JP7305926B2 - 分析方法、質量分析用試料調製用材料、質量分析用キット、糖鎖類分析用材料および糖鎖類質量分析用キット - Google Patents

分析方法、質量分析用試料調製用材料、質量分析用キット、糖鎖類分析用材料および糖鎖類質量分析用キット Download PDF

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本発明は、分析方法、マトリックス添加剤、質量分析用キット、糖鎖類分析用マトリックス添加剤および糖鎖類質量分析用キットに関する。
質量分析において、試料をイオン化して得られたイオンは、プロトン、カチオン(以下では、カチオンにプロトンは含まれないものとする)、アニオンの付加体、またはプロトンが脱離した脱プロトン化体等として検出される可能性がある。しかし、マススペクトルの解析においては、付加するイオンの種類が少ない方がピークの数が少なく解析がしやすいため、多くの場合、プロトン等の特定のイオンが優位に付加した付加体が生成されるようにイオン化が行われる。
例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)により糖鎖をイオン化して質量分析を行う場合には、糖鎖と、ナトリウムやカリウム等との親和性の高さを利用し、ナトリウムやカリウム等の特定のカチオンが優位に付加したカチオン付加体を検出することが行われている。
糖鎖を含む試料とマトリックスとを含む質量分析用試料の調製において、マトリックス添加剤としてこれらのカチオンを添加しなくても、調製の途中に微量のカチオンが混入する等の理由により、イオン化によりカチオン付加体を生成することができる。しかし、糖鎖の種類や試料の調製方法によってはナトリウム、カリウム、またはその他のカチオンの付加体が同時に観測される場合もある。これらはマススペクトルを複雑化させ、解析の妨げになるので、一つのイオン種に統一する方が好ましい。このような場合に、固体マトリックスに対して、例えばNaClのようなナトリウム塩等を含むカチオン化剤を加える方法が知られている。
一方で、糖鎖のほか様々な分子をイオン化するのに、固体マトリックスではなく液体マトリックスを用いる方法も提案されている。液体マトリックスは固体マトリックスに比べて均一性が高く、特に親水性の糖鎖についてはこれを感度良くイオン化するものが多い。液体マトリックスにマトリックス添加剤を加えて、特定のアニオンが優位に付加したイオンを生成する方法が報告されている(特許文献1参照)。
特開2013-205221号公報
液体マトリックスを用いて質量分析用試料を調製する場合に、特定のカチオンが優位に付加したイオンを生成する方法は提案されていない。固体マトリックスについて行われるように、NaClを液体マトリックスに加えると、感度が低下したり、ナトリウム由来の夾雑物に対応するピークが生じ、糖鎖のイオン化を妨げる問題があった。
本発明の好ましい実施形態による分析方法は、試料と、液体マトリックスを構成する物質を含むマトリックス試薬と、1以上のハロゲン原子を含むカルボン酸またはその塩を備えるマトリックス添加剤とを混合して質量分析用試料を調製することと、前記質量分析用試料にレーザー光を照射してイオン化を行うことと、前記イオン化により生じたイオンまたは前記イオンを解離したイオンを質量分離して検出することと、を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記ハロゲン原子は、フッ素原子である。
さらに好ましい実施形態では、前記マトリックス添加剤は、トリフルオロ酢酸塩である。
さらに好ましい実施形態では、前記マトリックス添加剤は、ナトリウム塩またはカリウム塩である。
さらに好ましい実施形態では、前記マトリックス試薬は、2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノンまたはクマル酸、および、アミンまたはその塩を含む。
さらに好ましい実施形態では、前記アミンは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンまたは3-アミノキノリンである。
さらに好ましい実施形態では、前記試料は、糖、糖鎖、および糖または糖鎖の誘導体のうち少なくとも一つを含む分子を備える。
本発明の好ましい実施形態によるマトリックス添加剤は、1以上のハロゲン原子を含むカルボン酸またはその塩を備え、液体マトリックスに添加するためのものである。
さらに好ましい実施形態では、前記ハロゲン原子は、フッ素原子である。
さらに好ましい実施形態では、前記カルボン酸は、トリフルオロ酢酸である。
さらに好ましい実施形態では、前記カルボン酸の塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩である。
本発明の好ましい実施形態による質量分析用キットは、上述のマトリックス添加剤を備える。
本発明の好ましい実施形態による糖鎖類分析用マトリックス添加剤は、上述のマトリックス添加剤を備え、前記マトリックス添加剤は、糖鎖および糖鎖誘導体のうち少なくとも一つを含む分子を備える試料の質量分析に用いられる。
