JP2014092523A - 液体クロマトグラフィー−maldi質量分析法 - Google Patents

液体クロマトグラフィー−maldi質量分析法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014092523A
JP2014092523A JP2012244825A JP2012244825A JP2014092523A JP 2014092523 A JP2014092523 A JP 2014092523A JP 2012244825 A JP2012244825 A JP 2012244825A JP 2012244825 A JP2012244825 A JP 2012244825A JP 2014092523 A JP2014092523 A JP 2014092523A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
matrix
acid
mdpna
salt
added
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012244825A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5958288B2 (ja
Inventor
Yuki Ota
悠葵 太田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimadzu Corp
Original Assignee
Shimadzu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimadzu Corp filed Critical Shimadzu Corp
Priority to JP2012244825A priority Critical patent/JP5958288B2/ja
Publication of JP2014092523A publication Critical patent/JP2014092523A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5958288B2 publication Critical patent/JP5958288B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Abstract

【課題】液体クロマトグラフィーの分離モードとして塩を含む移動相を必要とする分離モードを用いた簡便なLC−MALDI−MS法を提供する。
【解決手段】分析対象物質を含む試料を、塩を含む移動相を用いた液体クロマトグラフィーに付し、溶出液を得て、得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する有機化合物をマトリックス添加剤として用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析に付すことを含む液体クロマトグラフィー−質量分析法。これまで塩によるイオン化抑制を回避するために非常に制約の大きかったLC−MALDI−MS法におけるLC分離モードが拡充される。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体クロマトグラフィー−マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(LC−MALDI−MS)法に関する。より詳しくは、本発明は、液体クロマトグラフィーの分離モードとして塩を含む移動相を必要とする分離モードを用いたLC−MALDI−MS法に関する。本発明は、種々の分析対象物質に適用することができるが、特に、タンパク質、ペプチド、糖ペプチド、糖鎖、脂質、及び核酸などの生体関連物質の分析に好適に適用することができる。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization; MALDI)質量分析法は、タンパク質、ペプチド、糖ペプチド、糖鎖、脂質、及び核酸などの生体関連物質をはじめ、種々の物質の分析に非常に有用である。しかしながら、試料中の塩類やその他の夾雑物に起因するイオン化抑制は深刻な問題となる。イオン化抑制されると、本来分析されるべき物質が検出されなくなってしまう。
このため、LC−MALDI−MS法を行う場合には、LCの分離モードとしては、塩を使用しない逆相モードが専ら利用されている。
特開2006−189391号公報には、MALDI質量分析法において、試料中に存在する無機塩、界面活性剤などの夾雑物によるイオン化抑制を抑止するために、ターゲットプレート上にて、分析対象物とマトリックス分子とをシリカゲルのような多孔性微粒子の存在下で共結晶化することが開示されている(請求項1、2、5)。
一方、特開2009−121857号公報には、MALDIにおいて検出感度が低いリン酸化ペプチドの検出感度を向上させると共に、マトリックス添加剤としてリン酸を用いた場合には検出不能なペプチドを検出するために、ホスホン酸基を有する化合物をマトリックスに添加することが開示されている(請求項1)。また、ラピッド・コミュニケーションズ・イン・マス・スペクトロメトリー(Rapid Communications in Mass Spectrometry)第22巻、2008年、1109−1116頁にも、同様のことが開示されている。
特開2006−189391号公報 特開2009−121857号公報
特開2006−189391号公報に開示の方法は、試料中の塩類やその他の夾雑物に起因するイオン化抑制の問題を解決する手法の一つではある。しかしながら、シリカゲルのような多孔性微粒子は、水及び一般的に利用される有機溶媒に不溶であり、試料がサスペンジョンとなるため扱いにくく、LC−MALDI−MSの自動化にも不向きである。また、多孔性微粒子の利用はいわゆる分子ふるい効果に基づくものであり、すなわち、塩、界面活性剤などの夾雑物を粒子の内部に浸透又は吸着させ、一方、分析対象物及びマトリックス分子は粒子の表面に保持する性質に基づくものである(同号公報段落[0017])。多孔性微粒子の内部に入り込まないためには、分析対象となる物質は、およそ1,000以上の分子量のものに限られてしまう。また、同号公報には、多孔性微粒子を用いた方法をLC−MALDI−MSに適用し得ることは開示されていない。
特開2009−121857号公報には、トリプシン消化はTris−HClを用いて行われており(同号公報段落[0030]、[0032])、LC−MALDI−MSは開示されていない。
これまで、LC−MALDI−MS法を行う場合には、LCの分離モードとしては、イオン化抑制を避けるために塩を使用しない逆相モードが専ら利用されてきたために、分析対象物に応じた的確なLC分離を行うことができなかった。このために、所望の良好なマススペクトルは得られなかった。あるいは、LCの溶出液について、MALDI質量分析を行う前に、脱塩操作を行う必要があった。このために、操作が煩雑となり迅速な操作が妨げられ、また、試料液の脱塩の過程で分析対象物のロスが起こり、S/N比の良好なマススペクトルを得ることは難しかった。
そこで、本発明の目的は、液体クロマトグラフィーの分離モードとして塩を含む移動相を必要とする分離モードを用いた簡便なLC−MALDI−MS法を提供することにある。このことにより、これまで塩によるイオン化抑制を回避するために非常に制約の大きかったLC−MALDI−MS法におけるLC分離モードが拡充される。
本発明者は鋭意検討の結果、本発明を完成した。本発明は、以下の発明を含む。
(1) 分析対象物質を含む試料を、塩を含む移動相を用いた液体クロマトグラフィーに付し、溶出液を得て、
得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する化合物をマトリックス添加剤として用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析に付すこと
を含む液体クロマトグラフィー−質量分析法。
(2) 前記移動相に含まれる塩は、アルカリ金属及び窒素含有化合物からなる群から選ばれる陽イオン成分と、無機酸及び有機酸からなる群から選ばれる陰イオン成分とからなる少なくとも1種の塩である、上記(1)に記載の方法。
(3) 前記移動相に含まれる塩は、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリス、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びエタノールアミンからなる群から選ばれる有機アミン化合物又はアンモニアと、無機酸又は有機酸とからなる少なくとも1種の塩である、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 前記移動相に含まれる塩は、アルカリ金属と、リン酸及びホウ酸からなる群から選ばれる無機酸とからなる少なくとも1種の塩である、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(5) 前記ホスホン酸基を有する化合物は、分子内にホスホン酸基を1つ又は2つ以上有する有機化合物である、上記(1)〜(4)のうちのいずれかに記載の方法。
(6) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸及び1,5−ジアミノナフタレンからなる群から選ばれる質量分析用マトリックスを用いる、上記(1)〜(5)のうちのいずれかに記載の方法。
(7) 前記分析対象物質は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖鎖、脂質、及び核酸からなる群から選ばれる、上記(1)〜(6)のうちのいずれかに記載の方法。
