JP2016099304A - 質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法 - Google Patents

質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】糖タンパク質についての詳細な構造情報を取得する。
【解決手段】糖タンパク質又は糖ペプチドを分析する方法であって、a)MALDI法によるイオン化のためのターゲットプレート上に、分析対象である糖タンパク質又は糖ペプチドと、糖鎖を誘導体化する作用を有する液体マトリックスと、グリコシダーゼと、を混合した液滴を形成し、前記ターゲットプレート上で、前記グリコシダーゼの作用により糖タンパク質又は糖ペプチドから糖鎖を遊離させるとともに、遊離された糖鎖を前記液体マトリックスの作用により誘導体化することで、糖鎖と糖鎖が脱離したタンパク質又はペプチドとを含むサンプルを調製するサンプル調製ステップと、b)前記サンプル調製ステップにより前記ターゲットプレート上に調製されたサンプルをMALDI法によりイオン化して質量分析する分析実行ステップと、を有することを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI=Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)法を利用した質量分析を用いて、糖鎖修飾を受けたタンパク質やペプチドつまり糖タンパク質や糖ペプチドを同定したりその構造を解析したりするための分析方法に関する。
生体を構成するタンパク質の半分以上は糖鎖修飾を受けていると言われており、糖鎖修飾はタンパク質の構造や機能の調節に重要な役割を果たしている。また、近年の研究により、免疫疾患などの各種疾患と糖鎖構造異常や糖化異常との関連性も明らかになってきている。こうしたことから、糖タンパク質の構造解析は、生命科学や医療、医薬品開発など様々な分野において非常に重要である。こうした解析のために質量分析は非常に威力を発揮しており、質量分析を利用した様々な糖タンパク質分析手法が盛んに研究・開発されている。
質量分析を利用して糖タンパク質の構造解析を行う際には、多くの場合、質量分析装置を用い、糖タンパク質を断片化して得られる糖ペプチドに対する質量分析が行われるか、或いは、糖タンパク質から切り出された糖鎖に対する質量分析が行われる。
糖ペプチドを質量分析する場合には、トリプシンなどのプロテアーゼによる酵素消化処理により被検体である糖タンパク質の一部のペプチド結合を切断し、糖ペプチドとペプチドとの消化混合物を得る。こうした消化混合物をそのまま質量分析に供することもあるが、一般的には、液体クロマトグラフ(LC)により、糖ペプチドやペプチドを種類毎に分離しながら質量分析したり、或いは、LC等を用いて特定の糖ペプチドのみを分取し精製して得た試料を質量分析したりする。一方、糖鎖を質量分析する場合には、糖タンパク質又は糖ペプチドからグリコシダーゼにより糖鎖を遊離し、それを精製した後に質量分析を行う。
糖ペプチドの分析では、糖鎖の結合位置を含めた構造解析が可能である。これに対し、糖鎖の分析では、一つの糖タンパク質に複数の糖鎖修飾部位がある場合に、糖タンパク質から糖鎖を切り出すと、どの修飾部位由来の糖鎖であるのかが分からなくなる。そのため、糖鎖の結合位置を把握するためには、糖ペプチドを一旦分離(分取)し精製した後に糖鎖の切り出しを行うという面倒な作業が必要である。こうしたことから、最近では、糖タンパク質の構造解析の主流は、糖鎖レベルでの解析から糖ペプチドレベルでの解析へと移行しつつある。しかしながら、糖鎖レベルの解析では、糖ペプチドの解析では得られない糖鎖の詳細な構造情報を得ることができ、糖鎖の機能や作用の把握には糖鎖レベルの解析も不可欠である。
糖タンパク質や糖ペプチドから糖鎖を切り出す方法としては、インゲル消化(in-gel digestion)、インソリューション消化(in-solution digestion)、MALDI用のターゲットプレート上での消化(慣用的にオンターゲット消化(On-target digestion)と呼ばれるので、以下「オンターゲット消化」という)などの方法が知られている。
例えば糖鎖切り出しのためのペプチド:N−グリコシダーゼF(peptide-N-glycosidase F:PNGase F)のメーカー(Sigma-Aldrich社)の推奨プロトコルによれば、インソリューション消化では、糖タンパク質を変性させたのち、PNGase Fを加えて1〜3時間反応させ、100℃の温度で10分加熱して反応を止める必要がある。一方、インゲル消化では、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ったのちゲルを切り出し、脱染、乾固、PNGase Fの添加、及び30分の反応処理を行ったあとに水を加え、さらに1時間〜一晩程度反応させる。そして、糖鎖の回収の際には、水を加えて30分×3回の回収作業を行う必要がある。このように、インゲル消化やインソリューション消化ではいずれもかなりの手間と時間が掛かる。また、これらの作業をサンプルチューブ内で行い、質量分析装置での測定時にターゲットプレート上へと試料を移す必要があるため、試料のロスが大きい。
これに対し、オンターゲット消化は、インゲル消化やインソリューション消化などの方法に比べて作業が簡便で装置(設備)も簡素で済み、サンプルチューブからターゲットプレート上に試料を移す際の試料ロスもないという利点がある。
オンターゲット消化による糖鎖切り出しについてはいくつかの報告がなされており、大別すると、被検体を消化した後にMALDI用のマトリックスを添加する手法と、マトリックスの存在下で被検体を消化する手法とがある。後者の手法では、マトリックスが消化酵素の働きを阻害しないことが必要である。
前者の手法の一例として、非特許文献3には、エキソグリコシダーゼ(exoglycosidase)を用いてオンターゲット消化を行い、消化後にマトリックスとして2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB=2,5-Dihydroxybenzoic Acid)を添加してサンプルを調製する例が記載されている。この文献では、そうして調製したサンプルを質量分析することで糖鎖を検出している。
一方、後者の手法の一例として、非特許文献1には、マトリックスとしてシナピン酸(sinapinic acid)を用い、糖ペプチドをマトリックス存在下でエンドグリコシダーゼH(endogliycosidase H)及びペプチド:N−グリコシダーゼF(PNGase F)で消化する例が記載されている。この文献では、消化前の糖ペプチドを質量分析により検出するとともに、消化後に調製したサンプルを質量分析することで糖鎖が脱離したペプチド(脱グリコシル化ペプチド)を検出している。
また非特許文献2には、マトリックスとして6−アザ−2−チオチミン(6-aza-2-thiothymine)を用い、ピリジルアミン化した糖鎖をマトリックス存在下でエキソグリコシダーゼで消化する例が記載されている。この文献では、そうして調製したサンプルを質量分析することで糖鎖を検出している。
