JP2005234528A - 光学素子および光学素子の製造方法 - Google Patents

光学素子および光学素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 屈折率が高く、耐熱性がさらに高い、プラスチックレンズを製造可能な組成物を提供する。
【解決手段】 ポリチオール化合物(例えば、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とする化合物)と、芳香族ポリイソシアネート(例えば、m−キシリレンジイソシアネート)と、脂環族ポリイソシアネート(例えば、ノルボルナンジイソシアネート)とを含む光学素子の基材用の組成物を提供する。これにより、1.67程度の屈折率で、熱変形温度(Tg)がさらに高く、黄色みのない透明なプラスチックレンズを提供できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高耐熱性および高屈折率のプラスチック製の光学素子およびその製造方法に関するものである。
プラスチック製の光学素子は様々なメリットを備えている。たとえば、プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、さらに成形性や加工性が良く、割れ難く安全性も高い。このため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の分野で広く用いられている。
特開平2−270859号公報 特開平7−252207号公報 特開2001−342252号公報
プラスチックレンズは、さらなる高性能化が期待されており、特に屈折率が高く、熱耐熱性の高いものが望まれている。例えば、特許文献1には、メルカプト化合物により生成し、屈折率が1.66で、耐熱性が98℃のプラスチックレンズが得られることが開示されている。特許文献2には、ポリチオール化合物とそれを用いた含硫ウレタン系樹脂により生成し、屈折率が1.66で、熱変形温度(Tg:ガラス点移転)は約100℃のプラスチックレンズが得られることが開示されている。特許文献3には、ポリチオール化合物により生成し、屈折率が1.68で、熱変形温度(Tg)が約110℃のプラスチックレンズが得られることが開示されている。
プラスチックレンズ用の光学材料としては、さらに高耐熱および高屈折率であると共に透明度の高いものが要望されている。眼鏡用のプラスチックレンズの要求としては、フレームに枠入れされた状態で熱が加わっても凹レンズの中心部が変形することがなく、所望の度数を提供できることが望ましい。この点、特許文献1の材料では、耐熱性が不十分である。特許文献2の材料でも、熱によるレンズの度数ボケが懸念され、さらに、プラスチックレンズを製造する際の表面処理時、あるいは染色時の加熱でレンズが変形してしまう可能性がある。
さらに、特許文献3に開示されている樹脂からなる光学素子は屈折率、熱変形温度Tg共に高い。しかしながら、製造時のレンズ変形の可能性を考慮すると、熱変形温度Tgはさらに高いことが望ましい。また、特許文献3に開示されている高屈折率および高耐熱の樹脂による光学素子は透明とは言っても実際には黄色味が強く着色されたものになってしまい、プラスチックレンズとしての用途が限定される。したがって、透明度の高い、高屈折率および高耐熱の光学素子用の材料が望まれている。
本発明においては、ポリチオール化合物に、芳香族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートを含有する光学素子用の組成物を提供する。すなわち、本発明における光学素子用の組成物は、少なくとも1種類の芳香族ポリイソシアネート化合物を含む第1の組成と、少なくとも1種類の脂環族ポリイソシアネート化合物を含む第2の組成と、少なくとも1種類のポリチオール化合物であって、下記の一般式(1)で表され、分子内に2個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物を含む第3の組成とを含む。
1−(SCH2SH)n ・・・(1) (式中R1は芳香環を除く有機残基であり、nは1以上の整数である。)
本発明の組成物を加熱硬化して光学素子用の基材を生成する工程を有する光学素子の製造方法により、熱変形温度がさらに高く、透明度も高い高屈折率の樹脂製の光学素子、例えば、プラスチックレンズを提供することができる。したがって、本発明の光学素子の製造方法により眼鏡レンズに適したプラスチックレンズを提供でき、高屈折率であり、耐熱性が高い眼鏡を製造できる。本発明により提供される眼鏡は、高屈折率および高耐熱性のプラスチックレンズを用いるので、軽量で熱変形もなく、さらに、レンズが黄色に着色されていないので、用途が限定されない高性能の眼鏡である。光学素子としては、プラスチックレンズあるいは眼鏡レンズに限定されることはなく、画像表示装置の光学系の素子、プリズム、光ファイバー、情報記録媒体用の素子、フィルタ等などがある。
キシリレンジイソシアネートをはじめとする第1の組成である芳香族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,3−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、ビベンジル−4,4’−ジイソシアナート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートをはじめとする第2の組成である脂環族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルイソシアナート)、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンをはじめとする第3の組成である、一般式(1)で表されるポリチオール化合物の具体例としては、1,2,5−トリメルカプト−4−チアペンタン、3,3−ジメルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、