JP2014092523A - 液体クロマトグラフィー−maldi質量分析法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】分析対象物質を含む試料を、塩を含む移動相を用いた液体クロマトグラフィーに付し、溶出液を得て、得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する有機化合物をマトリックス添加剤として用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析に付すことを含む液体クロマトグラフィー−質量分析法。これまで塩によるイオン化抑制を回避するために非常に制約の大きかったLC−MALDI−MS法におけるLC分離モードが拡充される。
【選択図】図1
Description
得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する化合物をマトリックス添加剤として用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析に付すこと
を含む液体クロマトグラフィー−質量分析法。
得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する化合物をマトリックス添加剤として用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)に付す工程と
を含む。
分析対象物質は、特に限定されず、通常、質量分析の対象とされるべき種々の物質が含まれる。例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、脂質、及び核酸等の生体関連物質、天然又は合成ポリマー、低分子化合物等が挙げられる。タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチドの消化されたペプチドフラグメントも分析対象となり得る。分析対象の分子量は問われない。1,000未満の分子量のペプチドフラグメントも測定対象となり得る。1,000未満の分子量の化合物も分析対象となることは、多孔性微粒子のふるい効果を用いる前記特開2006−189391号公報に開示の方法に対する利点の一つである。
本発明においては、液体クロマトグラフィーの分離モードは、塩を含む移動相を必要とする分離モードを用いる。塩を含む移動相を必要とする分離モードであれば、その種類は問われない。例えば、逆相モード、順相モード、クロマトフォーカシング(Chromatofocusing)モード、親水性相互作用(HILIC)モード、イオン交換モード、配位子交換モード、イオン排除モード、サイズ排除モード、マルチモード、アフィニティーモード、光学分割モード等が挙げられる。
マトリックス(マトリクス)として、特に限定されることはなく、公知のものから適宜選択して用いるとよい。マトリックスとして、例えば、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)、シナピン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、1,5−ジアミノナフタレン等が挙げられる。
本発明において、マトリックス添加剤としてホスホン酸基を有する化合物を用いる。前記ホスホン酸基を有する化合物には、ホスホン酸(亜リン酸)も含まれるが、ホスホン酸基を有する有機化合物が好ましい。前記ホスホン酸基を有する有機化合物は、分子内にホスホン酸基を1つ有している化合物であってもよいし、又は、分子内にホスホン酸基を2つ以上有する化合物であってもよい。
この実施例1では、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用することで、通常は移動相に不揮発性の塩を要求するためにLC−MALDI−MSでは使用できないクロマトフォーカシング(Chromatofocusing)を、LC−MALDI−MSのLC分離モードとして使用できたことを示す。
(1) MALDI分析用ターゲット(Hudson Surface Technology社製)のすべてのウェルに2,5−ジヒドロキシ安息香酸2.5μgとメチレンジホスホン酸10μgとを塗布したターゲット(MDPNA添加)と、ターゲットのすべてのウェルに2,5−ジヒドロキシ安息香酸2.5μgのみを塗布したターゲット(MDPNA無添加)をそれぞれ作成した。
(2) 25mMピペラジン、及び12.5mM 1−メチルピペラジンを含む緩衝溶液を調製した。この緩衝溶液をそれぞれpH5、又はpH3となるように塩酸で調整した2種の緩衝溶液(pH5、又はpH3)を調製した。
(3) 測定試料として、以下のペプチド:
副腎皮質刺激ホルモンフラグメントACTH(18−39):adrenocorticotropic hormone fragment (18-39); Arg Pro Val Lys Val Tyr Pro Asn Gly Ala Glu Asp Glu Ser Ala Glu Ala Phe Pro Leu Glu Phe(配列番号1);モノアイソトピック(monoisotopic)質量 2464.20;(SIGMA−ALDRICH社製),
繊維素ペプチドB:[Glu1]-Fibrinopeptide; Glu Gly Val Asn Asp Asn Glu Glu Gly Phe Phe Ser Ala Arg(配列番号2);モノアイソトピック質量 1569.67;(SIGMA−ALDRICH社製)
をそれぞれ20fmol/μL(配列番号1)、80fmol/μL(配列番号2)となるように上記(2)の緩衝溶液pH5に溶解させた。
(4) 上記(2)の緩衝溶液pH5で平衡化させた弱陰イオンカラム(Inertsil AX 150mmx0.5mm,5μm;ジーエルサイエンス社製)に上記(3)の測定試料0.1μLを打ち込み、上記(2)の緩衝溶液pH3で溶出させた (クロマトフォーカシング)。液体クロマトグラフィー装置は、Prominence nano(島津製作所製)を用いた。カラムからの溶出液を7秒ごとに上記(1)で作成した各MALDI分析用ターゲット(MDPNA添加又は無添加)にウェルを順次ずらしながら塗布した。
(5) 上記(4)で溶出液を塗布したターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Resonance(島津製作所製)のMid、ポジティブモ−ドでそれぞれ計測した。