(8) 前記液体クロマトグラフィーの分離モードとして、クロマトフォーカシングを用いる、上記(1)〜(7)のうちのいずれかに記載の方法。
本発明によると、液体クロマトグラフィーの分離モードとして塩を含む移動相を必要とする分離モードを用いた簡便なLC−MALDI−MS法が提供される。従来は、LC−MALDI−MS法を行う場合には、LCの分離モードとしては、イオン化抑制を避けるために塩を使用しない逆相モードが専ら利用されてきたために、分析対象物に応じた的確なLC分離を行うことができなかった。あるいは、LCの溶出液について、MALDI質量分析を行う前に、逆相カラムや多孔性微粒子を用いた脱塩操作を行う必要があった。
本発明によれば、ホスホン酸基を有する有機化合物をマトリックス添加剤として用いるので、LC移動相に使用される緩衝液(塩成分)が試料液中に含まれていても、イオン化抑制が起こることがなく、良好なマススペクトルが得られる。
このため、分析対象物に応じた的確なLC分離を行うために適切な種々のLC分離モード及び緩衝液(塩成分)を用いることができると共に、得られたLC溶出液について、脱塩操作を行うことなく、MALDI質量分析を行うことができる。
従って、本発明の方法は、簡便且つ迅速であり、広範な種類の分析対象物に適用することができる。特に、LC分離モードとしてクロマトフォーカシングを採用し、等電点の異なるペプチドを検出できることは大きな利点である。
図1は、実施例1における結果を示す。図1(a)は、MDPNA添加及びMDPNA無添加における[Glu1]-FibとACTH 18-39の各抽出イオンクロマトグラム及びpH変化曲線を示す。図1(b)は、[Glu1]-Fib(保持時間43分)とACTH 18-39(保持時間53分)の各マススペクトルを示す。 図2は、実施例2における結果を示す。図2(a)は、MDPNA添加及びMDPNA無添加におけるBSAのトリプシン消化物の各ベースピーククロマトグラムを示す。図2(b)は、保持時間16.05分と保持時間18.55分の各マススペクトルを示す。 図3は、参考実験例1における結果を示す。図3(a−1)は、マトリックスCHCAを用いてMDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、図3(a−2)は、マトリックスCHCAを用いてMDPNA添加の場合のマススペクトルを示す。図3(b−1)は、マトリックスDHBを用いてMDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、図3(b−2)は、マトリックスDHBを用いてMDPNA添加の場合のマススペクトルを示す。 図4は、参考実験例2においてマトリックスCHCAを用いた場合の結果を示す。図4(1)は、基準用試料(塩なし)のマススペクトルを示し、図4(2)は、マトリックス添加剤の無添加の場合のマススペクトルを示し、図4(3)は、MDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図4(4)は、EDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図4(5)は、PAC添加の場合のマススペクトルを示し、図4(6)は、HEDP添加の場合のマススペクトルを示す。 図5は、参考実験例2においてマトリックスDHBを用いた場合の結果を示す。図5(1)は、基準用試料(塩なし)のマススペクトルを示し、図5(2)は、マトリックス添加剤の無添加の場合のマススペクトルを示し、図5(3)は、MDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図5(4)は、EDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図5(5)は、PAC添加の場合のマススペクトルを示し、図5(6)は、HEDP添加の場合のマススペクトルを示す。 図6は、参考実験例3においてマトリックスCHCAを用いた場合の結果を示す。図6(a)は、BSAのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(b)は、Alcohol dehydrogenaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(c)は、Enolaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(d)は、Phosphorylase bのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフである。 図7は、参考実験例3においてマトリックスDHBを用いた場合の結果を示す。図7(a)は、BSAのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(b)は、Alcohol dehydrogenaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(c)は、Enolaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(d)は、Phosphorylase bのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフである。 図8は、参考実験例4における結果を示す。図8(a)は、0.1%TFA(塩なし)におけるMDPNA無添加(1)又はMDPNA添加(2)の場合のマススペクトルであり、図8(b)、(c)、(d)はそれぞれ、25mM、375mM、750mMの各濃度のピリジン/ギ酸におけるMDPNA無添加(1)又はMDPNA添加(2)の場合のマススペクトルである。 図9は、参考実験例5における結果を示す。図9(a−1)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(a−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。図9(b−1)は、50mMのNa2PO4水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(b−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。図9(c−1)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスDHBを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(c−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。図9(d−1)は、50mMのNa2PO4水溶液について、マトリックスDHBを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(d−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。
本発明のLC−MALDI−MS法は、分析対象物質を含む試料を、塩を含む移動相を用いた液体クロマトグラフィー(LC)に付し、溶出液を得る工程と、
得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する化合物をマトリックス添加剤として用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)に付す工程と
を含む。
[分析対象物質]
分析対象物質は、特に限定されず、通常、質量分析の対象とされるべき種々の物質が含まれる。例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、脂質、及び核酸等の生体関連物質、天然又は合成ポリマー、低分子化合物等が挙げられる。タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチドの消化されたペプチドフラグメントも分析対象となり得る。分析対象の分子量は問われない。1,000未満の分子量のペプチドフラグメントも測定対象となり得る。1,000未満の分子量の化合物も分析対象となることは、多孔性微粒子のふるい効果を用いる前記特開2006−189391号公報に開示の方法に対する利点の一つである。
[液体クロマトグラフィー(LC)]
本発明においては、液体クロマトグラフィーの分離モードは、塩を含む移動相を必要とする分離モードを用いる。塩を含む移動相を必要とする分離モードであれば、その種類は問われない。例えば、逆相モード、順相モード、クロマトフォーカシング(Chromatofocusing)モード、親水性相互作用(HILIC)モード、イオン交換モード、配位子交換モード、イオン排除モード、サイズ排除モード、マルチモード、アフィニティーモード、光学分割モード等が挙げられる。
移動相は、各分離モードに合わせて適宜選択するとよい。通常、移動相は、水、緩衝剤(塩類)、及び水溶性有機溶媒を含んでいる。前記移動相に含まれる塩は、例えば、アルカリ金属及び窒素含有化合物からなる群から選ばれる陽イオン成分と、無機酸及び有機酸からなる群から選ばれる陰イオン成分とからなる少なくとも1種の塩である。陽イオン成分の窒素含有化合物としては、例えば、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリス、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びエタノールアミン等の有機アミン化合物;アンモニア等が挙げられる。陰イオン成分の無機酸としては、HCl、HPO、HBO、HSO、HNO、HCrO、HBr、HSCN、HCO等が挙げられ、有機酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フタル酸、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)等が挙げられる。また、前記移動相に含まれる塩は、例えば、Na、K等のアルカリ金属と、リン酸、ホウ酸等の無機酸とからなる少なくとも1種の塩である。
