JP4253858B2 - フラーレン誘導体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフラーレン誘導体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
【0003】
フラーレン類、例えばC60フラーレン(以下、C60フラーレンを単に「C60」と略記する)等は、金属内包性や超伝導性などといった無機・物理化学的な面だけでなく、有機・生物化学的な面においても、興味深い性質を有する分子である。これまでに報告されているC60フラーレンの生物有機化学的な機能は、主に以下の2つに集約される。
【0004】
その一つは、C60の疎水性基としての大きさによる効果である。これまで、2つのカルボキシル基の導入により水溶性を増したC60誘導体に関し、C60部分がHIV-proteaseの疎水性ポケットにすっぽり入り込むことによる阻害効果が報告されている(R. Sijbesma, G. Srdanov, F. Wudl, J. A. Castoro, C. Wilkins, S. H. Friedman, D. L. DeCamp, G. L. Kenyon J.Am. Chem. Soc. 1993, 115, 6510等)。
【0005】
他の一つは、可視光存在下で一重項酸素を効率的に発生することによる生物活性である。例えば、オリゴヌクレオチドを導入したフラーレン誘導体はその相補的なDNAをC60の近傍のグアニン塩基の部分で選択的に切断することが報告されている(H. Tokuyama, S. Yamago, E. Nakamura, T. Shiraki, Y. Sugiura J.Am. Chem. Soc. 1993, 115, 7918等)。
【0006】
一方、糖鎖は細胞表面に数多く存在し、細胞接着などの生体内の複雑な諸現象の制御を司る機能性分子である。この糖鎖をC60に導入することにより、フラーレンに水溶性を付与すると共に、糖鎖の分子認識能を利用して特定の細胞あるいは生体分子にのみ作用する様な機能性分子の開発が可能である。
【0007】
従来、上記の「糖鎖フラーレン」に関しては、1−アジ糖より発生するベンジル保護、および、ピバロイル保護したグリコシデンカルベンを使用した合成例が報告されている(A. Vasella, P. Uhlmann, C. A. A. Waldraff, F.. Diederich, Angew. Chem.Int. Ed. Engl. 1992, 31, 1383; ibid. Int. Ed. Engl. 1992, 31, 1388)。次の様な化合物(a)及び(b)が知られている。
【0008】
【化2】
Figure 0004253858
【0009】
しかしながら、上記の誘導体の脱保護についてはこれまで報告されていない。このことは、脱保護する際の接触水素化などの反応条件ではC60部分にも水素付加が進行し、糖部分だけに化学変換を進行させることが困難であるためであると推測できる。
【0010】
すなわち、上記(a)の化合物の場合は、脱ベンジル化のために一般に採用される接触水素化反応により、フラーレンの二重結合が還元され易いと言う欠点があり、また、上記(b)の化合物の場合は、そのピバロイル基が一般に採用される水酸基保護のためのアセチル基に比して脱離し難いと言う欠点がある。しかも、ピバロイル基は、嵩高い構造のため、二糖や三糖をフラーレンに導入する際に水酸基の全てをピバロイル基で保護することも困難である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、新規なフラーレン誘導体およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(I)で表されることを特徴とするフラーレン誘導体に存する。
【化3】
Figure 0004253858
(上記一般式(I)中、Aはその水酸基の一部または全部が保護されていてもよい糖類の残骨格、Bはフラーレンの残骨格を表す。)
【0013】
そして、本発明の第2の要旨は、フラーレンに糖アジドを環化付加することを特徴とする上記フラーレン誘導体の製造方法に存する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のフラーレン誘導体は、前記一般式(I)で表され、その中の代表的な化合物の一つは、次の部分構造の化学式(2)で表される。
【0015】
【化4】
Figure 0004253858
【0016】
一般式(I)中のAは、その水酸基の一部または全部が保護されていてもよい糖類の残骨格を表し、Aの前駆体に当たる糖類としては、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、オリゴ糖、多糖などがあげられる。単糖類としては、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース等が挙げられる。これらの中では、グルコース、マンノース、ガラクトース、マルトース等のヘキソースが代表的であり、上記の化学式(2)で表される化合物はグルコースに由来する化合物である。
