JP5092862B2 - 液体マトリックスを用いたmaldi質量分析法 - Google Patents
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Description
第2に、本発明の目的は、MS測定の段階において、特定の分子種の選択的なイオン化、又は特定の付加イオン種の選択的な検出が可能なMALDI質量分析法を提供することにある。
第3に、本発明の目的は、スループット性に優れ、試料の損失が無い(又は著しく少ない)MALDI質量分析法を提供することにある。
(1)
(i)構造解析すべき分子を含む試料と、構成イオンXを有する塩と、を含む水溶液の相、及び
アミノキノリンのイオンと酸性基含有有機物質のイオンとを含む、マトリックスとしてのイオン性液体の相、
からなる二相液滴を、ターゲットプレート上に形成する二相液滴形成工程と、
(ii)前記二相液滴における前記水溶液の相から水を除去することによって、前記水溶液の相から得られた残渣と、前記イオン性液体の相から得られた残相とからなるスポットを前記ターゲットプレート上に得るスポット形成工程と、
(iii)前記スポットにおける前記残渣の部分にレーザー光を照射し、少なくとも前記構造解析すべき分子に前記イオンXが付加したイオンを得ること、及び/又は
前記スポットにおける前記残相の部分にレーザー光を照射し、前記構造解析すべき分子にプロトンが付加したイオンを得ること、
を含む質量分析工程と、
を含む、液体マトリックスを用いたMALDI質量分析法。
すなわち、「水溶液の相」中に存在していた「構造解析すべき分子」は、「イオン性液体の相」へ、「水溶液の相」中に共存していた「塩」の脱塩を伴って取り込まれる。従って、「残相」中には脱塩された「構造解析すべき分子」が調製される。
なお、「残渣」には、「構造解析すべき分子」の一部が「塩」とともに残存する場合がある。
前記工程(iii)において、前記スポットにおける前記残渣の部分にレーザー光を照射し、前記構造解析すべき分子にプロトンが付加したイオンをさらに得る、(1)に記載のMALDI質量分析法。
前記アミノキノリンは、3−アミノキノリン及びその構造異性体からなる群から選ばれる、(1)又は(2)に記載のMALDI質量分析法。
前記酸性基含有有機物質はα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)からなる群から選ばれる、(1)〜(3)のいずれかに記載のMALDI質量分析法。
前記構造解析すべき分子は、糖、糖ペプチド、及びペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子である、(1)〜(4)のいずれかに記載のMALDI質量分析法。
前記イオンXはナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群から選ばれる金属イオンである、(1)〜(5)のいずれかに記載のMALDI質量分析法。
また、本発明によると、MS測定の段階において、特定の分子種の選択的なイオン化、又は特定の付加イオン種の選択的な検出ができるMALDI質量分析が可能である。
さらに、本発明によると、スループット性に優れ、試料の損失が無い(又は著しく少ない)MALDI質量分析が可能である。
[1−1.塩含有試料水性相]
塩含有試料水性相には、構造解析すべき分子を含む試料と、構成イオンXを有する塩とを含む。
構造解析すべき分子としては、糖、糖ペプチド、ペプチド、及びその他の生体高分子のいかなるものも許容される。これらの分子から少なくとも1種の分子が選択されうる。糖には、単糖、糖鎖、及びそのラベル化体が含まれる。糖のラベル化体としては、いかなる修飾を受けた糖であっても良いが、例えば、ピリジルアミノ化糖などが挙げられる。
マトリックス有機相には、マトリックスとしてのイオン性液体を含む。イオン性液体は、室温で液体の状態で存在し、その実態は塩である物質をいう。マトリックス有機相には、イオン性液体以外に、有機溶剤が含まれていても良い。このような有機溶剤は、イオン性液体調製時に用いられるものであることが多い。
アミノキノリンとしては、具体的には、3−アミノキノリン及びその構造異性体が挙げられる。当該構造異性体には、2−アミノキノリン、4−アミノキノリン、5−アミノキノリン、6−アミノキノリン、7−アミノキノリン、及び8−アミノキノリンが含まれる。
一方、二相液滴の形成時における、イオン性液体の粘性に起因する操作性などの観点から、当該溶媒を除去せずに有機溶剤を含んだ態様でイオン性液体を得ても良い。この場合、質量分析用スポットをより検出選択性良い状態で得るために、より高濃度のイオン性液体溶液であることが好ましい。
二相液滴形成をターゲットプレート上に形成する具体的方法としては特に限定されない。
混合液の液滴をターゲットプレート上に形成する具体的方法としては特に限定されない。たとえば、塩含有試料水溶液と液体マトリックス又は液体マトリックス溶液(以下、これらをまとめて液体マトリックスと記載することがある)とを別々に調製し、両液を混合させて混合液を得て、得られた混合液をターゲットプレート上に滴下することによって、二相液滴を形成することができる。また、例えば、塩含有試料水溶液と液体マトリックスとを別々に調製し、塩含有試料水溶液をターゲットプレート上に滴下して塩含有試料水溶液の液滴を形成し、水分が乾燥しない間に、形成された塩含有試料水溶液の液滴にさらに液体マトリックスを滴下することによって、二相液滴を形成することができる。またこの場合、塩含有試料水溶液と液体マトリックス溶液との滴下順序を逆にしても良い。
