明 細 書
フラーレン誘導体
技術分野
[0001] 本発明は、糖鎖または糖鎖含有物質 (例えば、糖タンパク質、糖脂質)の分離、濃 縮、精製および分析に有用である糖鎖捕捉フラーレン誘導体に関する。本発明はま た、そのようなフラーレン誘導体を利用した糖鎖または糖鎖含有物質の分離、濃縮、 精製および分析 (例えば、マススペクトル法による)のための方法、装置およびシステ ムに関する。本発明はさらに、本発明の方法により精製された糖鎖組成物を用いた、 医薬 (例えば、ワクチン)、試薬、糖鎖アレイに関する。本発明はまた、本発明の方法 により精製された糖鎖組成物を利用する、診断、治療、鑑別方法を提供する。
背景技術
[0002] 糖鎖とは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、 N—ァセチ ルダルコサミン、 N—ァセチルガラタトサミン、シアル酸、これらの誘導体である単糖が グリコシド結合で繋がった分子などを含む総称である。糖鎖は、非常に多様性に富ん でおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。これらの 糖鎖の機能研究または構造解析等の糖鎖解析技術の一つとして、電気泳動法によ り糖鎖を解析する方法が広く知られている(特許文献 1など)。この方法は糖鎖泳動パ ターンを可視化して解析を行う方法である。
[0003] 電気泳動ゲルで泳動された糖鎖を、半乾燥プロット移動装置を用いて、膜に転写 する方法が実施されている(特許文献 2参照)。この方法では、蛍光検出の後、さらに 、電気泳動により分離した糖鎖を PVDF (ポリビ-リデンジフルオライド)の陰荷電誘 導体などの膜へ転写して、膜上の糖鎖を解析することが試みられている。タンパク質 または脂質と結合した状態でのみ行われて ヽた糖鎖とレクチンあるいは抗体などとの 反応を、糖鎖を膜へ転写することにより、タンパク質または脂質に影響されることなぐ 糖鎖とレクチンある ヽは抗体などとの反応を行って、糖鎖を調べることが可能となって いる。次に膜上の糖鎖バンドを切り取り、糖鎖を質量分析法へ応用することも可能で ある。しかし、この方法では、転写を電気的移動によって行うため、荷電された糖鎖は
容易に膜を通過し、その結果、転写された糖鎖量は少量となるので正確な定量およ び解析に適さない。
[0004] 自然界に広く分布している複合糖質の糖鎖は生体内の重要な構成成分であり、細 胞間の相互作用に深く関わっていることが明らかにされつつある。このため様々な糖 鎖構造の微量解析の技術が開発されており、これらの技術は、糖鎖の切り出し、糖鎖 の分離、精製、糖鎖の標識などの工程を適宜組み合わせたものであるが、これらは 非常に煩雑な手間を要する。特に切り出した後の混合物に微量に含まれる糖鎖の分 離精製過程は困難を伴い、多くの経験が必要となる。一般的によく使われる手法とし てイオン交換榭脂、逆相クロマトグラフィー、活性炭、ゲル濾過クロマトグラフィーなど がある。
[0005] 糖タンパク質等の糖鎖構造を解析するための方法としては、糖タンパク質の糖鎖を 遊離させて、液体クロマトグラフィーを用いて分離分析すると、その糖鎖構造に応じた 溶出挙動をとる原理を利用して、この溶出挙動を既知糖鎖の溶出挙動データと比較 することにより、未知試料の糖鎖構造を解析する方法がある。その他、一般的によく 使われる手法として、イオン交換榭脂、逆相クロマトグラフィー、活性炭、ゲル濾過ク 口マトグラフィーなどがある。
[0006] し力しながら、これらの分離手法は!、ずれも、糖特異的に認識する方法ではな ヽの で、他成分 (ペプチドまたはタンパク質など)のコンタミネーシヨンが大きぐまた糖鎖 の構造によって回収率に違いが出てくるとの欠点がある。
[0007] 高速液体クロマトグラフィー (HPLC)の手法を応用した手法もある。 2種類のモード の HPLCを組み合わせた二次元 HPLC (非特許文献 1を参照)による方法、および、 試料を予めェキソグリコシダーゼなどの混合酵素系列で処理し、処理した試料を HP LCで分析することにより糖鎖構造を決定する方法 (非特許文献 2を参照)などを挙げ ることができる。これらは、糖鎖選択的な化学反応を行い、糖鎖を蛍光標識することに よって糖鎖の検出を可能としている。さらに、 HPLC分析において、微量な糖鎖を効 率よく解析でき現在最も頻繁に使用されている手法として、ピリジルァミノ化 (PA化) 法がある。微量糖鎖をゲル濾過カラムクロマトグラフィーなどにより粗精製した後、アミ ノビリジンを還元剤存在下で糖鎖の還元末端にカップリングさせる。 PAィ匕された糖鎖
は蛍光を有するので感度よく HPLCによって検出でき、経験的なピーク位置から糖 鎖の構造を推定できる。以上のいずれの手法も、 HPLCのクロマトグラムの保持時間 を指標に糖鎖構造を決定する方法である。一方、糖識別能を有するレクチンを固定 化したカラムを利用する分析方法 (非特許文献 3参照)につ 、ても報告されて ヽる。
[0008] しかしながら、 HPLCの手法を利用した分析方法は、(1)ゲル濾過および HPLCの 溶出位置に対してあらかじめ経験が必要で、熟練者の同伴を要する、(2)糖鎖を蛍 光あるいはラジオアイソトープなどで標識する必要があり時間と手間がかかる、 (3)一 回に一試料の解析しかできず、多数の試料を同時に解析することはできない、(4) H PLCの条件設定が微妙で保持時間がずれ、不正確になる可能性が高い、 (5) HPL Cをポストカラムリアクターまたはプレカラムリアクターと組み合わせたものは試薬を大 量に消費する、(6)レクチン固定ィ匕カラムを用いると、レクチンの糖に対する親和性の 変化のため吸着する糖ペプチドにも影響が生じる可能性がある、などの問題点を抱 えている。
[0009] 最終的には、得られた糖に関する確実な情報を得るためには、 NMR ^ベクトルま たは MSスペクトルによる同定が必要である。特に MSスペクトルはナノからマイクログ ラムのオーダーの微少なサンプル量で分子量同定が可能であるため糖鎖解析の有 力な手法となっている。し力しながら、タンパク質の分解物や脂質などの雑多な生体 分子もそれらの分子量の領域に数多く含まれるので、糖鎖のシグナルはそれら夾雑 物のために埋もれてしま ヽ、質量分析による分析の際に糖鎖の精製が不可欠である というのが現状である。
[0010] このように、糖鎖を直接、その種類に関係なく分離、分析することを可能にする技術 はいまだに存在せず、そのような技術の中でも特に、糖鎖解析の最も有力な手法の 1 つであるマススペクトル法にお!、て、この手法特有の上記欠点を克服した新 、技術 は、ポストゲノム、ポストプロテオミクス時代において非常に重要であり、その開発は渴 望されている。
特許文献 1:特表平 5- 500563号公報
特許文献 2:特表平 5- 503146号公報
非特許文献 1 : Anal. Biochem. , 171, 73 (1988)富谷ら
非特許文献 2 :化学と生物 32 (10) 661 (1994)小西ら
非特許文献 3 :Anal. Biochem. , 164, 374 (1987)原田ら
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] 本発明の課題は、糖鎖の種類に関係なく特異的に糖鎖を結合し得る部位とフラー レン核を含むフラーレン誘導体を提供し、質量分析の際に、雑多な生体分子 (タンパ ク質の分解物や脂質などの)の分子量領域力も糖鎖のシグナルのみを大きくシフトさ せるとの原理を利用した新しい糖鎖分析手法を提供することにある。
[0012] 本発明の別の課題は、上記の糖鎖捕捉フラーレン誘導体を含む糖鎖捕捉担体を 用いて、糖鎖または糖鎖含有物質を効率よくおよび Ζまたは天然に存在する状態に 忠実に分離、精製、濃縮または分析する方法、ならびにそれに供するシステム、装置 を提供することにある。
[0013] 本発明の別の課題は、試料中に天然に存在する状態の糖鎖成分をその存在比率 を反映させた形で利用することにある。
課題を解決するための手段
[0014] 本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものである。
[0015] 本発明者らは鋭意研究を進める中で、例えば 1000程度に分子量制御可能なフラ 一レンに着目し、糖鎖捕捉性能をもつカルベンをフラーレン核に付加したフラーレン 誘導体を開発した。本発明の上記課題は、糖鎖と特異的に結合し得るフラーレン誘 導体を提供することによって解決された。このフラーレン誘導体は、好ましくは、糖鎖 による相違が実質的にないことにより、上述の課題のほぼすベての問題点を解決す る。
[0016] 本発明は、上記目的を達成するために、以下を提供する。
(1)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と、フラーレン核とを含む、フラーレン誘導 体。
(2)任意の糖鎖と所定のレベル以上で特異的に相互作用し得る、項目 1に記載のフ ラーレン誘導体。
(3)前記糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と糖鎖との相互作用のレベルは、前記
フラーレン核と糖鎖との相互作用のレベルよりも高い、項目 1に記載のフラーレン誘 導体。
(4)前記フラーレン誘導体は、実質的にすべての糖鎖を含まない物質に対する相互 作用のレベルよりも、糖鎖に対する相互作用のレベルが高い、項目 1に記載のフラー レン誘導体。
(5)前記フラーレン誘導体は、糖鎖以外の物質との非特異的相互作用を解離させる 条件下に曝されるとき、少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存する、項 目 1に記載のフラーレン誘導体。
(6)前記フラーレン誘導体と前記糖鎖との相互作用の程度は、 MALDI— TOFにお いてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが少なくとも 5eVである、項目 1 に記載のフラーレン誘導体。
(7)任意の糖鎖と、最大と最小との間で、 10倍以内の範囲内のレベルで特異的に相 互作用し得る、項目 1に記載のフラーレン誘導体。
(8)前記糖鎖は、酸化された糖鎖および酸化されていない糖鎖を含む、項目 1に記 載のフラーレン誘導体。
(9)前記糖鎖と、ォキシム結合、ヒドラゾン結合、もしくはチォセミヒドラゾン結合または チアゾリジン環を形成し得る官能基を含む、項目 1に記載のフラーレン誘導体。
(10)アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基を含む、項目 1に記載のフラーレン 誘導体。
(11)以下の式:
[化 8]
X一
[式中、 Xは糖鎖捕捉部位であり、 γは親水性部位である]
を有するカルベンが前記フラーレン核の二重結合に付加した、項目 1に記載のフラ 一レン誘導体。
(12)前記カルベンのモノ付加体である、項目 11に記載のフラーレン誘導体。
(13)前記糖鎖捕捉部位は、ヒドロキシルァミノ基、 N—アルキルヒドロキシルァミノ基、 ヒドラジド基、チォセミカルバジド基およびシスティン残基ならびにそれらの誘導体力 らなる群より選択される官能基を含む、項目 11に記載のフラーレン誘導体。
(14)前記親水性部位は、エステル基、 4級アンモニゥム塩および水酸基ならびにそ れらの誘導体からなる群より選択される官能基を含む、項目 13に記載のフラーレン 誘導体。
(15)以下の式:
[化 9]
[式中、 R1は、
-W'-O-NH
2、
-W'-O-NH (CH )
3、
— W1— O— W2— O— NH
2、
— W1— O— W2— O— NH (CH )
3、
— (CH— CH— O)— W1— O— W2— O— NH
2 2 n 2、
-(CH -CH— O)— W1— O— W2— O— NH (CH ) ,
2 2 n 3
-W'-C ( = O) -NH-NH、
2
-W'-C ( = S) -NH-NH、
2
-W'-NH-C ( = O) -CH (NH ) -^-SH,または
2
-W'-NH-C ( = S)— CH (NH )— W4— SHであり;
2
W1および W2は、それぞれ独立して CI一 C12アルキレンまたは C2— C12アルケニ レンであり;
W4は、 CI— C2アルキレンであり;
R2は、
— O— R3、
-0-(CH )— N+ (R4) (R5) (R6)、
2 n
-NH-CH— (CH— CH O) (CH ) OH、または以下の式:
2 2 2 t 2 2
[0019] [化 10]
Π
R3は、低級アルキルであり;
R4、 R5、および R6は、それぞれ独立して、低級アルキルであり;
nは 0— 10の整数であり、および tは 1一 3の整数である]
で表される置換基群カゝら選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付加し た、項目 1に記載のフラーレン誘導体。
(16)以下の式:
2
0
[式中、 ま、 (CH ) -0-NH、—(CH ) -0-NH (CH )、— (CH ) O— (CH
2 n 2 2 n 3 2 m
) -O-NH 、 一 (CH ) O (CH ) -0-NH (CH )、 一 (CH— CH O) (CH
2 p 2 2 m 2 p 3 2 2 n 2
) -O-NH 、一(CH— CH O) (CH ) O— NH (CH )、一(CH )— C ( = 0)— a 2 2 2 n 2 a 3 2 n
NH-NH、 - (CH )— NH— C ( = S)— NH— NH、または—(CH )— NH—C ( = 0)
2 2 n 2 2 n
-CH (NH )-(CH )—SHであり;
2 2 r
R2は、 0—R3、 -0-(CH ) -N+ (R4) (R5) (R6) H -(CH -CH O)—
2 n 、 -NH-C
2 2 2 t
(CH ) -OH,または以下の式:
[0021] [化 12]
R3は、低級アルキルであり;
R4、 R5、および R6は、それぞれ独立して、低級アルキルであり;
nは 0— 10の整数であり、 mは 1一 5の整数であり、 pは 1一 5の整数であり、 aは 1また は 2であり、 rは 1または 2であり、および tは 1一 3の整数である]
で表される置換基群カゝら選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付加し た、項目 1に記載のフラーレン誘導体。
(17)前記フラーレン核は、純炭素フラーレンである力、または以下の式:
[0022] [化 13]
[式中、 Arはァリール、置換されたァリール、ヘテロァリールまたは置換されたへテロ ァリールであり; Qは CHまたは N原子であり; sは 0— 3である]
で表される置換基が純炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体である、項目 16 に記載のフラーレン誘導体。
(18) Qが N原子である場合、該 N原子が低級アルキルによって 4級化されている、項 目 17に記載のフラーレン誘導体。
(19)前記へテロアリール力 フラ -ル、チォフエ-ルまたはピリジルである、項目 17 に記載のフラーレン誘導体。
(20)以下の式:
[化 14]
(式中、 Qは、 CHまたは Nであり;
sは 0— 3であり;
R7は、
— W1— O— NH、
2
— W1— O— NH (CH )、
3
— W1— O— W2— O— NH、
2
— W1— O— W2— O— NH (CH )、
3
— (CH— CH— O)— W1— O— W2— O— NH、
2 2 η 2
— (CH— CH— O)— W1— O— W2— O— NH (CH )、
2 2 n 3
— W1— C ( = 0)— NH— NH、
2
— W1— C ( = S)— NH— NH、
2
— W1— NH— C ( = O)—CH (NH )— W4— SH、
2
— W1— NH— C ( = S)— CH (NH )— W4— SH、
2
— Z1— Z2— Z3— Z4— Z5— O— NH、
2
— Z1— Z2— Z3— Z4— Z5— O— NH (CH )、
3
— Z1— Z2— Z3— Z4— CH (NH )— O— Z6— SH、
— Z1— Z2— Z3— Z4— CH (NH )— Z6— SH
2 、
— Z1— O— Z3— CH (NH )— Z6— SH
2 、
— Z1— O— Z3— O— NH
2ゝ
— Z1— O— Z3— O— NH (CH )、
3
— Z1— O— Z3— Z4— Z5— O— NH
2、
— Z1— O— Z3— Z4— Z5— O— NH (CH )
3、
— Z1— O— Z3— Z4— CH (NH )— O— Z6— SH
2 、
— Z1— O— Z3— Z4— CH (NH )— Z6— SH
2 、
— Z1— Z3— Z4— Z5— O— NH
2、
— Z1— Z3— Z4— Z5— O— NH (CH )
3、
Z1— Z3— Z4—CH (NH )—0—Z6—SH、または
2
— Z1— Z3— Z4— CH (NH )— Z6— SHであり;
2
W1および W2は、それぞれ独立して CI一 C12アルキレンまたは C2— C12アルケニ レンであり;
W4は、 C1一 C2アルキレンであり;
Z1は、置換されて!、てもよ!/ヽァリレンまたは置換されて!、てもよ!/、ヘテロァリレンであり Z2は、含窒素複素環であり;
Z3および Z5は、それぞれ独立して C1 C12アルキレンであり;
Z4は、 -O-C ( = O)、 -O-C ( = S)、 -NH-C ( = O)、 -NH-C ( = S)、 一 O—、また は S—であり;
Z6は、 CI— C2アルキレンであり;
nは 1一 10の整数である)が前記フラーレン核の二重結合に付カ卩した、項目 1に記載 のフラーレン誘導体。
(21)
以下の式:
[化 15]
(式中、 Qは、 CHまたは Nであり;
sは 0 3であり;
R7は、一(CH ) -0-NH、一(CH ) -0-NH (CH ) (CH— CH — O) — (CH )
2 n 2 2 n 3 2 2 η 2
-Ο-ΝΗ、一(CH ) -C ( = 0)-NH-NH、一(CH )— NH—C ( = O)—CH (NH
2 2 2 n 2 2 n 2
)— (CH ) -SH、ならびに以下:
2 r
化 16] — 0一 C(=0)— (CH2)厂。一 NH2 ,
l
f (CH
2)— 0— C(=0)— CH(NH
2)— (CH
2)
X— SH
V
0~(CH2)厂 0— NH2 .
If 、\ n 0—— f ((CUH2) U— _ 0— C(=0)— (CHjJ r-O— NH2, (NH2)— (CH2)厂 SH
0— (CH2) U— 0— C(=0)— CH(NH2)— (CH2) X— SH
NHZ , および H2) x一 SH
で表される基からなる群より選択され;
式中、 Wおよび W'は、それぞれ独立して CHまたは N原子であり;
Yは、 O原子、 S原子または NHであり;
bは 0または 1であり、 uは 1一 5の整数であり、 Vは 1一 5の整数であり、および Xは 1一 3 の整数である)が前記フラーレン核の二重結合に付加した、項目 1に記載のフラーレ ン誘導体。
(22) Qが N原子である場合の該 N原子が低級アルキルによって 4級化されてレ、る、
項目 20または 21に記載のフラーレン誘導体。
(23)少なくとも 1000の分子量を有する、項目 1に記載のフラーレン誘導体。
(24)支持体上に平面展開可能である、項目 1に記載のフラーレン誘導体。
(25)以下の工程:
A)以下の式:
[0026] [化 17]
[式中、 Xは糖鎖捕捉部位であり、 Yは親水性部位であり、 Hは水素原子である] で表される化合物力 水素原子を脱離して、以下の式:
[0027] [化 18]
X— C— Y または C :
' Y
で表されるカルベンを提供する工程;および
B)該カルベンと、フラーレン核とを、該カルベンが該フラーレン核の二重結合に付 加し得る条件下で、接触させる工程、
を包含することを特徴とする、糖鎖捕捉部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導 体を合成する方法。
(26) R8N (R9) CH COOHと、 R1C>CHOと、フラーレン核とを、接触させる工程 [式中
2
、 R8は低級アルキルであり、 R9は水素原子または低級アルキルであり、 R1Gは C1一 C 10アルキル、置換された C1一 C10アルキル、ァリール、置換されたァリール、ヘテロ ァリールまたは置換されたへテロァリールである]、
を包含することを特徴とする、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを 含むフラーレン誘導体を合成する方法。
(27)以下の工程:
a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラー
レン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該 糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件下で、接触させる工程;
b)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との複合体を取り 出す工程;および
C)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用 が少なくとも一部解消するような条件下に曝す工程、
を包含することを特徴とする、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮また は精製する方法。
(28)以下の工程:
a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラー レン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該 糖鎖とが反応し得る条件下で、接触させる工程;
b)所望のストリンジエンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す工程 ;および
c)該糖鎖捕捉担体と相互作用した物質を同定する工程、
を包含することを特徴とする、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する方法。
(29) a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導 体が平面展開された支持体;および
b)糖鎖を含む力または含むと予想される試料に由来する成分であって、該成分は 該フラーレン誘導体に捕捉されている、成分、
を含むことを特徴とする、糖鎖を含むカゝまたは含むと予想される試料の糖鎖レプリカ。
(30)以下の工程:
a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を 支持体上に平面展開させる工程;
b)糖鎖を含むカゝまたは含むと予想される試料を、該支持体に接触させる工程;およ び
c)該支持体の表面に存在する糖鎖を分析する工程、
を包含することを特徴とする、糖鎖を含むカゝまたは含むと予想される試料上の糖鎖を
分析する方法。
(31)以下の工程:
a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が 平面展開された支持体を含む、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析するため のデバイスを用いて、該被験体に由来する試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分 析する工程、
を包含することを特徴とする、被験体の検出または鑑別のための方法。
(32)以下の工程:
a)支持体を提供する工程;
b)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を 該支持体上に所望の配列で配置する工程、
を包含することを特徴とする、糖鎖アレイを作製するための方法。
(33)糖鎖を含む試料を、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含 むフラーレン誘導体で接触し、その後相互作用した試料中の糖鎖を分離すること〖こ よって得られる、糖鎖含量が上昇した糖鎖組成物。
発明の効果
本発明によれば、質量分析の際に糖鎖捕捉フラーレン誘導体を使用することにより 、夾雑物を含む雑多な生体分子 (タンパク質の分解物や脂質など)の分子量領域か ら糖鎖由来のシグナルのみを所望の分子量だけ大きくシフトすることができる新しい 糖鎖分析手法を提供することができる。この手法により、細胞または生体試料に由来 する糖タンパク質、糖脂質などの複合糖脂質を効率よく分離 ·精製'濃縮し、夾雑す るタンパク質、脂質などの成分を予め試料力も除きとることができ、その結果、質量分 析などの直接解析方法を容易にする。また、病理切片に由来する糖鎖を二次元像と して写し取ることが可能になる。さらに、本発明により開示された糖鎖捕捉ポリマーを 、 in vivo酵素などとの組み合わせにより、適当な前処理を施した生体表面に接触さ せることにより、採取不可能であった腺組織に付属する管の細胞 (乳管、胆管など)の 内腔に由来する糖鎖を分取することができる。
図面の簡単な説明
[0029] [図 1]本発明のフラーレン誘導体 (7)の前駆体ィ匕合物(1)の合成経路。
[図 2]本発明のフラーレン誘導体 (7)の合成経路および糖鎖の捕捉。
[図 3]本発明のフラーレン誘導体(11a)の合成経路。
瞧]本発明のフラーレン誘導体(l la、 l ib, 12a、 12b、 13a、 13b、 14a、 14b)。
[図 5]本発明のフラーレン誘導体(15a、 15b、 16a、 16b)。
[図 6]本発明のフラーレン誘導体(1 la)のマススペクトル。
[図 7]本発明のフラーレン誘導体によるマンノースの捕捉を確認したマススペクトル。
[図 8]本発明のフラーレン誘導体によるマンノトリオースの捕捉を確認したマススぺタト ル。
[図 9]本発明のフラーレン誘導体によるマルトトリオースの捕捉を確認したマススぺタト ル。
[図 10]本発明のフラーレン誘導体によるガラタトトリオースの捕捉を確認したマススぺ タトル。
[図 11]本発明のフラーレン誘導体によるラタトー N—テトラオースの捕捉を確認したマ ススペクトル。
発明を実施するための最良の形態
[0030] 以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及 しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書 において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味 で用いられることが理解されるべきである。
[0031] (用語)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
[0032] 本明細書における「炭素クラスター」とは、フラーレンおよびカーボンナノチューブを 含めた C分子の総称である。 nは整数であり、炭素原子の個数を表す。
本明細書における「フラーレン」は、 IUPAC (勧告 2002)での定義がそのまま適 用され、 20個以上の偶数個の炭素原子からなり 12面の五角面と (nZ2— 10)枚の六 角面を持つ閉多面体かご型分子、および 20個以上の炭素原子を持ち炭素原子が 全て三配位であるかご型分子を指す。
[0033] 本発明における「フラーレン核」は、 C 、C 、C 、C 、C または C などの純炭
60 70 76 80 84 120 素フラーレンであってもよいし、これら純炭素フラーレンが内部に金属 (もしくは金属 酸化物)を内包したものであってもよいし、任意の置換基で置換されたカルベンが原 理上可能な範囲内の任意の個数で純炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体 であってもよいし、上記カルベンの代わりに、フラーレンの二重結合に付カ卩可能でか つ任意の置換基で置換された活性種が原理上可能な範囲内の任意の個数で純炭 素フラーレンの二重結合に付カ卩した付加体であってもよ 、し、上記カルベンと上記活 性種がそれぞれ独立して、原理上可能な範囲内の任意の個数で、純炭素フラーレン の二重結合に付カ卩した付加体であってもよいし、これらの混合物であってもよぐまた これらに限定されない。但し、この「カルベン」またはそれ以外の「活性種」の置換基 は、この置換基と「糖鎖」との相互作用のレベルが、「糖鎖と特異的に相互作用し得る 部位」と「糖鎖」との特異的相互作用のレベルを超えず、その特異的相互作用に不利 に影響を及ぼさないように、選択され得る。また、この「置換」または「置換基」につい ては、下記に示された通りである。本発明における「フラーレン核」として、供給および 取り扱いの容易さの点から、 c 、 、
60 c 、
70 c 76 c 、
80 c または
84 c などの純炭素フラー
120
レンを使用することが好ましぐ n =60の純炭素物質 C (通称:バッキーボール [buc
60
kyball]またはバックミンスターフラーレン [buckminster fullerene])を使用するこ とが特に好ましい。本明細書における「フラーレン核」は、「フラーレン」と互換可能に 使用され得る。
[0034] 本明細書にぉ 、て「純炭素フラーレン」とは、炭素原子のみで構成されるフラーレン 分子を意味する。この純炭素フラーレンは、本発明における「糖鎖と特異的に相互作 用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体」のフラーレン核自体であるか 、またはそのフラーレン核の一部を構成する。例えば、本発明における純炭素フラー レンの代表例である C 純炭素フラーレンは、以下:
[0035] [化 19]
の立体ィ匕学式で表すことができる。本明細書および図面における純炭素フラーレン は全て、便宜上、表の面のみが表示されており、裏の面の炭素構造は示していない 力 本明細書および図面において、表の面のみで表示されたフラーレンは、表の面 のほかに裏の面も有する立体構造体であることを意味する。
[0036] 本明細書中における「フラーレン誘導体」は、「糖鎖と特異的に相互作用し得る部 位」と「フラーレン核」とを、必ず含んでいる。このフラーレン誘導体は、「糖鎖と特異的 に相互作用し得る部位」を有するカルベンまたはカルベン以外の活性種が「フラーレ ン核」に付加した付加体であるとも言い換えられ得る。従って、本明細書中における「 フラーレン誘導体」は、「糖鎖捕捉フラーレン」と互換可能に使用され得る。本発明の 「フラーレン誘導体」は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位を有するカルベンがフ ラーレン核の二重結合に付加した付加体であってもよ 、し、糖鎖と特異的に相互作 用し得る部位をカルベン以外の活性種がフラーレン核の二重結合に付加した付加体 であってもよい。本発明では、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核と の間の結合様式および反応機構は、特に限定されない。また、本明細書中における 「フラーレン誘導体」は、塩を形成していてもよい。本発明の「塩」としては、製薬上許 容される塩が好ましぐ例えば無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有 機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基との塩とし ては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、 ノ リウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩、アンモニゥム塩など が挙げられる。有機塩基との塩としては、トリメチルァミン、トリェチルァミン、ピリジン、 ピコリン、エタノールァミン、ジエタノールァミン、トリエタノーノレアミン、ジシクロへキシノレ ァミン、 N, N,ージベンジルエチレンジァミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩と
