JP2005213303A - 多孔性構造体の製造方法、多孔性構造体及び皮革状構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 水系ポリウレタン樹脂を用いているにも拘らず、繊維基材内部にポリウレタン樹脂層が均一に分散しており、しかもそのポリウレタン樹脂層中に緻密かつ均一で安定性(耐熱性及び耐湿熱性)にも優れた多孔性構造が形成されており、柔軟性、弾力性、反発感及び立毛感といった風合いの良好な多孔性構造体を製造することが可能な方法を提供すること。
【解決手段】(A)水系ポリウレタン樹脂、(B)ポリビニルアルコール及び(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤を含有する混合液を繊維基材に含浸せしめた前駆体を得た後、前記前駆体を湿熱加熱及び乾熱乾燥して多孔性構造体を得ることを特徴とする多孔性構造体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、多孔性構造体の製造方法、多孔性構造体及び皮革状構造物に関し、さらに詳しくは、水系ポリウレタン樹脂を繊維基材に含浸せしめて乾燥させる多孔性構造体の製造方法、その方法により得られた多孔性構造体、並びに、その多孔性構造体に表皮層を設けた皮革状構造物に関する。
従来から、天然皮革の代替品として、不織布を基材としてポリウレタン樹脂で処理した人工皮革、織物や編物を基材としてポリウレタン樹脂で処理した合成皮革等の皮革調製品が多種製造されてきた。このような皮革調製品としては、風合い、通気性等を天然皮革に近づけるために、基材内部のポリウレタン樹脂層中に多孔性構造を形成させた製品(多孔性構造体)が一般的である。
このようにポリウレタン樹脂層中に多孔性構造を形成させる方法として、従来は、ポリウレタン樹脂の有機溶媒溶液を繊維基材に塗布した後、ポリウレタン樹脂に対し貧溶媒であって、前記有機溶媒と相溶性のある凝固液(通常は水)中に通して凝固させ、次いで水洗、乾燥させる湿式凝固法と呼ばれる方法が知られていた。しかしながら、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤を使用する湿式凝固法では、火災の危険性、作業環境の悪化や大気、水質等の環境汚染等の点で問題があった。そのため従来は、これらの問題を解消するために有機溶剤を回収するといった工程を加えていたが、多額の回収廃棄コスト及び労力がかかってしまう点で問題が残っていた。
そこで、このような問題を解決するために、従来から繊維基材に塗布するポリウレタン樹脂を有機溶剤タイプから水系に移行すべく検討がなされてきた。すなわち、水系ポリウレタン樹脂により多孔性構造体を得ることができれば、有機溶剤を使用しないがゆえにそれらの回収コスト及び労力を削減することができ、更に火災の危険性、作業環境の悪化及び、環境汚染という問題も同時に解決されることが期待されてきた。
しかしながら、水系ポリウレタン樹脂を用いてポリウレタン樹脂層中に多孔性構造を形成させる製造方法の場合、一般的に、乾燥工程において繊維基材表面から蒸発する水の移動に引き連れられて水系ポリウレタン樹脂が繊維基材表面に移行してしまう、いわゆるマイグレーションという現象が起こり、柔軟性、弾力性、反発感及び立毛感に乏しく風合いの悪い多孔性構造体となってしまうという新たな問題があった。そのため、このような水系ポリウレタン樹脂を用いた多孔性構造体の製造方法について、マイグレーション等の問題を解決すべく従来から以下の提案がなされてきたが、未だ十分な方法は見出されていなかった。
すなわち、特開52−28904号公報(特許文献1)には、感熱ゲル化剤を添加して感熱凝固性を付与した合成樹脂エマルジョンを熱水中で凝固せしめる方法が提案されている。しかしながら、この方法では、熱水凝固によって一時的に繊維基材内部のポリウレタン樹脂層中に多孔性構造が形成されるものの、その耐熱性が低いため、後の乾燥工程において孔の収縮もしくは無孔化が起こってしまい、風合いの良好な多孔性構造体を得ることができなかった。また、熱水凝固中に含浸液が一部流出して浴内にて凝固し、その凝固したゲル物が加工物の表面に再付着するため風合いが更に悪化するという問題も生じていた。
また、特開2000−290879号公報(特許文献2)には、感熱凝固温度が40〜90℃である水系ウレタン樹脂と会合型増粘剤とからなる水系樹脂組成物をスチームで感熱凝固させる方法が提案されている。しかしながら、この方法においても、一時的に繊維基材内部のポリウレタン樹脂層中に多孔性構造が形成されるものの、その耐熱性が低いため、後の乾燥工程において孔の収縮もしくは無孔化が起こってしまい、風合いの良好な多孔性構造体を得ることができなかった。
また、特開2001−172882公報(特許文献3)には、水系ウレタン樹脂エマルジョンに水溶性の高結晶天然物を添加し、更にその水溶性高結晶天然物を湿熱加熱凝固過程で水不溶性とする架橋剤及び添加剤を併用することにより、ポリウレタン樹脂層中に多孔質構造を形成する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、架橋剤として添加される2価金属塩やケイ酸塩による金属架橋によって凝集性が高くなってしまい、得られる多孔性構造体は硬く、脆くなってしまい、やはり風合いの良好な多孔性構造体を得ることができなかった。
さらに、特開平1−104634号公報(特許文献4)には、感熱凝固性ポリウレタンエマルジョン及び熱膨張性プラスチックマイクロバルーンを必須構成成分とする感熱凝固性及び熱膨張性ポリウレタンエマルジョン組成物を40℃〜180℃の水又は水蒸気中で処理する方法が提案されており、同公報においてはメチロールメラミン系、アジリジン系、エポキシ系、ブロックイソシアネート系等の架橋剤、水分散性顔料等の着色剤、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の充填剤、ポリビニルアルコール等の増粘剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤等を所望に応じて添加してよいことが記載されている。しかしながら、同公報に記載の感熱凝固性ポリウレタンエマルジョンに仮にブロックイソシアネート系の架橋剤やポリビニルアルコール等の増粘剤を添加したとしても、ポリウレタン樹脂層中に多孔性構造を形成せしめることは困難であり、多孔性構造が形成されたとしてもその耐熱性が低いため、後の乾燥工程において孔の収縮もしくは無孔化が起こってしまい、風合いの良好な多孔性構造体を得ることはできなかった。実際、同公報に記載の方法においては、多孔性構造を形成させるために熱膨張性プラスチックマイクロバルーンを添加する必要があり、そのためマイクロバルーンに起因した熱やけによる着色が発生し、更に形成される孔が独立孔でかつ大孔径のものであるため、やはり風合いの良好な多孔性構造体を得ることはできなかった。
このように、従来の水系ポリウレタン樹脂を用いた多孔性構造体の製造方法はいずれも風合い等の良好な多孔性構造体を得るには至っておらず、有機溶剤系ポリウレタン樹脂を用いて得られる多孔性構造体と同等の多孔性構造の均一性及び安定性を有していて風合いや通気性の良好な多孔性構造体(皮革調製品)は水系ポリウレタン樹脂を用いて得られていないのが現状であった。
特開昭52−28904号公報 特開2000−290879号公報 特開2001−172882号公報 特開平1−104634号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、水系ポリウレタン樹脂を用いているにも拘らず、繊維基材内部にポリウレタン樹脂層が均一に分散しており、しかもそのポリウレタン樹脂層中に緻密かつ均一で安定性(耐熱性及び耐湿熱性)にも優れた多孔性構造が形成されており、柔軟性、弾力性、反発感及び立毛感といった風合いの良好な多孔性構造体を製造することが可能な方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このような水系ポリウレタン樹脂を用いた方法によって得られたにも拘らず、有機溶剤系ポリウレタン樹脂を用いて得られる多孔性構造体と比べても遜色のない風合いを有する多孔性構造体、並びに、その多孔性構造体に表皮層を設けた皮革状構造物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水系ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール及び水性ポリイソシアネート系架橋剤を含有する混合液を繊維基材に含浸せしめて前駆体を得た後に湿熱加熱及び乾熱乾燥することにより、繊維基材内部にポリウレタン樹脂層が均一に分散しており、しかもそのポリウレタン樹脂層中に緻密かつ均一で安定性にも優れた多孔性構造が形成されており、風合いの良好な多孔性構造体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の多孔性構造体の製造方法は、(A)水系ポリウレタン樹脂、(B)ポリビニルアルコール及び(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤を含有する混合液を繊維基材に含浸せしめて前駆体を得た後、前記前駆体を湿熱加熱及び乾熱乾燥することを特徴とする方法である。