3−メルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、3,6−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3,7−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,6−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メルカプトメチル−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、3−メルカプトメチルチオ−1,5−ジメルカプト−2−チアペンタン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,4,8,11−テトラメルカプト−2,6,10−トリチアウンデカン、1,4,9,12−テトラメルカプト−2,6,7,11−テトラチアドデカン、2,3−ジチア−1,4−ブタンジチオール、2,3,5,6−テトラチア−1,7−ヘプタンジチオール、2,3,5,6,8,9−ヘキサチア−1,10−デカンジチオール、4,5−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチオラン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−ビス(メルカプトメチルチオ)メチルー1,3−ジチエタン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等のポリチオール化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
第1の組成物である芳香族ポリイソシアネートは屈折率の向上に効果的であると考えられ、また、第2の組成物である脂環族ポリイソシアネートは屈折率の向上にはそれほど寄与がないとしても耐熱性の向上に効果的であると考えられる。本発明においては、第3の組成分である、ポリチオール化合物をベースにして、芳香族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートを加えることにより、屈折率および耐熱性の向上だけではなく、レンズ着色も改善することができる。特に、芳香族ポリイソシアネート、あるいは脂環族ポリイソシアネートのみを使用するのではなく、一方を他方にそれぞれ25%程度、置き換えることにより透明性が格段に改善される。このため、本発明の組成物は、第1の組成の芳香族ポリイソシアネート化合物と第2の組成の脂環族ポリイソシアネート化合物の合計のモル数に対する第1の組成のモル数の比率が25%以上、75%以下の範囲である、光学素子を提供する。
本発明により得られる基材のe線(波長546nm)の屈折率は、1.66〜1.68であり、1.67レンズと称される高屈折率な光学素子を得ることができる。本発明は、基材にハードコート層を積層した光学素子、または、基材に、プライマー層を設け、その上にハードコート層を積層した素子、およびハードコート層を積層する工程、または、ハードコート層を積層する工程の前に、基材にプライマー層を積層する工程を有する光学素子の製造方法を含む。
ハードコート層は、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,InおよびTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上および/またはこれら元素群から選ばれた2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上を含む第4の組成と、以下の一般式(2)で表される有機ケイ素化合物とを含むことが好ましい。
23 mSiX1 3-m ・・・(2) (式中、R2は重合可能な反応基を有する有機基、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、mは0または1である。)
さらに、ハードコート層は、アミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。また、プライマー層は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むものが好ましい。
本発明は、さらに、ハードコート層の表面に反射防止膜が積層された光学素子、およびハードコート層に反射防止膜を積層する工程をさらに有する光学素子の製造方法を含む。反射防止膜の一例は、無機系であり、酸化シリコンなどの複数の無機物質層を乾式で積層したものである。反射防止膜の他の例は、有機系であり、上記の一般式(2)で表される有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を湿式により積層したものである。本発明の基材を用いた光学素子は、耐熱性が高く熱変形が小さいのでハードコート層、プライマー層、反射防止膜を重ねて形成したときに温度などによりクラックが発生する可能性は小さく、耐久性の高い光学素子を提供できる。特に、上述した有機系の反射防止膜は、高耐熱性であり、基材との熱膨張率の差も小さいので、耐熱性の高いレンズなどの光学素子を提供できる。
反射防止膜の屈折率は、反射を防止するためにハードコート層の屈折率よりも、少なくとも0.10低くなることが望ましい。また、膜厚は50nm〜150nm程度であることが望ましい。反射防止膜は、膜厚が小さく耐久性の面で劣り、膜厚が大きくなると干渉が生じたり、反射の増大による反射防止膜の機能低下が生じるため、この程度の範囲が好ましい。
本発明により、高耐熱で高屈折率の1.67レンズ基材が得られ、この基材に各種表面処理を施すことで、高耐熱のプラスチックレンズをはじめとする各種光学素子を提供できる。本発明の光学素子の好適な一例は眼鏡レンズであり、高屈折率および高耐熱性の眼鏡レンズを用いることにより、軽く、レンズ変形が抑制された高性能の眼鏡を提供できる。
