JP2005243537A - 非水電解液二次電池の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウム二次電池は、正極極板内に鉄等の金属異物が混入すると、電池を充電した際に、正極中の金属異物が溶出して、それがセパレータを介して負極上で析出する。セパレータ中に金属の導通パスが出来上がると、正極・負極間に微小短絡を起こす現象が発生し、電池の電圧不良が発生するという欠点を有していた。
【解決手段】初回の充電時に、電池容量の0.01%〜0.1%充電して、少なくとも1時間以上で48時間以内の放置時間を設けることにより、正極極板内に鉄等の金属異物が混入したとしても、セパレータを介した正極・負極間の微小短絡を防止することができ、電池の電圧不良を大幅に低減できる非水電解液二次電池の製造方法である。
【選択図】図1
【解決手段】初回の充電時に、電池容量の0.01%〜0.1%充電して、少なくとも1時間以上で48時間以内の放置時間を設けることにより、正極極板内に鉄等の金属異物が混入したとしても、セパレータを介した正極・負極間の微小短絡を防止することができ、電池の電圧不良を大幅に低減できる非水電解液二次電池の製造方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は非水電解液二次電池の製造法に関するものである。
近年、電子機器のポータブル化、コードレス化が進んでおり、これらの駆動用電源として小型、軽量で高エネルギー密度を有する二次電池へと要望が強まっている。そのため、高電圧、高エネルギー密度を有する非水電解液二次電池、とりわけリチウム二次電池に対する期待が大きくなっている。このような中で、LiCoO2を正極活物質に、リチウムを可逆的にインターカレートできるグラファイトを負極に用いたリチウム二次電池が既に商品化されている。
リチウム二次電池は電池の組み立て後、電池性能を安定させる等の目的から、充電・放電のサイクルを何度か繰り返す工程が含まれている。電池の初回の充電条件には、例えば、負極の電位が0.3Vになるまでの充電範囲内に、充電電流を0.2ItA以下とする低速充電等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−208440号公報
通常このようなリチウム二次電池は、正極極板内に鉄等の金属異物が混入すると、電池を充電した際に、正極中の金属異物が正極の電位によって溶出して、それがセパレータを介して負極上で析出する。セパレータ中に金属の導通パスが出来上がると、正極・負極間に微小短絡を起こす現象が発生し、電池の電圧不良が発生するという欠点を有していた。
一般的な正極活物質であるLiCoO2は初回の充電で電位が上昇し、通常の充電時、リチウム電極基準において4.0V以上の電位を示し、正極極板上に鉄等の金属異物が存在すると、それが金属イオンとなって電解液中に溶解する。また一般的な負極活物質であるグラファイトは初回の充電で電位が下降し、通常の充電時にリチウム電極基準において、0.5V以下の電位を示し、正極で溶出した金属イオンはセパレータを介して負極上に析出する。その際、正極と負極が金属異物によって導通し、電池の電圧不良が発生する。
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、電池の電圧不良を大幅に低減できる非水電解液二次電池の製造法を提供するものである。
上記の課題を解決するために本発明の非水電解液二次電池の製造法は、非水電解液二次電池の初回の充電時に、電池容量の0.01%〜0.1%充電して、少なくとも1時間以上で48時間以内の放置時間を設けるものである。
また、初回の充電時において、負極の電位をLi基準で1.5Vに達しない状態で正極の電位をLi基準で3.5V以上に設定し、少なくとも1時間以上48時間以内の放置時間を設けるものである。
上記構成によって、正極極板内に鉄等の金属異物が混入した場合、初回の充電で正極で溶出した金属イオンは負極で析出することなく電解液中に均一に拡散される。このため初回以後の充電した際には、負極上における局所的な金属の析出が防止でき、セパレータを介した正極と負極間の微小短絡を抑制することができる。
以上のように本発明の製造法により、正極極板内に鉄等の金属異物が混入したとしても、セパレータを介した正極・負極間の微小短絡を防止することができ、電池の電圧不良を大幅に低減した非水電解液二次電池を供給できる。
本発明は、リチウム含有複合酸化物を活物質とする正極と、リチウムと可逆的に反応する材料を負極に用いた非水電解液二次電池において、初回の充電時に、電池容量の0.01%〜0.1%充電して、少なくとも1時間以上で48時間以内の放置時間を設けることを特徴とした非水電解液二次電池の製造法である。