この実施例2では、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用し、移動相に塩を要求する親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)をLC分離モードとするLC−MALDI−MSを行った。
(1) MALDI分析用ターゲット(Hudson Surface Technology社製)のすべてのウェルに2,5−ジヒドロキシ安息香酸1.25μgとメチレンジホスホン酸10μgとを塗布したターゲット(MDPNA添加)と、ターゲットのすべてのウェルに2,5−ジヒドロキシ安息香酸1.25μgのみを塗布したターゲット(MDPNA無添加)をそれぞれ作成した。
(2) 移動相A:20mMギ酸アンモニウムを含む80%(v/v)アセトニトリル/水 (pH4.5)と、移動相B:20mMギ酸アンモニウムの水溶液(pH4.5)を調製した。
(3) 測定試料として、市販の牛血清アルブミン(BSA)のトリプシン消化物(Waters社製)を20mM ギ酸アンモニウムを含む80%(v/v)アセトニトリル/水に100fmol/mLとなるように溶解した。
(4) 上記(3)で調製したサンプル0.1μLをHILICカラム(SeQuantTM ZIC−HILIC,100mmx0.1mm,3.5μm,20オングストローム;メルクミリポア社製)に打ち込み、200nL/minの流速で溶出させた(0−10分,移動相B 100%;10−30分,移動相B 0−50%のリニアグラジエント;30−35分,移動相B 50−95%のリニアグラジエント; 35−40分,移動相B 95%)。液体クロマトグラフィー装置は、Prominence nano(島津製作所製)を用いた。カラムからの溶出液を30秒ごとに上記(1)で作成した各MALDI分析用ターゲット(MDPNA添加又は無添加)にウェルを順次ずらしながら塗布した。
(5) 上記(4)で溶出液を塗布したターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Resonance(島津製作所製)のMid、ポジティブモ−ドでそれぞれ計測した。
ピーク1:保持時間16.05分,LGEYGFQNALIVR,M+H:1479.8
ピーク2:保持時間18.55分,YLYEIAR,M+H:927.5
の各マススペクトルを示す(図2(b)のスペクトル1,2)。また、MDPNA無添加での保持時間16.05分、及び保持時間18.55分でのマススペクトルを示す(図2(b)のスペクトル3,4)。横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。
この参考実験例1では、LCの各種分離モードにおける移動相に使用され得る塩類を用いた場合に、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用し、マトリクスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)又は2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を使用して、MALDI−MSを行った。
(1) トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びジエタノールアミンの混合緩衝溶液(各5mM)を調製し、塩酸でpH8.0に調整した。
(2)測定対象となる7種類のペプチド:
アンジオテンシンI(Ang I); Asp Arg Val Tyr Ile His Pro Phe His Leu(配列番号3); モノアイソトピック(monoisotopic)質量 1295.68;(SIGMA−ALDRICH社製),
アンジオテンシンII (Ang II); Asp Arg Val Tyr Ile His Pro Phe(配列番号4); モノアイソトピック質量 1045.54;(SIGMA−ALDRICH社製),
繊維素ペプチドB:[Glu1]-Fibrinopeptide; Glu Gly Val Asn Asp Asn Glu Glu Gly Phe Phe Ser Ala Arg(配列番号2); モノアイソトピック質量 1569.67;(SIGMA−ALDRICH社製),
N−アセチル−レニン基質 テトラデカペプチド:N-Acetyl-Renin; NAc-Asp Arg Val Tyr Ile His Pro Phe His Leu Leu Val Tyr Ser(配列番号5); モノアイソトピック質量 1799.94;(SIGMA−ALDRICH社製),
副腎皮質刺激ホルモンフラグメントACTH(1−17):adrenocorticotropic hormone fragment (1-17); Ser Tyr Ser Met Glu His Phe Arg Trp Gly Lys Pro Val Gly Lys Lys Arg(配列番号6); モノアイソトピック質量 2092.08;(SIGMA−ALDRICH社製),
副腎皮質刺激ホルモンフラグメントACTH(18−39):adrenocorticotropic hormone fragment (18-39); Arg Pro Val Lys Val Tyr Pro Asn Gly Ala Glu Asp Glu Ser Ala Glu Ala Phe Pro Leu Glu Phe(配列番号1); モノアイソトピック質量 2464.20;(SIGMA−ALDRICH社製),
副腎皮質刺激ホルモンフラグメントACTH(7−38):adrenocorticotropic hormone fragment (7-38); Phe Arg Trp Gly Lys Pro Val Gly Lys Lys Arg Arg Pro Val Lys Val Tyr Pro Asn Gly Ala Glu Asp Glu Ser Ala Glu Ala Phe Pro Leu Glu(配列番号7); モノアイソトピック質量 3656.93;(SIGMA−ALDRICH社製)