【0017】
上記の二糖類としては、トレハロース、スクロース等のトレハロース型、マルトース、ラクトース、セロビオース、メリビオース、ゲンチオビオース等のマルトース型などが挙げられ、上記の三糖類としては、マルトトリオース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等が挙げられる。
【0018】
上記のオリゴ糖および多糖の種類も特に限定されず、例えば、オリゴ糖としては、細胞接着や細胞間認識に関与する機能性オリゴ糖であってもよい。斯かる機能性オリゴ糖としては、例えば、ウイルス、細菌、細菌毒素などに存在する付着分子により認識されるオリゴ糖が挙げられる。この様な糖鎖の使用により、ウイルス、細菌、細菌毒素などに本発明のフラーレン誘導体を特異的に付着させることが出来る。
【0019】
上記の機能性オリゴ糖の具体例としては、例えば、シアル酸残基、ガラクトース残基、N−アセチルガラクトサミン残基、グルコース残基、N−アセチルグルコサミン残基などを含有するオリゴ糖が知られており、本発明においては、ターゲットとなるウイルス、細菌、細菌毒素などの種類に応じて適宜に糖鎖を選択することが出来る。また、機能性オリゴ糖の他の具体例としては、細胞間認識に関与することが知られているラクトサミン構造を有するオリゴ糖が挙げられる。
【0020】
一般式(I)中のBはフラーレンの残骨格を表し、Bの前駆体のフラーレンとしては、代表的にはC60が挙げられるが、これに限定されるものではない。斯かるフラーレンは、炭素を出発物質とする、レーザー気化法、アーク放電法、プラズマ放電法、炭化水素を出発物質とする燃焼法、放電プラズマ接触法などにより得ることが出来る。
【0021】
本発明のフラーレン誘導体の構造的な特徴は、糖類の残骨格Aとフラーレンの残骨格Bとの連結基(−N<)に存する。すなわち、斯かる連結基を有する「糖鎖フラーレン」は、脱離が容易な炭素数1〜4の直鎖アシル基により糖類の水酸基を保護(すなわち、水酸基の水素を炭素数1〜4の直鎖アシル基で置換)した後にフラーレンに容易に導入し得る後述の本発明の製造方法によって容易に得ることが出来る。上記の直鎖アシル基の具体例としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられるが、これらの中ではアセチル基が好ましい。
【0022】
本発明のフラーレン誘導体の化学式(2)で表される化合物以外の他の代表的化合物を例示すれば、次の化学式(3)〜(6)の通りである。なお、化学式(6)においては、フラーレンの残骨格Bを省略してある。
【0023】
【化5】
Figure 0004253858
【0024】
また、本発明のフラーレン誘導体は、糖類の例えばグルコース単位とフラーレンとの1:1の付加体(adduct)であるが、環状化合物における環の反転によって生じる異性体である反転異性体を包含する。すなわち、上記の化学式(2)で表される化合物について言えば、本発明のフラーレン誘導体は、次の様な「1:1 adduct A」と「1:1 adduct B」とを包含する。
【0025】
【化6】
Figure 0004253858
【0026】
本発明のフラーレン誘導体に上記の様な反転異性体が存在する事実は、次の分析結果に基づく。
【0027】
(1)FAB−MSによる同定の結果、本発明のフラーレン誘導体は、1:1付加体であるにも拘わらず、1H-NMR及び13C-NMRにテトラアセチルグルコース骨格に由来するピークが2種類現れた。
(2)また、13C-NMRにおいてはC60骨格に由来するシグナルが73本観測されたが、C60骨格のsp3炭素に由来するシグナルが観測されなかった。
(3)UV-VISスペクトルにおいては、[6,6]位に縮合したアジリジノフラーレン構造に特徴的な430nm近辺の吸収が現れなかった。
【0028】
以上の結果から、本発明のフラーレン誘導体については[6,6]位に付加したアジリジノフラーレンと[6,5]位に付加したアザフラロイドの混合物である可能性は否定され、これまでに報告例のなかったアザフラロイドの反転異性体の混合物であることが確認された。斯かる反転異性体については、従来、アザフラロイドにおいて報告されておらず、新規な物質である。
【0029】
なお、グルコース体については、DMSOに溶解後、メタノールの滴下により析出する沈殿を濾別することにより、単一の反転異性体としての分離が可能である。
【0030】
本発明の上記のフラーレン誘導体は、例えば、本発明の製造方法、すなわち、フラーレンに糖アジドを環化付加することを特徴とする製造方法によって容易に得ることが出来る。本発明の製造方法を反応式で例示すれば次の通りである。
【0031】
【化7】
Figure 0004253858
【0032】
上記の反応において、C60に対する糖アジドの使用割合は、通常1:1〜3(モル比)とされる。反応溶媒は、クロロベンゼンに限定されず、反応に不活性な他の反応溶媒を使用することも出来る。反応は、窒素などの不活性ガスの雰囲気下で行われ、反応温度は、特に制限されないが、例えば、反応溶媒としてクロロベンゼンを使用した場合は、その還流温度を採用することが出来る。また、反応時間は、反応温度に依存するが、通常3〜10時間程度である。