本発明の好ましい実施形態による糖鎖類質量分析用キットは、上述の糖鎖類分析用マトリックス添加剤を備える。
本発明によれば、液体マトリックスを用いて、特定のカチオンが優位に付加されたイオンが生成するように試料のイオン化を行う場合に、感度の低下や、夾雑物による悪影響を抑制し、より精度の高い分析を行うことができる。
図1は、一実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。 図2(A)は、質量分析用キットの一例を示す概念図であり、図2(B)は、試料プレートの試料配置部位を示す概念図である。 図3は、G3CAをマトリックスとし、各種のマトリックス添加剤を用いて、またはマトリックス添加剤を用いないで質量分析用試料を調製した場合に得られたマススペクトルである。 図4(A)は、G3CAをマトリックス、NaTFAをマトリックス添加剤とし、各量のNA4型糖鎖を含む質量分析用試料を調製した場合に得られたマススペクトルであり、図4(B)は、G3CAをマトリックス、NaClをマトリックス添加剤とし、各量のNA4型糖鎖を含む質量分析用試料を調製した場合に得られたマススペクトルである。 図5は、GTHAPをマトリックスとし、各種のマトリックス添加剤を用いて、またはマトリックス添加剤を用いないで質量分析用試料を調製した場合に得られたマススペクトルである。 図6は、3AQ/CAをマトリックスとし、NaTFAを含むマトリックス添加剤を用いて、またはマトリックス添加剤を用いないで質量分析用試料を調製した場合に得られたマススペクトルである。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。ステップS1001において、試料と、液体マトリックスを構成するマトリックス試薬と、1以上のハロゲン原子を含むカルボン酸またはその塩を備えるマトリックス添加剤とが用意される。
(マトリックス添加剤)
本実施形態の分析方法で用いられるマトリックス添加剤は、液体マトリックスに添加するための添加剤である。マトリックス添加剤に含まれるカルボン酸またはその塩は、入手の容易さ等の観点から、フッ素原子を含むものが好ましい。マトリックス添加剤に含まれるカルボン酸は、トリフルオロ酢酸(以下、TFAと呼ぶ)が好ましい。液体マトリックスとTFAイオンとを含む質量分析用試料を用いて質量分析を行うと、感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができる。
マトリックス添加剤に含まれるカルボン酸の塩は、入手の容易さ等の観点から、ナトリウム塩またはカリウム塩が好ましい。さらに、これらの塩は、糖鎖や糖鎖誘導体等の糖関連分子(以下では、糖鎖および糖鎖誘導体を糖鎖類と呼び、糖、糖鎖、糖若しくは糖鎖の誘導体、またはこれらを含む分子を糖関連分子と呼ぶ)に対して親和性が高いため、試料が糖関連分子である場合に、これらのイオンが優位に付加されたイオンを特に生成しやすいので好適である。
マトリックス添加剤に含まれるカルボン酸の塩は、トリフルオロ酢酸ナトリウム(以下、NaTFAと呼ぶ)がより好ましい。液体マトリックスにNaTFAを含むマトリックス添加剤を加えて質量分析用試料を調製すると、ナトリウムが優位に付加したイオンを生成することができ、さらに感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができる。
なお、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸を含む溶液と、ナトリウムイオン等のカチオンを含む溶液とを別々に加えてもよい。カチオンを含む溶液としては、水酸化ナトリウム溶液等を用いることができる。
(マトリックス試薬)
液体マトリックスを構成するマトリックス試薬は、質量分析用試料において液体マトリックスの少なくとも一部を構成する分子を含む。液体マトリックスとは、通常のMALDI質量分析計のイオン源である10-1Pa以下等の高真空条件下でも固化・気化せずに液体を維持する特徴を持ったマトリックスのことで、多くの場合は常温融解塩に分類される。マトリックス試薬は、アミンまたはその塩、および、有機物質またはその塩を含み、アミンがプロトンの受容体として働き、有機物質がプロトンの供与体となるものが好ましい。例えば、当該有機物質は酸性基を含有することが好ましい。上記アミンおよび有機物質のいずれかは、紫外~可視~赤外領域等に対応する波長のレーザー光を吸収する。マトリックス試薬に含まれるアミンまたはその塩と、有機物質またはその塩とを溶媒中で混合し、適宜溶媒を蒸発させ、液体マトリックスを調整することができる。
なお、複数の液体マトリックスを混合して用いてもよい。
液体マトリックスを構成するアミンは、第1級アミンでは、窒素原子がOH基で置換されていてもよい、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、イソノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、またはイソウンデシルの残基、あるいはフェニル残基と結合している第1級アミンを含むことが好ましい。
