JP2505817B2 - スクロ―ス誘導体の製造法 - Google Patents

スクロ―ス誘導体の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は新規スクロース誘導体、スクロースの環状4,
6−オルソエステルに関し、更には出発物質として4,6−
オルソエステルを使つてスクロース6−エステルを製造
する方法に関する。スクロース6−エステルはスクラロ
ース、これはスクロースの甘味の数百倍を有する高度甘
味剤(英国特許第1,543,167号明細書)、の一製造方法
の重要な中間体である。
スクラロースの製造は塩素原子を1′−および6′−
位に導入(3つの一級ヒドロキシ基のうち2つと置換)
および4−位(2級ヒドロキシ基の置換)することであ
る。6−位の3番目の一級ヒドロキシ基は未反応状態に
残さねばならない。
スクラロースへの重要な経路は、反応させる3つのヒ
ドロキシ基を保護せず、すべて残りのヒドロキシ基を保
護する2,3,6,3′,4′−ペンタ−O−アセチルスクロー
スの製造である(例えば、米国特許第4,362,869号明細
書又はEP31,651B号明細書参照)。
3つの位置を塩素化させながら、5つの位置を塩素化
しないように選択的に保護するのは多くの技術的困難を
伴なう。別法としては、適当な条件下で4,1′および
6′位に選択的に塩素化しうるスクロース6−エステル
を製造する方法である。スクロース6エステルの製造法
およびそのスクラロースへの転換法は英国特許第2,079,
749B号明細書に開示されている。しかし、この方法は主
な位置の1つ以上に置換基を有するアシル化スクロース
誘導体混合物であるが、大部分が6−モノアシル化スク
ロースを製造するものである。この方法はスクラロース
への魅力的な経路であるが、スクロース6−エステルの
一層選択的な製造法のニーズがある。
新規なスクロース誘導体を容易に得ることができかつ
これらの誘導体、4,6−オルソエステルを加水分解して
スクロース4−および6−エステルの混合物を得ること
ができ、それを簡単に異性化して、実質的に4−エステ
ルのない高収量の6−エステルを供しうるという知見に
基づいて本発明はなされた。
炭水化物の環状オルソエステルは報告されている。こ
れらの最良のものは二環状1,2−グリコピラノシル誘導
体で、これはグリコシルハライドから製造でき、ジサツ
カライドの合成の中間体として使われた(Kochetkou &
Bochkou,Methods in Carbohydrate Chemistry,VI,アカ
デミツクプレス、ニユーヨークとロンドン、1972、48
0)。他の位置のオルソエステルは余り知られてなく、F
errierとCollins(Monosaccharide Chemistry,ペンギン
ブツク、196)によれば、適当な炭水化物ジオールとト
リアルキルオルソエステルの酸触媒反応により製造でき
ると言われている。酸接触下トリアルキルオルソエステ
ルをスクロースと反応させると、他の異性体を含まず高
収量の4,6−オルソエステルを得ることが分つた。これ
らのスクロース4,6−オルソエステルは新規化合物であ
る。
本発明で使う新規スクロース誘導体はスクロースアル
キル4,6−オルソアシレート、即ち、一般式 (式中、R1はアルキル基であり、特に炭素原子1−3個
のアルキル基、例えばメチル、エチル又はプロピル基で
あり、R2はアルキル基又はアリール基であり、炭素1−
4個のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル又
はブチル基であり、又はフエニル基が望ましい)を有す
る化合物である。一般式Iの特に有用な化合物はスクロ
ースメチル4,6−オルソアセテート、スクロースエチル
4,6−オルソアセテート、スクロースメチル4,6−オルソ
ブチレートおよびスクロースメチル4,6−オルソベンゾ
エートである。これらの新規化合物は本発明の一つの特
徴である。
本発明によれば、スクロースアルキル4,6−オルソア
シレートを温和な水性酸加水分解に供し、スクロースの
4−および6−モノエステル混合物を得て、ついでその