さらに、本発明の非水電解液二次電池の製造法は、リチウム複合酸化物がLiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LiMn2O4、LixMn2-yMyO4 (ここで、M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、AlおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)のいずれかであることが好ましく、リチウムと可逆的に反応する材料はグラファイトであることが好ましい。
このような構成とすることにより、負極の電位を金属の析出が確認される電位(1.5V)に達することなく、正極の電位を金属の溶出が促進する電位以上(3.5V)にすることができ、正極で溶出した金属イオンは負極で析出することなく電解液中に均一に拡散される。このため初回以後の充電した際にも、負極上において局所的な金属の析出が防止でき、セパレータを介した、正極と負極間の微小短絡を抑制することができる。
初回充電後の放置時間は正極上の金属異物の溶出、拡散に時間がかかるため少なくとも1時間以上設けることが望ましい。放置時間の上限に関しては、およそ48時間以内に正極での金属の溶出、拡散が完了するため、生産性の面からも上限を48時間以内と定めた。
また金属異物の溶出、拡散は温度因子も含まれているため、環境温度はできるだけ高温の方が良く、環境としては20℃以上が望ましい。よって本発明の非水電解液二次電池の製造法は、電池の電圧不良を大幅に低減した非水電解液二次電池を供給できる。
以下、本発明の実施例を図面とともに説明する。
(実施例1)
図1に本実施例1で用いた円筒形電池の縦断面図を示す。図1において1は耐有機電解質性のステンレス鋼板を加工した電池ケース、2は安全弁を設けた封口板、3は絶縁パッキングを示す。4は極板群であり、これは正極板5および負極板6がセパレータ7を介して複数回渦巻状に巻回されている。そして正極板5からは正極リード5aが引き出されていて封口板2に接続され、負極板6からは負極リード6aが引き出されていて電池ケース1の底部に接続されている。8は絶縁リングで、極板群4の上下にそれぞれ設けられている。
図1に本実施例1で用いた円筒形電池の縦断面図を示す。図1において1は耐有機電解質性のステンレス鋼板を加工した電池ケース、2は安全弁を設けた封口板、3は絶縁パッキングを示す。4は極板群であり、これは正極板5および負極板6がセパレータ7を介して複数回渦巻状に巻回されている。そして正極板5からは正極リード5aが引き出されていて封口板2に接続され、負極板6からは負極リード6aが引き出されていて電池ケース1の底部に接続されている。8は絶縁リングで、極板群4の上下にそれぞれ設けられている。
以下、正極板5、負極板6、電解液等について詳しく説明する。正極板5は正極活物質であるLiCo0.98Mg0.02O2の粉末100質量部に、アセチレンブラック5質量部、フッ素系樹脂のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)10質量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に分散・混練させてペースト状にした。
このペースト中に、本発明の効果を顕著に示すため、金属異物を仮想した鉄片を約10mg混入させたものをアルミニウム箔の両面に塗着、乾燥し、このものをロールプレス機によって0.17mmに圧延し、幅35mm、長さ250mmに切り出した。負極板6は、コークスを加熱処理して得たグラファイト粉末100質量部に、スチレン−ブタジエン系結着剤10質量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に分散・混練させてペースト状にした。そしてこのペーストを厚さ0.015mmの銅箔の表面に塗着、乾燥後厚さ0.2mmに圧延し、幅37mm、長さ280mmの大きさに切り出した。
正極、負極板にそれぞれリード5a,6aを取り付け、セパレータを介して渦巻状に巻回し、直径13.8mm、高さ50mmの円筒形電池ケースに挿入した。
電解液には、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等容積混合溶媒に、六フッ化燐酸リチウム1mol/lの割合で溶解したものを用い、その所定量を極板群4に注入した後、電池を密封口し、定格容量が500mAhの試験電池とした。
この電池の初回充電を定格容量(500mAh)の0.01%(15mAで0.2分(0.05mAh))充電し、20℃環境下で1時間放置した。その後電池の電圧が4.0Vになるまで定電流(100mA)で充電した。
(実施例2)
電池の初回充電を定格容量の0.1%(15mAで2.0分(0.5mAh))充電したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