液体マトリックスを構成するアミンは、第2級または第3級アミンでは、窒素原子が、OH基で置換されていてもよい、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、およびイソオクチルの残基、ならびにフェニル残基からなる群より選択される、同種でも異種でもよい、2または3個の残基と結合している第2級または第3級アミンを含むことが好ましい。
液体マトリックスを構成するアミンは、3-アミノキノリン、ピリジン、イミダゾール、またはC-若しくはN-アルキル化イミダゾール誘導体を含むことも好ましい。
液体マトリックスを構成するアミンは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、n-ブチルアミン(BA)、エチルアミン、N,N-ジエチルアミン(DEA)、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジエチルメチルアミン、ジエチルベンゼンアミン、N,N-ジメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、エタノールアミン、ポリエーテルテールドトリエチルアミン、ポリエステルテールドトリエチルアミン、ニトロフェノール、アニリン、2,4-ジニトロアニリン、2-ニトロフェニルオクチルエーテル、ピリジン、2-ピリジンプロパノール(2PP)、2-エチルピリジン(2EP)、2-アミノ-4-メチル-5-ニトロピリジン、3-アミノキノリン(3AQ)、3-ヒドロキシピリジン、1-メチルイミダゾール、1-ブチル-3-メチルイミダゾール、1-(1-ヒドロキシプロピル)-3-メチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、1,5-ジアミノナフタレン、6-アザ-2-チオチミン、クマリン、6,7-ジヒドロキシクマリン、1,8-ジヒドロキシ-9[10H]-アントラセノンおよびカルボリン類(ノルハルマン、ハルマン、ハルミン、ハルモル、ハルマリン、ハルマロールなど)からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
液体マトリックスを構成するアミンは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)および3-アミノキノリン(3AQ)の少なくとも一方がより好ましい。これらのアミンを含むマトリックス試薬を用いて調製された液体マトリックスにNaTFAを加えて質量分析用試料を調製すると、ナトリウムが優位に付加したイオンが得られ、さらに感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができる。
液体マトリックスを構成する有機物質は、p-クマル酸(p-CA)、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(4-CHCA)、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)若しくはその異性体、4-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニルピルビン酸、3-ヒドロキシピコリン酸、3,5-ジメソキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸(シナピン酸)、4-ヒドロキシ-3-メソキシケイ皮酸(フェルラ酸)、カフェイン酸(3,4-ジヒドロキシケイ皮酸)、5-メソキシサリチル酸、2-(4-ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸(HABA)、ニコチン酸、ピコリン酸、3-アミノピコリン酸、3-ヒドロキシピコリン酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸、6-アザ-2-チオチミン、2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)若しくはその水和物、1,4-ジヒドロ-2-ナフトエ酸、3-インドールアクリル酸、インドール-2-カルボン酸、チオグリコール酸、2-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸若しくはその異性体、5-クロロ- 2-メルカプトベンゾチアゾール、トリフルオロメタンスルホネート、2,6- ジヒドロキシアセトフェノン、9H-ピリド[3 ,4-b]インドール、ジスラノール、オサゾン類、2,5-ジヒドロキシアセトフェノン、1-ニトロカルバゾール、7-アミノ-4-メチルクマリン、8-アミノピレン-2,3,4-トリススルホン酸、2[2E-3-(4-tert-ブチル-フェニル)-2-メチルプロプ- 2-エニリデン]マロノニトリル(DCTB)および4-メトキシ-3-ヒドロキシケイ皮酸からなる群から選択される少なくとも一つが好ましい。