しては、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、ヨウ化水 素酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩としては、ギ酸、酢酸、トリフルォロ酢酸、 フマル酸、シユウ酸、酒石酸、マレイン酸、クェン酸、コハク酸、リンゴ酸、マンデル酸 、ァスコルビン酸、乳酸、ダルコン酸、メタンスルホン酸、 p—トルエンスルホン酸、ベン ゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との 塩としては、アルギニン、リジン、オル-チン、それらの重合体などとの塩が挙げられ、 酸性アミノ酸との塩としては、ァスパラギン酸、グルタミン酸、それらの重合体などとの 塩が挙げられる。
[0037] 本発明の代表的なフラーレン誘導体として、図 2の化合物(7)、図 4の化合物(11a )、 (l ib)ゝ (12a)、 (12b)、 (13a)、 (13b)、 (14a)、 (14b)、図 5の化合物(15a)、 ( 15b)、 (16a)および(16b)が挙げられる力 これらに限定されない。
[0038] 本明細書における「カルベン」とは、炭素上の 2つの脱離基が 1, 1 脱離して生じる 不安定中間体であり、炭素上に 2個の非結合電子をもつ。カルベンは、通常、以下:
[0039] [化 20]
X—G—Y または C :
' Y
の右式で表される一重項カルベン(sp2混成軌道)または左式で表される三重項カル ベン (SP混成軌道)の、ヽずれかの形態をとり得る (基礎有機反応論 反応機構からみ た有機化学一橋本ら(1989) )。また、フラーレン核へのカルベンの付加は、モノ付カロ 以外に、ジ付加、トリ付加などのポリ付カ卩が可能である。例えば、モノ付加の場合、以 下:
[0040] [化 21]
5 , 6 6 , 6 W to *
の模式図に表されるように、通常、〔5, 6〕付加または〔6, 6〕付カ卩のいずれかの付カロ 体をとり得る(例えば、特開平 9-25246号公報を参照)。この模式図から明らかなよう に、 [5, 6〕モノ付加体は、 5員環を構成する炭素間単結合にカルベンが付加した構 造を有している。このような〔5, 6〕モノ付加体において、 X基は 6員環側に偏向し、 Y 基は 5員環側に偏向した構造となっている。また、この逆もあり得る。一方、〔6, 6〕モ ノ付加体である場合、 X基および Y基は等価となって 、る。
[0041] 本明細書における「活性種」とは、フラーレン核の二重結合に付加し得る化学種全 てを指す。この活性種は、任意の置換基で置換され得るが、置換基の種類は、該置 換基と「糖鎖」との相互作用のレベルが、「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」と「 糖鎖」との特異的相互作用のレベルを超えず、その特異的相互作用に不利に影響を 及ぼさないように選択され得る。この「置換」または「置換基」については、下記に示さ れた通りである。
[0042] 本発明にお 、て糖鎖捕捉フラーレン誘導体を提供するに至るまでの概念は、フラ 一レン以外の炭素クラスター、例えば「カーボンナノチューブ」にも適用可能である。 すなわち、本発明の原理を応用すれば、糖鎖の種類に関係なく特異的に糖鎖を結 合し得る部位とカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ誘導体を提供する ことができる。
[0043] 本発明にお 、て「カーボンナノチューブ」とは、 1枚または複数枚のグライフアイトの シートが円筒上に丸まってできた構造体を指す。カーボンナノチューブの構造は、直 径、カイラル角および螺旋方向(右巻きまたは左巻き)の 3つのパラメーターによって 決定され、代表的な構造の型として、 < 5, 5 >アームチェア一型、 < 9, 0>ジグザグ
型およびく 9, 1 >カイラル型が挙げられる力 これらに限定されない。
[0044] 本明細書において「糖鎖」とは、単位糖 (単糖および Zまたはその誘導体)が 1っ以 上連なってできたィ匕合物をいう。単位糖が 2つ以上連なる場合は、各々の単位糖同 士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては 、例えば、生体中に含有される多糖類 (グルコース、ガラクトース、マンノース、フコー ス、キシロース、 N—ァセチルダルコサミン、 N—ァセチルガラタトサミン、シアル酸なら びにそれらの複合体および誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオ ダリカン、グリコサミノダリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導され た糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。したがって、本明細 書では、糖鎖は、「多糖 (ポリサッカリド)」、「糖質」、「炭水化物」と互換可能に使用さ れ得る。また、特に言及しない場合、本明細書において「糖鎖」は、糖鎖および糖鎖 含有物質の両方を包含する。
[0045] 本明細書において「単糖」とは、これより簡単な分子に加水分解されず、一般式 C H Oで表される化合物をいう。ここで、 n= 2、 3、 4、 5、 6、 7、 8、 9および 10である
2n n
ものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ペントース、へキソース、ヘプトー ス、オタトース、ノノースおよびデコースという。一般に鎖式多価アルコールのアルデヒ ドまたはケトンに相当するもので、前者をアルドース,後者をケトースという。
[0046] 本明細書にぉ 、て「単糖の誘導体」とは、単糖上の一つ以上の水酸基が別の置換 基に置換され、結果生じる物質が単糖の範囲内にないものをいう。そのような単糖の 誘導体としては、カルボキシル基を有する糖 (例えば、 C 1位が酸ィ匕されてカルボン 酸となったアルドン酸(例えば、 D グルコースが酸化された D ダルコン酸)、末端の C原子がカルボン酸となったゥロン酸(D グルコースが酸化された D—グルクロン酸) 、アミノ基またはァミノ基の誘導体 (例えば、ァセチル化されたアミノ基)を有する糖( 例えば、 N ァセチルー D ダルコサミン、 N ァセチルー D—ガラクトサミンなど)、ァミノ 基およびカルボキシル基を両方とも有する糖 (例えば、 N—ァセチルノイラミン酸 (シァ ル酸)、 N—ァセチルムラミン酸など)、デォキシィ匕された糖 (例えば、 2—デォキシー D リボース)、硫酸基を含む硫酸ィ匕糖、リン酸基を含むリン酸ィ匕糖などがあるがそれら に限定されない。あるいは、へミアセタール構造を形成した糖において、アルコール
と反応してァセタール構造のグリコシドもまた、単糖の誘導体の範囲内にある。
[0047] 本明細書にぉ 、て「糖鎖含有物質」とは、糖鎖および糖鎖以外の物質を含む物質 をいう。このような糖鎖含有物質は、生体内に多く見出され、例えば、生体中に含有 される多糖類の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオダリカン、グリコサミノグ リカン、糖脂質などの複合生体分子力も分解または誘導された糖鎖など広範囲なも のが挙げられるがそれらに限定されない。
[0048] 本明細書において「糖タンパク質」としては、例えば、酵素、ホルモン、サイト力イン、 抗体、ワクチン、レセプター、血清タンパク質などが挙げられるがそれらに限定されな い。
[0049] 本明細書にぉ 、て「糖鎖を含まな 、物質」とは、糖鎖を全く含まな 、かまたは検出 可能に含まれない物質をいう。そのような糖鎖を含まない物質としては、例えば、単 純タンパク質、単純脂質などの糖鎖以外の有機化合物が包含されるがそれに限定さ れない。
[0050] 本明細書にぉ 、て糖鎖または糖鎖含有物質に対する「特異性」または「特異的であ る」とは、ある物質の性質について言及され、その物質が糖鎖または糖鎖含有物質に 対して相互作用をすることができるが、糖鎖および糖鎖含有物質以外の物質に対す る相互作用が低いことをいう。
[0051] 本明細書において「糖鎖と特異的に相互作用し得る」とは、糖鎖に対して、糖鎖を 含まない物質に対するよりも高い特異性をもって相互作用することができる能力をい う。好ましくは、そのような糖鎖を含まない物質は、生体内の物質を含み得る。そのよ うな能力は、糖鎖以外の物質との非特異的相互作用を解離させる条件下に曝される とき、少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存することを判定することによ つて確認することができる。具体的には、例えば、そのような能力は、結合後の糖鎖- 対象物質複合体を MALDI— TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネ ルギ一が少なくとも約 5eV、好ましくは少なくとも約 10eV、最も好ましくは少なくとも約 15eVであり、糖鎖を含まない物質と対象物質との複合体を同様の条件で照射したと きには、有意な量多くの割合で相互作用が破壊されることによって確認することがで きる。本明細書において「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」とは、その部位の少
なくとも一部または全体が、糖鎖に対して、糖鎖を含まない物質に対するよりも高い 特異性をもって相互作用することができる能力を有することを意味する。「糖鎖と特異 的に相互作用し得る部位」は、「糖鎖捕捉部位」と互換可能に使用され得る。具体的 には、 R1および R7で表わされる基が挙げられる。
[0052] 本明細書にぉ 、て「親水性部位」とは、「フラーレン核」に親水性を付与する官能基 であれば何でもよぐ特に限定されない。
[0053] 本明細書において「相互作用」とは、 2つの物体について言及するとき、その 2つの 物体が相互に力を及ぼしあうことをいう。そのような相互作用としては、例えば、共有 結合、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、 疎水性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。好ま しくは、相互作用は、共有結合である。本明細書において「共有結合」とは、当該分 野における通常の意味で用いられ、電子対が 2つの原子に共有されて形成する化学 結合をいう。このような共有結合としては、例えば、ォキシム結合、ヒドラゾン結合、チ ォセミヒドラゾン結合およびチアゾリジン環形成などが挙げられるがそれらに限定され ない。
[0054] 本明細書にぉ 、て相互作用などの「レベル」とは、その相互作用など強さを示す程 度をいい、「強度」ともいい、糖鎖に対する特異性を判断するために使用され得る。そ のような相互作用のレベルは、例えば、 MALDI— TOFにおいてレーザー照射したと きの必要な解離エネルギーを用いることができる。
[0055] 本明細書において「所定のレベル」とは、ある目的に応じて設定される糖鎖との特 異的相互作用の程度を! 、、糖鎖に対する特異性を判断するために有用である任 意のレベルをいう。そのような所定のレベルは、測定条件により変動する力 例えば、 MALDI— TOFにおいてレーザー照射したときの必要な解離エネルギーが少なくとも 少なくとも約 5eV、好ましくは少なくとも約 10eV、最も好ましくは少なくとも約 15eVで あることが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、そのような所定のレベル は、下限とともに上限を有し得る。従って、例えば、 MALDI— TOFにおいてレーザ 一照射したときの必要な解離エネルギーが約 5eV— 500eV、約 10eV— 100eV、約 15eV— 50eVなどの範囲内にあることが好ましくあり得る。あるいは、相対的に表現
する場合、最大と最小との間のレベルの相違は、 100倍以内、 50倍以内、 20倍以内 、 10倍以内、 5倍以内、 4倍以内、 3倍以内、 2倍以内、 1. 5倍以内の範囲内にあるこ とが好ましくあり得る。
[0056] 本明細書において、最大と最小との間の相互作用のレベルの「範囲」は、上述のよ うな方法を用いて測定された相互作用レベルの最大値と最小値との間の範囲を 、 、 、最大の値の最小値に対する倍数で表すことができる。この値が小さいほど特異性は 均一であるといえる。
[0057] 本明細書において「MALDI— TOF (MS)」とは、 Matrix Assisted Laser Des orption Ionization —Time— of— Flight (Mass Spectrometer)の略 f&である。 MALDIとは、田中らによって見いだされ、 Hillenkampらによって開発された技法で ある(Karas M. , Hillenkamp, F. , Anal. Chem. 1988, 60, 2299—2301)。 この方法では、試料とマトリクス溶液をモル比で(10— 2— 5 X 10— 4): 1に混合した後、 混合溶液を標的上で乾固し、結晶状態にする。パルスレーザー照射により、大きなェ ネルギ一がマトリクス上に与えられ、(M + H) +、(M + Na) +などの試料由来イオンと マトリクス由来イオンとが脱離する。微量のリン酸緩衝液、 Tris緩衝液、グァ-ジンな どで汚染されていても分析可能である。 MALDI— TOF (MS)は、 MALDIを利用し て飛行時間を元に質量を測定するものである。イオンが一定の加速電圧 Vで加速さ れる場合、イオンの質量を m、イオンの速度を v、イオンの電荷数を z、電気素量を e、 イオンの飛行時間を tとしたとき、イオンの mZzは、
m/z = 2eVt2/L2
で表すことができる。このような MALDI— TOF測定には、島津 ZKratosの KOMPA CT MALDI ΠΖΠΙなどを使用することができる。その測定の際には、製造業者が 作成したパンフレットを参照することができる。 MALDI— TOFの測定時に使用される レーザー照射の照射エネルギーを本明細書にぉ 、て「解離エネルギー」と 、う。
[0058] 本明細書において、「酸ィ匕されていない糖鎖」とは、その糖鎖中に酸ィ匕された単糖 も酸化された単糖の誘導体を含まな 、ものを!、う。単糖の誘導体に言及されるとき、 酸ィ匕されていない単糖の誘導体とは、好ましくは、単糖に由来する部分が酸化されて V、な 、単糖の誘導体を!、う。
[0059] 本明細書において、「酸化された糖鎖」とは、その糖鎖中に酸化された単糖も酸ィ匕 された単糖の誘導体を含むものをいう。酸ィ匕された単糖は上述したとおりであり、例え ば、 D—ダルコン酸などが挙げられるがそれに限定されない。単糖の誘導体に言及さ れるとき、酸化された糖鎖の誘導体とは、好ましくは、単糖に由来する部分が酸化さ れた糖鎖をいう。
[0060] 本明細書において「支持体に結合可能である」とは、物質の性質に言及するとき、 支持体に結合することができる能力をいう。
[0061] 本明細書において使用される「支持体」および「基板」は、本明細書において、特に 言及しない場合互換的に用いられ、別の物質を支持するように用いられるとき、流体 (特に液体などの溶媒)の存在下でその別の物質を支持することができる材料 (好ま しくは固体)をいう。支持体の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれ かで、本発明に物質に結合する特性を有する力またはそのような特性を有するように 誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられるがそれに限定されない。好ましくは 、支持体は、常温(0°C— 30°Cの間のいずれ力 において固体であることが好ましい 。より好ましくは、精製、濃縮、分離または分析がおこなわれる環境において固体状 態を保つことが好ましい。そのような環境は、 0°C未満であり得、あるいは 30°C以上で あり得る。高温としては、例えば、好ましくは 100°C未満が挙げられ得る。支持体はま た、本発明の物質と相互作用をすることが想定される場合、強酸の存在下で、本発 明の物質との相互作用が、通常少なくとも一部保持されること、より好ましくは半分以 上が保持されること、さらに好ましくはほとんどの部分が保持されることが有利であり 得る。本明細書において「基板」は、糖鎖チップについて用いられる場合には、チッ プとして適切な形状の支持体をさすことがある。
[0062] 支持体として使用するための材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が 使用され得る力 例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチ ック、金属 (合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セ ルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)、脂質などが挙げられるがそれらに 限定されない。好ましくは、支持体は、疎水性表面を有する。支持体は、複数の異な る材料の層カゝら形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファ
ィァ、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を複数 使用することできるがそれに限定されない。支持体として使用するための材料として はまた、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフ タレート、不飽和ポリエステル、含フッ素榭脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩ィ匕ビユリデン、 ポリ酢酸ビニル、ポリビュルアルコール、ポリビュルァセタール、アクリル榭脂、ポリア クリロ-トリル、ポリスチレン、ァセタール榭脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フエノー ル榭脂、ユリア榭脂、エポキシ榭脂、メラミン榭脂、スチレン'アクリロニトリル共重合体 、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン榭脂、ポリフエ-レンォキサ イド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ナイ ロン膜、ニトロセルロース膜、 PVDF膜など、ブロッテイングに使用される膜を用いるこ ともできる。ナイロン膜などを用いた場合は、簡便な解析システムを用いて結果を分 析することができる。高密度のものを解析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材 料として使用することが好ましい。ある実施形態では、支持体としては、例えば、架橋 したリボソーム、架橋ポリマーまたは非架橋ポリマーを用いることができるがそれらに 限定されない。支持体は、磁性を有していてもよい。磁性を有することにより、磁性を 用いた精製を行うことが容易となる。好ましい実施形態では、本発明において用いら れる支持体は、架橋したリボソーム、架橋ポリマーまたは非架橋ポリマーで、水または 有機溶媒中で分散可能な粒子で平均粒径が 0. 001ミクロン以上数百ミクロン未満の ものであってもよい。
[0063] 本発明のフラーレン誘導体は、上記のような別の物質を支持体として用いてそれと 結合させて用いることもできるが、本発明の物質そのものが支持体の役割を果たして いていてもよい。
[0064] 本明細書にぉ ヽて「アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基」とは、糖鎖が水溶 液などの流体中で形成する環状のへミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平 衡ならびに糖が有するアルデヒド基およびジオール基にぉ 、て、アルデヒド基および ジオール基と反応して特異的かつ安定な結合をつくることができる性質を有する官能 基をいう。このような官能基としては、ヒドロキシルァミノ基、 N—アルキルヒドロキシルァ ミノ基、ヒドラジド基、チォセミカルバジド基およびシスティン残基ならびにそれらの誘
導体が挙げられるがそれらに限定されない。より好ましくは、そのような官能基は、ヒド ロキシルァミノ基およびシスティン残基である。ヒドロキシルァミノ基と糖との連結様式 (ォキシム結合)は特に酸性に弱ぐ糖鎖捕捉担体力ゝら糖鎖を切り出す工程が容易に 行えるという利点があり、システィン残基は、糖のアルデヒド基とチアゾリジン環を形成 する力 である。ここでいう「それらの誘導体」とは、ヒドロキシルァミノ基、 N—アルキル ヒドロキシルァミノ基、ヒドラジド基またはチォセミカルバジド基の 1個または 2個以上の 水素原子が下記に示す置換基によって置換された官能基を意味する。
[0065] 本明細書において「流体」は、本発明の物質が、糖鎖と相互作用をする環境を提供 することができる流体であればどのようなものでも使用することができる。好ましくは、 そのような流体はケト基を含む物質は実質的に含まない。なぜなら、ケト基を含む物 質が有意に含有されている場合、流体中のアルデヒド基と本発明の物質との反応が 充分に進まないからである。したがって、ケト基を含む物質を含まない形態は必須で はないが、好ましい実施形態である。
[0066] したがって、本明細書において使用される流体は、糖を環状のへミアセタール型と 非環状のアルデヒド型との平衡にもたらすようなものであることが好まし 、。そのような 流体としては、例えば、水溶液、有機溶媒およびこれらの混合物などが挙げられるが それに限定されない。好ましくは、流体は水溶液である。
[0067] 本明細書において「平面展開する」とは、本発明のフラーレン誘導体について言及 されるとき、膜状の形態をとることもしくは膜状の形態にすることをいう。そのような平 面展開して形成された膜の形態としては、例えば、キャスト膜、単分子膜が挙げられ る力 それらに限定されない。本明細書において「キャスト膜」とは、キャスト法を用い て製造される膜をいい、そのようなキャスト膜は、フラーレン誘導体の材料を含む溶液 をキャストし乾燥させることによって製造することができる。本明細書において「単分子 膜」とは、気液界面もしくは固液界面に形成され得る nmオーダーの一分子層の膜を 指す。本発明において、下記に示した「糖鎖捕捉担体」または「糖鎖レプリカ」を作製 する際には、本発明のフラーレン誘導体を含む単分子膜を支持体に移しとるという手 法がとられる。本発明では、上記の広義の意味での「単分子膜」の中でも特に、水面 上に形成された本発明のフラーレン誘導体の単分子膜を水面上に形成し、任意の
方法で固体基板上に移行させ累積してできる Langmuir— Blodgett膜 (通称: LB膜
)を採用することが好ましい。 LB膜の形成方法の最も普遍的なものとして、一定表面 圧に制御されている水面上単分子膜を横切って固体支持体 (または固体基板)を垂 直に上下させる技法が挙げられるが、これに限定されない。ほかの技法として、固体 基板上に単分子膜を 1層だけ固体支持体に移しとる水平付着法があるが、この方法 も本発明において有用である。本発明において「累積」とは、固体支持体に単分子膜 を移しとることを意味し、単分子膜が固体支持体に移しとられる回数は、一回であつ てもよいし、複数回であってもよい。単分子膜を固体支持体に水面上の膜状態また は膜秩序を保ったまま累積するためには、当業者により様々な工夫がなされるが、少 なくとも本発明のフラーレン誘導体が水面上で平面展開し、単分子膜を形成させる 必要がある。そのためには、膜を構成するフラーレン誘導体は、両親媒性であること が好まし!/ヽ。フラーレン核自体またはフラーレン核の構成成分である純炭素フラーレ ンは疎水性であるため、親水性の官能基が純炭素フラーレンに付加していることが好 ましい。例えば、上記のような X基と Y基をもつカルベンをフラーレン核に付カ卩させて 本発明のフラーレン誘導体を得る場合は、少なくともいずれか一方の基が親水性で あることが好ましい。さらに、フラーレン誘導体に付加した親水性基が例えば、正電荷 (例えば、 4級アンモ-ゥム塩など)、または負電荷を有することが好ましい。親水性基 が電荷を有すれば、その電荷と反対の電荷を有する官能基を有するモノマー単位か ら構成される水溶性高分子とポリイオンコンプレックスの形成が可能となる。このポリィ オンコンプレックス化法は、膜の状態を保持したまま固体支持体上に膜を固定ィ匕する ことができ、さらに膜の物理的強度も増大するとの効果が得られる。このような効果が 得られる限り、水溶性高分子の種類は特に限定されない。この手法は、下記の「糖鎖 捕捉担体」または「糖鎖レプリカ」を構築する上で、大変有用である。
本明細書において「糖鎖捕捉担体」とは、糖鎖を捕捉するための担体をいう。その ような担体は、糖鎖を捕捉する分子に加え、担体として使用する部分を含む。糖鎖を 捕捉する分子には、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核と を含むフラーレン誘導体を用いることができる。担体には、支持体を用いることもでき るし、本発明の上記フラーレン誘導体そのものが担体としての働きを有していてもよ
い。
[0069] 本明細書において「有機溶媒に不溶」とは、ある物質について言及するとき、有機 化合物を含む溶媒に対して溶解しな 、かまたは実質的に溶解しな 、性質を 、う。そ のような有機溶媒としては、例えば、アルコール (メタノール、エタノールなど)、ァセト ン、アルカン (例えば、へキサン)などが挙げられるがそれらに限定されない。不溶で あることは、その有機溶媒にその物質 (溶質)を入れたときに、溶質 lgまたは lmlを溶 かすに要する溶媒量が 1Lであること、好ましくは 10L以上であることをいう。
[0070] 本明細書において「自閉した」膜とは、膜の形状について言及するとき、リボソーム のように球状、単層または多層に閉じている状態をいう。従って、そのような自閉した 膜 (例えば、脂質膜)としては、例えば、リボソームなどが挙げられるがそれに限定さ れない。
[0071] 本明細書において、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を「分離」するとは、その糖 鎖または糖鎖含有物質が、分離前に試料中に存在する状態から実質的に引き離す または精製することをいう。従って、試料から分離された糖鎖または糖鎖含有物質は 、分離される前に含んでいた糖鎖または糖鎖含有物質以外の物質の含量が少なくと も低減している。
[0072] 本明細書において、物質 (例えば、糖鎖、核酸またはタンパク質などの生物学的因 子)の「単離」とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の物 質 (例えば、糖鎖または糖鎖含有物質である場合、糖鎖または糖鎖含有物質以外の 因子、あるいは、目的とする糖鎖または糖鎖含有物質以外の糖鎖または糖鎖含有物 質;核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む 核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以 外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)力も実質的に分離または精製されたものを いう。「単離された」、糖鎖または糖鎖含有物質には、本発明の精製方法によって精 製された糖鎖または糖鎖含有物質が含まれる。したがって、単離された糖鎖または糖 鎖含有物質は、化学的に合成した糖鎖または糖鎖含有物質を包含する。
[0073] 本明細書において、物質 (例えば、糖鎖、核酸またはタンパク質などの生物学的因 子)の「精製」とは、その物質に天然に随伴する因子の少なくとも一部を除去すること
をいう。したがって、精製および分離は、その形態が一部重複する。したがって、通常 、精製された物質 (例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のような生物学的因子)におけ るその物質の純度は、その物質が通常存在する状態よりも高い (すなわち濃縮されて いる)が、天然に随伴する因子が低減されている限り、濃縮されていない状態も「精製 」の概念に包含される。
[0074] 本明細書において物質 (例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のような生物学的因子 )の「濃縮」とは、その物質が濃縮前に試料に含まれている含有量よりも高い濃度に 上昇させる行為をいう。従って、濃縮もまた、精製および分離と、その概念が一部重 複する。したがって、通常、濃縮された物質 (例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のよう な生物学的因子)は、その物質が通常存在する状態における不純物の含有量は低 減されているが、目的とする物質の含有量が増カロしている限り、ある特定の不純物が 増加して!/、てもよく、「精製」されて 、な 、状態も「濃縮」の概念に包含される。
[0075] 本明細書にぉ ヽて「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件 」とは、糖鎖捕捉担体と、糖鎖または糖鎖含有物質とが相互作用し得る (好ましくは、 共有結合を形成する)のに十分な条件 (例えば、緩衝剤、溶媒の極性、温度、 pH、 塩濃度、圧力など)をいう。このような条件を設定するのに必要なパラメータの設定は 、当業者の技術範囲内であり、相互作用の種類、糖鎖または糖鎖含有物質の種類、 糖鎖捕捉担体の種類 (例えば、アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基)など相互 作用に関連する諸パラメータを考慮することにより、当業者は、そのような条件を当該 分野において周知の技術を用いて設定し、相互作用反応を行わせることができる。 好ましい実施形態では、そのような条件は、糖鎖が水溶液などの流体中で形成する 環状のへミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡にぉ 、て、アルデヒド基と 反応して特異的かつ安定な結合を形成させるような条件が挙げられるがそれに限定 されない。あるいは、反応に供する流体にケト基が実質的に含まれていないこともま た 1つの好ましい条件であり得る。そのような条件としては、例えば、 pH5. 6の酢酸 緩衝液を常温常圧 (例えば、 20°Cおよび 1気圧)にて用いることなどが挙げられる。
[0076] 本明細書にぉ 、て「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との複合体」とは、本 発明の糖鎖捕捉担体と、糖鎖または糖鎖含有物質とが、相互作用をして複合体化し
たものをいう。好ましくは、そのような複合体は、本発明の糖鎖捕捉担体と、糖鎖また は糖鎖含有物質とが共有結合している。従って、本明細書では、そのような共有結合 によって 2以上の部分が結合した物質もまた、複合体の概念に入る。
