JP2016008314A - Fe系金属板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高B50/BSが得られ、異種金属が濃化して鉄損特性に優れたFe系金属板、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】Si:1.5〜3.5%、Mn+Ni:2.0〜5.0%を含有するFe系金属板であって、金属板の表面から内部に、フェライト生成元素からなる異種金属が合金化されて濃化した領域を有し、鋼板板面における{100}<011>のX線ランダム強度比が5以上400以下とした金属板とするとともに、その金属板を、Si:0.5〜2.5%、Mn+Ni:2.0〜5.0%を含有し、かつα―γ変態を生じ得る組成の素材を温間または冷間加工により母材金属板に加工する工程と、異種金属を付着させる工程と、母材金属板のA3点まで加熱して、異種金属を母材金属板に拡散させる工程と、母材金属板のA3点以上1300℃未満の温度で保定する工程と、A3点未満の温度へ冷却する工程を経て製造する。
【選択図】なし

Description

本発明のFe系金属板は、電動機、発電機、変圧器の磁心等の用途に好適であり、これらに磁心の小型化や高効率化に貢献できる磁束密度を高めたFe系金属板およびその製造方法に関する。
従来の電磁鋼板として、{110}<001>方位を優先成長させた一方向性電磁鋼板や{100}<001>方位を発達させた二方向性電磁鋼板、または集合組織の発達が弱い無方向性電磁鋼板が知られている。
変圧器の鉄心材料などに最も使用されている一方向性電磁鋼板は、二次再結晶を利用して{100}<011>方位を集積させているため、圧延方向に磁化する場合には優れた磁気特性を示す。しかしながら、面内に磁化が困難な<111>軸を含みため、この方向に磁化すると磁気特性は悪い。そのため、モーターや発電機の鉄心材料のように、異方性が少ない磁気特性が求められる場合には一方向性電磁鋼板は適さない。圧延面に{100}面が集積した電磁鋼板を製造できれば、圧延面内に<111>軸が存在しないため、異方性が小さくなる。そのため、{100}面を集積させる技術が求められていた。
圧延面内に{100}面を高集積化させ、飽和磁束密度Bと5000A/mの磁化力に対する磁束密度B50との比(B50/B)の高い値が得られるFe系金属板については、本発明者らは先に特許文献1として次の(a)〜(d)の工程よりなる技術を提案している。
(a)α‐γ変態系のFe系金属よりなる母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着させる工程と、
(b)該母材金属板を室温から母材金属板のA3点まで加熱して母材金属板内にフェライト生成元素を拡散させ、一部を母材に合金化させるとともに、合金化された領域でのα‐Fe相の{200}面集積度を25%以上50%以下とし、かつ、{222}面集積度を40%以下とする工程と、
(c)母材金属板をA3点以上の温度に加熱、保持して、フェライト生成元素と合金化されたα‐Fe相の面集積度について、{200}面集積度を増加させるとともに、{222}面集積度を低下させる工程と、
(d)母材金属板をA3点未満の温度へ冷却し、合金化していない領域のγ‐Fe相がα‐Fe相へ変態する際に、該α‐Fe相の{200}面集積度を高めて、{200}面集積度が30%以上99%以下となり、かつ、{222}面集積度が30%以下となるようにする工程。
さらに、本発明者らは高B50/Bと低鉄損を両立できる技術として、特許文献2で、母材金属板の電気抵抗率を38μΩ・cm以上200μΩ・cm以下とし、板厚中心部よりも鋼板最表層の電気抵抗率を高くし、集合組織を制御することにより著しく鉄損が低減される技術も提案している。
また、その他の従来技術として、特許文献3には、冷間圧延中に圧延方向を90°変えるクロス圧延を行い、二次再結晶させて{100}<001>を発達させる方法が示されており、特許文献4にはSi:0.2〜6.5質量%含有する珪素鋼板母材にCを0.02〜1質量%含有させ、脱炭後にαフェライト単相となる温度で、Cが0.01質量%以下になるまで脱炭して、板面に{100}面が平行であり、かつ<100>軸、あるいは、<110>軸が圧延方向に平行に集積している集合組織を形成させる技術が示されている。
