは、天然に存在する状態を反映した糖鎖が濃縮されているということにより、医薬、農業、保健、食品、化粧品など、生体分子が関与する分野において有利に使用することができる分析値を提供することができる。このような分析値は、データの基礎となる試料の糖鎖組成がオリジナルの糖鎖結合状態と実質的に同一の組成比を有している点で、オリジナルの糖鎖の種類を忠実に反映させることが必要な種々の局面において多大な効果をもたらす。
好ましい実施形態では、本発明の方法によって分析される対象は、病因を含むかまたは含むと予測される被検体に由来する試料であり得る。そのような試料は、直接使用してもよいし、糖鎖分析に影響のないような形の処理を行ってもよい。本発明の方法において分析される試料は、動物、植物、細菌、ウイルス、菌類などに由来し得、好ましくは、ヒトまたは人間生活に関連する生物(例えば、病原体、家畜、農作物など)であり得る。
好ましい実施形態では、本発明の分析方法では、上記工程a)〜c)は、前記糖鎖捕捉担体を担持したチップ上で行われる。チップについては、本明細書において別の場所において説明したとおりであり、当業者であれば、上記工程を行うための適切な構成を、本明細書の開示に従って、当該分野において周知の技術を組み合わせて適切に構築することができる。
本発明の分析方法において使用される糖鎖捕捉担体は、チップ上でアレイ状に配置されることが好ましい。このようにアレイ状に配置された分析装置(デバイス)は、本明細書において糖鎖アレイともいう。
別の実施形態では、本発明の分析方法における同定工程c)は、物理学的方法(マススペクトル分析、NMR、X線解析、元素分析など)、化学的方法(化学的特異的反応の観察など)、生化学的方法(酵素の基質特異性などを判定)または生物学的方法(生物(例えば、細菌などの微生物)の反応)を包含し得る。好ましい実施形態において、本発明の分析方法における同定工程c)はマススペクトル分析を含む。このようなマススペクトル分析としては、例えば、MALDI−TOF MSが挙げられるがそれに限定されない。あるいは、NMRを使用してもよい。
別の局面において、本発明は、糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料の糖鎖レプリカを作製するための方法を提供する。この方法は、a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を支持体上に平面展開させる工程;およびb)糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料を、該支持体に接触させる工程、を包含する。このような糖鎖レプリカは、糖鎖が天然に存在する状態、含有比、場所などが反映されていることから、この糖鎖レプリカを調査することによって、糖鎖レプリカが由来する被検体の状態を忠実にかつ簡便に検査することができるという利点を提供することができる。このような糖鎖レプリカは、従来そのような発想も存在しなかったことから、直接診断の手段としてのその有用性は絶大である。このような糖鎖レプリカは、本発明のフラーレン誘導体が平面展開したものを、好ましくはガラスなどの固体箔(好ましくは、透明なもの)に吸着させ、生体試料に密着させることによって生体試料平面に由来する糖鎖の2次元像をそのような固体箔において写し取ることによって作製することができる。従って、ここで使用される支持体は、疎水性相互作用をしやすいものであることが好ましい。
好ましい実施形態において、この糖鎖レプリカを作製する際に、支持体において、前記試料の所望の形質をマークする工程を包含することが有利であり得る。ここで、所望の形質は、病変などの肉眼で観察可能であるものであるか、あるいは、別の手段によって観察可能であるものであり得る。このように病変などの所望の形質をマークし、マークと、同定された糖鎖とを相関づけることによって、従来未知であった糖鎖とある形質との関係を研究することができる。あるいは、既知の関係であれば、その糖鎖を同定するだけで、病変などの所望の形質の状態を定性的または定量的に検査することができる。
別の局面において、本発明は、糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料の糖鎖レプリカを提供する。この糖鎖レプリカは、a)固体箔;b)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が平面展開された支持体;およびc)糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料に由来する成分であって、該成分は糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体に捕捉されている、成分、を含む。このような糖鎖レプリカは、糖鎖が天然に存在する状態、含有比、場所などが反映されていることから、この糖鎖レプリカを調査することによって、糖鎖レプリカが由来する被検体の状態を忠実にかつ簡便に検査することができるという利点を提供することができる。このような糖鎖レプリカは、本発明のフラーレン誘導体が平面展開したものを、好ましくはガラスなどの固体箔(好ましくは、透明なもの)に吸着させ、生体試料に密着させることによって生体試料平面に由来する糖鎖の2次元像をそのような固体箔において写し取ることによって作製することができる。固体箔として使用することができる材料は、生体組織または組織片などの平面状のものと形状を適合させることができるものが好ましくあり得る。従って、ガラスなどの硬いものではなく、プラスチックのようなものが 好ましくあり得る。また、可視光線で観察する場合には透明であることが好ましい。紫外線で観察する場合には、紫外線を透過させるような性質であることが好ましい。
好ましい実施形態において、本発明の糖鎖レプリカ中の固体箔には、試料の所望の形質(例えば、病変または病害など)に関するマークが付されている。このことにより、所望の形質との相関付けが容易になる。
一つの局面において、本発明は、糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料上の糖鎖を分析する方法を提供する。この方法は、a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を支持体上に平面展開させるさせる工程;b)糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料を、該支持体に接触させる工程;c)該支持体の表面に存在する糖鎖を分析する、を包含する。このような支持体は、上述の糖鎖レプリカと同じであり、この方法は、いわば、糖鎖レプリカを用いた分析方法といえる。糖鎖レプリカを用いた分析方法は、試料をそのまま二次元像として糖鎖分布を分析することができることから、本発明の糖鎖レプリカを用いた分析方法は、従来技術では達成することができなかった、二次元的分析方法を提供するという有用性を有する。ここで、上記工程a)およびb)は、上述の糖鎖レプリカの製造方法と同様の技術を用いることができる。上記工程c)における糖鎖分析は、本明細書において記載されるとおり、種々の方法(例えば、マススペクトルのような物理学的方法、化学的方法、生化学的方法、生物学的方法など)を用いることができる。従って、この分析工程は、固体箔の表面をイオン化し、その後、マススペクトル分析を行うことを包含する。
