JP2013095955A - 高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Fe系金属よりなる母材金属板上にFe以外のフェライト生成元素を付着させ、母材金属板を、A3点以上に加熱して母材金属板内にフェライト生成元素を拡散させて母材に合金化させ、ついで冷却することにより、Fe系金属板の板面に対するα−Fe相の面集積度について、{200}面集積度が30%以上99%以下、および、{222}面集積度が0.01%以上30%以下であるFe系金属板を得るにあたり、母材金属板として、ロールによる繰返し加工により、真歪みで0.5以上4.5以下の歪みが冷間圧延による歪みに付加されたものを用いる。
【選択図】図1
Description
特に、圧延面内にα−Fe相の{100}面を高集積化すると、<100>軸が圧延面内に集積するようになるため、同じ磁界を印加された場合により高い磁束密度が得られるため、ケイ素鋼板の板面に平行に{100}面を高集積化することを目的とした技術が種々開発されている。
(a)α−γ変態系のFe系金属よりなる母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着する工程と、
(b)該母材金属板を、室温から母材金属板のA3点まで加熱して母材金属板内にフェライト生成元素を拡散させ、一部を母材に合金化させるとともに、合金化された領域でのα−Fe相の{200}面集積度を25%以上50%以下とし、かつ、{222}面集積度を40%以下とする工程と、
(c)母材金属板をA3点以上の温度に加熱、保持して、フェライト生成元素と合金化されたα−Fe相の面集積度について、{200}面集積度を増加させるとともに{222}面集積度を低下させる工程と、
(d)母材金属板をA3点未満の温度へ冷却し、合金化していない領域のγ−Fe相がα−Fe相へ変態する際に、該α−Fe相の{200}面集積度を高めて、{200}面集積度が30%以上99%以下となり、かつ、{222}面集積度が30%以下となるようにする工程とを有することを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
その方法の一つの形態では、母材金属板のフェライト生成元素の拡散領域に、高度に歪みが蓄積された領域を形成して、母材金属板を加熱する昇温過程において{200}面集積度が増加するようにしている。
これらの方法では、何れも金属板の圧延ラインで通常に実施するのは困難であるという問題がある。また、非常に高い圧下率での冷間圧延では、厚い板の製造には圧下率を十分に取ることが困難であるなどの問題があり、ショットブラスト処理では、圧延された金属板の広い面積の全面を連続的に処理することは非常にコストや時間がかかることや処理後の表面粗さが悪化するなどの問題もある。
そして、その着想の基になされた本発明の要旨は、以下のとおりである。
冷間圧延後の加工歪みを有する母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着させる工程と、
フェライト生成元素が付着した母材金属板を、A3点まで加熱して、フェライト生成元素を母材金属板に拡散させ、合金化させる工程と、
母材金属板をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持してフェライト生成元素を拡散させ、合金化された領域のα−Fe相の{200}面集積度を増加させるとともに{222}面集積度を低下させる工程と、
母材金属板をA3点未満の温度へ冷却し、合金化していない領域のγ−Fe相がα−Fe相へ変態する際に、該領域の{200}面集積度を高めて、母材金属板の{200}面集積度が30%以上99%以下となり、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下となるようにする工程とを有し、
さらに、前記熱間圧延後、母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着させる工程までの間に、母材金属板の表層に引張歪みと圧縮歪みを交互に付与する歪み付与工程を有し、