国際公開第2011/052654号 特願2014−001117号 特公昭35−2657号公報 特開平7−173542号公報
特許文献1、2では集合組織制御によって高B50/Bを得てはいるものの、まだ不十分であった。また、特許文献3や4の方法では、クロス圧延のような特殊な加工や、二次再結晶や脱炭のための長時間かつ高温での熱処理が必要であり、いずれもコストが高くなる問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みなされたもので、{100}<011>方位の集積度が強く発達して高B50/Bが得られ、異種金属が濃化して鉄損特性に優れたFe系金属板、およびそのような金属板を安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特許文献1に記載されたような技術において、Fe系金属板の磁気特性に対する母材金属板の含有元素の影響について鋭意研究、検討を行った。その結果、Si(さらにはAl)とMn、Niを組み合わせて添加したFe系金属板の表層に、フェライト生成元素を濃化させると、{100}面が発達して高B50/Bが得られると同時に、Fe系金属板の電気抵抗が増加して低鉄損が得られることを見出した。加えてSi:1.5〜3.5質量%、MnとNiの1種または2種の合計:2.0〜5.0質量%を含有するFe系金属板の場合に、{100}<011>方位の集積度が極めて強く発達し、著しく鉄損が低減される現象を見出した。
そのような本発明のFe系金属板およびその製造方法の要旨は、以下のとおりである。
(1)Si:1.5〜3.5質量%、および、MnとNiの1種または2種の合計:2.0〜5.0質量%を含有するFe系金属板であって、
該金属板の表面から内部に、フェライト生成元素よりなる異種金属が合金化されて濃化した領域を有し、
金属板板面における{100}<011>のX線ランダム強度比が5以上400以下であることを特徴とするFe系金属板。
(2)前記異種金属が濃化した領域の、表面を含む少なくとも一部領域がα単相領域であることを特徴とする(1)に記載のFe系金属板。
(3)濃化している異種金属がAl、Cr、Ga、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znのうち1種以上の元素であることを特徴とする(1)または(2)に記載のFe系金属板。
(4)Fe系金属板の厚みが10μm以上6mm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のFe系金属板。
(5)Si:0.5〜2.5質量%、およびMnとNiの1種または2種の合計:2.0〜5.0質量%を含有し、かつα―γ変態を生じ得る組成の加工用素材を、温間または冷間加工により母材金属板に加工する工程と、
母材金属板の表面にフェライト生成元素よりなる異種金属を付着させる工程と、
異種金属が付着した母材金属板を、母材金属板のA3点まで加熱して、異種金属を表面から母材金属板の内部に拡散させる工程と、
母材金属板のA3点以上1300℃未満の温度で保定する工程と、
保定後の母材金属板をA3点未満の温度へ冷却する工程と
を有することを特徴とするFe系金属板の製造方法。
(6)母材金属板に含有されるSi、Mn、Niの含有量(質量%)をそれぞれ[Si]、[Mn]、[Ni]とすると下記(1)式を満足することを特徴とする(5)に記載のFe系金属板の製造方法。
Figure 2016008314
(7)前記異種金属がAl、Cr、Ga、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znのうち1種以上の元素であることを特徴とする(5)または(6)に記載のFe系金属板の製造方法。
(8)該母材金属板の厚みが10μm以上6mm未満であることを特徴とする(5)〜(7)のいずれかに記載のFe系金属板の製造方法。