このような本発明の多孔性構造体の製造方法において用いる前記混合液は、(A)水系ポリウレタン樹脂と(B)ポリビニルアルコールとの配合比が、固形分の質量換算で(A):(B)=100:1〜100:40であり、(B)ポリビニルアルコールと(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤との配合比が、固形分の質量換算で(B):(C)=100:10〜100:100のものであることが好ましい。
また、本発明の多孔性構造体の製造方法において用いられる(A)水系ポリウレタン樹脂が、(a)ポリオール及び(b)ポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを、(c)HLB値が7〜16である非イオン性界面活性剤を用いて水に分散させた後、(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物で鎖伸長反応させて得られた水系ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
また、本発明の多孔性構造体の製造方法において用いる(A)水系ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度が40℃〜90℃であることが好ましい。
さらに、本発明の多孔性構造体の製造方法において用いる(B)ポリビニルアルコールは、ケン化度が70mol%以上であって、かつ、4質量%水溶液の20℃における粘度が10.0〜75.0mPa・sのものであることが好ましい。
また、本発明の多孔性構造体は、前記本発明の製造方法により得られたものであることを特徴とする多孔性構造体である。
さらに、本発明の皮革状構造物は、前記本発明の製造方法により得られた多孔性構造体の少なくとも一方の面に表皮層を設けたことを特徴とする皮革状構造物である。
なお、本発明の製造方法によって得られた本発明の多孔性構造体においては、繊維基材内部にポリウレタン樹脂層が均一に分散しており、しかもそのポリウレタン樹脂層中に緻密かつ均一で安定性にも優れた多孔性構造が形成されている。本発明によってこのような多孔性構造体が得られる具体的な理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の多孔性構造体の製造方法においては、(A)水系ポリウレタン樹脂と共に(B)ポリビニルアルコール及び(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤を含有する混合液が繊維基材に含浸されているため、その後の湿熱加熱時に、(B)ポリビニルアルコールによりポリウレタン樹脂層のマイグレーションが十分に防止されて繊維基材内部にポリウレタン樹脂層が均一に分散した状態となると共にその樹脂層中に緻密かつ均一な多孔性構造が形成され、同時に、(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤により、多孔性構造を形成しているポリウレタン樹脂同士が強度補強されることにより安定性が著しく向上するものと本発明者らは推察する。
本発明の製造方法によれば、水系ポリウレタン樹脂を用いているにも拘らず、繊維基材内部にポリウレタン樹脂層を均一に分散せしめ、ポリウレタン樹脂層の多孔性構造と繊維との間に空隙が設けられた非接着固着構造を形成せしめることが可能となる。さらに、本発明の製造方法によれば、そのポリウレタン樹脂層中に緻密かつ均一で安定性(耐熱性及び耐湿熱性)にも優れた多孔性構造を形成せしめ、柔軟性、弾力性、反発感及び立毛感といった風合いの良好な多孔性構造体を製造することが可能となる。
そして、このように本発明の製造方法においては水系ポリウレタン樹脂を用いているため、有機溶剤系ポリウレタン樹脂を用いた場合に発生する有機溶剤の回収コスト及び労力を削減することが可能となり、更に火災の危険性、作業環境の悪化、及び環境汚染という課題をも同時に解決することが可能となる。
したがって、本発明によれば、水系ポリウレタン樹脂を用いた方法によって得られたにも拘らず、有機溶剤系ポリウレタン樹脂を用いて得られる多孔性構造体と比べても遜色のない風合いを有する多孔性構造体、並びに、その多孔性構造体に表皮層を設けた皮革状構造物を提供することが可能となる。
以下、本発明の多孔性構造体の製造方法、多孔性構造体、及び、皮革状構造物につき、好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明の多孔性構造体の製造方法は、(A)水系ポリウレタン樹脂、(B)ポリビニルアルコール及び(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤を含有する混合液を繊維基材に含浸せしめて前駆体を得た後、前記前駆体を湿熱加熱及び乾熱乾燥して多孔性構造体を得るものである。
[(A)水系ポリウレタン樹脂]
本発明にかかる(A)水系ポリウレタン樹脂としては、(i)カルボキシル基、スルホン基、第4級アンモニウム基等の親水性官能基がポリウレタン樹脂骨格に導入され、乳化剤を用いなくても水性化できる自己乳化型水系ポリウレタン樹脂や、(ii)親水性官能基を有さないポリウレタン樹脂を乳化剤にて転相乳化して得られる強制乳化型水系ポリウレタン樹脂を用いることが可能であるが、繊維基材の内部に得られる多孔性構造の孔がより緻密なものとなる傾向にあるという観点から、(ii)強制乳化型水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
このような強制乳化型水系ポリウレタン樹脂としては、水系ポリウレタン樹脂の粒子径が細かく、水への分散性が良好かつ分散状態が安定であり、得られる樹脂被膜が柔軟かつ強靭であるという観点から、(a)ポリオールと(b)ポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを、(c)HLB値が7〜16である非イオン性界面活性剤を用いて水に分散させた後、(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物で鎖伸長反応させて得られたものが好ましい。なお、本発明において、HLB値はGriffinの式により算出される値をいう。
本発明に好適に用いられる(a)ポリオールとしては、2個以上のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限はなく、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
このようなポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)アジペート、1,6−ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物、ノナンジオールとダイマー酸の重縮合物、エチレングリコールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物等を挙げることができる。
また、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を挙げることができる。
さらに、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの単独重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドのランダム共重合体やブロック共重合体等を挙げることができる。さらに、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルエステルポリオール等も用いることができる。
これらの(a)ポリオールは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。なお、これらのポリオールの平均分子量は500〜5,000であることが好ましい。
本発明に好適に用いられる(b)ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、2個以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートを使用することが可能である。具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式ポリイソシアネート等を挙げることができる。
このような(b)ポリイソシアネートは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、これらの(b)ポリイソシアネートの中で、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネート化合物は、無黄変性のポリウレタン樹脂を得ることが可能となるという観点から好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート及び1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを用いることがより好ましい。