前記歪み付与工程で付与される累積の歪みが、真歪みで0.5以上4.5以下であり、母材金属板にフェライト生成元素を付着させる工程前に付与された累積の歪みが真ひずみで5以上9以下であることを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(2) 前記歪み付与工程が、熱間圧延と冷間圧延の間に行われることを特徴とする(1)に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(3) 前記歪み付与工程が、冷間圧延の途中で行われることを特徴とする(1)に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(4) 前記歪み付与工程が、冷間圧延の後に行われることを特徴とする(1)に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(5) 前記歪み付与工程において、複数のロールを、母材金属板を上下で挟むように母材金属板の移動方向に沿って互い違いに配置し、母材金属板を上下のロール間を通して移動させることにより、母材金属板の表層に引張ひずみと圧縮ひずみを交互に付与することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(6) 前記歪み付与工程において、複数のロール1を、距離を置いて互い違いに配置して、先のロールで母材金属板の進行方向と反対方向に曲げ、ついで、後のロールで進行方向に曲げ戻すことにより、母材金属板の表層に引張ひずみと圧縮ひずみを交互に付与することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(7) 前記歪み付与工程が、引張ひずみと圧縮ひずみの付与を1回で行うかまたは複数回繰り返して行うものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
この結果、種々の板厚を有し、圧延面内にα−Feの{200}面が高集積化したFe系金属板を、効率よく製造することができる。
α−γ変態成分系のFe系金属よりなり、予め母材表層部に高い加工歪みを付与された母材金属板を準備し、その金属板の片面あるいは両面に、フェライト生成元素を蒸着法などを利用して付着させる。(図1−aの状態参照)
以下、母材金属板として純鉄板を、フェライト生成元素としてAlを用いた場合を例に説明する。
フェライト生成元素としてAlの付着した母材純鉄板を、母材のA3点まで加熱して再結晶させるとともに、純鉄板内の一部または全体にAlを拡散させ母材に合金化させる。
母材表層部に高い加工歪みが付与されている場合には、再結晶後に母材表層部に{100}に配向した集合組織が形成される。また、昇温につれてAlは鉄板内部に拡散して鉄と合金化されるが、合金化した領域ではα単相成分となり、その領域ではγ相からα相に変態していく。その際、再結晶の過程で形成された{100}集合組織の配向を引き継いで変態するため、合金化した領域でも{100}に配向した組織が形成される。(図1−bの状態)
純鉄板をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持する。
Fe−Al合金化してα単相成分となっている領域は、γ変態しないα−Fe相であるために、{100}結晶粒はそのまま保存され、その領域の中で{100}粒が優先成長して{200}面集積度が増加する。また、α単相成分でない領域はα相からγ相に変態する。
保持時間を長くすると、{100}結晶粒は粒の食い合いによって優先的に粒成長する。この結果、{200}面集積度はさらに増加する。また、Alの拡散に伴い、Fe−Al合金化した領域ではγ相からα相に変態していく。その際、変態する領域に隣接する領域ではすでに{100}に配向したα粒となっており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継ぐかたちで変態する。これらにより、保持時間が長くなるとともに{200}面集積度がさらに増加する。(図1−cの状態参照)
純鉄板をA3点未満の温度へ冷却する。この時、合金化していない内部の領域のγ−Fe相は、α−Fe相へ変態する。この内部の領域は、A3点以上の温度域において既に{100}に配向したα粒となっている領域に隣接しており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継いで変態する。このため、その領域でも{200}面集積度が増加する。(図1−dの状態参照)
この現象によって、合金化していない領域でも高い{200}面集積度が得られるようになる。
前の(c)の段階で、板全体にわたり合金化されるまでA3点以上で保持された場合には、板全体にわたりすでに高い{200}面集積度の組織が形成されているので、冷却開始時の状態を保持したまま冷却される。
歪み付与工程では、図3−a、bに示すように、金属板をロールにより一方向に曲げ、次いで他方向に曲げる操作を繰り返す加工を行うことにより、母材金属板の表層に引張歪みと圧縮歪みを交互に繰返し付与する。
このように冷間圧延で付与された歪みと繰返し加工で付与された表層の歪みが重畳することにより、再結晶後の母材金属板の{100}配向度がより向上するようになる。
(Fe系金属の基本的要件)
本発明では、まず、加工組織を有するFe系金属よりなる母材金属板の表層部あるいは板内に、{200}面集積度を高めるための芽となる{100}に配向した結晶粒を形成し、ついで、最終的には、その芽となるα粒の結晶方位を引き継ぐ形で板内にγ−α変態を進行させて、板全体の{200}面集積度を高める。