これらの塩の内から、分析対象物質に応じて適切な塩を選択して、移動相溶液のpHを調整するとよい。前記特開2009−121857号公報に開示されているTris−HClでは、緩衝液のpHを8〜9程度の範囲には調整できるが、それ以外のpH領域には調整することはできない。本発明においては、上記の塩の内から適切なものを選択することにより、非常に広範囲の例えばpH2〜10程度に調整することができる。広範囲のpHに調整可能なことにより、対象物質の等電点を考慮して、適切なLC分離を行うことができる。特に、LC分離モードとしてクロマトフォーカシングを採用し、等電点の異なるペプチドを分離検出できることは大きな利点である。
このようにして、分析対象物質に応じた的確なLC分離を行い、溶出液を得ることができる。
次に、得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する化合物をマトリックス添加剤として用いてMALDI質量分析を行う。
[マトリックス]
マトリックス(マトリクス)として、特に限定されることはなく、公知のものから適宜選択して用いるとよい。マトリックスとして、例えば、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)、シナピン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、1,5−ジアミノナフタレン等が挙げられる。
[マトリックス添加剤]
本発明において、マトリックス添加剤としてホスホン酸基を有する化合物を用いる。前記ホスホン酸基を有する化合物には、ホスホン酸(亜リン酸)も含まれるが、ホスホン酸基を有する有機化合物が好ましい。前記ホスホン酸基を有する有機化合物は、分子内にホスホン酸基を1つ有している化合物であってもよいし、又は、分子内にホスホン酸基を2つ以上有する化合物であってもよい。
分子内にホスホン酸基を1つ有している化合物として、具体的には、下記の構造式で示されるメタンホスホン酸(Methanephosphonic acid; MPNA)、ベンゼンホスホン酸(Benzenephosphonic acid;BPNA)、ホスホノ酢酸(Phosphonoacetic acid;PAC)等が挙げられる。
Figure 2014092523
分子内にホスホン酸基を2つ以上有している化合物として、具体的には、下記の構造式で示されるメタンジホスホン酸(Methanediphosphonic acid;MDPNA)、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(Ethane-1-hydroxy-1,1-diphosphonic acid;HEDP)、1,2−エタンジホスホン酸(1,2-Ethanediphosphonic acid;EDPNA)、ニトリロトリス(メタンホスホン酸)(Nitrilotris(methanephosphonic acid);NTMPNA)、エチレンジアミンテトラキス(メタンホスホン酸)(Ethylenediaminetetrakis(methanephosphonic acid);EDTMPNA)等が挙げられる。これらの内でも、メタンジホスホン酸MDPNA(メチレンジホスホン酸)は安価であり好ましい。
Figure 2014092523
マトリックス添加剤としてホスホン酸基含有化合物を用いることにより、種々の塩が含まれているLC分離された溶出液を、脱塩することなく、MALDI質量分析に付すことができる。すなわち、LCで汎用されている一般的な緩衝剤に対して、MALDIの耐塩性が増強され、イオン化抑制が起こることがなく、良好なマススペクトルが得られる。さらに、マススペクトルのバックグラウンドノイズとなるアルカリ金属アダクトイオンの生成が抑制される。また、これらホスホン酸基含有化合物は、いずれも水に可溶であるため、LC−MALDI−MS用自動スポッチィング装置等の装置への適用も容易である。
本発明において、マトリックス添加剤とマトリックスとの組み合わせの比率は特に制限はないが、添加剤/マトリックスのモル比が、例えば0.01〜50、好ましくは0.01〜1の範囲となるようにすることができる。
本発明において、マトリックス添加剤としてのホスホン酸基含有化合物のマトリックスへの添加は、特に限定されず、MALDI質量分析装置のサンプルプレート上で、前記添加剤とマトリックスとが共存している状態となるようにすればよい。質量分析すべきLC分離された溶出液、マトリックス溶液、及び前記添加剤溶液を適宜の順序でサンプルプレート上に滴下してもよい。あるいは、マトリックス添加剤とマトリックスとの混合溶液を調製しておき、質量分析すべきLC分離された溶出液、前記添加剤/マトリックス混合溶液を適宜の順序でサンプルプレート上に滴下してもよい。
マトリックス添加剤及びマトリックスの混合溶液は、通常、マトリックス溶液と前記添加剤溶液とをそれぞれ調製しておき、両溶液を混合することによって調製することができる。溶媒としては、例えば、アセトニトリル(ACN)−トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液、アセトニトリル水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液などを用いることができる。アセトニトリル−トリフルオロ酢酸水溶液におけるアセトニトリルの濃度は例えば10〜90体積%程度であり、トリフルオロ酢酸の濃度は例えば0.05〜1体積%程度とするとよい。
マトリックス添加剤溶液は、例えば、0.5〜50mg/mL、好ましくは5〜10mg/mL、例えば5mg/mLの濃度の溶液に調製することができる。マトリックス溶液は、例えば、1mg/mL〜飽和濃度、好ましくは1〜10mg/mL、例えば10mg/mLの濃度の溶液に調製することができる。これらマトリックス添加剤溶液及びマトリックス溶液は、前記の添加剤/マトリックスのモル比となるように、例えば、10:1〜1:10、例えば1:1の体積比で混合するとよい。
本発明において使用される質量分析装置としては、MALDIイオン源と組み合わされたものであれば特に限定されない。例えば、MALDI−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間)型質量分析装置、MALDI−IT(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−イオントラップ)型質量分析装置、MALDI−IT−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−イオントラップ−飛行時間)型質量分析装置、MALDI−FTICR(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴)型質量分析装置等が挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
以下において、質量分析は、MALDI分析用ターゲットプレート(島津製作所製AXIMAシリーズ用SUS304ターゲットプレート、又はHudson Surface Technology社製、島津製作所MADLI AXIMA用μFocus MALDIプレート)を用いて、AXIMA Performance(島津製作所製)、又はAXIMA Resonance(島津製作所製)を用いて行った。
[実施例1]
この実施例1では、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用することで、通常は移動相に不揮発性の塩を要求するためにLC−MALDI−MSでは使用できないクロマトフォーカシング(Chromatofocusing)を、LC−MALDI−MSのLC分離モードとして使用できたことを示す。
手順:
(1) MALDI分析用ターゲット(Hudson Surface Technology社製)のすべてのウェルに2,5−ジヒドロキシ安息香酸2.5μgとメチレンジホスホン酸10μgとを塗布したターゲット(MDPNA添加)と、ターゲットのすべてのウェルに2,5−ジヒドロキシ安息香酸2.5μgのみを塗布したターゲット(MDPNA無添加)をそれぞれ作成した。
(2) 25mMピペラジン、及び12.5mM 1−メチルピペラジンを含む緩衝溶液を調製した。この緩衝溶液をそれぞれpH5、又はpH3となるように塩酸で調整した2種の緩衝溶液(pH5、又はpH3)を調製した。
(3) 測定試料として、以下のペプチド:
副腎皮質刺激ホルモンフラグメントACTH(18−39):adrenocorticotropic hormone fragment (18-39); Arg Pro Val Lys Val Tyr Pro Asn Gly Ala Glu Asp Glu Ser Ala Glu Ala Phe Pro Leu Glu Phe(配列番号1);モノアイソトピック(monoisotopic)質量 2464.20;(SIGMA−ALDRICH社製),
繊維素ペプチドB:[Glu1]-Fibrinopeptide; Glu Gly Val Asn Asp Asn Glu Glu Gly Phe Phe Ser Ala Arg(配列番号2);モノアイソトピック質量 1569.67;(SIGMA−ALDRICH社製)
をそれぞれ20fmol/μL(配列番号1)、80fmol/μL(配列番号2)となるように上記(2)の緩衝溶液pH5に溶解させた。