図1に、レンズを製造する工程のうち、基材の製造とその表面に膜を形成する工程を示すフローチャートを示してある。また、図2に、図1に示したレンズの製造過程におけるレンズ(ワーク)40の構成を断面で模式的に示してある。
先ず、ステップ31で、プラスチックレンズの基材となる組成物(材料)を調合し、ステップ32で、調合した組成物を熱硬化して重合させ、基材41を生成する(図2(a))。次に、ステップ33で、基材41に、浸漬法によりハードコート層42を積層する(図2(b))。このとき、ハードコート層42は、基材41に直に積層しても良く、予めプライマー層47を基材41の表面に積層し、プライマー層47を介して基材41に積層しても良い(図2(b´))。
続いて、ステップ34で、基材41の一方の表面に、反射防止膜43を形成する(図2(c))。さらに、ステップ35で、反射防止膜43の表面に撥水層44を形成する(図2(d))。眼鏡レンズの場合、このようにして形成されたプラスチックレンズ40を、フレームに合致する形状に加工し、フレームと組み合わせて眼鏡を製造する。
(実施例1)
ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートの1種であるm−キシリレンジイソシアネート(47.0g)と、脂環族ポリイソシアネートの1種であるノルボルナンジイソシアネート(51.5g)と、ポリチオールの1種である1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(101.9g)とを調合し、基材用の組成物を生成した。本例の基材用の組成物Aにおけるm−キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートの合計のモル数に対するm−キシリレンジイソシアネートのモル数の比は50%である。
さらにステップ31においては、基材用の組成物を混合攪拌して均一にした後、内部離型剤としてZelecUN(stepan社製)(0.17g)、紫外線吸収剤としてViosorb583(共同薬品製)(0.10g)を添加して撹拌して、完全に溶解させた。その後、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド(0.04g)を加えて、常温で良く攪拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行った。
ステップ32において、この調合した基材の原料(組成物)を熱硬化してレンズ基材41を製造した。テープにて外周部を封止した2枚のレンズ成形用のガラスモールド(ガラス型)の中に基材用の組成物を注入し、25℃から120℃まで20時間かけて昇温させて重合硬化した。その後、ガラス型から硬化したレンズ基材41を離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。本例における、ガラス型は、度数が−6Dとなるレンズを製造するためのものである。
ステップ33において、基材41に、ハードコート層42を積層した。まず、ブチルセロソルブ100部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン155部を混合し十分に撹拌して均一にし、さらに、この混合液に0.1N塩酸水溶液43部を撹拌しながら滴下し、室温で4時間撹拌後、冷蔵庫に入れて一昼夜熟成させてハードコート用の組成物を調整した。その後、ハードコート用の組成物にシリコン系界面活性剤「L−7001」(日本ユニカー製)0.3部を添加し、撹拌した後、さらに、メタノール分散二酸化チタン/二酸化ジルコニウム/二酸化ケイ素複合微粒子ゾル(触媒化成工業製、固形分濃度20重量%)700部を混合して、十分に撹拌した。このハードコート用の組成物に、さらに、Fe(III)アセチルアセトネート0.7部を添加した後、室温で3時間撹拌し、その後冷蔵庫で一昼夜熟成させた。
このように生成されたハードコート用の組成物を基材41に塗布した後、硬化させ、ハードコート層42を形成した。この際、上記のハードコート層用の組成物を、浸漬法(引き上げ速度18cm/min)にて基材41の表面に塗布し、塗布した基材41を80℃で20分間風乾した後、さらに、120℃で120分間焼成を行った。これにより、基材41の両面に膜厚2.0〜2.2μmのハードコート層42が形成された。
次に、ステップ34において、無機系の層を乾式法により成膜することにより反射防止膜43を形成した。ハードコート層42が積層された基材41を、真空中で、200Wの出力のアルゴンガスプラズマ中に30秒間暴露させた。その後、真空蒸着法によってレンズ基材41の片側にSiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2、の5層の薄膜を順次積層した。これらの薄膜の光学膜厚は設計波長λ(520nm)に対して次の通りである。レンズ基材41の側から順番に、最初のSiO2の膜は約λ/4、次のZrO2とSiO2の膜は合計膜厚が約λ/4、次のZrO2の膜は約λ/4、最上層のSiO2膜は約λ/4である。また、これらの無機の薄膜の組み合わせによる反射防止膜42の屈折率は、ハードコート層41の屈折率よりも、少なくとも0.10低くなるように設計されている。
さらに、ステップ35において、反射防止膜43の表面に含フッ素シラン化合物からなる撥水層(撥水膜)44を真空蒸着法により成膜した。
以上により製造されたプラスチックレンズ40の諸特性を図3に示してある。屈折率は、レンズではなく基材41の状態での屈折率を示しており、アタゴ社のアッベ屈折率計でe線での屈折率を測定した。屈折率を測定するために、同一の基材用の組成物を用いて2mmフラット板を生成して測定に使用している。フラット板は、フラット板の厚みが2mmとなる様にテープにて外周部を封止した2枚のガラス平板中に、基材用の組成物を注入し、上記と同じ条件で重合硬化、離型、アニール処理を行い製造した。