好ましくは、この分析方法は、上述の固体箔において、前記試料の所望の形質をマークする工程、および該マークと該マススペクトル分析により同定された糖鎖とを相関付ける工程をさらに包含する。このような工程を包含することによって、所望の形質を即座にかつ、二次元像として分析することができる。
別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する装置を提供する。この装置は、a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体;およびb)糖鎖を同定する手段、を含む。このような装置は、糖鎖を簡便かつ信頼性高く同定することができる。どのような糖鎖を含む試料でも対象とすることができ、簡便であることから、自動化された装置として製造することもできる。そのような自動化は、当該分野において周知の技術を用いて行うことができる。
ここで含まれる糖鎖捕捉担体は、本明細書において説明されるとおりであり、その好ましい実施形態は、この装置において適切である場合、適宜使用することができる。糖鎖を同定する手段は、どのようなものでもよいが、種々の方法(例えば、マススペクトルのような物理学的方法、化学的方法、生化学的方法、生物学的方法など)を用いた手段であり得る。装置を小型化するためには、例えば、生化学的手段(糖鎖に特異的に結合する抗体、レクチンなど)を用いるか、あるいは、グリコシダーゼのような酵素を用いることが有利であり得る。
別の局面において、本発明は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が配置された支持体を含む、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析するデバイスを提供する。このようなデバイスは、どのような形状でもよく、どのようなサイズであってもよい。好ましくは、このデバイスにおいて、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体は、アレイ状に前記支持体に配置される。より好ましくは、このデバイスは、チップ形状を有する。チップ形状のデバイスを用いる場合は、例えば、ナイロン膜などの比較的硬度の低い材料またはガラスなどの硬度の高い材料を用いることができ、ナイロン膜などを用いた場合は、簡便な解析システムを用いて結果を分析することができる。高密度のものを解析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。従って、通常糖鎖チップとしての使用が所望される場合には、ガラスなどの硬度のあるものを支持体(または基板)として用いることが好ましい。
別の局面において、本発明は、被験体の診断または鑑別のための方法を提供する。この方法は、a)本発明のデバイスを用いて、被験体に由来する試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する工程、を包含する。このデバイスは、上述のデバイスであり、好ましくは、アレイ状で糖鎖捕捉担体が配置されており、より好ましくは、チップ形状を採る。
好ましい実施形態において、本発明の診断または鑑定の方法において行われる分析工程は、糖鎖または糖鎖含有物質に対する抗体および/またはレクチンの存在を検出することを包含する。
別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析するシステムを提供する。このシステムは、a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体;b)所望のストリンジェンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す手段;およびc)糖鎖を同定する手段、を含む。このシステムは、本発明の糖鎖捕捉担体を使用することから、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用するという特性により、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質をその含有比などを分析することができる。このように、天然の状態を反映することができることにより、例えば、糖鎖により判定することができる被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料から簡便に判定することができる。あるいは、天然に存在する状態を反映した糖鎖が濃縮されているということにより、医薬、農業、保健、食品、化粧品など、生体分子が関与する分野において有利に使用することができる分析値を提供することができる。このような分析値は、データの基礎となる試料の糖鎖組成がオリジナルの糖鎖結合状態と実質的に同一の組成比を有している点で、オリジナルの糖鎖の種類を忠実に反映させることが必要な種々の局面において多大な効果をもたらす。
本発明の上記システムによって用いられるa)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体は、本明細書において記載されるとおりであり、その好ましい実施形態は、このシステムにおいても利用することができる。
本発明の上記システムによって用いられるb)所望のストリンジェンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す手段もまた、本明細書において記載されるとおりの技術を用いることができ、また、その好ましい実施形態は、このシステムにおいても利用することができる。
本発明の上記システムによって用いられるc)糖鎖を同定する手段もまた、どのようなものでもよいが、種々の方法(例えば、マススペクトルのような物理学的方法、化学的方法、生化学的方法、生物学的方法など)を用いた手段であり得る。装置を小型化するためには、例えば、生化学的手段(糖鎖に特異的に結合する抗体、レクチンなど)を用いるか、あるいは、グリコシダーゼのような酵素を用いることが有利であり得る。あるいは、システムが大型であってもよい場合は、この糖鎖を同定する手段は、マススペクトル分析器であってもよい。
別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する装置を製造する方法を提供する。このような方法は、a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を提供する工程;およびb)該糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体と該支持体とを相互作用させて糖鎖捕捉担体を作製する工程、を包含する。このような方法は、従来になかった試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する装置を提供するというて点で、有用性を有する。好ましくは、この製造方法は、糖鎖捕捉担体を、収容する容器に配置する工程をさらに包含する。
別の局面において、本発明は、糖鎖アレイを作製するための方法を提供する。この方法は、a)支持体を提供する工程;b)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を所望の配列で配置する工程、を包含する。支持体は本明細書において記載されるとおりのものを利用することができる。この方法でいう所望の配列とは、規則的な配列(例えば、碁盤の目状)であってもよく、不規則な配列であってもよい。好ましくは、規則的な配列であり得る。