前述の(a)ポリオール及び(b)ポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを製造する際には、必要に応じて低分子量鎖延長剤を使用することが可能である。
このような低分子量鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応し得る水素原子を2個以上有する化合物が挙げられ、分子量が300以下であることが好ましい。また、低分子量鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の低分子量ポリアミン等を挙げることができる。これらの低分子量鎖延長剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明において、イソシアネート基末端プレポリマーを製造する具体的な方法については特に制限はなく、例えば、従来公知の一段式のいわゆるワンショット法、多段式のイソシアネート重付加反応法等を採用することが可能である。このときの反応温度は40〜150℃であることが好ましい。この際、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫−2−エチルヘキサノエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の反応触媒を添加することが可能である。また、反応中又は反応終了後に、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を添加することも可能である。このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
次に、得られたイソシアネート基末端プレポリマーを、(c)HLB値が7〜16である非イオン性界面活性剤を用いて水に分散させた後、(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物で鎖伸長反応せしめることにより、強制乳化型の水系ポリウレタン樹脂が得られる。
(c)成分として使用される非イオン性界面活性剤の構造に特に制限はなく、例えば、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンプロピレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンプロピレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン性界面活性剤、プルロニック型非イオン性界面活性剤等からHLB値が7〜16(より好ましくは9〜15)であるものを選択して用いることが可能である。ここで、(c)成分のHLB値が7未満であると、イソシアネート基末端プレポリマーの分散が困難となるか、あるいは分散可能な場合であっても安定性が劣る傾向にある。一方、HLB値が16を超えると、プレポリマーの乳化分散が困難となるか、あるいは分散可能な場合であっても耐水性が劣る傾向にある。
これらの非イオン性界面活性剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、非イオン性界面活性剤の使用量は、乳化される物質であるイソシアネート基末端プレポリマーの親水性により適宜選択することができるが、通常はイソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して、0.5〜10重量部であることが好ましく、1〜6重量部であることがより好ましい。非イオン性界面活性剤の使用量がイソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して0.5重量部未満であると、安定な乳化分散状態を得ることが困難となる傾向にある。また、非イオン性界面活性剤の使用量がイソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して10重量部を超えると、得られるポリウレタン樹脂の耐水性が低下する傾向にある。
イソシアネート基末端プレポリマーを水に乳化分散させる際には、転相乳化が起こるために、機械的剪断力を用いることが好ましい。機械的剪断力を与える乳化機器に特に制限はなく、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー等を挙げることができる。イソシアネート基末端プレポリマーは、室温〜40℃の温度範囲で水に乳化分散させ、イソシアネート基と水、又は、非イオン性界面活性剤との反応を極力抑えることが好ましい。さらに、必要に応じて、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加することが可能である。
(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、ヒドラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン;ジ第一級アミン及びモノカルボン酸から誘導されるアミドアミン;ジ第一級アミンのモノケチミン等の水溶性アミン誘導体;シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、1,1’−エチレンヒドラジン、1,1’−トリメチレンヒドラジン、1,1’−(1,4−ブチレン)ジヒドラジン等のヒドラジン誘導体を挙げることができる。これらの(d)成分は1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
イソシアネート基末端プレポリマーの鎖伸長反応は、前記したイソシアネート基末端プレポリマーの乳化分散物に(d)成分を添加して行うことが可能であり、あるいは、(d)成分にイソシアネート基末端プレポリマーの乳化分散物を添加して行うことも可能である。鎖伸長反応は、反応温度20〜40℃で行うことが好ましく、通常は30〜120分間で完結する。イソシアネート基末端プレポリマーを製造する際に有機溶剤を使用した場合には、例えば、鎖伸長反応を終えた後、減圧蒸留等により有機溶剤を除去することが好ましい。
本発明において用いられる水系ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度は、40〜90℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましく、45〜60℃であることが特に好ましい。ここで、感熱凝固温度とは、水系ポリウレタン樹脂の水分散物50gをガラス製ビーカーに取り、内容物を撹拌しつつビーカーを95℃の熱水で徐々に加熱し、内容物が流動性を失い凝固する温度をいう。感熱凝固温度が40℃未満であると、繊維基材の内部に多孔性構造が形成されるものの、水系ポリウレタン樹脂自身の貯蔵安定性が不良となり、夏場等高温での保管において固化し易くなる傾向にある。一方、感熱凝固温度が90℃を超えると、感熱凝固性がシャープでなくなるため、繊維基材の内部に形成される多孔性構造の孔の緻密性が乏しくなり、風合いが硬くなる傾向にある。
[(B)ポリビニルアルコール]
本発明にかかる(B)ポリビニルアルコールは特に制限されないが、繊維基材内部の多孔性構造の形成がより確実に阻害されにくくなるという観点から、ケン化度が70mol%以上のものであることが好ましく、85mol%以上のものであることがより好ましい。ここで、ケン化度は、ポリビニルアルコール中のカルボキシル基とヒドロキシル基の合計数に対するヒドロキシル基の数の百分率の値である。用いるポリビニルアルコールのケン化度が70mol%未満であると、形成される多孔性構造の強度保持力が弱く、乾燥時に孔が収縮あるいは無孔化し易くなる傾向にある。一方、ポリビニルアルコールのケン化度が85mol%以上であれば、形成される多孔性構造の強度保持力がより高くなる傾向にある。
本発明にかかる(B)ポリビニルアルコールの重合度は特に制限されないが、多孔性構造の形成がより確実に阻害されにくくなるという観点からは、20℃における(B)ポリビニルアルコールの4質量%水溶液の粘度が10.0〜65.0mPa・sであるものを用いることが好ましく、20.0〜50.0mPa・sのものがより好ましい。ここで、ポリビニルアルコールの4質量%水溶液の粘度は、JIS K 6726に記載の方法に準じて算出した値であり、粘度が高いほどポリビニルアルコールの重合度は高いということになる。前記4質量%水溶液の粘度が10.0mPa・s未満であると、繊維基材内部に得られる多孔性構造の強度保持力が弱く、乾燥時に孔が収縮あるいは無孔化し易くなる傾向にある。一方、前記4質量%水溶液の粘度が65.0mPa・sを超えると、繊維基材内部に多孔性構造が形成されるものの、混合液の粘度が高く安定した加工を行うことが困難となる傾向にある。なお、前記4質量%水溶液の粘度が20.0〜50.0mPa・sである場合は、強度保持力がより高くなり、かつ、より安定した加工が可能となる傾向にある。
