JP2005246815A - 耐食性、耐湿性、加工性及び耐塗膜剥離性に優れた環境調和型プレコート鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 亜鉛系めっき鋼板の表面に、下層側から乾式シリカを含有する化成処理皮膜、特定の有機樹脂と防錆顔料を含有する塗料組成物により形成された下塗り塗膜及び上塗り塗膜を有し、前記下塗り塗膜の塗料組成物は、ケイ酸マグネシウム化合物系防錆顔料を1.5〜14質量%、ポリリン酸塩系防錆顔料を25〜50質量%含有し、かつ全顔料の合計含有量が65質量%以下、顔料の一部として含まれるMgの合計含有量が4.0〜10質量%であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
また、塗膜の密着性向上に関しては、特許文献7に水性樹脂、タンニン酸、微粒子シリカ等からなる特定の下地処理層を設けることが、また、特許文献8にタンニン酸、シランカップリング剤、微粒シリカ等からなる下地処理層を設けることが、また、特許文献9にウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂成分とシランカップリング剤、平均粒径1μm以下の微粒子からなる下地処理層を設けることが、それぞれ開示されている。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、皮膜や塗膜中にクロムを含まないクロムフリーのプレコート鋼板であって、実成形加工において塗膜剥離等の損傷を生じない優れた成形加工性(特に、成形加工の際の摺動部耐塗膜剥離性)を有するとともに、プレコート鋼板の基本性能である耐食性、曲げ加工性、耐湿性にも優れた環境調和型プレコート鋼板を提供することにある。
[1] 亜鉛系めっき鋼板の表面に、下層側から化成処理皮膜、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を有するとともに、前記化成処理皮膜及び塗膜中にクロムを含有しないプレコート鋼板であって、
前記化成処理皮膜が乾式シリカを含有し、
前記下塗り塗膜が、下記(イ)又は/及び(ロ)の有機樹脂と防錆顔料とを含有する塗料組成物であって、固形分中の割合で、ケイ酸マグネシウム化合物系防錆顔料(A)を1.5〜14質量%、ポリリン酸塩系防錆顔料(B)を25〜50質量%含有し、これら防錆顔料(A)及び(B)を含む全顔料の合計含有量が65質量%以下、顔料の一部として含まれるMgの合計含有量(C)が4.0〜10質量%である塗料組成物により形成されたことを特徴とする耐食性、耐湿性、加工性及び耐塗膜剥離性に優れた環境調和型プレコート鋼板。
(イ) 数平均分子量12000〜26000、ガラス転移温度0〜30℃のポリエステル樹脂(D)と、エポキシ樹脂(E)と、硬化剤(F)とを主成分とし、前記ポリエステル樹脂(D)と前記エポキシ樹脂(E)との比率D/E(モル比)が1.0/1.0〜1.0/4.0である有機樹脂
(ロ) 数平均分子量12000〜26000、ガラス転移温度0〜30℃のポリエステル樹脂(D)とエポキシ樹脂(E)との反応によって得られた変性ポリエステル樹脂(G)と、硬化剤(F)とを主成分とし、前記ポリエステル樹脂(D)と前記エポキシ樹脂(E)との比率D/E(モル比)が1.0/1.2〜1.0/4.0である有機樹脂
[2] 上記[1]のプレコート鋼板において、化成処理皮膜中の乾式シリカの含有量が20〜70質量%であり、シリカ付着量が10〜100mg/m2であることを特徴とする耐食性、耐湿性、加工性及び耐塗膜剥離性に優れた環境調和型プレコート鋼板。
下地鋼板となる亜鉛系めっき鋼板としては、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板、溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板に代表されるもの)等の各種亜鉛系めっき鋼板を用いることができる。また、亜鉛系めっき鋼板としては、化成処理皮膜との密着性を高めるために、亜鉛系めっきの後に表面調整処理を施したものを用いることができる。この表面調整処理は、酸性処理液、アルカリ性処理液のいずれを使用してもよく、処理は浸漬やスプレーなどにより行うことができる。
また、上記化成処理皮膜を形成するための処理液には、Zr化合物、Ti化合物、Hf化合物(例えば、フルオロ錯塩など)の1種又は2種以上を添加剤として添加し、それらを化成処理皮膜中に含有させることができる。さらに、処理液の安定性を向上させるために、安定化剤を添加してもよい。この安定化剤としては、カルボン酸、アミン類、アミノポリカルボン酸などの1種以上を用いることができる。