このため、母材金属板に用いるFe系金属は、α−γ変態成分系の組成を有する必要がある。母材金属板に用いるFe系金属が、加工組織を有しておれば、加熱によって回復・再結晶する際にき、また、α−γ変態系の成分であれば、フェライト生成元素を板内に拡散合金化することによって、α単相系成分の領域を形成することができる。
なお、α−γ変態系は、例えば、約600℃〜1000℃の範囲内にA3点を有し、A3点未満ではα相が体積比率で50%を超える主相となり、A3点以上ではγ相が主相となる成分系である。
本発明は、原理的に、α−γ変態系の成分を有する純鉄やFe合金に適用可能であり、特定の組成範囲のFe系金属に限定されるものではない。
α−γ変態系の成分代表的なものとして、純鉄(工業的に生産される比較的純度の高い鉄であって、純度が99.9%以上のものも含むものとする。)や普通鋼などの鋼などが例示される。
例えば、C:1ppm〜0.2%、残部Fe及び不可避不純物よりなる純鉄や鋼を基本とし、適宜、添加元素を含有させたものである。
その他、C:0.1%以下、Si:0.1〜2.5%を基本成分とするα−γ変態系成分のケイ素鋼でもよい。
また、その他の不純物としては、微量のMn、Ni、Cr、Al、Mo、W、V、Ti、Nb、B、Cu、Co、Zr、Y、Hf、La、Ce、N、O、P、Sなどが含まれる。
本発明における歪み付与の工程では、後述のように、冷間圧延の圧下率に依存しない。そのため非常に薄い母材金属板から板厚の厚い母材金属板にわたって歪を付与できるので、母材金属板の厚みは特に限定されるものではない。
しかし、例えば本発明によって製造されたFe系金属板を積層させて磁心として使用する場合には、10μm以上5mm以下が望ましい。厚みが10μm未満であると、積層枚数が増加して隙間が多くなり高い磁束密度が得られない。また、厚みが5mm超であると、拡散処理後の冷却後に{100}集合組織を十分に成長させられず、高い磁束密度が得られない。
本発明では、フェライト生成元素が付着した母材金属板を、加熱して再結晶させるとともに、母材金属板内の一部または全体にフェライト生成元素を拡散させ母材に合金化させる。その際、母材金属板に予め高い加工歪みを付与しておき、再結晶後に{100}に配向した集合組織が形成されるようにする。
冷間圧延のみで高い加工歪みを付与するためには、97%超99.99%以下の非常に高い圧下率で圧延する必要がある。
これに対し、本発明では、熱間圧延後、母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着させる工程までの間に、冷間圧延とは別に、母材金属板の表層に引張歪みと圧縮歪みを交互に付与する歪み付与工程を設け、その工程で付与される歪と冷間圧延で付与される歪によって高い加工歪みが得られるようにする。
母材金属板を曲げることにより、一方の面の表層に引張り歪みが、他方の面の表層に圧縮歪みが付与されるため、1回の曲げと曲げ戻しで、金属板のそれぞれの面の表層に集中して圧縮歪みと引張り歪みを交互に付与することができる。母材金属板のぞれぞれの面の表層に、圧縮歪みと引張り歪みが重畳した歪みが必要な量蓄積されるまで曲げと曲げ戻す操作を1回あるいは複数回繰り返すようにする。
累積歪みは、入側ロール1a及び出側ロール1bによりそれぞれ付与される歪みε1と、入側ロール1aと出側ロール1bの間の中間ロール1cにより付与される歪みε2の合計であり、ロール個数をnとすると次の1式で表される。
ε=2・ε1+(n−2)・ε2 ・・・(1)
金属板の板厚t、金属板2の通板ライン3に対する入側と出側ロールの突出量(ギャップ)h1、金属板の通板ラインに対する中間ロールの突出量(ギャップ)h2、ロール間隔Lとすると、1式は次の2式で表される。
なお、個々のロールによる歪みは、0.002超とする。0.002以下では弾性域であるために、ロールの本数を増加しても歪みの蓄積ができない。
ただし、繰返し加工は、母材金属板の再結晶温度未満で行う必要がある。繰返し加工により歪みを付与しても、再結晶すると歪みを蓄積することができない。好ましい温度は回復の段階よりも低い400℃以下である。
さらに、冷間圧延の歪みに加え、繰返し加工による表層の歪みを付加できるので、再結晶後に{100}配向した集合組織を得るために必要な冷延圧下率を低減できる。このため冷間圧延の負荷を低減することができる。また、高い冷間圧延率を必要としないので、板厚が厚い母材金属板にも歪みを付与することができる。
母材金属板に付与される累積歪み量は、冷間圧延による歪み量と歪み付与工程での繰返し加工による歪み量の合計で表される。母材金属板を加熱して再結晶させる際に母材表層部に{100}に配向した集合組織を形成させるためには、累積歪み量が真歪みで5以上必要である。また、その歪み量は大きい方が好ましいが、あまり大きくても{100}集合組織の形成に対する効果が飽和するため、上限は真歪みで9あれば十分である。