[0077] 本明細書において、「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用 が少なくとも一部解消するような条件」とは、本発明の糖鎖捕捉担体と、糖鎖または糖 鎖含有物質との間に形成された相互作用(例えば、共有結合)が、少なくとも一部低 減するようにさせる条件をいう。従って、上記相互作用が共有結合であるとき、「糖鎖 捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するよ うな条件」は、糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との間に形成された共有結 合が少なくとも一部、好ましくは全部を解除させる条件をいう。従って、このような条件 としては、物理的手段 (例えば、レーザーなど)、化学的手段 (酸性条件)または生化 学的手段 (例えば、酵素)を用いることなどが挙げられるがそれらに限定されない。従 つて、この条件は、所望の糖鎖および糖鎖含有物質が識別可能な形態で分離される 限り、どのような条件でもよぐ所望の糖鎖または糖鎖含有物質が変性していてもよい 力 好ましくは、変性させずに分離される、より好ましくは天然に存在する状態で分離 されることが有利であり得る。このような条件は、具体的には、例えば、酸性条件に曝 すことなどが挙げられ、好ましくは、プロトン型イオン交換榭脂、強力チオン交換榭脂 と混合して分離することが簡便であり、有利であり得る。本発明において分離した結 合物を物理的に切断するとは、糖鎖を分離する方法ならば、特に限定しないが、主と して照射レーザーエネルギー強度を適宜調製することによりポリマーと糖鎖との結合 を切ることをいう。
[0078] 本明細書において、「糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件」と は、糖鎖含有物質において、糖鎖とそれ以外の物質 (例えば、ペプチド、脂質など)と の間に形成されている結合 (例えば、共有結合)を除去するような条件をいう。従って 、このような条件としては、物理的手段 (例えば、レーザーなど)、化学的手段 (酸性条 件)または生化学的手段 (例えば、グリコシダーゼなどの酵素)を用いることなどが挙 げられるがそれらに限定されない。従って、この条件は、糖鎖含有物質の中の所望の 糖鎖が識別可能な形態で分離される限り、どのような条件でもよぐ所望の糖鎖は変
性していてもよいが、好ましくは、変性させずに分離され、より好ましくは天然に存在 する状態で分離されることが有利であり得る。このような条件は、具体的には、例えば 、酸性条件に曝すことなどが挙げられ、好ましくは、プロトン型イオン交換榭脂、強力 チオン交換樹脂と混合して分離することが簡便であり、有利であり得る。本発明にお いて分離した結合物を物理的に切断するとは、糖鎖を分離する方法ならば、特に限 定しないが、主として照射レーザーエネルギー強度を適宜調製することによりポリマ 一と糖鎖との結合を切ることをいう。従って、「糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分 とに分離する条件」は、「糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作 用が少なくとも一部解消するような条件」と重複することもある。また、「糖鎖含有物質 を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件」は、アルデヒド基を遊離させる条件とも 重複することちある。
[0079] 本明細書にぉ 、て「容器」としては、流体を保持することができるような形状である 限り、どのようなものでも使用することができる。容器の材料もまた、流体を保持するこ とができ、本発明にお 、て行われる反応に耐え得る力またはそのように加工すること ができる限り、どのような材料を用いてもよい。そのような材料は、常温 (0°C— 30°Cの 間のいずれか)において固体であることが好ましい。より好ましくは、精製、濃縮、分 離または分析がおこなわれる環境において固体状態を保つことが好ましい。そのよう な環境は、 0°C未満であり得、あるいは 30°C以上であり得る。高温としては、例えば、 好ましくは 100°C未満が挙げられ得る。そのような材料としては、固体表面を形成し 得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸 化珪素、プラスチック、金属 (合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、 ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)、紙などが挙げら れるがそれらに限定されない。そのような材料は、コーティングされていても、コーティ ングされていなくてもよい。
[0080] 本明細書にお!、て「コーティング」とは、支持体または容器にある特性を持たせるた めに施す表面加工または表面加工された物質をいう。そのようなコーティングは、例 えば、耐水性、耐油性、耐有機溶媒性、耐酸性などを付与するために用いられる。そ のようなコーティング材料としては、例えば、フッ素榭脂、シラン系水系塗料榭脂、官
能基性有機シランカップリング剤および遷移金属カップリング剤などが挙げられるが それらに限定されな ヽ。本発明の糖鎖捕捉フラーレン誘導体をガラス基板または石 英基板のような固体支持体に累積または結合させる場合、この支持体は官能基性有 機シランカップリング剤または遷移金属カップリング剤で疎水処理コーティングされて
V、ることが好まし ヽ。本発明のフラーレン誘導体の一部を構成するフラーレン核は疎 水性であるため、フラーレン核と疎水処理コーティングされた支持体との間の疎水性 相互作用により、フラーレン誘導体の単分子膜の支持体への累積が容易となり、しか もフラーレン誘導体の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位を糖鎖を含むか、または 含むと予想される試料側、つまり支持体の反対側に向力せることが可能となる。有用 な有用な官能基性有機シランカップリング剤の例として、 γーァミノプロピルトリアルコ キシシラン、 γ イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルートリアルコキシシラン 、グリシドォキシプロピルトリアルコキシシランおよびウレイドプロピルトリアルコキシシ ランが挙げられる。好ましい官能基性有機シランカップリング剤には、 Α— 187 γ ダリ シドォキシプロピルトリメトキシシラン、 Α— 174 γ メタアクリルォキシプロピルトリメトキ シシラン、 Α— 1100 γ—ァミノプロピルトリエトキシシランシランカップリング剤、 Α— 110 8アミノシランカップリング剤および A— 1160 γ—ウレイドプロピルトリエトキシシラン(こ れらはそれぞれ New York, Tarrytownの OSi Specialties, Inc.から市販され ている)が挙げられる。適切な遷移金属カップリング剤として、チタニウム、ジルコユウ ム、イットリウムおよびクロムカップリング剤が挙げられる。適切なチタネートカップリン グ剤およびジルコネートカップリング剤は、 Kenrich Petrochemical Company力 ら巿販されている。適切なクロム錯体は、 Delaware, Wilmingtonの E. 1. duPont de Nemoursから市販されている。ァミノ含有 Werner 型カップリング剤は、クロム のような三価核原子がァミノ官能基を有する有機酸と配位する錯体化合物である。当 業者にとって公知の他の金属キレートおよび配位型カップリング剤力 本明細書にお いて使用され得る。
本明細書において「試料中のアルデヒド基を遊離させる」とは、試料中に含まれるか または含まれると予測される糖鎖または糖鎖含有物質中のアルデヒドをむき出しにさ せることをいう。試料中のアルデヒド基を遊離させることにより、その後、本発明の糖鎖
と特異的に相互作用する物質と、その糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用 反応の進行がより容易になる。あるいは、試料中のアルデヒド基を遊離させる条件に 試料を曝すことにより、糖鎖含有物質中の糖鎖のみを分離して濃縮、精製または分 析などを行うことができ、そのような状態が所望される場合、有利であり得る。
[0082] そのような試料中のアルデヒド基を遊離させるための条件としては、例えば、酵素処 理および Zまたは化学法による供プロトン反応が挙げられるがそれらに限定されない
。そのような酵素処理としては、例えば、 N—グリコシダーゼ(例えば、 Flavobacteriu m meningosepticum由来の酵素を E. coli中で発現させたもの)、グリコぺプチダ ーゼ A (アーモンド)などの糖鎖遊離酵素により処理が挙げられるがそれに限定され ない。本発明において用いられるこのような酵素には、植物、酵母、かび由来のダル コシダーゼ、好ましくはフラボバタテリゥム由来の N—ダルコシダーゼが包含されるが それらに限定されない。化学法としては、例えば、ヒドラジン分解 (液相または気相) が挙げられるがそれに限定されない。ヒドラジン分解では、例えば、試料 (例えば、 20 0—1000 μ gの糖タンパク質含有試料)を凍結乾燥し (ネジ口ノ ィアルまたはネジ口 試験管を使用)、無水ヒドラジン (例えば、 100— 200 1をカ卩えて 100°Cで数時間な いし十数時間加熱する(例えば、ドライブロックヒーターまたはオーブンを使用)。その 後、トルエンを数滴カ卩え、デシケーターに試料バイアルを入れ、冷却トラップを付けた 真空ポンプで数時間以上減圧しヒドラジンを共沸留去する。この共沸留去を数回繰り 返し、ヒドラジンを完全に留去することによって、ヒドラジン分解が達成され、所望の糖 鎖が分離される。
[0083] 本明細書において、本発明の装置に用いられる「試料を導入する」とは、本発明の 反応が起こるべき場所に、試料を移動させることをいう。試料導入部としては、試料を 導入するのに適していれば、どのような形状のものを用いてもよい。また、試料を導入 する方法としては、例えば、インジェクタを用いる方法、オンカラム法、試料を注入し 移動相によってカラム内に流し込む方法、サンプルバルブによる方法などが挙げら れるがそれらに限定されない。試料を導入する手段としては、サンプルインジェクタ、 オートサンプラー、マイクロフィーダ一などが挙げられるがそれらに限定されない。クロ マトグラフィ一で用いられる場合は、「高速液体クロマトグラフィー」波多野博行編 ィ匕
学の領域 増刊 102号 南江堂;"高速液体クロマトグラフィーの装置及び付属装置" 奥山典生、瀬田和夫著 pl l— 40などを参照することができる。
[0084] 本明細書において「流体相を収容し得る」とは、本発明の反応において用いられる 流体相を、本発明の反応が起こるに十分な容積を有することをいう。好ましくは、流体 相を収容し得る空間を有する容器は、実質的に損失なぐかつ、変性させることなぐ 流体相を保持することができる能力をいう。
[0085] 本明細書において「流体連絡」するとは、流体連通とも呼ばれ、ある 2つの容器の間 で、各々の容器に収容される流体が少なくとも 1方向好ましくは双方向で移動可能で ある状態をいう。従って、容器と試料導入部とが流体連絡している状態にある場合、 試料導入部に試料が導入されると、少なくとも一部の試料がその容器内に導入され る状態〖こある。流体連絡している場合は、常時その状態であってもよぐ一時的にそ のような状態であってもよい。一時的に流体連絡の状態にさせる場合、そのような状 態を制御するコントローラを装置に設けることが好ましくあり得るが、手動で行えるよう にしてもよい。
[0086] 本明細書において支持体と容器との「結合」は、支持体が本発明において用いられ る反応において固定された状態が保持される限りどのような形態であってもよい。好 ましくは、共有結合であり得る力 疎水性相互作用など他の相互作用を用いる力また ίま併用してもよ!/、。
[0087] 本明細書にぉ ヽて「糖鎖捕捉担体と糖鎖との複合体を取り出す手段」としては、糖 鎖捕捉担体と糖鎖との複合体を取り出すことができる限り、どのような手段でも用いる ことができる。そのような手段としては、遠心分離器、フィルター、クロマトグラフィー装 置などが挙げられるがそれらに限定されない。担体が磁性を有する場合、磁性を利 用した分離方法を用いてもよい。その場合、糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物 質との複合体を取り出す手段は、磁石であり得る。あるいは、糖鎖捕捉担体と糖鎖ま たは糖鎖含有物質との複合体は、この担体を、担体と糖鎖との相互作用が分離しな い程度のストリンジエンシー条件下に曝すことによって、取り出すことができる。
[0088] 本明細書にぉ 、て「所望のストリンジエンシー (条件)」とは、糖鎖と特異的に相互作 用する物質と、糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が解離しないような条件
をいう。そのような条件は、当該分野において周知の技術を用い、用いる試薬、担体 、糖鎖または糖鎖含有物質、糖鎖と特異的に相互作用する物質、形成される相互作 用などの種々のパラメータを参酌しながら、当業者が適宜選定することができる。例 えば、相互作用が共有結合である場合は、所望のストリンジエンシーは、水(例えば、 超純水)または緩衝液 (例えば、酢酸緩衝液)でリンスすることであってもよ!/ヽ。
[0089] 本明細書において「同定」とは、物質の正体を明らかにすることをいう。そのような同 定には、種々の測定方法を用いることができ、例えば、マススペクトル分析、 NMR、 X線解析、元素分析などの物理的分析、化学的特異的反応を観察することなどによ る化学的分析、酵素の基質特異性などを判定することによる生化学的分析、あるい は、生物 (例えば、細菌などの微生物)の反応を判定することなどによる生物学的分 析などが挙げられるがそれらに限定されない。
[0090] 本明細書において「病因」とは、被検体の疾患、障害または状態 (本明細書におい て、総称して「病変」ともいい、植物では病害ともいう)に関連する因子をいい、例えば 、原因となる病原物質 (病原因子)、病原体、病変細胞、病原ウィルスなどが挙げられ るがそれらに限定されない。
[0091] そのような疾患、障害または状態としては、例えば、循環器系疾患 (貧血 (例えば、 再生不良性貧血 (特に重症再生不良性貧血)、腎性貧血、癌性貧血、二次性貧血、 不応性貧血など)、癌または腫瘍 (例えば、白血病、多発性骨髄腫)など);神経系疾 患 (痴呆症、脳卒中およびその後遺症、脳腫瘍、脊髄損傷など);免疫系疾患 (T細 胞欠損症、白血病など);運動器 ·骨格系疾患 (骨折、骨粗鬆症、関節の脱臼、亜脱 臼、捻挫、靱帯損傷、変形性関節症、骨肉腫、ユーイング肉腫、骨形成不全症、骨 軟骨異形成症など);皮膚系疾患 (無毛症、黒色腫、皮膚悪性リンパ腫、血管肉腫、 組織球症、水疱症、膿疱症、皮膚炎、湿疹など);内分泌系疾患 (視床下部 ·下垂体 疾患、甲状腺疾患、副甲状腺 (上皮小体)疾患、副腎皮質,髄質疾患、糖代謝異常、 脂質代謝異常、タンパク質代謝異常、核酸代謝異常、先天性代謝異常 (フエニール ケトン尿症、ガラクトース血症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症)、無アルブ ミン血症、ァスコルビン酸合成能欠如、高ピリルビン血症、高ビリルビン尿症、カリタレ イン欠損、肥満細胞欠損、尿崩症、バソプレツシン分泌異常、侏儒症、ウォルマン病
(酸リパーゼ (Acid lipase)欠損症)、ムコ多糖症 VI型など);呼吸器系疾患 (肺疾患 (例えば、肺炎、肺癌など)、気管支疾患、肺癌、気管支癌など);消化器系疾患 (食 道疾患 (たとえば、食道癌)、胃 ·十二指腸疾患 (たとえば、胃癌、十二指腸癌)、小腸 疾患 ·大腸疾患 (たとえば、大腸ポリープ、結腸癌、直腸癌など)、胆道疾患、肝臓疾 患 (たとえば、肝硬変、肝炎 (A型、 B型、 C型、 D型、 E型など)、劇症肝炎、慢性肝炎 、原発性肝癌、アルコール性肝障害、薬物性肝障害)、脾臓疾患 (急性脾炎、慢性 脾炎、脾臓癌、嚢胞性脾疾患)、腹膜 '腹壁'横隔膜疾患 (ヘルニアなど)、ヒルシュス プラング病など);泌尿器系疾患 (腎疾患 (腎不全、原発性糸球体疾患、腎血管障害 、尿細管機能異常、間質性腎疾患、全身性疾患による腎障害、腎癌など)、膀胱疾 患 (膀胱炎、膀胱癌など)など);生殖器系疾患 (男性生殖器疾患 (男性不妊、前立腺 肥大症、前立腺癌、精巣癌など)、女性生殖器疾患 (女性不妊、卵巣機能障害、子 宫筋腫、子宮腺筋症、子宮癌、子宮内膜症、卵巣癌、絨毛性疾患など)など);循環 器系疾患 (心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈、弁膜症、心筋,心膜疾患、先天性 心疾患 (たとえば、心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存、ファロー四徴)、動 脈疾患 (たとえば、動脈硬化、動脈瘤)、静脈疾患 (たとえば、静脈瘤)、リンパ管疾患 (たとえば、リンパ浮腫)など)などが挙げられるがそれらに限定されない。
[0092] 本明細書において「試料」とは、その中の少なくとも 1つの成分 (好ましくは糖鎖また は糖鎖含有物質)の分離、濃縮、精製または分析を目的とするものであれば、どのよ うな起源のものをも使用することができる。したがって、試料は、生物の全部または一 部から取り出されたものであり得る力 それに限定されない。別の実施形態において 、試料は、合成技術によって合成されたものであり得る。
[0093] 本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。
そのような生体分子を含む試料を、本明細書にぉ 、て特に生体試料と 、うことがある 。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイ ルスなどを含むがそれらに限定されない。従って、生体分子は、生体から抽出される 分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分 子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴぺプチ ド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、 cDN
A、ゲノム DNAのような DNA、 mRNAのような RNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴ サッカリド、脂質、低分子 (例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子な ど)、これらの複合分子などが包含されるがそれらに限定されない。本明細書では、 生体分子は、好ましくは、糖鎖または糖鎖を含む複合分子 (例えば、糖タンパク質、 糖脂質など)であり得る。
[0094] そのような生体分子の供給源としては、生物由来の糖鎖が結合または付属する材 料であれば特にその由来に限定はなぐ動物、植物、細菌、ウィルスを問わない。より 好ましくは動物由来生体試料が挙げられる。好ましくは、例えば、全血、血漿、血清、 汗、唾液、尿、膝液、羊水、髄液等が挙げられ、より好ましくは血漿、血清、尿が挙げ られる。生体試料には個体から予め分離されていない生体試料も含まれる。例えば 外部から試液が接触可能な粘膜組織、あるいは腺組織、好ましくは乳腺、前立腺、 脾臓に付属する管組織の上皮が含まれる。
[0095] (糖鎖アレイおよび糖鎖チップ)
本明細書において用いられる用語「アレイ」とは、基板または膜上の固定物体の固 定されたパターンまたはパターンィ匕された基板そのものをいう。アレイの中で、小さな 基板(例えば、 10 X 10mmなど)上にパターン化されているものはマイクロアレイとい うが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。また、アレイ は、基盤の大きさまたは載せる生体分子の密度によって、マクロアレイおよびマイクロ アレイなどにも分けられる。従って、上述の基板より大きなものにパターンィ匕されたも のでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜 に固定されている所望の生体分子 (例えば、糖鎖)のセットで構成される。アレイは好 ましくは異なる所望の生体分子 (例えば、糖鎖)を少なくとも 102個、より好ましくは少 なくとも 103個、およびさらに好ましくは少なくとも 104個、さらにより好ましくは少なくと も 105個を含む。これらの所望の生体分子 (例えば、糖鎖)は、好ましくは表面が 125 X 80mm,より好ましくは 10 X 10mm上に配置される。形式としては、 96ゥエルプレ ート、 384ゥエルプレートなどのプレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大き さのものが企図される。
[0096] 従って、「アレイ」または「マイクロアレイ」とは、生体分子 (例えば、糖鎖、タンパク質
、核酸など)を基板上に整列 (array)させて、固定させたデバイスであるとも説明する ことができる。本明細書では、特に断らない限り、アレイは、マイクロアレイと互換的に 使用される。マクロとマイクロとの境界は厳密に決まっているわけではないが、一般に 、「マクロアレイ」とは、メンブレン上に生体分子をスポットした高密度フィルター(high density filter)をいい、「マイクロアレイ」とは、ガラス、シリコンなどの基板表面に 生体分子を載せたものを 、う。
[0097] 本明細書において「チップ」とは、アレイのうち、半導体集積回路製造のための技術 を応用し、基板上で一度に複数種の糖鎖などの生体分子を合成することで作製され たものをいい、生体分子が糖鎖である場合半導体チップになぞらえて、特に「糖鎖チ ップ(chip)」という。生体分子が DNAの場合は、 DNAチップとも呼ばれ、 GeneChi P (登録商標)(Affimetrix、 CA、米国)などが挙げられ(Marshall Aら、(1998) N at. Biotechnol. 16 : 27— 31および Ramsay Gら、(1998) Nat. Biotechnol. 16 40— 44を参照のこと)、チップの利用に関する技術は糖鎖チップにも応用され得る 。糖鎖チップは、狭義には上記のように定義されるが、糖鎖アレイまたは糖鎖マイクロ アレイ全体をいうこともあり、従って、糖鎖が高密度で配置されたチップもまた、糖鎖 チップと呼ばれ得る。
[0098] アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」 とは、生体分子の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある生 体分子のスポットをある支持体に作製することを 、う。スポッティングはどのような方法 でも行うことができ、そのような方法は当該分野において周知である。
[0099] 本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい 、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを 伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすベての各々のアドレスにおける存在 物が他のアドレスにおける存在物力も識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状 を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得 る力、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し 、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がな い場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
[0100] 各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のァ ドレスの数、分析物の量および Zまたは利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそ のアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさ は、例えば、 1— 2nm力も数 cmの範囲であり得る力 そのアレイの適用に一致した任 意の大きさが可能である。
[0101] アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の 適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得 る力、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループィ匕され得 る。
[0102] 糖鎖アレイを用いたアツセィにお 、ては、糖鎖アレイ上でノヽイブリダィズした蛍光シ グナルを蛍光検出器等で検出することが可能である。このような検出器は、現在まで に種々の検出器が利用可能である。例えば、 Stanford Universityのグループは、 オリジナルスキャナを開発しており、このスキャナは、蛍光顕微鏡と稼動ステージとを 糸且み合わせたものであり、 DNAアレイに利用されており、糖鎖アレイにも利用可能で ある(http : ZZcmgm. Stanford. eduZpbrownを参照のこと)。従来型のゲル用 蛍光イメージアナライザである FMBIO (日立ソフトウェアエンジニアリング)、 Storm ( Molecular Dynamics)などでも、スポットがそれほど高密度でなければ、糖鎖ァレ ィの読み取りを行い得る。その他に利用可能な検出器としては、 ScanArray 4000 、同 5000 (GeneralScanning ;スキャン型(共焦点型))、 GMS418 Array Scan ner (宝酒造;スキャン型(共焦点型))、 Gene Tip Scanner (日本レーザ電子;スキ ヤン型(非共焦点型))、 Gene Tac 2000 (Genomic Solutions; CCDカメラ型) )などが挙げられる。
[0103] アレイ力 得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理 、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフト ウェアとしては、 DNAアレイに関して開発された各種検出システムに付属のソフトゥェ ァ(Ermolaeva Oら(1998) Nat. Genet. 20 : 19— 23)を利用することができる。ま た、データベースのフォーマットとしては、例えば、 DNAチップに対して開発された 形式などを糖鎖向けに改変したものを利用することができる。
[0104] (糖鎖レプリカ)
本明細書において「糖鎖レプリカ」とは、ある物体 (例えば、膜、固体箔)上に、標的 となる被検体上にある糖鎖を天然に存在する状態、含有比、場所などをそのまま反 映するような状態で、写し取ることおよびそれによって写し取られたもの(例えば、膜、 固体箔)をいう。糖鎖レプリカでは、このように、糖鎖が天然に存在する状態、含有比 、場所などが反映されていることから、この糖鎖レプリカを調査することによって、糖鎖 レプリカが由来する被検体の状態を忠実にかつ簡便に検査することができる。
[0105] 本明細書において「固体箔」は、固体の薄い箔をいう。固体箔は、糖鎖レプリカを製 造することができるような材料でできており、検査に耐え得る形状をしている限り、どの ような形状および材料力もできていてもよい。そのような固体箔としては、例えば、ガラ ス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属 (合金も含まれる)、 天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラ ン、およびナイロン)などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、検査の 簡便から、透明な材料でできていることが有利であり得る。固体箔はまた、あるセンサ 一により検出可能な標識を付すことができる材料でできていることが好ましい。
[0106] (診断)
本明細書において「検出」とは、被検体における疾患、障害、状態などに関連する 種々のパラメータを同定することを 、う。
[0107] 本明細書において「診断」とは、被検体における疾患、障害、状態などに関連する 種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状を判定することをいう
。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、糖鎖を同定することができ、 同定された糖鎖に関する情報を用いて、被検体における疾患、障害、状態などの種 々のパラメータを選定することができる。
[0108] 本明細書において「鑑別」とは、被検体における疾患、障害、状態などの種々のパ ラメータを識別することをいう。従って、本明細書において「診断」および「鑑別」はそ の概念が一部重複する。
[0109] (有機化学)
有機化学については、例えば、モリソン ボイド有機化学 (上)(中)(下)第 5版、東
京化学同人発行(1989年)などに記載されており、これらは本明細書において関連 する部分が参考として援用される。
[0110] 本明細書においては、特に言及がない限り、「置換」は、ある有機化合物または置 換基中の 1または 2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう 。水素原子を 1つ除去して 1価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原 子を 2つ除去して 2価の置換基に置換することも可能である。
[0111] 本発明のフラーレン誘導体の前駆体である「フラーレン核」に付加する「カルベン」 またはカルベン以外の「活性種」が、置換 Rによって置換されている場合、そのような Rは、単数または複数存在し、複数存在する場合は、それぞれ独立して、水素、アル キル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ァルケ-ル 、置換されたァルケ-ル、シクロアルケ-ル、置換されたシクロアルケ-ル、アルキ- ル、置換されたアルキ-ル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環基、置換され た炭素環基、ヘテロ環基、置換されたへテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、置換された ヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シァ入ニトロ、アミ入置換されたアミ入 カノレボキシ、置換されたカノレボキシ、アシノレ、置換されたアシノレ、チォカノレボキシ、置 換されたチォカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボ-ル、置換され たチォカルボ-ル、置換されたスルホ-ルおよび置換されたスルフィエルからなる群 より選択される。好ましくは、 Rは、複数存在する場合それぞれ独立して、水素、アル キルおよび置換されたアルキル力 なる群より選択され得る。より好ましくは、独立し て、 Rは、複数存在する場合それぞれ独立して、水素および C1一 C6アルキル力もな る群より選択され得る。 Rは、すべてが水素以外の置換基を有していても良いが、好 ましくは、少なくとも 1つの水素、より好ましくは、 2— n (ここで nは Rの個数)の水素を 有し得る。置換基のうち水素の数が多いことが好ましくあり得る。大きな置換基または 極性のある置換基は本発明の効果 (特に、アルデヒド基との相互作用)に障害を有し 得る力らである。従って、水素以外の置換基としては、好ましくは、 C1一 C6アルキル 、 C1一 C5アルキル、 C1一 C4アルキル、 C1一 C3アルキル、 C1一 C2アルキル、メチ ルなどであり得る。ただし、本発明の効果を増強し得ることもあることから、大きな置換 基を有することもまた好ましくあり得る。さらにより好ましくは Rのすべてが水素であり得