別の局面において、本発明は、試料中の、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質を分析する方法を提供する。このような方法は、a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該糖鎖または糖鎖含有物質とを相互作用させて固定する工程;b)該糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質と該糖鎖とが反応し得ると想定される条件下で、接触させる工程;c)所望のストリンジェンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体と該試料との混合物を曝す工程;およびd)該糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質を同定する工程を包含する。この方法では、上述の方法とは逆に、試料中に含まれると予測される、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する、未知の物質を分析することができる。そのような糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質は、抗体またはレクチンであり得るがそれに限定されない。抗体である場合には、その抗体が標的とする糖鎖の存在がその被検体において推定される。従って、そのような抗体が存在することがこの方法によって判定されるとき、その被検体は、その特定の糖鎖が存在すると判定され得る。そのような糖鎖が特定の疾患、障害または状態に関連することが既知である場合には、抗体の存在によって、そのような疾患、障害または状態を診断することができる。従って、ここで用いられる試料は、病変を有すると予想される被検体に由来するものであり得る。抗体およびレクチンの相互作用に関する技術もまた、当該分野において周知であり、そのような周知技術を適宜組み合わせることによって、当業者は上述の判定などを容易に行うことができる。本発明のこの方法によって同定された、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する新規の物質もまた、本発明の範囲内にある。そのような新規の物質を使用して、本発明の方法、装置、システムなどを実施することができる。
従って、好ましい実施形態において、本発明のこの方法は、e)抗体またはレクチンと、その存在に関連する疾患、障害、病害または状態を相関づける工程、をさらに包含する。このような工程を行うための技術は、当該分野において周知であり、当業者は適宜選択して用いることができる。
別の局面において、本発明は、試料中の、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質を分析するためのデバイスを提供する。このデバイスは、該糖鎖または糖鎖含有物質が特異的相互作用により固定された、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体を含む。このようなデバイスは、試料中に含まれると予測される、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する、未知の物質を分析することができる。このような固定方法は、相互作用として例えば、共有結合を選択することによって達成することができる。
別の局面において、本発明は、試料中の、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質を分析するシステムを提供する。このシステムは、a)該糖鎖または糖鎖含有物質が特異的相互作用により固定された、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体を含む、デバイス;b)試料導入部;c)所望のストリンジェンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体と該試料との混合物を曝す手段;およびd)該糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質を同定する手段、を包含する。このようなシステムは、試料中に含まれると予測される、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する、未知の物質を分析することができる。
本発明のこのシステムにおいて使用されるa)該糖鎖または糖鎖含有物質が特異的相互作用により固定された、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体を含む、デバイスは、本明細書において上述されるようにして製造することができる。
本発明のこのシステムにおいて使用されるb)試料導入部は、本明細書において記載されるとおりであり、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。
本発明のこのシステムにおいて使用されるc)所望のストリンジェンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体と該試料との混合物を曝す手段もまた、本明細書において記載されるとおりであり、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。
本発明のこのシステムにおいて使用されるd)該糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質を同定する手段もまた、本明細書において記載されるとおりであり、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。
別の局面において、本発明は、糖鎖を含む試料を、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体で接触し、その後相互作用した試料中の糖鎖を分離することによって得られる、糖鎖含量が上昇した糖鎖組成物を提供する。このような糖鎖組成物は、天然に存在する糖鎖および/または糖鎖含有物質が保持されているが、糖鎖および糖鎖含有物質以外の物質が低減していることから、レクチン、抗体などの従来の技術では達成できなかった組成の組成物を提供することができる。
好ましい実施形態において、上記糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体は、任意の糖鎖と所定のレベル以上で特異的に相互作用し得る。このことにより、このような糖鎖組成物は、天然に存在する糖鎖および/または糖鎖含有物質の含有比がほぼ反映されているが、糖鎖および糖鎖含有物質以外の物質が低減していることから、レクチン、抗体などの従来の技術では達成できなかった組成の組成物を提供することができる。
このような糖鎖組成物は、医薬として用いることができる。このような糖鎖組成物はまた、食品、保健食品、化粧品、高分子材料(生分解性ポリマーなど)などとして用いることができる。あるいは、このような糖鎖組成物は、手術材料(移植片)などとして使用することも可能である。このように医薬などとして使用する形態については、本明細書において記載されるように、当該分野において周知の技術を用いて製造および使用することができる。