(B)ポリビニルアルコールは、従来公知の製造方法から得ることが可能であり、例えば、酢酸、酸素、エチレンから酢酸ビニルを合成し、酢酸ビニルを重合反応させて得られたポリ酢酸ビニルを、アルカリによってケン化することにより製造することが可能である。さらに、(B)ポリビニルアルコールとしては、市販品、例えば、日本合成化学工業(株)製のゴーセノールNH−26、NH−20、AH−22、AH−17、GH−23、GM−14、KH−20、ゴーセファイマーK−210、Z−320、Z−410、(株)クラレ製のクラレポバールPVA−HC、PVA−124、PVA−110、PVA−617、PVA−627等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いることが可能であり、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
[(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤]
本発明にかかる(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤は、原料となる疎水性のポリイソシアネートに親水性鎖を導入することによって自己乳化性を付与した化合物をいう。また、水性ポリイソシアネート架橋剤は、親水性鎖に加え、必要に応じて親油性鎖をさらに導入してもよい。このような水性ポリイソシアネート系架橋剤は、(A)水系ポリウレタン樹脂及び(B)ポリビニルアルコールへの相溶性及び分散性が高く、水中への自己乳化分散性が良好で可使時間が長い。そして、このような(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤を前述の(A)水系ポリウレタン樹脂及び(B)ポリビニルアルコールと組み合わせて用いることにより、繊維基材内部にポリウレタン樹脂層が均一に分散され、かつ、そのポリウレタン樹脂層中に緻密かつ均一で安定性にも優れた多孔性構造が形成されるようになる。
このような水性ポリイソシアネート系架橋剤の原料となるポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネートの反応から得られるイソシアネート変性体を挙げることができる。
このような芳香族イソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等や、これらの異性体を挙げることができる。また、脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。また、イソシアネート変性体としては、上記のジイソシアネート等と活性水素を有する化合物との反応によるイソシアネート末端化合物や、あるいは、上記のポリイソシアネートの反応、例えば、ウレトジオン化反応、イソシアヌレート化反応、カルボジイミド化反応、ウレトイミン化反応等によるイソシアネート変性体を挙げることができる。これらのイソシアネート変性体は、公知のウレトジオン化触媒、イソシアヌレート化触媒等を用い、通常0〜90℃の反応温度で、溶剤不存在下、又は、ウレタン工業に常用の不活性溶剤の存在下で、原料ポリイソシアネートから製造することができる。ウレトジオン化触媒及びイソシアヌレート化触媒としては、第三級アミン類、アルキル置換エチレンイミン類、第三級アルキルホスフィン類、アセチルアセトン金属塩類、各種有機酸の金属塩類等を挙げることができる。これらの触媒は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、不活性溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を挙げることができる。
そして上記のポリイソシアネートの中でも、水分散性、水分散後のイソシアネート基の安定性、無黄変性等が良好となる傾向にあるという観点から、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートの反応から得られるイソシアネート変性体が好ましく、平均官能基数が2個以上であるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートがより好ましい。
これらの原料ポリイソシアネートに親水性鎖を導入するには、以下に述べる非イオン(ノニオン)性化合物又はイオン性化合物を用いればよい。
非イオン性化合物としては、例えば、アルコールや脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物を挙げることができる。アルコールとしては、線状、分岐状、環状アルコールのいずれをも用いることができ、炭素数1〜4のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等)を用いることが好ましい。脂肪酸という観点からは、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等を挙げることができる。アルキレンオキサイドの付加形態は、1種の単独付加であってもよく、2種以上のアルキレンオキサイドのランダム又はブロック付加であってもよい。アルキレンオキシドの付加モル数は3〜90であることが好ましく、5〜50であることがより好ましい。また、全アルキレンオキサイド単位中、エチレンオキサイド70%以上であることが好ましい。
イオン性化合物という観点からは、脂肪酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル、硫酸エステル等のアニオン性化合物、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等のカチオン性化合物、スルホベタイン等の両性化合物を挙げることができる。
水性ポリイソシアネート化合物の製造において、原料ポリイソシアネートに親油性鎖を導入する化合物としては、例えば、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、シンナミルアルコール等の炭素数8以上の高級アルコールを挙げることができる。また、原料となる脂肪酸とアルコールの炭素数の和が8以上の脂肪酸エステルを用いることができる。この場合、原料となる脂肪酸としては、例えば、α−オキシプロピオン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸、ε−オキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、α−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、リシノステアロール酸、サリチル酸、マンデル酸等を挙げることができ、アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール等を挙げることができる。このような親油性鎖がイソシアネート基の近傍に存在することにより、水性ポリイソシアネート化合物を水に分散する場合に、イソシアネート基を立体的に水から保護し、可使時間を長期化することが可能である。
水性ポリイソシアネート化合物の製造は、一般に50〜130℃で行うことが可能であり、必要に応じて、不活性溶剤、触媒等を使用することも可能である。
水性ポリイソシアネート化合物において、原料ポリイソシアネートのイソシアネート基1当量に対して、親水性鎖を付加する化合物の活性水素の当量比が1〜30%であることが好ましく、8〜20%であることがより好ましい。親水性鎖の含有量が少なすぎると、自己乳化分散性が不良となる傾向にあり、他方、親水性鎖の含有量が多すぎると、水性ポリイソシアネート化合物と水との親和性が強くなり、水中での水性ポリイソシアネート化合物の安定性が低下する傾向がある。また、原料ポリイソシアネートのイソシアネート基1当量に対して、親油性鎖を付加する化合物の活性水素の当量比が0.1〜25%であることが好ましく、2〜15%であることがより好ましい。親油性鎖の含有量が少なすぎると、イソシアネート基の界面化学的な保護を十分に行うことができず、水に分散させた時の可使時間が短くなる傾向があり、他方、親油性鎖の含有量が多すぎると、水分散安定性が低下する傾向がある。
本発明にかかる水性ポリイソシアネート系架橋剤としては、可使時間が長く、得られる多孔性構造の耐熱性がより優れる傾向にあるため、親水性鎖含有イソシアヌレート変性体が好ましく、中でもイソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートに親水性鎖を導入した水性ポリイソシアネート化合物が特に好ましい。また、水性ポリイソシアネート化合物は市販されているものを用いることができ、例えば、住友バイエルウレタン(株)製のバイヒジュール3100、日本ポリウレタン化学工業(株)製のアクアネート100、200、旭化成(株)製のデュラネートWB40−80D、WE50−100等が挙げられる。
[多孔性構造体の製造方法]
本発明の多孔性構造体の製造方法においては、先ず、前記した(A)水系ポリウレタン樹脂、(B)ポリビニルアルコール、(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤を含有する混合液を繊維基材に含浸させて前駆体を得る。