る。上述したように、カルベンの置換基は、該置換基と「糖鎖」との相互作用のレベル 力 「糖鎖と特異的に相互作用し得る部位」と「糖鎖」との特異的相互作用のレベルを 超えず、その特異的相互作用に不利に影響を及ぼさないように、選択され得る。
[0112] Rがさらに置換されている場合、その置換基は、好ましくは、以下のように定義され る。
[0113] ある置換基 Rが置換されている場合、
Rは、 RA— (RB)で表され、ここで、 RAは R力 n個の水素が脱離した (n+ 1)価の基 であり;
RBは、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル 、ァルケ-ル、置換されたァルケ-ル、シクロアルケ-ル、置換されたシクロアルケ- ル、アルキニル、置換されたアルキ-ル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環 基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたへテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ 、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シァ入ニトロ、ァミノ、置換 されたアミ入カルボキシ、置換されたカルボキシ、ァシル、置換されたァシル、チォカ ルボキシ、置換されたチォカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボ- ル、置換されたチォカルボ-ル、置換されたスルホ-ルおよび置換されたスルフィ- ルカ なる群より選択され得る。
[0114] RBが置換されている場合、
RBは、 RG-(RD)で表され、ここで、 RGは RB力も n個の水素が脱離した (n+ 1)価の 基であり;
RDは、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル 、ァルケ-ル、置換されたァルケ-ル、シクロアルケ-ル、置換されたシクロアルケ- ル、アルキニル、置換されたアルキ-ル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環 基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたへテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ 、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シァ入ニトロ、ァミノ、置換 されたアミ入カルボキシ、置換されたカルボキシ、ァシル、置換されたァシル、チォカ ルボキシ、置換されたチォカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボ- ル、置換されたチォカルボ-ル、置換されたスルホ-ルおよび置換されたスルフィ-
ルカ なる群より選択され得る。
[0115] RDが置換されている場合、
RDは、 RE-(RF)で表され、ここで、 REは RDから n個の水素が脱離した (n+ 1)価の 基であり;
RFは、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル 、ァルケ-ル、置換されたァルケ-ル、シクロアルケ-ル、置換されたシクロアルケ- ル、アルキニル、置換されたアルキ-ル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、炭素環 基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたへテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ 、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シァ入ニトロ、ァミノ、置換 されたアミ入カルボキシ、置換されたカルボキシ、ァシル、置換されたァシル、チォカ ルボキシ、置換されたチォカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボ- ル、置換されたチォカルボ-ル、置換されたスルホ-ルおよび置換されたスルフィ- ルカ なる群より選択され得る。
[0116] ここで、 RFが置換されて!、る場合は、
RFは、 RG— (RH)で表され、ここで、 RGは、 RFから n個の水素が脱離した (n+ 1)価 の基であり;
R1Hまたは R2Hは、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシク 口アルキル、ァルケ-ル、置換されたァルケ-ル、シクロアルケ-ル、置換されたシク ロアルケ-ル、アルキ -ル、置換されたアルキ -ル、アルコキシ、置換されたアルコキ シ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたへテロ環基、ハロゲン 、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シァ入ニトロ、 アミ入置換されたアミ入カルボキシ、置換されたカルボキシ、ァシル、置換されたァ シル、チォカルボキシ、置換されたチォカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換さ れたカルボ-ル、置換されたチォカルボ-ル、置換されたスルホ-ルおよび置換され たスルフィ-ルカもなる群より選択され得る。
[0117] ここで、 RHが置換されている場合は、 RFについての置換と同様に置換され得、その 後の置換基にっ 、ても同様に置換され得る。
[0118] なお、いうまでもなぐ上述した置換基の数 nは、すべて同一ではなぐそれぞれ独
立して選択され得る。 nが 2以上の場合、()nで示される各置換基は同一であってもよ ぐ異なっていてもよい。
[0119] 本明細書にぉ 、て「ヘテロ環 (基)」とは、炭素およびへテロ原子をも含む環状構造 を有する基をいう。ここで,ヘテロ原子は、 0、 Sおよび N力もなる群より選択され、同 一であっても異なっていてもよぐ 1つ含まれていても 2以上含まれていてもよい。へテ 口環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり 得る。ヘテロ環基は置換されていてもよい。
[0120] 本明細書において「アルコール」とは、脂肪族炭化水素の 1または 2以上の水素原 子をヒドロキシル基で置換した有機化合物をいう。本明細書においては、 ROHとも表 記される。ここで、 Rは、アルキル基である。好ましくは、 Rは、 C1一 C6アルキルであり 得る。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、 1 プロパノール、 2—プロ パノールなどが挙げられるがそれらに限定されない。
[0121] 本明細書において「アルキル」とは、メタン、ェタン、プロパンのような脂肪族炭化水 素(アルカン)力も水素原子が一つ失われて生ずる 1価の基をいい、一般に C H n 2n+ l 一で表される(ここで、 nは正の整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得 る。本明細書において「置換されたアルキル」とは、以下に規定する置換基によって アルキルの Hが置換されたアルキルをいう。これらの具体例は、 C1一 C2アルキル、 C1一 C3アルキル、 C1一 C4アルキル、 C1一 C5アルキル、 C1一 C6アルキル、 C1 一 C7アルキル、 C1一 C8アルキル、 C1一 C9アルキル、 C1一 C10アルキル、 C1一 C11アルキルまたは C1一 C12アルキル、 C1一 C2置換されたアルキル、 C1一 C3置 換されたアルキル、 C1一 C4置換されたアルキル、 C1一 C5置換されたアルキル、 C 1一 C6置換されたアルキル、 C1一 C7置換されたアルキル、 C1一 C8置換されたァ ルキル、 C1一 C9置換されたアルキル、 C1一 C10置換されたアルキル、 C1一 C11 置換されたアルキルまたは C1一 C 12置換されたアルキルであり得る。ここで、例えば C 1一 C 10アルキルとは、炭素原子を 1一 10個有する直鎖または分枝状のアルキル を意味し、メチル(CH—)、ェチル(C H一)、 n プロピル(CH CH CH一)、イソプ
3 2 5 3 2 2 口ピル((CH ) CH—)、 n ブチル(CH CH CH CH一)、 n ペンチル(CH CH C
3 2 3 2 2 2 3 2
H CH CH -)、 n—へキシル(CH CH CH CH CH CH -)、 n—ヘプチル(CH C
H CH CH CH CH CH -)、 n—ォクチル(CH CH CH CH CH CH CH CH
2 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2 2 2 2
)、 n—ノ-ル(CH CH CH CH CH CH CH CH CH -)
3 2 2 2 2 2 2 2 2 、 n—デシル(CH CH C
3 2
H CH CH CH CH CH CH CH一)、 C (CH ) CH CH CH (CH ) CH C
2 2 2 2 2 2 2 2 3 2 2 2 3 2 2
H (CH ) などが例示される。また、例えば、 C1一 CIO置換されたアルキルとは、 C1
3 2
一 C10アルキルであって、そのうち 1または複数の水素原子が置換基により置換され ているものをいう。
[0122] 本明細書において、「低級アルキル」は、 C1一 C6アルキルであり、好ましくは、 C1 または C2アルキルである。
[0123] 本明細書において「シクロアルキル」とは、環式構造を有するアルキルをいう。「置換 されたシクロアルキル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルキルの Hが置 換されたシクロアルキルをいう。具体例としては、 C3— C4シクロアルキル、 C3— C5 シクロアルキル、 C3— C6シクロアルキル、 C3— C7シクロアルキル、 C3— C8シクロ アルキル、 C3— C9シクロアルキル、 C3— C10シクロアルキル、 C3— C11シクロアル キル、 C3— C12シクロアルキル、 C3— C4置換されたシクロアルキル、 C3— C5置換 されたシクロアルキル、 C3— C6置換されたシクロアルキル、 C3— C7置換されたシク 口アルキル、 C3— C8置換されたシクロアルキル、 C3— C9置換されたシクロアルキ ル、 C3— C10置換されたシクロアルキル、 C3— C11置換されたシクロアルキルまた は C3— C12置換されたシクロアルキルであり得る。例えば、シクロアルキルとしては、 シクロプロピル、シクロへキシルなどが例示される。
[0124] 本明細書中、「アルキレン」とは、「アルキル」から導かれる 2価の基であって、例え ば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、へキサメチレン、 ヘプタメチレン、才クタメチレン、ノナンメチレン、デカンメチレン、ゥンデカメチレン、ド デカメチレン等が挙げられる。
[0125] 本明細書において「ァルケ-ル」とは、エチレン、プロピレンのような、分子内に二重 結合を一つ有する脂肪族炭化水素力 水素原子が一つ失われて生ずる 1価の基を V、、、一般に C H 一で表される(ここで、 nは 2以上の正の整数である)。「置換され n 2n— 1
たァルケ-ル」とは、以下に規定する置換基によってァルケ-ルの Hが置換されたァ ルケ-ルをいう。具体例としては、 C2— C3アルケ-ル、 C2— C4アルケ-ル、 C2—
C5アルケ-ル、 C2— C6アルケ-ル、 C2— C7アルケ-ル、 C2— C8アルケ-ル、 C 2— C9アルケ-ル、 C2— C10ァルケ-ル、 C2— C11ァルケ-ルまたは C2— C12 ァルケ-ル、 C2— C3置換されたァルケ-ル、 C2— C4置換されたァルケ-ル、 C2 一 C5置換されたァルケ-ル、 C2— C6置換されたァルケ-ル、 C2— C7置換された ァルケ-ル、 C2— C8置換されたァルケ-ル、 C2— C9置換されたァルケ-ル、 C2 一 C 10置換されたァルケ-ル、 C2— C11置換されたァルケ-ルまたは C2— C12置 換されたァルケ-ルであり得る。ここで、例えば C2— C10アルキルとは、炭素原子を 2— 10個含む直鎖または分枝状のァルケ-ルを意味し、ビュル (CH =CH—)、ァリ
2
ル(CH =CHCH一)、 CH CH = CH—などが例示される。また、例えば、 C2— C1
2 2 3
0置換されたァルケ-ルとは、 C2— C10ァルケ-ルであって、そのうち 1または複数 の水素原子が置換基により置換されて 、るものを 、う。
[0126] 本明細書にぉ 、て「シクロアルケ-ル」とは、環式構造を有するァルケ-ルを 、う。「 置換されたシクロアルケ-ル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルケ-ル の Hが置換されたシクロアルケ-ルをいう。具体例としては、 C3— C4シクロアルケ- ル、 C3— C5シクロアルケ-ル、 C3— C6シクロアルケ-ル、 C3— C7シクロアルケ- ル、 C3— C8シクロアルケ-ル、 C3— C9シクロアルケ-ル、 C3— C10シクロアルケ -ル、 C3— C 11シクロアルケ-ル、 C3— C 12シクロアルケ-ル、 C3— C4置換され たシクロアルケ-ル、 C3— C5置換されたシクロアルケ-ル、 C3— C6置換されたシク ロアルケ-ル、 C3— C7置換されたシクロアルケ-ル、 C3— C8置換されたシクロアル ケ -ル、 C3— C9置換されたシクロアルケ-ル、 C3— C10置換されたシクロアルケ- ル、 C3— C11置換されたシクロアルケ-ルまたは C3— C12置換されたシクロアルケ -ルであり得る。例えば、好ましいシクロアルケ-ルとしては、 1ーシクロペンテ-ル、 2 —シクロへキセニルなどが例示される。
[0127] 本明細書中、「ァルケ-レン」とは、「ァルケ-ル」から導かれる 2価の基であって、例 えば、ビ-レン、プロべ-レン、ブテ-レン等が挙げられる。
[0128] 本明細書において「アルキニル」とは、アセチレンのような、分子内に三重結合を一 つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる 1価の基を 、い、一 般に C H 一で表される(ここで、 nは 2以上の正の整数である)。「置換されたアルキ n 2n— 3
-ル」とは、以下に規定する置換基によってアルキ-ルの Hが置換されたアルキ-ル をいう。具体例としては、 C2— C3アルキ-ル、 C2— C4アルキ-ル、 C2— C5アルキ ニル、 C2— C6アルキ-ル、 C2— C7アルキ-ル、 C2— C8アルキ-ル、 C2— C9ァ ルキ -ル、 C2— C10アルキ-ル、 C2— C11アルキ-ル、 C2— C12アルキ-ル、 C2 一 C3置換されたアルキ-ル、 C2— C4置換されたアルキ-ル、 C2— C5置換された アルキ -ル、 C2— C6置換されたアルキ-ル、 C2— C7置換されたアルキ-ル、 C2 一 C8置換されたアルキ-ル、 C2— C9置換されたアルキ-ル、 C2— C10置換され たアルキ-ル、 C2— CI 1置換されたアルキ-ルまたは C2— C12置換されたアルキ -ルであり得る。ここで、例えば、 C2— C10アルキ-ルとは、例えば炭素原子を 2— 1 0個含む直鎖または分枝状のアルキ-ルを意味し、ェチニル(CH≡C—)、 1 プロピ -ル(CH C≡C— )などが例示される。また、例えば、 C2— C10置換されたアルキ-
3
ルとは、 C2— C10アルキ-ルであって、そのうち 1または複数の水素原子が置換基 により置換されて 、るものを 、う。
[0129] 本明細書において「アルコキシ」とは、アルコール類のヒドロキシ基の水素原子が失 われて生ずる 1価の基をいい、一般に C H O—で表される(ここで、 nは 1以上の整 n 2n+ l
数である)。「置換されたアルコキシ」とは、以下に規定する置換基によってアルコキシ の Hが置換されたアルコキシをいう。具体例としては、 C1一 C2アルコキシ、 C1一 C3 アルコキシ、 C1一 C4アルコキシ、 C1一 C5アルコキシ、 C1一 C6アルコキシ、 C1一 C 7アルコキシ、 C1一 C8アルコキシ、 C1一 C9アルコキシ、 C1一 C10アルコキシ、 C1 一 C11アルコキシ、 C1一 C12アルコキシ、 C1一 C2置換されたアルコキシ、 C1一 C3 置換されたアルコキシ、 C1一 C4置換されたアルコキシ、 C1一 C5置換されたアルコ キシ、 C1一 C6置換されたアルコキシ、 C1一 C7置換されたアルコキシ、 C1一 C8置 換されたアルコキシ、 C1一 C9置換されたアルコキシ、 C1一 C10置換されたアルコキ シ、 C1一 C11置換されたアルコキシまたは C1一 C12置換されたアルコキシであり得 る。ここで、例えば、 C1一 C10アルコキシとは、炭素原子を 1一 10個含む直鎖または 分枝状のアルコキシを意味し、メトキシ(CH O—)、エトキシ(C H O—)、 n プロポキ
3 2 5
シ(CH CH CH 0-)などが例示される。
3 2 2
[0130] 本明細書にぉ 、て「炭素環基」とは、炭素のみを含む環状構造を含む基であって、
前記の「シクロアルキル」、「置換されたシクロアルキル」、「シクロアルケ-ル」、「置換 されたシクロアルケ-ル」以外の基を 、う。炭素環基は芳香族系または非芳香族系で あり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換された炭素環基」とは、以下に 規定する置換基によって炭素環基の Hが置換された炭素環基を 、う。具体例として は、 C3— C4炭素環基、 C3— C5炭素環基、 C3— C6炭素環基、 C3— C7炭素環基 、 C3— C8炭素環基、 C3— C9炭素環基、 C3— C10炭素環基、 C3— C11炭素環基 、 C3— C12炭素環基、 C3— C4置換された炭素環基、 C3— C5置換された炭素環 基、 C3— C6置換された炭素環基、 C3— C7置換された炭素環基、 C3— C8置換さ れた炭素環基、 C3— C9置換された炭素環基、 C3— C10置換された炭素環基、 C3 一 C11置換された炭素環基または C3— C12置換された炭素環基であり得る。炭素 環基はまた、 C4一 C7炭素環基または C4一 C7置換された炭素環基であり得る。炭 素環基としては、フエニル基力 水素原子が 1個欠失したものが例示される。ここで、 水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよぐ 非芳香環上であってもよ 、。
本明細書において「ヘテロ環基」とは、炭素およびへテロ原子をも含む環状構造を 有する基をいう。ここで,ヘテロ原子は、 0、 Sおよび N力もなる群より選択され、同一 であっても異なっていてもよく、 1つ含まれていても 2以上含まれていてもよい。ヘテロ 環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得 る。「置換されたへテロ環基」とは、以下に規定する置換基によってへテロ環基の Hが 置換されたへテロ環基をいう。具体例としては、 C3— C4炭素環基、 C3— C5炭素環 基、 C3— C6炭素環基、 C3— C7炭素環基、 C3— C8炭素環基、 C3— C9炭素環基 、 C3— C10炭素環基、 C3— C11炭素環基、 C3— C12炭素環基、 C3— C4置換さ れた炭素環基、 C3— C5置換された炭素環基、 C3— C6置換された炭素環基、 C3 一 C7置換された炭素環基、 C3— C8置換された炭素環基、 C3— C9置換された炭 素環基、 C3— C10置換された炭素環基、 C3— C11置換された炭素環基または C3 一 C 12置換された炭素環基の 1つ以上の炭素原子をへテロ原子で置換したものであ り得る。ヘテロ環基はまた、 C4一 C7炭素環基または C4一 C7置換された炭素環基 の炭素原子を 1つ以上へテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基としては、
チェニル基、ピロリル基、フリル基、イミダゾリル基、ピリジル基などが例示される。水 素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよぐ非 芳香環上であってもよい。
[0132] 本明細書において「フ -ル基」とは、 C6芳香族系炭素環基であり、ベンゼンから
Hを 1個欠失した官能基である。「置換されたフエ-ル基」とは、フエニル基の Hが以 下で定義される置換基で置換されたものを ヽぅ。
[0133] 本明細書において、炭素環基またはへテロ環基は、下記に定義されるように 1価の 置換基で置換され得ることに加えて、 2価の置換基で置換され得る。そのような二価 の置換は、ォキソ置換 ( = O)またはチォキソ置換( = S)であり得る。
[0134] 本明細書において「ハロゲン」とは、周期表 7B族に属するフッ素 (F)、塩素(Cl)、 臭素(Br)、ヨウ素(I)などの元素の 1価の基をいう。
[0135] 本明細書にぉ 、て「ヒドロキシ」とは、 OHで表される基を 、う。「置換されたヒドロキ シ」とは、ヒドロキシの Hが下記で定義される置換基で置換されて 、るものを 、う。
[0136] 本明細書にぉ 、て「チオール」とは、ヒドロキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換し た基 (メルカプト基)であり、 SHで表される。「置換されたチオール」とは、メルカプト の Hが下記で定義される置換基で置換されて 、る基を 、う。
[0137] 本明細書において「シァノ」とは、—CNで表される基をいう。「ニトロ」とは、 NOで
2 表される基をいう。「ァミノ」とは、 NHで表される基をいう。「置換されたァミノ」とは、
2
ァミノの Hが以下で定義される置換基で置換されたものをいう。
[0138] 本明細書において「カルボキシ」とは、 COOHで表される基をいう。「置換された力 ルボキシ」とは、カルボキシの Hが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
[0139] 本明細書にぉ 、て「チォカルボキシ」とは、カルボキシ基の酸素原子を硫黄原子で 置換した基をいい、—C ( = S) OH、 -C ( = 0) SHまたは- CSSHで表され得る。「置 換されたチォカルボキシ」とは、チォカルボキシの Hが以下に定義される置換基で置 換されたものをいう。
[0140] 本明細書中、「ァシル」とは、カルボ-ルに前記「アルキル」が結合したアルキル力 ルポ-ル、アルキル部分が前記「シクロアルキル」が結合したシクロアルキルカルボ- ル、カルボ-ルに前記「ァリール」が結合したァリールカルボ-ルを意味する。例えば
、ァセチル、 n プロパノィル、 i プロパノィル、 n—ブチロイル、 tーブチロイル、シクロプ ロパノィル、シクロブタノィル、シクロペンタノィル、シクロへキサノィル、ベンゾィル、 α ナフトイル、 j8—ナフトイルを意味する。「置換されたァシル」とは、ァシルの水素を以 下に定義される置換基で置換したものをいう。
[0141] 本明細書にぉ 、て「アミド」とは、アンモニアの水素を酸基 (ァシル基)で置換した基 であり、好ましくは、 CONHで表される。「置換されたアミド」とは、アミドが置換され
2
たものをいう。
[0142] 本明細書において「カルボ-ル」とは、アルデヒドおよびケトンの特性基である (C
=〇)—を含むものを総称したものをいう。「置換されたカルボ-ル」は、下記において 選択される置換基で置換されているカルボ-ル基を意味する。
[0143] 本明細書にぉ 、て「チォカルボ-ル」とは、カルボニルにおける酸素原子を硫黄原 子に置換した基であり、特性基 (C = S)—を含む。チォカルボ-ルには、チオケトン およびチォアルデヒドが含まれる。「置換されたチォカルボ-ル」とは、下記において 選択される置換基で置換されたチォカルボニルを意味する。
[0144] 本明細書にぉ 、て「スルホ -ル」とは、特性基である— SO—を含むものを総称した
2
ものをいう。「置換されたスルホニル」とは、下記において選択される置換基で置換さ れたスルホニルを意味する。
[0145] 本明細書にぉ 、て「スルフィエル」とは、特性基である— SO—を含むものを総称した ものをいう。「置換されたスルフィエル」とは、下記において選択される置換基で置換 されて!/、るスルフィエルを意味する。
[0146] 本明細書において「ァリール」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が 1 個離脱して生ずる基をいい、本明細書において、「炭素環基」に包含される。例えば
、フエ-ル、 α ナフチル、 j8—ナフチル、アンス-ル、インデュル、フエナンスリル等 が挙げられる。「置換されたァリール」とは、下記において選択される置換基で置換さ れて 、るァリールを意味する。
[0147] 本明細書にぉ 、て「ヘテロァリール」とは、ヘテロ原子を含有する芳香族炭化水素 の環に結合する水素原子が 1個離脱して生ずる基をいい、本明細書において、「へ テロ環基」に包含される。例えば、フラニル、チォフエ-ル、ピリジル等が挙げられる。
「置換されたへテロァリール」とは、下記において選択される置換基で置換されている ヘテロァリールを意味する。
[0148] 本明細書中、「ァリレン」とは、例えば、フエ-レン、ナフチレン等が挙げられる。さら に詳しくは、 1, 2 フエ-レン、 1, 3 フエ-レン、 1, 4—フエ-レン等が挙げられる。
[0149] 本明細書中、「ヘテロァリレン」とは、例えば、チォフェンジィル、フランジィル、ピリ ジンジィル等が挙げられる。さらに詳しくは、 2, 5—チォフェンジィル、 2, 5 フランジ ィル等が挙げられる。
[0150] 本明細書にぉ 、て「ヒドロキシルァミノ」とは、ヒドロキシルァミン NH OHから水素原
2
子を除いてできる 1価の基をいう。「置換されたヒドロキシルァミノ」とは、下記において 選択される置換基で置換されているヒドロキシルァミノを意味する。
[0151] 本明細書において「N アルキルヒドロキシルァミノ」とは、ヒドロキシルァミンの窒素 原子に結合する水素原子をアルキル基で置換したヒドロキシルァミノを意味する。
[0152] 本明細書にぉ 、て「ヒドラジド」とは、 CONHNHで表される基を 、う。「置換され
2
たヒドラジド」とは、下記にお!ヽて選択される置換基で置換されて ヽるヒドラジドを意味 する。
[0153] 本明細書にぉ 、て「チォセミカルバジド」とは、 H NCSNHNHで表される基を 、う
2 2
。「置換されたチォセミカルバジド」とは、下記において選択される置換基で置換され て 、るチォセミカルバジドを意味する。
[0154] 本明細書にぉ 、て「エステル」とは、特性基である COO を含むものを総称したも のをいう。「置換されたエステル」とは、下記において選択される置換基で置換されて いるエステルを意味する。
[0155] 本明細書において「4級アンモ-ゥム塩」とは、 -N+ (R4) (R5) (R6)で表される基で あり、 R4、 R5および R6は低級アルキル基を意味する。ここでいう「低級アルキル」とは 上記で定義したとおりである。通常、「4級アンモ-ゥム塩」は、 -N+ (R4) (R5) (R6)と ハロゲンィ匕物イオンとが対をなして塩を形成する。
[0156] 本明細書にぉ 、て「水酸基」とは、 OHで表される基を 、う。「水酸基」は、「ヒドロキ シル基」と互換可能である。
[0157] 本発明にお 、て、「アルデヒド」とは、特性基である CHOを含むものを総称したも
のをいう。「置換されたアルデヒド」とは、下記において選択される置換基で置換され ているアルデヒドを意味し、「アルデヒド誘導体」と互換可能に使用され得る。
[0158] 本発明にお 、て、「カルボン酸」とは、特性基である COOHを含むものを総称した ものをいう。「置換されたカルボン酸」とは、下記において選択される置換基で置換さ れているカルボン酸を意味し、「アルデヒド誘導体」と互換可能に使用され得る。
[0159] 本明細書において、 Cl、 C2、、、 Cnは、炭素数を表す。従って、 C1は炭素数 1個 の置換基を表すために使用される。
[0160] 本明細書において、「光学異性体」とは、結晶または分子の構造が鏡像関係にあつ て、重ねあわせることのできない一対の化合物の一方またはその組をいう。立体異性 体の一形態であり、他の性質は同じであるにもかかわらず、旋光性のみが異なる。
[0161] 本明細書においては、特に言及がない限り、置換は、ある有機化合物または置換 基中の 1または 2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう。 水素原子を 1つ除去して 1価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原子 を 2つ除去して 2価の置換基に置換することも可能である。
[0162] 置換基としては、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシク 口アルキル、ァルケ-ル、置換されたァルケ-ル、シクロアルケ-ル、置換されたシク ロアルケ-ル、アルキ -ル、置換されたアルキ -ル、アルコキシ、置換されたアルコキ シ、炭素環基、置換された炭素環基、ヘテロ環基、置換されたへテロ環基、ハロゲン 、ヒドロキシ、置換されたヒドロキシ、チオール、置換されたチオール、シァ入ニトロ、 アミ入置換されたアミ入カルボキシ、力ルバモイル、置換されたカルボキシ、ァシル 、ァシルァミノ、置換されたァシル、チォカルボキシ、置換されたチォカルボキシ、アミ ド、置換されたアミド、置換されたカルボ-ル、置換されたチォカルボ-ル、置換され たスルホ-ルまたは置換されたスルフィエルが挙げられるがそれらに限定されない。 置換基が置換された場合は、アルキル、シクロアルキル、ァルケ-ル、シクロアルケ- ル、アルキ -ル、アルコキシ、アルケニルォキシ、アルキ -ルォキシ、アルコキシアル キル、ハロゲノアルキル、ハロゲン、ニトロ、シァ入ァシル、ァシルォキシ、ヒドロキシ、 メルカプト、カルボキシ、チォカルボキシ、アルコキシカルボ-ル、ァリールォキシカル ボニル、力ルバモイル、置換されていてもよいァミノで置換され得る。この「置換されて
いてもよいァミノ」は、アルキル、アルケニル、ァリールまたはァリールアルキルで 1ま たは 2ケ所置換されて 、てもよ 、ァミノを意味する。
[0163] 本明細書において「保護反応」とは、 Bocのような保護基を、保護が所望される官能 基に付加する反応をいう。保護基により官能基を保護することによって、より反応性の 高い官能基の反応を抑制し、より反応性の低い官能基のみを反応させることができる
[0164] 本明細書にぉ ヽて「脱保護反応」とは、 Bocのような保護基を脱離させる反応を ヽぅ 。脱保護反応としては、トリフルォロ酢酸 (TFA)による反応および PdZCを用いる還 元反応のような反応が挙げられる。
[0165] 本発明の各方法において、目的とする生成物は、反応液から夾雑物 (未反応減量 、副生成物、溶媒など)を、当該分野で慣用される方法 (例えば、抽出、蒸留、洗浄、 濃縮、沈澱、濾過、乾燥など)によって除去した後に、当該分野で慣用される後処理 方法 (例えば、吸着、溶離、蒸留、沈澱、析出、クロマトグラフィーなど)を組み合わせ て処理して単離し得る。