本発明はまた、別の局面において、本発明の糖鎖組成物を含む、アッセイキットを提供する。このようなアッセイキットは、このような糖鎖組成物がある特定の試料・供給源に由来する場合には、その供給源の糖鎖組成比を忠実に反映していることから、簡便かつ精度の高い結果を提供することができる。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
(実施例1:糖鎖捕捉フラーレン誘導体(7)の合成)
1.1 5−tert−ブトキシカルボニルアミノオキシペンチル)カルバミン酸ベンジルエステル(4)の合成)
Figure 2005061444
本発明の1実施形態における糖鎖捕捉フラーレン誘導体の具体的な合成過程を図1に示した。
公知の(5−ヒドロキシペンチル)カルバミン酸ベンジルエステル(2)(2.96g)をテトラヒドロフラン(45mL)に溶解し、トリフェニルホスフィン(3.93g)、N−ヒドロキシフタルイミド(2.25g)を加えた。その後氷冷下、ジエチルアゾジカルボキシレート(2.61g)のテトラヒドロフラン(3mL)溶液を滴下し、室温で2時間攪拌した。反応液に少量の水を加えた後、溶媒を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4→1:3→3:7)にて精製して化合物(3)(5.8g)を得た(図1)。
上記の化合物(3)(5.8g)をメタノール(30mL)に溶解し、40%メチルアミンのメタノール溶液(35mL)を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧下濃縮後、トルエンで2回共沸した。得られた残渣を1,4−ジオキサン(45mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(1.77g)、二炭酸ジ−t−ブチル(2.99g)を加え、室温で29時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで希釈した後、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=3:1)にて精製して標記化合物(4)(2.22g)を得た(図1)。化合物(2)を基準に算出した収率:51%。
H−NMR(CDCl)δ:1.35−1.6(m,13H),1.6−1.75(m,2H),3.1−3.3(m,2H),3.86(t,2H,J=6.2Hz),4.14(q,2H,J=7.1Hz),4.88(s,1H),5.11(s,2H),7.21(s,1H),7.3−7.45(m,5H)。
1.2 N−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノオキシペンチル)マロンアミド酸エチルエステル(5)の合成)
Figure 2005061444
上記の化合物(4)(2.10g)を酢酸エチル(55mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(210mg)を加え、水素気流下室温で90分攪拌した。次いで、触媒を濾去して、濾液を減圧下に濃縮した。得られた残渣をN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)に溶解し、マロン酸モノエチルエステル(787mg)、WSC・HCl(1.37g)およびHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)(965mg)を加え、室温で6時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、0.5規定塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧下に留去した。得られた残渣をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=3:2)にて精製して標記化合物(5)(1.38g)を得た(図1)。収率:83%。
H−NMR(CDCl)δ:1.31(t,3H,J=7.6Hz),1.4−1.55(m,11H),1.55−1.7(m,4H),3.25−3.4(m,4H),3.87(t,2H,J=6.3Hz),4.21(q,2H,J=7.1Hz),7.20(bs,1H),7.26(s,1H)。
TOF−Mass:355(M+Na),371(M+K)。
1.3 N−[5−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロキシ−イソインドール−2−イルオキシ)ペンチル]マロンアミド酸エチルエステル(1)の合成)
Figure 2005061444
上記の化合物(5)(786mg)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、氷冷下トリフルオロ酢酸(5mL)のジクロロメタン(5mL)溶液を加えた後、反応液を室温で90分攪拌した。次いで、溶媒を減圧下に留去し、トルエンで2回共沸した。得られた残渣をトルエン(5mL)に溶解し、無水フタル酸(350mg)を加えた。そこにトリエチルアミン(239mg)を加え、80分間還流した。溶媒を減圧下に留去し、得られた残渣をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=3:7→2:3、クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製して標記化合物(1)(708mg)を得た(図1)。収率:69%。
H−NMR(CDCl)δ:1.29(t,3H,J=7.1Hz),1.5−1.7(m,4H),1.7−2.0(m,2H),3.2−3.4(m,4H),4.1−4.3(m,4H),7.19(s,1H),7.65−7.8(m,2H),7.8−7.9(m,2H)。
TOF−Mass:363(M+H),385(M+Na),401(M+K)。
1.4 フラーレン誘導体(6)の合成)
Figure 2005061444
フラーレンC60(100mg)をトルエン(100ml)に溶解し、室温で1時間撹拌した。このフラーレン溶液に上記の化合物(1)(61.2mg)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)(104mg)、ヨウ素(107.2mg)を加え室温で撹拌した。12時間撹拌した後、上記の化合物(1)(25.5mg)、ヨウ素(35.7mg)を加え、更に12時間室温で撹拌した(J.F.Nierengartenetら,Tetrahedron Lett.,Vol.38,7737頁,1997)。溶媒を減圧除去した後、シリカゲルカラム(トルエン:酢酸エチル=5:1)にて精製を行い標記化合物(6)(36mg)を得た(図2)。収率:24%。
H−NMR(CDCl)δ:1.45−1.5(t,3H,J=7.1Hz),1.75−1.8(m,2H),1.8−1.9(m,4H),3.65(q,2H,J=6.0Hz),4.25(t,2H,J=5.8Hz),4.57(q,2H,J=7.1Hz),7.7−7.8(m,4H)。
TOF−Mass:1080(M+H)。
1.5 フラーレン誘導体(7)の合成)
Figure 2005061444