混合液中、(A)水系ポリウレタン樹脂と(B)ポリビニルアルコールとの配合比が、固形分の質量換算で(A):(B)=100:1〜100:40であることが好ましく、(A):(B)=100:5〜100:30であることがより好ましい。上記範囲より(B)ポリビニルアルコールの配合比が小さくなると、形成される孔の径が大きくなり多孔性構造の強度保持力(耐熱性、耐湿熱性等)が弱くなるため、乾燥時に多孔性構造が収縮あるいは無孔化し易くなる傾向にある。一方、上記範囲より(B)ポリビニルアルコールの配合比が大きくなると、多孔性構造の強度保持力が弱くなり、乾燥時に孔が収縮あるいは無孔化し易くなる傾向にある。
前記混合液において、(B)ポリビニルアルコールと(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤との配合比は、固形分の質量換算で(B):(C)=100:10〜100:100であることが好ましく、(B):(C)=100:15〜100:80であることがより好ましい。上記範囲より(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤の配合比が小さくなると、多孔性構造の強度保持力が弱くなり、乾燥時に孔が収縮もしくは無孔化し易くなる傾向にある。一方、(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤の配合比が上記範囲を超えると、得られる多孔性構造体が弾力性に欠け、脆くなる傾向があり、その結果、満足できる柔軟な風合いが得られにくくなる傾向にある。
また、前記混合液には、(A)水系ポリウレタン樹脂、(B)ポリビニルアルコール及び(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤のほかに、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の水分散液、例えば、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系、アクリルスチレン系等のエマルジョン;スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等のラテックス;ポリエチレン系、ポリオレフィン系等のアイオノマー;ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ系樹脂等を併用することが可能である。
さらに、前記混合液には、本発明の効果を損なわない範囲で、後の湿熱加熱時に蒸気を効率よく取り込むため吸湿剤、(A)水系ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度を低くするための感熱凝固剤、加工適性付与のための添加剤等を加えてもよい。吸湿剤としては、例えば、尿素、蛋白、グリセリン、ポリオキシエチレン非イオン性界面活性剤等が挙げられる。感熱凝固剤としては、例えば、珪弗化ナトリウム、珪弗化カリウム;塩酸、硝酸、硫酸、リン酸のアンモニウム塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウム、ニッケル、スズ、鉛、鉄及びアルミニウム等の多価金属塩;ポリエーテルチオエーテルグリコール類、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン系化合物;アルキルフェノール−ホルマリン縮合物のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。加工適性付与のための添加剤としては、例えば、アルコール系の非イオン性界面活性剤、アセチレングリコール系の特殊界面活性剤、シリコーン系の界面活性剤、フッ素系の界面活性剤のレベリング剤;酸化防止剤、耐光安定化剤、紫外線防止剤等の安定化剤;鉱物油系、シリコーン系等の消泡剤;ウレタン化触媒、可塑剤、顔料等の着色剤、可使時間延長剤等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、前記混合液を繊維基材に含浸せしめて前駆体を得た後、その前駆体を蒸気による湿熱加熱及び乾熱乾燥により乾燥させることによって、ポリウレタン樹脂を繊維基材内部に均一に分散した状態で固着させることができ、さらに、得られたポリウレタン樹脂層中に均一かつ緻密な多孔性構造を形成させることができる。
本発明において用いられる繊維基材は、前記混合液が付着でき、乾燥後、繊維基材内部に多孔性構造が形成可能なものであれば特に制限はないが、通気性のよいものが好ましく、織物、編物又は不織布を用いることがより好ましい。また、繊維基材の素材という観点からは、羊毛、絹、綿等の天然繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等の合成繊維が挙げられるが、中でも、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維を使用した繊維基材は、天然の皮革に近い風合いや品位が得られる傾向にあるので特に好ましい。なお、これらの繊維基材は、繊維基材内部に形成される多孔性構造(ポリウレタン樹脂層)と繊維とが過度に接着するのを防ぐために、前記混合液を含浸させる前に、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の高分子水溶液、シリコーン系撥水剤、フッ素系撥水剤等により前処理することも可能である。
これら繊維基材に、前記混合液を含浸させる方法には特に制限はなく、例えば、dip−nip方式からなる含浸加工、噴霧等の従来公知の方法が適用できる。また、前記混合液の濃度及び処理条件は、繊維素材の厚さや素材に応じて適宜選択することが可能であるが、前記混合液中の固形分は一般的に5〜50質量%程度であることが好ましく、繊維基材の質量に対する含浸させる混合液の質量の比率(ピックアップ百分率[%])は一般的に50〜300%程度であることが好ましい。
また、湿熱加熱の方法としては、特に制限は無く、例えば、ハイテンパルチャースチーマー(H.T.S.)、ハイプレッシャースチーマー(H.P.S.)を用いることが可能であり、連続加工性の観点からはハイテンパルチャースチーマー(H.T.S.)を用いることが好ましい。また、加工時間の短縮のため、あるいは、より緻密な多孔性構造を形成させるために、必要に応じて、ハイテンパルチャースチーマー(H.T.S.)、ハイプレッシャースチーマー(H.P.S.)等に、マイクロ波照射式乾燥を合わせて施すことが可能である。湿熱加熱の処理時間は3分〜20分であることが好ましく、5〜10分であることがより好ましい。スチーム流量は30L/分〜300L/分であることが好ましく、100L/分〜200L/分であることがより好ましい。乾熱乾燥の方法についても特に制限はなく、例えば、ピンテンターによる乾熱乾燥、熱風乾燥、遠赤外線加熱等が挙げられる。なお、湿熱加熱後又は乾熱乾燥後は、冷水又は温水による洗浄により、(A)水系ポリウレタン樹脂に含まれる非イオン性界面活性剤等を除去することが可能である。
[多孔性構造体]
本発明の多孔性構造体は、前記本発明の製造方法により得られたものであり、その繊維基材内部にはポリウレタン樹脂層が均一に分散された状態で固着しており、かつ、ポリウレタン樹脂層中に均一かつ緻密で安定性にも優れた多孔性構造が形成されている。本発明の多孔性構造体におけるポリウレタン樹脂等の固着固形分の量は、特に制限されないが、繊維基材100質量部に対して15〜150質量部程度であることが好ましく、25〜80質量部程度であることがより好ましい。
また、天然皮革のコラーゲン繊維構造に類似した三次元立体構造の繊維層を有する不織布を繊維基材として用いて多孔性構造体を製造し、これを人工皮革とすることも可能である。さらに、編物や織物を繊維基材として用いて多孔性構造体を製造し、これを合成皮革とすることも可能である。
[皮革状構造体]
本発明の皮革状構造体は、前記本発明の製造方法により得られた多孔性構造体の少なくとも一方の面に表皮層を設けたものである。このように表皮層の形成方法は、従来公知のいずれの方法でもよく、(i)離型紙上に形成させた表皮層の上に接着剤を塗布し、本発明の多孔性構造体と貼り合わせて水分を蒸発、あるいは、水分蒸発後に貼り合わせ、次いで離型紙を表皮層から剥離させる離型紙転写法;(ii)離型紙上に形成させた表皮層を熱により多孔性構造体と貼り合わせた後、離型紙を剥離させる熱転写法;(iii)本発明の多孔性構造体上に表皮層を形成する組成物を直接スプレーするスプレー法;(iv)表皮層を形成させる組成物を、グラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーター、エアナイフコーター等にて本発明の多孔性構造体上に塗布するダイレクトコート法が挙げられるが、表皮層の物性面の観点から離型紙転写法が最も好ましい。なお、離型紙転写法において使用される表皮層と接着剤は、本発明の多孔性構造体と貼り合わせることができるものであればいずれでも良いが、風合い面及び物性面の観点からはポリウレタン樹脂が好ましく、また、VOC及び環境負荷の観点からは水性又は無溶剤とすることが望ましい。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、多孔性構造体は下記の方法により評価した。
