JP2015061941A - 優れた磁気特性を有するFe系金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】α−γ変態を生じ得る組成を有するFeまたはFe合金からなり、Fe以外の異種金属元素が濃化された表層部領域とその内部の異種金属元素が濃化されていない内部領域とを有するFe系金属板であって、異種金属元素が濃化された表層部領域の深さを1μm以上200μm以下の範囲とし、異種金属元素の合計の濃化量が1質量%以上6質量%以下とすることで、板面内方向において、残留応力σの絶対値を50MPa以下とし、好ましくは表層部領域におけるα相の{200}面集積度を30%以上99%以下とし、さらに好ましくはFe系金属板の板厚方向に表面から1/4tで測定した飽和磁歪λ1と1/4tから1/2tで測定した飽和磁歪λ2の差の絶対値が5×10−6以下とする。
【選択図】なし
Description
このため、従来から、鋼板の表面からSiを拡散させて表層に濃化させ、表層の電気抵抗が特に高くなるような構造にした鋼板が、例えば特許文献1〜3で提案されている。
以上のような、表面からSiなどの異種金属を拡散させ、表層付近の電気抵抗を増加させて鉄損を低減する方法では、鉄損の低減は必ずしも十分とはいえなかった。また、磁束密度の向上についても十分とはいえないものであった。
そこで、本発明の課題は、表面から異種金属元素を拡散させて電気抵抗を増加させたFe系金属板において、表層部と中心部の異種金属の濃度差を小さくすることなく、表層部の異種金属濃度を高く維持したままでより鉄損が低減されたFe系金属板を得ることである。
さらに、本発明の課題は、異種金属の拡散の際に、同時に、鋼板表面層の{200}面集積度を高くして、磁束密度にも優れたFe系金属板を得ることである。
さらに、表層部の{200}面集積度が高いα−γ変態を生じ得る組成を有するFe系金属板を母材として用いれば、異種金属の拡散により、表層部の{100}集合組織を保存・高集積化でき、磁束密度にも優れたFe系金属板が得られことを見出した。
その知見をもとにさらに検討してなされた本発明の要旨は、以下のとおりである。
Fe系金属板の面内方向における鋼板表面での残留応力σの絶対値が50MPa以下であることを特徴とするFe系金属板。
ここで前記{200}面集積度は下記式で表わされる。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(h
kl)}]×100
ここで、i(hkl)は、前記母材金属板の表面における{hkl}面の実測積分強度であり、I(hkl)は、ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度であり、{hkl}面としては、{110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、及び{442}の11種の面が用いられる。
ここで元素群Aは、Si、Al、元素群Bは、Ti、Snである。
C :0.0001〜0.2質量%、
Si:0.0001〜8.5質量%、
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
あるいはさらに、
Mn:2.0質量%以下、
Ni:15質量%以下、
Cr:20質量%以下、
Al:7.0質量%以下、
Mo:2.0質量%以下、
W :1.0質量%以下、
V :1.0質量%以下、
Ti:7.0質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
B :0.1質量%以下、
Cu:20質量%以下、
Co:1.0質量%以下、
Zr:1.0質量%以下、
Y :1.0質量%以下、
Hf:1.0質量%以下、
La:1.0質量%以下、
Ce:1.0質量%以下、
N :0.1質量%以下、
O :0.1質量%以下、
P :0.1質量%以下、
S :0.1質量%以下、
Zn:2.0質量%以下、
Sn:8.0質量%以下、
Ge:2.0質量%以下、
の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の優れた磁気特性を有するFe系金属板。
このような本発明のFe系金属板は、ケイ素鋼板が使用されるようなモータや変圧器などの磁心等へ好適であり、金属板の積層固定などで生じる外部応力負荷による磁気特性劣化を回避し、これらの磁心の小型化やエネルギー損失低減に貢献できる。