を上記(1)の塩を含む混合緩衝溶液に溶解させ、ペプチド混合試料溶液を調製した。この際、ACTH(7−38)は300fmol/μL、その他の各ペプチドは200fmol/μLとなるようにペプチド混合試料溶液を調製した。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
また、別途、マトリックスとして、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
(5) MALDI分析用ターゲット(島津製作所製)のウェル上に、上記(2)のペプチド混合試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA又はDHB)0.5μLとを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6)上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものをMDPNA無添加試料とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリニア、ポジティブモ−ドで計測した。
この参考実験例2では、ホスホン酸基含有マトリックス添加剤として、メチレンジホスホン酸(MDPNA)の他に、1,2−エタンジホスホン酸(EDPNA)、ホスホノ酢酸(PAC)、又はエタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(HEDP)をそれぞれ用いて、マトリクスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)又は2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を使用して、MALDI−MSを行った。
(1) トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びジエタノールアミンの混合緩衝溶液(各5mM)を調製し、塩酸でpH8.0に調整した。
(2) 測定対象となる7種類のペプチド:
Ang I(配列番号3),
Ang II(配列番号4),
[Glu1]-Fib(配列番号2),
N-Acetyl-Renin(配列番号5),
ACTH(1−17)(配列番号6),
ACTH(18−39)(配列番号1),
ACTH(7−38)(配列番号7)
を上記(1)の塩を含む混合緩衝溶液に溶解させ、ペプチド混合試料溶液を調製した。この際、ACTH(7−38)は300fmol/μL、その他の各ペプチドは200fmol/μLとなるようにペプチド混合試料溶液を調製した。
また、別途、上記7種類のペプチドを、基準用として、上記(1)の塩を含む混合緩衝溶液の代わりに0.1%TFA水溶液(塩を含まない)に溶解させたペプチド混合試料溶液を調製した。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
また、別途、マトリックスとして、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
また、別途、1,2−エタンジホスホン酸(EDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。ホスホノ酢酸(PAC)を1%(w/v)となるように水に溶解した。エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(HEDP)を1%(w/v)となるように水に溶解した。このようにして、各添加剤溶液を調製した。
(5) MALDI分析用ターゲットのウェル上に、上記(2)のペプチド混合試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA又はDHB)0.5μLを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6)上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。同様に、EDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをEDPNA添加試料とした。PAC水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをPAC添加試料とした。HEDP水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをHEDP添加試料とした。
MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものを無添加試料とした。
また、上記(5)で得られた基準用のペプチド混合試料溶液にも、超純水0.5μLを各ウェルに滴下し、これを基準用試料(塩なし)とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリニア、ポジティブモ−ドで計測した。
図4(1)は、基準用試料(塩なし)のマススペクトルを示し、図4(2)は、マトリックス添加剤の無添加の場合のマススペクトルを示し、図4(3)は、MDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図4(4)は、EDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図4(5)は、PAC添加の場合のマススペクトルを示し、図4(6)は、HEDP添加の場合のマススペクトルを示す。横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。
図5(1)は、基準用試料(塩なし)のマススペクトルを示し、図5(2)は、マトリックス添加剤の無添加の場合のマススペクトルを示し、図5(3)は、MDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図5(4)は、EDPNA添加の場合のマススペクトルを示し、図4(5)は、PAC添加の場合のマススペクトルを示し、図5(6)は、HEDP添加の場合のマススペクトルを示す。横軸はm/z、縦軸はイオンの相対強度(%)を表す。