(1)多孔性構造体の断面観察
走査型電子顕微鏡[(株)日立製作所、S−2400]を用いて多孔性構造体の断面を観察し、繊維基材中に固着しているポリウレタン樹脂層とその中に形成された多孔性構造の状態を次の基準に従って評価した。
4:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に均一に分散しており、その全体に緻密でかつ均一な多孔性構造が確認された。
3:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に均一に分散しており、その大部分に緻密な多孔性構造が確認された。
2:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に不均一に分散しており、一部に多孔性構造が確認された。
1:繊維基材中のポリウレタン樹脂層に、多孔性構造の形成は確認されなかった(無孔状態)。
(2)多孔性構造体の風合い
触感により、多孔性構造体の風合い(柔軟さ)を以下の5段階(1級[粗硬]〜5級[柔軟])の基準に従って評価した。
5:柔軟かつ反発弾性に極めて富んだ風合い
4:柔軟かつ反発弾性に富んだ風合い
3:柔軟ながらもやや反発弾性に欠ける風合い
2:やや粗硬かつペーパーライクな(紙のような)風合い
1:粗硬かつペーパーライクな(紙のような)風合い。
(3)多孔性構造の耐熱性
多孔性構造体を、熱風乾燥機(TABAI SAFETYOVEN SPH-200)中に120℃で200時間放置した後、断面を走査電子顕微鏡[(株)日立製作所、S−2400]を用いて観察し、繊維基材中に固着しているポリウレタン樹脂層とその中に形成された多孔性構造の状態を次の基準に従って評価した。
4:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に均一に分散しており、その全体に緻密でかつ均一な多孔性構造が確認された。
3:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に均一に分散しており、その大部分に緻密な多孔性構造が確認された。
2:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に不均一に分散しており、一部に多孔性構造が確認された。
1:繊維基材中のポリウレタン樹脂層に、多孔性構造の形成は確認されなかった(無孔状態)。
(4)多孔性構造の耐湿熱性
多孔性構造体を恒温恒湿機(TABAI EY-101)中に70℃、95%RH.の条件下で2週間放置した後、断面を走査電子顕微鏡[(株)日立製作所、S−2400]を用いて観察し、繊維基材中に固着しているポリウレタン樹脂層とその中に形成された多孔性構造の状態を次の基準に従って評価した。
4:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に均一に分散しており、その全体に緻密でかつ均一な多孔性構造が確認された。
3:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に均一に分散しており、その大部分に緻密な多孔性構造が確認された。
2:ポリウレタン樹脂層が繊維基材中に不均一に分散しており、一部に多孔性構造が確認された。
1:繊維基材中のポリウレタン樹脂層に、多孔性構造の形成は確認されなかった(無孔状態)。
以下に、水系ポリウレタン樹脂の合成方法(合成例1〜2)、並びに、多孔性構造体の製造方法(実施例1〜12及び比較例1〜5)を示すが、その中の固形分の量は各試料を105℃にて3時間乾燥させた後の残存質量の百分率を示す。
合成例1(水系ポリウレタン樹脂の水分散物)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量1000)76.1g、ポリオキシエチレンポリプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1000、オキシエチレン基含有量70%)16.9g、1,4−ブタンジオール1.5g、トリメチロールプロパン1.9g、ジブチル錫ジラウレート0.001g及びメチルエチルケトン60gを仕込み、均一に混合した後、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート40.4gを加え、75℃にて300分反応させ、イソシアネート基末端プレポリマー(固形分に対する遊離イソシアネート基含有量は2.1質量%)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液を30℃以下に冷却した後、デシルリン酸エステル0.1g及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB値=15)6.0gを添加し、均一に混合した後、ディスパー羽根を用いて、さらに水254gを徐々に加えて転相乳化、分散させた。これに、ピペラジン2.0gと、ジエチレントリアミン0.8gを水11.3gに溶解したポリアミン水溶液とを添加し、90分間撹拌して、ポリウレタン分散液を得た。
さらに、減圧下に35℃にて脱溶剤を行い、固形分35.0質量%、粘度50.0mPa・s(BM粘度計、1号ローター、60rpm)、平均粒子径0.52μmの安定な水系ポリウレタン樹脂の水分散物を得た。この水系ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度は45℃であった。
合成例2(水系ポリウレタン樹脂の水分散物)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量1000)76.1g、ポリオキシエチレンポリプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1000、オキシエチレン基含有量70%)16.9g、1,4−ブタンジオール1.5g、トリメチロールプロパン1.9g、ジブチル錫ジラウレート0.001g及びメチルエチルケトン60gを仕込み、均一に混合した後、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート40.4gを加え、75℃にて300分反応させ、イソシアネート基末端プレポリマー(固形分に対する遊離イソシアネート基含有量が2.1質量%)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液を30℃以下に冷却した後、デシルリン酸エステル0.1g及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)6.0gを添加し、均一に混合した後、ディスパー羽根を用いて、水254gを徐々に加えて転相乳化、分散させた。これに、ピペラジン2.0gと、ジエチレントリアミン0.8gを水11.3gに溶解したポリアミン水溶液とを添加し、90分間撹拌してポリウレタン水分散液を得た。
さらに、減圧下35℃にて脱溶剤を行った後、ビクセンAG−25(日華化学社、アニオン界面活性剤)を1質量%添加し、固形分35.0%、粘度50.0mPa・s(BM粘度計、1号ローター、60rpm)、平均粒子径0.52μmの安定な水系ポリウレタン樹脂の水分散物を得た。この水系ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度は80℃であった。
実施例1
(繊維基材の前処理)
0.5デニールのポリエステル繊維からなる不織布(目付200g/m)に、ゴーセノールGL−05[日本合成化学工業(株)、ポリビニルアルコール]の3質量%水溶液を、ピックアップ100質量%となるように含浸処理した後、100℃で2分間熱風乾燥機にて乾燥させた。
(多孔性構造体の製造)
合成例1で得た水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g、ゴーセノールNH−26[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度67mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液70g、バイヒジュール3100[住友バイエルウレタン(株)製、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートに親水性鎖を導入した水性ポリイソシアネート系架橋剤、固形分100質量%]3g、水52gを均一に混合して含浸液(混合液)を調製した。この含浸液における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:20、ポリビニルアルコール:架橋剤=100:43であり、含浸液の固形分は20質量%である。