さらにまた非特許文献4には、マトリックスとして2−アザ−2チオチミン/塩化フェニルヒドラジニウム(2-aza-2-thiothymine(ATT)phenylhydrazine hydrochloride(PHN・HCL))を用い、糖タンパク質及び糖ペプチドをマトリックス存在下でペプチド:N−グリコシダーゼFで消化する例が記載されている。この文献では、そうして調製したサンプルを質量分析することで、糖ペプチド、PHN誘導体化した糖鎖、及び脱グリコシル化ペプチドを検出している。
特表2005−536759号公報 特開2012−251914号公報
ジェニファー・コランジェロ(Jannifer Colangelo)、「オン−ターゲット・エンドグリコシダーゼ・ダイジェスション・マトリックス−アシステッド・レーザー・デソープション/イオナイゼイション・マス・スペクトロメトリー・オブ・グリコペプタイズ(On-target endoglycosidase digestion matrix-assisted laser desorption/ionization mass spsectrometry of glycopeptides)」、ラピッド・コミュニケイション・マス・スペクトロメトリー(Rapid Commun. Mass Spectrom.)、2001年、Vol.15、pp.2284-2289 ヒルデガード・ゲイヤー(Hildegard Geyer)、ほか4名、「コア・ストラクチャーズ・オブ・ポリシアリレイテッド・グリカンズ・プレゼント・イン・ニューラル・セル・アドヒージョン・モレキュール・フロム・ニューボーン・マウス・ブレイン(Core structures of polysialylated glycans present in neural cell adhesion molecule from newborn mouse brain)」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Eur. J. Biochem.)、2001年、Vol.268、pp.6587-6599 ウィリー・モレール(Willy Morelle)、ほか1名、「シーケンシング・オブ・オリゴサッカライズ・デリバタイズド・ウィズ・ベンジラミン・ユージング・エレクトロスプレー・イオナイゼイション・クォドルポール・タイム・オブ・フライト−タンデム・マス・スペクトロメトリー(Sequencing of oligosaccharides derivatized with benzylamine using electrospray ionization quadrupole time of flight-tandem mass spectrometry)」、エレクトロフォレシス(Electrophoresis)、2004年、Vol.25、pp.2144-2155 エリカ・ラトバ(Erika Lattova)、ほか4名、「マトリックス−アシステッド・レーザー・デソープション/イオナイゼイション・オン−ターゲット・メソッド・フォー・ジ・インベスティゲイション・オブ・オリゴサッカライズ・アンド・グリコサイレイション・サイツ・イン・グリコペプタイズ・アンド・グリコプロテイン(Matrix-assisted laser desorption/ionization on-target method for the investigation of oligosaccharides and glycosylation sites in glycopeptides and glycoproteins)」、ラピッド・コミュニケイション・マス・スペクトロメトロー(Rapid Commun. Mass Spectrom.)、2007年、Vol.21、pp.16441-1650 マルコ・マンク(Marko Mank)、ほか2名、「2,5−ダイハイドロキシベンゾイック・アシッド・ブチルアミン・アンド・アザー・イオニック・リキッド・マトリックセズ・フォー・エンハンスド・マルディ−エムエス・アナリシス・オブ・バイオモレキュルズ(2,5-Dihydroxybenzoic Acid Butylamine and Other Ionic Liquid Matrixes for Enhanced MALDI-MS Analysis of Biomolecules)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal. Chem.)、2004年、Vol.76、pp.2938-2950 福山裕子(Yuko Fukuyama)、「リキッド・マトリックス・イン・マルディ−エムエス、アプリケーションズ・オブ・イオニック・リキッズ・イン・サイエンス・アンド・テクノロジー(Liquid Matrices in MALDI-MS, Applications of Ionic Liquids in Science and Technology)」、インテック(InTech)、2011年9月発行 福山裕子(Yuko Fukuyama)、ほか8名、「3−アミノキノリン/p−クマリック・アシッド・アズ・ア・マルディ・マトリックス・フォー・グリコペプタイズ、カーボハイドレーツ、アンド・フォスフォヘプタイズ(3-Aminoquinoline/p-Coumaric Acid as a MALDI Matrix for Glycopeptides, Carbohydrates, and Phosphopeptides)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal. Chem.)、2014年、Vol.86、pp.1937-1942
上述したように、糖タンパク質や糖ペプチドについて糖鎖レベルの解析を行うためには糖鎖を切り出す必要があり、オンターゲット消化による糖鎖切り出しは作業の簡便さや試料ロスの低減などの観点から有用な方法である。
しかしながら、上述の非特許文献1〜4に記載の手法ではいずれも、マトリックスとして固体マトリックスが用いられているため、試料成分とマトリックスとの混合結晶の状態が不均質になり易く、サンプル上の位置によるイオン生成量のばらつきが大きくなり易い。
また、非特許文献4に記載の手法では、糖鎖や脱グリコシル化ペプチドのみならず、糖ペプチドも検出可能であるものの、固体マトリックスを用いているために、ターゲットプレート上で酵素反応を遂行するべくターゲットプレート上に形成したサンプルを再溶解してから酵素を添加したり、或いは、酵素添加後の反応促進時に液滴が乾燥しないように37℃に加温した水を加えたりするなど、作業がかなり煩雑である。
こうした固体マトリックスを用いることの欠点の多くは、液体マトリックスを用いることで解決し得る。
液体マトリックスを用いたMALDI質量分析として、例えば非特許文献5には、ターゲットプレート上で、液体マトリックス(具体的には2,5−ジヒドロキシ安息香酸のブチルアミン塩)水溶液中での3’−シアリルラクトースの酵素的脱シアル化をモニタリングし、3’−シアリルラクトースから、シアル酸とラクトースとが生成したことを、MALDI質量分析で確認したことが記載されている。
そして、特許文献1には、液体マトリックスの使用例として、ターゲットプレート上での糖タンパク質の脱グリコシル化反応の過程及び進行を、液体マトリックス(具体的には、α−シアノ−4−ヒドロキシルケイ皮酸のブチルアミン塩、又は2,5−ジヒドロキシ安息香酸のブチルアミン塩)の存在下で調べることが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の手法で切り出された糖鎖をMALDI質量分析によって検出しようとしても、その検出感度は必ずしも高くない。そのため、こうした従来の手法では、十分な糖鎖構造情報が得られない場合があった。