本発明によれば、SiとMnやNiを組み合わせて添加したFe系金属板の集合組織を、フェライト生成元素を利用して制御し、板面における{100}<011>方位のX線ランダム強度比を50以上400以下としたことにより、高いレベルのB50/Bと低鉄損が得られ、特に圧延方向に対して45°方向で従来では得られなかった高B50/Bと低鉄損が得られる。
また、本発明によれば、既存設備を利用して高B50/Bかつ低鉄損のFe系金属板を短時間で安定して製造することができ、経済性に優れている。
50は金属板の板面に鉄の容易磁化方向<100>を含む{100}面や{110}面を高集積化させることで高めることが出来る。従来から脱炭法やインヒビターを利用した二次再結晶法によって{100}面や{110}面の高集積化が行われてきた。
本発明者らは、Si:1.5〜4.0質量%、MnとNiの1種または2種の合計(以降、Mn+Niと略記する。):2.0〜5.0質量%を含有するFe系金属板を、加熱によって金属板表層に{100}<011>集合組織を形成し、フェライト生成元素を利用して制御することで圧延方向に対して45°方向のB50/Bが著しく高くなる現象を見出した。
(発明の基本原理)
まず、本発明の基本原理を説明する。
本発明では、母材に、Siを0.5〜2.5質量%、およびMn+Ni:2.0〜5.0質量%含有し、かつα―γ変態を生じ得る組成のFe系金属板を用い、その両面あるいは片面にフェライト生成元素を付着させ、最終的にフェライト生成元素の1種以上よりなる異種金属を拡散させて高B50/Bかつ低鉄損となるFe系金属板を得る。
母材金属板はSiとMnやNiを組み合わせて添加して、母材の電気抵抗を高めることで渦電流損を抑制し、さらに母材金属板の両面あるいは片面からフェライト生成元素を内部に拡散させて、表層の電気抵抗率をさらに高めることで、高周波領域での表皮効果を抑制している。
ここで、本発明者らは母材に前記組成の金属板を用いた場合に、母材金属板の表層に{100}<011>面が配向し、さらにフェライト生成元素の拡散により{100}<011>のX線ランダム強度比が5以上400以下まで著しく高まることを見出した。
{100}<011>のX線ランダム強度比が5以上400以下となると、圧延方向に対して45°方向のB50が著しく高くなることに加え、隣接する結晶粒間の方位差が非常に小さいために磁壁移動が容易になり、ヒステリシス損失が低減される。
{100}<011>のX線ランダム強度比が5以上400以下を満たすには、まず、前記組成の金属板を母材とし、温間圧延や冷間圧延により母材金属板の少なくとも表層に圧延集合組織であるα−fiber({100}集合組織)を発達させる。
ついで、母材金属板にフェライト生成元素を付着させ、母材金属板のA3点以上まで加熱して、母材金属板の表層にフェライト生成元素を拡散させ、母材に合金化させ、合金化した領域でα−Fe相を保存する。
この時、母材金属板の表層の圧延集合組織α−fiberは、加熱によって回復、再結晶を起こすが、Mnおよび/またはNiを所定量含有していることで、粒界の移動速度が非常に小さくなり再結晶が遅延されるために、付着させたフェライト生成元素が加熱によって拡散し始める直前には、母材表層のα−fiberは回復状態であると考えられる。
回復では結晶回転が生じないため、α−fiberの結晶方位が維持される。特に鋼板表層ではα−fiberの中でも{100}<011>が配向しており、その一部または全部にフェライト生成元素が拡散し、{100}<011>配向したα−Fe相を保存する。
フェライト生成元素が両面に付着した母材金属板を、さらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱して保持する。表層の一部または全部に形成された{100}<011>配向したα−Fe単相の領域はγ変態を起こさないため、{100}<011>に配向した結晶粒がそのまま保存され、高温域での粒成長により配向が強まる。フェライト生成元素が拡散していない領域ではγ−Fe相へと相変態が起こり、集合組織はランダム化する。