この含浸液を、前記前処理した不織布に、スリットマングルを用いてピックアップ200%となるように含浸処理した後、蒸気圧39kPa、スチーム流量200L/分に調整したH.T.S(辻井染色工業社製、Type:HT−3−550)にて5分間湿熱加熱し、次いで、70℃の温水浴で10分間湯洗を行い、マングルにて余分な水分を絞った後、熱風乾燥機(TABAI SAFETYOVEN SPH-200)にて100℃で10分間放置乾燥を行い、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、ゴーセノールNH−26の10質量%水溶液の代わりに、ゴーセノールNH−20[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度40mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例3
実施例1において、ゴーセノールNH−26の10質量%水溶液の代わりに、ゴーセノールNL−05[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度5mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例4
実施例1において、ゴーセノールNH−26の10質量%水溶液の代わりに、ゴーセノールGH−17[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度88mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度30mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例5
実施例1において、ゴーセノールNH−26のの10質量%水溶液の代わりに、ゴーセノールKH−20[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度79mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度45mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
また、実施例5において得られた多孔性構造体の断面の走査電子顕微鏡写真を図1〜図3に示す。なお、図1〜図3は連続した写真であって、図1の下に図2、更にその下に図3を繋げると多孔性構造体の断面の全体(表面部〜裏面部)を現す写真となる。
実施例6
実施例1において、ゴーセノールNH−26のの10質量%水溶液の代わりに、ゴーセノールKP−08[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度72mol%4質量%水溶液の、20℃における粘度7mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例7
実施例1において、ゴーセノールNH−26の10質量%水溶液の代わりに、ゴーセランL−0302[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度5mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例8
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g、ゴーセノールNH−20[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度40mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液150g、バイヒジュール3100[住友バイエルウレタン(株)製、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートに親水性鎖を導入した水性ポリイソシアネート系架橋剤、固形分100質量%]6.5g、水26gを均一に混合した含浸液(混合液)を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
なお、この含浸液における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:43、ポリビニルアルコール:架橋剤=100:43であり、含浸液の固形分は20質量%である。
実施例9
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g、ゴーセノールNH−20[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度40mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液3g、バイヒジュール3100[住友バイエルウレタン(株)製、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートに親水性鎖を導入した水性ポリイソシアネート系架橋剤、固形分100質量%]0.13g、水74gを均一に混合した含浸液(混合液)を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
なお、含浸液における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:0.9、ポリビニルアルコール:架橋剤=100:43であり、含浸液の固形分は20質量%である。
実施例10
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g、ゴーセノールNH−20[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度40mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液70g、バイヒジュール3100[住友バイエルウレタン(株)製、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートに親水性鎖を導入した水性ポリイソシアネート系架橋剤、固形分100質量%]7.4g、水70gを均一に混合した含浸液(混合液)を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
なお、含浸液における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:20、ポリビニルアルコール:架橋剤=100:105であり、含浸液の固形分は20質量%である。
実施例11
合成例1より得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g、ゴーセノールNH−20[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度40mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液70g、バイヒジュール3100[住友バイエルウレタン、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートに親水性鎖を導入した水性ポリイソシアネート系架橋剤、固形分100質量%]0.5g、水42gを均一に混合した含浸液(混合液)を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
なお、含浸液における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:20、ポリビニルアルコール:架橋剤=100:7であり、含浸液の固形分は20質量%である。
実施例12
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物の代わりに、合成例2で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物を用いた以外は実施例2と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
比較例1
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g及び水75gを均一に混合した含浸液(混合液)を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
なお、含浸液における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:0、ポリビニルアルコール:架橋剤=0:0であり、含浸液の固形分は20質量%である。
比較例2
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g、バイヒジュール3100[住友バイエルウレタン(株)製、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートに親水性鎖を導入した水性ポリイソシアネート系架橋剤、固形分100質量%]3g及び水87gを均一に混合した含浸液(混合液)を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