[0166] (本明細書にぉ 、て用いられる一般技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当 該分野の技術範囲内にある、マイクロフルイデイクス、微細加工、有機化学、生化学 、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣 用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細 書にぉ 、て他の場所お!/、て引用した文献にお!、ても十分に説明されて!、る。
[0167] 微糸田カロェについては、伊えば、 Campbell, S. A. (1996) . The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication, Oxford University Press ; Zaut, P. V. "996) . Micromicroarray Fabrication: a Practical Guide t o Semiconductor Processing, Semiconductor Services ;Madou, M. J. ( 1997) . Fundamentals of Microfabrication, CRC1 5 Press ;Rai—Choud hury, P. (1997) . Handbook of Microlithography, Micromachining , & Microfabrication: Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書に おいて関連する部分が参考として援用される。
[0168] 本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手 法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、 Maniatis, T. e t al. (,1989) . Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその 3rd Ed. (2001); Ausubel, F. M. , et al. eds, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc. , NY, 101 58 (2000) ;Innis, M. A. (1990) . PCR Protocols : A Guide to Methods and Applications, Academic Press ;Innis, M. A. et al. (1995) . PCR St rategies, Academic Press ; Sninsky, J. J. et al. "999) . PCR Application s : Protocols for Functional Genomics, Academic Press ; Gait, M. J. ( 1985) . Oligonucleotide Synthesis : A Practical Approach, IRL Press ; G ait, M. J. (1990) . Oligonucleotide Synthesis : A Practical Approach, IR L Press ; Eckstein, F. (1991) . Oligonucleotides and Analogues : A Prac tical Approac , IRL Press ; Adams, R. L. et al. (1992) . The Biochemis try of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al. (19 94) . Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim ; Blac kburn, G. M. et al. (1996) . Nucleic Acids in Chemistry and Biology , Oxford University Press; Hermanson, G. T. (1996) . Bioconjugate Te chniques, Academic Press ; Method in Enzymology 230、 242、 247、 Ac ademic Press, 1994 ;別冊実験医学「遺伝子導入 &発現解析実験法」羊土社、 1 997 ;畑中、西村ら、糖質の科学と工学、講談社サイェンティフイク、 1997 ;糖鎖分子 の設計と生理機能 日本化学会編、学会出版センター、 2001などに記載されており 、これらは本明細書において関連する部分 (全部であり得る)が参考として援用される
[0169] (スクリーニング)
本明細書において、「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ物質ま たは生物などを、特定の操作および Zまたは評価方法で多数の候補力 選抜するこ とをいう。本明細書では、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン 核とを含むフラーレン誘導体、そのフラーレン誘導体を含む糖鎖捕捉担体を含む本
発明の装置、システム、糖鎖アレイなどを用いることによって、スクリーニングを行うこ とができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用し てもよぐインシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを 用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られたィ匕 合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発 明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
[0170] (糖鎖の測定)
本発明の方法、装置およびシステムによって分離、精製、濃縮された糖鎖は、種々 の物理学的方法 (マススペクトル分析、 NMR、 X線解析、元素分析など)、化学的方 法 (化学的特異的反応の観察など)、生化学的方法 (酵素の基質特異性などを判定) または生物学的方法 (生物(例えば、細菌などの微生物)の反応)によって同定するこ とがでさる。
[0171] 物理学的方法として使用される、マススペクトル分析、 NMR分析の技術は当該分 野において周知であり、例えば、丹羽、最新のマススぺタトロメトリー、化学同人、 199 5; Modern NMR Spectroscopy: A guide for Chemists, J. K. M. Sande rs and B. K. Hunter (2nd Ed. , Oxford University Press, New York , 1993); Spectrometric Identification of Organic Compounds, R. M. S ilverstein, G. Clayton Bassler, and Terrence C. Morill (5th Ed. , Joh n Wiley & Sons, New York, 1991)などを参照することができる。
[0172] (糖鎖の定量または定性分析に用いられるプローブ)
別の実施形態では、本発明の方法などによって分離された糖鎖は、生化学的な方 法を用いて分析することができる。
[0173] そのような生化学的方法において、本明細書における糖鎖解析のために使用され る試験プローブは、糖鎖に特異的に結合し、検出可能に標識されているようなもので あれば、どのようなものであってもよい。そのようなプローブとしては、例えば、本発明 の糖鎖と特異的に相互作用する物質、レクチン、糖鎖認識抗体などであって、標識さ れているものが挙げられるがそれらに限定されない。
[0174] 糖鎖の定量は、絶対的または相対的であり得る。絶対的な定量は、 1つ以上の既
知濃度の標的糖鎖を標準として、例えば、標準曲線の作成によって行うことができる
。あるいは、相対定量は、転写物の 2つ以上の糖鎖種のシグナル強度の比較によつ て達成され得る。このような解析は、コンピュータシステムを用いて行うことができる。 そのような解析を行うソフトウェアとしては、例えば、 ArrayGauge Ver. 1. 2, Imag eGauge Ver. 3. 45 (ともに富士フィルム株式会社)が挙げられるがそれらに限定さ れない。
[0175] 「標識」および「マーク」は本明細書において同じ意味で使用され、目的となる分子 または物質を他力ゝら識別するための存在 (たとえば、物質、エネルギー、電磁波など) をいう。そのような標識方法としては、 RI (ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ピオチン法 、化学発光法等を挙げることができる。
[0176] (医薬'ィ匕粧品など、およびそれを用いる治療、予防など)
別の局面において、本発明は、医薬 (例えば、ワクチン等の医薬品、健康食品、残 さタンパク質又は脂質は抗原性を低減した医薬品)およびィ匕粧品に関する。この医 薬およびィ匕粧品は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医 薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意 の物質が挙げられる。
[0177] そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤 、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増 量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバント挙 げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、単離された多能 性幹細胞、またはその改変体もしくは誘導体を、 1つ以上の生理的に受容可能なキ ャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切 なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、 非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
[0178] 本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエン トに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不 活性であり、そして以下が挙げられる:リン酸塩、クェン酸塩、または他の有機酸;ァス コルビン酸、 α—トコフエロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清ァ
ルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビュルピロリ ドン);アミノ酸 (例えば、グリシン、グルタミン、ァスパラギン、アルギニンまたはリジン) ;モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデ キストリンを含む);キレート剤(例えば、 EDTA);糖アルコール (例えば、マン-トー ルまたはソルビトール);塩形成対イオン (例えば、ナトリウム);ならびに Zあるいは非 イオン性表面活性化剤(例えば、 Tween、プル口ニック (pluronic)またはポリエチレ ングリコール(PEG) )。
[0179] 例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと 混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤 (例 えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希 釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、 pH7. 0-8 . 5の Tris緩衝剤または pH4. 0-5. 5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソル ビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
[0180] 本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医 薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用 される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る 。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、 pH、等張性、安定性などを考慮 することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は 、経口投与、非経口投与 (例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与 、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る 。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製 剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
[0181] 本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安 定化剤 (日本薬局方第 14版またはその最新版、 Remington' s Pharmaceutical sciences, 18th Edition, A. R. Gennaro, ed. , MacK Publishing Compan y, 1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合すること〖こ よって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
[0182] 本発明の処置方法において使用される糖鎖組成物の量は、使用目的、対象疾患(
種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類など を考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体 (ま たは患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患 (種類、重篤度など)、患者 の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決 定することができる。頻度としては、例えば、毎日 数ケ月に 1回(例えば、 1週間に 1 回ー1ヶ月に 1回)の投与が挙げられる。 1週間ー1ヶ月に 1回の投与を、経過を見なが ら施すことが好ましい。
[0183] 本発明が化粧品として使用されるときもまた、当局の規定する規制を遵守しながら 化粧品を調製することができる。
[0184] (農薬)
本発明の組成物は、農薬の成分としても用いることができる。農薬組成物として処 方される場合、必要に応じて、農学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤 などを含み得る。
[0185] 本発明の組成物が、農薬として使用される場合は、除草剤 (ビラゾレートなど)、殺 虫'殺ダニ剤 (ダイアジノンなど)、殺菌剤 (プロべナゾールなど)、植物成長調整剤 ( 例、ノクロブトラゾールなど)、殺線虫剤(例、べノミルなど)、共力剤(例、ピぺ口-ル ブトキサイドなど)、誘引剤 (例、オイゲノールなど)、忌避剤 (例、クレオソートなど)、 色素 (例、食用青色 1号など)、肥料 (例、尿素など)などもまた必要に応じて混合され 得る。
[0186] (保健'食品)
本発明はまた、保健'食品分野においても利用することができる。このような場合、 上述の経口医薬として用いられる場合の留意点を必要に応じて考慮すべきである。 特に、特定保健食品のような機能性食品'健康食品などとして使用される場合には、 医薬に準じた扱いを行うことが好ましい。好ましくは、本発明の糖鎖組成物は、低ァレ ルゲン食品としても用いることができる。
[0187] 本発明は上記のように、医療以外にも、食品検査、検疫、医薬品検査、法医学、農 業、畜産、漁業、林業などで、生体分子の検査が必要なものに全て適応可能である 。本発明においては特に、食料の安全目的のための(たとえば、 BSE検査)使用も企
図される。
[0188] (検査)
本発明の方法、装置、システムは、種々の糖鎖の検出に使用することができ、検出 する糖鎖の種類は特に限定されないことから種々の検査、診断、鑑定、鑑別にも用 いることができる。そのような検出される糖鎖としては、例えば、ウィルス病原体 (たと えば、肝炎ウィルス(A、 B、 C、 D、 E、 F、 G型)、 HIV、インフルエンザウイルス、ヘル ぺス群ウィルス、アデノウイルス、ヒトポリオ一マウィルス、ヒトパピローマウィルス、ヒト ノ レボウイルス、ムンプスゥイノレス、ヒトロタウィルス、ェンテロウィルス、 日本脳炎ウイ ルス、デングウィルス、風疹ウィルス、 HTLVを含むがそれらに限定されない)の遺伝 子;細菌病原体 (たとえば、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、病原性大腸菌、腸炎 ビブリオ菌、へリコパクターピロリ菌、カンピロバクタ一、コレラ菌、赤痢菌、サルモネラ 菌、エルシニア、淋菌、リステリア菌、レプトスビラ、レジオネラ菌、スピロヘータ、肺炎 マイコプラズマ、リケッチア、クラミジァを含むがそれらに限定されない)の遺伝子、マ ラリア、赤痢アメーバ、病原真菌、寄生虫、真菌などに特異的な糖鎖の検出に用いる ことができる。
[0189] あるいは、本発明はまた、生化学検査データを検出するために用いられ得る。生化 学検査の項目としては、コリンエステラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ロイシンアミノ ぺプチターゼ、 γ—グルタミルトランスぺプチターゼ、クレアチュンフォスキナーゼ、乳 酸デヒドロゲナーゼ、アミラーゼなどの糖鎖が関連すると考えられるデータ項目を挙 げることができるがそれらに限定されない。
[0190] (高分子材料)
本発明はまた、生体分子とは関係ない分野においても応用することができる。この ような場合、本発明が達成した、任意の糖鎖に対して実質的に差別なく相互作用し、 分離、精製、濃縮および分析することができるという利点を生力 て、材料調製を行う ことができる。特に、本発明の糖鎖捕捉フラーレン誘導体を用いて捕捉された糖鎖ま たは糖鎖含有物質が、生分解性ポリマーのような材料として用いられるとき、試料とし て提供された状態の糖鎖比を保持することが所望される場合に、本発明は有利であ り得る。あるいは、バルタで糖鎖または糖鎖含有物質を合成したときに、その合成した
ときの組成比を保持しながらそのような糖鎖および糖鎖含有物質を精製することが好 ましい場合にも本発明の物質、方法、装置およびシステムは有利であり得る。
[0191] このように、本発明の方法、装置およびシステムは、例えば、診断、法医学、薬物探 索(医薬品のスクリーニング)および開発、分子生物学的分析 (例えば、アレイベース の糖鎖分析)、糖鎖特性および機能の分析、薬理学、グリコミタス、環境調査ならびに さらなる生物学的およびィ匕学的な分析において使用され得る。
[0192] (好ましい実施形態の説明)
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
[0193] 1つの局面において、本発明は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と、フラーレ ン核とを含むフラーレン誘導体を提供する。好ましくは、糖鎖と特異的に相互作用し 得る部位と糖鎖との相互作用のレベルは、フラーレン核と糖鎖との相互作用のレベル よりも高い。すなわち、本発明におけるフラーレン核は、糖鎖と特異的に相互作用し 得る部位以外の官能基が付加して 、てもよ 、ため、この官能基が付加したフラーレン 核と糖鎖との間の相互作用のレベルは、糖鎖と、糖鎖と特異的に相互作用し得る部 位との相互作用のレベルを超えないことが好ましい。このフラーレン誘導体は、さらに 好ましくは、実質的にすべての、糖鎖を含まない物質よりも、糖鎖に対する特異性が 高いという性質を有する。先行技術において、糖鎖または糖鎖含有物質に優先的に 結合するという性質を有するものが多数知られているが、そのような物質は、糖鎖お よび糖鎖含有物質以外の物質に対しても特異性を有することがあった。本発明は、 そのような特異性をさらに高めるという効果ももたらす。
[0194] ここで、本発明に 、う相互作用は、好ましくは、共有結合を含む。共有結合すること によって、精製、分離、濃縮および分析といった本発明の特徴をより有利にかつ簡便 に行うことができるからである。より好ましくは、このような共有結合は、ォキシム結合、 ヒドラゾン結合、チォセミヒドラゾン結合およびチアゾリジン結合力 なる群より選択さ れる結合を含む。このような結合は、糖鎖への特異性が高いことから、特異性を担保 するために有利に作用するからである。
[0195] 特に、支持体 (特に、固体支持体)に累積または結合可能である、糖鎖と特異的に 相互作用し得る本発明のフラーレン誘導体は、先行技術にお 、て知られて 、な!/、ど
ころか、そのような物質を作製しょうという試みもなぐ本発明がそのような物質を提供 するという点で、顕著な効果を示すものといえる。ここで、本発明の糖鎖と特異的に相 互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体は、好ましくは、支持体と 前記フラーレン誘導体とは、少なくとも一部が相転移し得るような性質を有する。好ま しくは、そのような支持体とフラーレン誘導体とは全部が相転移するような性質を有し ていてもよい。支持体として使用するためには、流体中での反応を行う場合に、相転 移していないと、平衡状態に戻り、結合が解除してしまい、所望の反応'アツセィを行 うことができないか、非効率的になってしまうからである。このような支持体は、通常、 常温で固体であるが、濃縮、精製、分離または分析に使用することができる限り、液 体または気体のような流体であってもよ 、。
[0196] さらに、本発明の糖鎖捕捉担体において使用される支持体は、好ましくは、有機溶 媒に不溶であり得る。
[0197] 好ましい実施形態において、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラ 一レン核とを含むフラーレン誘導体は、任意の糖鎖と所定のレベル以上で特異的に 相互作用し得る。ここで、所定のレベルとは、糖鎖に対する特異的相互作用を行うか どうかを判定するのに十分なレベルを 、う。任意の糖鎖と所定のレベル以上で特異 的に相互作用し得るという性質によって、特定の糖鎖に対して特異的に相互作用す るという働きを持つ性質に比べて、以下のような効果を挙げることができる:例えば、 任意の糖鎖に対して差別なく相互作用することにより、天然の状態で存在する含有 比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができ、あるいは、 その含有比を分析することができる。天然の状態を反映することができることにより、 糖鎖により判定することができる被検体における状態を、そのような被検体力も取り出 した試料力 簡便に判定することができる。
[0198] 具体的には、上記のような物質と糖鎖との間の相互作用のレベルは、 MALDI— T OFにおいてレーザー照射したときに必要な解離エネルギーによって判定することが できる。そのような場合、必要な解離エネルギーは、少なくとも約 5eV、好ましくは少 なくとも約 10eV、最も好ましくは少なくとも約 15eVである。
[0199] あるいは、相互作用のレベルは、別の物理学的な方法によって判定することもでき
る。例えば、物理学的な方法としては、例えば表面プラズモン共鳴法によって糖鎖の 結合量を見積もる手法、および糖鎖 Z糖鎖捕捉担体間に生じたォキシム結合由来 の NMRプロトンシグナル強度によるレベル判定などが挙げられる。
[0200] あるいは、相互作用のレベルは、化学的な方法によって判定することもできる。例え ば、化学的な手法としては、薄層クロマトグラフィー (TLC)の分離パターンにより相互 作用のレベルを見積もることが出来る。
[0201] あるいは、相互作用のレベルは、生化学的な方法によって判定することもできる。例 えば、生化学的な方法としては、糖鎖特異的な抗体を用いる ELISA法によって相互 作用のレベルを判定することができる。
[0202] 好ましくは、本発明の物質は、糖鎖以外の物質との非特異的相互作用を解離させ る条件下に曝されるとき、少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存する。 このように少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存することによって、本 発明の物質は、糖鎖および糖鎖含有物質の精製、濃縮、分離、および分析に利用 することができる。特に、糖鎖以外の物質との非特異的相互作用を解離させる条件 下に曝されても、少なくとも一定量の糖鎖との特異的相互作用が残存することができ るという性質により、糖鎖以外の物質を低減または除去することが可能になる。
[0203] 好ましい実施形態では、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレ ン核とを含むフラーレン誘導体は、任意の糖鎖と、最大と最小との間で、一定のレべ ルの範囲内の特異性を有することが好ましい。そのような範囲としては、例えば、最大 と最小との間のレベルの相違力 通常約 10倍以内、好ましくは約 5倍以内、より好ま しくは約 3倍以内、さらに好ましくは約 2倍以内、あるいは約 1. 5倍以内の範囲内のレ ベルで特異的に相互作用し得る。上記範囲は、相互作用のレベルの測定方法によ つて変動することがある力 ある実施形態では、 MALDI— TOFにおいてレーザー照 射したときに必要な解離エネルギーによって判定され得る。
[0204] 好ましい実施形態において、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラ 一レン核とを含むフラーレン誘導体が対象とする糖鎖は、酸化された糖鎖および酸 ィ匕されていない糖鎖を含み得る。このような性質を有することにより、本発明の物質は 、酸化された糖鎖のみに特異的に相互作用することができるば力りでなぐ満遍なく
どのような糖鎖に対しても相互作用することができ、糖鎖および糖鎖含有物質の精製 、濃縮、分離、および分析に有利に利用することができる。このことにより、天然の状 態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離すること ができ、あるいは、その含有比を分析することができる。天然の状態を反映することが できること〖こより、特に、酸化された糖鎖と酸化されていない同族の糖鎖との比率があ る特定の状態を反映する場合、そのような被検体における状態を、そのような被検体 力も取り出した試料力も簡便に判定することができる。このようなものは、酸化した糖 鎖にし力 4目互作用しない物質では達成できな力つた効果といえる。
[0205] 本発明の糖鎖に特異的に反応するフラーレン誘導体は、通常、アルデヒド基と流体 中で反応し得る官能基を含み得る。ここで、この流体はケト基 (カルボニル基)を含む 物質を実質的に含まないことが好ましい。特に、流体は、水溶液、有機溶媒およびこ れらの混合物からなる群より選択されるものが有利であり得る。より好ましくは、流体は 水溶液である。糖鎖は、一般に、アルデヒド型におけるアルデヒド基またはケトース型 におけるケトン基のようなカルボ二ル基を有し、その中で、環状のへミアセタール型と 非環状のアルデヒド型との平衡関係が成立していることから、そのような状態に特異 性を有させることによって、糖鎖に対して特異的に相互作用することができるようにな る。従って、アルデヒド基と反応することができる限り、流体はどのようなもの(有機溶 媒、気体など)でも使用することができる。
[0206] 好ま 、実施形態では、本発明における糖鎖との特異的相互作用は、ヒドロキシル アミノ基、 N—アルキルヒドロキシルァミノ基、ヒドラジド基、チォセミカルバジド基および システィン残基ならびにそれらの誘導体力 なる群より選択される結合を含むがそれ らに限定されない。ヒドロキシルァミノ基と糖との連結様式 (ォキシム結合)は特に酸性 に弱ぐ糖鎖捕捉担体から糖鎖を切り出す工程が容易に行えると ヽぅ利点があるから である。当業者であれば、アルデヒド基と反応して特異的かつ安定な結合をつくること ができる性質を有する官能基を理解することができ、そのような官能基を有する物質 を理解することができる。また、当業者は、そのような官能基を有する物質を、当該分 野にお 、て周知の技術を単独でまたは組み合わせて利用して、製造することができ る。
[0207] 本発明の別の好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下の 式:
[0208] [化 22]
X一 Gー丫 または C:
' Y
[式中、 Xは糖鎖捕捉部位であり、 γは親水性部位である]
を有するカルベンがフラーレン核の二重結合に付カ卩した付加体である。フラーレン核 へのカルベンの付加数は特に限定されな 、が、本発明ではモノ付カ卩が好まし 、。
[0209] 本発明にお 、て、糖鎖捕捉部位 (X)と親水性部位 (Y)との組み合わせは、互いに 実質的に反応しないものが好ましい。ここでいう「糖鎖捕捉部位」は、上記の「糖鎖と 特異的に相互作用し得る部位」と互換可能に使用され得る。
[0210] 好ま 、実施形態にぉ ヽて、糖鎖捕捉部位 (X)は、ヒドロキシルァミノ基、 N-アル キルヒドロキシルァミノ基、ヒドラジド基、チォセミカルバジド基およびシスティン残基な らびにそれらの誘導体からなる群より選択される官能基を含み、親水性部位 (Y)は、 C ( = 0)R [式中、 R2は、 O— R3、 一 O— (CH ) N+ (R4) (R5) (R6)、または NH
2 2 n
— CH— (CH— CH— O)— (CH )—OHであり; R3は、低級アルキルであり; R4
2 2 t 2 2 、 R5
2 、 および R6は、それぞれ独立して、低級アルキルであり; nは 1一 10の整数であり、およ び tは 1一 3の整数である]で表される官能基である。
[0211] さらに好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下の式: [0212] [化 23] N- R, 0
[式中、 R1は、 -W'-O-NH、 -W'-O-NH (CH )、— W1— O— W2— O— NH
2 3 2、— W1
-0-W2-0-NH (CH )、 一 (CH— CH— O)— W1— O— W2— O— NH 、 一 (CH— C
3 2 2 n 2 2
H— O)— W1— O— W2— O— NH (CH )、— W1— C ( = O)— NH— NH、— W1— C ( = S)
2 n 3 2
— NH— NH、 -W'-NH-C ( = O)—CH (NH )— W4— SH、または— W1— NH— C ( =
S)— CH (NH )—W— SHであり; Wおよび Wは、それぞれ独立して CI
2 一 C12アル キレンまたは C2— C12ァルケ-レンであり; W4は、 CI— C2アルキレンであり; R2は、 一 O— R3、 一 O—(CH )— N+ (R4) (R5) (R6)、 一 NH— CH— (CH— CH— O)— (CH