エステル混合物を塩基で処理して、スクロース4−エス
テルをスクロース6−エステルに転換する、スクロース
6−アシレートの製造法を供する。
特に、一般式II (式中、R2はアルキル基又はアリール基である)のスク
ロースエステルの製造法において、一般式I (式中、R1はアルキル基であり、R2は上記定義の通りで
ある)のオルソエステルを温和な水性酸条件下で処理し
て、ついで塩基で処理する、上記方法を供する。
最初の温和な酸処理はトルエンp−スルホン酸や塩酸
のような触媒量の酸の存在下水溶液中にて行なうことが
できる。しかし、この反応は若干の水や上記のような酸
を含むDMFやピリジンの如き不活性極性有機溶媒、又は
ピリジン塩酸塩溶液中にて行なうのが望ましい。水の添
加量は理論所要量より多くあるべきで、一般にはスクロ
ースエステルに基づいて3〜10モル等量、例えば4〜8M
Eである。酸はpHを約5−6となればよい。反応は室温
で有効に進行する。
塩基と反応して、4−エステルを6−エステルに異性
化するのは同じ溶液で行なうのがよく、単に十分量の塩
基を添加して酸を中和しかつ少し過剰を供する。一般的
な塩基としては三級アミン、例えばピリジンおよびその
類似体や三級アルキルアミン例えばt−ブチルアミンが
ある。また、反応は室温で進行する。
上記の例外はオルソベンゾエートの場合で、分解には
一層の苛酷な条件(即ち、低pHと室温より高い温度)を
必要とする。
本発明の方法はスクロース6−エステルへの容易かつ
選択的な経路であり、これらは容易に塩素化することが
できるから、スクラロースへの簡単直接経路を供する。
したがつて、本発明の別の特徴によれば、スクロースを
反応させてスクロース6−エステルを得、このスクロー
ス6−エステルを4−、1′−および6′−位で選択的
塩素化を行ない得る塩素化剤と反応させ、任意には生成
したスクラロース6−エステルをパ−エステル化し、反
応混合物から分離する前又は後にスクラロースエステル
を脱エステル化し、そしてスクラロースを回収する、ス
クラロースの製造法において、スクラロース6−エステ
ルの生成は温和な酸水性条件下スクラロースアルキル4,
6−オルソアシレートを分解し、ついで塩基で処理する
ことにより行なう、上記製造法を供する。
塩素化工程は適当な塩素系、例えば英国特許第2,079,
749B号明細書に記載のもの(例えば、バイルスマイヤー
型試薬、即ちN,N−ジアルキル−(クロロメタンイミニ
ウム)クロライド、トリアリールホスフイン又はトリア
リールホスフアイト、又はスルフリルクロライド)を使
つて行なうことができる。別の有用な塩素化系はトリフ
エニルホスフインオキサイドの存在下塩化チオニルであ
る(英国特許第2,182,039A号明細書)。
出発物質として使うスクロース4,6−オルソエステル
は、酸触媒の存在下ジメチルホルムアミドやピリジンの
ような適当な不活性有機溶媒中スクロースとトリアルキ
ルオルソエステルとを直接反応させて選択的に製造する
ことができる。反応はわずか微量のスクロースと中間体
成分を存在させて室温で1時間以内に完了する。中和
(例えば、適当なイオン交換樹脂)しかつ濾過した後、
真空下濾液を蒸発させて澄明な無色のシロツプとして生
成物を回収することができる。比較的温和な反応条件に
より望ましくない副生成物を生成しない。
本発明によれば、不活性有機溶媒又は懸濁剤中酸触媒
の存在下スクロースをトリアルキルオルソエステルと反
応させて、スクロース4,6−オルソエステルを製造する
方法を供する。
触媒は任意の強酸でよく、p−トルエンスルホン酸、
ピリジニウムクロライド、トシレート又はトルエンスル
ホン酸を使うのが有利であることが分つた。
次の例により本発明を例示する。
例1 スクロースメチル4,6−オルソアセテートの製造 ジメチルホルムアミド(27.5ml)中スクロース(3.42
g)溶液にトリメチルオルソアセテート(1.91ml;1.5M
E)と触媒量のp−トルエンスルホン酸(25mg)を加え
た。室温で1時間後、わずかなスクロース(Rf0.40)と
中間体成分(Rf0.54)を存在させて、新規化合物(Rf0.