液体マトリックスを構成する有機物質は、p-クマル酸(p-CA)ならびに2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)およびその水和物の少なくとも一つがより好ましい。これらの有機物質を含むマトリックス試薬を用いて調製された液体マトリックスにNaTFAを加えて質量分析用試料を調製すると、ナトリウムが優位に付加したイオンが得られ、さらに感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができる。液体マトリックスを構成する有機物質は、p-クマル酸(p-CA)が、イオン化の際に硫酸化糖鎖からの硫酸基の離脱を防ぐことができるためにさらに好ましい。
液体マトリックスは、GCA、G2CAおよびG3CA等の1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)とp-クマル酸(CA)とを所定の割合で混合した混合物、GTHAPならびに3AQ/CAが好ましい。GCAは、モル換算で、CAの量1に対しTMGの量が0.5以上1.5未満の割合でTMGおよびCAを含むものとする。G2CAは、モル換算で、CAの量1に対しTMGの量が1.5以上2.5未満の割合でTMGおよびCAを含むものとする。G3CAは、モル換算で、CAの量1に対しTMGの量が2.5以上3.5未満の割合でTMGおよびCAを含むものとする。GTHAPは、TMGと2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)とをモル比で1:0.5~1:2、好ましくは1:1の割合で混合した液体マトリックスである。3AQ/CAは、p-CAと3-アミノキノリン(3AQ)とをモル比で5:1~20:1の割合で混合した液体マトリックスである。これらの液体マトリックスにNaTFAを加えて質量分析用試料を調製すると、ナトリウムが優位に付加したイオンが得られ、さらに感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができる。
なお、GCA、G2CAおよびG3CAの区別の方法は上記以外の割合に基づいてもよく、特に限定されない。また、GCA、G2CAおよびG3CA以外の、TMGとCAとの混合物を液体マトリックスとして用いてもよい。
(分析対象の試料)
本実施形態の分析方法において分析対象となる試料は、液体マトリックスを用いてイオン化を行うことができれば特に限定されない。分析対象となる試料は、糖、糖鎖、糖若しくは糖鎖の誘導体、またはこれらを含む分子(糖関連分子)が好ましい。すなわち、当該試料は、糖、糖鎖、および糖または糖鎖の誘導体のうち少なくとも一つを含む分子を備えることが好ましい。糖関連分子は、酸性糖鎖、中性糖鎖、糖脂質、糖タンパク質および糖ペプチド等を含む。糖鎖誘導体を生成する際の誘導体化の方法は特に限定されず、例えば還元末端のピリジルアミノ化等による還元アミノ化を用いることができる。糖関連分子は、ナトリウム塩やカリウム塩等のカチオン塩との親和性が高いため、イオン化の際にこれらのカチオンが優位に付加されたイオンを効率的に生成することができる。
試料が遊離糖鎖を含む場合には、糖タンパク質や糖ペプチド、糖脂質から遊離させた糖鎖を用いることができる。糖鎖を糖タンパク質や糖ペプチド、糖脂質から遊離させる方法としては、N‐グリコシダーゼやO‐グリコシダーゼ、エンドグリコセラミダーゼなどを用いた酵素処理、ヒドラジン分解、アルカリ処理によるβ脱離等の方法を用いることができる。
ステップS1001が終了したら、ステップS1003が開始される。ステップS1003において、ステップS1001で用意された、試料と、マトリックス試薬と、マトリックス添加剤とを混合して質量分析用試料が調製される。上述のステップS1001およびステップS1003は、分析を行う人間や、分注装置により行われる。
質量分析用試料の調製方法では、後述の質量分析用キットを用いて調製することが好ましいが、特に限定されない。分析対象の試料が組織切片の場合は、この組織切片に対し、液体マトリックスおよびマトリックス添加剤を含む混合液を滴下したり、液体マトリックスを含む液体およびマトリックス添加剤を含む液体を任意の順序で順次滴下してもよい。あるいは、分析対象の試料が溶媒中に存在し、当該試料と、液体マトリックスを含む液体と、マトリックス添加剤を含む液体とを任意の順序で混合してもよい。この混合をウェルプレート等の任意の容器で行ってから、得られた混合液をMALDI用試料プレートの試料配置部位に滴下してもよいし、MALDI試料プレート上で混合を行ってもよい。
試料プレートの試料配置部位に、試料と、液体マトリックスと、マトリックス添加剤とを含む混合液の液滴が形成されたら、混合液の溶媒を除去し混合液を濃縮する操作が行われる。混合液を濃縮する方法は特に限定されず、例えば溶媒を大気圧またはそれより低い圧力の下で蒸発させることで濃縮を行うことができる。後に図2(B)に関して詳述するように、試料プレート上の混合液を濃縮する際に液滴が分布する面積が縮小するように混合液の濃縮を行うことが好ましい。これにより、質量分析用試料中の試料成分の濃度を上げ、質量分析の感度を高めることができる。混合液が濃縮され、試料-液体マトリックス-マトリックス添加剤の混合物が得られたら、当該混合物を質量分析用試料として、その調製を終了する。