【0033】
なお、反応原料である糖アジドは、通常、水酸基を保護のために炭素数1〜4の直鎖アシル基(好ましくはアセチル基)を導入した糖アジドが使用されるが、その製法は、公知の方法に従って行うことが出来る。例えば、無水酢酸とピリジンの混合溶液に糖類(例えばマルトトリオース)を加えて反応させることにより、パーアセチルマルトトリオースを得、次いで、ジクロロメタンに上記のパーアセチルマルトトリオースを溶解した後、臭化水素飽和酢酸溶液を加えて反応させることにより、パーアセチルマルトトリオースブロマイドを得、次いで、アジ化ナトリウムによるブロムのアジド化により、パーアセチルマルトトリオシルアジドを得る。
【0034】
脱アシル化反応は、例えばDMSO-メタノール混合溶液中ナトリウムメトキシド触媒量の存在下で容易に行うことが出来る。そして、この脱アシル化反応は、DMSO-d6:CD3D混合溶液中触媒量のナトリウムメトキシドを加えることにより追跡することが出来る。反応終了後、例えば陽イオン交換樹脂(例えば「アンバーリスト」)で中和し、溶媒を留去することにより、水酸基のフリーな糖結合フラーレンを得ることが出来る。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1
(パーアセチル−β−マルトトリオシルアジドの合成)
無水酢酸1.0mlとピリジン1.4mlの混合溶液に0℃で101mg(0.20mmol)のマルトトリオースを加え、室温で24時間反応させた。溶媒留去後、反応溶液に1Nの塩酸を加え、クロロホルムで3回抽出し、硫酸マグネシウムで有機相を乾燥した後、溶媒を留去した。得られたパーアセチルマルトトリオースの収量は149mgであった。
【0037】
ジクロロメタン10.0mlに上記のパーアセチルマルトトリオース141mg(0.15mmol)を溶解した後、臭化水素飽和酢酸溶液1.2mlを加え、室温で48時間反応させた。その後、氷水10mlで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、氷水10mlで1回の各洗浄を順次に行った後、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶媒を留去し、得られたパーアセチルマルトトリオースブロマイドをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、次のアジド化反応に供した。
【0038】
上記のDMF溶液にブロムに対して15倍量相当のアジ化ナトリウム195mg(3.0mmol)を加え、60℃で3時間撹拌した。次いで、酢酸エチル10mlを加えて希釈し、飽和食塩水10mlで2回、蒸留水10mlで1回の各洗浄を順次に行った。次いで、水相に酢酸エチル20mlを加え、DMFと共に水相に移動した生成物を抽出した後、溶媒を留去し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に濾過し、溶媒を留去した。そして、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:酢酸エチル=5:1)で上記の生成物を精製し、IR及び1H−NMRにより同定した。その結果、上記の生成物は、パーアセチル−β−マルトトリオシルアジドであることが確認された。
【0039】
(フラーレン誘導体の合成)
C60フラーレン72mg(0.10mmol)のクロロベンゼン溶液14mlにC60に対して1.5倍量のパーアセチル−β−マルトトリオシルアジド(0.15mmol)を加え、窒素雰囲気中で7時間加熱還流した。溶媒留去後、シリカゲルクロマトグラフィーにより未反応のC60を回収し(展開溶媒:トルエン)、続いて、前記の化学式(6)で表される化合物(マルトトリオースとC60フラーレンとの1:1付加体(「per-Ac-Malt-N-C60」と略記する)を単離した。
【0040】
「per-Ac-Malt-N-C60」の消費されたC60フラーレン基準の収率(以下同じ)は21%であり、FAB−MS(m/z)のスペクトルは、1641, 720であり、IR(KBr,cm-1)のスペクトルは、1751, 1427, 1367, 1224, 1036, 526であった。
【0041】
実施例2〜6
実施例1において、マルトトリオースの代わりに、グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、ラクトース(Lac)、マルトース(Mal)をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の方法に従って、糖のアジド化反応およびC60フラーレンに対する糖アジドの環化付加反応を行い、次の表1に示す本発明のフラーレン誘導体を得た。なお、表1には実施例1の結果も併せて示した。
【0042】
【表1】
Figure 0004253858