なお、冷間圧延による歪みεcは、冷間圧延前の板厚をt0、冷間圧延後の板厚をt1とすると、次の4式で計算される。
εc=ln(t0/t1) ・・・(4)
(フェライト生成元素の種類)
上記のようにして歪みが蓄積された母材金属板に、Fe以外のフェライト生成元素を拡散させ、鋼板厚み方向へ{100}化領域を増加させる。
そのために、α−γ変態系成分のFe系金属よりなる母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を第二層として層状に付着させ、その元素が拡散して合金化した領域をα単相系の成分にして、α相に変態した領域以外にも、板内の{200}面集積度を高めるための{100}配向の芽として保存できるようにする。
そのようなフェライト生成元素として、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種を単独であるいは組み合わせて使用できる。
フェライト生成元素を層状で母材金属板の表面に付着させる方法としては、溶融めっきや電解めっきなどのめっき法、圧延クラッド法、PVDやCVDなどのドライプロセス、さらには粉末塗布など種々の方法を採用することができる。工業的に実施するための効率的にフェライト生成元素を付着させる方法としては、めっき法あるいは圧延クラッド法が適している。
フェライト生成元素の加熱前の付着厚みは、0.05μm以上、1000μm以下であることが望ましい。厚みが0.05μm未満では十分な{200}面集積度を得ることができない。また、1000μm超であると、付着したフェライト生成元素を表面に残留させる場合でもその厚みが必要以上に厚くなる。
フェライト生成元素として例えばAlを付着させた母材金属板を、母材のA3点まで加熱して再結晶させるとともに、母材金属板内の一部または全体にAlを拡散させ母材に合金化させる。
母材金属板が再結晶する際、高い加工歪みが付与されている場合には、再結晶後に{100}に配向した集合組織が形成される。また、昇温につれてAlは金属板内部に拡散して鉄と合金化されるが、合金化した領域ではα単相成分となり、その領域ではγ相からα相に変態していく。その際、表層部に形成された{100}集合組織の配向を引き継いで変態するため、合金化した領域でも{100}に配向した組織が形成される。
この結果、合金化された領域では、α−Fe相の{200}面集積度が25%以上50%以下となり、それに応じて{222}面集積度が1%以上40%以下となった組織が形成される。
すでに合金化されている領域ではγ変態しないα単相の組織となるため、{100}結晶粒はそのまま保存され、その領域の中で{100}粒が優先成長して{200}面集積度が増加する。また、α単相成分でない領域はγ変態する。
保持時間を長くすると、{100}結晶粒は粒の食い合いによって優先的に粒成長する。この結果、{200}面集積度はさらに増加する。また、Alの拡散に伴い、Fe−Al合金化した領域ではγ相からα相に変態していく。その際、変態する領域に隣接する領域ではすでに{100}に配向したα粒となっており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継ぐかたちで変態する。これらにより、保持時間が長くなるとともに{200}面集積度が増加する。また、その結果として{222}面集積度は低下する(図2aの状態)。
また、板全体が合金化されるまでA3点以上で保持された場合には、板中心部までα単相組織となり、{100}に配向した粒組織が板中心に到達する。(図2cの状態)
この条件を満たすと、{200}面配向の芽の高集積化がより進行し、より確実に冷却後にα−Fe相の{200}面集積度を30%以上とすることができる。
詳細に述べると、各試料について、試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{110}あるいは{222}強度の比率を百分率で求める。
{200}面集積度=[{i(110)/I(110)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100
・・・ (4)
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl): 測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl): ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ: α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