即ち、固体マトリックスではなく液体マトリックスを使用しながら、簡単な作業で且つ短時間で糖鎖の切り出しを行い、糖鎖や脱グリコシル化ペプチドを高い感度で検出できる分析方法は従来存在しなかった。
また上述したように、糖タンパク質を解析する際に、糖鎖のみの解析では得られる情報が不十分な場合があるため、本来であれば糖ペプチドと糖鎖の両方を解析することが望ましい。しかしながら、固体マトリックスでなく液体マトリックスを使用しながら、ターゲットプレート上で一つの試料について糖ペプチドの良好な分析と糖鎖及び脱グリコシル化ペプチドの良好な分析とをともに行うことが可能な方法は従来提供されていなかった。
本発明はこうした課題を解決するために成されたものであり、その第1の目的は、液体マトリックスの存在下でオンターゲット消化を行うことで糖タンパク質や糖ペプチドから糖鎖を切り出し、MALDI質量分析により糖鎖や脱グリコシル化ペプチドを高い感度で検出することができる糖タンパク質の分析方法を提供することである。
また本発明の第2の目的は、ターゲットプレート上で一つの試料について糖ペプチドの良好な分析と糖鎖及び脱グリコシル化ペプチドの良好な分析とをともに行うことができる糖タンパク質の分析方法を提供することである。
これまで、本発明者らは、非特許文献6、7などに記載されているように、タンパク質をMALDI質量分析する際の液体マトリックスとして様々なものを開発し提案してきた。例えば非特許文献6では、3−アミノキノリン(3-Aminoquinoline)を含む液体マトリックスを用いることにより糖鎖を誘導体化(3−AQ化)することで、糖鎖の検出感度を向上できることを報告した。また、特許文献2、非特許文献7では、3−アミノキノリンとp−クマル酸を含む液体マトリックスを用いることで糖ペプチドを高い感度で検出できることを報告した。そうした経験と知見に基づき、本発明者らは様々な実験を繰り返し、上記のような液体マトリックスの存在下でも糖タンパク質や糖ペプチドから糖鎖を遊離させるための消化酵素が十分に機能し、しかも、そうした糖鎖の遊離と並行して又は糖鎖を遊離させたあとに、液体マトリックスに含まれる3−アミノキノリン等の作用により糖鎖の誘導体化が可能であることを見いだし、本発明に係る分析方法に想到した。
即ち、上記第1の目的を達成するために成された本発明の第1の態様の分析方法は、MALDI法による質量分析を用いて糖タンパク質又は糖ペプチドを分析する方法であって、
a)MALDI法によるイオン化のためのターゲットプレート上に、分析対象である糖タンパク質又は糖ペプチドと、糖鎖を誘導体化する作用を有する液体マトリックスと、グリコシダーゼと、を混合した液滴を形成し、前記ターゲットプレート上で、前記グリコシダーゼの作用により糖タンパク質又は糖ペプチドから糖鎖を遊離させるとともに、遊離された糖鎖を前記液体マトリックスの作用により誘導体化することで、糖鎖と糖鎖が脱離したタンパク質又はペプチドとを含むサンプルを調製するサンプル調製ステップと、
b)前記サンプル調製ステップにより前記ターゲットプレート上に調製されたサンプルをMALDI法によりイオン化して質量分析する分析実行ステップと、
を有することを特徴としている。
また上記第2の目的を達成するために成された本発明の第2の態様の分析方法は、MALDI法による質量分析を用いて糖タンパク質又は糖ペプチドを分析する方法であって、
a)MALDI法によるイオン化のためのターゲットプレート上に、分析対象である糖タンパク質又は糖ペプチドと、糖鎖を誘導体化する作用を有する液体マトリックスと、を混合したサンプルを調製する第1のサンプル調製ステップと、
b)前記第1のサンプル調製ステップにより前記ターゲットプレート上に調製されたサンプルをMALDI法によりイオン化して質量分析する第1の分析実行ステップと、
c)前記第1の分析実行ステップによる分析が終了したあとのサンプルにグリコシダーゼを加え、該グリコシダーゼの作用により糖タンパク質又は糖ペプチドから糖鎖を遊離させるとともに、遊離された糖鎖を前記液体マトリックスの作用により誘導体化することで、糖鎖と糖鎖が脱離したタンパク質又はペプチドとを含むサンプルを調製する第2のサンプル調製ステップと、
d)前記第2のサンプル調製ステップにより前記ターゲットプレート上に調製されたサンプルをMALDI法によりイオン化して質量分析する第2の分析実行ステップと、
を有することを特徴としている。
本発明の第1及び第2の態様の分析方法において、液体マトリックスは、単にMALDI用のマトリックスとして適しているのみならず、糖鎖を誘導体化する作用を有するものである必要がある。こうした液体マトリックスとしては、アミノキノリンイオンと酸性基含有物質イオンとを含む液体を用いることができる。特に、アミノキノリンとしては3−アミノキノリン又はその構造異性体が好ましく、一方、酸性基含有物質としてはp−クマル酸が好ましい。
また、グリコシダーゼとしては、ペプチド:N−グリカナーゼが好ましいが、エンド−β−N−アセチルグリコサミ二ダーゼでもよい。
本発明の第1の態様の分析方法では、ターゲットプレート上に、分析対象物質(糖タンパク質又は糖ペプチド)と液体マトリックスとグリコシダーゼとを混合した液滴が形成される。このとき、その混合の順序は特に問わない。つまり、分析対象物質と液体マトリックスとを混合し、これにグリコシダーゼを加えてもよいし、分析対象物質とグリコシダーゼとを混合し、これに液体マトリックスを加えてもよい。ただし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/p−クマル酸を使用した場合、サンプル中に酸が含まれているとMALDI質量分析時のイオンの検出感度が低下する。そこで、分析対象物質に酸が含まれる可能性がある場合には、この酸を完全に蒸発させた後に液体マトリックスを加えることが望ましい。
ターゲットプレート上に形成された分析対象物質と液体マトリックスとグリコシダーゼとの混合液滴を適度な温度環境下に置くと、グリコシダーゼの作用により糖タンパク質又は糖ペプチドから糖鎖が遊離する。また、遊離した糖鎖は液体マトリックス中の3−アミノキノリンにより誘導体化される。それら反応は全てターゲットプレート上で進行する。それによって、糖鎖のアミノキノリン誘導体と糖鎖が脱離したタンパク質又はペプチドとを主として含むサンプルがターゲットプレート上に調製されるから、このサンプルをMALDI質量分析することにより、糖鎖と脱グリコシル化タンパク質又は脱グリコシル化ペプチドを高い感度で検出することができる。
なお、MALDI質量分析を実行する装置は、MALDIイオン源を備えるものでありさえすれば、質量分離部の構成や方式は問わない。具体的には、MALDI飛行時間型質量分析装置、MALDIイオントラップ型質量分析装置、MALDIイオントラップ飛行時間型質量分析装置などを用いることができる。