62)への完全反応はTLC(n-BuOH/EtOH/H2O,5:3:2)で確
認した。この溶液はアンバーライト1RA93(OH-)イオン
交換樹脂を使つて中和し、濾過し、濾液を真空下蒸発さ
せ、澄明無色シロツプ(4.0g)を得た。この物質の試料
は無水酢酸/ピリジンを使う常法によりアセチル化し
た。アセテートの1HNMRスペクトルは構造と一致した。
ヘキサアセテートのマススペクトルによつても構造は一
致し、M+−OCH3=619を得た。
例2 スクロース6−アセテートの製造 スクロースメチル4,6−オルソアセテート(1g)を水
(10ml)に溶解した、溶液pH5。室温で1時間後、微量
のオルソアセテート(Rf0.62)と少しのスクロース(Rf
0.40)が残存して、Rf0.54の主成分はTLC(n-BuOH/EtOH
/H2O,5:3:2)により確認した。2時間後溶液をHPLC分析
して、特に保持時間3.46(スクロース)、4.66(スクロ
ース4−アセテート)および8.63(スクロース6−アセ
テート)を7:49:43の比で主成分を示した。ついでピリ
ジン(1ml)を水溶液に加えた。周期的HPLC分析によ
り、経時的にスクロース6−アセテート濃度は増加しか
つスクロース4−アセテートの減少を示した。4時間
後、スクロース:スクロース4−アセテート:スクロー
ス6−アセテートの比は11:3:85であつた。ついで溶液
を濃縮乾固し、残渣をピリジンに溶かし、真空下蒸発
し、シロツプを得、残存水分を除いた。シロツプ/ピリ
ジン(10ml)溶液を分子篩(4A)で一晩貯蔵し、例3に
記載のように塩素化用に供した。
例3 スクラロースの製造 塩化チオニル(1.52ml,8ME)をトリフエニルホスフイ
ンオキサイド(2.17g,3ME)/ピリジン(8ml)溶液に加
えた。例2のスクロース6−アセテート/ピリジン(約
1g/10ml)溶液を加える前に、上記溶液を50°に加熱し
た。混合物を95°に加熱し、この温度で1時間保つた。
ついで混合物は無水酢酸/ピリジンを使つて常法でアセ
チル化し、アセチル化反応混合物のTLC(ジエチルエー
テル/ペトロール4:1)はスクラロースペンタアセテー
トに相当する主成分、微量のテトラクロロガラクトスク
ローステトラアセテートおよびベースライン物質を示し
た。スクラロースペンタアセテートはメタノール中結晶
分離し、常法でナトリウムメトキシドにより処理して脱
アセチル化し、スクラロース(約0.5g)を得た。
例4 スクロースメチル4,6−オルソブチレートの製造(ヘキ
サアセテートとして特徴づけられる) スクロース(10g)/ピリジン(50ml)サスペンジヨ
ンを75℃、2.5時間トリメチルオルソブチレート(5.2m
l、1.1ME)とピリジニウムトシレート(500mg)で処理
した。生成溶液を30°に冷却し、無水酢酸(35ml)を加
え、温度を60°に上げた。60°で1時間後、溶液を室温
に冷却し、メタノール(20ml)を加えた。ついで溶液を
濃縮乾固し、酢酸エチル(50ml)を加え、シリカゲル
(メルク7734)で蒸発させた。
ジエチルエーテル/石油エーテル(2:1)40-60°で溶
離するカラムクロマトグラフイで純スクロースメチル4,
6−オルソブチレートヘキサアセテート(16.2g、82%)
を得、これをジエチルエーテル/石油エーテル(40-60
°)より再結した、mp84-85°;[α]+55.2°(C2.
0、CHCl3)。1 HNMR(CDCl3 類似の方法により、相当するトリアルキルオルソエス
テルを使つて、次の化合物を調製した。
スクロースメチル4,6−オルソアセテートヘキサアセテ
ート[4,6−o−(1−メトキシエチリデン)−スクロ
ースヘキサアセテート] 結晶、ジエチルエーテル/石油エーテル40-60° mp79-81°[α]+61.0°(c2.0,CHCl3 スクロースエチル4,6−オルソアセテートヘキサアセテ
ート[4,6−o−(1−エトキシエチリデン)−スクロ
ース・ヘキサアセテート 結晶、ジエチルエーテル/石油エーテル40-60° mp93-95°[α]+59.2°(c2.0,CHCl31 HNMR(CDCl3 スクロースメチル4,6−オルソベンゾエート、ヘキサア
セテート シロツプ[α]+40.8°(c2.0,CHCl31 HNMR(CDCl3例5 オルソエステルの分解 例1の方法を行なつた。ついで例の方法の代りに、次
の方法を分解工程について使つた。
オルソエステルの生成が完了すると、10容量%の水
(スクロースに対し8ME)を、p−トルエンスルホン酸
の中和をせずにDMF溶液に添加してpH5.5にした。これら
の条件下できれいにおきたオルソエステルの分解は少な
くとも1時間を要したが、かなりの量のスクロースを再
生できた。最初の4mgから6mg/gスクロースまで酸濃度を
増すことにより、分解時間は約20分に減少しかつスクロ
ースは余り再生しなかつた(第1表)。添加水が5%
(4ME)に半減した時、分解は殆んど急であつたが、ア
セテートの移行はゆつくりであつた。
例6 DMF中のアセテートの移行 例2の方法の改良法において、ピリジンの代りにt−
ブチルアミンを使用して、アセテートの移行を行なつ
た。2.5容量%を湿DMF溶液に添加して、pHを約9に上げ
た。これらの条件下で、アセテートの移行は1時間以内
に完了し、87%スクロース6−アセテート、3%スクロ
ース4−アセテートおよび10%スクロースが存在するこ
とをHPLCは示した(第2表)。t−ブチルアミンを1.25
%、又は水を5%に減少してかなりの移行を示し、スク
ロース濃度の増大となつた。移行が完了した時、溶液を
真空下濃縮し、粘稠なシロツプを得、トルエンで共蒸発
させてDMFをそこから除いた。
例7 スクロース6−アセテートの製造 例5と6の方法を次のように組み合わせた。
スクロース(50g)/DMF(200ml)の撹拌サスペンジヨ
ンは20℃でトリメチルオルソアセテート(21ml、1.1M
E)とp−トルエンスルホン酸(300mg)で処理した。2.