二相液滴の態様は、塩含有試料水溶液の水性相と液体マトリックスの有機相からなるものであれば特に限定されるものではないが、通常、ターゲットプレート上にある程度の広がりをもって塩含有試料水溶液の水性相が接しており、その外周、又は外周及び表面を取り囲むように液体マトリクスの有機相が接している。
例として、水相と液体マトリックス相とからなる二相液滴のモデルを後述の図1及び図10に示す。
ターゲットプレート上に形成される二相液滴1個に含まれる液体マトリックスの量(すなわちターゲットプレート上に形成される後述の質量分析用スポット1個あたりの液体マトリックスの量)としては、特に限定されるものではない。例えば、二相液滴1個あたりのイオン性液体の量を、1nmol〜10μmol、さらに好ましくは10nmol〜1μmolとすることができる。
ターゲットプレート上に形成される二相液滴1個に含まれる構造解析すべき分子の量としては、特に限定されるものではない。例えば、液体マトリックス200nmolに対し、構造解析すべき分子は、10pmol〜数fmolの広い範囲で許容される。
1個の質量分析用スポットを形成する二相液滴の体積(すなわち、塩含有試料水溶液の水性相の体積と液体マトリックスの有機相の体積との合計)としては、特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。
ターゲットプレート上にウェルが設けられている場合、二相液滴は、ウェル内に形成することができる。この場合、二相液滴は、当該ウェル内に収まる程度の体積をもって形成される。具体的には、10nL〜10μl程度、例えば0.5μl程度の液滴を形成することができる。
ターゲットプレートとしては、特に限定されない。通常MALDI質量分析に使用されるステンレス鋼ターゲットプレートなどや、化学的或いは物理的に表面処理がなされたターゲットプレートなど、さまざまなものを使用することができる。表面処理がなされたものとしては、ターゲットプレート表面の表面粗さを所望の程度にする処理がなされたものが挙げられる。そのような表面処理としては、例えば、研磨処理や鏡面仕上げ処理が挙げられる。
[2−1.質量分析用スポットの形成]
質量分析用スポットは、二相液滴から水分が除去されることによって得られる。より具体的には、質量分析用スポットは、以下のような過程を経て形成される。
このようにして得られた質量分析用スポットは、二相液滴における塩含有試料水溶液の水性相に由来する残渣と、二相液滴における液体マトリックスの有機相に由来する残相とからなる。通常は、残相の中央部分に残渣が位置し、当該残渣は、周辺の残相より窪んだ形状で得られることが多いため、目視で識別することが可能である。具体的には、顕微鏡やCCDカメラなどで識別することが可能である。
残渣には、水性相中に含まれていた塩、又は、当該塩と構造解析すべき分子の一部、を主として含み、残相には、液体マトリックス相に含まれていたイオン性液体、及び脱塩された構造解析すべき分子を主として含む。
質量分析用スポットのこの態様は、室温下及び真空下でも維持される。
質量分析工程においては、上記のようにして得られた質量分析用スポットにレーザーを照射し、このレーザー照射位置によって、異なるイオンを検出する。
すでに述べたように、レーザーを照射すべきスポットにおいて、塩は、当該スポットの微小な一部(すなわち残渣)に集積している。このことによって、検出すべき分子種のイオン化を阻害する物質のひとつである塩を、当該レーザーを照射すべきスポットの他の部分(すなわち残相)から分離される。従って、当該他の部分(残相)においては、塩によるイオン化抑制作用を低減させることができ、その結果、当該他の部分(残相)に存在する分子のイオン化を効果的に行うことが可能になる。
この点から、本発明の方法は、検出すべき分子種に対するイオン化抑制効果を低減することができるMALDI質量分析を可能にする。
このことによって、試料中における親水性のより高い分子は、質量分析用スポットの残渣において、当該親水性物質(主として塩)との親和性によって、当該親和性物質が付加したイオンとして優位に検出されうる。一方、試料中における親水性のより低い分子は、イオン化効率が低下しうるか、或いは、イオンとして検出されない場合がある。
そして、試料中における親水性のより高い分子は、質量分析用スポットの残相において、親水性物質が付加しないイオンとして優位に検出されうる。一方、試料中における親水性のより高い分子は、イオン化効率が低下しうるか、或いは、イオンとして検出されない場合がある。
この点からも、本発明の方法は、検出すべき分子種に対するイオン化抑制効果を低減することができるMALDI質量分析を可能にする。
この点から、本発明の方法は、MS測定の段階において、特定の分子種の選択的なイオン化、又は特定の付加イオン種の選択的な検出ができるMALDI質量分析を可能にする。特に、試料中に、親水性のより高い分子と親水性のより低い分子とが混在している場合に有用である。