2 n 2 2 2 t 2
) 一 OH、または以下の式:
2
[化 24]
で表される基であり; R
3は、低級アルキルであり; R
4、 R
5、および R
6は、それぞれ独立 して、低級アルキルであり; nは 0— 10の整数であり、および tは 1一 3の整数である] で表される置換基群カゝら選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付加し たフラーレン誘導体である。
[0214] なおさらに好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下:
[0215] [化 25]
[式中、 ま、— (CH ) -0-NH、—(CH ) -0-NH (CH )、— (CH ) — O— (CH
2 n 2 2 n 3 2 m
) -O-NH 、 一 (CH ) — O— (CH ) -0-NH (CH )、 一 (CH— CH— O)— (CH
2 p 2 2 m 2 p 3 2 2 n 2
) -O-NH、一(CH— CH— O)— (CH )— O— NH (CH )、一(CH )— C ( = 0)— a 2 2 2 n 2 a 3 2 n
NH— NH、 - (CH )— NH— C ( = S)— NH— NH、または一(CH )— NH—C ( = 0)
2 2 n 2 2 n
— CH (NH )— (CH )— SHであり; R2は、— O— R3 O— (CH )— N+ (R4) (R5) (R6)
2 2 r 、—
2 n
、 一 NH— CH—(CH— CH— O)—(CH )— OH、または以下の式:
[0216] [化 26]
で表される基であり; R
3は、低級アルキルであり; R
4、 R および R
6は、それぞれ独立 して、低級アルキルであり; nは 0— 10の整数であり、 mは 1一 5の整数であり、 pは 1一 5の整数であり、 aは 1または 2であり、 rは 1または 2であり、および tは 1一 3の整数であ る]で表される置換基群力も選択される置換基が前記フラーレン核の二重結合に付 カロしたフラーレン誘導体である。
[0217] この実施形態における最も好ましい代表的なフラーレン誘導体は、以下の構造式:
[0218] [化 27]
で表され、 nは 1一 6の整数であり、アルキルおよび置換されたアルキルは下記に定 義された通りである。
[0219] 別の好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体のフラーレン核は、純 炭素フラーレンであるか、または以下の式:
[0220] [化 28]
[式中、 Arはァリール、置換されたァリール、ヘテロァリールまたは置換されたへテロ ァリールであり; Qは CHまたは N原子であり; sは 0— 3である]で表される置換基が純 炭素フラーレンの二重結合に付加した付加体である。ここで、ヘテロァリールは、好ま しくはフラ -ル、チォフエ-ルまたはピリジルである。さらに、 Qが N原子である場合、
この N原子が低級アルキルによって 4級化されて!/、ることが好まし!/、。
[0221] さらに別の好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下の式:
[0222] [化 29]
で表される置換基群から選択される置換基 (式中、 Qは、 CHまたは Nであり; sは 0— 3であり; R
7は、 -W'-O-NH、 -W'-O-NH (CH )、— W
1— O— W
2— O— NH、— W
2 3 2 し O— W2— O— NH (CH ) , -(CH— CH O) W1— O— W2— O— NH、—(CH— C
3 2 2 n 2 2
H O) W1— O— W2— O— NH (CH )、— W1— C ( = O) NH— NH、— W1— C ( = S)
2 n 3 2
— NH— NH、 -W'-NH-C ( = O) CH (NH )— W4— SH、— W1— NH— C ( = S)— C
2 2
H (NH )— W4— SH、― Z1— Z2— Z3— Z4— Z5— O— NH、― Z1— Z2— Z3— Z4— Z5— O— NH (
2 2
CH )、— Z1— Z2— Z3— Z4— CH (NH )— O— Z6— SH、— Z1— Z2— Z3— Z4— CH (NH )— Z
3 2 2
6— SHゝ— Z1— O— Z3— CH (NH )— Z6— SH、— Z1— O— Z3— O— NH、— Z1— O— Z3— O—
2 2
NH (CH )、— Z1— O— Z3— Z4— Z5— O— NH、— Z1— O— Z3— Z4— Z5— O— NH (CH )、 -
3 2 3
Z1— O— Z3— Z4— CH (NH )— O— Z6— SH、— Z1— O— Z3— Z4— CH (NH )— Z6— SH、 -
2 2
Z1— Z3— Z4— Z5— O— NH、— Z1— Z3— Z4— Z5— O— NH (CH )
2 3、— Z1— Z3— Z4— CH (NH
)—0—Z6—SH、または Z1— Z3— Z4—CH (NH )—26—311でぁり;1^1ぉょび1^2は、そ
2 2
れぞれ独立して CI一 C12アルキレンまたは C2— C12ァルケ-レンであり; W4は、 C 1一 C2アルキレンであり; Z1は、置換されて!、てもよ ヽァリレンまたは置換されて!、て もよいへテロァリレンであり; Z2は、含窒素複素環であり; Z3および Z5は、それぞれ独 立して C1 C12アルキレンであり; Z4は、― O— C ( = 0)、一 O C ( = S)、 一 NH— C (= O)、 一 NH— C ( = S)、― O—、または— S—であり; Z6は、 C1 C2アルキレンであり; nは 1一 10の整数である)が前記フラーレン核の二重結合に付加したフラーレン誘導体 である。
[0223] Z1は、好ましくはフエ-レン、フランジィル、チォフェンジィルまたはピリジンジィルで
ある。 z2は、好ましくはピペリジン、ピロリジンまたはピぺラジンである。 z3および z5が 両方とも存在する場合は、両者の炭素数の総和が C12までであることが好ましい。
[0224] なおさらに別の好ましい実施形態において、本発明のフラーレン誘導体は、以下の 式:
[0225] [化 30]
で表される置換基群から選択される置換基 (式中、 Qは、 CHまたは Nであり; sは 0— 3であり; R
7は、— (CH ) -0-NH 、—(CH ) — O— NH (CH )、— (CH— CH — O)
2 n 2 2 n 3 2 2 :
— (CH ) -O-NH 、 一(CH ) -C ( = 0)-NH-NH 、 一 (CH )— NH— C ( = 0)—
CH (NH )-(CH )—SH、ならびに以下:
2 2 r
[0226] [化 31]
SH
— 0~(CH2)厂 0— NH2 ^ 0— (CH2) u— 0— C(=0)— (CH2)广 0— NH2,
0— CCH2) r-CH (NH2)— (CH2) x— SH 一 0— (CH2)— 0— C(=0)— CH (NH2)— (CH2) X— SH
NHZ , および H2) X— SH
で表される基からなる群より選択され;式中、 Wおよび W'は、それぞれ独立して CH または N原子であり; Yは、 O原子、 S原子または NHであり; bは 0または 1であり、 uは 1一 5の整数であり、 Vは 1一 5の整数であり、および Xは 1一 3の整数である)が前記フ ラーレン核の二重結合に付加したフラーレン誘導体である。ここで、含窒素複素環の N原子が低級アルキルによって 4級化されて 、ることが好ま 、。
[0227] この実施形態における最も好ましい代表的なフラーレン誘導体は、以下の構造式:
Rつ:アルキルまたは置換されたアルキル で表される化合物 [式中、 nは 1一 6の整数であり、アルキルおよび置換されたアルキ ルは下記に定義された通りである]である力 あるいは、以下の構造式:
[化 33]
または
R3:ァリール、置換されたァリール、ヘテロァリールまたは
置換されたへテロァリール
で表される化合物 [式中、 nは 1一 6の整数であり、アルキル、置換されたアルキル、ァ リールおよび置換されたァリールは下記に定義された通りである]である。
本発明のフラーレン誘導体は、好ましくは、少なくとも 750の分子量、さらに好ましく
は 800以上、最も好ましくは少なくとも 1000の分子量を有するように分子量制御され ている。
[0231] 別の局面において、本発明は、糖鎖捕捉部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘 導体を合成する方法を提供する。この方法は、 A)以下の式:
[0232] [化 34]
[式中、 Xは糖鎖捕捉部位であり、 Yは親水性部位であり、 Hは水素原子である] で表される化合物力 水素原子を脱離して、以下の式:
[0233] [化 35]
X—G—Y または C:
' Y
で表されるカルベンを提供する工程;および B)該カルベンと、フラーレン核とを、該カ ルベンが該フラーレン核の二重結合に付加し得る条件下で、接触させる工程、を包 含する。
[0234] これまでに、フラーレンの誘導体化の方法の 1つとして、 C フラーレンとマロン酸ェ
60
ステルとのカップリング反応が報告されている(例えば、 C. Bingel, Chem. Ber. , 1 26, 1957-1959, (1993)、 J.— F. Nierengarten and J.— F. Nicoud, Tera hedron Lett. , 38, 7737-7740, (1997) )。このカップリング反応原理は、マロ ン酸エステルを活性化してカルベン種を形成させ、これを C フラーレンに付加させる
60
というものである。この原理は、本発明のフラーレン誘導体を合成する際にも適用す ることができる。同様に、カルベン種を形成させてこれを C フラーレンと反応させ、 C
60 6 をジアルキルィ匕する方法も報告されている(例えば、特開平 9— 25246号公報)。具
0
体的には、スルホン酸ヒドラゾンのアルカリ金属塩と C フラーレンとをクロ口ベンゼン
60
等の溶媒中で加熱することにより、スルホン酸ヒドラゾンのアルカリ塩の C = N結合が 開裂してジアルキルカルベン(: C (R) )を生成し、これが C フラーレンの 5員環の炭
素間結合に挿入反応して〔5, 6〕モノ付加体を得ている。例えば、図 1および 2の本発 明のフラーレン誘導体(7)は、以上の反応原理を用いて合成することができる。 別の局面において、本発明のフラーレン誘導体は、アルデヒド誘導体とカルボン酸 誘導体とを C と反応させて C フラーレンの二重結合上で環化反応を起こさせるとい
60 60
う反応原理を用いて合成することができる。本発明によれば、糖鎖と特異的に相互作 用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を合成する方法であって、以 下: R8N (R9) CH COOHと、 R10CHOと、フラーレン核とを、接触させる工程 [式中、
2
R8は低級アルキルであり、 R9は水素原子または低級アルキルであり、 R1Gは C1一 C1 0アルキル、置換された C1一 C10アルキル、ァリール、置換されたァリール、ヘテロァ リールまたは置換されたへテロァリールである]、を包含する、方法が提供される。好 ましくは、 R8は CHであり、 R9は水素原子であり、 R1C)は、以下:
[化 36]
SH
0— CCH2) r-CH (NH2)— (CH2) x— SH — CH(NH2)— (CH2) X— SH
(CH2)厂 0— NH2 NHZ , および H2) X— SH
力もなる群より選択される。式中、 Wおよび W'は、それぞれ独立して CHまたは N原 子であり; Yは、 O原子、 S原子または NHであり; bは 0または 1であり、 uは 1一 5の整 数であり、 Vは 1一 5の整数であり、および Xは 1一 3の整数である。具体的な環化反応 については、図 3に示されている。図 4の本発明のフラーレン誘導体(l la、 l ib, 12 a、 12b、 13a、 13b、 14aおよび 14b)は、以上の反応原理を用いて合成することがで きる。
さらに別の局面において、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン核に上記カル
ベンの付加と上記環化反応を組み合わせて反応させてことでも合成することができる 。本発明によれば、上記カルベンの付加と上記環化反応との順番は、特に限定され な 、。このような反応の組み合わせによって得られる具体的なフラーレン誘導体は、 図 5に示されるが、これらに限定されない。
[0238] 別の局面において、本発明は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核 とを含むフラーレン誘導体と、支持体とを含む、糖鎖捕捉担体を提供する。このような 支持体は、例えば、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する 力 あるいは分析するために用いることができる。本発明の糖鎖捕捉担体は、任意の 糖鎖に対して差別なく相互作用することにより、天然の状態で存在する含有比のまま 、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができ、あるいは、その含有 比を分析することができる。取り出した試料中の糖鎖および Zまたは糖鎖含有物質の 状態は、実質的に天然の状態を反映していることから、糖鎖により判定することができ る被検体における状態を、そのような被検体力 取り出した試料力も簡便に判定する ことができる。
[0239] 別の実施形態において、本発明の糖鎖捕捉担体において、フラーレン誘導体は平 面展開されている。平面展開は、当該分野において周知の方法を応用して実行する ことができる。好ましくは、この平面展開したフラーレン誘導体は、キャスト膜または単 分子膜の形態をとることが有利であり得る。このような膜は、マススペクトルのようなプ レート上での反応を必要とする技術、糖鎖レプリカを製造する方法、糖鎖チップを製 造する際などに有用である。これら列挙した技術においては、膜状の支持体上で糖 鎖を捕捉することが有利あるいは必要とされるからである。キャスト膜および単分子膜 を製造する技術は、当該分野において周知であり、例えば、 LB単分子膜法、型にキ ャストし自然蒸発する方法、水面上に脂質材料を浮かべて支持体を成型する方法な どが挙げられるがそれらに限定されない。具体的には、例えば、そのような方法として は、例えば、 MALDI-TOF MSにおいて用いる場合、糖鎖捕捉担体の溶液 (好ま しくは、酢酸緩衝液などの緩衝液)に、必要に応じて糖鎖または糖鎖含有物質あるい はそれを含む試料をカ卩え、その後、メタノールのようなアルコールを加え、 MALDI— TOF MSのプレートにキャストし、自然蒸発することによって相互作用させることが
できる。
[0240] 別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮ま たは精製する方法を提供する。この方法は、 a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作 用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕 捉担体と、該試料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得 る条件下で、接触させる工程; b)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖 鎖含有物質との複合体を取り出す工程;および c)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該 糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下 に曝す工程、を包含する。この方法では、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る 部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体が 使用されることから、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用することにより、天然の状 態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離すること ができるという従来達成不可能であった効果が奏される。あるいは、本発明の上記方 法により、その含有比を分析することができる試料を提供することができる。このように 、天然の状態を反映することができることにより、例えば、糖鎖により判定することがで きる被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料力 簡便に判定す ることができる。あるいは、天然に存在する状態を反映した糖鎖が濃縮されているとい うことにより、医薬、農業、保健、食品、化粧品など、生体分子が関与する分野におい て有利に使用することができる糖鎖組成物を提供することが可能となった。このような 糖鎖組成物は、糖鎖組成がオリジナルの糖鎖結合状態と実質的に同一の組成比を 有している点で、従来の分解生成物と区別することが可能であり、オリジナルの糖鎖 を反映させることが必要な種々の局面において多大な効果をもたらす。
[0241] 上述の方法における工程 a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフ ラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試料 とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件下で、接触 させる工程は、本発明の糖鎖捕捉担体と、試料とを、混合し、混合したものを糖鎖捕 捉担体と該糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件下に曝すことによって達成 することが可能である。試料は、所望の生物または合成物力 当該分野において周
知の技術を用いて調製することができる。疾患、障害または状態を検査することが所 望される場合、そのような検査対象となる生体カゝら試料 (例えば、血液、尿など)を入 手することによって調製することができる。そのような試料は、そのまま用いることも可 能であり、あるいは、糖鎖含有物質から糖鎖を遊離させる反応に供した後に使用する ことも可能である。糖鎖捕捉担体と糖鎖または糖鎖含有物質とが反応し得る条件は、 本明細書において定義されるとおりであり、使用される物質の性質、量などを考慮し て、当該分野において周知の技術を用いて、当業者が適宜調節することができる。
[0242] 上述の方法における工程 b)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖 含有物質との複合体を取り出す工程において、流体は、水溶液、有機溶媒およびこ れらの混合物からなる群より選択されるものが有利であり得る。より好ましくは、流体は 水溶液である。特に、ここで使用される流体は、複合体が破壊しないような緩衝液 (例 えば、 pHが中性付近の緩衝液)を用いることが好ましい。工程 b)では、好ましくは、 遠心分離を行うことも可能である。
[0243] 上述の方法における工程 c)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖または糖鎖含 有物質との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す工程は、形 成した複合体の性質 (特に、相互作用の形式)を考慮することにより、当該分野にお いて周知の技術を用いて、当業者が適宜行うことができる。そのような条件としては、 例えば、強酸の存在などが挙げられるがそれらに限定されない。ただし、この条件で は、糖鎖そのものが破壊されないことが好ましくあり得る。糖鎖の状態を天然のまま保 持することが所望される場合、このような条件は特に好ましくあり得る。しかし、糖鎖が 破壊されるような条件もまた、精製、分離または濃縮後の目的に応じて使用可能であ る。好ましくは、上記解消は、全部であり得る。
[0244] 上記方法にお!、て、工程 a)、 b)および c)は、同一の容器内で行われることが好ま しくあり得るが、別々の容器において行うこともまた別の実施形態において好ましくあ り得る。同一の容器で行うことにより、糖鎖および糖鎖含有物質の精製、濃縮および 分離が、ストリームライン化された手順で行うことが可能となり、自動化も行うことができ るようになる。ただし、使用する反応条件、流体などが異なる場合、別々の容器で行う ことが有禾 IJであることもある。
[0245] 本発明の試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する方法に おいて、上記工程 a)の前に、前記試料中のアルデヒド基を遊離させる工程を包含す ることが好ましくあり得る。これは、例えば、糖鎖のアルデヒド基が保護されている場合 などにおいて、本発明の糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含む フラーレン誘導体が有利に相互作用することができるようになるからである。そのよう なアルデヒド基を遊離させる工程は、好ましくは、酵素処理および Zまたは化学法に よる供プロトン反応を包含する。酵素処理としては、例えば、グリコシダーゼによる処 理が挙げられ、化学法による処理としては、ヒドラジン分解を挙げることができる。本 発明の方法では、酵素処理および化学法をそれぞれ単独で用いてもよぐ両方組み 合わせて用いてもよい。酵素は、単数の種類であってもよぐ複数種類のものであつ てもよい。酵素は、どのようなものでもよぐ例えば、植物、酵母、かび由来のダルコシ ダーゼ、好ましくはフラボバタテリゥム由来の N—ダルコシダーゼが挙げられるがそれ らに限定されない。ヒドラジン分解が好ましい。酵素では N型糖鎖のみが分離され得 るが、ヒドラジン分解では N型糖鎖および O型糖鎖の両方を分離、分析することがで きる力もである。ヒドラジン分解は、気相であっても液相であってもよい。液相によるヒ ドラジン分解は、操作は容易である力 多数の試料を処理するには向かず、試薬に 接する危険性があることから安全性に問題がある。ヒドラジン除去に時間が力かる点 も難点である。必要な機器としては、ブロックヒータ、ネジロバイアル、真空ポンプがあ る。糖鎖含有物質が糖ペプチドの場合、ペプチド自体はアミノ酸ヒドラジドに分解され る。気相ヒドラジン分解は、操作が容易であり、多数の試料を同時に処理することが 可能である。必要な器具としては、気相式ヒドラジン分解装置、真空ポンプがある。気 相ヒドラジン分解は、多検体からの疾病マーカーの探索、プロテオーム
解析 (翻訳後修飾)などのハイスループット処理に向いているといえる。従って、本発 明では、これら分離技術を単独で、または組み合わせて用いることが可能である。
[0246] 本発明の試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮または精製する方法に おいて、さらに、 d)前記糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件に 、前記試料を供する工程、を包含することが好ましくあり得る。このように試料中に含 まれている糖鎖含有物質の糖鎖部分を単離することにより、糖鎖の分析が容易にな
つたり、糖鎖自体を他の目的に使用することができるという点で有利になる。
[0247] 糖鎖含有物質を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件は、本明細書において定 義されるとおりである。そのような条件としては、例えば、物理的手段 (例えば、レーザ 一など)、化学的手段 (酸性条件)または生化学的手段 (例えば、グリコシダーゼなど の酵素)を用いることなどが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、ヒドラジ ン分解またはグリコシダーゼによる酵素処理が挙げられるがそれらに限定されない。
[0248] 別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮ま たは精製する装置を提供する。この装置は、 a)試料導入部; b)流体相を収容し得る 空間を有する容器; c)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフ ラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体;を備え、該容器は、該試料導入 部と流体連絡している。この装置は、本発明のフラーレン誘導体および支持体を含 む糖鎖捕捉担体を利用して、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮また は精製することから、例えば、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用する性質に起 因して、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精 製、分離することができる。また、天然に存在する状態を反映しながら含有比を分析 することができる試料を提供することができる。本発明の装置を用いることによって、 天然の状態を反映することができることにより、糖鎖により判定することができる被検 体における状態を、そのような被検体力 取り出した試料力 簡便に判定することが できる。このような利点を有する装置は、医薬、農業、保健、食品、化粧品など、生体 分子が関与する分野において有利に使用することができる糖鎖組成物を提供するた めに使用することができる。本発明の装置は、糖鎖組成がオリジナルの糖鎖結合状 態と実質的に同一の組成比を有しているが、糖鎖以外の物質が低減した新規糖鎖 組成物を提供することができると ヽぅ点で、従来の装置にな ヽ優れた利点を提供する
[0249] 本発明の装置において使用される a)試料導入部は、試料を導入することができる 部分であれば、どのような形態でもよい。分離、濃縮または精製が目的とされること力 ら、試料導入部は、汚染されていないことが好ましいが、糖鎖でも糖鎖含有物質でも 汚染されて 、なければ、他の物質(単純タンパク質など)で汚染されて 、てもよ 、。
[0250] 本発明の装置において使用される b)流体相を収容し得る空間を有する容器は、糖 鎖と、本発明の糖鎖捕捉担体との間の相互作用を完全に排除しないようなものであ れば、どのような容器を用いてもよい。好ましくは、そのような相互作用に影響を与え ないものであり得る。より好ましくは、糖鎖捕捉担体が結合していることが有利であり 得る。そのような担体との結合は、担体中の支持体を介して行われることが好ましい。 また、この糖鎖捕捉担体において、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン 核とを含むフラーレン誘導体と支持体とは結合 (好ましくは共有結合)して 、ることが 好ましい。このような容器は、想定される反応および装置の使用目的に鑑みて、当該 分野にお 、て周知の技術の技術を用いて、当業者は容易に製造することができる。
[0251] 本発明の装置において使用される c)上記フラーレン誘導体および支持体を含む糖 鎖捕捉担体は、本発明の糖鎖捕捉担体であれば、どのようなものを使用してもよい。 したがって、このような糖鎖捕捉担体としては、本明細書において記載される実施形 態に関するものであれば、どのようなものでも使用することが可能であり、当業者は、 必要に応じて、装置への応用のために改変を施すことができる。そのような改変もま た本発明の範囲内にあることは当然である。そのような改変としては、本発明の糖鎖 捕捉担体を、容器への固定に適したように改変することが挙げられるがそれらに限定 されない。そのような改変としては、例えば、反応性官能基をさらに加え、容器上にそ のような反応性官能基と反応する官能基を配置し、それらを反応させることが挙げら れるがそれらに限定されない。
[0252] 別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮ま たは精製するシステムを提供する。このシステムは、 A) a)試料導入部; b)流体相を 収容し得る空間を有する容器; c)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン 核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体;を備え、該容器は 、該試料導入部と流体連絡している、装置; B)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該 糖鎖との複合体を取り出す手段;ならびに C)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖 との間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す手段、を備える。こ のようなシステムを提供することによって、本発明は、医薬、農業、保健、食品、化粧 品など、生体分子が関与する分野において有利に使用することができる糖鎖組成物
を提供するために使用することができる。
[0253] 本発明のシステムにおいて用いられる A)装置としては、上述の本発明の装置を用 いることができる。ただし、この装置は、 B)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖 との複合体を取り出す手段、および C)該複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖との間 の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す手段を収容または連結す ることができるようにする力、あるいはそれらの手段とともに提供される形状に改変さ れることが好ましい。
[0254] 好ま 、実施形態にぉ 、て、上記手段 C)は、アルデヒドを遊離させる手段である。
この手段 C)は、好ましくは、アルデヒドを遊離させる酵素(グリコシダーゼなどの酵素) または化学物質 (例えば、ヒドラゾン分解に用いられる試薬)である。
[0255] 本発明のシステムにお 、て用いられる B)該流体相から、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖 との複合体を取り出す手段は、複合体を取り出すことができる手段であれば、どのよう なものであっても用いることができる。当業者は、複合体の性質、装置の構成など種 々のパラメータを考慮して、当該分野で周知の技術を参酌することによって、適切な 複合体取り出し手段を選択することができる。そのような手段の好ま 、例としては、 遠心分離器、フィルター、クロマトグラフィー装置が挙げられるがそれらに限定されな い。より好ましくは、フィルターであり得る。そのようなフィルタ一は、好ましくは、複合 体を残し、複合体ィ匕されていない成分は通過するような構成であることが好ましくあり 得る。そのような構成をとるフィルタ一としては、例えば、複合体の粒径および存在す ると予想される成分の粒径を算出し、その中間のサイズのポアサイズを有するものを 用!/、ることができる。