(4) 上記(2)の緩衝溶液pH5で平衡化させた弱陰イオンカラム(Inertsil AX 150mmx0.5mm,5μm;ジーエルサイエンス社製)に上記(3)の測定試料0.1μLを打ち込み、上記(2)の緩衝溶液pH3で溶出させた (クロマトフォーカシング)。液体クロマトグラフィー装置は、Prominence nano(島津製作所製)を用いた。カラムからの溶出液を7秒ごとに上記(1)で作成した各MALDI分析用ターゲット(MDPNA添加又は無添加)にウェルを順次ずらしながら塗布した。
(5) 上記(4)で溶出液を塗布したターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Resonance(島津製作所製)のMid、ポジティブモ−ドでそれぞれ計測した。
図1(a)に、MDPNA添加及びMDPNA無添加における[Glu1]-FibとACTH 18-39の各抽出イオンクロマトグラム及びpH変化曲線を示す。図1(a)において、横軸は保持時間(分)、縦軸(図示しない)はマススペクトルでのイオンの強度を表し、図中に強度100mVのスケールを示している。また、右側の縦軸は、pHを表している。
図1(b)に、[Glu1]-Fib(保持時間43分)とACTH 18-39(保持時間53分)の各マススペクトルを示す。図1(b)において、横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。すなわち、各マススペクトル1(MDPNA添加)及び3(MDPNA無添加)においては、[Glu1]-Fibのイオン強度を100%とした相対強度(%)を表し、各マススペクトル2(MDPNA添加)及び4(MDPNA無添加)においては、ACTH 18-39のイオン強度を100%とした相対強度(%)を表す。
弱陰イオン交換カラムからの溶出液は多量の塩を含むため、MDPNA無添加ではほとんど検出することができなかった(図1(a)における「無添加」:3,4)。しかし、MDPNA添加ではACTH 18-39、及び[Glu1]-Fibを感度よく検出することができた(図1(a)における「添加」:1,2)。図1(b)から、MDPNAを添加すると、LC溶出液サンプルのS/N比が著しく改善していた。クロマトフォーカシングではその保持時間から分析対象の等電点がわかるために、この等電点とマススペクトルの情報を組み合わせることで、未知の測定対象の同定に効果を発揮できる。
[実施例2]
この実施例2では、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用し、移動相に塩を要求する親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)をLC分離モードとするLC−MALDI−MSを行った。
手順:
(1) MALDI分析用ターゲット(Hudson Surface Technology社製)のすべてのウェルに2,5−ジヒドロキシ安息香酸1.25μgとメチレンジホスホン酸10μgとを塗布したターゲット(MDPNA添加)と、ターゲットのすべてのウェルに2,5−ジヒドロキシ安息香酸1.25μgのみを塗布したターゲット(MDPNA無添加)をそれぞれ作成した。
(2) 移動相A:20mMギ酸アンモニウムを含む80%(v/v)アセトニトリル/水 (pH4.5)と、移動相B:20mMギ酸アンモニウムの水溶液(pH4.5)を調製した。
(3) 測定試料として、市販の牛血清アルブミン(BSA)のトリプシン消化物(Waters社製)を20mM ギ酸アンモニウムを含む80%(v/v)アセトニトリル/水に100fmol/mLとなるように溶解した。
(4) 上記(3)で調製したサンプル0.1μLをHILICカラム(SeQuantTM ZIC−HILIC,100mmx0.1mm,3.5μm,20オングストローム;メルクミリポア社製)に打ち込み、200nL/minの流速で溶出させた(0−10分,移動相B 100%;10−30分,移動相B 0−50%のリニアグラジエント;30−35分,移動相B 50−95%のリニアグラジエント; 35−40分,移動相B 95%)。液体クロマトグラフィー装置は、Prominence nano(島津製作所製)を用いた。カラムからの溶出液を30秒ごとに上記(1)で作成した各MALDI分析用ターゲット(MDPNA添加又は無添加)にウェルを順次ずらしながら塗布した。
(5) 上記(4)で溶出液を塗布したターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Resonance(島津製作所製)のMid、ポジティブモ−ドでそれぞれ計測した。
図2(a)に、MDPNA添加及びMDPNA無添加におけるBSAのトリプシン消化物の各ベースピーククロマトグラムを示す。図2(a)において、横軸は保持時間(分)、縦軸(図示しない)はマススペクトルでのイオンの強度を表し、図中に強度50mVのスケールを示している。
図2(b)に、図2(a)のMDPNA添加で観測された最も強度の強い方から2つのピーク:
ピーク1:保持時間16.05分,LGEYGFQNALIVR,M+H:1479.8
ピーク2:保持時間18.55分,YLYEIAR,M+H:927.5
の各マススペクトルを示す(図2(b)のスペクトル1,2)。また、MDPNA無添加での保持時間16.05分、及び保持時間18.55分でのマススペクトルを示す(図2(b)のスペクトル3,4)。横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。
HILICカラムからの溶出液は20mMギ酸アンモニウムを含むため、MDPNA無添加ではBSAのトリプシン消化物に由来するピークをベースピーククロマトグラムでは確認することができなかった(図2(a)の「無添加」)。しかし、MDPNA添加ではBSAのトリプシン消化物に由来する複数のピークを感度よく検出することができた(図2(a)の「添加」)。図2(b)に示すように、MDPNA添加ではBSAのトリプシン消化物であるLGEYGFQNALIVR、及びYLYEIARのピークをマスクロマトグラム上でも明確にS/N比よく確認できた。一方、MDPNA無添加では、これらのピークを確認できなかった。また、MS/MSイオンサーチによりMDPNA添加サンプルではBSAを同定することができたが、MDPNA無添加サンプルではBSAトリプシン消化物に由来するピークを一切検出できなかった。
HILICは近年、糖鎖や糖ペプチド等の逆相カラムに保持しにくい測定対象の保持を可能にする分離モードとして注目を集めている。本発明の方法は、HILICをLC分離モードとしたLC−MALDI−MSにも有用であることが示された。
[参考実験例1]
この参考実験例1では、LCの各種分離モードにおける移動相に使用され得る塩類を用いた場合に、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用し、マトリクスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)又は2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を使用して、MALDI−MSを行った。
手順:
(1) トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びジエタノールアミンの混合緩衝溶液(各5mM)を調製し、塩酸でpH8.0に調整した。
(2)測定対象となる7種類のペプチド:
アンジオテンシンI(Ang I); Asp Arg Val Tyr Ile His Pro Phe His Leu(配列番号3); モノアイソトピック(monoisotopic)質量 1295.68;(SIGMA−ALDRICH社製),
アンジオテンシンII (Ang II); Asp Arg Val Tyr Ile His Pro Phe(配列番号4); モノアイソトピック質量 1045.54;(SIGMA−ALDRICH社製),
繊維素ペプチドB:[Glu1]-Fibrinopeptide; Glu Gly Val Asn Asp Asn Glu Glu Gly Phe Phe Ser Ala Arg(配列番号2); モノアイソトピック質量 1569.67;(SIGMA−ALDRICH社製),
N−アセチル−レニン基質 テトラデカペプチド:N-Acetyl-Renin; NAc-Asp Arg Val Tyr Ile His Pro Phe His Leu Leu Val Tyr Ser(配列番号5); モノアイソトピック質量 1799.94;(SIGMA−ALDRICH社製),
副腎皮質刺激ホルモンフラグメントACTH(1−17):adrenocorticotropic hormone fragment (1-17); Ser Tyr Ser Met Glu His Phe Arg Trp Gly Lys Pro Val Gly Lys Lys Arg(配列番号6); モノアイソトピック質量 2092.08;(SIGMA−ALDRICH社製),
副腎皮質刺激ホルモンフラグメントACTH(18−39):adrenocorticotropic hormone fragment (18-39); Arg Pro Val Lys Val Tyr Pro Asn Gly Ala Glu Asp Glu Ser Ala Glu Ala Phe Pro Leu Glu Phe(配列番号1); モノアイソトピック質量 2464.20;(SIGMA−ALDRICH社製),
副腎皮質刺激ホルモンフラグメントACTH(7−38):adrenocorticotropic hormone fragment (7-38); Phe Arg Trp Gly Lys Pro Val Gly Lys Lys Arg Arg Pro Val Lys Val Tyr Pro Asn Gly Ala Glu Asp Glu Ser Ala Glu Ala Phe Pro Leu Glu(配列番号7); モノアイソトピック質量 3656.93;(SIGMA−ALDRICH社製)