解析すべき分子の種類によっては、親和性物質が付加したイオンと、親和性物質が付加しないイオンとのMSn分析(すなわちMS2以上の多段階分析)における開裂機構が異なる場合がある。そのような分子の一例として、糖ペプチド及び糖が挙げられるが、これに限定されるものではない。従って、親和性物質が付加したイオンと、親和性物質が付加しないイオンとの両方が検出される場合は、構造解析に利用できる情報が多くなるため、構造解析の正確度が向上するという点で有用である。
この点から、本発明の方法は、スループット性に優れ、試料の損失が無い(又は著しく少ない)MALDI質量分析を可能にする。
具体的には、質量分析用スポットにおける残渣の部分にレーザー光を照射することによって、少なくとも、構造解析すべき分子に塩の構成イオンXが付加したイオンを得る。場合により(例えば、解析すべき分子の種類や、液体マトリックスの種類や、イオンXの存在量などによる)、残渣の部分にレーザー光を照射することによって、さらに、構造解析すべき分子にプロトンが付加したイオンを得ることもある。
一方、質量分析用スポットにおける残相の部分にレーザー光を照射することによって、構造解析すべき分子にプロトンが付加したイオンを得る。
例えば、試料に、構造解析すべき分子として糖が含まれる場合、当該糖は、残渣から、少なくとも、イオンXが付加したイオンとして検出され、残相から、プロトンが付加したイオンとして検出される。場合により、残渣から、プロトンが付加したイオンとしても検出される場合がある。
なお、それらイオンは、糖−アミノ酸結合が維持されたものとして得られる。
糖ペプチドイオンの検出は、糖タンパク質の構造解析を行うために必要な情報の1つである、糖鎖結合部位の特定を行うための情報を得るという点で重要である。また、糖タンパク質の構造解析を行うために必要なそれ以外の情報である、タンパク質部分の一次構造の特定を行うための情報、及び糖鎖部分の一次構造の特定を行うための情報も、当該糖ペプチドイオンから得ることができる。
本参考例においては、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(3AQ/CHCA)を用いた、質量分析用スポットモデルの形成を行った。
水(0.5μL)と3AQ/CHCA(1μL)の混合液を、MALDIターゲットプレートウェル(ウェル直径:2.8mm、以下において同じ)に滴下して室温下に放置し、時間経過にともなう液滴の変化を写真撮影した。
本実施例では、試料(アンジオテンシンII/酸化型インスリンB鎖の混合物)水溶液を様々な塩濃度で調製し、マトリックスとして3AQ/CHCAを用い、MALDI質量分析を行った。
2)35mgの3−アミノキノリンを、上記1)で調製したCHCA飽和溶液150μLに溶解し、これによりイオン液体マトリックス3−アミノキノリン/α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(3AQ/CHCA)を調製した。
4)アンジオテンシンII/酸化型インスリンB鎖の混合物に、1 M、400 mM、200 mM又は40 mMのトリス塩酸緩衝液(Tris-HCl) (pH8.0)、あるいは水を、それぞれ、当該混合物と等体積量混合した。
5)Tris-HCl (pH8.0)を添加したアンジオテンシンII/酸化型インスリンB鎖の混合物に、それぞれ、当該混合物と等体積量の3AQ/CHCAを混合した。
これにより、試料と3AQ/CHCAとの混合液を調製した。この混合液中のTris-HClの濃度は、それぞれ、250mM、100mM、50mM、10mM、及び0mMである。
7)試料と3AQ/CHCAとの混合液滴を室温下に放置して水を蒸発させ、水が完全に蒸発したことを確認した後、MALDI質量分析装置で測定を行った。質量分析装置としては、337nmの紫外レーザーを備えたMALDI-Digital Ion Trap(DIT)質量分析装置を用いた。MALDI-DIT質量分析装置は、イオン源にMALDI、質量分析部にDigital Ion Trapを用いた質量分析装置で、Digital Ion Trapは高周波矩形波電圧を用いてイオンをトラップし、矩形波電圧の振幅を一定に保ったまま周波数を変化させて質量分析を行うものである。
図2のa1〜e1が示すように、いずれのTris-HCl (pH 8.0)濃度の場合でも、試料イオンを検出することができた。図2のa2〜e2が示すように、試料と液体マトリックスと混合液滴の水が蒸発した後のスポットの中心部分に窪み形状が観察された。この窪みの部位からは試料イオンを検出することができず、その周辺部位からは試料イオンを検出することができた。
従って、液体マトリックス3AQ/CHCAを用いることによって、MALDIターゲットプレートウェル上で、試料を含む水溶液中の塩を液滴中心部へ集積させることが可能となり、その結果として試料の脱塩効果が得られた。
本実施例では、試料(ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)のトリプシン消化物)水溶液を様々な塩濃度で調製し、マトリックスとして3AQ/CHCAを用い、MALDI質量分析を行った。