[0256] 本発明のシステムにおいて用いられる、 C)複合体を、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖と の間の相互作用が少なくとも一部解消するような条件下に曝す手段は、そのような条 件を提示することができる手段であれば、どのような手段であってもよい。溶液を交換 することによってそのような条件を提示することができるのであれば、そのような溶液を 収容する容器がそのような手段として適切であり得る。新たな成分(固体または液体) を添加することによってそのような条件を達成することができるのであれば、上記手段 は、そのような成分を収容する容器であり得る。そのような手段または容器は、上記提
示すべき条件を考慮することで、当該分野において周知の技術を用いて当業者は、 容易に製造および取り扱 、をすることができる。
[0257] 好ましい実施形態において、本発明のシステムは、さらに、 D)前記糖鎖含有物質 を糖鎖とそれ以外の部分とに分離する条件に、前記試料を供する手段、を備える。こ のような手段は、上記分離が達成されるような条件を提示することができる手段であ れば、どのようなものであってもよい。溶液を交換することによってそのような条件を提 示することができるのであれば、そのような溶液を収容する容器がそのような手段とし て適切であり得る。新たな成分(固体または液体)を添加することによってそのような 条件を達成することができるのであれば、上記手段は、そのような成分を収容する容 器であり得る。そのような手段または容器は、上記提示すべき条件を考慮することで、 当該分野にぉ 、て周知の技術を用いて当業者は、容易に製造および取り扱!/、をす ることがでさる。
[0258] 別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分離、濃縮ま たは精製する装置を製造する方法を提供する。この方法は、 a)糖鎖と特異的に相互 作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を提供するェ 程; b)該糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導 体と該支持体とを相互作用させて糖鎖捕捉担体を作製する工程; c)該糖鎖捕捉担 体を容器に固定する工程、を包含する。この方法は、本発明の糖鎖捕捉担体を使用 することから、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用することにより、天然の状態で存 在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質を濃縮、精製、分離することができる 装置をこの方法によって製造することができる。
[0259] 本発明の方法において行われる a)上記フラーレン誘導体および支持体を提供する 工程では、本明細書にぉ 、て記載される糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラ 一レン核とを含むフラーレン誘導体が使用され得る。支持体もまた、本明細書におい て記載されるものが使用され得る。糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン 核とを含むフラーレン誘導体として好まし 、実施形態もまた、本明細書にぉ 、て記載 されており、そのような好ましい実施形態もまた、上記方法において用いることができ る。支持体として好ましい実施形態もまた、本明細書において記載されており、そのよ
うな好ま U、実施形態もまた、上記方法にぉ 、て用いることができる。
[0260] 本発明の方法において行われる b)上記フラーレン核とを含むフラーレン誘導体と 該支持体とを相互作用させて糖鎖捕捉担体を作製する工程もまた、当該分野におい て周知の技術を組み合わせて実施することができる。このような糖鎖捕捉担体の作製 は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体と 支持体とが、相互作用する十分な条件 (例えば、緩衝剤、溶媒の極性、温度、 pH、 塩濃度、圧力など)に、これら両物質を曝すことによって達成することができる。このよ うな条件を設定するのに必要なパラメータの設定は、当業者の技術範囲内であり、相 互作用の種類、糖鎖の種類、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核と を含むフラーレン誘導体 (例えば、アルデヒド基と流体中で反応し得る官能基を有す る物質)および支持体 (脂質)の種類など相互作用に関連する諸パラメータを考慮す ることにより、当業者は、そのような条件を当該分野において周知の技術を用いて設 定し、相互作用反応を行わせることができる。
[0261] 本発明の方法において行われる c)該糖鎖捕捉担体を容器に固定する工程もまた、 当該分野において周知の技術を組み合わせて実施することができる。このような固定 は、糖鎖捕捉担体と容器とが、相互作用する十分な条件 (例えば、緩衝剤、溶媒の 極性、温度、 pH、塩濃度、圧力など)に、これら両物質を曝すことによって達成するこ とができる。このような条件を設定するのに必要なパラメータの設定は、当業者の技 術範囲内であり、相互作用の種類、糖鎖捕捉担体および容器の材質の種類など相 互作用に関連する諸パラメータを考慮することにより、当業者は、そのような条件を当 該分野において周知の技術を用いて設定し、固定を行わせることができる。
[0262] 別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する方 法を提供する。この方法は、 a)流体相中で、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位と フラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該試 料とを、該糖鎖捕捉担体と該糖鎖とが反応し得る条件下で、接触させる工程; b)所望 のストリンジエンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す工程;および c )該糖鎖捕捉担体と相互作用した物質を同定する工程、を包含する。この方法では、 本発明の糖鎖捕捉担体が使用されることから、任意の糖鎖に対して差別なく相互作
用するという特性により、天然の状態で存在する含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有 物質をその含有比などを分析することができる。このように、天然の状態を反映するこ とができることにより、例えば、糖鎖により判定することができる被検体における状態を 、そのような被検体から取り出した試料力も簡便に判定することができる。あるいは、 天然に存在する状態を反映した糖鎖が濃縮されているということにより、医薬、農業、 保健、食品、化粧品など、生体分子が関与する分野において有利に使用することが できる分析値を提供することができる。このような分析値は、データの基礎となる試料 の糖鎖組成がオリジナルの糖鎖結合状態と実質的に同一の組成比を有している点 で、オリジナルの糖鎖の種類を忠実に反映させることが必要な種々の局面において 多大な効果をもたらす。
[0263] 好ましい実施形態では、本発明の方法によって分析される対象は、病因を含むか または含むと予測される被検体に由来する試料であり得る。そのような試料は、直接 使用してもよいし、糖鎖分析に影響のないような形の処理を行ってもよい。本発明の 方法において分析される試料は、動物、植物、細菌、ウィルス、菌類などに由来し得 、好ましくは、ヒトまたは人間生活に関連する生物 (例えば、病原体、家畜、農作物な ど)であり得る。
[0264] 好ま 、実施形態では、本発明の分析方法では、上記工程 a)— c)は、前記糖鎖 捕捉担体を担持したチップ上で行われる。チップについては、本明細書において別 の場所において説明したとおりであり、当業者であれば、上記工程を行うための適切 な構成を、本明細書の開示に従って、当該分野において周知の技術を組み合わせ て適切に構築することができる。
[0265] 本発明の分析方法において使用される糖鎖捕捉担体は、チップ上でアレイ状に配 置されることが好ましい。このようにアレイ状に配置された分析装置 (デバイス)は、本 明細書にお 、て糖鎖アレイとも 、う。
[0266] 別の実施形態では、本発明の分析方法における同定工程 c)は、物理学的方法 (マ ススペクトル分析、 NMR、 X線解析、元素分析など)、化学的方法 (化学的特異的反 応の観察など)、生化学的方法 (酵素の基質特異性などを判定)または生物学的方 法 (生物(例えば、細菌などの微生物)の反応)を包含し得る。好ま 、実施形態にお
いて、本発明の分析方法における同定工程 c)はマススペクトル分析を含む。このよう なマススペクトル分析としては、例えば、 MALDI-TOF MSが挙げられるがそれに 限定されない。あるいは、 NMRを使用してもよい。
[0267] 別の局面において、本発明は、糖鎖を含むカゝまたは含むと予想される試料の糖鎖 レプリカを作製するための方法を提供する。この方法は、 a)糖鎖と特異的に相互作 用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を支持体上に平面展開させる 工程;および b)糖鎖を含むカゝまたは含むと予想される試料を、該支持体に接触させ る工程、を包含する。このような糖鎖レプリカは、糖鎖が天然に存在する状態、含有 比、場所などが反映されていることから、この糖鎖レプリカを調査することによって、糖 鎖レプリカが由来する被検体の状態を忠実にかつ簡便に検査することができるという 利点を提供することができる。このような糖鎖レプリカは、従来そのような発想も存在し なかったことから、直接診断の手段としてのその有用性は絶大である。このような糖鎖 レプリカは、本発明のフラーレン誘導体が平面展開したものを、好ましくはガラスなど の固体箔 (好ましくは、透明なもの)に吸着させ、生体試料に密着させることによって 生体試料平面に由来する糖鎖の 2次元像をそのような固体箔において写し取ること によって作製することができる。従って、ここで使用される支持体は、疎水性相互作用 をしやす 、ものであることが好まし!/、。
[0268] 好ましい実施形態において、この糖鎖レプリカを作製する際に、支持体において、 前記試料の所望の形質をマークする工程を包含することが有利であり得る。ここで、 所望の形質は、病変などの肉眼で観察可能であるものであるか、あるいは、別の手 段によって観察可能であるものであり得る。このように病変などの所望の形質をマーク し、マークと、同定された糖鎖とを相関づけることによって、従来未知であった糖鎖と ある形質との関係を研究することができる。あるいは、既知の関係であれば、その糖 鎖を同定するだけで、病変などの所望の形質の状態を定性的または定量的に検査 することができる。
[0269] 別の局面において、本発明は、糖鎖を含むカゝまたは含むと予想される試料の糖鎖 レプリカを提供する。この糖鎖レプリカは、 a)固体箔; b)糖鎖と特異的に相互作用し 得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体が平面展開された支持体;および
c)糖鎖を含む力または含むと予想される試料に由来する成分であって、該成分は糖 鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体に捕捉さ れている、成分、を含む。このような糖鎖レプリカは、糖鎖が天然に存在する状態、含 有比、場所などが反映されていることから、この糖鎖レプリカを調査することによって、 糖鎖レプリカが由来する被検体の状態を忠実にかつ簡便に検査することができると いう利点を提供することができる。このような糖鎖レプリカは、本発明のフラーレン誘 導体が平面展開したものを、好ましくはガラスなどの固体箔 (好ましくは、透明なもの) に吸着させ、生体試料に密着させることによって生体試料平面に由来する糖鎖の 2 次元像をそのような固体箔において写し取ることによって作製することができる。固体 箔として使用することができる材料は、生体組織または組織片などの平面状のものと 形状を適合させることができるものが好ましくあり得る。従って、ガラスなどの硬いもの ではなぐプラスチックのようなものが 好ましくあり得る。また、可視光線で観察する 場合には透明であることが好ましい。紫外線で観察する場合には、紫外線を透過さ せるような性質であることが好まし 、。
[0270] 好ましい実施形態において、本発明の糖鎖レプリカ中の固体箔には、試料の所望 の形質 (例えば、病変または病害など)に関するマークが付されている。このことにより 、所望の形質との相関付けが容易になる。
[0271] 一つの局面において、本発明は、糖鎖を含む力または含むと予想される試料上の 糖鎖を分析する方法を提供する。この方法は、 a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部 位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体を支持体上に平面展開させるさせる工程 ; b)糖鎖を含むカゝまたは含むと予想される試料を、該支持体に接触させる工程; c)該 支持体の表面に存在する糖鎖を分析する、を包含する。このような支持体は、上述の 糖鎖レプリカと同じであり、この方法は、いわば、糖鎖レプリカを用いた分析方法とい える。糖鎖レプリカを用いた分析方法は、試料をそのまま二次元像として糖鎖分布を 分析することができることから、本発明の糖鎖レプリカを用いた分析方法は、従来技 術では達成することができな力つた、二次元的分析方法を提供すると 、う有用性を有 する。ここで、上記工程 a)および b)は、上述の糖鎖レプリカの製造方法と同様の技術 を用いることができる。上記工程 c)における糖鎖分析は、本明細書において記載さ
れるとおり、種々の方法 (例えば、マススペクトルのような物理学的方法、化学的方法 、生化学的方法、生物学的方法など)を用いることができる。従って、この分析工程は 、固体箔の表面をイオンィ匕し、その後、マススペクトル分析を行うことを包含する。
[0272] 好ましくは、この分析方法は、上述の固体箔において、前記試料の所望の形質を マークする工程、および該マークと該マススペクトル分析により同定された糖鎖とを相 関付ける工程をさらに包含する。このような工程を包含することによって、所望の形質 を即座にかつ、二次元像として分析することができる。
[0273] 別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する装 置を提供する。この装置は、 a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核と を含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体;および b)糖鎖を同定 する手段、を含む。このような装置は、糖鎖を簡便かつ信頼性高く同定することがで きる。どのような糖鎖を含む試料でも対象とすることができ、簡便であることから、自動 ィ匕された装置として製造することもできる。そのような自動化は、当該分野において周 知の技術を用いて行うことができる。
[0274] ここで含まれる糖鎖捕捉担体は、本明細書において説明されるとおりであり、その 好ましい実施形態は、この装置において適切である場合、適宜使用することができる 。糖鎖を同定する手段は、どのようなものでもよいが、種々の方法 (例えば、マススぺ タトルのような物理学的方法、化学的方法、生化学的方法、生物学的方法など)を用 いた手段であり得る。装置を小型化するためには、例えば、生化学的手段 (糖鎖に特 異的に結合する抗体、レクチンなど)を用いる力 あるいは、グリコシダーゼのような酵 素を用いることが有利であり得る。
[0275] 別の局面において、本発明は、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核 とを含むフラーレン誘導体が配置された支持体を含む、試料中の糖鎖または糖鎖含 有物質を分析するデバイスを提供する。このようなデバイスは、どのような形状でもよ ぐどのようなサイズであってもよい。好ましくは、このデバイスにおいて、糖鎖と特異 的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体は、アレイ状に前 記支持体に配置される。より好ましくは、このデバイスは、チップ形状を有する。チップ 形状のデバイスを用いる場合は、例えば、ナイロン膜などの比較的硬度の低い材料
またはガラスなどの硬度の高!、材料を用いることができ、ナイロン膜などを用いた場 合は、簡便な解析システムを用いて結果を分析することができる。高密度のものを解 析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。従つ て、通常糖鎖チップとしての使用が所望される場合には、ガラスなどの硬度のあるも のを支持体 (または基板)として用いることが好ま U、。
[0276] 別の局面において、本発明は、被験体の診断または鑑別のための方法を提供する 。この方法は、 a)本発明のデバイスを用いて、被験体に由来する試料中の糖鎖また は糖鎖含有物質を分析する工程、を包含する。このデバイスは、上述のデバイスであ り、好ましくは、アレイ状で糖鎖捕捉担体が配置されており、より好ましくは、チップ形 状を採る。
[0277] 好ま 、実施形態にぉ 、て、本発明の診断または鑑定の方法にぉ 、て行われる分 析工程は、糖鎖または糖鎖含有物質に対する抗体および Zまたはレクチンの存在を 検出することを包含する。
[0278] 別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析するシス テムを提供する。このシステムは、 a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレ ン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体; b)所望のストリン ジエンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す手段;および c)糖鎖を 同定する手段、を含む。このシステムは、本発明の糖鎖捕捉担体を使用することから 、任意の糖鎖に対して差別なく相互作用するという特性により、天然の状態で存在す る含有比のまま、糖鎖および糖鎖含有物質をその含有比などを分析することができる 。このように、天然の状態を反映することができることにより、例えば、糖鎖により判定 することができる被検体における状態を、そのような被検体から取り出した試料から簡 便に判定することができる。あるいは、天然に存在する状態を反映した糖鎖が濃縮さ れているということにより、医薬、農業、保健、食品、化粧品など、生体分子が関与す る分野において有利に使用することができる分析値を提供することができる。このよう な分析値は、データの基礎となる試料の糖鎖組成がオリジナルの糖鎖結合状態と実 質的に同一の組成比を有して 、る点で、オリジナルの糖鎖の種類を忠実に反映させ ることが必要な種々の局面において多大な効果をもたらす。
[0279] 本発明の上記システムによって用いられる a)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位 とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体は、本 明細書において記載されるとおりであり、その好ましい実施形態は、このシステムに おいても利用することができる。
[0280] 本発明の上記システムによって用いられる b)所望のストリンジエンシーの条件下に 該糖鎖捕捉担体および該試料を曝す手段もまた、本明細書にぉ ヽて記載されるとお りの技術を用いることができ、また、その好ましい実施形態は、このシステムにおいて ち禾 IJ用することがでさる。
[0281] 本発明の上記システムによって用いられる c)糖鎖を同定する手段もまた、どのよう なものでもよいが、種々の方法 (例えば、マススペクトルのような物理学的方法、化学 的方法、生化学的方法、生物学的方法など)を用いた手段であり得る。装置を小型 化するためには、例えば、生化学的手段 (糖鎖に特異的に結合する抗体、レクチンな ど)を用いる力、あるいは、グリコシダーゼのような酵素を用いることが有利であり得る 。あるいは、システムが大型であってもよい場合は、この糖鎖を同定する手段は、マス スペクトル分析器であってもよ 、。
[0282] 別の局面において、本発明は、試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する装 置を製造する方法を提供する。このような方法は、 a)糖鎖と特異的に相互作用し得る 部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を提供する工程;および b)該糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体と 該支持体とを相互作用させて糖鎖捕捉担体を作製する工程、を包含する。このような 方法は、従来になカゝつた試料中の糖鎖または糖鎖含有物質を分析する装置を提供 するというて点で、有用性を有する。好ましくは、この製造方法は、糖鎖捕捉担体を、 収容する容器に配置する工程をさらに包含する。
[0283] 別の局面において、本発明は、糖鎖アレイを作製するための方法を提供する。この 方法は、 a)支持体を提供する工程; b)糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラー レン核とを含むフラーレン誘導体を所望の配列で配置する工程、を包含する。支持 体は本明細書において記載されるとおりのものを利用することができる。この方法で いう所望の配列とは、規則的な配列 (例えば、碁盤の目状)であってもよぐ不規則な
配列であってもよい。好ましくは、規則的な配列であり得る。
[0284] 別の局面において、本発明は、試料中の、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異 的に結合する物質を分析する方法を提供する。このような方法は、 a)流体相中で、 糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および 支持体を含む糖鎖捕捉担体と、該糖鎖または糖鎖含有物質とを相互作用させて固 定する工程; b)該糖鎖捕捉担体と、該試料とを、該糖鎖または糖鎖含有物質に対し て特異的に結合する物質と該糖鎖とが反応し得ると想定される条件下で、接触させる 工程; c)所望のストリンジエンシーの条件下に該糖鎖捕捉担体と該試料との混合物を 曝す工程;および d)該糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する物質を 同定する工程を包含する。この方法では、上述の方法とは逆に、試料中に含まれると 予測される、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する、未知の物質を分 析することができる。そのような糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する 物質は、抗体またはレクチンであり得るがそれに限定されない。抗体である場合には 、その抗体が標的とする糖鎖の存在がその被検体において推定される。従って、そ のような抗体が存在することがこの方法によって判定されるとき、その被検体は、その 特定の糖鎖が存在すると判定され得る。そのような糖鎖が特定の疾患、障害または 状態に関連することが既知である場合には、抗体の存在によって、そのような疾患、 障害または状態を診断することができる。従って、ここで用いられる試料は、病変を有 すると予想される被検体に由来するものであり得る。抗体およびレクチンの相互作用 に関する技術もまた、当該分野において周知であり、そのような周知技術を適宜組み 合わせること〖こよって、当業者は上述の判定などを容易に行うことができる。本発明 のこの方法によって同定された、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合す る新規の物質もまた、本発明の範囲内にある。そのような新規の物質を使用して、本 発明の方法、装置、システムなどを実施することができる。
[0285] 従って、好ましい実施形態において、本発明のこの方法は、 e)抗体またはレクチン と、その存在に関連する疾患、障害、病害または状態を相関づける工程、をさらに包 含する。このような工程を行うための技術は、当該分野において周知であり、当業者 は適宜選択して用いることができる。
[0286] 別の局面において、本発明は、試料中の、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異 的に結合する物質を分析するためのデバイスを提供する。このデバイスは、該糖鎖ま たは糖鎖含有物質が特異的相互作用により固定された、糖鎖と特異的に相互作用し 得る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担 体を含む。このようなデバイスは、試料中に含まれると予測される、糖鎖または糖鎖含 有物質に対して特異的に結合する、未知の物質を分析することができる。このような 固定方法は、相互作用として例えば、共有結合を選択することによって達成すること ができる。
[0287] 別の局面において、本発明は、試料中の、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異 的に結合する物質を分析するシステムを提供する。このシステムは、 a)該糖鎖または 糖鎖含有物質が特異的相互作用により固定された、糖鎖と特異的に相互作用し得る 部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体を 含む、デバイス; b)試料導入部; c)所望のストリンジエンシーの条件下に該糖鎖捕捉 担体と該試料との混合物を曝す手段;および d)該糖鎖または糖鎖含有物質に対して 特異的に結合する物質を同定する手段、を包含する。このようなシステムは、試料中 に含まれると予測される、糖鎖または糖鎖含有物質に対して特異的に結合する、未 知の物質を分析することができる。
[0288] 本発明のこのシステムにおいて使用される a)該糖鎖または糖鎖含有物質が特異的 相互作用により固定された、糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン核とを 含むフラーレン誘導体および支持体を含む糖鎖捕捉担体を含む、デバイスは、本明 細書にぉ 、て上述されるようにして製造することができる。
[0289] 本発明のこのシステムにおいて使用される b)試料導入部は、本明細書において記 載されるとおりであり、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。
[0290] 本発明のこのシステムにおいて使用される c)所望のストリンジエンシーの条件下に 該糖鎖捕捉担体と該試料との混合物を曝す手段もまた、本明細書にぉ ヽて記載され るとおりであり、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。
[0291] 本発明のこのシステムにおいて使用される d)該糖鎖または糖鎖含有物質に対して 特異的に結合する物質を同定する手段もまた、本明細書において記載されるとおり
であり、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。
[0292] 別の局面において、本発明は、糖鎖を含む試料を、糖鎖と特異的に相互作用し得 る部位とフラーレン核とを含むフラーレン誘導体で接触し、その後相互作用した試料 中の糖鎖を分離することによって得られる、糖鎖含量が上昇した糖鎖組成物を提供 する。このような糖鎖組成物は、天然に存在する糖鎖および Zまたは糖鎖含有物質 が保持されているが、糖鎖および糖鎖含有物質以外の物質が低減していることから、 レクチン、抗体などの従来の技術では達成できな力つた組成の組成物を提供するこ とがでさる。
[0293] 好ましい実施形態において、上記糖鎖と特異的に相互作用し得る部位とフラーレン 核とを含むフラーレン誘導体は、任意の糖鎖と所定のレベル以上で特異的に相互作 用し得る。このこと〖こより、このような糖鎖組成物は、天然に存在する糖鎖および Zま たは糖鎖含有物質の含有比がほぼ反映されているが、糖鎖および糖鎖含有物質以 外の物質が低減していることから、レクチン、抗体などの従来の技術では達成できな 力つた組成の組成物を提供することができる。
[0294] このような糖鎖組成物は、医薬として用いることができる。このような糖鎖組成物はま た、食品、保健食品、化粧品、高分子材料 (生分解性ポリマーなど)などとして用いる ことができる。あるいは、このような糖鎖組成物は、手術材料 (移植片)などとして使用 することも可能である。このように医薬などとして使用する形態については、本明細書 にお 、て記載されるように、当該分野にぉ 、て周知の技術を用いて製造および使用 することができる。
[0295] 本発明はまた、別の局面において、本発明の糖鎖組成物を含む、アツセィキットを 提供する。このようなアツセィキットは、このような糖鎖組成物がある特定の試料'供給 源に由来する場合には、その供給源の糖鎖組成比を忠実に反映していることから、 簡便かつ精度の高 ヽ結果を提供することができる。
[0296] 本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、そ の全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援 用される。
[0297] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきた力 本発
明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求 の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ とが理解される。
実施例
[0298] (実施例 1:糖鎖捕捉フラーレン誘導体 (7)の合成)
(1. 1 5— tert ブトキシカルボ-ルァミノォキシペンチル)力ルバミン酸ベンジルェ ステル (4)の合成)
[0299] [化 37]
本発明の 1実施形態における糖鎖捕捉フラーレン誘導体の具体的な合成過程を図 1に示した。
[0300] 公知の(5—ヒドロキシペンチル)力ルバミン酸べンジルエステル(2) (2. 96g)をテト ラヒドロフラン(45mL)に溶解し、トリフエ-ルホスフィン(3. 93g) N—ヒドロキシフタ ルイミド(2. 25g)をカ卩えた。その後氷冷下、ジェチルァゾジカルボキシレート(2. 61 g)のテトラヒドロフラン(3mL)溶液を滴下し、室温で 2時間攪拌した。反応液に少量 の水を加えた後、溶媒を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲル中圧力ラムクロ マトグラフィー(酢酸ェチル: n キサン = 1: 4→ 1: 3→3: 7)にて精製して化合物(3 ) (5. 8g)を得た (図 1)。
[0301] 上記の化合物(3) (5. 8g)をメタノール (30mL)に溶解し、 40%メチルァミンのメタ ノール溶液(35mL)を加え、室温で 2時間攪拌した。溶媒を減圧下濃縮後、トルエン で 2回共沸した。得られた残渣を 1, 4 ジォキサン (45mL)に溶解し、ジイソプロピル
ェチルァミン(1.77g)、二炭酸ジー t ブチル(2.99g)をカロえ、室温で 29時間攪拌 した。反応液を酢酸ェチルで希釈した後、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸 マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲル中圧カラ ムクロマトグラフィー(酢酸ェチル: キサン =3: 1)にて精製して標記化合物 (4) ( 2.22g)を得た (図 1)。化合物(2)を基準に算出した収率 :51%
[0302] — NMR(CDC1 ) δ :1.35—1.6(m, 13H), 1.6—1.75 (m, 2H), 3.1—3.