【0043】
実施例2〜5で得られた各化合物のNMRスペクトルデータは次の通りである。なお、ケミカルシフトは、δ(ppm)、結合定数はHzで表した。また、実施例2で得られた化合物については、UV−VISスペクトルデータも併せて示した。
【0044】
【表2】
<per-Ac-Glc-N-C60
(1)1H-NMR ( 500MHz, CDCl3 )
adductA:
δ 2.01 ( s, 3H ), 2.07( s, 3H ), 2.09 ( s, 3H ),
2.119 ( s, 3H ), 4.02-4.05 ( m, 1H, H-5 ),
4.26-4.31 ( m, 2H, H-6 ), 5.24 ( dd,J=9.5 and 10.0 Hz, 1H, H-4 ),
5.30 ( d, J=8.5Hz ,1H, H-1 ),
5.43 ( t, J=9.5Hz, 1H, H-3 ), 5.54 (t, J=9.5Hz, 1H, H-2 )
【0045】
【表3】
adductB:
δ 2.065 (s, 3H ), 2.097 ( s, 3H ), 2.107 (s ,3H ), 2.214 ( s, 3H ),
4.01-4.04 ( m, 1H, H-5 ), 4.26-4.31 ( m, 2H, H-6 ),
5.10 ( d, J=8.5Hz, 1H, H-1 ), 5.38 ( t, J=9.5Hz, 1H, H-4 ),
5.53 ( t, J=9.5Hz, 1H, H-3 ), 5.89 ( dd, J=8.5 and 9.5Hz, 1H, H-2 )
【0046】
【表4】
(2)13C-NMR ( 125MHz, CDCl3 )
δ 20.90, 20.94, 20.97, 21.01, 62.21, 62.39, 68.73, 69.08, 69.76, 72.98,
73.48, 73.81, 73.90, 74.95, 87.74, 89.71, 134.69, 134.83, 137.37,
138.03,138.46, 138.49, 138.57, 138.65, 138.89, 139.04, 139.53, 140.01,
140.09,140.81, 141.20, 141.25, 141.71, 141.77, 141.97, 141.99, 142.13,
142.36,142.38, 142.46, 142.55, 143.18, 143.23, 143.26, 143.35, 143.38,
143.42,143.47, 143.52, 143.62, 143.63, 143.70, 143.75, 143.77, 143.88,
143.92,144.04, 144.11, 144.15, 144.20, 144.24, 144.28, 144.29, 144.39,
144.41,144.47, 144.50, 144.69, 144.71, 144.72, 144.76, 144.87, 144.91,
145.13,145.16, 145.51, 145.60, 146.25, 146.92, 147.84, 147.95, 169.54,
169.69,169.72, 169.77, 170.50, 170.69, 170.73, 170.91
【0047】
【表5】
(3)UV-VIS( CHCl3 )
λmax 258,260,266,327(nm )
【0048】
【表6】
<per-Ac-Gal-N-C60
(1)1H-NMR ( 500MHz, CDCl3 )
adductA:
δ 2.02 (s, 3H), 2.05 ( s, 3H ), 2.13 ( s, 3H ), 2.22 ( s, 3H ),
4.14 ( dd, 1H, H-6, J=7.0 and 11.5 Hz ), 4.23-4.26 ( m, 1H, H-5 ),
4.31 ( dd, 1H, H-6, J=7.3 and 10.8 Hz ), 5.29 ( d, 1H, H-1, J=8.5 Hz ),
5.30 ( dd, 1H, H-3, J=3.5 and 10.5Hz )
5.56 ( dd, 1H, H-4, J=1.0 and 3.5Hz ),
5.68 ( dd, 1H, H-2, J=9.0 and 10.5 Hz )
【0049】
【表7】
adductB:
δ 2.00 ( s, 3H ), 2.08 ( s, 3H ), 2.23 ( s, 3H ), 2.28 ( s,3H ),
4.27-4.25 ( m, 1H, H-5 ), 4.30 ( dd, 1H, H-6, J=6.3 and 11.3 Hz ),
4.37 ( dd, 1H, H-6, J=6.8 and 11.3 Hz), 5.05 ( d, 1H, H-1, J=8.5 Hz ),
5.37 ( dd, 1H, H-3, J=3.5 and 10.5 Hz ),
5.61 ( dd, 1H, H-4, J=1.0 and 3.5 Hz ),
6.11 ( dd, 1H, H-2, J=9.0 and 10.5 Hz )
【0050】
【表8】