を上記(1)の塩を含む混合緩衝溶液に溶解させ、ペプチド混合試料溶液を調製した。この際、ACTH(7−38)は300fmol/μL、その他の各ペプチドは200fmol/μLとなるようにペプチド混合試料溶液を調製した。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
また、別途、マトリックスとして、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
(5) MALDI分析用ターゲット(島津製作所製)のウェル上に、上記(2)のペプチド混合試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA又はDHB)0.5μLとを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6)上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものをMDPNA無添加試料とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリニア、ポジティブモ−ドで計測した。
図3(a−1)は、マトリックスCHCAを用いてMDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、図3(a−2)は、マトリックスCHCAを用いてMDPNA添加の場合のマススペクトルを示す。図3(b−1)は、マトリックスDHBを用いてMDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、図3(b−2)は、マトリックスDHBを用いてMDPNA添加の場合のマススペクトルを示す。横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。
図3(a−1)、及び(b−1)に示すように、MDPNA無添加ではいずれのマトリックスCHCA及びDHBの場合にもサンプルのイオン化抑制が起こると共に、プロトン付加イオン[M+H]+のみならず、カリウム付加イオン[M+K]+ が生じ複雑なマススペクトルとなっている。一方、図3(a−2)、及び(b−2)に示すように、MDPNA添加することで、いずれのマトリックスCHCA及びDHBの場合にも顕著にS/N比が改善され、カリウム付加イオン[M+K]+ 等もほとんど生じずに単純な明快なマススペクトルを得ることができた。
このように、本発明は、LCの各種分離モードにおける移動相に使用され得る塩類を用いた場合に適用できることが示された。
[参考実験例2]
この参考実験例2では、ホスホン酸基含有マトリックス添加剤として、メチレンジホスホン酸(MDPNA)の他に、1,2−エタンジホスホン酸(EDPNA)、ホスホノ酢酸(PAC)、又はエタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(HEDP)をそれぞれ用いて、マトリクスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)又は2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を使用して、MALDI−MSを行った。
手順:
(1) トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びジエタノールアミンの混合緩衝溶液(各5mM)を調製し、塩酸でpH8.0に調整した。
(2) 測定対象となる7種類のペプチド:
Ang I(配列番号3),
Ang II(配列番号4),
[Glu1]-Fib(配列番号2),
N-Acetyl-Renin(配列番号5),
ACTH(1−17)(配列番号6),
ACTH(18−39)(配列番号1),
ACTH(7−38)(配列番号7)
を上記(1)の塩を含む混合緩衝溶液に溶解させ、ペプチド混合試料溶液を調製した。この際、ACTH(7−38)は300fmol/μL、その他の各ペプチドは200fmol/μLとなるようにペプチド混合試料溶液を調製した。
また、別途、上記7種類のペプチドを、基準用として、上記(1)の塩を含む混合緩衝溶液の代わりに0.1%TFA水溶液(塩を含まない)に溶解させたペプチド混合試料溶液を調製した。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
また、別途、マトリックスとして、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
また、別途、1,2−エタンジホスホン酸(EDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。ホスホノ酢酸(PAC)を1%(w/v)となるように水に溶解した。エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(HEDP)を1%(w/v)となるように水に溶解した。このようにして、各添加剤溶液を調製した。
(5) MALDI分析用ターゲットのウェル上に、上記(2)のペプチド混合試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA又はDHB)0.5μLを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6)上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。同様に、EDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをEDPNA添加試料とした。PAC水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをPAC添加試料とした。HEDP水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをHEDP添加試料とした。
MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものを無添加試料とした。
また、上記(5)で得られた基準用のペプチド混合試料溶液にも、超純水0.5μLを各ウェルに滴下し、これを基準用試料(塩なし)とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリニア、ポジティブモ−ドで計測した。
図4にマトリックスCHCAを用いた場合の結果を示す。
図4(1)は、基準用試料(塩なし)のマススペクトルを示し、図4(2)は、マトリックス添加剤の無添加の場合のマススペクトルを示し、図4(3)は、MDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図4(4)は、EDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図4(5)は、PAC添加の場合のマススペクトルを示し、図4(6)は、HEDP添加の場合のマススペクトルを示す。横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。
図5にマトリックスDHBを用いた場合の結果を示す。
図5(1)は、基準用試料(塩なし)のマススペクトルを示し、図5(2)は、マトリックス添加剤の無添加の場合のマススペクトルを示し、図5(3)は、MDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図5(4)は、EDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図4(5)は、PAC添加の場合のマススペクトルを示し、図5(6)は、HEDP添加の場合のマススペクトルを示す。横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。
マトリックスCHCAを用いた場合に、図4(1)に示すように、0.1%TFAを用いた基準用試料には塩が含まれていないイオン化抑制が起こらずに良好なマススペクトルが得られた。しかしながら、図4(2)に示すように、ホスホン酸基含有マトリックス添加剤が無添加の場合には、緩衝剤塩類によりイオン化が抑制されS/N比が低くなり、且つ、7種のペプチドの内のいくつかのペプチドは検出されなかった。これに対して、ホスホン酸基含有マトリックス添加剤を用いた場合には、図4(3)〜(6)に示すように、いずれも、イオン化抑制は起こらず、S/N比よく、7種の全てのペプチドが検出された。
マトリックスDHBを用いた場合にも、図5(1)〜(6)に示すように、ホスホン酸基含有マトリックス添加剤による同様の効果が見られた。
このように、ホスホン酸基含有マトリックス添加剤によって、MALDIの耐塩性が増強された。
[参考実験例3]
この参考実験例3では、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用し、マトリクスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)又は2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を使用して、種々のタンパク質のトリプシン消化物 (複数のペプチドの混合物) をサンプルとして、MALDI−MSを行った。ホスホン酸基含有マトリックス添加剤が、種々のペプチドに対して効果を発揮できることを示す。
手順:
(1) トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びジエタノールアミンの混合緩衝溶液(各5mM)を調製し、塩酸でpH6.0、又はpH8.0に調整した2種の緩衝溶液(pH6、又はpH8)を調製した。
(2) 測定対象となる4種類のタンパク質:
牛血清アルブミン(BSA),
酵母アルコール脱水素酵素 (Alcohol dehydrogenase),
酵母エノラーゼ (Enolase),
ウサギグリコーゲンホスホリラーゼb (Phosphorylase b)
の各トリプシン消化物(すべてWaters社製)を、200fmol/μLとなるようにそれぞれ上記(1)の塩を含む緩衝溶液pH6又はpH8に溶解させ、各試料溶液(pH6又はpH8)とした。
また、別途、上記4種類のタンパク質の各トリプシン消化物を、基準用として、上記(1)の塩を含む混合緩衝溶液の代わりに0.1%TFA水溶液(塩を含まない)に溶解させた試料溶液を調製した。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
また、別途、マトリックスとして、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
(5) MALDI分析用ターゲットのウェル上に、上記(2)の各試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA又はDHB)0.5μLを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6) 上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものをMDPNA無添加試料とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリフレクトロン、ポジティブモ−ドで計測した。