なお、含浸液中における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:0、ポリビニルアルコール:架橋剤=0:3であり、含浸液の固形分は20質量%である。
比較例3
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g、ゴーセノールNH−20[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度40mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液70g及び水40gを均一に混合した含浸液(混合液)を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
なお、含浸液中における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:20、ポリビニルアルコール:架橋剤=100:0であり、含浸液(混合液)の固形分は20質量%である。
比較例4
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂の水分散物100g、ゴーセノールNH−26[日本合成化学工業(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度99mol%、4質量%水溶液の20℃における粘度67mPa・s、固形分100質量%]の10質量%水溶液70g、NKアシストFU[日華化学(株)製、芳香族ポリイソシアネートのメチルエチルケトオキシムブロック物、固形分40質量%、ブロック解離後のNCO含有量は固形分に対し15質量%]7.5g、希釈水75gを均一に混合して含浸液(混合液)を調整した。この含浸液を用いた以外は実施例1と同様にして、多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
なお、含浸液中における各成分の固形分の質量換算による配合比は、水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコール=100:20、ポリビニルアルコール:架橋剤=100:43である。
比較例5
実施例1と同様に前処理した繊維基材に、エバファノールALS−30TD[日華化学(株)製、固形分30質量%、ジメチルホルムアミド溶媒のポリウレタン樹脂]200g及びジメチルホルムアミド200gを混合した含浸液(混合液)を、スリットマングルにてピックアップ260%となるように含浸処理した。含浸処理後、水浴中に5分間浸漬した後、80℃の水にて5分間湯洗した。水分をマングルで絞った後、ピンテンターによって120℃で乾熱乾燥して、有機溶剤系ポリウレタン樹脂からなる樹脂層が繊維基材中に固着している多孔性構造体を得た。得られた多孔性構造体について前述の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例1〜12においては、いずれも繊維基材の表面から裏面に亘って均一にポリウレタン樹脂層が分散されており、その樹脂層中に多孔性構造が形成されていた。
実施例1〜7においては、混合液に用いるポリビニルアルコールを変化させているが、いずれにおいても繊維基材の内部にポリウレタン樹脂層が均一に分散され、緻密かつ均一な多孔性構造が形成されており、柔軟かつクッション性にも富む風合いが得られた。中でも、実施例1、2、4、5においては、耐熱性、耐湿熱性試験後においても緻密な多孔性構造が維持されており、多孔性構造が耐熱性及び耐湿熱性に優れており、強度保持力に優れていることが確認された。
また、実施例2、8及び9においては混合液中の水系ポリウレタン樹脂:ポリビニルアルコールの配合比を変化させているが、いずれも風合い(柔軟さ)が優れた多孔性構造体が得られており、中でも実施例2においては多孔性構造が耐熱性及び耐湿熱性に優れており、強度保持力に優れていることが確認された。
実施例2、10、11においては混合液中のポリビニルアルコール:架橋剤の配合比を変化させているが、いずれも緻密かつ均一な多孔性構造が形成されており、中でも実施例2及び10においては多孔性構造が耐熱性及び耐湿熱性に優れており、強度保持力に優れていることが確認された。
実施例2及び12においては水系ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度を変化させているが、いずれも風合い(柔軟さ)が優れた多孔性構造体が得られており、中でも実施例2においては多孔性構造が耐熱性及び耐湿熱性に優れており、強度保持力に優れていることが確認された。
(A)、(B)、(C)の必須成分のうちいずれかが欠けている混合液を用いた比較例1〜4においては、いずれも、繊維基材中のポリウレタン樹脂層中に十分な多孔性構造が形成されておらず、風合い(柔軟さ)が著しく劣ったものであった。
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、水系ポリウレタン樹脂を用いているにも拘らず、繊維基材内部にポリウレタン樹脂層が均一に分散しており、しかもそのポリウレタン樹脂層中に緻密かつ均一で安定性(耐熱性及び耐湿熱性)にも優れた多孔性構造が形成されており、柔軟性、弾力性、反発感及び立毛感といった風合いの良好な多孔性構造体を製造することが可能となる。
したがって、本発明の製造方法によれば、有機溶剤系ポリウレタン樹脂を水系ポリウレタン樹脂で代替することが可能となり、有機溶剤系ポリウレタン樹脂を用いた場合に発生する有機溶剤の回収コスト及び労力を削減することが可能となり、更に火災の危険性、作業環境の悪化、及び環境汚染という課題をも同時に解決することが可能となる。
さらに、本発明の製造方法によって得られる多孔性構造体は、水系ポリウレタン樹脂を用いた方法によって得られたにも拘らず、有機溶剤系ポリウレタン樹脂を用いて得られる多孔性構造体と比べても遜色のない風合いを有するため、その多孔性構造体は車輌、家具、衣料、靴、袋物、雑貨等の産業分野においてそのまま利用することができ、更にその多孔性構造体に表皮層を設けて安定かつ品位に優れた皮革調製品を提供することも可能となる。
実施例5において得られた多孔性構造体の断面であって、その表面側の3分の1の領域の走査電子顕微鏡写真である。 実施例5において得られた多孔性構造体の断面であって、その中間部の3分の1の領域の走査電子顕微鏡写真である。 実施例5において得られた多孔性構造体の断面であって、その裏面部の3分の1の領域の走査電子顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. (A)水系ポリウレタン樹脂、(B)ポリビニルアルコール及び(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤を含有する混合液を繊維基材に含浸せしめて前駆体を得た後、前記前駆体を湿熱加熱及び乾熱乾燥して多孔性構造体を得ることを特徴とする多孔性構造体の製造方法。
  2. 前記混合液において、(A)水系ポリウレタン樹脂と(B)ポリビニルアルコールとの配合比が、固形分の質量換算で(A):(B)=100:1〜100:40であり、(B)ポリビニルアルコールと(C)水性ポリイソシアネート系架橋剤との配合比が、固形分の質量換算で(B):(C)=100:10〜100:100であることを特徴とする請求項1に記載の多孔性構造体の製造方法。
  3. (A)水系ポリウレタン樹脂が、(a)ポリオール及び(b)ポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを、(c)HLB値が7〜16である非イオン性界面活性剤を用いて水に分散させた後、(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物で鎖伸長反応させて得られた水系ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔性構造体の製造方法。
  4. (A)水系ポリウレタン樹脂が、感熱凝固温度が40℃〜90℃のものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の多孔性構造体の製造方法。
  5. (B)ポリビニルアルコールが、ケン化度が70mol%以上であって、かつ、4質量%水溶液の20℃における粘度が10.0〜75.0mPa・sのものであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の多孔性構造体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする多孔性構造体。
  7. 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の製造方法により得られた多孔性構造体の少なくとも一方の面に表皮層を設けたことを特徴とする皮革状構造物。

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