この参考実験例3では、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用し、マトリクスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)又は2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を使用して、種々のタンパク質のトリプシン消化物 (複数のペプチドの混合物) をサンプルとして、MALDI−MSを行った。ホスホン酸基含有マトリックス添加剤が、種々のペプチドに対して効果を発揮できることを示す。
(1) トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びジエタノールアミンの混合緩衝溶液(各5mM)を調製し、塩酸でpH6.0、又はpH8.0に調整した2種の緩衝溶液(pH6、又はpH8)を調製した。
(2) 測定対象となる4種類のタンパク質:
牛血清アルブミン(BSA),
酵母アルコール脱水素酵素 (Alcohol dehydrogenase),
酵母エノラーゼ (Enolase),
ウサギグリコーゲンホスホリラーゼb (Phosphorylase b)
の各トリプシン消化物(すべてWaters社製)を、200fmol/μLとなるようにそれぞれ上記(1)の塩を含む緩衝溶液pH6又はpH8に溶解させ、各試料溶液(pH6又はpH8)とした。
また、別途、上記4種類のタンパク質の各トリプシン消化物を、基準用として、上記(1)の塩を含む混合緩衝溶液の代わりに0.1%TFA水溶液(塩を含まない)に溶解させた試料溶液を調製した。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
また、別途、マトリックスとして、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
(5) MALDI分析用ターゲットのウェル上に、上記(2)の各試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA又はDHB)0.5μLを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6) 上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものをMDPNA無添加試料とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリフレクトロン、ポジティブモ−ドで計測した。
(8) ペプチドマスフィンガープリンティング法により、配列包括度を算出した。
図6(a)は、BSAのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(b)は、Alcohol dehydrogenaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(c)は、Enolaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図6(d)は、Phosphorylase bのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフである。各横軸に、塩なし(基準用)、緩衝溶液pH6、緩衝溶液pH8それぞれについて、MDPNA添加及びMDPNA無添加を示し、縦軸は配列包括度(%)を表している。なお、N.D.は、ペプチドマスフィンガープリンティング法で同定できなかったことを示す。
図7(a)は、BSAのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(b)は、Alcohol dehydrogenaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(c)は、Enolaseのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフであり、図7(d)は、Phosphorylase bのトリプシン消化物についての配列包括度を示すグラフである。各横軸に、塩なし(基準用)、緩衝溶液pH6、緩衝溶液pH8それぞれについて、MDPNA添加及びMDPNA無添加を示し、縦軸は配列包括度(%)を表している。なお、N.D.は、ペプチドマスフィンガープリンティング法で同定できなかったことを示す。
この参考実験例4では、試料溶液中の塩濃度を変化させて、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用することにより、MALDI−MSにおける耐塩性が向上したことを示す。
(1)0.1%TFA水溶液(塩を含まない)を調製した。また、25mM、375mM、750mMの各濃度のピリジン/ギ酸水溶液(pH3.5)をそれぞれ調製した。
(2) 測定対象となる5種類のタンパク質:
牛血清アルブミン(BSA),
酵母アルコール脱水素酵素 (Alcohol dehydrogenase),
酵母エノラーゼ (Enolase),
ウサギグリコーゲンホスホリラーゼ b(Phosphorylase b),
牛ヘモグロビン (Bovine Hemoglobin)
の各トリプシン消化物(すべてWaters社製)をそれぞれ80fmol/μLとなるように上記(1)の各溶液に溶解させ、各試料溶液とした。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
(5) MALDI分析用ターゲットのウェル上に、上記(2)の各試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA)0.5μLを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6) 上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものをMDPNA無添加試料とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリフレクトロン、ポジティブモ−ドで計測した。
BSA消化物,YLYEIAR(図中の記号:●),M+H:927.58;
Alcohol dehydrogenase消化物,SISIVGSYVGNR (図中の記号:▲),M+H:1252.10, 及びANELLINVK(図中の記号:■),M+H:1014.68;
Enolase消化物,VNQIGTLSESIK(図中の記号▼),M+H:1288.99;