基材熱変形温度(Tg)は、島津製作所製TMA60を用いて、荷重30gにより昇温スピード10℃/分で測定した。レンズ色は、目視にて表面処理後のレンズ色を評価した。耐熱性の評価は中心部の変形と熱クラックの発生で評価した。中心部の変形は、−6Dのレンズをメタルフレームに入れ、60℃の恒温槽に30分放置し、冷却後レンズメーターで度数を評価した。以降5℃おきに同じ操作を行い評価し、レンズメーターで度数がぼけた時の温度を記した。熱クラックの発生温度は、上記の中心部の変形試験で、レンズ全面に熱クラックが発生した温度を記した。
(実施例2)
実施例2では、ステップ31および32は上記の実施例1と同様に行い、ステップ33において、ハードコート層の前にレンズ基材41の表面にプライマー層47を形成した。レンズ基材41とハードコート層42の密着性をさらに向上するにはプライマー層を形成することが有効である。屈折率の高いプラスチックレンズは、レンズの中心厚、コバ厚を薄くできるので、プライマー層を形成することにより薄くても耐衝撃性が向上し、割れ難いレンズを提供できる。
まず、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの1種であるポリエステル樹脂「A−160P」(高松油脂製、水分散エマルション、固形分濃度25%)100部に、酸化チタン系複合微粒子「オプトレイク1130F−2(A−8)」(触媒化成工業製、Fe23/TiO2=0.02、SiO2/TiO2=0.11、粒径:10nm、固形分濃度:30%、分散溶媒:メチルアルコール、表面処理:テトラエトキシシラン)84部と、希釈溶剤としてメチルアルコール640部と、レベリング剤としてシリコン系界面活性剤「SILWET L−77」(日本ユニカー製)1部とを混合し、3時間撹拌して、これをプライマー用の組成物を生成した。このプライマー用の組成物を、レンズ基材41に浸漬法(引き上げ速度20cm/min)にて塗布し、100℃で15分間加熱硬化処理して、レンズ基材41の表面に膜厚0.8〜0.9μmのプライマー層47を形成した。
ステップ33において、このプライマー層47の上に、ハードコート層42を形成した。本例においては、ブチルセロソルブ144部、メタノール分散二酸化チタン/二酸化ジルコニウム/二酸化ケイ素複合微粒子ゾル(触媒化成工業製、固形分濃度20重量%)603部を混合した後、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン170部を混合し、十分に撹拌し、ハードコート用の組成物の原料を生成した。このハードコート用の組成物に対し、さらに、0.05N塩酸水溶液60部を撹拌しながら滴下し、4時間撹拌後、さらに一昼夜熟成させ、その後、Fe(III)アセチルアセトネート0.2部、シリコン系界面活性剤「L−7001」(日本ユニカー製)0.3部を添加し、室温で4時間撹拌後、冷蔵庫内で1昼夜熟成させ、ハードコート用の組成物を生成した。
このハードコート用の組成物を、プライマー層47を形成したレンズ基材41に浸漬法(引き上げ速度18cm/min)にて塗布し、80℃で20分間風乾した後、120℃で120分間焼成を行い、プライマー層47の上に膜厚2.0〜2.2μmのハードコート層42を形成した。
ステップ34において、ハードコート層42の上に、多層の無機層を乾式法で成膜し、反射防止膜43を形成した。SiO2膜を真空蒸着法(真空度2.0×10-4Pa)により成膜し、TiO2膜をイオンアシスト蒸着法(真空度4.0×10-3Pa)により成膜し、それらを繰り返すことにより7層の無機層を成膜した。最上層は、SiO2膜である。TiO2層をイオンアシスト蒸着法で成膜する際のイオンアシスト条件は、加速電圧520V、加速電流270mAであり、真空度は酸素を導入して4.0×10-3Paで保持する様にする。基材41の側から数えて、第1層には0.083λ0の光学膜厚を持つSiO2層(屈折率1.45)、第2層は0.070λの光学膜厚を持つTiO2層(屈折率2.36)、第3層は0.10λの光学膜厚を持つSiO2層、第4層は0.18λの光学膜厚を持つTiO2層、第5層は0.065λの光学膜厚を持つSiO2層、第6層は0.14λの光学膜厚を持つTiO2層、第7層は0.26λの光学膜厚を持つSiO2層を順次積層し、反射防止膜42とした。この反射防止膜42の設計波長λは520nmである。
さらに、上記の実施例1と同様に、ステップ35において、含フッ素シラン化合物からなる撥水層44を真空蒸着法により成膜した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例3)
実施例3においては、上記の実施例1のステップ31、32および33と同様にハードコート層42まで形成した。さらに、ステップ34において、湿式法により有機性の反射防止膜を形成した。まず、γ−グリシドキシトリメトキシシラン0.42部、イソプロパノール125部を混合した後、テトラエトキシシラン5.4部、メチルトリメトキシシラン0.7部を混合して、十分に撹拌し、反射防止膜用の原液を調合した。その原液に、0.1規定酢酸水溶液13.4部を撹拌しながら滴下し、5時間撹拌し、さらに、イソプロパノール分散中空シリカゾル(固形分濃度20wt%)5.6部を加えて十分に混合した後、室温で3日間熟成させ、固形分濃度が約2%の反射防止膜用の組成物を生成した。この反射防止膜用の組成物は、低屈コーティング液である。
反射防止膜用の組成物をハードコート層42を形成したレンズ基材41に、浸漬法(引き上げ速度10cm/min)により塗布し、塗布したレンズを60℃で20分間風乾した後、120℃で120分間焼成を行い、反射防止膜42を形成した。本例では、ハードコート層42の上に膜厚90nmの低屈折率な反射防止膜43が形成できた。
この反射防止膜43の上に、実施例1のステップ35と同様に撥水層44を形成した。
以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例4)