(8) ペプチドマスフィンガープリンティング法により、配列包括度を算出した。
図6にマトリックスCHCAを用いた場合の結果を示す。
図6(a)は、BSAのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(b)は、Alcohol dehydrogenaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(c)は、Enolaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(d)は、Phosphorylase bのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフである。各横軸に、塩なし(基準用)、緩衝溶液pH6、緩衝溶液pH8それぞれについて、MDPNA添加及びMDPNA無添加を示し、縦軸は配列包括度(%)を表している。なお、N.D.は、ペプチドマスフィンガープリンティング法で同定できなかったことを示す。
図7にマトリックスDHBを用いた場合の結果を示す。
図7(a)は、BSAのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(b)は、Alcohol dehydrogenaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(c)は、Enolaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(d)は、Phosphorylase bのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフである。各横軸に、塩なし(基準用)、緩衝溶液pH6、緩衝溶液pH8それぞれについて、MDPNA添加及びMDPNA無添加を示し、縦軸は配列包括度(%)を表している。なお、N.D.は、ペプチドマスフィンガープリンティング法で同定できなかったことを示す。
図6(a)〜(d)に示すように、マトリックスCHCAを用いた場合に、各タンパク質のトリプシン消化物について、緩衝溶液pH6又はpH8に溶解したサンプルでは、MDPNA無添加では緩衝溶液に含まれる塩によるイオン化抑制が起こり、「塩なし」に比べて極端に配列包括度が下がっていた。一方、MDPNA添加すると、イオン化抑制が抑制されたので、緩衝溶液pH6又はpH8に溶解したサンプルであっても、「塩なし」と同等レベルの高い配列包括度が達成された。
図7(a)〜(d)に示すように、マトリックスDHBを用いた場合に、各タンパク質のトリプシン消化物について、MDPNA無添加では緩衝溶液に含まれる塩によるイオン化抑制が起こり、同定不能となった。一方、MDPNA添加すると、イオン化抑制が抑制されたので、緩衝溶液pH6又はpH8に溶解したサンプルであっても、「塩なし」と同等レベルの高い配列包括度が達成された。これらの結果から、MDPNAマトリックス添加剤は幅広い種類のペプチドに対して効果を発揮できることが示された。
[参考実験例4]
この参考実験例4では、試料溶液中の塩濃度を変化させて、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用することにより、MALDI−MSにおける耐塩性が向上したことを示す。
手順:
(1)0.1%TFA水溶液(塩を含まない)を調製した。また、25mM、375mM、750mMの各濃度のピリジン/ギ酸水溶液(pH3.5)をそれぞれ調製した。
(2) 測定対象となる5種類のタンパク質:
牛血清アルブミン(BSA),
酵母アルコール脱水素酵素 (Alcohol dehydrogenase),
酵母エノラーゼ (Enolase),
ウサギグリコーゲンホスホリラーゼ b(Phosphorylase b),
牛ヘモグロビン (Bovine Hemoglobin)
の各トリプシン消化物(すべてWaters社製)をそれぞれ80fmol/μLとなるように上記(1)の各溶液に溶解させ、各試料溶液とした。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
(5) MALDI分析用ターゲットのウェル上に、上記(2)の各試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA)0.5μLを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6) 上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものをMDPNA無添加試料とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリフレクトロン、ポジティブモ−ドで計測した。
図8は、5種類のタンパク質のトリプシン消化物をMALDI−MSで測定したときのマススペクトルである。図8(a)は、0.1%TFA(塩なし)におけるMDPNA無添加(1)又はMDPNA添加(2)の場合のマススペクトルであり、図8(b)、(c)、(d)はそれぞれ、25mM、375mM、750mMの各濃度のピリジン/ギ酸におけるMDPNA無添加(1)又はMDPNA添加(2)の場合のマススペクトルである。
図8に示すように、25mMから750mMと緩衝溶液の塩濃度が上がるにつれてMDPNA無添加(1)ではほとんどペプチド由来のピークが検出されなくなった。一方、MDPNAを添加すると、375mM(図c)、750mM(図d)という非常に高い塩濃度の緩衝溶液であっても、イオン化抑制が抑制されたので、タンパク質のトリプシン消化物ペプチドに由来するピークが観察できた。例えば、上記5種類のタンパク質の各トリプシン消化物のうち、
BSA消化物,YLYEIAR(図中の記号:●),M+H:927.58;
Alcohol dehydrogenase消化物,SISIVGSYVGNR (図中の記号:▲),M+H:1252.10, 及びANELLINVK(図中の記号:■),M+H:1014.68;
Enolase消化物,VNQIGTLSESIK(図中の記号▼),M+H:1288.99;
Phosphorylase b消化物,HLQIIYEINQR(図中の記号★),M+H:1427.43,VAAAFPGDVDR(図中の記号○),M+H:1117.77,DFYELEPHK(図中の記号△),M+H:1177.94,LLSYVDDEAFIR(図中の記号□),M+H:1441.32,及びVIFLENYR(図中の記号▽),M+H:1053.75;
Bovine Hemoglobin消化物,VVAGVANALAHR(図中の記号☆),M+H:1177.94,及びFLANVSTVLTSK(図中の記号◎),M+H:1280.08
に由来するピークなどが観察できた。
[参考実験例5]
この参考実験例5では、試料溶液中の無機塩に対して、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用することにより、MALDI−MSにおける耐塩性が向上したことを示す。
手順:
(1)50mMのNaCl水溶液、及び50mMのNa2PO4水溶液(pH9.0)をそれぞれ調製した。
(2) 測定対象となる7種類のペプチド:
Ang I(配列番号3),
Ang II(配列番号4),
[Glu1]-Fib(配列番号2),
N-Acetyl-Renin(配列番号5),
ACTH(1−17)(配列番号6),
ACTH(18−39)(配列番号1),
ACTH(7−38)(配列番号7)
を上記(1)の塩を含む各緩衝溶液(NaCl、又はNa2PO4)に溶解させ、ペプチド混合試料溶液を調製した。この際、ACTH(7−38)は600fmol/μL、その他の各ペプチドは400fmol/μLとなるようにペプチド混合試料溶液を調製した。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
また、別途、マトリックスとして、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
(5) MALDI分析用ターゲットのウェル上に、上記(2)の各試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA又はDHB)0.5μLを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6) 上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものをMDPNA無添加試料とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリニアTOF、ポジティブモ−ドで計測した。
図9に得られたマススペクトルを示す。横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。
図9(a−1)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(a−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。
図9(b−1)は、50mMのNa2PO4水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(b−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。
図9(c−1)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスDHBを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(c−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。
図9(d−1)は、50mMのNa2PO4水溶液について、マトリックスDHBを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(d−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。なお、m/z:3600−3800の領域においては、相対強度のスケールを10倍に拡大して表示している。
図9(a−1),(b−1),(c−1),(d−1)に示すように、MDPNA無添加の場合には、無機塩によりイオン化が抑制されS/N比が低くなり、且つ、7種のペプチドの内のいくつかのペプチドは検出されなかった。これに対して、MDPNAを添加すると、図9(a−2),(b−2),(c−2),(d−2)に示すように、いずれも、イオン化抑制は起こらず、S/N比よく、7種の全てのペプチドが検出された。
このように、ホスホン酸基含有マトリックス添加剤によって、無機塩に対してもMALDIの耐塩性が増強された。