具体的には、試料を、アンジオテンシンII/酸化型インスリンB鎖の混合物から、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)のトリプシン消化物に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、100fmolのBSAトリプシン消化物の測定で、Tris-HCl(pH 8.0)濃度が250mMでもBSAペプチドが検出され、実施例1と同様の脱塩効果が得られたことを確認した(データ示さず)。
本実施例では、試料(ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)のトリプシン消化物)水溶液を様々な塩濃度で調製し、マトリックスとして8AQ/CHCAを用い、MALDI質量分析を行った。
具体的には、試料を、アンジオテンシンII/酸化型インスリンB鎖の混合物から、ウシ血清アルブミンのトリプシン消化物に変更し、且つ、3−アミノキノリンを8−アミノキノリンに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
図3のa1〜e1が示すように、いずれのTris-HCl (pH 8.0)濃度の場合でも、試料イオンを検出することができた。図3のa2〜e2が示すように、試料と液体マトリックスと混合液滴の水が蒸発した後のスポットの中心部分に窪み形状が観察された。この窪みの部位からは試料イオンを検出することができず、その周辺部位からは試料イオンを検出することができた。
本比較例では、上記実施例1の比較のため、試料(アンジオテンシンII/酸化型インスリンB鎖の混合物)水溶液を様々な塩濃度に調製し、マトリックスとしてCHCA(α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)を用い、MALDI質量分析を行った。
具体的には、マトリックスを3AQ/CHCAからCHCAに変更した以外は、上記実施例1と同様の操作を行った。
図4のa1〜e1が示すように、Tris-HCl (pH 8.0)の濃度が100 mM以上の場合、Tris-HCl (pH 8.0)のイオン化阻害作用によって試料イオンが検出されなかった。
本比較例では、上記実施例2及び3の比較のため、試料(ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)のトリプシン消化物)水溶液を様々な塩濃度に調製し、マトリックスとしてCHCA(α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)を用い、MALDI質量分析を行った。
具体的には、マトリックスを3AQ/CHCA又は8AQ/CHCAからCHCAに変更した以外は、上記実施例2又は3と同様の操作を行った。
図5のa1〜e1が示すように、Tris-HCl (pH 8.0)の濃度が250 mM以上の場合、Tris-HCl (pH 8.0)のイオン化阻害作用によって試料イオンが検出されなかった。
本実施例では、解析すべき試料を、ピリジルアミノ化糖PA-009とし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(3AQ/CHCA)を用い、MALDI質量分析を行った。
2)35mgの3−アミノキノリンを、上記1)で調製したCHCA飽和溶液150μLに溶解し、イオン性液体3AQ/CHCA(液体マトリックス)を調製した。
5)上記4)の液滴が乾燥する前に、当該液滴の上に、さらに上記2)で得られた液体マトリックス3AQ/CHCAを1μL滴下した。
6)上記5)で得られた、上記4)で滴下した水溶液の相と液体マトリックスの相とからなる液滴を室温下に放置し、水溶液相の水を蒸発させた。水が完全に蒸発したことを確認した後、MALDI質量分析装置で測定を行った。質量分析装置としては、337nmの紫外レーザーを備えたMALDI-Digital Ion Trap(DIT)質量分析装置を用いた。
本実施例では、解析すべき試料を、糖ペプチドTf-GP1とし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(3AQ/CHCA)を用い、MALDI質量分析を行った。
上記実施例4における工程3)で、ピリジルアミノ化糖鎖PA-009の水溶液調製の代わりに糖ペプチドTf-GP1水溶液を調製した以外は、実施例4と同様の操作を行った。
本実施例では、解析すべき試料を、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)のトリプシン消化物とし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(3AQ/CHCA)を用い、MALDI質量分析を行った。
消化ペプチド水溶液は、市販のウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)のトリプシン消化物(ウォーターズ社)を、0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液に溶解し、200fmol/μLの濃度に調整することにより調製した。
本実施例では、解析すべき試料を、糖タンパク質消化ペプチドモデル、すなわちBSAのトリプシン消化ペプチドと糖ペプチドTf-GP1との混合物とし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(3AQ/CHCA)を用い、MALDI質量分析を行った。