実施例4では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとしてm−キシリレンジイソシアネート(47.0g)と、脂環族ポリイソシアネートとして水添m−キシリレンジイソシアネート(48.5g)、ポリチオールとして1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(101.9g)を混合攪拌して基材の組成物を調合した。この基材の組成物におけるm−キシリレンジイソシアネートと水添m−キシリレンジイソシアネートとの合計のモル数に対するm−キシリレンジイソシアネートのモル数の比率は50%である。この基材の組成物に対し、さらに、内部離型剤としてZelecUN(stepan社)(0.17g)、紫外線吸収剤としてViosorb583(共同薬品製)(0.10g)を添加して撹拌し、完全に溶解させた。さらに、この基材の組成物に、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド(0.04g)を加えて、常温で良く攪拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行った。
ステップ32において、上記の基材の組成物を、テープにて外周部を封止した2枚のレンズ成形用のガラス型に注入し、25℃から120℃まで20時間かけて昇温させて重合硬化させた。その後、ガラス型から硬化したプラスチックレンズ基材41を離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。レンズのガラス型は、上記の実施例1と同様に度数が−6Dとなる様に形成されたものである。
次に、実施例1のステップ33、34および35と同様に、ハードコート層42、反射防止膜43、撥水層44を形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例5)
実施例5では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとしてm−キシリレンジイソシアネート(70.5g)と、脂環族ポリイソシアネートとしてノルボルナンジイソシアネート(25.8g)と、ポリチオールとして1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(101.9g)とを用いて、基材の組成物を生成した。本例の基材の組成物におけるm−キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートの合計のモル数に対するm−キシリレンジイソシアネートのモル数の比率は75%である。
この基材の組成物に対し、他の組成を実施例1のステップ31と同様に混合し、また、実施例1と同様に脱気処理などを行った後、実施例1のステップ32、33、34および35と同様に、レンズ基材41、ハードコート層42、反射防止膜43、撥水層44を順番に形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例6)
実施例6では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとしてm−キシリレンジイソシアネート(23.5g)と、脂環族ポリイソシアネートとしてノルボルナンジイソシアネート(77.3g)と、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(101.9g)を用いて基材の組成物を調合した。この基材の組成物におけるm−キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートの合計のモル数に対するm−キシリレンジイソシアネートのモル数の比率は25%である。
この基材の組成物に対し、他の組成を実施例1のステップ31と同様に混合し、また、実施例1と同様に脱気処理などを行った後、実施例1のステップ32、33、34および35と同様に、レンズ基材41、ハードコート層42、反射防止膜43、撥水層44を順番に形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例7)
実施例7では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとしてm−キシリレンジイソシアネート(56.4g)と、脂環族ポリイソシアネートとしてノルボルナンジイソシアネート(41.2g)と、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(101.9g)を用いて基材の組成物を調合した。この基材の組成物におけるm−キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートの合計のモル数に対するm−キシリレンジイソシアネートのモル数の比率は60%である。
この基材の組成物に対し、他の組成を実施例1のステップ31と同様に混合し、また、実施例1と同様に脱気処理などを行った後、実施例1のステップ32、33、34および35と同様に、レンズ基材41、ハードコート層42、反射防止膜43、撥水層44を順番に形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例8)
実施例8では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとしてm−キシリレンジイソシアネート(37.6g)と、脂環族ポリイソシアネートとしてノルボルナンジイソシアネート(61.8g)と、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(101.9g)を用いて基材の組成物を調合した。この基材の組成物におけるm−キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートの合計のモル数に対するm−キシリレンジイソシアネートのモル数の比率は40%である。
この基材の組成物に対し、他の組成を実施例1のステップ31と同様に混合し、また、実施例1と同様に脱気処理などを行った後、実施例1のステップ32、33、34および35と同様に、レンズ基材41、ハードコート層42、反射防止膜43、撥水層44を順番に形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例9)