フェライト生成元素が拡散した母材金属板をA3点未満の温度へ冷却する。この時、合金化していない領域のγ−Fe相はα−Fe相へ変態する。この領域はA3点以上の温度域において、{100}<011>に配向したα−Fe単相の領域に隣接しているため、γ相からα相へ変態する際に、隣接する{100}<011>方位を引き継いで変態する。これにより、この領域でも{100}<011>に配向し、金属板全体が{100}<011>に高集積化する。
以上、本発明の基本的な原理について説明したが、さらに、上記の原理を用いて得られたFe系金属板及び上記の原理に基づくFe系金属板の製造方法について、個々の条件の限定理由及び好ましい条件について説明する。
まず、Fe系金属板について説明する。なお、元素の含有量や付着量に関する%は、質量%を表すものとする。
(母材となるFe系金属板の成分)
母材金属板には、A3点を有するα−γ変態を生じる成分を有するFe系金属を用いる。その成分は、Si:0.5〜2.5%、およびMn+Ni:2.0〜5.0%を含有し、残部Feおよび不可避不純物を基本とするものである。さらにAl:0.001〜1.0質量%を含有してもよい。また、その他の元素として、微量のCr、Mo、W、V、Ti、Nb、B、Cu、Co、Zr、Y、Hf、La、Ce、N、O、P、Sなどが、総量で1.0%以下含まれていてもよい。
MnおよびNiの1種または2種(2種の場合は合計)が、この範囲よりも少ない場合には再結晶が遅延されず、{100}<011>を十分に高集積化させることができない。またこの範囲を超えて含有されると、母材金属が硬くなり、圧延により金属板を製造することが困難になる。好ましくは、母材金属板に含有されるSi、Mn、Niの質量%で表される含有量をそれぞれ[Si]、[Mn]、[Ni]とすると、それらが(1)式を満たすことである。
Figure 2016008314
(異種金属の合金化領域)
本発明ではα−γ変態系成分のFe系金属よりなる母材金属板に対して、フェライト生成元素よりなる異種金属を拡散させる。これにより、金属板の表面から内部に向かってFe以外の異種金属が合金化して濃化した領域(異種金属の濃化領域)が形成される。異種金属の濃化領域は、異種金属が合金化されてα−Fe単相となる成分範囲となり、冷間圧延などによって母材金属板の少なくとも表層に形成された{100}<011>配向組織を保存できる。
また、異種金属が、特にAl、Cr、Ga、Mo、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Znの少なくとも1種であると、より高集積化が効率的に行える。これらの元素は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
異種金属元素の拡散は、母材金属板の表面に異種金属を付着させることで、後に記す加熱処理において拡散も同時に行われる。
拡散させる元素の添加量(目付量)は、それぞれの元素の濃化した領域をα単相組織とするのに必要な量であり、例えば、金属板全体に対して0.1%以上である。上限は、添加しても加工性や磁気特性などを特に劣化させない範囲である。
(製品板となるFe系金属板の成分)
異種金属が合金化され、濃化した領域が形成された製品板となるFe系金属板の成分は、母材金属板の成分に異種金属の目付量を加えたものとなる。製品板のSi量は、必要な磁気特性を確保する必要から1.5%以上3.5%以下とする。
Siが1.5%未満の母材金属板を用いる場合には、異種金属としてSiを用いて1.5%以上となるようにする。
(製品板となるFe系金属板の厚み)
製品板となるFe系金属板の厚みは10μm以上、5mm以下とする。厚みが10μm未満であると積層させて磁心として使用する際に、積層枚数が増加して隙間が多くなり、高い磁束密度が得られない。また、厚みが5mm超であると、拡散熱処理後の冷却後に{100}<011>が十分に高集積化せず、高い磁束密度が得られない。
なお、異種金属の皮膜が残留する場合は、その皮膜を含めた厚さとする。
(Fe系金属板の集合組織)
製品板となるFe系金属板の板面に対する{100}<011>のα−Fe相のX線ランダム強度比は5以上400以下である必要がある。5未満であると、十分に高い磁束密度が得られない。好ましくは10以上、さらに好ましくは55以上である。一方で400を超えると磁束密度は飽和する。好ましくは250以下である。