ステップS1003が終了したら、ステップS1005が開始される。ステップS1005において、質量分析計により、調製された質量分析用試料にレーザー光が照射され、試料成分のイオン化が行われる。
ステップS1005で調製された質量分析用試料を、MALDI法によりイオン化し、正イオンモードで検出することができれば、用いる質量分析計の種類や分析条件等は特に限定されない。
例えば、質量分析用試料に照射するレーザー光は紫外~可視~赤外領域に対応する波長を有するレーザー光とすることができ、汎用的にはNレーザ(波長337nm)等を適宜用いることができる。質量分析計は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計(MALDI-MS)を用いることができる。質量分析計はシングル四重極質量分析計や飛行時間型質量分析計の他、タンデム質量分析計を用いることができる。例えば、質量分析計は、イオントラップ型質量分析計、三連四重極型質量分析計、四重極-飛行時間型質量分析計、イオントラップ-飛行時間型質量分析計、四重極-イオントラップ型質量分析計、四重極-フーリエ変換型質量分析計、イオントラップ-フーリエ変換型質量分析計、四重極-オービトラップ型質量分析計、イオントラップ-オービトラップ型質量分析計、飛行時間-飛行時間型質量分析計等を用いることができる。質量分析計は、イオントラップを含む飛行時間型質量分析計が、糖鎖や糖ペプチド等の数千Da以上の高質量の分子を詳細に解析する上で好ましい。
ステップS1005が終了したら、ステップS1007が開始される。ステップS1007において、イオン化により生じたイオンまたは当該イオンを解離したイオンが質量分析計により質量分離されて検出される。
分析対象の試料を詳細に分析するために、質量分析計としてタンデム質量分析計を用いてイオン化された試料を解離し、得られたフラグメントイオンを質量分離して検出することが好ましい。解離の方法は特に限定されず、ポストソース分解、低エネルギー衝突誘起解離および高エネルギー衝突誘起解離等の衝突誘起解離、赤外多光子解離、光誘起解離、ならびにラジカルを用いた解離法等を適宜用いることができる。解離はイオントラップや衝突セル等において行われる。解離を行う場合、質量分析計が、イオン化された試料成分をプリカーサーイオンとして質量分離し、質量分離されたプリカーサーイオンを解離反応に供し、解離反応により得られたフラグメントイオンをプロダクトイオンとして質量分離して検出することが好ましい。
ステップS1007が終了したら、ステップS1009が開始される。ステップS1009において、ステップS1007における検出で得られた測定データが解析される。質量分析計や質量分析計で取得された測定データを取得した解析装置により測定データが解析され、マススペクトルが作成されたり、予め取得されたデータに基づいてマススペクトルのピークが同定される。ステップS1009が終了したら、処理が終了される。
(質量分析用キット)
本実施形態の分析方法に好適に用いられる質量分析用キットが提供される。
図2(A)は、本実施形態の質量分析用キットを示す概念図である。質量分析用キット100は、マトリックス添加剤10と、マトリックス添加剤10が格納された容器(以下、添加剤用容器11と呼ぶ)と、マトリックス試薬20と、マトリックス試薬20が格納された容器(以下、マトリックス用容器21と呼ぶ)と、試料プレート30とを備える。試料プレート30は、試料配置部位31を備える。
なお、質量分析用キット100は、マトリックス添加剤10やマトリックス試薬20に加える溶媒等の、質量分析で用いられるその他の物品を含んでもよい。また、質量分析用キット100は、マトリックス添加剤10を備えれば、マトリックス試薬20や試料プレート30を備えなくともよい。また、添加剤用容器11とマトリックス用容器21の形状は特に限定されない。
質量分析用キット100のマトリックス添加剤10は、上述のステップS1001で説明された、1以上のハロゲン原子を含むカルボン酸またはその塩を備え、液体マトリックスに添加するためのマトリックス添加剤である。マトリックス添加剤10に含まれるカルボン酸またはその塩は、製造の容易さ等の観点から、フッ素原子を含むものが好ましい。マトリックス添加剤10に含まれるカルボン酸は、TFAが好ましい。TFAをマトリックス添加剤として含む質量分析用キット100を用いて質量分析用試料を調製し、質量分析を行うと、感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができる。
マトリックス添加剤10に含まれるカルボン酸の塩は、製造の容易さ等の観点から、ナトリウム塩またはカリウム塩のいずれかが好ましい。さらに、これらの塩は、糖鎖や糖鎖誘導体等の糖関連分子に対して親和性が高い。従って、試料が糖関連分子である場合に、上記カルボン酸のナトリウム塩やカリウム塩をマトリックス添加剤として含む質量分析用キット100を用いて質量分析用試料を調製し、質量分析を行うと、これらのイオンが優位に付加されたイオンを特に生成しやすいので好適である。