発明の基本原理
最初に、本発明の基本原理について説明する。
本発明は、Fe系金属板において、Feとは異なる金属であって、α−Fe相に固溶してFeの電気抵抗を高める異種金属を、めっきなどの手段で母材金属板の表面に第二層として付着させておき、これを拡散熱処理して、異種金属を母材金属板の表面から内部に拡散させて、母材金属板の表層部に異種金属の濃化した領域を形成することにより、Fe系金属板の磁気特性を向上させる。本発明では、異種金属元素の合計の濃化量は質量比で1%以上6%以下とする。この濃化量は、金属板全体での異種金属元素含有量から、金属板中心での異種金属元素含有量を引いたものである。1%未満であると電気抵抗を十分に高めることができず、鉄損を十分に低減できない。6%を超えると、飽和磁化が低減してしまうので磁束密度が低下するとともに、α‐Feへ固溶せず金属間化合物が析出して鉄損が増加してしまう。したがって、1%以上6%以下とする。
そのようにすると、鋼板表層部に二種以上の異種金属が拡散し、母材と合金化して高い電気抵抗を有する領域が形成されると同時に、磁場を印加していない状態で、表面で測定した残留応力σの絶対値が50MPa以下の範囲を示すようにできる。
そのため、上記のように鋼板表層部に二種以上の異種金属を拡散拡散させると、母材と合金化して高い電気抵抗を有する領域が形成されると同時に、異種金属元素の拡散した表面に近い領域と拡散していない中心部に近い領域の飽和磁歪の差が一定値以下に制御できる。そのようにして、Fe系金属板の板厚方向に表面から1/4tで測定した飽和磁歪λ1と1/4tから1/2tで測定した飽和磁歪λ2の差の絶対値が5×10−6以下の範囲に小さくできると、鉄損を大きく低減できる効果を得ることも可能となる。
この現象によって、異種金属が合金化していない領域でも{200}面集積度が30〜99%の高い{100}配合の組織が得られるようになる。
Fe系金属板
第二層を付着する母材となるFe系金属板の材料には、α−γ変態を生じ得る組成を有するFe系金属、すなわちFeまたはFe合金を用いる。Fe合金は、例えば70質量%以上のFeを含有し、600℃〜1000℃の範囲内にA3点を有する合金である。
母材となるFe系金属の例としては、例えば、C:1ppm〜0.2%、残部Fe及び不可避不純物よりなる鋼を基本とし、適宜、添加元素を含有させたものが例示できる。
その他、C:0.1%以下、Si:0.1〜2.5%を基本成分とするケイ素鋼でもよい。
添加元素や不純物としては、微量のMn、Ni、Cr、Al、Mo、W、V、Ti、Nb、B、Cu、Co、Zr、Y、Hf、La、Ce、N、O、P、Sなどが含まれる。
鋼板などを磁化させる場合、励磁周波数が高くなるに従い、表皮効果によって、磁束は鋼板の表面のみに流れ、板厚中心までは入らなくなる。少なくとも磁束が入り込む領域において{100}面が高集積化していれば、鋼板の磁束密度を高めることができる。
このため、母材として表層における{200}面集積度を高めたFe系金属板を用い、拡散処理後のFe系金属板の{200}面集積度をさらに高めて、鉄損と磁束密度の両方の磁気特性に優れたFe系金属板を得るようにする。
この方法では、鋼板に高度な歪、例えば、転位密度で1×1015m/m3以上1×1017m/m3以下であるような歪みが蓄積されている鋼板を用いる。そのような歪が蓄積されている鋼板の再結晶後の組織は{100}に配向した組織となる。
そのような歪みを与える方法としては、鋼板を製造する際の冷間圧延を、97%超99.99%以下のような高い圧下率で実施する方法がある。
また、歪みの蓄積範囲は、鋼板の全体である必要は無く、異種金属を拡散させて合金化させる領域にあればよい。そのための方法として、鋼板に、ショットブラスト処理を施す方法や冷間圧延とショットブラストを併用した処理を施す方法がある。
(b)α域圧延する方法
この方法は、鋳片から圧延によって厚みを減少させて鋼板を得る工程において、まずA3点以上の板温度で熱間圧延し、A3点未満300℃超の板温度でα域圧延し、さらに、所定板厚に冷間圧延する。この際さらに、α域圧延での全圧下率を真歪み換算で−1.0以下とし、α域圧延と冷間圧延での全圧下率の和を真歪み換算で−2.5以下とすることによって、表層部に{100}集合組織を形成した鋼板を得ることができる。
この方法による場合は、その鋼板をそのまま異種金属を拡散させる母材金属板として利用する。