Claims (8)

  1. 分析対象物質を含む試料を、塩を含む移動相を用いた液体クロマトグラフィーに付し、溶出液を得て、
    得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する化合物をマトリックス添加剤として用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析に付すこと
    を含む液体クロマトグラフィー−質量分析法。
  2. 前記移動相に含まれる塩は、アルカリ金属及び窒素含有化合物からなる群から選ばれる陽イオン成分と、無機酸及び有機酸からなる群から選ばれる陰イオン成分とからなる少なくとも1種の塩である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記移動相に含まれる塩は、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリス、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びエタノールアミンからなる群から選ばれる有機アミン化合物又はアンモニアと、無機酸又は有機酸とからなる少なくとも1種の塩である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記移動相に含まれる塩は、アルカリ金属と、リン酸及びホウ酸からなる群から選ばれる無機酸とからなる少なくとも1種の塩である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記ホスホン酸基を有する化合物は、分子内にホスホン酸基を1つ又は2つ以上有する有機化合物である、請求項1〜4のうちのいずれかに記載の方法。
  6. マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸及び1,5−ジアミノナフタレンからなる群から選ばれる質量分析用マトリックスを用いる、請求項1〜5のうちのいずれかに記載の方法。
  7. 前記分析対象物質は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖鎖、脂質、及び核酸からなる群から選ばれる、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の方法。
  8. 前記液体クロマトグラフィーの分離モードとして、クロマトフォーカシングを用いる、請求項1〜7のうちのいずれかに記載の方法。
JP2012244825A 2012-11-06 2012-11-06 液体クロマトグラフィー−maldi質量分析法 Expired - Fee Related JP5958288B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012244825A JP5958288B2 (ja) 2012-11-06 2012-11-06 液体クロマトグラフィー−maldi質量分析法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012244825A JP5958288B2 (ja) 2012-11-06 2012-11-06 液体クロマトグラフィー−maldi質量分析法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014092523A true JP2014092523A (ja) 2014-05-19
JP5958288B2 JP5958288B2 (ja) 2016-07-27