また、乾式シリカの付着量は10〜100mg/m2、好ましくは30〜70mg/m2とすることが望ましい。この付着量が10mg/m2未満では素地金属との密着性、耐食性が十分でなく、一方、100mg/m2超では、化成処理皮膜上層の下塗り塗膜との密着性が低下する傾向がある。
化成処理皮膜を形成するための処理方法に特に制約はないが、一般に化成処理液をロールコーター塗装し、その後、乾燥させる。この乾燥では、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱などの加熱手段により、通常、50〜150℃程度の到達板温で皮膜を乾燥させる。
この下塗り塗膜は、特定の有機樹脂と防錆顔料とを含有する塗料組成物であって、有機樹脂に対してケイ酸マグネシウム化合物系防錆顔料(A)とポリリン酸塩系防錆顔料(B)とを所定の割合で複合添加するとともに、顔料含有量及びMg含有量を特定の範囲に規定した塗料組成物により形成され、このような特定の組成によって、その特有の効果を発揮する。この下塗り塗膜はクロム系防錆顔料などのクロム成分を含まない。
先に述べたように、塗料組成物中にカルシウムイオン交換シリカとポリリン酸塩系防錆顔料を複合添加する従来技術が知られているが、この両防錆成分の複合添加による耐食性の向上効果は、ポリリン酸イオンがカルシウムイオン交換シリカのシリカ粒子にキレート結合のようなイオン結合をすることによってカルシウムイオンの溶出を抑制すること、及びポリリン酸のpH緩衡作用により水素イオンなどの腐食性イオンによる酸性化が弱められ、カルシウムイオンの溶出が少なくなること、によるものであると考えられている。
例えば、ケイ酸カリウムまたはケイ酸ナトリウム(水ガラス)のようなアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液と、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムまたは硝酸マグネシウムなどの水溶性マグネシウム塩の水溶液を混合・攪拌し、生成した沈澱物を分離・精製(例えば、水洗→乾燥→粉砕)することによって製造することができる。
また、ポリリン酸塩系防錆顔料(B)としては、上述したトリポリリン酸2水素アルミニウムなどの無処理のポリリン酸塩以外に、Mg化合物(例えば、MgO)、Ca化合物(例えば、CaO)、Zn化合物(例えば、ZnO)などで処理(変性)したものを使用してもよい。すなわち、この種のポリリン酸塩系防錆顔料は、通常、トリポリリン酸2水素アルミニウムなどのポリリン酸塩と上記金属化合物との湿式混合等の方法によって得られるものであり、例えば、ポリリン酸塩の水スラリーにMgO、ZnOなどの金属化合物を混合して湿式処理し、その後乾燥・粉砕することにより、MgやZnで処理(変性)されたポリリン酸塩が得られる。このようなポリリン酸塩系防錆顔料としては、例えば、Mg処理トリポリリン酸2水素アルミニウム:「K−WHITE G105」(商品名、テイカ製)、Zn処理トリポリリン酸2水素アルミニウム:「K−WHITE K140W」(商品名、テイカ製)、Ca処理トリポリリン酸2水素アルミニウム:「K−WHITE Ca605」(商品名、テイカ製)などを例示できる。
ケイ酸マグネシウム化合物系防錆顔料(A)の含有量が1.5質量%未満では、ポリリン酸塩系防錆顔料(B)との複合添加による相乗効果が小さく、特にクロスカット部の耐食性が不十分となる。一方、含有量が14質量%を超えると、ケイ酸マグネシウム化合物系防錆顔料(A)が必要以上に水分を吸収するため耐湿性が低下する。また、ポリリン酸塩系防錆顔料(B)の含有量が25質量%未満では、亜鉛へのキレート結合が十分ではなく、特に切断端部耐食性が不十分となる。一方、含有量が50質量%を超えると、ポリリン酸塩系防錆顔料(B)が必要以上に水分を吸収して、溶出するため耐湿性が低下する。
ここで、Mg含有量(C)で規定されるMgとしては、ケイ酸マグネシウム化合物系防錆顔料(A)以外に、ポリリン酸塩系防錆顔料(B)として酸化マグネシウムなどのMg化合物で処理(変性)したものを用いる場合や、後述するリン酸マグネシウム系防錆顔料を用いる場合などには、これらに含有されるMgなども含まれる。