マトリックス添加剤10に含まれるカルボン酸の塩は、NaTFAがより好ましい。NaTFAをマトリックス添加剤として含む質量分析用キット100を用いて質量分析用試料を調製すると、ナトリウムが優位に付加したイオンが得られ、さらに感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができる。
マトリックス試薬20は、上述のステップS1001において説明された液体マトリックスを構成するアミンおよび有機物質の少なくとも一つを含むことが好ましい。これにより、質量分析用試料の調製に必要なマトリックス添加剤と液体マトリックスを構成する物質とを簡便に調達することができる。マトリックス試薬20を含む質量分析キット100の製造方法では、液体マトリックスを構成するアミンおよび有機物質の両方を含む場合、当該アミンおよび有機物質が混合され乾固された状態または液体の状態としてマトリックス用容器21に配置されることができる。
試料プレート30は、MALDI用の試料プレートであれば特に限定されない。試料プレート30は、ステンレス鋼等の導電性を有する物質を主材料として備え、適宜化学的または物理的に表面処理がなされたものである。試料プレート30は、96個や384個等の所定の個数の試料配置部位31を含む。試料プレート30の試料配置部位31が形成された表面は、表面粗さが小さいものが好ましく、鏡面仕上げであることが特に好ましい。これにより、均一に、濃縮された質量分析用試料を形成することができる。
図2(B)は、試料プレート30の試料配置部位31を模式的に示す上面図である。好適な例では、試料プレート30の試料配置部位31は、疎水性表面32と、親水性表面33とを備える。疎水性表面32は、親水性表面33を取り囲むように形成されている。これにより、疎水性表面32と親水性表面33とを合わせた範囲に滴下された、試料と、液体マトリックスと、マトリックス添加剤とを含む混合液は、溶媒が除去される際、疎水性表面32よりも親水性表面33の方に残りやすくなる。従って、混合液は親水性表面33の部分に濃縮され、再現性良く目的の範囲に混合液が残り、均一で濃縮された質量分析用試料を得ることができる。
なお、試料プレート30の表面の親水性を特に変化させず、試料配置部位31に形成された円形の溝等により目的の範囲に混合液を残すようにしてもよい。
マトリックス添加剤10は、糖関連分子を含む質量分析用試料の調製に用いると、感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができるため、糖鎖類分析用マトリックス添加剤として好適に用いることができる。
質量分析用キット100は、糖関連分子を含む質量分析用試料の調製に用いると、感度の低下や夾雑物による悪影響が抑制された測定データを得ることができるため、糖鎖類質量分析用キットとして好適に用いることができる。
本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
以下に、実施例を示すが、本発明は下記の実施例における分析条件等に限定されるものではない。
(実施例1:G3CAマトリックスを用いたマトリックス添加剤の検討)
<1-1.マトリックス添加剤の種類の検討>
試料としてピリジルアミノ化されたNA4型糖鎖(タカラバイオ)(モノアイソトピック質量:2448.9)を用い、G3CAマトリックスに対するマトリックス添加剤(以下、単に添加剤と呼ぶ)の検討を行った。G3CAマトリックスは、p-クマル酸10mgを10mg/mLになるように50%アセトニトリル(ACN)に溶解し、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを23.1μL加えることにより調製した。MALDI試料プレートは、700um uFocus plate (Hudson Surface Technology) を用いた。それぞれのウェル(試料配置部位)に対して100fmol/μLの試料溶液0.5μL、添加剤であるナトリウム塩(5mM)0.5μLを滴下し、その後液体マトリックスを含むマトリックス溶液を0.5μL滴下し、余剰溶媒を風乾させることで質量分析用試料とした。添加剤については、(a)添加剤なしのコントロールの他、(b)塩化ナトリウム(NaCl)、(c)水酸化ナトリウム(NaOH)、(d)酢酸ナトリウム、(e)NaTFA、(f)リン酸水素二ナトリウム、(g)炭酸水素ナトリウム、(h)クエン酸二水素ナトリウムの各化合物を添加剤としてMALDI試料プレートに滴下した。(e)が実施例であり、その他は比較例である。質量分析は、MALDI-イオントラップ-飛行時間型質量分析計(MALDI-QIT-TOFMS) (AXIMA-Resonance, Shimadzu/Kratos)で行った。