Family

ID=50936673

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012244825A Expired - Fee Related JP5958288B2 (ja) 2012-11-06 2012-11-06 液体クロマトグラフィー−maldi質量分析法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5958288B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104833760A (zh) * 2015-05-25 2015-08-12 南京信息工程大学 高效液相色谱法测定设施番茄土壤低分子量有机酸的方法
JP2016099304A (ja) * 2014-11-26 2016-05-30 株式会社島津製作所 質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法
CN114019062A (zh) * 2022-01-05 2022-02-08 河北欣港药业有限公司 一种利福平中有关物质的检测方法
WO2023233688A1 (ja) * 2022-06-01 2023-12-07 株式会社島津製作所 質量分析方法
JP7400139B1 (ja) 2022-06-02 2023-12-18 山東省食品薬品検験研究院 枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリー及びその使用

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0666778A (ja) * 1991-08-29 1994-03-11 Wako Pure Chem Ind Ltd 高精度分析法
WO2003065031A1 (fr) * 2002-01-31 2003-08-07 Gl Sciences Incorporated Procede et dispositif pour analyser de l'acide amine, un peptide, une proteine, une saccharide ou un lipide
JP2009121857A (ja) * 2007-11-13 2009-06-04 Shimadzu Corp リン酸化ペプチド測定方法
JP2011504596A (ja) * 2007-11-26 2011-02-10 ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン サンプル中の分析物を定量測定する際に使用するための内部標準および方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0666778A (ja) * 1991-08-29 1994-03-11 Wako Pure Chem Ind Ltd 高精度分析法
WO2003065031A1 (fr) * 2002-01-31 2003-08-07 Gl Sciences Incorporated Procede et dispositif pour analyser de l'acide amine, un peptide, une proteine, une saccharide ou un lipide
JP2009121857A (ja) * 2007-11-13 2009-06-04 Shimadzu Corp リン酸化ペプチド測定方法
JP2011504596A (ja) * 2007-11-26 2011-02-10 ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン サンプル中の分析物を定量測定する際に使用するための内部標準および方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016099304A (ja) * 2014-11-26 2016-05-30 株式会社島津製作所 質量分析を用いた糖タンパク質の分析方法
CN104833760A (zh) * 2015-05-25 2015-08-12 南京信息工程大学 高效液相色谱法测定设施番茄土壤低分子量有机酸的方法
CN114019062A (zh) * 2022-01-05 2022-02-08 河北欣港药业有限公司 一种利福平中有关物质的检测方法
CN114019062B (zh) * 2022-01-05 2022-03-25 河北欣港药业有限公司 一种利福平中有关物质的检测方法
WO2023233688A1 (ja) * 2022-06-01 2023-12-07 株式会社島津製作所 質量分析方法
JP7400139B1 (ja) 2022-06-02 2023-12-18 山東省食品薬品検験研究院 枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリー及びその使用

Also Published As

Publication number Publication date
JP5958288B2 (ja) 2016-07-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5958288B2 (ja) 液体クロマトグラフィー−maldi質量分析法
Hardouin Protein sequence information by matrix‐assisted laser desorption/ionization in‐source decay mass spectrometry
Zhang et al. Effects of common surfactants on protein digestion and matrix‐assisted laser desorption/ionization mass spectrometric analysis of the digested peptides using two‐layer sample preparation
Stensballe et al. Phosphoric acid enhances the performance of Fe (III) affinity chromatography and matrix‐assisted laser desorption/ionization tandem mass spectrometry for recovery, detection and sequencing of phosphopeptides
Nuwaysir et al. Electrospray ionization mass spectrometry of phosphopeptides isolated by on-line immobilized metal-ion affinity chromatography
Steen et al. Quadrupole time‐of‐flight versus triple‐quadrupole mass spectrometry for the determination of phosphopeptides by precursor ion scanning
Hart et al. Factors governing the solubilization of phosphopeptides retained on ferric NTA IMAC beads and their analysis by MALDI TOFMS
Tichy et al. Phosphoproteomics: Searching for a needle in a haystack
Kim et al. Improved detection of multi‐phosphorylated peptides in the presence of phosphoric acid in liquid chromatography/mass spectrometry
CA2461587A1 (en) Materials and methods for controlling isotope effects during fractionation of analytes
Feng et al. Fe3+ immobilized metal affinity chromatography with silica monolithic capillary column for phosphoproteome analysis
Hellman et al. Easy amino acid sequencing of sulfonated peptides using post‐source decay on a matrix‐assisted laser desorption/ionization time‐of‐flight mass spectrometer equipped with a variable voltage reflector
JP2006300758A (ja) 内部標準ペプチドを用いて生体由来試料に含まれる標的タンパク質を定量する方法
JP6979401B2 (ja) マススペクトロメトリーによるアミロイドベータの検出
Zhang et al. Zeolite nanoparticles with immobilized metal ions: isolation and MALDI-TOF-MS/MS identification of phosphopeptides
Yates [15] Protein structure analysis by mass spectrometry
Jiao et al. Hydrazinonicotinic acid as a novel matrix for highly sensitive and selective MALDI-MS analysis of oligosaccharides
Carr et al. Overview of peptide and protein analysis by mass spectrometry
Kånge et al. Comparison of different IMAC techniques used for enrichment of phosphorylated peptides
Takátsy et al. Enrichment of Amadori products derived from the nonenzymatic glycation of proteins using microscale boronate affinity chromatography
JP4165501B2 (ja) Maldi質量分析装置による疎水性ペプチドの測定方法
US20050224710A1 (en) Method for measuring hydrophobic peptides using maldi mass spectrometer
JP4946813B2 (ja) リン酸化ペプチド測定方法
Portz et al. Mass spectrometry of oligopeptides in the presence of large amounts of alkali halides using desorption/ionization induced by neutral cluster impact
EP2455750A1 (en) Method for specific cleavage of n-c bond in peptide main chain

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150123

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20151016

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20151020

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151221

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160524

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160606

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5958288

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees