JP2005200722A

JP2005200722A - マンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法

Info

Publication number: JP2005200722A
Application number: JP2004009517A
Authority: JP
Inventors: Yoichiro Kitamura; 陽一郎北村; Kenji Watabe; 健司渡部
Original assignee: Daido Steel Co Ltd
Current assignee: Daido Steel Co Ltd
Priority date: 2004-01-16
Filing date: 2004-01-16
Publication date: 2005-07-28

Abstract

【課題】簡便な操作で、したがって経済的に、しかも製品設計に悪影響を及ぼすことなく、マンガン基双晶型制振合金へ耐食性を付与できる方法を提供する。
【解決手段】Ｍｎをベースとし、原子％で、Ｃｕを２０±５％、Ｎｉを５±３％、Ｆｅを２±１％含有する、マンガン基双晶型制振合金を、酸素含有雰囲気中にて、３００〜５００℃で３０分間以上熱処理すると、その表面に酸化膜から成る不動態膜が形成され、耐食性が著しく向上する。
【選択図】なし

Description

本発明はマンガン基双晶型制振合金、その鋳造品、更にはその加工品等（本発明ではこれらを単にマンガン基双晶型制振合金という）への耐食性付与方法に関する。振動による騒音、緩み、精度不良等が生じるのを抑制することが求められる産業分野では、制振性能（振動吸収性能）を有する制振合金が広く使用されている。制振合金には、振動エネルギーの吸収機構により、複合型、転位型、強磁性型、双晶型が知られているが、本発明は、かかる制振合金のうちで、マルテンサイト変態を惹起させてその生成相である双晶の運動により振動エネルギーを吸収する機構と考えられている双晶型制振合金、なかでもＭｎをベースとするマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法に関する。

マンガン基双晶型制振合金それ自体はよく知られている（例えば特許文献１及び２参照）。かかるマンガン基双晶型制振合金には、制振性能に優れるという利点がある反面、耐食性に劣るという問題があり、これを製品として使用する場合には、その表面に防錆対策を施して、耐食性を付与しておくことが必要である。従来、双晶型制振合金への耐食性付与方法として、所謂サンドイッチ構造としたり、またメッキを施すことが知られている（例えば特許文献３及び４参照）。しかし、かかる従来法には、工数が多く、それだけ作業も煩雑で、コストもかかり、しかも厚みをコントロールした製品設計が難しいという問題がある。
特開平７−２４２９７７特開２００２−１４６４９８特開平７−５４１６４特開平７−１１８８７８

本発明が解決しようとする課題は、簡便な操作で、したがって経済的に、しかも製品設計に悪影響を及ぼすことなく、マンガン基双晶型制振合金へ耐食性を付与できる方法を提供する処にある。

前記の課題を解決する本発明は、マンガン基双晶型制振合金を、酸素含有雰囲気中にて、３００〜５００℃で３０分間以上熱処理することを特徴とするマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法に係る。マンガン基双晶型制振合金を、酸素含有雰囲気中にて、２００〜５００℃で３０分間以上熱処理すると、その表面に酸化膜から成る不動態膜が形成され、かかる不動態膜によって、マンガン基双晶型制振合金の耐食性が著しく向上する。

本発明で熱処理の対象とするのは、マンガン基双晶型制振合金であり、マルテンサイト変態を惹起させてその生成相である双晶の運動により振動を吸収する機構と考えられている双晶型制振合金のうちでＭｎをベースとするものである。かかるマンガン基双晶型制振合金としては、いずれもＭｎをベースとする、Ｍｎ−Ｃｕ−Ｎｉ系、Ｍｎ−Ｃｕ−Ｆｅ系、Ｍｎ−Ｃｕ−Ｃｏ系、Ｍｎ−Ｃｕ−Ａｌ系、Ｍｎ−Ｃｕ−Ｎｉ−Ｆｅ系、Ｍｎ−Ｃｕ−Ｎｉ−Ａｌ系等、各種が挙げられるが、なかでもＭｎ−Ｃｕ−Ｎｉ−Ｆｅ系のものが好ましく、Ｍｎをベースとし、原子％で、Ｃｕを２０±５％、Ｎｉを５±３％、Ｆｅを２±１％含有するものが特に好ましい。

本発明では、前記のようなマンガン基双晶型制振合金を、酸素含有雰囲気中にて熱処理する。熱処理によりマンガン基双晶型制振合金の表面に前記のような不動態膜を形成し得る限り、酸素含有雰囲気は常圧、加圧又は減圧のいずれでもよく、その酸素濃度に特に制限はないが、不動態膜を経済的に、また効率的に形成させるためには、酸素含有雰囲気として大気雰囲気又は大気よりも酸素濃度の高い雰囲気が好ましい。