(2)13C-NMR ( 126MHz,CDC13 )
δ 20.69, 20.72, 20.8, 20.9, 21.4, 61.4, 61.5, 67.1, 67.2, 67.3, 70.4,
71.1, 71.7, 72.8, 73.6, 83.4, 87.7, 90.1, 134.43, 134.58, 137.10,
137.52,137.71, 138.24, 138.27, 138.32, 138.35, 138.38, 138.63, 138.68,
138.74,138.85, 138.54, 139.72, 139.79, 140.46, 140.91, 141.01, 141.42,
141.64,141.73, 141.87, 142.07, 142.08, 142.18, 142.31, 142.88, 142.90,
142.94,142.95, 142.98, 142.99, 143.01, 143.11, 143.14, 143.20, 143.24,
143.34,143.40, 143.46, 143.59, 143.63, 143.75, 143.86, 143.92, 143.93,
143.96,143.97, 144.11, 144.17, 144.21, 144.24, 144.41, 144.42, 144.46,
144.63,144.87, 144.88, 145.25, 145.35, 145.82, 146.52, 147.61, 147.66,
169.53,169.67, 170.21, 170.29, 170.37, 170.45, 170.47, 170.90
【0051】
【表9】
<per-Ac-Lac-N-C60
(1)1H-NMR ( 500MHz,CDC13 )
adduct A :
δ1.98 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.07 (s, 3H), 2.08 (s, 3H), 2.107 (s, 3H),
2.112 (s, 3H), 2.18 (s, 3H), 4.56 (d, 1H, Gal-H-1, J=8.0 Hz),
4.997 (dd,1H, Gal-H-3, J=3.2 and 10.2 Hz),
5.17 (t, 1H, Glc-H-4, J=9.5 Hz), 5.27 (d, 1H, Glc-H-1, J=9.0 Hz),
5.38 (dd, 1H, Gal-H-4, J=1.0 and 3.5 Hz),
5.43(t, 1H, Glc-H-3, J=9.5 Hz), 5.51 (t, 1H, Glc-H-2, J=9.3 Hz),
【0052】
【表10】
adduct B :
δ 2.00 (s, 3H), 2.090 (s, 3H), 2.094 (s, 3H), 2.11 (s, 3H),
2.14 (s, 3H), 2.18 (s, 3H), 2.21 (s, 3H),
5.06 (d, 1H, Glc-H-1, J=8.5 Hz),
5.78 (dd, 1H, Glc-H-2, J=8.5 and 9.5 Hz),
4.10 (t, 1H, Glc-H-4, J=9.5 Hz),
4.27 (dd, 1H, Glc-H-6, J=5.5 and 12.0 Hz),
4.57 (d, 1H, Gal-H-1, J=8.0 Hz),
5.05 (dd, 1H, Gal-H-3, J=4.5 and 10.5 Hz),
5.39 (dd,1H, Gal-H-4, J=1.0 and 3.5 Hz),
5.48(t, 1H, Glc-H-3, J=10.0 Hz)
【0053】
【表11】
adduct A,B:
δ3.90-3.99 (m, each 2H, Glc-H-5 and Gal-H-5),
4.60-4.65 (m,each 1H, Glc-H-6),
4.12-4.13 (m, each 2H, Glc-H-6 and Gal-H-6),
5.15-5.19(m, each 1H, Gal-H-2)
【0054】
【表12】
(2)13C-NMR ( 126MHz, CDC13 )
δ 20.55, 20.68, 20.71, 20.80, 20.88, 20.90, 20.91, 21.24, 60.74, 60.84,
61.64, 62.03, 66.55, 69.02, 69.06, 69.73, 70.72, 70.89, 70.95, 72.99,
73.08, 74.55, 75.51, 76.40, 76.58, 87.16, 89.23, 101.18, 101.22,134.41,
134.57, 137.06, 137.43, 137.43, 138.15, 138.20, 138.24, 138.37,138.41,
138.57, 138.71, 138.80, 139.41,139.74, 139.82,140.50,140.94, 140.97,
141.44, 141.48, 141.67, 141.75, 141.84, 142.07, 142.18, 142.26, 142.91,