電池の初回充電を定格容量の0.1%(15mAで2.0分(0.5mAh))充電したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
(実施例3)
電池の初回充電を定格容量の0.01%(15mAで0.2分(0.05mAh))充電し、20℃環境下で48時間放置したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
電池の初回充電を定格容量の0.01%(15mAで0.2分(0.05mAh))充電し、20℃環境下で48時間放置したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
(比較例1)
電池の初回充電を定格容量の0.008%(15mAで0.16分(0.04mAh))充電したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
電池の初回充電を定格容量の0.008%(15mAで0.16分(0.04mAh))充電したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
(比較例2)
電池の初回充電を定格容量の0.12%(15mAで2.4分(0.6mAh))充電したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
電池の初回充電を定格容量の0.12%(15mAで2.4分(0.6mAh))充電したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
(比較例3)
電池の初回充電を定格容量の0.01%(15mAで0.2分(0.05mAh))充電し、20℃環境下で30分放置したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
電池の初回充電を定格容量の0.01%(15mAで0.2分(0.05mAh))充電し、20℃環境下で30分放置したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
(比較例4)
電池の初回充電を定格容量の0.01%(15mAで0.2分(0.05mAh))充電し、20℃環境下で60時間放置したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
電池の初回充電を定格容量の0.01%(15mAで0.2分(0.05mAh))充電し、20℃環境下で60時間放置したこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
以上のようにして作製した本発明の非水電解液二次電池と比較のために作製した電池について次のような評価を行った。
電圧降下量測定:電池を4.0Vまで定電流(100mA)で充電した後、室温で7日間放置した。充電直後の電池電圧と、室温で7日間放置した後の電池電圧を測定し、電圧降下量を測定した。
これらの評価結果を(表1)に示す。
(表1)において、定格容量の0.05%充電し、1時間放置した本実施例1〜実施例3は比較例1〜比較例3に比べ、7日放置後の電池電圧降下量が少なかった。
実施例1において、定格容量の0.01%充電した直後の正極電位はリチウム電極基準で3.50Vであり、負極の電位はリチウム電極基準で2.90Vであった。正極の電位は鉄の溶解が促進する電位(3.50V)よりも高く、負極の電位は鉄の析出が確認できる電位(1.50V)よりも高かった。すなわち正極上で溶出した鉄イオンは負極上に析出することなく電解液中に拡散し、その結果、更に電池を4.0Vまで充電を行っても、正・負極間の導通パスが出来上がらず、電池の電圧不良には至らなかった。
実施例2において、定格容量の0.1%充電した直後の正極電位はリチウム電極基準で3.75Vであり、負極の電位はリチウム電極基準で1.50Vであった。この場合も正極の電位は鉄の溶解が促進する電位(3.50V)よりも高く、負極の電位が鉄の析出が確認できる電位(1.50V)よりも高いため、正・負極間の導通パスが出来上がらず、電池は電圧不良に至らなかった。
実施例3も実施例1と同様の理由により、電池は電圧不良に至らなかった。これに対し比較例1〜比較例3は7日間放置後の電圧降下量が著しかった。
比較例1は正極の電位が初回の充電でリチウム電極基準に対して3.47Vとなったが、鉄の溶出が促進される電位(3.50V)には達しなかった。そのため初回の充電では正極中の鉄が溶出されず、その後4.0Vまで電池を充電した際に、正極中の鉄が溶け出し、負極上に局在化して鉄が析出し、セパレータを介して正極と負極が導通したものと考えられる。