C:0.02%以上含有鋼板を、C:0.02%未満まで脱炭した時にα単相となる温度で、かつ、γ単相あるいはγとαの2相領域の温度(すなわち、A1点以上の温度)に加熱して、鋼板の表層部をC:0.02%未満まで脱炭させると、脱炭の過程でγ−α変態が生じ、脱炭した表層部がα相化する。
この時、格子間の間隙が大きいγ相の<110>方向で最も脱炭が進行し、その部分からC濃度が0.02%未満になりα相への変態が起こる。γ相の{110}面は、BCC構造のα相になると{100}面になるため、脱炭後のα相では、{100}面が優先発生する。さらに、表面に形成されたα粒の板厚方向への成長は、脱炭速度に律速されて遅いため、表面に形成されたα粒は板面平行方向へと成長する。また、板表面では、表面エネルギーを駆動力として{100}面が優先成長する。その結果、最終的には板表面の全面が{100}に配向した組織となる。
この方法によって、脱炭した領域の{200}面集積度を20%以上にした鋼板を得ることができる。
本発明では、Fe以外の異種金属を母材金属板の表面に配置し、その異種金属を熱処理によって母材内部に拡散させ、表層部に異種金属の濃化した領域が形成されたFe系金属板を得る。
本発明者らの詳細な検討の結果、加熱拡散処理後のFe系金属板の面内方向における鋼板表面での残留応力σの絶対値が50MPa以下である場合に、鉄損を著しく低減できることが分かった。さらに、Fe系金属板の板厚方向に表面から1/4tで測定した飽和磁歪λ1と1/4tから1/2tで測定した飽和磁歪λ2の差の絶対値が5×10−6以下である特性が得られる場合に、鉄損を著しく低減できるとともに磁心の騒音が小さくなることが分かった。
さらに、これらの元素群Aはα−Feに固溶して飽和磁歪を増加させ、元素群Bは飽和磁歪を減少させる効果も有する。その結果、Fe系金属板の板厚方向に表面から1/4tで測定した飽和磁歪λ1と1/4tから1/2tで測定した飽和磁歪λ2の差の絶対値が5×10−6以下に制御でき、鉄損を著しく低減できる。
Si、Al、Ti、Snはいずれもフェライト生成元素であるので、これらの元素を用いる場合には、別のフェライト生成元素を用いる必要はない。
付着させる方法としては、溶融めっきや電解めっきなどのめっき法、圧延クラッド法、PVDやCVDなどのドライプロセス、さらには粉末塗布など種々の方法が採用可能であるが、工業的に実施するために効率的に異種金属を付着させる方法としては、めっき法あるいは圧延クラッド法が適している。
異種金属を付着させる表面はFe系金属板の片面だけでも、あるいは両面であってもよい。
本発明では、Fe系金属板を加熱して異種金属元素を拡散させ、表層部に異種金属が濃化した領域を形成するとともに、鋼のα−γ変態を利用してさらに、鋼板の{200}面集積度を向上させる。
そのためには、拡散熱処理の際に、鋼のAr3点以上の温度に加熱・保持する必要がある。そうすることにより、保持後の冷却の過程でγからαに変態するときに、隣接するα粒の結晶方位を引き継いで変態するため、その領域でも{200}面集積度を増加させることができる。
拡散熱処理時間は、表面に付着させた異種金属を、鋼板中の必要な深さまで拡散させるために適切な時間を選定する。ただし、表面に付着させた異種金属を必ずしも鋼板中にすべて拡散させる必要はない。表面の耐食性の向上などの目的で、0.01〜100μmの厚みで残留させることもできる。
熱処理の雰囲気は、真空雰囲気、Ar雰囲気、H2雰囲気と言った非酸化性雰囲気のどの条件においても、本発明の効果を得ることができる。
異種金属元素を濃化させる領域(表層部領域)は、表面から厚さ方向への距離でXまでであり、Xの範囲は1μm以上200μm以下とする。
Xが1μm未満であると鉄損低減の効果が得られない。200μm超であると異種金属元素の拡散に必要な時間が著しく長くなり、経済的ではない。
また、表層部領域は、金属板の両面に存在してもよいし、片面のみでもよい。なお片面の場合は、残留応力や表面から1/4tで測定する磁歪は、異種金属の濃化している側の表面層での値とすべきであることは言うまでもない。
鋼板の任意の面内方向において、XRD法などを利用して表面の残留応力σを求めることができる。本発明では、この残留応力σの絶対値は、50MPa以下とする。残留応力σの絶対値が50MPaを超えると、鉄損は十分に低減できない。残留応力σはゼロであっても構わない。絶対値が5MPa未満の低応力であれば特性への悪影響も許容できる範囲であり、極度な低応力を達成するには工業的に精細な調整が必要ともなる。