図3は、本実施例の質量分析で得られたマススペクトルである。上段から順に、上記(a)から(h)までの各条件に対応するマススペクトルを示した。図3の右側には、点線で囲まれたNA4型糖鎖に対応するピークを拡大して示した(矢印A1)。各ピークに対応して示されているm/zの値は、当該ピークに対応するイオンのモノアイソトピック質量を示す(図4~6も同様)。ナトリウム塩を添加していないG3CAを用いて質量分析試料を調製した場合、NA4型糖鎖に対応するナトリウム付加分子に加えてプロトン付加分子やカリウム付加分子、2ナトリウム付加分子等が観測された。添加剤として固体マトリックスに対して一般的に用いられるNaClをG3CAに加えた場合、NA4型糖鎖に対応するイオン種をナトリウム付加分子のみに収束させることができたが、低m/z領域に夾雑ピークが見られ、全体的な感度は低下した。一方でNaTFAの場合は、低m/z領域に夾雑ピークを生じることなく、NA4型糖鎖に対応するイオン種をナトリウム付加分子のみに収束することができた。他のナトリウム塩を添加した場合でも、NA4型糖鎖に対応するイオン種はナトリウム付加分子のみに収束できたが、低m/z領域に著しいクラスター状のピークが観測され、実用性を欠いた。リン酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを用いた場合は、ウェルに滴下したNA4型糖鎖 50fmolの検出が困難であった。
<1-2.試料の検出限界の検討>
添加剤としてNaTFA(5mM)およびNaCl(5mM)を用い、各ウェルに試料として加えるNA4型糖鎖の量を変化させた他は、1-1と同様の条件で質量分析を行い、NA4型糖鎖の検出限界の比較を行った。NaTFAについては、各ウェルに10fmol, 5fmol, 2.5fmol, 1.3fmol, 0.7fmolおよび0.3fmolのNA4型糖鎖を加えて質量分析を行った(本実施例)。NaClについては、各ウェルに10fmol, 5fmol, 2.5fmolおよび1.3fmolのNA4型糖鎖を加えて質量分析を行った。(比較例)
図4(A)は、NaTFAと、上記各量のNA4型糖鎖とを含む、各ウェルに配置された質量分析用試料を質量分析して得られたマススペクトルである(実施例)。図4(B)は、NaClと、上記各量のNA4型糖鎖を含む、各ウェルに配置された質量分析用試料を質量分析して得られたマススペクトルである(比較例)。NaTFAの場合はNA4型糖鎖0.3fmolが検出限界であったが、NaClの場合はNA4型糖鎖2.5fmolの検出が難しかった。したがって、NaClと比べてNaTFAでは約一桁、検出限界が改善した。
(実施例2:GTHAPマトリックスを用いた添加剤の検討)
糖鎖の質量分析の際に用いられる他の液体マトリックス(GTHAP)でも効果を確めた。GTHAPの調製では、2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(2,4,6-Trihydroxyacetophenone) 10mgを50%ACN 1mLに溶解して10mg/mLとし、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを6.8μL加えてGTHAP液体マトリックス溶液とした。(a)ナトリウム塩を添加していないGTHAPとNA4型糖鎖 50fmolとを含む質量分析用試料、(b) NaCl(5mM)を添加剤として加えたGTHAPとNA4型糖鎖 50fmolとを含む質量分析用試料および、(c) NaTFA(5mM)を添加剤として加えたGTHAPとNA4型糖鎖 50fmolとを含む質量分析用試料を調製し、上記1-1と同様の方法で質量分析を行った。
図5は、本実施例の各質量分析用試料を質量分析することにより得られたマススペクトルである。図5の右側には、点線で囲まれたNA4型糖鎖に対応するピークを拡大して示した(矢印A2)。ナトリウム塩を添加していない質量分析用試料を質量分析すると、NA4型糖鎖に対応するナトリウム付加分子に加えてプロトン付加分子およびカリウム付加分子が観測された(a:比較例)。NaClを添加剤として加えた質量分析用試料ではナトリウム付加分子のみに収束させることができたが、感度が著しく低下し、低m/z領域に夾雑ピークが観測された(b:比較例)。NaTFAを添加剤として加えた質量分析用試料では、このような夾雑ピークが生じることなく、また感度を損なうことなくナトリウム付加分子のみにイオン種を収束させることができた(c:本実施例)。
(実施例3:3AQ/CAマトリックスを用いた添加剤の検討)
糖鎖の質量分析の際に用いられる他の液体マトリックス(3AQ/CA)でも効果を確かめた。p-クマル酸を100mM, 3-アミノキノリンを900mMの濃度で含む50%ACN溶液を調製し、この溶液をさらに50%ACNで1/5に希釈した溶液を3AQ/CA液体マトリックス溶液とした。(a)ナトリウム塩を添加していない3AQ/CAとNA4型糖鎖 500fmolとを含む質量分析用試料および、(b) NaTFA(5mM)を添加剤として加えた3AQ/CAとNA4型糖鎖500fmolとを含む質量分析用試料を調製し、質量分析を行った。