比較例2は初回の充電で正極の電位が、リチウム電極基準に対して3.80Vとなり、鉄の溶出が促進される電位(3.50V)に達していたが、負極の電位がリチウム電極基準で1.40Vとなり、鉄の析出か確認できる電位(1.50V)よりも下回っていた。このため初回の充電によって正極と負極がセパレータを介して鉄の導通パスができてしまったと推測される。
比較例3は放置時間が短かったため、正極中に混在した鉄が電解液中に溶けきれずに残留し、その後4.0Vまで充電した際に正極中の鉄が溶け出し、負極上に局在化して鉄が析出し、同じく正極と負極がセパレータを介して鉄によって導通したと考えられる。
比較例4は電池の電圧降下が認められないが、電池の生産性の面から電池の放置時間は48時間以内が望ましい。
以上の結果から非水電解液二次電池用電極を製造する方法において、初回の充電時に、電池容量の0.01%〜0.1%充電して、少なくとも1時間以上で48時間以内の放置時間を設けることにより、電池の電圧不良の歩留まりを向上できることがわかる。
また、本実施例において、リチウムと可逆的に反応する正極材料として、LiCo0.98Mg0.02O2を用いたが、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LiMn2O4、LixMn2-yMyO4 (ここで、M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、AlおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)等の含リチウム複合酸化物を用いても同様の効果が得られた。
さらに、上記各実施例において、リチウムと可逆的に反応する負極材料として、グラファイトを用いたが、黒鉛系,非晶質系等の炭素材料を用いても同様の効果が得られた。
さらに、上記各実施例において、円筒形電池を用いて評価を行ったが、角形など電池形状が異なっても同様の効果が得られた。
さらに、上記各実施例においては電解質として六フッ化燐酸リチウムを用いたが、他のリチウム塩、例えば過塩素酸リチウム、四フッ化ほう酸リチウム等でも同様の効果が得られた。
さらに、上記各実施例において、電解質の塩濃度を1mol/lとしたが、塩濃度を0.5〜2.0mol/lのものを用いても同様の効果が得られた。
さらに、上記各実施例において、電解液として炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒を用いたが、他の非水溶媒例えば、プロピレンカーボネートなどの環状エステル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル、プロピオン酸メチルなどの鎖状エステルなどの非水溶媒や、これら多元系混合溶媒を用いても同様の効果が得られた。
本発明の製造法による非水系電解質二次電池は、安全性に優れた寿命の長いポータブル電気機器用電源等として有用である。
1 電池ケース
2 封口板
3 絶縁パッキング
4 極板群
5 正極板
5a 正極リード
6 負極板
6a 負極リード
7 セパレータ
8 絶縁リング
2 封口板
3 絶縁パッキング
4 極板群
5 正極板
5a 正極リード
6 負極板
6a 負極リード
7 セパレータ
8 絶縁リング
Claims (4)
- リチウム含有複合酸化物を活物質とする正極と、リチウムと可逆的に反応する材料を負極に用いた非水電解液二次電池の製造法において、初回の充電時に、電池容量の0.01%〜0.1%充電して、少なくとも1時間以上48時間以内の放置時間を設けることを特徴とする非水電解液二次電池の製造法。
- リチウム含有複合酸化物を活物質とする正極と、リチウムと可逆的に反応する材料を負極に用いた非水電解液二次電池の製造法において、初回の充電時において、負極の電位をLi基準で1.5Vに達しない状態で正極の電位をLi基準で3.5V以上に設定し、少なくとも1時間以上48時間以内の放置時間を設けることを特徴とする非水電解液二次電池の製造法。
- リチウム含有複合酸化物はLiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LiMn2O4、LixMn2-yMyO4 (ここで、M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、AlおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)である請求項1または請求項2のいずれかに記載の非水電解液二次電池の製造法。
- リチウムと可逆的に反応する材料はグラファイトである請求項1または請求項2のいずれかに記載の非水電解液二次電池の製造法。
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