実施例9では、実施例4のステップ31と同様に基材用の組成物を調合し、ステップ32と同様にレンズ基材41を生成する。さらに、ステップ33においては、ハードコート層42の前にプライマー層47を形成した。まず、ポリエステル樹脂「ペスレジンA−160P」(高松油脂製、水分散エマルション、固形分濃度25%)186部、メタノール257部、水15部、ブチルセロソルブ37部を混合し、さらにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5部、シリコン系界面活性剤0.1部を加えて3時間撹拌し、プライマー用の組成物を調整した。さらに、プライマー用の組成物をレンズ基材41の表面に浸漬法(引き上げ速度15cm/min)にて塗布し、その後、100℃で20分間加熱硬化処理して、レンズ基材41上に膜厚0.9〜1.0μmのプライマー層47を形成した。
次に、ブチルセロソルブ68部、メタノール139部、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を混合し、ハードコート用の原液を調整した。この原液に、0.1N塩酸水溶液17部を撹拌しながら滴下し、さらに、3時間撹拌後、1昼夜熟成させ、その後、メタノール分散SiO2微粒子ゾル(触媒化成工業製、商品名「オスカル1132」、固形分濃度30%)181部と、多官性能エポキシ化合物である、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名「デナコールEX―421」)を26部混合した。さらに、この混合液に、過塩素酸マグネシウム3部、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー製、商品名「L−7001」)0.15部、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー製、商品名「L−7604」)0.05部、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ製、商品名「TINUVIN213」)3.7部を添加し、4時間撹拌した後、1昼夜熟成させてハードコート用の組成物とした。
このハードコート用の組成物を、基材41にプライマー層47が形成された基材41の表面に浸漬法(引き上げ速度35cm/min)にて塗布し、その後、80℃で20分間風乾した後、125℃で180分間焼成を行い、プライマー層47の上に膜厚2.4〜2.6μmのハードコート層42を形成した。
この実施例9では、ステップ34の反射防止膜43およびステップ35の撥水層44は形成しない。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例10)
実施例10では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとしてm−キシリレンジイソシアネート(75.2g)と、脂環族ポリイソシアネートとしてノルボルナンジイソシアネート(20.6g)と、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(101.9g)を用いて基材の組成物を調合した。この基材の組成物におけるm−キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートの合計のモル数に対するm−キシリレンジイソシアネートのモル数の比率は80%である。
この基材の組成物に対し、他の組成を実施例1のステップ31と同様に混合し、また、実施例1と同様に脱気処理などを行った後、実施例1のステップ32、33、34および35と同様に、レンズ基材41、ハードコート層42、反射防止膜43、撥水層44を順番に形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(実施例11)
実施例11では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとしてm−キシリレンジイソシアネート(18.8g)と、脂環族ポリイソシアネートとしてノルボルナンジイソシアネート(82.4g)と、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(101.9g)を用いて基材の組成物を調合した。この基材の組成物におけるm−キシリレンジイソシアネートとノルボルナンジイソシアネートの合計のモル数に対するm−キシリレンジイソシアネートのモル数の比率は20%である。
この基材の組成物に対し、他の組成を実施例1のステップ31と同様に混合し、また、実施例1と同様に脱気処理などを行った後、実施例1のステップ32、33、34および35と同様に、レンズ基材41、ハードコート層42、反射防止膜43、撥水層44を順番に形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(比較例1)
比較例1では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとして、m−キシリレンジイソシアネート(94g)と、ポリチオールとして、4−メルカプトメチル−3,6-ジチオ−1,8−オクタンジチオール(87g)を調合し、十分に撹拌、混合して均一にし、基材の組成物を調整した。比較例1の基材の組成物は、脂環族ポリイソシアネート化合物を含んでいない。
この基材の組成物に、内部離型剤としてZelecUN(stepan社)0.15g、紫外線吸収剤としてViosorb583(共同薬品製)0.09gを添加して撹拌して、完全に溶解させ、その後、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド0.02gを加えて、常温で良く攪拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行い、基材の組成物とした。