本発明の効果をさらに得るために必要なFe系金属板の板厚方向に表面から1/4tで測定した飽和磁歪λ1と1/4tから1/2tで測定した飽和磁歪λ2の差の絶対値は、次のように規定する。
鋼板の任意の面内方向において、その狙いとする方向とその方向に垂直方向へ800kA/mの磁場をそれぞれ印加し、磁場0を基準にした磁歪を歪みゲージなどで測定した後、狙い方向の磁歪と垂直方向の磁歪差を計算してこれを飽和磁歪λとして求めることができる。
本発明では、λ1とλ2の差の絶対値は、5×10−6以下とする。飽和磁歪差の絶対値が5×10−6を超えると、鉄損は十分に低減できない。一方、0.1×10−6未満とするのは、2種以上の異種金属の拡散距離を詳細に一致させなければならず、工業的な実現には困難を伴う。
使用時の磁化の方向にもよるが、1方向だけでも残留応力が小さくなれば発明の効果を得ることができ、3つすべての方向において、50MPa以下とすることは好ましいことである。
異種金属を表層部に拡散させたときの飽和磁歪λと表面の残留応力σの調整は、表層部に拡散させる異種金属の組み合わせや、組み合わせる異種金属のそれぞれの量、異種金属を拡散させる領域の深さなどを調整することにより行うことができる。
鋼板を磁化させる場合、励磁周波数が高くなるに従い、表皮効果によって、磁束は鋼板の表面のみに流れ、板厚中心までは入らなくなる。少なくとも磁束が入り込む領域において{100}面が高集積化していれば、鋼板の磁束密度を高めることができる。このため、鉄損を低下させるための異種金属の拡散領域の{200}面集積度が高い鋼板を用いることによって、鉄損と磁束密度の両方の磁気特性に優れた鋼板を得ることができる。
詳細に述べると、各試料について、試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{200}あるいは{222}強度の比率を百分率で求める。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・ (I)
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl): 測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl): ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ: α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
拡散処理後の製品板の厚みは、10μm超、5mm以下が好ましい。厚みが10μm超であれば、積層させて磁心として使用する際に十分な密度になり、高い磁束密度が得られるようになる。また、5mmを超える厚みでは、鉄損を低減させるには拡散量が多くなって経済的でない。
本実施例では成分A〜Fからなる母材金属板を各種圧延条件で製造し、その後、第二層に各種異種金属を適用して、各種製造条件と磁歪λ、表面残留応力σ、さらに磁気特性との関係について調べた結果を示す。特に異種金属種類や複数元素の比率を変化させた効果について詳細に調べた。
成分Bの場合には、1170℃に加熱した厚み250mmのインゴットを熱間圧延して厚さ30mmの熱延板を得た。さらに、この熱延板を700℃の温度でα域圧延して厚さ2mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗した後、冷間圧延で厚さ0.15mmの母材金属板を得た。
成分Dの場合には、1200℃に加熱した厚み250mmのインゴットを熱間圧延して厚さ30mmの熱延板を得た。さらに、この熱延板を900℃の温度でα域圧延して厚さ2mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗した後、冷間圧延で厚さ0.5mmの母材金属板を得た。
成分Fの場合には、1050℃に加熱した厚み250mmのインゴットを熱間圧延して厚さ50mmの熱延板を得た。さらに、この熱延板を650℃の温度でα域圧延して厚さ3mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗した後、冷間圧延で厚さ0.35mmの母材金属板を得た。
引き続き、異種金属元素皮膜を付着させた母材金属板に熱処理を施した。熱処理にはゴールドイメージ炉を用い、プログラム制御により保持時間を制御した。昇温、保持の間は10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で行なった。冷却時にはArガスを導入して、冷却速度が10℃/secとなるように制御した。