また本発明では、前記のようなマンガン基双晶型制振合金を、前記のような酸素含有雰囲気中にて、３００〜５００℃で３０分間以上熱処理する。本発明において熱処理時の温度は品温すなわちマンガン基双晶型制振合金の温度を意味するが、熱処理時の温度が３００℃未満であると、また時間が３０分未満であると、マンガン基双晶型制振合金の全表面に亘って充分に不動態膜を形成するのが難しく、逆に温度が５００℃を超えると、徐冷の途中でスピノーダル分解による不都合な第二層が生成するためと推察されるが、マンガン基双晶型制振合金が本来有する制振機能を低下させる。同様の意味で、熱処理時の温度は３５０〜４５０℃とするのが好ましく、また時間は１〜５時間とするのが好ましい。

本発明によると、簡便な操作で、したがって経済的に、しかも製品設計に悪影響を及ぼすことなく、マンガン基双晶型制振合金に耐食性を付与することができる。

本発明の実施形態としては、下記の１）〜３）が挙げられる。
１）Ｍｎ−２０．０Ｃｕ−５．０Ｎｉ−２．０Ｆｅ（原子％）のマンガン基双晶型制振合金の加工品を、大気炉を用い、したがって大気雰囲気中にて、３５０℃で５時間熱処理するマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法。

２）Ｍｎ−２０．０Ｃｕ−５．０Ｎｉ−２．０Ｆｅ（原子％）のマンガン基双晶型制振合金の加工品を、大気炉を用い、したがって大気雰囲気中にて、４００℃で３時間熱処理するマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法。

３）Ｍｎ−２０．０Ｃｕ−５．０Ｎｉ−２．０Ｆｅ（原子％）のマンガン基双晶型制振合金の加工品を、大気炉を用い、したがって大気雰囲気中にて、４５０℃で１時間熱処理するマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法。

高周波誘導加熱炉を用い、アルゴン雰囲気下に、Ｍｎ−２０．０Ｃｕ−５．０Ｎｉ−２．０Ｆｅ（原子％）のマンガン基双晶型制振合金の鋳塊を製造し、この鋳塊から熱間鍛造、熱間圧延及び冷間圧延を経て厚さ１mmの薄板を加工した。制振性を付与するため、この薄板を水素雰囲気下に９２５℃で２時間加熱した後、１．５℃／分で定速徐冷して１００℃に冷却した。更に耐食性を付与するため、制振性を付与した薄板を、大気炉を用い、したがって大気雰囲気中にて、表１記載の温度及び時間で熱処理した。かくして制振性及び耐食性を付与した薄板について、制振性能及び耐食性を下記のように評価した。結果を表１にまとめて示した。

制振性能の評価
制振性能はその評価方法の一つである対数減衰率をもって評価した。前記のように制振性及び耐食性を付与した薄板から厚さ１mm×幅１０mm×長さ２００mmの試験片を切り出し、この試験片について、中央加振法により最大ひずみ振幅が１×１０^−３になる時の対数減衰率を測定した。この対数減衰率は０．３０以上が必要とされ、また０．４０以上であれば高特性とされているので、次のように評価した。
○：対数減衰率が０．４０以上
△：対数減衰率が０．４０未満で０．３０以上
×：対数減衰率が０．３０未満

耐食性の評価
前記のように制振性及び耐食性を付与した薄板から厚さ１mm×幅４０mm×長さ６０mmの試験片を切り出し、この試験片を温度５０℃で相対温度９８％の室内に９６時間暴露した。暴露した試験片をＪＩＳ−Ｈ８５０２のレイティングナンバ標準図表と目視により照合し、レイティングナンバを求めた。このレイティングナンバは７以上が全腐食面積率０．５０％以下であり、また６〜４が全腐食面積率０．５０％超で５．００％以下であって、０〜３が全腐食面積率５．００％超であるので、次のように評価した。
○：レイティングナンバが７以上
△：レイティングナンバが６〜４
×：レイティングナンバが３以下

表１において、
比較例１：熱処理なしの場合。
総合評価：制振性能の評価及び耐食性の評価のうちでどちらか悪い方の評価とした。

Claims

マンガン基双晶型制振合金を、酸素含有雰囲気中にて、３００〜５００℃で３０分間以上熱処理することを特徴とするマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法。
大気雰囲気又は大気よりも酸素濃度の高い雰囲気中にて熱処理する請求項１記載のマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法。
３５０〜４５０℃で１〜５時間熱処理する請求項１又は２記載のマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法。
マンガン基双晶型制振合金が、Ｍｎをベースとし、原子％で、Ｃｕを２０±５％、Ｎｉを５±３％、Ｆｅを２±１％含有するものである請求項１〜３のいずれか一つの項記載のマンガン基双晶型制振合金への耐食性付与方法。