図6は、本実施例の各質量分析用試料を質量分析することにより得られたマススペクトルである。図6の右側には、点線で囲まれたNA4型糖鎖に対応するピークを拡大して示した(矢印A3)。ナトリウム塩を添加していない質量分析用試料を質量分析すると、NA4型糖鎖に対応するナトリウム付加分子に加えてプロトン付加分子とカリウム付加分子、その他多くのカチオン付加分子が観測された(a:比較例)。NaTFAを加えた質量分析用試料では、ナトリウム付加分子のみに観測されるイオン種を収束させることができた。また、低m/z領域に観測されていたクラスター状のピークも抑制することができた(b:本実施例)。
10…マトリックス添加剤、11…添加剤用容器、20…マトリックス試薬、21…マトリックス用容器、30…試料プレート、31…試料配置部位、32…疎水性表面、33…親水性表面、100…質量分析用キット。

Claims (14)

  1. 試料を調製することと、
    液体マトリックスを構成する物質を含むマトリックス試薬と、1以上のハロゲン原子を含むカルボン酸またはその塩を備えるマトリックス添加剤とを混合して質量分析用試料調製用材料を調製することと、
    前記試料と前記質量分析用試料調製用材料を混合して質量分析用試料を調製することと、
    前記質量分析用試料にレーザー光を照射してイオン化を行うことと、
    前記イオン化により生じたイオンまたは前記イオンを解離したイオンを質量分離して検出することと、
    を備える分析方法であって、
    前記マトリックス試薬は、アミンまたはその塩、および、有機物質またはその塩を含み、アミンがプロトンの受容体として働き、有機物質がプロトンの供与体となるものであり、
    前記マトリックス添加剤が塩を含むものであり、
    前記イオン化により生じるイオンまたは前記イオンを解離したイオンを、前記マトリックス添加剤に含まれる塩に由来するカチオンが付加したイオンに収束させ、該塩に由来するカチオンが付加したイオンを検出する、分析方法。
  2. 請求項1に記載の分析方法において、
    前記ハロゲン原子は、フッ素原子である分析方法。
  3. 請求項1または2に記載の分析方法において、
    前記マトリックス添加剤は、トリフルオロ酢酸塩である分析方法。
  4. 請求項1から3までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記マトリックス添加剤は、ナトリウム塩またはカリウム塩である分析方法。
  5. 請求項1から4までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記有機物質は、2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノンまたはクマル酸を含む分析方法。
  6. 請求項1に記載の分析方法において、
    前記アミンは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンまたは3-アミノキノリンである分析方法。
  7. 請求項1から6までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記試料は、糖、糖鎖、および糖または糖鎖の誘導体のうち少なくとも一つを含む分子を備える分析方法。
  8. 1以上のハロゲン原子を含むカルボン酸またはその塩を備えるマトリックス添加剤と、
    液体マトリックスを構成する物質を含むマトリックス試薬であって、アミンまたはその塩、および、有機物質またはその塩を含み、アミンがプロトンの受容体として働き、有機物質がプロトンの供与体となるものであるマトリックス試薬と
    を含み、前記マトリックス添加剤が塩を含むものであって、それによって、該マトリックス試薬及び該マトリックス添加剤と混合された試料のイオン化により生じるイオンまたは該イオンが解離したイオンが、前記マトリックス添加剤に含まれる塩に由来するカチオンが付加したイオンに収束される、質量分析用試料調製用材料。
  9. 請求項8に記載の質量分析用試料調製用材料において、
    前記ハロゲン原子は、フッ素原子である質量分析用試料調製用材料。
  10. 請求項8または9に記載の質量分析用試料調製用材料において、
    前記カルボン酸は、トリフルオロ酢酸である質量分析用試料調製用材料。
  11. 請求項8から10までのいずれか一項に記載の質量分析用試料調製用材料において、
    前記カルボン酸の塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩である質量分析用試料調製用材料。
  12. 請求項8から11までのいずれか一項に記載の質量分析用試料調製用材料を備える質量分析用キット。
  13. 請求項8から10までのいずれか一項に記載の質量分析用試料調製用材料を備え、
    前記マトリックス添加剤は、糖鎖および糖鎖誘導体のうち少なくとも一つを含む分子を備える試料の質量分析に用いられる糖鎖類分析用材料。
  14. 請求項13に記載の糖鎖類分析用材料を備える糖鎖類質量分析用キット。
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