拡散処理後、Alが合金化されていない領域が残った状態で、冷却すると、合金化していない領域では、γからαへの変態の際に、すでに{100}に配向したα粒となって領域の結晶方位を引き継ぐかたちで変態し、{200}面集積度が増加し、α−Fe相の{200}面集積度が30%以上99%以下で、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下の集合組織を有する金属板が得られる(図2bの状態)。
また、図2cのように、板全体が合金化されるまでA3点以上で保持され、{100}に配向した粒組織が板中心に到達した場合には、そのまま冷却して{100}に配向した粒組織が板中心まで到達した集合組織を得る。(図2dの状態)
{200}面集積度の値や母材金属板表面のフェライト生成元素の残留の状態は、A3点以上の保持時間や保持温度により変化し、図2bでは、{100}に配向した粒組織が板中心までは到達せず、フェライト生成元素も表面に残留した状態にあるが、板中心まで{100}に配向した粒組織とし、表面の第二層の全部を合金化することもできる。
この実施例では、歪み付与工程を熱間圧延と冷間圧延の間に実施した。
上記組成の鋼素材を用い、それを熱間圧延して2〜30の厚みの熱延板に仕上げた。
次にこの熱延板を、レベラータイプの加工装置を用いて繰り返し歪付与加工を行った。
加工装置のロールの間隔L、入側ロールのギャップh1、中間ロールのギャップh2を変化させて、入側と出側のロールで付与される歪量ε1と中間ロールで付与される歪量ε2を調整し、加工ロールの本数nを変化させて、1パスあたりの累積歪量を調整し、加工装置を通す繰り返しのパス数を調整して、繰返し加工による全体の累積歪み量εを調整した。
表1−1に、熱延板の板厚と繰返し加工の加工条件、冷間圧延後の板厚と冷間圧延により付加された歪み、及び繰返し加工と冷間圧延による累積の歪みを真歪みで示す。
なお、それぞれの歪みは前述のように計算して求めたが、以下の実施例でも同様とする。
集合組織の測定は前述したX線回折法による方法で行い、X線は、試験片の表面と、層を除去された試験片の所定の面からそれぞれ照射し、それぞれのα−Fe相の{200}、{222}面集積度を求めた。
表1−2に示すように、本発明例では、いずれもα−Fe相の{200}面集積度が30%以上、および、{222}面集積度が30%以下の製品金属板が得られていることが確認できる。
これに対し、繰返し加工を行わなかった比較例1や、繰返し加工による累積歪み量と全累積歪み量がともに低い比較例2〜4では、本発明例のような高い{200}面集積度の金属板は得られなかった。また、フェライト生成元素による第二層を形成しなかった比較例5やフェライト生成元素でないNiにより第二層を形成した比較例6でも、高い{200}面集積度の金属板は得られなかった。さらに、加熱拡散処理時の保持温度が適当でない比較例7、8、同じく保持時間が非常に長い比較例9、加熱拡散処理終了時の冷却速度が適当でない比較例10、11も高い{200}面集積度の金属板は得られなかった。
この実施例では、歪み付与工程を冷間圧延の途中に実施した。
板厚2.5〜30mmの熱延板を、冷間圧延して0.1〜10mmの中間の冷延板にした後、実施例1−1と同様に繰返し加工を実施し、さらに冷間圧延して、0.03〜1mmの冷延板に仕上げた。表2−1に、繰返し加工の条件、それぞれの段階での歪み量を示す。
その後、冷延板の表面に第二層として、Si、Al、Zn、Sn、Ti、Ga、Ge、Mo、V、Cr、As、Ni層を形成し、加熱拡散処理を行い、加熱拡散処理後の母材金属板の{200}、{222}面集積度を評価した。なお、Zn、Alの皮膜は溶融めっき法によって行い、その他の皮膜はイオンプレーティング(以下IP法)で行なった。
表2−2に、母材金属板の条件や熱処理の条件、製造後において測定した{200}面集積度と{222}面集積度を示した。
この実施例おいても、発明例では実施例1−1と同様の結果が得られた。また、比較例も実施例1−1と同様の結果となった。
この実施例では、歪み付与工程を冷間圧延後に実施した。
板厚2.5〜30mmの熱延板を、冷間圧延して0.05〜1mmの冷延板に仕上げた後、実施例1−1と同様に繰返し加工を実施した。表3−1に、繰返し加工の条件、それぞれの段階での歪み量を示す。
その後、冷延板の表面に第二層として、Zn、Al、Si、Sn、Ti、Ga、Ge、Mo、V、Cr、As、Ni層を形成し、加熱拡散処理を行い、加熱拡散処理後の母材金属板の{200}、{222}面集積度を評価した。なお、Zn、Alの皮膜は溶融めっき法によって行い、その他の皮膜はイオンプレーティング(以下IP法)で行なった。
表3−2に、母材金属板の条件や熱処理の条件、製造後において測定した{200}面集積度と{222}面集積度を示した。