一方、本発明の第2の態様の分析方法では、ターゲットプレート上に、分析対象物質(糖タンパク質又は糖ペプチド)と液体マトリックスとを混合した液滴を形成し、これを第1段階のサンプルとしてMALDI質量分析する。このときには糖タンパク質や糖ペプチドからの糖鎖の切り出しは行われていないので、糖タンパク質又は糖ペプチドが検出される。そうして得られる質量分析結果には、糖鎖の結合部位を示す情報が含まれる。こうして、第1段階の測定を終了したターゲットプレート上のサンプルにグリコシダーゼを追加し、第1の態様と同様に、これを適度な温度環境下に置く。測定によって分析対象物質の一部はサンプル中から消失するものの、サンプル中に残っている分析対象物質にグリコシダーゼが作用し、糖タンパク質又は糖ペプチドから糖鎖が遊離する。また、サンプル中に残っている液体マトリックス中の3−アミノキノリンによって糖鎖は誘導体化される。測定後のサンプルに対しても、こうした糖鎖の遊離と誘導体化が行えることは実験的に確認されている。
第2のサンプル調製ステップにおいて、糖鎖のアミノキノリン誘導体と糖鎖が脱離したタンパク質又はペプチドとを主として含む第2段階のサンプルが調製されるから、このサンプルをMALDI質量分析することにより、糖鎖と脱グリコシル化タンパク質又は脱グリコシル化ペプチドを高い感度で検出することができる。分析対象物質と液体マトリックスとの混合から、最終的な糖鎖等の検出のための質量分析までの全ての作業は、ターゲットプレート上で行われる。こうして、本発明の第2の態様の分析方法によれば、ターゲットプレート上に載せた分析対象物質に対する2段階の測定によって、糖タンパク質又は糖ペプチドについての質量分析結果と、その糖タンパク質又は糖ペプチドから遊離した糖鎖及び脱グリコシル化タンパク質又は脱グリコシル化ペプチドについての質量分析結果とを得ることができる。
本発明に係る第1及び第2の態様の糖タンパク質の分析方法では、
糖タンパク質をペプチダーゼにより酵素消化する酵素消化ステップと、
前記酵素消化ステップにより得られた混合物中の成分を液体クロマトグラフィを用いて分離する分離ステップと、
をさらに有し、前記液体クロマトグラフィからの溶出液を分取又は分画した液体中の糖タンパク質又は糖ペプチドを、前記サンプル調製ステップ又は前記第1のサンプル調製ステップにおける分析対象の糖タンパク質又は糖ペプチドとしてサンプルを調製するようにしてもよい。
この分析方法によれば、酵素消化によって得られた様々な糖ペプチドを分離して別々に測定することができるので、質量分析結果の解析が容易になる。また、糖ペプチドを同定するために、質量分析結果だけでなく液体クロマトグラフィの溶出時間(保持時間)の情報も利用することができるので、同定の精度が向上する。
また上記分析方法では、
MALDI用スポッタを用い、前記液体クロマトグラフィからの溶出液を分画してターゲットプレート上にスポッティングする分画ステップをさらに有し、
前記分画ステップによりターゲットプレート上にスポッティングされた液体中の糖タンパク質又は糖ペプチドを、前記サンプル調製ステップ又は前記第1のサンプル調製ステップにおける分析対象の糖タンパク質又は糖ペプチドとしてサンプルを調製するようにしてもよい。
この分析方法によれば、分離された糖ペプチドを含む溶出液を自動的に分画してターゲットプレート上の異なる位置にスポッティングすることができるので、手作業に頼らず、効率的にサンプルを調製することができる。
また、上記分析方法では、上記理由により、上記分画ステップによりターゲットプレート上にスポッティングされた液体を一旦乾燥させたあとに液体マトリックスを加え、サンプルを調製するようにするとよい。
液体クロマトグラフィに使用される移動相には酸が含まれることが多いが、上記方法によれば、移動相中の酸を完全に蒸発させてサンプルを調製することができる。それによって、酸の存在による検出感度の低下を回避することができる。
本発明の第1及び第2の態様による糖タンパク質の分析方法によれば、オンターゲット消化により糖タンパク質や糖ペプチドから糖鎖を切り出し、さらにその糖鎖を誘導体化してサンプルを調製することができる。したがって、糖鎖を検出するための前処理の作業が簡便に行え、そのための時間も短くて済む。また、インゲル消化やインソリューション消化などのようにサンプルチューブからターゲットプレート上に試料を移す必要もないので、試料ロスも抑えることができる。さらにまた、糖鎖を誘導体化してMALDI質量分析しているので、糖鎖を高い感度で検出することができる。一般に、質量電荷比が大きい糖ペプチドはMALDI質量分析において検出感度が低く検出されにくいが、これから取り出された糖鎖は、特にネガティブイオン化モードを用いることで高い感度での検出が可能となる。そのため、本発明に係る分析方法によれば、糖ペプチドのレベルでは検出できないような試料についても、糖鎖レベルで検出できる可能性が高まる。
また特に本発明の第2の態様による糖タンパク質の分析方法によれば、糖鎖の結合部位の情報を含む糖タンパク質又は糖ペプチドの質量分析結果と、糖鎖の詳細構造情報を含む糖鎖の質量分析結果とを共に得ることができるので、糖タンパク質や糖ペプチドの構造を詳細に解析することができる。また、そうした複数の分析を実質的に一つのサンプルを用いて行うことができるので、用意する試料の量が少なくて済む。また、糖ペプチド分析と糖鎖分析それぞれのための前処理を別々に行う必要もないので、分析の準備作業の手間も軽減できる。
さらにまた本発明に係る分析方法において液体クロマトグラフィによる成分分離を利用した場合には、分離された糖ペプチド由来の糖鎖を質量分析することで、検出された糖鎖がどの糖ペプチド由来のものであるかを把握することができる。また、液体クロマトグラフィにおいて分取された試料の分画時間を把握し、MALDI質量分析によって各試料に対する糖鎖のプロファイル(マススペクトル)を取得すれば、仮に各試料に対するMALDI質量分析によって糖ペプチドが検出できない場合であっても、糖鎖の検出結果から、或る溶出時間における糖ペプチドの存在を確認することができる。これによって、血漿や尿中に含まれる存在量の少ない糖ペプチドも検出することが可能となる。
さらにまた、プロテアーゼ消化した糖タンパク質を液体クロマトグラフィにより分離し、その溶出液をスポッティングして調製した全サンプルに対してグリコシダーゼ消化前と消化後のマススペクトルをそれぞれ取得して比較することにより、未知の糖ペプチドを探索することが可能である。この方法は、従来行われている、マススペクトル上の全てのピークに対するMS/MS分析を行って糖ペプチドを探索する方法に比べて、実験、解析共に簡便である。また、上述したように、糖ペプチドに比べて糖鎖の検出感度は高いため、上記分析方法によれば、MS/MS分析できないような低強度のピークしか得られない糖ペプチドやピークとして確認できないようなごく微量の糖ペプチドも検出できる可能性がある。