下塗り塗膜中には、上述したケイ酸マグネシウム化合物系防錆顔料(A)とポリリン酸塩系防錆顔料(B)以外の防錆顔料として、カルシウムイオン交換シリカ、リン酸亜鉛系防錆顔料、リン酸マグネシウム系防錆顔料、亜リン酸亜鉛系防錆顔料などの1種以上を添加してもよく、また、その他の顔料として、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、マイカ、ベンガラ、マンガンブルー、カーボンブラック、アルミニウム粉、パールマイカなどの1種以上を添加してもよい。
(イ) 数平均分子量12000〜26000、ガラス転移温度0〜30℃のポリエステル樹脂(D)と、エポキシ樹脂(E)と、硬化剤(F)とを主成分とし、前記ポリエステル樹脂(D)と前記エポキシ樹脂(E)との比率D/E(モル比)が1.0/1.0〜1.0/4.0である有機樹脂
(ロ) 数平均分子量12000〜26000、ガラス転移温度0〜30℃のポリエステル樹脂(D)とエポキシ樹脂(E)との反応によって得られた変性ポリエステル樹脂(G)と、硬化剤(F)とを主成分とし、前記ポリエステル樹脂(D)と前記エポキシ樹脂(E)との比率D/E(モル比)が1.0/1.2〜1.0/4.0である有機樹脂
前記ポリエステル樹脂(D)は、主に多塩基酸と多価アルコールとのエステル化合物である。多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの二塩基酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの三価以上の多塩基酸などが用いられ、これらの多価塩基酸成分を2種以上組み合わせて用いることもできる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタジオール、ネオペンチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族または脂環族の二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じて、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの三価以上の多価アルコールを併用して用いることもできる。
また、エポキシ樹脂(E)としては、数平均分子量が500〜5000のものを用いることが好ましい。エポキシ樹脂の数平均分子量が500未満では密着性が低下し、一方、数平均分子量が5000を超えると樹脂粘度が高くなるため、ポリエステル樹脂(D)との相溶性が低下する。
ポリエステル樹脂(D)とエポキシ樹脂(E)の配合比(モル比)はD/E=1.0/1.0〜1.0/4.0とする。ポリエステル樹脂(D):1.0に対してエポキシ樹脂(E)の割合が1.0未満であると、樹脂の密着力が不足するため耐塗膜剥離性の向上効果が不十分となり、一方、4.0を超えると樹脂の可撓性が不足するため、曲げ加工性が低下する。
アミノ樹脂は、尿素、ベンゾグアナミン、メラミンなどとホルムアルデヒドとの縮合反応で得られる生成物の一部またはすべてをメタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコールによりアルキルエーテエル化した樹脂である。具体的には、メチル化尿素樹脂、n−ブチル化ベンゾグアナミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、iso―ブチル化メラミン樹脂などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、一般的製法で得られるイソシアネート化合物を用いることができる。その中でも特に、1液型塗料としての使用が可能である、フェノール、クレゾール、芳香族第二アミン、第三級アルコール、ラクタム、オキシムなどのブロック剤でブロック化されたポリイソシアネート化合物が好ましい。このブロック化ポリイソシアネート化合物を用いることにより1液での保存が可能となり、塗料としての使用が容易となる。
前記変性ポリエステル樹脂(G)を得るためのポリエステル樹脂(D)及びエポキシ樹脂(E)については、先に(イ)の樹脂で述べたような数平均分子量、ガラス転移温度の樹脂を用いることができ、ポリエステル樹脂(D)については、多塩基酸と多価アルコールとのエステル化合物、エポキシ樹脂(E)についてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類とエピハロヒドリンあるいはβメチルエピハロヒドリンとの反応で得られるエポキシ化合物、またはこれらの共重合物であるビスフェノール型エポキシ樹脂などを用いることができる。