Phosphorylase b消化物,HLQIIYEINQR(図中の記号★),M+H:1427.43,VAAAFPGDVDR(図中の記号○),M+H:1117.77,DFYELEPHK(図中の記号△),M+H:1177.94,LLSYVDDEAFIR(図中の記号□),M+H:1441.32,及びVIFLENYR(図中の記号▽),M+H:1053.75;
Bovine Hemoglobin消化物,VVAGVANALAHR(図中の記号☆),M+H:1177.94,及びFLANVSTVLTSK(図中の記号◎),M+H:1280.08
に由来するピークなどが観察できた。
この参考実験例5では、試料溶液中の無機塩に対して、メチレンジホスホン酸(MDPNA)をマトリックス添加剤として使用することにより、MALDI−MSにおける耐塩性が向上したことを示す。
(1)50mMのNaCl水溶液、及び50mMのNa2PO4水溶液(pH9.0)をそれぞれ調製した。
(2) 測定対象となる7種類のペプチド:
Ang I(配列番号3),
Ang II(配列番号4),
[Glu1]-Fib(配列番号2),
N-Acetyl-Renin(配列番号5),
ACTH(1−17)(配列番号6),
ACTH(18−39)(配列番号1),
ACTH(7−38)(配列番号7)
を上記(1)の塩を含む各緩衝溶液(NaCl、又はNa2PO4)に溶解させ、ペプチド混合試料溶液を調製した。この際、ACTH(7−38)は600fmol/μL、その他の各ペプチドは400fmol/μLとなるようにペプチド混合試料溶液を調製した。
(3) マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
また、別途、マトリックスとして、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を5mg/mLとなるように0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%(v/v)アセトニトリル/水溶液に溶解した。
(4) メチレンジホスホン酸(MDPNA)を1%(w/v)となるように水に溶解した。
(5) MALDI分析用ターゲットのウェル上に、上記(2)の各試料溶液0.5μLと上記(3)のマトリックス溶液(CHCA又はDHB)0.5μLを滴下し混合した(on-target mix法)。
(6) 上記(4)のMDPNA水溶液0.5μLをさらに各ウェルに滴下したものをMDPNA添加試料とした。MDPNA水溶液0.5μLの代わりに超純水0.5μLを各ウェルに滴下したものをMDPNA無添加試料とした。
(7) 上記(6)のターゲット(MDPNA添加、及びMDPNA無添加)を風乾し、AXIMA Performance(島津製作所製)のリニアTOF、ポジティブモ−ドで計測した。
図9(b−1)は、50mMのNa2PO4水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(b−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。
図9(c−1)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスDHBを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(c−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。
図9(d−1)は、50mMのNa2PO4水溶液について、マトリックスDHBを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示し、(d−2)は、50mMのNaCl水溶液について、マトリックスCHCAを用い、MDPNA無添加の場合のマススペクトルを示す。なお、m/z:3600−3800の領域においては、相対強度のスケールを10倍に拡大して表示している。
Claims (8)
- 分析対象物質を含む試料を、塩を含む移動相を用いた液体クロマトグラフィーに付し、溶出液を得て、
得られた溶出液を、脱塩することなく、ホスホン酸基を有する化合物をマトリックス添加剤として用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析に付すこと
を含む液体クロマトグラフィー−質量分析法。 - 前記移動相に含まれる塩は、アルカリ金属及び窒素含有化合物からなる群から選ばれる陽イオン成分と、無機酸及び有機酸からなる群から選ばれる陰イオン成分とからなる少なくとも1種の塩である、請求項1に記載の方法。
- 前記移動相に含まれる塩は、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリス、ビストリス、ピペラジン、イミダゾール、1−メチルピペラジン、及びエタノールアミンからなる群から選ばれる有機アミン化合物又はアンモニアと、無機酸又は有機酸とからなる少なくとも1種の塩である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記移動相に含まれる塩は、アルカリ金属と、リン酸及びホウ酸からなる群から選ばれる無機酸とからなる少なくとも1種の塩である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記ホスホン酸基を有する化合物は、分子内にホスホン酸基を1つ又は2つ以上有する有機化合物である、請求項1〜4のうちのいずれかに記載の方法。
- マトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸及び1,5−ジアミノナフタレンからなる群から選ばれる質量分析用マトリックスを用いる、請求項1〜5のうちのいずれかに記載の方法。
- 前記分析対象物質は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖鎖、脂質、及び核酸からなる群から選ばれる、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の方法。
- 前記液体クロマトグラフィーの分離モードとして、クロマトフォーカシングを用いる、請求項1〜7のうちのいずれかに記載の方法。
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