上記の化合物(6)(10mg)をトルエン(10ml)に溶解し、氷冷下で撹拌した。この溶液に40%メチルアミン/メタノール溶液(0.05ml)を加え、4時間撹拌した(図2)。TLC(トルエン:酢酸エチル=3:1)で上記(1)の化合物のスポット(r.f.=0.60)の消失と、ニンヒドリン反応によりアミンの生成(r.f.=0.00)を確認した。また、MALDI TOF MASS(マトリックス:ジスラノール)により標記化合物(7)の生成を確認した。
TOF−Mass:951(M+H),973(M+Na)。
(実施例2:糖鎖捕捉フラーレン誘導体(11a)の合成)
2.1 4−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−イル]ベンズアルデヒド(19)の製造)
Figure 2005061444
本発明の別の実施形態における糖鎖捕捉フラーレン誘導体の具体的な合成過程を図3に示した。
公知化合物[(2−ヒドロキシ)ピペリジン(17)、3.0g]および、[4−フルオロベンズアルデヒド(18)、2.88g]をN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)に溶解し、炭酸カリウム(3.85g)を加え、室温で14時間、50−60℃で12時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで希釈した後、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:3→2:3)にて精製して標記化合物(19)(2.30g)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.25−1.4(m,3H),1.5−1.6(m,2H),1.65−1.8(m,1H),1.83(d,2H,J=12.6Hz),2.92(t,2H,J=12.6Hz),3.74(d,2H,J=3.6Hz),3.94(d,2H,J=13.2Hz),6.90(d,2H,J=12Hz),7.73(d,2H,J=12Hz),9.75(s,1H)。
2.2 4−[4−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノオキシアセトキシエチル)ピペリジン−1−イル]ベンズアルデヒド(20)の製造)
Figure 2005061444
上記(19)の化合物(1.60g)をジクロロメタン(80mL)に溶解し、tert−ブトキシカルボニルアミノオキシ酢酸(2.62g)、WSC(3.95g)および4−ジメチルアミノピリジン(86mg)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応液にクロロホルムを加え、1規定塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧下に留去した。得られた残渣をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=3:7)にて精製して標記化合物(20)(2.47g)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.3−1.4(m,1H),1.48(s,9H),1.6−1.7(m,3H),1.82(d,2H,J=12.6Hz),2.91(dt,2H,J=2.4,12.6Hz),3.94(d,2H,J=13.2Hz),4.27(t,2H,J=6Hz),4.44(s,2H),6.90(d,2H,J=12Hz),7.74(d,2H,J=6Hz),9.76(s,1H)。
2.3 化合物(21)の製造)
Figure 2005061444
フラーレンC60(100mg)のトルエン(60mL)に上記(20)の化合物(284mg)のトルエン(5mL)溶液および、メチルグリシン(12mg)を加え、2時間還流した。反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲル中圧カラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=1:0→5:1)にて精製して標記化合物(21)(37mg)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.3−1.45(m,2H),1.47(s,9H),1.47−1.6(m,1H),1.66(q,2H,J=6.6Hz),1.75−1.85(m,2H),2.65−2.75(m,2H),2.79(s,3H),3.65−3.75(m,2H),4.22(d,1H,J=9Hz),4.26(t,2H,J=7Hz),4.43(s,2H),4.85(s,1H),4.96(d,1H,J=9Hz),6.97(d,2H,J=8.4Hz),7.65(s,2H),7.72(s,1H)。
TOF−Mass:1154(M+H)。
2.4 化合物(11a)の製造)
Figure 2005061444
上記(21)の化合物(20mg)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、氷冷下トリフルオロ酢酸(2mL)のジクロロメタン(2mL)溶液を加えた後、反応液を室温で1時間攪拌した。次いで、溶媒を減圧下に留去し、標記化合物(11a)(20mg)を得た。得られた標記化合物(11a)について、質量分析を行った。このマススペクトルを図6に示した。
TOF−Mass:1054(M+H)。
(実施例3:二相系におけるフラーレン誘導体の糖鎖の捕捉)
3.1 D−(+)−マンノースの捕捉実験)
上記の化合物(7)(5mg)をトルエン(5ml)に溶解し、室温で撹拌した。D−(+)−マンノース(Dextran laboratories社製、19.1mg)を0.01M酢酸ナトリウムbuffer(1ml)に溶解し、このマンノース水溶液を上記溶液に加え、二相系で24時間撹拌した。有機相を取り出し、MALDI TOF MASS(マトリックス:DHB)によりマンノースの捕捉を確認した(図6)。
TOF−Mass:1134(M+Na)。
コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たない化合物(6)で同様の実験をおこなった。コントロール実験ではD−(+)−マンノース由来のシグナルは得られなかった(図には示していない)。
3.2 α1−3,α1−6マンノトリオースの捕捉実験)
上記の化合物(7)(0.1mg)をクロロホルム(0.1ml)に溶解し、更にメタノール(0.05ml)を加えた。α1−3,α1−6マンノトリオース(Dextran laboratories社製、1mg)を水−メタノール混合溶媒(混合比1:1,0.05ml)に溶解し、この水溶液を上記溶液に加え、室温で6時間撹拌した。有機相を取り出し、MALDI TOF MASSによりマンノトリオースの捕捉を確認した(図7)。
TOF−Mass:1460(M+Na)。
コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たない化合物(6)で同様の実験をおこなった。コントロール実験ではα1−3,α1−6マンノトリオース由来のシグナルは得られなかった(図には示していない)。
3.3 α1−4,α1−4マルトトリオースの捕捉実験)