また、変性ポリエステル樹脂(G)を得るためのポリエステル樹脂(D)とエポキシ樹脂(E)の配合比(モル比)は、A/B=1.0/1.2〜1.0/4.0とする。ポリエステル樹脂(D):1.0に対してエポキシ樹脂(E)の割合が1.2未満であると樹脂の密着力が不足するため耐塗膜剥離性の向上効果が不十分となり、一方、4.0を超えると樹脂の可撓性が不足するため、曲げ加工性が低下する。
前記硬化剤(F)としては、上述したようなアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物の中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
以上述べた(イ)、(ロ)の有機樹脂は、いずれかを単独で用いてもよいし、両者を混合して用いてもよい。
上記硬化触媒としては、樹脂成分(主樹脂および硬化剤)の硬化反応を促進するために必要に応じて使用するものであり、使用可能な硬化触媒としては、酸又はその中和物が挙げられ、例えば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸及びこれらのアミン中和物、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジラウレート、2−エチルへキソエート鉛などが代表的なものとして挙げられる。
塗料組成物を調整するに当たっては、サンドグラインドミル、ボールミル、ブレンダーなどの通常の分散機や混練機を選択して使用し、各成分を配合することができる。
下塗り塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で2〜20μm、好ましくは4〜15μmの範囲とすることが望ましい。膜厚が2μm未満では十分な耐食性が得られず、一方、20μm超では曲げ加工性が不十分である。
上塗り塗膜の構成については特別な制約はなく、樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂などの1種又は2種以上を用いることができる。これらの樹脂にアミノ樹脂、イソシアネート化合物の架橋剤を併用してもよい。この上塗り塗膜もクロム系防錆顔料などのクロム成分は含まない。
また、上塗り塗膜には、目的や用途に応じてワックスを適量配合することができる。このワックスとしては、天然ワックスまたは合成ワックスを用いることができる。
また、上塗り塗膜用の塗料組成物には、目的や用途に応じて、p−トルエンスルホン酸、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジラウレート、2−エチルへキソエート鉛などの硬化触媒;炭酸カルシウム、カオリン、クレー、酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、マイカ、弁柄、マンガンブルー、カーボンブラック、アルミニウム粉、パールマイカなどの顔料;その他、消泡剤、流れ止め剤等の各種添加剤を適宜配合することができる。
上塗り塗膜用の塗料組成物を調整するに当っては、サンドグラインドミル、ボールミル、ブレンダーなどの通常の分散機や混練機を選択して使用し、各成分を配合することができる。
上記下塗り塗膜の上に上塗り塗膜用の塗料組成物を塗装後、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱などの加熱手段により塗膜を焼き付け、樹脂を架橋させて硬化塗膜を得る。上塗り塗膜を加熱硬化させる際の焼付処理は、通常、到達板温を180℃〜260℃程度とし、この温度範囲で約30秒〜3分の焼付を行う。
上塗り塗膜の膜厚は10〜20μmとすることが好ましい。膜厚が10μm未満では上塗り塗膜としての総合的な塗膜性能が十分に得られない恐れがあり、一方、膜厚が20μmを超えると発泡やわきの原因となり好ましくない。
なお、本発明のプレコート鋼板は、上塗り塗膜の上にさらに塗膜(例えば、クリアー塗膜)を形成し、3コート・3ベークで使用してもよい。
(1.1)下塗り塗料用樹脂組成物に用いるポリエステル樹脂(D)の調整
・ポリエステル樹脂合成例1
テレフタル酸215.8質量部(1.3モル)、イソフタル酸182.6質量部(1.1モル)、アジピン酸189.8質量部(1.3モル)、エチレングリコール124質量部(2.0モル)、ネオペンチルグリコール166.4質量部(1.6モル)、「エピクロン850」(商品名、大日本インキ(株)製)30.4質量部、及びジオクチル錫オキサイド0.1質量部を、窒素気流中240℃で2時間エステル化反応を行った。その後、1時間かけて1mmHgまで減圧し、さらに260℃で1時間反応を行い、ソルベッソ150に溶解して、不揮発分35%、平均分子量20000、ガラス転移温度10℃のポリエステル樹脂(D1)を得た。