この実施例おいても、発明例では実施例1−1と同様の結果が得られた。また、比較例も実施例1−1と同様の結果となった。
歪み付与工程を冷間圧延前に実施した場合を〔表4−1〕、〔表4−2〕に、歪み付与工程を冷間圧延途中に実施した場合を〔表5−1〕、〔表5−2〕に、歪み付与工程を冷間圧延後に実施した場合を〔表6−1〕、〔表6−2〕にそれぞれ示す。
この実施例おいても、発明例では実施例1−1と同様の結果が得られた。また、比較例も実施例1−1と同様の結果となった。
この実施例では、表7に示す成分からなる板厚30mmの熱延板を用い、それを冷間圧延して5mmの中間の冷延板にした後、実施例1の発明例35と同じ条件で繰返し加工による歪み付与工程を実施し、さらに冷間圧延して、0.5mmの冷延板に仕上げた。その後、冷延板に第2層としてSiをめっきした後、実施例1の発明例8と同じ条件で加熱拡散熱処理を実施した。表8に繰返し加工と冷間圧延によって付与した累積の歪み量を示す。
加熱拡散処理後の金属板の{200}、{222}面集積度を評価した結果、表8に示すように、いずれの例でもα−Fe相の{200}面集積度が30%以上、および、{222}面集積度が30%以下の製品金属板が得られており、本発明が、α−γ変態系の様々なFe系金属で実現できることが確認できる。
Claims (7)
- α−γ変態成分系のFe系金属よりなる鋳片から熱間圧延及び冷間圧延によって厚みを減少させて母材金属板を得る工程と、
冷間圧延後の加工歪みを有する母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着させる工程と、
フェライト生成元素が付着した母材金属板を、A3点まで加熱して、フェライト生成元素を母材金属板に拡散させ、合金化させる工程と、
母材金属板をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持してフェライト生成元素を拡散させ、合金化された領域のα−Fe相の{200}面集積度を増加させるとともに{222}面集積度を低下させる工程と、
母材金属板をA3点未満の温度へ冷却し、合金化していない領域のγ−Fe相がα−Fe相へ変態する際に、該領域の{200}面集積度を高めて、母材金属板の{200}面集積度が30%以上99%以下となり、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下となるようにする工程とを有し、
さらに、前記熱間圧延後、母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着させる工程までの間に、母材金属板の表層に引張歪みと圧縮歪みを交互に繰返し付与する歪み付与工程を有し、
前記歪み付与工程で付与される累積の歪みが、真歪みで0.5以上4.5以下であり、母材金属板にフェライト生成元素を付着させる工程前に付与された累積の歪みが、真ひずみで5以上9以下であることを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。 - 前記歪み付与工程が、熱間圧延と冷間圧延の間に行われることを特徴とする請求項1に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
- 前記歪み付与工程が、冷間圧延の途中で行われることを特徴とする請求項1に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
- 前記歪み付与工程が、冷間圧延の後に行われることを特徴とする請求項1に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
- 前記歪み付与工程において、複数のロールを、母材金属板を上下で挟むように母材金属板の移動方向に沿って互い違いに配置し、母材金属板を上下のロール間を通して移動させることにより、母材金属板の表層に引張歪みと圧縮ひずみを交互に付与することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
- 前記歪み付与工程において、複数のロールを、距離を置いて互い違いに配置して、先のロールで母材金属板の進行方向と反対方向に曲げ、ついで、後のロールで進行方向に曲げ戻し、この操作を以降のロールで順次繰り返すことにより、母材金属板の表層に引張歪みと圧縮ひずみを交互に付与することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
- 前記歪み付与工程が、引張ひずみと圧縮ひずみの付与を1回で行うかまたは複数回繰り返して行うものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
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