上記の化合物(7)(0.1mg)をクロロホルム(0.1ml)に溶解し、更にメタノール(0.05ml)を加えた。α1−4,α1−4マルトトリオース(Dextran laboratories社製、1mg)を水−メタノール混合溶媒(混合比1:1,0.05ml)に溶解し、この水溶液を上記溶液に加え、40℃で3時間振とうした。有機相を取り出し、MALDI TOF MASSによりマルトトリオースの捕捉を確認した(図8)。
TOF−Mass:1461(M+Na)。
コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たない化合物(6)で同様の実験をおこなった。コントロール実験ではα1−4,α1−4マルトトリオース由来のシグナルは得られなかった(図には示していない)。
3.4 α1−3,β1−4ガラクトトリオースの捕捉実験)
上記の化合物(7)(0.1mg)をクロロホルム(0.1ml)に溶解し、更にメタノール(0.05ml)を加えた。α1−3,β1−4ガラクトトリオース(Dextran laboratories社製、1mg)を水−メタノール混合溶媒(混合比1:1,0.05ml)に溶解し、この水溶液を上記溶液に加え、40℃で3時間振とうした。有機相を取り出し、MALDI TOF MASSによりガラクトトリオースの捕捉を確認した(図9)。
TOF−Mass:1460(M+Na)。
コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たない化合物(6)で同様の実験をおこなった。コントロール実験ではα1−3,β1−4ガラクトトリオース由来のシグナルは得られなかった(図には示していない)。
3.5 ラクト−N−テトラオースの捕捉実験)
上記の化合物(7)(0.1mg)をクロロホルム(0.1ml)に溶解し、更にメタノール(0.05ml)を加えた。ラクト−N−テトラオース(Dextran laboratories社製、1mg)を水−メタノール混合溶媒(混合比1:1,0.05ml)に溶解し、この水溶液を上記溶液に加え、40℃で3時間振とうした。有機相を取り出し、MALDI TOF MASSによりラクト−N−テトラオースの捕捉を確認した(図10)。
TOF−Mass:1664(M+Na)。
コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たない化合物(6)で同様の実験をおこなった。コントロール実験ではラクト−N−テトラオース由来のシグナルは得られなかった(図には示していない)。
(実施例4:二相系におけるフラーレン誘導体の特異的糖鎖捕捉の確認)
上記(7)の化合物(0.1mg)をクロロホルム(0.1ml)に溶解し、更にメタノール(0.05ml)を加える。α1−3,α1−6マンノトリオース(Dextran laboratories社製、1mg)および還元末端がメチル化されたα1−3,α1−6マンノトリオース(Dextran laboratories社製、1mg)を水−メタノール混合溶媒(混合比1:1,0.05ml)に溶解し、この水溶液を上記溶液に加え、室温で6時間撹拌する。有機相を取り出し、MALDI TOF MASSによりマンノトリオースの捕捉を確認する。
(実施例5:糖鎖捕捉フラーレン誘導体を用いた糖タンパク質由来糖鎖の精製および分離への応用)
5.1 糖鎖の切り出し)
精製ヒト由来免疫グロブリン(シグマ社製)を0.01規定塩酸水溶液中に溶解し、pH2に0.1規定塩酸を用いて合わせ、90度60分加熱処理を行った。加熱処理後、重炭酸アンモニウム溶液にて中和し、凍結乾燥した。凍結乾燥品を50mMの重炭酸アンモニウム溶液に溶解し、免疫グロブリンに対して100分の1重量のトリプシンを加え、37度24時間反応した。90度15分加熱し、室温まで冷却した後、免疫グロブリン1mgあたり1ユニットのN−グリコシダーゼ(フラボバクテリウム由来の酵素を大腸菌にて発現。ロシュ社製)を加え37度24時間反応後、90度15分加熱し反応を停止した。この内、免疫グロブリン5mg相当を糖鎖精製試験に供した。
5.2 糖鎖捕捉及び分離精製)
上記(7)の化合物(0.1mg)をクロロホルム(0.1ml)に溶解し、更にメタノール(0.05ml)を加える。そこに、先の免疫グロブリン由来の糖鎖混合物の溶液(5mgのヒト由来免疫グロブリンが1mlの重炭酸アンモニウム溶液に溶解している)200マイクロリットルを加え、40℃で3時間振とうする。有機相を分離した後、有機溶媒を減圧濃縮し、そこに溶液が透明になるまでメタノール/超純水混合溶媒を少量づつ添加し、糖鎖を捕捉したフラーレン誘導体の溶液を得る。
5.3 糖鎖のリリース過程)
この糖鎖を捕捉したフラーレン誘導体の溶液にプロトン型イオン交換樹脂(アルドリッチ社製、Amberlite IR−120)を添加し、37°Cで1時間振動撹拌する。溶液をマイクロコン(ミリポア社製)を用いて10,000回転/分、10°Cの条件で30分間遠心濾過し、濾液を回収する。
5.4 糖鎖の質量分析)
濾液をMALDI−TOF MS (Bruker社製、Biflex)によって質量分析する。測定のマトリックス試薬として、2,5−ジヒドロキシベンゾイック酸(Fluka社製)を用いる。用いた抗体由来の糖鎖は構造が既知であり(N−結合型糖鎖)、出現するマススペクトルシグナルが糖鎖由来であるかを判定する。糖鎖捕捉ポリマーで精製する以前のMALDI−TOF MSのシグナルとの比較により、糖鎖が選択的に分離精製されたかどうかを確認する。
5.5 HPLCとの比較)
一方、N−グリコシダーゼ処理をした試料の内、免疫グロブリン5mg相当に50μgのプロナーゼ(カルビオケミ社製)を加え、37度16時間反応後、90度15分加熱し反応を停止する。反応物をバイオゲル(バイオラド社製)にてゲルろ過にて精製した後、
糖鎖を2−アミノピリジン塩酸溶液とシアノトリヒドロほう酸ナトリウムを用いてピリジルアミン誘導体化し、セファデックス(アマシャム バイオテク社製)にて未反応2−アミノピリジンを除く。糖鎖を逆相系カラム高速液体クロマトグラフィーにて分析する。既報(Anal.Biochemistry,163,489−499,1987)に記載されるこの免疫グロブリン由来の糖鎖組成と照合し、このHPLCによる分析が正確に行われたかどうかを判定した後、上記の質量分析結果と一致するかどうかを確認する。
(実施例6:糖鎖捕捉フラーレンを表面にコーティングしたレプリカ作製プレートの作製)
レプリカ作製用プレートは標準的な方法であるLB法(ラングミュア・ブロジェット)法を用い作製する。親水基と疎水基とが適度にバランスした両親媒性の成膜性分子で水面上に安定な単分子膜を形成し、それを支持体である基板の表面に移し取り、単分子膜を基板に移行させ、レプリカ作製用プレートを製造する。具体的には、実施例1の1.5で合成した糖鎖捕捉フラーレン(10mg)を10mlのクロロホルムに溶解し、単分子膜展開用のサンプル溶液を調製する。単分子膜は、10℃〜25℃の洗浄したバット(鉄製ほうろう仕上げ:230mm×305mm×40mm)に、4本のストロー(ポリプロピレン製,外径6mm)の端部を斜めに切り取り、隣接するストロー端部の尖った側を内側にしてひし形に配置すると共に、双方のストロー柔軟に変形する様にテフロン(登録商標)テープで連結した枠を作製し、その内側へマイクロシリンジ(100μl)を用いて上記サンプル溶液を少しずつ滴下し、(溶液の滴下量は40〜200μl)展開させる。これに顕微鏡観察用のカバーグラスを単分子膜の上から接触させ、乾燥してレプリカ作製用プレートとする。