テレフタル酸215.8質量部(1.3モル)、イソフタル酸182.6質量部(1.1モル)、アジピン酸189.8質量部(1.3モル)、エチレングリコール124質量部(2.0モル)、ネオペンチルグリコール166.4質量部(1.6モル)、「エピクロン850」(商品名、大日本インキ(株)製)30.4質量部、及びジオクチル錫オキサイド0.1質量部を、窒素気流中240℃で2時間エステル化反応を行った。その後、1時間かけて1mmHgまで減圧し、さらに260℃で20分反応を行い、ソルベッソ150に溶解して、不揮発分35%、平均分子量16000、ガラス転移温度15℃のポリエステル樹脂(D2)を得た。
表1の樹脂組成物(R1)〜(R6)、(R8)〜(R11)については、上記ポリエステル樹脂(D1)、(D2)、市販のポリエステル樹脂(D3)、(D4)のうちのいずれかに、市販のエポキシ樹脂(E1)又は(E2)、同じく硬化剤(F1)又は(F2)、同じく硬化触媒(f1)又は(f2)を表1に示す割合で配合して調製した。また、樹脂組成物(R7)については、エポキシ樹脂を配合せず、上記ポリエステル樹脂(D1)に硬化剤(F1)と硬化触媒(f1)を表1に示す割合で配合して調製した。
表2の樹脂組成物(R12)〜(R22)については、上記ポリエステル樹脂(D1)、(D2)、(D3)、(D4)のうちのいずれかに、エポキシ樹脂(E1)又は(E2)を表2に示す割合で配合し、トリエチルアミン0.5質量部を加えて窒素気流中140℃で2時間かけて反応を行うことで変性ポリエステル樹脂を合成し、これに硬化剤(F1)又は(F2)、硬化触媒(f1)又は(f2)を表2に示す割合で配合して調製した。
(*1):D1,D2=明細書本文のポリエステル樹脂合成例1,2に記載されたポリエステル樹脂(D1),(D2)、D3=ポリエステル樹脂「バイロンGK780」(商品名、東洋紡績製)、D4=ポリエステル樹脂「バイロン550」(商品名、東洋紡績製)
(*2):数平均分子量
(*3):ガラス転移温度(℃)
(*4):質量部(固形分)
(*5):E1=エポキシ樹脂「エピクロン4050」(商品名、大日本インキ化学工業製)、E2=エポキシ樹脂「エピクロン9050」(商品名、大日本インキ化学工業製)
(*6):ポリエステル樹脂(D)とエポキシ樹脂(E)の配合比(モル比)D/E
(*7):F1=メラミン樹脂「スーパーベッカミンL117」(商品名、大日本インキ化学工業製、不揮発分60%)、F2=ポリイソシアネート化合物「バーノックD550」(商品名、大日本インキ化学工業製、不揮発分55%)
(*8):f1=ドデシルベンゼンスルホン酸、f2=ジブチル錫ジラウレート
下地鋼板である板厚0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板(片面当たりのめっき付着量:30g/m2)を脱脂後、化成処理液を塗布して到達板温100℃で乾燥を行い、表3に示す化成処理皮膜を形成した。その上に、表4〜表17に示す組成に調整した下塗り塗膜用の塗料組成物を所定の乾燥膜厚になるように塗布した後、焼付温度(到達温度)215℃、焼付時間60秒の焼付処理を行って下塗り塗膜を形成した。さらにその上に、ポリエステル系上塗り塗料「SRF05」(商品名、日本ファインコーティングス製)を乾燥膜厚が15μmになるように塗布した後、焼付温度(到達温度)230℃、焼付時間60秒の焼付処理を行って上塗り塗膜を形成し、本発明例および比較例のプレコート鋼板を得た。これらプレコート鋼板の各種性能を調べた結果を表4〜表17に併せて示す。
なお、表4〜表17に示す各顔料の添加量は、塗料組成物の固形分中での割合(質量%)である。
(1)切断端部耐食性
切断端部を露出した状態の試験片に対してJIS Z 2371記載の塩水噴霧試験(SST)を240時間実施した後、切断端部のふくれ幅を測定し、以下の基準で評価した。
◎:最大ふくれ幅1.5mm以下
○:最大ふくれ幅1.5mm超、2.5mm以下
△:最大ふくれ幅2.5mm超、5.0mm以下
×:最大ふくれ幅5.0mm超
(2)クロスカット部耐食性
試験片に下地めっきに達するクロスカットを入れ、JIS Z 2371記載の塩水噴霧試験(SST)を240時間実施した後、クロスカット部のふくれ幅を測定し、以下の基準で評価した。
◎:最大ふくれ幅1.5mm以下
○:最大ふくれ幅1.5mm超、2.5mm以下
△:最大ふくれ幅2.5mm超、5.0mm以下