本発明の一実施例である糖タンパク質の分析方法の作業及び処理の手順を示すフローチャート。 本実施例の分析方法を実施するためのLC−MALDI質量分析システムの概略構成図。 実験に用いた糖タンパク質であるトランスフェリン及びリボヌクレアーゼBとその糖ペプチドの詳細情報を示す図。 (a)はトランスフェリンに対する実測のマススペクトル、(b-1)はトランスフェリン、液体マトリックス(3−AQ/CA)、及びペプチド:N−グリコシダーゼFをターゲットプレートに載せオンターゲット消化して調製したサンプルに対する実測のマススペクトル、(b-2)は(b-1)中の糖鎖フラグメントイオン(m/z 2056.8)をプリカーサイオンとした実測のMS2スペクトル。 (a)はトランスフェリンに対する実測のマススペクトル(図4(a)と同じ)、(b)は測定終了後の(a)のサンプルにペプチド:N−グリコシダーゼFを添加しオンターゲット消化して調製したサンプルに対する実測のマススペクトル、(c)はトランスフェリン、液体マトリックス(3−AQ/CA)、及びペプチド:N−グリコシダーゼFを一度にターゲットプレートに載せてオンターゲット消化して調製したサンプルに対する実測のマススペクトル(図4(b-1)と同じ)。 リボヌクレアーゼBに対する実測のベースピーククロマトグラム。 リボヌクレアーゼB由来の分画試料をペプチド:N−グリコシダーゼFで消化する前のサンプルに対する実測のマススペクトル。 リボヌクレアーゼB由来の分画試料をペプチド:N−グリコシダーゼFで消化する前のサンプルに対する実測のマススペクトル。 (a)はリボヌクレアーゼB由来の分画試料をペプチド:N−グリコシダーゼFで消化する前のサンプルに対する実測のマススペクトル(図7(a)と同じ)、(b)はペプチド:N−グリコシダーゼFで消化した後のサンプルに対する実測のマススペクトル。
以下、本発明に係る糖タンパク質分析方法の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例の糖タンパク質分析方法における作業及び処理の手順を示すフローチャート、図2は本実施例の糖タンパク質分析方法を実施するために用いられる液体クロマトグラフ(LC)−MALDI質量分析システムの一例の概略構成図である。
まず、図2により、このLC−MALDI質量分析システムの構成及び動作の概要を説明する。
このLC−MALDI質量分析システムは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)1と、MALDI用スポッタ2と、質量分析装置3と、を備える。
HPLC1では、送液ポンプ12により移動相容器11から吸引された移動相が略一定速度でインジェクタ13を経てカラム14に送給される。所定のタイミングでインジェクタ13から移動相中に試料が注入されると、試料は移動相に押されてカラム14に送り込まれる。そして、カラム14を通過する間に試料中の成分(ここでは糖ペプチドやペプチド)が分離され、時間差を有してカラム14の出口から溶出する。
MALDI用スポッタ2は、バルブ21と、ノズル22と、該ノズル22又はターゲットプレートPを載せたテーブル23のいずれか一方又は両方をXーYの二軸方向に移動させる駆動部24と、を備え、HPLC1で分離された成分を含む溶出液を所定の時間間隔で分取・分画し、ターゲットプレートP上のそれぞれ異なる位置(ウェルや親水性アンカーなど)に滴下する。したがって、分画時間(一つの位置に溶出液を滴下する時間)を適切に定めると、通常、ターゲットプレートP上の異なる位置にスポッティングされた溶出液がそれぞれ異なる成分を含むようにすることができる。
質量分析装置3は、MALDIイオン源と、3次元四重極型のイオントラップと、飛行時間型質量分析装置と、を備える。即ち、試料台31上に置かれたターゲットプレートP’上のサンプルに対しレーザ光源32からパルス状のレーザ光が照射される。これによって、サンプルから発生したイオンは高周波電場の作用によりイオントラップ33の内部に一旦捕捉される。図示しないが、イオントラップ34の内部には衝突誘起解離(CID)ガスが導入可能となっており、必要に応じて、イオントラップ33の内部で低エネルギCIDを行い、イオンを解離させることができる。イオントラップ33から所定のタイミングで一斉に射出されたイオンはドリフトチューブ34内に形成されている飛行空間に導入され、リフレクタ35により形成される反射電場で反射されて最終的に検出器36に達する。イオントラップ33から射出されたイオンは質量電荷比に応じた速度で飛行し、質量電荷比が小さい順に検出器36に到達する。したがって、イオントラップ33から射出された時点を起点とする各イオンの飛行時間は質量電荷比に依存しており、検出器36による検出信号を受けたデータ処理部37では、飛行時間を質量電荷比に換算することでマススペクトルを得ることができる。
なお、図2では、MALDI用スポッタ2において溶出液がスポッティングされるターゲットプレートを符号Pで、質量分析装置3において試料台31上に置かれたターゲットプレートを符号P’で示しているが、この符号は便宜上付したもので、これらターゲットプレートは同種のものである。MALDI用スポッタ2においてスポッティングされた溶出液中の成分を含んでサンプルが形成されたターゲットプレートPは、MALDI用スポッタ2から質量分析装置3の試料台31上に移送され、分析に供される。このターゲットプレートの移送は分析者が行ってもよいし、自動的に搬送されるようにしてもよい。
次に、本実施例の糖タンパク質分析方法における作業及び処理の手順を、図1に従って説明する。ここでは、解析対象である被検体は糖タンパク質である。
まず、被検体である糖タンパク質をトリプシン等のペプチダーゼ(消化酵素)を用いて消化することで、タンパク質のペプチド結合の一部を切断し断片化する。これによって、糖ペプチドとペプチドとの消化混合物が得られる(ステップS1)。
次に、上記消化混合物を試料として、図2に示したLC−MALDI質量分析システムのHPLC1においてインジェクタ13から試料を移動相中に注入する。そして、試料に含まれる糖ペプチドやペプチドをカラム14により分離する。MALDI用スポッタ2では、カラム14からの溶出液を所定の分画時間で以て分画し、ターゲットプレートP上の異なるウェルに順次滴下する(ステップS2)。分画時間は適宜に定めることができるが、一つの分画試料に含まれる糖ペプチドやペプチドの種類が少ない(好ましくは1種類)ことが望ましい。
ターゲットプレートP上の各ウェルに溶出液を滴下して液滴を形成したあと、これを風乾して移動相等を揮発させる(ステップS3)。移動相には酸が含まれることがよくあるが、そうした理由により溶出液に酸が含まれる場合であっても、風乾によって完全に酸を蒸発させることができる。酸を除去する理由は後述する。
そのあと、液体マトリックスとして例えば3−アミノキノリン/p−クマル酸(3−AQ/CA)を所定量ずつターゲットプレートP上の各ウェルに滴下し、第1段階のサンプルを調製する(ステップS4)。このときのターゲットプレートP上のサンプルは主として糖ペプチド又はペプチドを含む。ここで使用する液体マトリックスは、紫外波長域〜可視波長域の光を吸収することでMALDI法によるイオン化の際のマトリックスとして機能するのみならず、糖鎖を誘導化する(ラベル化する)作用を有するイオンを含むものである。
続いて、ステップS4において複数のサンプルが調製されたターゲットプレートP’を質量分析装置3の試料台31上にセットし、各サンプルにレーザ光を照射して順次質量分析を実行する(ステップS5)。これにより、データ処理部37では、複数のサンプルのそれぞれについて、糖ペプチド又はペプチドの構造情報を含むマススペクトル(MSnスペクトルを含む)が得られる。
液体マトリックスとして3−AQ/CAを使用した場合、サンプル中に酸が含まれているとイオンの検出感度が低下するが、この分析方法の手順では、試料に含まれる酸を風乾によって完全に蒸発させた後に液体マトリックスを添加している。そのため、試料に含まれる酸の影響を受けることなく、高い検出感度を達成することができる。