142.94, 142.97, 143.01, 143.04, 143.10, 143.14, 143.20, 143.23, 143.36,
143.41, 143.50, 143.60, 143.63, 143.76, 143.82, 143.88, 143.92, 143.94,
143.97, 144.00, 144.11, 144.20, 144.39, 144.43, 144.59, 144.63, 144.87,
145.24, 145.33, 145.34, 145.96, 146.62, 147.54, 147.66, 169.05, 169.11,
169.63, 169.74, 169.77, 170.05, 170.11, 170.18, 170.37, 170.40, 170.42
【0055】
【表13】
<per-Ac-Mal-N-C60
(1)1H-NMR ( 500MHz, CDC13)
δ 2.027 ( s, 3H ), 2.032 ( s, 3H ), 2.048 ( s, 3H ), 2.050 ( s, 3H ),
2.074 ( s, 3H), 2.092 ( s, 3H ), 2.095 ( s, 3H ), 2.101 ( s, 3H ),
2.114 ( s, 3H ), 2.116 ( s, 3H ), 2.130 ( s, 3H ), 2.146 ( s, 3H ),
2.181 ( s, 3H ), 2.193 ( s, 3H )
【0056】
【表14】
adductA(還元性末端側のGlc):
δ 4.039-4.082s ( m, 1H, H-5 ), 4.320 ( t, J=9.0 Hz, 1H, H-4),
4.39 (dd, J=5.0 and 12.5 Hz, H-6 ),
4.61 ( dd, J=2.5 and 12.5 Hz, 1H, -6),
5.308 ( d,J=9.0Hz, 1H, H-1 ), 5.570 ( t, J=9.0 Hz, 1H, H-3 ),
5.735 ( dd, J=8.5 and 9.5 Hz,1H, H-2 )
【0057】
【表15】
adductB(還元性末端側のGlc):
δ 3.970-3.958 ( m, 1H, H-5 ), 4.197 ( t, J=9.5 Hz, 1H, H-4),
4.27-4.31 ( m, 1H, H-6 ), 4.67 ( dd, J=2.5 and 12.5 Hz, 1H,H-6),
5.336 (d,J=8.5Hz, 1H, H-1 ),5.384 ( t, J=9.0 Hz, 1H, H-2),
5.549 ( t, J=9.5 Hz, 1H,H-3 )
【0058】
【表16】
adductA,B(非還元性末端側のGlc):
δ 3.984-4.018 ( m, each 1H,H-5X2), 4.082-4.108 ( m, 2H, H-6X2),
4.270-4.309 ( m, 2H, H-6X2 ), 4.896 ( dd, J=10.0 and 4.0 Hz, 1H, H-2),
4.916 ( dd, J=10.0 and 4.0 Hz, 1H, H-2 ),5.089 ( t, J=10.0 Hz, 1H, H-4),
5.097 ( t, J=10.0 Hz, 1H, H-4 ), 5.399 ( t, J=9.5 Hz, 1H, H-3 ),
5.409 ( t, J=10.0Hz, 1H, H-3 ), 5.505 ( d, J=3.5 Hz, 1H, H-1),
5.546 ( d, J=3.5 Hz, 1H, H-1 )
【0059】
なお、念のため、本発明のフラーレン誘導体の全体構造の一例として、前記化学式(2)で表される化合物の全体構造を以下に示す。
【0060】
【化8】
Figure 0004253858
【0061】
【発明の効果】
以上説明した本発明の新規なフラーレン誘導体は、フラーレンの細胞毒性と糖鎖部分の分子識別能を利用した医薬品、例えば、ターゲッティングに応じて糖鎖を変更することにより、癌、ウイルス、細菌などのターゲッティング剤としての可能性が期待できる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(I)で表されることを特徴とする 60 フラーレン誘導体。
    Figure 0004253858
    (上記一般式(I)中、Aはその水酸基がアセチル基により保護されている糖類の残骨格、Bは 60 フラーレンの残骨格を表す。)
  2. 下記化学式(2)〜(6)のいずれか1の化学式で表されることを特徴とするC 60 フラーレン誘導体。
    Figure 0004253858
    (ただし、下記化学式(2)〜(6)中の下記一般式(II)は 60 フラーレンの残骨格を表す。)
    Figure 0004253858
  3. 60 フラーレンに糖アジドを環化付加することを特徴とする請求項1又は2に記載の 60 フラーレン誘導体の製造方法。
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