3) 市販のヒトトランスフェリン(シグマ社)をトリプシン消化し、セファロースを用いた糖ペプチドの濃縮を行った後、オクタデシルシリカカラムを用いたHPLCによりTf-GP1を単離し、0.1% TFA水溶液に溶解し、2pmol/mLに調整することにより糖ペプチド(Tf-GP1)水溶液を調製した。
別途、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)のトリプシン消化物(ウォーターズ社)を、0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液に溶解し、200fmol/μLの濃度に調整することにより消化ペプチド水溶液を調製した。
本参考例においては、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/2,5−ジヒドロキシ安息香酸(3AQ/DHB)を用いた以外は、参考例1と同様の操作を行い、質量分析用スポットモデルの形成を行った。
本実施例では、解析すべき試料を、ピリジルアミノ化糖PA-009とし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/2,5−ジヒドロキシ安息香酸(3AQ/DHB)を用い、MALDI質量分析を行った。
液体マトリックスとして3AQ/ DHBを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行い、マススペクトルを得た。
本実施例では、解析すべき試料を、糖ペプチドTf-GP1とし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/2,5−ジヒドロキシ安息香酸(3AQ/DHB)を用い、MALDI質量分析を行った。
液体マトリックスとして3AQ/DHBを用いた以外は、実施例5と同様の操作を行い、マススペクトルを得た。
本実施例では、解析すべき試料を、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)のトリプシン消化物とし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/2,5−ジヒドロキシ安息香酸(3AQ/DHB)を用い、MALDI質量分析を行った。
液体マトリックスとして3AQ/DHBを用いた以外は、実施例6と同様の操作を行い、マススペクトルを得た。
本実施例では、解析すべき試料を、糖タンパク質消化ペプチドモデル、すなわちBSAのトリプシン消化ペプチドと糖ペプチドTf-GP1との混合物とし、液体マトリックスとして3−アミノキノリン/2,5−ジヒドロキシ安息香酸(3AQ/DHB)を用い、MALDI質量分析を行った。
液体マトリックスとして3AQ/DHBを用いた以外は、実施例7と同様の操作を行い、マススペクトルを得た。
Claims (6)
- (i)構造解析すべき分子を含む試料と、構成イオンXを有する塩と、を含む水溶液の相、及び
アミノキノリンのイオンと酸性基含有有機物質のイオンとを含む、マトリックスとしてのイオン性液体の相、
からなる二相液滴を、ターゲットプレート上に形成する二相液滴形成工程と、
(ii)前記二相液滴における前記水溶液の相から水を除去することによって、前記水溶液の相から得られた残渣と、前記イオン性液体の相から得られた残相とからなるスポットを前記ターゲットプレート上に得るスポット形成工程と、
(iii)前記スポットにおける前記残渣の部分にレーザー光を照射し、少なくとも前記構造解析すべき分子に前記イオンXが付加したイオンを得ること、及び/又は
前記スポットにおける前記残相の部分にレーザー光を照射し、前記構造解析すべき分子にプロトンが付加したイオンを得ること、
を含む質量分析工程と、
を含む、液体マトリックスを用いたMALDI質量分析法。 - 前記工程(iii)において、前記スポットにおける前記残渣の部分にレーザー光を照射し、前記構造解析すべき分子にプロトンが付加したイオンをさらに得る、請求項1に記載のMALDI質量分析法。
- 前記アミノキノリンは、3−アミノキノリン及びその構造異性体からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載のMALDI質量分析法。
- 前記酸性基含有有機物質はα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のMALDI質量分析法。
- 前記構造解析すべき分子は、糖、糖ペプチド、及びペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のMALDI質量分析法。
- 前記イオンXはナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群から選ばれる金属イオンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のMALDI質量分析法。
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