ステップS5において全サンプルに対する測定が終了したならば、ターゲットプレートP’を質量分析装置3から取り出し、該ターゲットプレートP’上の各ウェルに、糖鎖切り出し用の消化酵素として、例えばペプチド:N−グリコシダーゼF(PNGase F)を所定量添加する。そして、このターゲットプレートP’を約37℃の温度雰囲気中に数分〜数十分間放置することで、酵素反応を促進させる。これによって、ターゲットプレートP’上で糖ペプチドから糖鎖を遊離させる(ステップS6)。この酵素反応はターゲットプレート上で行われるから、オンターゲット消化である。
上記条件の下で酵素反応を促進させたあと、ターゲットプレートP’をより高温(例えば約75℃)の温度雰囲気中に所定時間置く。これによってPNGase Fの消化作用が消失し、糖ペプチドからの糖鎖の遊離が止まる。一方、液体マトリックス(3−AQ/CA)に含まれる3−アミノキノリンの作用により、糖ペプチドから遊離された糖鎖の誘導体化(3−AQ化)が促進される(ステップS7)。こうして、ターゲットプレートP’上の各ウェルには、主として糖ペプチド由来の糖鎖及び糖鎖が脱離したペプチド(脱グリコシル化ペプチド)が含まれる第2段階のサンプルが調製される。
この第2段階のサンプルが調製されたターゲットプレートP’を質量分析装置3の試料台31上に再度セットし、各サンプルにレーザ光を照射して順次質量分析を実行する(ステップS8)。これにより、データ処理部37では、複数のサンプルのそれぞれについて、糖鎖及び脱グリコシル化ペプチドの構造情報を含むマススペクトル(MSnスペクトルを含む)が得られる。
そして、ステップS5において得られた糖ペプチド及びペプチドの構造情報を含むマススペクトル、並びに、ステップS8において得られた糖鎖及び脱グリコシル化ペプチドの構造情報を含むマススペクトル、の両方を解析することにより、被検体に含まれる糖タンパク質を同定したりその構造を推定したりする(ステップS9)。
本発明に係る糖タンパク質分析方法において用いられる液体マトリックスは、室温で液体状であるマトリックスである。MALDI用の液体マトリックスとしては様々なものが知られているが、ここで使用可能であるのは、上述したように糖鎖を誘導体化する作用を有するものである。こうした液体マトリックスとしては、アミノキノリンと酸性基含有物質とから構成される液体物質(アミノキノリン/酸性基含有物質)を用いることができる。
アミノキノリンとしては、具体的には、3−アミノキノリン及びその構造異性体が用いられる。当該構造異性体には、2−アミノキノリン、4−アミノキノリン、5−アミノキノリン、6−アミノキノリン、7−アミノキノリン、及び8−アミノキノリンが含まれる。
一方、酸性基含有物質は特に限定されず、酸性基含有有機物質でも酸性基含有無機物質であってもよい。酸性基含有有機物質としては、例えば、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、p−クマル酸、ケイ皮酸、α−シアノ−3−ヒドロキシケイ皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニルピルビン酸、3−ヒドロキシピコリン酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸(シナピン酸)、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸(フェルラ酸)、カフェイン酸(3,4−ジヒドロキシケイ皮酸)、5−メトキシサリチル酸、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、ニコチン酸、ピコリン酸、3−アミノピコリン酸、3−ヒドロキシピコリン酸、2−アミノ安息香酸、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−アザ−2−チオチミン、1,4−ジヒドロ−2−ナフトエ酸、3−インドールアクリル酸、インドール−2−カルボン酸、チオグリコール酸、安息香酸などから選択することができる。好ましくは、p−クマル酸やα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、又はシナピン酸がよい。また、酸性基含有無機物質としては、例えば、リン酸、ホウ酸、硫酸、ケイ酸などから選択することができる。
糖鎖切り出しのための消化酵素であるグリコシダーゼとしては、糖鎖の主要部分を分解することなく糖ペプチドから糖鎖を切り出すものである必要がある。こうしたグリコシダーゼとして、上述したペプチド:N−グリコシダーゼF(PNGase F)のほか、エンド−β−N−アセチルグリコサミ二ダーゼ(ENGase)、即ち、Endo−H、Endo−Hf、Endo−A、Endo−Mなどが好ましい。
なお、図1に示した分析方法は、被検体が糖タンパク質である場合であるが、精製された糖ペプチドが被検体として与えられる場合には、ステップS1及びステップS2の分離工程を省き、糖ペプチドをターゲットプレート上にスポッティングしたうえでステップS3以降の処理を進めればよい。
また、例えば糖ペプチドが殆ど検出されないことが予め分かっている場合や糖ペプチドの質量分析結果が不要である場合には、ステップS5の測定は省くことができる。その場合には、ターゲットプレート上にスポッティングされた溶出液を風乾したあとに、所定量の液体マトリックス(3−AQ/CA)と所定量のペプチド:N−グリコシダーゼを添加して、糖鎖検出用のサンプルを調製すればよい。この場合、液体マトリックス、グリコシダーゼの順に添加しても、逆にグリコシダーゼ、液体マトリックスの順に添加しても構わない。後述の実験例で説明するように、糖ペプチドの検出のための質量分析(つまりはステップS5)を行う手順でも、これを省略する手順のいずれでも、ほぼ同様の糖鎖由来のピークが現れるマススペクトルを得ることができる。
[実験例1:オンターゲット消化による糖鎖切り出しの検証]
この実験例1は、オンターゲット消化による糖鎖切り出しが可能であることを確認するための実験である。
実験例1では、液体マトリックスとして、3−アミノキノリンイオンとp−クマル酸イオンとを含む液体(3−AQ/CA)を用い、ターゲットプレート上で糖ペプチドをペプチド:N−グリコシダーゼ(PNGase F)を用いて酵素消化(オンターゲット消化)することで糖鎖を遊離し、その糖鎖をMALDI質量分析装置を用いて検出できることを確認した。被検体としては、コンプレックス型糖鎖を持つ糖タンパク質であるトランスフェリンのトリプシン消化物から精製した糖ペプチドTf−GP1を用いた。この糖タンパク質及び糖ペプチドの質量電荷比や構造は図3(a)に示す通りである。
1[pmol/μL]濃度の1[μL]の糖ペプチドTf−GP1に0.5[μL]の液体マトリックス(3−AQ/CA)を添加し、オンターゲット消化前のサンプルを調製した。このサンプルをMALDI質量分析装置(島津製作所製:AXIMA-Resonance)を用い負イオン化モードで測定することにより、マススペクトルを取得した。図4(a)はこの実測のマススペクトルである。図4(a)では、糖ペプチド由来のイオンと脱シアル酸化が起きたイオンが主要なピークとして十分に高い感度で観測できている。