5時間後、水(20ml、8ME)をその澄明溶液に加えた。更
に20分後に、t−ブチルアミン(5ml)を加えた。混合
物を真空濃縮する前に、更に1時間撹拌を続けた。トル
エンで繰り返えし共蒸発させて、DMFを除き(トルエン:
2×200ml位)、無色濃厚シロツプとして粗スクロース6
−アセテートを得た。
収量約83g(25%DMF含有)。
大体の炭水化物組成:スクロース6−アセテート87
%、スクロース4−アセテート3%、スクロース10%。
全体の順序は、1.5ml/分で水性アセトニトリル(85%
v/v)で溶離し、Zorbax NH2カラムを使いかつニート反
応混合物2μlを注入して、HPLCによりモニターした。
例8 DMF中スクロース6−アセテートの100gバツチの製造 スクロース6−アセテートの5つのバツチ(100g)は
次の製造法を使つて製造した。
スクロース(100g、24時間/60℃で真空オーブン中に
て乾燥したアイシングシユガー)、トリメチルオルソア
セテート(48ml、1.25ME)およびp−トルエンスルホン
酸(600mg)をDMF(400ml)中懸濁し、混合物を室温(2
0-22℃)で3時間撹拌した。反応の進行はHPLCでモニタ
ーした。1.25時間後に反応混合物は澄明になつた。その
時点でHPLC用に最初に試料を採つた。最初の反応段階は
完全であると考えられた。その場合連続的トレースは区
別できないことが分つた。
この段階で水(40ml、8ME)を室温で反応混合物に加
え、4,6−オルソアセテート環を分解した。HPLCによれ
ば、オルソアセテート環をスクロース4−および6−ア
セテート混合物に分解するのは約1時間で完了した。
4−アセテートを6−位に移行させるために、t−ブ
チルアミン(10ml)を加え、反応混合物を周囲温度で1.
25時間撹拌した。HPLCによりこれ以上の移行がおきない
ことが分つた時、反応混合物を濃縮し(減圧下、80°−
85℃)、シロツプを得た。
生成物の平均分析:重量154g HPLCにより炭水化物組成 スクロース6−アセテート 84% スクロース4−アセテート 4% スクロース 12% 残留溶媒 DMF 24% メタノール 0.1% トルエン 1.0% 水 1.5% 生成物は塩素化用に使い、例3のようなスクラロース
を得た。
スクロース6−アセテートの試料はメタノールから結
晶化させて精製し、mp94-96℃、[α]+60.3°(c2.
0、H2O)13 C NMR(DMSO−d6)ppm を得た。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スクロースアルキル4,6−オルソアシレー
    ト。
  2. 【請求項2】一般式I (式中、R1はアルキル基であり、R2はアルキル基または
    アリール基である)を有する、請求項1記載の化合物。
  3. 【請求項3】スクロースメチル4,6−オルソアセテー
    ト、スクロースエチル4,6−オルソアセテート、スクロ
    ースメチル4,6−オルソブチレートおよびスクロースメ
    チル4,6−オルソベンゾエートから選択される、請求項
    1又は2記載の化合物。
  4. 【請求項4】スクロースを不活性有機溶媒溶液又はサス
    ペンジョンで酸触媒の存在下トリアルキルオルソアシレ
    ートと反応させることを特徴とする、スクロースアルキ
    ル4,6−オルソアシレートの製造法。
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