さらに、飽和磁歪差の絶対値と表面応力σの絶対値を圧延方向に対する角度で0°、45°、90°方向で測定した。それぞれの測定は前述の方法で行った。飽和磁歪差を求めるための試験片の切り出しは化学研磨法を利用して行った。
磁気特性の評価はSST(Single Sheet Tester)を用いて行った。磁束密度については、5000A/mの磁化力に対する磁束密度B50を求めた。この時、測定周波数は50Hzとした。さらに、鉄損は磁束密度が1.0Tとなる励磁磁場で800Hzの周波数でW10/800を測定した。
表2に示すNo.1〜40では、成分A、板厚0.2mmの母材金属板に、拡散させる異種金属としてTi、Siを用い、それらの金属を各比率でスパッタ法を用いて皮膜し、熱処理した場合の結果を示している。スパッタ法ではTi、Siターゲット板を使って2元スパッタを行った。それぞれのターゲット板に負荷する電力量とスパッタ時間を変更して形成される皮膜に含有されるTi、Siの比率と皮膜量を変更した。
引き続き、1080℃で熱処理した。熱処理時間を600秒〜3600秒の間で変更して、拡散距離を25〜50μmまで変化させた。
No.15、35のように皮膜中の元素群Aの比率が99.9%以上の場合、No.21、39のように元素群Aの比率が0.01%以下の場合には、表面残留応力および飽和磁歪差についての本発明の要件を同時に満たすことができなかった。また、異種金属の濃化量が1%未満、6%超であったNo.1、40についても、鉄損は十分に低減できなかった。これに対し、Ti、Siの両方を適切に皮膜し、必要な深さまで拡散させた場合は、表面残留応力、あるいは、飽和磁歪差が本発明の要件を満たし、磁束密度と鉄損の両方とも優れた金属板が得られた。
引き続き、1080℃で熱処理した。熱処理時間を600秒〜3600秒の間で変更して、拡散距離を25〜50μmまで変化させた。
No.50、75のように元素群Aの比率が99.9%以上の場合、No.61、79のように元素群Aの比率が0.01%以下の場合には、表面残留応力および飽和磁歪差についての本発明の要件を同時に満たすことができなかった。また、異種金属の濃化量が1%未満、6%超であったNo.41、80についても、鉄損は十分に低減できなかった。これに対し、Ti、Aiの両方を適切に皮膜し、必要な深さまで拡散させた場合は、表面残留応力、あるいは、飽和磁歪差が本発明の要件を満たし、磁束密度と鉄損の両方とも優れた金属板が得られた。
引き続き、1080℃で熱処理した。熱処理時間を600秒〜3600秒の間で変更して、拡散距離を25〜50μmまで変化させた。
No.90、115のように元素群Aの比率が99.9%以上の場合、No.101、119のように元素群Aの比率が0.01%以下の場合には、表面残留応力および飽和磁歪差についての本発明の要件を同時に満たすことができなかった。また、異種金属の濃化量が1%未満、6%超であったNo.81、120についても、鉄損は十分に低減できなかった。これに対し、Sn、Aiの両方を適切に皮膜し、必要な深さまで拡散させた場合は、表面残留応力、あるいは、飽和磁歪差が本発明の要件を満たし、磁束密度と鉄損の両方とも優れた金属板が得られた。
引き続き、1080℃で熱処理した。熱処理時間を600秒〜3600秒の間で変更して、拡散距離を25〜50μmまで変化させた。
No.130、155のように元素群Aの比率が99.9%以上の場合、No.141、159のように元素群Aの比率が0.01%以下の場合には、表面残留応力および飽和磁歪差についての本発明の要件を同時に満たすことができなかった。また、異種金属の濃化量が1%未満、6%超であったNo.121、160についても、鉄損は十分に低減できなかった。これに対し、Sn、Siの両方を適切に皮膜し、必要な深さまで拡散させた場合は、表面残留応力、あるいは、飽和磁歪差が本発明の要件を満たし、磁束密度と鉄損の両方とも優れた金属板が得られた。
引き続き、1080℃で熱処理した。熱処理時間を600秒〜3600秒の間で変更して、拡散距離を25〜50μmまで変化させた。
皮膜がSnのみ、Al、Siのみの場合や、No.170、195のように元素群Aの比率が99.9%以上の場合、No.181、199のように元素群Aの比率が0.01%以下の場合には、表面残留応力および飽和磁歪差についての本発明の要件を同時に満たすことができなかった。また、異種金属の濃化量が1%未満、6%超であったNo.161、200についても、鉄損は十分に低減できなかった。これに対し、Sn、Al、Siの両方を適切に皮膜し、必要な深さまで拡散させた場合は、表面残留応力、あるいは、飽和磁歪差が本発明の要件を満たし、磁束密度と鉄損の両方とも優れた金属板が得られた。