3
3(m, 2H), 3.86 (t, 2H, J = 6.2Hz), 4.14 (q, 2H, J=7.1Hz), 4.88 (s, 1
H), 5. ll(s, 2H), 7.21 (s, 1H), 7.3—7.45 (m, 5H)。
[0303] (1.2 N— (5 tert ブトキシカルボ-ルァミノォキシペンチル)マロンアミド酸ェチ ルエステル(5)の合成)
[0304] [化 38]
上記の化合物 (4) (2.10g)を酢酸ェチル(55mL)に溶解し、 10%パラジウム炭素 (210mg)を加え、水素気流下室温で 90分攪拌した。次いで、触媒を濾去して、濾 液を減圧下に濃縮した。得られた残渣を N, N—ジメチルホルムアミド(30mL)に溶解 し、マロン酸モノェチルエステル(787mg)、 WSC'HC1(1.37g)および HOBt(l— ヒドロキシベンゾトリァゾール)(965mg)をカ卩え、室温で 6時間攪拌した。反応液に酢 酸ェチルをカ卩え、 0.5規定塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和食 塩水で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧下に留去した。 得られた残渣をシリカゲル中圧力ラムクロマトグラフィー(酢酸ェチル: n キサン = 3 :2)にて精製して標記化合物(5) (1.38g)を得た(図 1)。収率 :83%
[0305] — NMR(CDC1 ) δ :1.31 (t, 3H, J = 7.6Hz), 1.4—1.55 (m, 11H), 1.5
3
5—1.7(m, 4H), 3.25—3.4(m, 4H), 3.87 (t, 2H, J = 6.3Hz), 4.21 (q, 2 H, J = 7.1Hz), 7.20 (bs, 1H), 7.26 (s, 1H)。
[0306] TOF-Mass : 355 (M + Na) , 371(M+K)。
[0307] (1.3 N— [5— (1, 3—ジォキソ一 1, 3—ジヒドロキシーイソインドールー 2—ィルォキシ
)ペンチル]マロンアミド酸ェチルエステル( 1 )の合成)
[0308] [化 39]
上記の化合物(5) (786mg)をジクロロメタン(lOmL)に溶解し、氷冷下トリフルォロ 酢酸(5mL)のジクロロメタン (5mL)溶液を加えた後、反応液を室温で 90分攪拌した 。次いで、溶媒を減圧下に留去し、トルエンで 2回共沸した。得られた残渣をトルエン (5mL)に溶解し、無水フタル酸(350mg)をカ卩えた。そこにトリェチルァミン(239mg )を加え、 80分間還流した。溶媒を減圧下に留去し、得られた残渣をシリカゲル中圧 カラムクロマトグラフィー(酢酸ェチル:
n キサン = 3: 7→2: 3、クロ口ホルム:メタノ ール =10:1)にて精製して標記化合物(1) (708mg)を得た(図 1)。収率: 69% [0309] — NMR(CDC1 ) δ :1.29 (t, 3H, J = 7. 1Hz), 1.5—1.7(m, 4H), 1.7—
3
2.0(m, 2H), 3.2—3.4(m, 4H), 4.1—4.3(m, 4H), 7. 19 (s, 1H), 7.65—
7.8(m, 2H), 7.8—7.9(m, 2H)。
[0310] TOF-Mass: 363 (M + H) , 385 (M + Na), 401(M+K)。
[0311] (1^4 フラーレン誘導体(6)の合成)
[0312] [化 40]
フラーレン C60(100mg)をトルエン(100ml)に溶解し、室温で 1時間撹拌した。こ のフラーレン溶液に上記の化合物(1) (61.2mg)、DBU(l, 8—ジァザビシクロ [5.
4.0]— 7—ゥンデセン)(104mg)、ヨウ素(107.2mg)をカ卩ぇ室温で撹拌した。 12時 間撹拌した後、上記の化合物(1) (25.5mg)、ヨウ素(35.7mg)を加え、更に 12時 間室温で撹拌した(J. F. Nierengartenetら, Tetrahedron Lett. , Vol.38, 77 37頁, 1997)。溶媒を減圧除去した後、シリカゲルカラム(トルエン:酢酸ェチル =5: 1)にて精製を行い標記化合物(6) (36mg)を得た(図 2)。収率 :24%。
[0313] 'H-NMRCCDCl ) δ :1.45—1.5(t, 3H, J = 7.1Hz), 1.75—1.8(m, 2H)
3
, 1.8-1.9(m, 4H), 3.65 (q, 2H, J = 6.0Hz), 4.25 (t, 2H, J = 5.8Hz), 4
.57 (q, 2H, J = 7.1Hz) , 7.7—7.8(m, 4H)。
[0314] TOF— Mass :1080 (M + H)。
[0315] (1^5 フラーレン誘導体 (7)の合成)
[0316] [化 41]
上記の化合物(6) (10mg)をトルエン(10ml)に溶解し、氷冷下で撹拌した。この溶 液に 40%メチルァミン Zメタノール溶液 (0.05ml)をカ卩え、 4時間撹拌した(図 2)。 T LC (トルエン:酢酸ェチル =3:1)で上記(1)の化合物のスポット(r. f. =0.60)の 消失と、ニンヒドリン反応によりァミンの生成 (r. f. =0.00)を確認した。また、 MAL DI TOF MASS (マトリックス:ジスラノール)により標記化合物(7)の生成を確認し た。
[0317] TOF— Mass :951 (M + H), 973(M + Na)。
[0318] (実施例 2:糖鎖捕捉フラーレン誘導体(11a)の合成)
(2.1, 4 [4ー(2—ヒドロキシェチル)ピぺリジンー1 ィル]ベンズアルデヒド(19)の
[0319] [化 42]
本発明の別の実施形態における糖鎖捕捉フラーレン誘導体の具体的な合成過程 を図 3に示した。
[0320] 公知化合物 [ (2—ヒドロキシ)ピぺリジン(17) 3. Og]および、 [4 フルォ口べンズァ ルデヒド(18)、 2.88g]を N, N—ジメチルホルムアミド(30mL)に溶解し、炭酸力リウ ム(3.85g)を加え、室温で 14時間、 50— 60°Cで 12時間攪拌した。反応液を酢酸ェ チルで希釈した後、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、 溶媒を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲル中圧力ラムクロマトグラフィー(酢 酸ェチル: キサン =1:3→2: 3)にて精製して標記化合物(19) (2.30g)を得 た。
[0321] — NMR(CDC1 ) δ :1.25—1.4(m, 3H), 1.5—1.6(m, 2H), 1.65—1.8
3
(m, 1H), 1.83 (d, 2H, J=12.6Hz), 2.92 (t, 2H, J=12.6Hz), 3.74 (d,
2H, J = 3.6Hz), 3.94 (d, 2H, J=13.2Hz), 6.90 (d, 2H, J=12Hz), 7.73
(d, 2H, J=12Hz), 9.75 (s, 1H)。
[0322] (2.2 4— [4— (2— tert ブトキシカルボ-ルアミノォキシァセトキシェチル)ピベリジ ンー 1 ィル]ベンズアルデヒド(20)の製造)
[0323] [化 43]
上記( 19)の化合物( 1.60g)をジクロロメタン (80mL)に溶解し、 tert ブトキシカ ルポ-ルァミノォキシ酢酸(2.62g)、WSC(3.95g)および 4ージメチルァミノピリジ ン(86mg)をカ卩え、室温で 1.5時間攪拌した。反応液にクロ口ホルムを加え、 1規定 塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄後、有機層 を硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧下に留去した。得られた残渣をシリカゲル中
圧力ラムクロマトグラフィー(酢酸ェチル:
n キサン = 3: 7)にて精製して標記化合 物(20) (2.47g)を得た。
[0324] — NMR(CDC1 ) δ: 1.3— 1.4 (m, 1H) , 1.48 (s, 9H), 1.6—1.7(m, 3H
3
), 1.82 (d, 2H, J=12.6Hz), 2.91 (dt, 2H, J = 2.4, 12.6Hz), 3.94 (d, 2 H, J=13.2Hz), 4.27 (t, 2H, J = 6Hz), 4.44 (s, 2H), 6.90 (d, 2H, J=12 Hz), 7.74 (d, 2H, J = 6Hz), 9.76 (s, 1H)。
[0325] (2^3 化合物(21)の製造)
[0326] [化 44]
フラーレン C (lOOmg)のトルエン(60mL)に上記(20)の化合物(284mg)のトル
60
ェン(5mL)溶液および、メチルグリシン(12mg)をカ卩え、 2時間還流した。反応液を 減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲル中圧力ラムクロマトグラフィー(トルエン:酢 酸ェチル = 1: 0→5: 1)にて精製して標記化合物(21) (37mg)を得た。
[0327] 'H-NMRCCDCl ) δ :1.3— 1.45 (m, 2H), 1.47(s, 9H), 1.47—1.6(m, 1
3
H), 1.66 (q, 2H, J = 6.6Hz) , 1.75—1.85 (m, 2H), 2.65—2.75 (m, 2H) , 2.79 (s, 3H), 3.65-3.75 (m, 2H), 4.22 (d, 1H, J = 9Hz), 4.26 (t, 2H , J = 7Hz), 4.43 (s, 2H), 4.85(s, 1H), 4.96 (d, 1H, J = 9Hz), 6.97 (d, 2 H, J = 8.4Hz), 7.65(s, 2H), 7.72 (s, 1H)。
[0328] TOF— Mass :1154 (M + H)。
[0329] (2^4 化合物(11a)の製造)
[0330] [化 45]
上記(21)の化合物(20mg)をジクロロメタン(lOmL)に溶解し、氷冷下トリフルォロ 酢酸(2mL)のジクロロメタン (2mL)溶液を加えた後、反応液を室温で 1時間攪拌し た。次いで、溶媒を減圧下に留去し、標記化合物(11a) (20mg)を得た。得られた標 記化合物(11a)について、質量分析を行った。このマススペクトルを図 6に示した。
[0331] TOF— Mass : 1054 (M + H)。
[0332] (実施例 3:二相系におけるフラーレン誘導体の糖鎖の捕捉)
(3^ D-( + )-マンノースの捕捉実験)
上記の化合物(7) (5mg)をトルエン(5ml)に溶解し、室温で撹拌した。 D—( + )— マンノース(Dextran lab oratories社製、 19. lmg)を 0. 01M酢酸ナトリウム buffe r (lml)に溶解し、このマンノース水溶液を上記溶液にカ卩え、二相系で 24時間撹拌し た。有機相を取り出し、 MALDI TOF MASS (マトリックス: DHB)によりマンノース の捕捉を確認した(図 6)。
[0333] TOF— Mass : 1134 (M + Na)。
[0334] コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たな!、化合物 (6)で同様の実験をおこな つた。コントロール実験では D ( + ) マンノース由来のシグナルは得られなかった( 図には示していない)。
[0335] (3^2 a 1-3, α 1—6マンノトリオースの捕捉実験)
上記の化合物(7) (0. lmg)をクロ口ホルム(0. 1ml)に溶解し、更にメタノール(0. 05ml)をカ卩えた。 α ΐ— 3, α 1— 6マンノトリオース(Dextran lab oratories社製、 1 mg)を水 メタノール混合溶媒 (混合比 1 : 1, 0. 05ml)に溶解し、この水溶液を上記 溶液に加え、室温で 6時間撹拌した。有機相を取り出し、 MALDI TOF MASSに
よりマンノトリオースの捕捉を確認した(図 7)。
[0336] TOF— Mass : 1460 (M + Na)。
[0337] コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たな!、化合物 (6)で同様の実験をおこな つた。コントロール実験では α 1-3, a 1—6マンノトリオース由来のシグナルは得られ なかった(図には示して!/、な!/、)。
[0338] (3. 3 a 1-4, α 1— 4マルトトリオースの捕捉実験)
上記の化合物(7) (0. Img)をクロ口ホルム(0. 1ml)に溶解し、更にメタノール(0. 05ml)をカロえた。 α ΐ— 4, α 1— 4マルトトリオース(Dextran laboratories社製、 1 mg)を水 メタノール混合溶媒 (混合比 1 : 1, 0. 05ml)に溶解し、この水溶液を上記 溶液に加え、 40°Cで 3時間振とうした。有機相を取り出し、 MALDI TOF MASS によりマルトトリオースの捕捉を確認した(図 8)。
[0339] TOF— Mass : 1461 (M + Na)。
[0340] コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たな!、化合物 (6)で同様の実験をおこな つた。コントロール実験では α 1-4, a 1 4マルトトリオース由来のシグナルは得られ なかった(図には示して!/、な!/、)。
[0341] (3^ 4 ひ 1—3, j8 1— 4ガラタトトリオースの捕捉実験)
上記の化合物(7) (0. Img)をクロ口ホルム(0. 1ml)に溶解し、更にメタノール(0. 05ml)を加えた。 α ΐ— 3, j8 1— 4ガラタトトリオース(Dextran laboratories社製、 1 mg)を水 メタノール混合溶媒 (混合比 1 : 1, 0. 05ml)に溶解し、この水溶液を上記 溶液に加え、 40°Cで 3時間振とうした。有機相を取り出し、 MALDI TOF MASS によりガラタトトリオースの捕捉を確認した(図 9)。
[0342] TOF— Mass : 1460 (M + Na)。
[0343] コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たな!、化合物 (6)で同様の実験をおこな つた。コントロール実験ではひ 1-3, β 1 4ガラタトトリオース由来のシグナルは得ら れなかつた(図には示して!/、な!/、)。
[0344] (3^ 5 ラクト -Ν-テトラオースの捕捉実験)
上記の化合物(7) (0. Img)をクロ口ホルム(0. 1ml)に溶解し、更にメタノール(0. 05ml)をカ卩えた。ラクト N—テトラオース(Dextran laboratories社製、 lmg)を水一
メタノール混合溶媒 (混合比 1 : 1, 0. 05ml)に溶解し、この水溶液を上記溶液にカロ え、 40°Cで 3時間振とうした。有機相を取り出し、 MALDI TOF MASSによりラクト N—テトラオースの捕捉を確認した(図 10)。
[0345] TOF— Mass : 1664 (M + Na)。
[0346] コントロール実験として、糖鎖捕捉能を持たな!、化合物 (6)で同様の実験をおこな つた。コントロール実験ではラタトー N—テトラオース由来のシグナルは得られな力つた (図には示していない)。
[0347] (実施例 4:二相系におけるフラーレン誘導体の特異的糖鎖捕捉の確認)
上記(7)の化合物(0. lmg)をクロ口ホルム(0. 1ml)に溶解し、更にメタノール(0. 05ml)をカ卩える。 α ΐ— 3, α 1— 6マンノトリオース(Dextran laboratories社製、 lm g)および還元末端がメチル化された α 1—3, α ΐ— 6マンノトリオース(Dextran lab oratories社製、 lmg)を水 メタノール混合溶媒(混合比 1: 1, 0. 05ml)に溶解し、 この水溶液を上記溶液に加え、室温で 6時間撹拌する。有機相を取り出し、 MALDI TOF MASSによりマンノトリオースの捕捉を確認する。
[0348] (実施例 5 :糖鎖捕捉フラーレン誘導体を用いた糖タンパク質由来糖鎖の精製およ び分離への応用)
(5^ 糖鎖の切り出し)
精製ヒト由来免疫グロブリン (シグマ社製)を 0. 01規定塩酸水溶液中に溶解し、 pH 2に 0. 1規定塩酸を用いて合わせ、 90度 60分加熱処理を行った。加熱処理後、重 炭酸アンモニゥム溶液にて中和し、凍結乾燥した。凍結乾燥品を 50mMの重炭酸ァ ンモ -ゥム溶液に溶解し、免疫グロブリンに対して 100分の 1重量のトリプシンをカロえ 、 37度 24時間反応した。 90度 15分加熱し、室温まで冷却した後、免疫グロブリン 1 mgあたり 1ユニットの N—グリコシダーゼ (フラボバタテリゥム由来の酵素を大腸菌にて 発現。ロシュ社製)を加え 37度 24時間反応後、 90度 15分加熱し反応を停止した。こ の内、免疫グロブリン 5mg相当を糖鎖精製試験に供した。
[0349] (5^ 2 糖鎖捕捉及び分離精製)
上記(7)の化合物(0. lmg)をクロ口ホルム(0. 1ml)に溶解し、更にメタノール(0. 05ml)をカ卩える。そこに、先の免疫グロブリン由来の糖鎖混合物の溶液(5mgのヒト
由来免疫グロブリンが lmlの重炭酸アンモ-ゥム溶液に溶解している) 200マイクロリ ットルを加え、 40°Cで 3時間振とうする。有機相を分離した後、有機溶媒を減圧濃縮 し、そこに溶液が透明になるまでメタノール Z超純水混合溶媒を少量づっ添加し、糖 鎖を捕捉したフラーレン誘導体の溶液を得る。
[0350] (5,_3 糖鎖のリリース過程)
この糖鎖を捕捉したフラーレン誘導体の溶液にプロトン型イオン交換榭脂 (アルドリ ツチ社製、 Amberlite IR— 120)を添カ卩し、 37° Cで 1時間振動撹拌する。溶液を マイクロコン (ミリポア社製)を用いて 10, 000回転 Z分、 10° Cの条件で 30分間遠 心濾過し、濾液を回収する。
[0351] (5^ 4 糖鎖の質量分析)
濾液を MALDI— TOF MS (Bruker社製、 Biflex)によって質量分析する。測定 のマトリックス試薬として、 2, 5-ジヒドロキシベンゾイツク酸 (Fluka社製)を用いる。用 いた抗体由来の糖鎖は構造が既知であり(N—結合型糖鎖)、出現するマススぺタト ルシグナルが糖鎖由来であるかを判定する。糖鎖捕捉ポリマーで精製する以前の M ALDI-TOF MSのシグナルとの比較により、糖鎖が選択的に分離精製されたかど うかを確認する。
[0352] (5. 5 HPLCとの比較)
一方、 N—グリコシダーゼ処理をした試料の内、免疫グロブリン 5mg相当に 50 gの プロナーゼ (カルビオケミネ土製)をカ卩え、 37度 16時間反応後、 90度 15分加熱し反応 を停止する。反応物をバイオゲル (バイオラドネ土製)にてゲルろ過にて精製した後、 糖鎖を 2—アミノビリジン塩酸溶液とシァノトリヒドロほう酸ナトリウムを用いてピリジルァ ミン誘導体化し、セフアデックス (アマシャム ノィォテク社製)にて未反応 2-アミノビリ ジンを除く。糖鎖を逆相系カラム高速液体クロマトグラフィーにて分析する。既報 (An al. Biochemistry, 163, 489—499, 1987)に記載されるこの免疫グロブリン由来 の糖鎖組成と照合し、この HPLCによる分析が正確に行われた力どうかを判定した後 、上記の質量分析結果と一致するかどうかを確認する。
[0353] (実施例 6:糖鎖捕捉フラーレンを表面にコーティングしたレプリカ作製プレートの作 製)
レプリカ作製用プレートは標準的な方法である LB法 (ラングミュア ·プロジェット)法 を用い作製する。親水基と疎水基とが適度にバランスした両親媒性の成膜性分子で 水面上に安定な単分子膜を形成し、それを支持体である基板の表面に移し取り、単 分子膜を基板に移行させ、レプリカ作製用プレートを製造する。具体的には、実施例 1の 1. 5で合成した糖鎖捕捉フラーレン(lOmg)を 10mlのクロ口ホルムに溶解し、単 分子膜展開用のサンプル溶液を調製する。単分子膜は、 10°C— 25°Cの洗浄したバ ット(鉄製ほうろう仕上げ: 230mm X 305mm X 40mm)に、 4本のストロー(ポリプロ ピレン製,外径 6mm)の端部を斜めに切り取り、隣接するストロー端部の尖った側を 内側にしてひし形に配置すると共に、双方のストロー柔軟に変形する様にテフロン( 登録商標)テープで連結した枠を作製し、その内側へマイクロシリンジ(100 μ 1)を用 V、て上記サンプル溶液を少しずつ滴下し、(溶液の滴下量は 40— 200 μ 1)展開させ る。これに顕微鏡観察用のカバーグラスを単分子膜の上力も接触させ、乾燥してレブ リカ作製用プレートとする。
[0354] (実施例 7:レプリカ作製プレートを用いた糖鎖レプリカの作製方法)
凍結切片の顕微鏡観察外科手術により摘出し凍結した乳癌検体を、凍結切片作 製装置を用いて 25°Cで厚さ 4 に薄切し、常法によりへマトキシリン'ェォシン染色 を行った。乾燥後、組織切片を覆うように実施例 3. 1で作製したレプリカ作製用プレ 一トの単分子膜面を組織切片側に伏せて貼り付け密着テープで固定する。顕微鏡 で、極細油性サインペンなどを用いて観察病変部位を適当にマーキングしておく。マ イク口シリンジを用いて、ヒドラジン溶液またはグリコシダーゼ溶液をレプリカ作製用プ レートとスライドグラスの隙間から注入し、 25°Cから 38°Cの恒温室で反応させ、レプリ 力作製用プレートに組織切片表面の糖鎖を転写する。転写して得られた糖鎖を、予 めマーキングした部位にレーザーを照射して質量分析する。
[0355] (実施例 8 :糖鎖アレイ)
(8. 1 糖鎖固定ィ匕アレイによる抗体の検出)
糖鎖を含有する卵巣癌由来細胞 (悪性、および良性が以下の Chienらの文献であ らカじめ鑑別されている患者を選択し、 DXチェン、 PE.シュワルツ、 CA 125 悪性 子宮癌の検出ためのアツセィ.産婦人科学、 75 (4) : 701-704、 1990. )卵巣腫瘍
の腫瘍マーカーとして認識されている糖タンパク複合体 CA125が含まれていると予 想される患者唾液を採取する。各々の唾液力もカートリッジカラムを用いて分子量 10 000以上の分画を分取濃縮し、これを PBSにて希釈し (糖タンパク量として 1000, 2 00、 40, 10, 1, 0. l g μ 各: Lずつ)、ヒドラジン溶液で糖鎖を処理し、上 記実施例 3. 1にて作製したレプリカ作製プレートにアレイを形成するように点着した。 直ちに点着後の固相担体を 25°C、モイスチャーチャンバ一にて 1時間放置した後、 1 %BSA/0. 05%Tween20-PBS (PBS-T)に 1時間浸積することでブロッキング 処理し、糖鎖アレイを得た。
[0356] 次いで、作製した糖鎖アレイに抗 CA125モノクロナール抗体を滴下し、モイスチヤ 一チャンバ一内にて 25°Cで 1時間インキュベートした。次いで反応後のアレイを、 PB S— Tで 3回洗浄し、 PBSでリンス後乾燥させ、得られた反応アレイを傾向標識抗 IgG 抗体を用いてラベルし、 PBSでリンス後乾燥させ、アレイ表面の蛍光強度をスキヤ- ング装置で測定する。尚、標識などの全般的な分子生物学的手法は、「分子クロー ユング— 研究室マニュアル」第 2版、 Sambrook、 Fritschおよび Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)、または「分子生物学の最新プロトコル」、 1 —3卷、 F M Asubel、 R Brentおよび R E Kingston編、 John Wiley出版、 1 998に記載の任意の方法に従うことができる。
産業上の利用可能性
[0357] 本発明の糖鎖捕捉フラーレン誘導体を提供することにより、夾雑物を含む雑多な生 体分子の分子量領域から糖鎖由来のシグナルのみを所望の分子量だけ大きくシフト することができ、質量分析法において非常に有用でかつ新しい糖鎖分析手法を提供 することができる。この手法により、細胞または生体試料に由来する糖タンパク質、糖 脂質などの複合糖脂質を効率よく分離 ·精製'濃縮し、夾雑するタンパク質、脂質な どの成分を予め試料力も除きとることができ、その結果、質量分析などの直接解析方 法を容易にする。また、病理切片に由来する糖鎖を二次元像として写し取ることが可 能になる。さらに、本発明により開示された糖鎖捕捉ポリマーを、 in vivo酵素などと 組み合わせて、適当な前処理を施した生体表面に接触させることにより、採取不可能 であった腺組織に付属する管の細胞 (乳管、胆管など)の内腔に由来する糖鎖を分
取することができる。分取した糖鎖組成物は、ワクチン等の医薬品、健康食品、残さタ ンパク質又は脂質は抗原性を低減した医薬品、低アレルゲン食品として利用可能で ある。