一方、1[pmol/μL]濃度の1[μL]の糖ペプチドTf−GP1と0.05[U/μL]濃度の1[μL]のグリコシダーゼ(PNGase F)をターゲットプレート上の同じ位置に滴下した。そこに、0.5[μL]の液体マトリックス(3−AQ/CA)を加えた。こうして液滴であるサンプルを形成したターゲットプレートを37℃に保ったインキュベータ内に2時間置くことで、グリコシダーゼによる消化反応を促進させた。なお、この反応時間は30分程度まで短くしても問題はないことを確認済みである。また、実際には後述の工程で高温まで昇温する過程でも反応が促進されるため、37℃に維持する時間がゼロでも問題ないと想定される。
次に、消化反応促進後のターゲットプレートを約75℃に保ったヒートブロック上で1時間加熱し、グリコシダーゼ(PNGase F)による酵素反応を止めると共に、糖鎖を3−AQ化(誘導体化)した。そして、ターゲットプレートを室温になるまで冷却したあと、MALDI質量分析装置を用い負イオン化モードで測定を行った。図4(b−1)はこの実測のマススペクトルである。図4(b−1)では、図4(a)では観測されていた糖ペプチド由来のピークが消失し、その代わりに、糖鎖のフラグメントイオンと脱グリコシル化ペプチドのフラグメントイオンとが顕著に観測される。これにより、液体マトリックス(3−AQ/CA)の存在下でもグリコシダーゼ(PNGase F)による消化が十分に遂行されたことが確認できた。
図4(b−2)は、図4(b−1)中のm/z 2056.8である糖鎖フラグメントイオンをプリカーサイオンとして取得したMS2スペクトルである。この図4(b−2)には、糖鎖のフラグメントイオンのピークが多数検出されている。
[実験例2:糖ペプチドと糖鎖との逐次的検出]
糖ペプチドTf−GP1に対しオンターゲット消化を行わずに、液体マトリックス(3−AQ/CA)を加えて調製したサンプル(つまりは第1段階のサンプル)を、MALDI質量分析装置により測定した。図5(a)はこの実測のマススペクトルで、図4(a)と同じものである。その測定が終了した後のサンプルにグリコシダーゼ(PNGase F)を添加し、糖ペプチドを消化して糖鎖の切り出しを行うことで調製したサンプル(つまりは第2段階のサンプル)をMALDI質量分析装置により再度測定した。図5(b)はこの実測マススペクトルである。また、図5(c)は図4(b−1)と同じ、つまりは、実験例1で説明した、当初からグリコシダーゼと液体マトリックスとを糖ペプチドに加えてオンターゲット消化を行った場合に得られるマススペクトルである。
図5(b)と(c)とを比較するとほぼ同じプロファイルであり、図5(b)でも、糖鎖及び脱グリコシル化ペプチドのフラグメントイオンピークが十分な強度で検出されている。このことから、糖ペプチドを一旦測定したあとにグリコシダーゼを添加した場合でも該グリコシダーゼによる消化、つまりは糖鎖の遊離が適切に遂行されており、当初からグリコシダーゼと液体マトリックスとを糖ペプチドに加えた場合と同程度に、糖鎖及び脱グリコシル化ペプチドの検出が行えることが確認できた。
[実験例3:LC−MALDI質量分析システムを用いた分画試料の測定]
図2に示したようなLC−MALDI質量分析装置を用いて人手を介さない自動分析を行うためには、MALDI用スポッタ2において形成したサンプルに対し質量分析装置3で確実にレーザ光を照射して分析することが必要であり、そのためには、ターゲットプレートP(P’)上でのサンプルの位置を正確に定める必要がある。そこで、この実験例3では、ターゲットプレート上に親水性アンカーを予め形成しておき、そのアンカー上にサンプルを形成するようにした。即ち、ターゲットプレートの表面に撥水加工を施し、該ターゲットプレート上にレーザ光によって適当なサイズ(今回の場合には400[μm]径)の親水性アンカーを形成した。
上記ターゲットプレートをMALDI用スポッタ2にセットして分画動作を実行すると、HPLC1からの溶出液はターゲットプレートP上に滴下されるが、アンカー以外の部分は撥水性を有するため、溶出液は親水性アンカー上に凝集される。つまり、スポッティングの位置が多少ずれたとしても、ターゲットプレート上でサンプルが形成される位置は正確にアンカーの位置となる。そのため、ターゲットプレート上でのサンプルの位置は正確に定まることになり、質量分析装置3では、サンプルの形成位置を例えば画像認識等で識別することなく、単にターゲットプレート上の位置情報のみに基づいてレーザ光照射位置を決めることができる。これによって、MALDI用スポッタ2から質量分析装置3の試料台31上へのターゲットプレートの自動的な移送を含めた自動分析が可能となる。なお、上述したように、試料中に酸が含まれる場合の検出感度の低下を回避するため、液体マトリックス(3−AQ/CA)は溶出液と同時に滴下するのではなく、溶出液を乾固させることによって酸を完全に蒸発させた後に全ウェルに滴下するようにした。
上記の方法で、ハイマンノース型糖タンパク質であるリボヌクレアーゼB(RNase B)の分析を行った。この糖タンパク質及び糖ペプチドの質量や構造は図3(b)に示す通りである。
被検体であるリボヌクレアーゼBをトリス(2−カルボキシエチル)フォスフィンハイドロクロライド(TCEP)により還元しヨードアセトアミドによるアルキル化を行ったあと、エンドプロテイナーゼLys−Cにより酵素消化し、糖ペプチドとペプチドとの消化混合物を得た。0.2[μg](14.6[pmol]、1[μL])の消化混合物を試料とし、HPLC1においてインジェクタ13から移動相中に試料を注入した。移動相としては、0.1%のトリフルオロ酢酸水溶液(移動相A)及び0.1%のトリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液(移動相B)を用い、流速10[μL/min]で移動相B:5%−40%まで30分間のグラジエント分析を行うことで、試料中の成分を分離した。カラムはインタクト社製のUnison UK−C18 3μm、0.5×150[mm]を用いた。
MALDI用スポッタ2でのスポッティング量は12秒/ウェルで1ウェル当たり2[μL]とした。ターゲットプレートP上でスポッティングした溶出液を風乾したあと、液体マトリックス(3−AQ/CA)を0.5[μL]ずつ各ウェルへ滴下してサンプルを調製し、このサンプルをMALDI質量分析装置において正イオン化モードで分析することによりマススペクトルを得た。図7、図8は、リボヌクレアーゼB由来の、分画時間が相違する複数のサンプルに対する実測マススペクトルである。また図6は、得られたイオン強度に基づいて作成されたベースピーククロマトグラムである。図6中に示しているように、成分分離の初期段階においてハイマンノース型の糖ペプチド由来のピークが観測され(図7a)、b)、c))、その後に、糖鎖修飾を受けていないペプチド由来のピークが観測される(図7d)、e)、図8f)、g)、h))。なお、図6中のa)〜h)の符号は、図7、図8中の符号に対応している。
[実験例4:分画試料に対しオンターゲット消化をしたサンプルの測定]
実験例3において糖ペプチドの測定を終了したターゲットプレート上の各ウェルに、0.05[U/μL]濃度の1[μL]のグリコシダーゼ(PNGase F)を添加し、37℃の温度雰囲気に30分間放置してグリコシダーゼの酵素反応を促進させた。引き続き、ターゲットプレートを75℃に保ったヒートブロック上で1時間加熱することで、グリコシダーゼの酵素反応を止めると共に遊離した糖鎖を3−AQ化した。そのあと、ターゲットプレートを室温まで冷却し、MALDI質量分析装置において負イオン化モードで測定を行いマススペクトルを取得した。