引き続き、1080℃で熱処理した。熱処理時間を600秒〜3600秒の間で変更して、拡散距離を25〜50μmまで変化させた。
No.210、235のように元素群Aの比率が99.9%以上の場合、No.221、239のように元素群Aの比率が0.01%以下の場合には、表面残留応力および飽和磁歪差についての本発明の要件を同時に満たすことができなかった。また、異種金属の濃化量が1%未満、6%超であったNo.201、240についても、鉄損は十分に低減できなかった。これに対し、Ti、Al、Siの両方を適切に皮膜し、必要な深さまで拡散させた場合は、表面残留応力、あるいは、飽和磁歪差が本発明の要件を満たし、磁束密度と鉄損の両方とも優れた金属板が得られた。
Claims (5)
- 板厚方向の領域について少なくとも一部の領域においてα−γ変態を生じ得る組成を有するとともに、Fe以外の異種金属元素が濃化された表層部領域と濃化されていない内部領域とを有するFe系金属板であって、異種金属元素の合計の濃化量が1質量%以上6質量%以下であり、前記異種金属元素が濃化された前記表層部領域の厚さが1μm以上200μm以下であり、
Fe系金属板の面内方向における鋼板表面での残留応力σの絶対値が50MPa以下であることを特徴とする優れた磁気特性を有するFe系金属板。 - 前記Fe系金属板の表層部領域におけるα−Fe相の{200}面集積度が30%以上99%以下であることを特徴とする請求項1に記載の優れた磁気特性を有するFe系金属板。
ここで前記{200}面集積度は下記式で表わされる。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(h
kl)}]×100
ここで、i(hkl)は、前記母材金属板の表面における{hkl}面の実測積分強度であり、I(hkl)は、ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度であり、{hkl}面としては、{110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、及び{442}の11種の面が用いられる。 - 前記Fe系金属板の板厚方向に表面から1/4tで測定した飽和磁歪λ1と1/4tから1/2tで測定した飽和磁歪λ2の差の絶対値が5×10−6以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の優れた磁気特性を有するFe系金属板。
- 前記異種金属が、Feに固溶することで表面の残留応力が高くなる元素群Aと残留応力が低くなる元素群Bのそれぞれから少なくとも1種以上の元素を含む2種以上の元素からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の優れた磁気特性を有するFe系金属板。
ここで元素群Aは、Si、Al、元素群Bは、Ti、Snである。 - Fe系金属板の成分が、
C :0.0001〜0.2質量%、
Si:0.0001〜8.5質量%、
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
あるいはさらに、
Mn:2.0質量%以下、
Ni:15質量%以下、
Cr:20質量%以下、
Al:7.0質量%以下、
Mo:2.0質量%以下、
W :1.0質量%以下、
V :1.0質量%以下、
Ti:7.0質量%以下、
Nb:1.0質量%以下、
B :0.1質量%以下、
Cu:20質量%以下、
Co:1.0質量%以下、
Zr:1.0質量%以下、
Y :1.0質量%以下、
Hf:1.0質量%以下、
La:1.0質量%以下、
Ce:1.0質量%以下、
N :0.1質量%以下、
O :0.1質量%以下、
P :0.1質量%以下、
S :0.1質量%以下、
Zn:2.0質量%以下、
Sn:8.0質量%以下、
Ge:2.0質量%以下、
の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の優れた磁気特性を有するFe系金属板。
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