×:最大ふくれ幅5.0mm超
相対湿度98%以上、試験温度50℃の恒温恒湿試験機内で試験片を240時間暴露し、試験後の塗膜表面のふくれをJIS K 5600−8−2に基づき外観観察し、下記基準で評価した。
○:ふくれ大きさ等級1以下、密度等級1以下を同時に満足する
△:ふくれ大きさ等級2以下、密度等級2以下を同時に満足する
×:上記以外のふくれレベル
(4)摺動部耐塗膜剥離性
先端1mmRのビードを幅30mmの試験片に対して200kgfの荷重で押しつけた状態でビード引抜き試験を行い、その外観より下記基準で評価した。
◎:塗膜剥離なし
○:塗膜剥離率5%以下(実用上問題なし)
△:塗膜剥離率5%超、50%以下(実用上問題あり)
×:塗膜剥離率50%超(実用上問題あり)
(5)曲げ加工性
20℃に保持した試験片に対して3T曲げを施し、曲げ加工部を30倍ルーペを用いて2mmφの径で2箇所観察し、当該観察部分に生じているクラックの数を測定し、そのトータル数により下記基準で評価した。
◎:クラックなし
○:クラック数が1〜3個
△:クラック数が4〜8個
×:クラック数が9個以上
(1) ケイ酸マグネシウム化合物(表中のケイ酸マグネシウム化合物の欄の「Mg含有量」とは、ケイ酸マグネシウム化合物中でのMg含有量)
・Mg含有量が5.2質量%の無定形含水ケイ酸マグネシウム化合物
・Mg含有量が3.8質量%の無定形含水ケイ酸マグネシウム化合物
(2) トリポリリン酸2水素Al
・無処理のトリポリリン酸2水素Al:「K−WHITE #82」(商品名、テイカ製)
・Mg処理(変性)されたトリポリリン酸2水素Al:「K−WHITE G105」(商品名、テイカ製)
・Zn処理(変性)されたトリポリリン酸2水素Al:「K−WHITE K140W」(商品名、テイカ製)」
・Ca処理(変性)されたトリポリリン酸2水素Al:「K−WHITE Ca605」(商品名、テイカ製)」
(3) カルシウムイオン交換シリカ:「シールデックスC330」(商品名、グレース製)
(4) リン酸亜鉛系顔料(=ケイ酸塩変性リン酸亜鉛):「LFボウセイD1」(商品名、キクチカラー製)
(5) リン酸マグネシウム系顔料(=リン酸マグネシウム−亜リン酸亜鉛混晶型防錆顔料):「LEボウセイMZP−500」(商品名、キクチカラー製)
(6) 亜リン酸亜鉛系防錆顔料:「EXPERT NP−1500」(商品名、東邦顔料工業製)
(7) ストロンチウムクロメート(キクチカラー製)
(8) 酸化チタン:「タイペークR820」(商品名、石原産業製)
Claims (2)
- 亜鉛系めっき鋼板の表面に、下層側から化成処理皮膜、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を有するとともに、前記化成処理皮膜及び塗膜中にクロムを含有しないプレコート鋼板であって、
前記化成処理皮膜が乾式シリカを含有し、
前記下塗り塗膜が、下記(イ)又は/及び(ロ)の有機樹脂と防錆顔料とを含有する塗料組成物であって、固形分中の割合で、ケイ酸マグネシウム化合物系防錆顔料(A)を1.5〜14質量%、ポリリン酸塩系防錆顔料(B)を25〜50質量%含有し、これら防錆顔料(A)及び(B)を含む全顔料の合計含有量が65質量%以下、顔料の一部として含まれるMgの合計含有量(C)が4.0〜10質量%である塗料組成物により形成されたことを特徴とする耐食性、耐湿性、加工性及び耐塗膜剥離性に優れた環境調和型プレコート鋼板。
(イ) 数平均分子量12000〜26000、ガラス転移温度0〜30℃のポリエステル樹脂(D)と、エポキシ樹脂(E)と、硬化剤(F)とを主成分とし、前記ポリエステル樹脂(D)と前記エポキシ樹脂(E)との比率D/E(モル比)が1.0/1.0〜1.0/4.0である有機樹脂
(ロ) 数平均分子量12000〜26000、ガラス転移温度0〜30℃のポリエステル樹脂(D)とエポキシ樹脂(E)との反応によって得られた変性ポリエステル樹脂(G)と、硬化剤(F)とを主成分とし、前記ポリエステル樹脂(D)と前記エポキシ樹脂(E)との比率D/E(モル比)が1.0/1.2〜1.0/4.0である有機樹脂 - 化成処理皮膜中の乾式シリカの含有量が20〜70質量%であり、シリカ付着量が10〜100mg/m2であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性、耐湿性、加工性及び耐塗膜剥離性に優れた環境調和型プレコート鋼板。
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