図9(a)は、分画時間10.12−10.32分の分画試料をグリコシダーゼにより消化する前のサンプルに対するマススペクトルである。図9(b)は同じ分画試料についてのグリコシダーゼによる消化後のサンプルに対するマススペクトルである。図9(a))と(b)とを比較すれば明らかなように、グリコシダーゼを用いた消化による糖鎖切り出しによって、糖ペプチド由来のピークが消失する一方、糖鎖のフラグメントイオン由来のピークが明確に出現している。
この実験結果から、LC−MALDI質量分析装置を用いた成分分離、スポッティング、及び自動質量分析という手順を経た、本実施例の糖タンパク質分析方法においては、第1段階のサンプルでは、被検体である糖タンパク質由来の糖ペプチドが高い感度で検出され、第2段階のサンプルでは、同じ糖タンパク質由来の糖鎖や脱グリコシル化ペプチドが高い感度で検出されることが確認できる。即ち、図1に示した手順に従った分析方法において、糖ペプチドと、糖鎖及び脱グリコシル化ペプチドとが共に高い感度で検出可能であるということができる。
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加等を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…HPLC
11…移動相容器
12…送液ポンプ
13…インジェクタ
14…カラム
2…MALDI用スポッタ
21…バルブ
22…ノズル
23…テーブル
24…駆動部
3…質量分析装置
31…試料台
32…レーザ光源
33…イオントラップ
34…ドリフトチューブ
35…リフレクタ
36…検出器
37…データ処理部
P、P’…ターゲットプレート

Claims (8)

  1. MALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)法による質量分析を用いて糖タンパク質又は糖ペプチドを分析する方法であって、
    a)MALDI法によるイオン化のためのターゲットプレート上に、分析対象である糖タンパク質又は糖ペプチドと、糖鎖を誘導体化する作用を有する液体マトリックスと、グリコシダーゼと、を混合した液滴を形成し、前記ターゲットプレート上で、前記グリコシダーゼの作用により糖タンパク質又は糖ペプチドから糖鎖を遊離させるとともに、遊離された糖鎖を前記液体マトリックスの作用により誘導体化することで、糖鎖と糖鎖が脱離したタンパク質又はペプチドとを含むサンプルを調製するサンプル調製ステップと、
    b)前記サンプル調製ステップにより前記ターゲットプレート上に調製されたサンプルをMALDI法によりイオン化して質量分析する分析実行ステップと、
    を有することを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
  2. MALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)法による質量分析を用いて糖タンパク質又は糖ペプチドを分析する方法であって、
    a)MALDI法によるイオン化のためのターゲットプレート上に、分析対象である糖タンパク質又は糖ペプチドと、糖鎖を誘導体化する作用を有する液体マトリックスと、を混合したサンプルを調製する第1のサンプル調製ステップと、
    b)前記第1のサンプル調製ステップにより前記ターゲットプレート上に調製されたサンプルをMALDI法によりイオン化して質量分析する第1の分析実行ステップと、
    c)前記第1の分析実行ステップによる分析が終了したあとのサンプルにグリコシダーゼを加え、該グリコシダーゼの作用により糖タンパク質又は糖ペプチドから糖鎖を遊離させるとともに、遊離された糖鎖を前記液体マトリックスの作用により誘導体化することで、糖鎖と糖鎖が脱離したタンパク質又はペプチドとを含むサンプルを調製する第2のサンプル調製ステップと、
    d)前記第2のサンプル調製ステップにより前記ターゲットプレート上に調製されたサンプルをMALDI法によりイオン化して質量分析する第2の分析実行ステップと、
    を有することを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
  3. 請求項1又は2に記載の質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法であって、
    糖タンパク質をペプチダーゼにより酵素消化する酵素消化ステップと、
    前記酵素消化ステップにより得られた混合物中の成分を液体クロマトグラフィを用いて分離する分離ステップと、
    をさらに有し、前記液体クロマトグラフィからの溶出液を分取又は分画した液体中の糖タンパク質又は糖ペプチドを、前記サンプル調製ステップ又は前記第1のサンプル調製ステップにおける分析対象の糖タンパク質又は糖ペプチドとしてサンプルを調製することを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
  4. 請求項3に記載の質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法であって、
    MALDI用スポッタを用い、前記液体クロマトグラフィからの溶出液を分画してターゲットプレート上にスポッティングする分画ステップをさらに有し、
    前記分画ステップによりターゲットプレート上にスポッティングされた液体中の糖タンパク質又は糖ペプチドを、前記サンプル調製ステップ又は前記第1のサンプル調製ステップにおける分析対象の糖タンパク質又は糖ペプチドとしてサンプルを調製することを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
  5. 請求項4に記載の質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法であって、
    前記分画ステップによりターゲットプレート上にスポッティングされた液体を一旦乾燥させたあとに前記液体マトリックスを加え、サンプルを調製することを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法であって、
    前記液体マトリックスは、アミノキノリンを含むものであることを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
  7. 請求項6に記載の質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法であって、
    前記液体マトリックスは、3−アミノキノリンとp−クマル酸とを含むものであることを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法であって、
    前記グリコシダーゼは、ペプチド:N−グリカナーゼであることを特徴とする質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法。
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