(実施例7:レプリカ作製プレートを用いた糖鎖レプリカの作製方法)
凍結切片の顕微鏡観察外科手術により摘出し凍結した乳癌検体を、凍結切片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μに薄切し、常法によりヘマトキシリン・エオシン染色を行った。乾燥後、組織切片を覆うように実施例3.1で作製したレプリカ作製用プレートの単分子膜面を組織切片側に伏せて貼り付け密着テープで固定する。顕微鏡で、極細油性サインペンなどを用いて観察病変部位を適当にマーキングしておく。マイクロシリンジを用いて、ヒドラジン溶液またはグリコシダーゼ溶液をレプリカ作製用プレートとスライドグラスの隙間から注入し、25℃から38℃の恒温室で反応させ、レプリカ作製用プレートに組織切片表面の糖鎖を転写する。転写して得られた糖鎖を、予めマーキングした部位にレーザーを照射して質量分析する。
(実施例8:糖鎖アレイ)
8.1 糖鎖固定化アレイによる抗体の検出)
糖鎖を含有する卵巣癌由来細胞(悪性、および良性が以下のChienらの文献であらかじめ鑑別されている患者を選択し、DXチェン、PE.シュワルツ、CA 125 悪性子宮癌の検出ためのアッセイ.産婦人科学、75(4):701−704、1990.)卵巣腫瘍の腫瘍マーカーとして認識されている糖タンパク複合体CA125が含まれていると予想される患者唾液を採取する。各々の唾液からカートリッジカラムを用いて分子量10000以上の分画を分取濃縮し、これをPBSにて希釈し(糖タンパク量として1000,200、40,10,1,0.1ng/μL、各1μLずつ)、ヒドラジン溶液で糖鎖を処理し、上記実施例3.1にて作製したレプリカ作製プレートにアレイを形成するように点着した。直ちに点着後の固相担体を25℃、モイスチャーチャンバーにて1時間放置した後、1%BSA/0.05%Tween20―PBS(PBS―T)に1時間浸積することでブロッキング処理し、糖鎖アレイを得た。
次いで、作製した糖鎖アレイに抗CA125モノクロナール抗体を滴下し、モイスチャーチャンバー内にて25℃で1時間インキュベートした。次いで反応後のアレイを、PB
S―Tで3回洗浄し、PBSでリンス後乾燥させ、得られた反応アレイを傾向標識抗IgG抗体を用いてラベルし、PBSでリンス後乾燥させ、アレイ表面の蛍光強度をスキャニング装置で測定する。尚、標識などの全般的な分子生物学的手法は、「分子クローニング− 研究室マニュアル」第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis(Cold Spring Harbor Laboratory、1989)、または「分子生物学の最新プロトコル」、1−3巻、F M Asubel、R BrentおよびR E Kingston編、John Wiley出版、1998に記載の任意の方法に従うことができる。
本発明の糖鎖捕捉フラーレン誘導体を提供することにより、夾雑物を含む雑多な生体分子の分子量領域から糖鎖由来のシグナルのみを所望の分子量だけ大きくシフトすることができ、質量分析法において非常に有用でかつ新しい糖鎖分析手法を提供することができる。この手法により、細胞または生体試料に由来する糖タンパク質、糖脂質などの複合糖脂質を効率よく分離・精製・濃縮し、夾雑するタンパク質、脂質などの成分を予め試料から除きとることができ、その結果、質量分析などの直接解析方法を容易にする。また、病理切片に由来する糖鎖を二次元像として写し取ることが可能になる。さらに、本発明により開示された糖鎖捕捉ポリマーを、in vivo酵素などと組み合わせて、適当な前処理を施した生体表面に接触させることにより、採取不可能であった腺組織に付属する管の細胞(乳管、胆管など)の内腔に由来する糖鎖を分取することができる。分取した糖鎖組成物は、ワクチン等の医薬品、健康食品、残さタンパク質又は脂質は抗原性を低減した医薬品、低アレルゲン食品として利用可能である。

Claims (18)

  1. 糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と、フラーレン核とを含む、フラーレン誘導体。
  2. 以下の式:
    Figure 2005061444
    [式中、Xは糖鎖捕捉部位であり、Yは親水性部位である]
    を有するカルベンが前記フラーレン核の二重結合に付加した、請求項1に記載のフラーレン誘導体。
  3. 前記糖鎖捕捉部位は、ヒドロキシルアミノ基、N−アルキルヒドロキシルアミノ基、ヒドラジド基、チオセミカルバジド基およびシステイン残基ならびにそれらの誘導体からなる群より選択される官能基を含む、請求項2に記載のフラーレン誘導体。
  4. 前記親水性部位は、エステル基、4級アンモニウム塩および水酸基ならびにそれらの誘導体からなる群より選択される官能基を含む、請求項2に記載のフラーレン誘導体。
  5. 以下の式:
    Figure 2005061444
    [式中、Rは、
    −W−O−NH
    −W−O−NH(CH)、
    −W−O−W−O−NH
    −W−O−W−O−NH(CH)、
    −(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH
    −(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH(CH)、
    −W−C(=O)−NH−NH
    −W−C(=S)−NH−NH
    −W−NH−C(=O)−CH(NH)−W−SH、または
    −W−NH−C(=S)−CH(NH)−W−SHであり;
    およびWは、それぞれ独立してC1〜C12アルキレンまたはC2〜C12アルケニレンであり;
    は、C1−C2アルキレンであり;
    は、
    −O−R
    −O−(CH−N(R)(R)(R)、
    −NH−CH−(CH−CH−O)−(CH−OH、または以下の式:
    Figure 2005061444
    で表される基であり;
    は、低級アルキルであり;
    、R、およびRは、それぞれ独立して、低級アルキルであり;
    nは0〜10の整数であり、およびtは1〜3の整数である]
    で表される置換基群から選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付加した、請求項1に記載のフラーレン誘導体。
  6. 前記フラーレン核は、純炭素フラーレンであるか、または以下の式:
    Figure 2005061444
    [式中、Arはアリール、置換されたアリール、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールであり;QはCHまたはN原子であり;sは0〜3である]
    で表される置換基が純炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体である、請求項5に記載のフラーレン誘導体。
  7. QがN原子である場合、該N原子が低級アルキルによって4級化されている、請求項6に記載のフラーレン誘導体。
  8. 以下の式:
    Figure 2005061444
    で表される置換基群から選択される置換基
    (式中、Qは、CHまたはNであり;