ステップ32において、この基材の祖生物を、テープにて外周部を封止した2枚のレンズ成形用のガラス型の中に注入し、25℃から120℃まで20時間かけて昇温させて重合硬化させる。その後、ガラス型から硬化したプラスチックレンズの基材を離型し、120℃で2時間加熱してアニール処理を行う。本例においても、ガラス型としては、度数が−6Dとなるものを使用した。
さらに、実施例1のステップ33、34および35と同様に、ハードコート層42、反射防止膜43、および撥水層44を形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
(比較例2)
比較例2では、ステップ31において、芳香族ポリイソシアネートとしてm−キシリレンジイソシアネート(48g)、ポリチオールとして、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物(52g)を基材の組成物として調合し、十分に撹拌、混合して均一にした。この後、その基材の組成物に、内部離型剤としてZelecUN(stepan社)0.1g、紫外線吸収剤としてViosorb583(共同薬品製)0.05gを添加して撹拌して、完全に溶解させた。さらに、その基材の組成物に、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド0.03gを加えて、常温で良く攪拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行った。
この基材の組成物を、比較例1のステップ32と同様に、テープにて外周部を封止した2枚のレンズ成形用のガラス型に注入し、25℃から120℃まで20時間かけて昇温させて重合硬化させた。その後、ガラス型から硬化したプラスチックレンズの基材41を離型し、120℃で2時間加熱してアニール処理を行った。さらに、実施例1のステップ33、34および35と同様に、ハードコート層42、反射防止膜43、および撥水層44を形成した。以上により製造されたプラスチックレンズ40を、実施例1と同様の方法に評価した諸特性を図3に示してある。
図3に纏めて示したように、実施例1〜実施例11により得られたプラスチックレンズ40においては、基材の熱変形温度(Tg)は、115〜130℃であり、比較例1および2に示したようなポリチオール化合物と芳香族ポリイソシアネートとを含み、脂環族ポリイソシアネート化合物を含まない組成物を用いたプラスチックレンズに比較すると、10〜30℃高い値が得られることが分かる。中心部の変形が見られる温度も95〜120℃と高く、さらに、熱クラックの発生する温度も85℃以上と高い。したがって、これらの測定に基づく耐熱性の評価も、比較例1および2に比較して良好であり、ポリチオール化合物と、芳香族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネート化合物の両方とを含む組成物により耐熱性の光学素子を製造することが分かる。
さらに、脂環族ポリイソシアネート化合物と芳香族ポリイソシアネートの合計のモル数に対する、第2の組成の脂環族ポリイソシアネート化合物のモル数の比を25%以上にすることは、耐熱性を向上する上で非常に効果的である。
有機性の反射防止膜を設けた実施例3と、反射防止膜を設けていない実施例9では、耐熱性はさらに良好であり、120℃までクラックが発生していない。熱クラックの発生には、反射防止膜の熱変形温度(Tg)が少なからず関連していると考えられ、実施例3では、湿式で形成された有機性の反射防止膜の熱膨張率と基材との熱膨張率の差が少ないことが耐熱性をさらに向上していると考えられる。
一方、実施例10および11と、実施例1〜9とを比較すると、実施例10においては、脂環族ポリイソシアネート化合物と芳香族ポリイソシアネートのモル数に対する芳香族ポリイソシアネート化合物のモル数の比が80%程度で、すなわち75%以上であり、屈折率は高いが、耐熱性が他の実施例に比較して若干劣り、さらに、レンズがやや黄色くに着色する。したがって、高屈折率の比較例2と比べると、耐熱性およびレンズの着色で改善は見られるが、種々の用途に対して容易に適用可能な光学素子を提供するという点では不満足である。
さらに、実施例11においては、脂環族ポリイソシアネート化合物と芳香族ポリイソシアネートの合計のモル数に対する、芳香族ポリイソシアネート化合物のモル数の比率は20%で、すなわち25%未満であり、耐熱性は高く、レンズは透明であるが、屈折率が1.655と他の実施例よりも低い。したがって、屈折率が1.67前後の光学素子を提供するという目的には不満足である。
このため、第1の組成の芳香族ポリイソシアネート化合物と第2の組成の脂環族ポリイソシアネート化合物の合計のモル数に対する第1の組成の芳香族ポリイソシアネート化合物のモル数の比が25%から75%の範囲を満たすことが望ましい。
特に、第2の組成の脂環族ポリイソシアネートを25%程度含む、すなわち、ポリイソシアネート化合物の25%程度を第2の組成の脂環族ポリイソシアネートに置き換えるだけで格段にレンズの色は格段に改善される。
なお、上記に示した各実施例は、本発明の一実施例に過ぎず、本発明は上記の実施例に限定されるものではない。第1の組成である芳香族ポリイソシアネート化合物、第2の組成である脂環族ポリイソシアネート化合物、第3の組成である分子内に2個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物の他の具体的な例は、上記にて説明した通りである。また、ハードコート層に用いる酸化物微粒子の種類も、上記に限らず、Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Zn,W,Inから選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上または、これらの元素群から選ばれた2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上であっても良い。また、実施例2で説明した金属アセチルアセトネート、実施例9で説明した多官性能エポキシに加え、アミン類、アミノ酸類、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物をハードコート層用の組成物に含めることができる。