    sは0〜3であり;
    は、
    −W−O−NH
    −W−O−NH(CH)、
    −W−O−W−O−NH
    −W−O−W−O−NH(CH)、
    −(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH
    −(CH−CH−O)−W−O−W−O−NH(CH)、
    −W−C(=O)−NH−NH
    −W−C(=S)−NH−NH
    −W−NH−C(=O)−CH(NH)−W−SH、
    −W−NH−C(=S)−CH(NH)−W−SH、
    −Z−Z−Z−Z−Z−O−NH
    −Z−Z−Z−Z−Z−O−NH(CH)、
    −Z−Z−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、
    −Z−Z−Z−Z−CH(NH)−Z−SH、
    −Z−O−Z−CH(NH)−Z−SH、
    −Z−O−Z−O−NH
    −Z−O−Z−O−NH(CH)、
    −Z−O−Z−Z−Z−O−NH
    −Z−O−Z−Z−Z−O−NH(CH)、
    −Z−O−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、
    −Z−O−Z−Z−CH(NH)−Z−SH、
    −Z−Z−Z−Z−O−NH
    −Z−Z−Z−Z−O−NH(CH)、
    −Z−Z−Z−CH(NH)−O−Z−SH、または
    −Z−Z−Z−CH(NH)−Z−SHであり;
    およびWは、それぞれ独立してC1〜C12アルキレンまたはC2〜C12アルケニレンであり;
    は、C1〜C2アルキレンであり;
    は、置換されていてもよいアリレンまたは置換されていてもよいヘテロアリレンであり;
    は、含窒素複素環であり;
    およびZは、それぞれ独立してC1−C12アルキレンであり;
    は、−O−C(=O)、−O−C(=S)、−NH−C(=O)、−NH−C(=S)、−O−、または−S−であり;
    は、C1−C2アルキレンであり;
    nは1〜10の整数である)が前記フラーレン核の二重結合に付加した、請求項1に記載のフラーレン誘導体。
  9. 含窒素複素環の該N原子が低級アルキルによって4級化されている、請求項8に記載のフラーレン誘導体。
  10. 以下の工程:
    A)以下の式:
    Figure 2005061444
    [式中、Xは糖鎖捕捉部位であり、Yは親水性部位であり、Hは水素原子である]
    で表される化合物から水素原子を脱離して、以下の式:
    Figure 2005061444
    で表されるカルベンを提供する工程;および
    B)該カルベンと、フラーレン核とを、該カルベンが該フラーレン核の二重結合に付加し得る条件下で、接触させる工程、
    を包含することを特徴とする、糖鎖捕捉部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を合成する方法。
  11. N(R)CHCOOHと、R10CHOと、フラーレン核とを、接触させる工程[式中、Rは低級アルキルであり、Rは水素原子または低級アルキルであり、R10はC1〜C10アルキル、置換されたC1〜C10アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである]、
    を包含することを特徴とする、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を合成する方法。
  12. 以下の工程:
    a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件下で、接触させる工程;
    b)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との複合体を取り出す工程;および
    c)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す工程、
    を包含することを特徴とする、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する方法。
  13. 以下の工程:
    a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖とが反応し得る条件下で、接触させる工程;
    b)所望のストリンジェンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す工程;および
    c)該糖鎖捕捉担体と相互作用した物質を同定する工程、
    を包含することを特徴とする、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する方法。
  14. a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が平面展開された支持体;および
    b)糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料に由来する成分であって、該成分は該フラーレン誘導体に捕捉されている、成分、
    を含むことを特徴とする、糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料の糖鎖レプリカ。
  15. 以下の工程:
    a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を支持体上に平面展開させる工程;
    b)糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料を、該支持体に接触させる工程;および
    c)該支持体の表面に存在する糖鎖を分析する工程、
    を包含することを特徴とする、糖鎖を含むかまたは含むと予想される試料上の糖鎖を分析する方法。
  16. 以下の工程:
    a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が平面展開された支持体を含む、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析するためのデバイスを用いて、該被験体に由来する試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する工程、
    を包含することを特徴とする、被験体の検出または鑑別のための方法。
  17. 以下の工程:
    a)支持体を提供する工程;
    b)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を該支持体上に所望の配列で配置する工程、
    を包含することを特徴とする、糖鎖アレイを作製するための方法。
  18. 糖鎖を含む試料を、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体で接触し、その後相互作用した試料中の糖鎖を分離することによって得られる、糖鎖含量が上昇した糖鎖組成物。
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