また、上記では、眼鏡に用いるプラスチックレンズを光学素子として製造し、その耐熱性およびレンズの色により評価しているが、本発明を適用可能な光学素子は、眼鏡レンズあるいはその他のレンズに限らず、画像表示装置のパネル、プリズム、光ファイバー、情報記録媒体の光学系、光学フィルタなど、多種多様なものがある。
本発明に係る光学素子(プラスチックレンズ)の製造方法を示すフローチャートである。 本発明に係る光学素子(プラスチックレンズ)の層構成を示す図である。 幾つかの条件で形成されたワークの評価を示す図である。
符号の説明
40 ワーク(プラスチックレンズ)
41 レンズ基材、47 プライマー層
42 ハードコート層、43 反射防止膜、44 撥水層

Claims (18)

  1. 少なくとも1種類の芳香族ポリイソシアネート化合物を含む第1の組成と、
    少なくとも1種類の脂環族ポリイソシアネート化合物を含む第2の組成と、
    少なくとも1種類のポリチオール化合物であって、下記の一般式(1)で表され、分子内に2個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物を含む第3の組成とを含む組成物が加熱硬化された基材を有する光学素子。
    1−(SCH2SH)n ・・・(1) (式中R1は芳香環を除く有機残基であり、nは1以上の整数である。)
  2. 請求項1において、前記芳香族ポリイソシアネート化合物は、キシリレンジイソシアネートである光学素子。
  3. 請求項1または2において、前記脂環族ポリイソシアネート化合物は、水添キシリレンジイソシアネートまたはノルボルナンジイソシアネートである光学素子。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の光学素子において、前記第1の組成と前記第2の組成の合計のモル数に対する前記第1の組成のモル数の比率が25%以上、75%以下の範囲である、光学素子。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の光学素子において、前記基材のe線の屈折率は、1.66〜1.68である、光学素子。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載の光学素子において、前記基材に積層されたハードコート層をさらに有する光学素子。
  7. 請求項6において、前記ハードコート層は、プライマー層を介して前記基材に積層されている光学素子。
  8. 請求項6または7において、前記ハードコート層は、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,InおよびTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上および/または前記元素群から選ばれた2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上を含む第4の組成と、
    以下の一般式(2)で表される有機ケイ素化合物とを含む、光学素子。
    23 mSiX1 3-m ・・・(2) (式中、R2は重合可能な反応基を有する有機基、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、mは0または1である。)
  9. 請求項8において、前記ハードコート層は、さらに、アミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含む、光学素子。
  10. 請求項7〜9いずれかに記載の光学素子において、前記プライマー層は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む、光学素子。
  11. 請求項6〜10いずれかに記載の光学素子において、前記ハードコート層に積層された反射防止膜をさらに有する光学素子。
  12. 請求項11において、前記反射防止膜は、積層された複数の無機物質層を備えている光学素子。
  13. 請求項11において、前記反射防止膜は、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む、光学素子。
    23 mSiX1 3-m ・・・(2) (式中、R2は重合可能な反応基を有する有機基であり、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、mは0または1である。)
  14. 請求項13において、前記反射防止膜の屈折率は、前記ハードコート層の屈折率よりも、少なくとも0.10低い、光学素子。
  15. 請求項13または14に記載の光学素子において、前記反射防止膜は、膜厚が50nm〜150nmである、光学素子。
  16. 請求項1〜15いずれかに記載の光学素子において、当該光学素子は、プラスチックレンズである、光学素子。
  17. 請求項16に記載のプラスチックレンズを有する眼鏡。
  18. 少なくとも1種類の芳香族ポリイソシアネート化合物を含む第1の組成と、少なくとも1種類の脂環族ポリイソシアネート化合物を含む第2の組成と、少なくとも1種類のポリチオール化合物であって、下記の一般式(1)で表され、分子内に2個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物を含む第3の組成とを含む組成物を加熱硬化して光学素子用の基材を生成する工程を有する光学素子の製造方法。
    1−(SCH2SH)n ・・・(1) (式中R1は芳香環を除く有機残基であり、nは1以上の整数である。)
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