{100}<011>のX線ランダム強度比はX線回折によって測定されるα−Fe相の{200}、{110}、{310}、{211}の極点図を基に級数展開法で計算した、3次元集合組織を表わす結晶方位分布関数(Orientation Distribution Function;ODF)から求めればよい。
なお、ランダム強度比とは、特定の方位への集積を持たない標準試料と供試材のX線強度を同条件で測定し、得られた供試材のX線強度を標準試料のX線強度で除した数値である。Fe系金属板はフェライト生成元素の拡散に伴い、表層の組織が内部へと成長するため、X線回折の測定はFe系金属板表面で測定しても、板厚中心で測定しても良い。
次に、以上のようなFe系金属板の製造方法について説明する。
(母材金属板の準備)
Si:0.5〜2.5質量%、およびMn+Ni:2.0〜5.0質量%であり、かつα−γ変態を生じ得る組成の圧延用素材(例えば、インゴット)を用い、この素材を温間または冷間圧延により母材金属板に加工する。その際に、冷間圧延の圧下量を調整するなどの手段により、少なくとも表層に圧延集合組織であるα−fiberを発達させる。
ついで、母材金属板の片面あるいは両面に異種金属としてフェライト生成元素を付着させ、表面にフェライト生成元素を付着させた母材金属板を準備する。
フェライト生成元素の付着方法としては、EB蒸着法、めっき法、イオンプレーティング法およびスパッタ法のいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせてもよい。
(加熱処理)
フェライト生成元素を付着させた母材金属板を、母材金属板のA3点まで加熱して、母材金属板内の一部または全体に表層からフェライト生成元素を拡散させ、母材に合金化させ、合金化した領域でα−Fe相を保存する。
母材金属板をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持する。この際、すでに合金化されている領域ではγ変態を生じないα−Fe単相成分となるため、その領域では結晶粒の配向はそのまま保存され、その領域の中で{100}<011>の方位を有する結晶粒が優先成長して、高集積化する。α−Fe単相成分でない領域はγ−Fe相へ変態する。
また、フェライト生成元素の拡散に伴い、γ−Fe相からα−Fe相へと変態していく際には、α−Fe相へ変態しようとするγ−Fe相の領域に隣接する領域は、すでに{100}<011>方位を有するα−Fe相となっており、変態する際に、隣接するα−Fe相の結晶方位を引き継いで変態する。これにより保持時間が長くなると{100}<011>の集積度が高くなる。
保持温度までの昇温速度は、速すぎると金属板の表層の回復が不十分となる場合があり、一方遅すぎると生産効率が低下する。このため昇温速度は0.1℃/sec以上15℃/sec以下が好ましい。
保持温度はA3点以上1300℃以下とする。A3点未満では{100}<011>を板厚中心部まで十分に発達させることができない。保持温度が1300℃を超える温度で保持してもB50に対する効果は飽和する。このため、A3点は1300℃未満であることが必要となる。長時間保持すると{100}<011>の集積度が高くなる一方で、フェライト生成元素の拡散により表層の電気抵抗率は低下していく。このため保持時間は0.5sec以上36000sec以下が好ましい。
(加熱拡散処理後の冷却)
拡散処理後、合金化されていない領域が残った状態で冷却を開始すると、合金化していない領域では、γ−Fe相からα−Fe相への変態の際に、すでに{100}<011>方位を有するα−Fe相となった領域の結晶方位を引き継いで変態し、{100}<011>のX線ランダム強度比が5以上400以下を満たす集合組織を有する金属板が得られる。冷却速度は0.1℃/sec以上500℃/sec以下が好ましい。この温度範囲で冷却すると、より高い{100}<011>の強度比が得られる。
なお、{100}<011>のX線ランダム強度比は、母材金属板の組成や厚み、異種金属の種類や応じて、加熱温度や保持時間を調整することで、比の値を5以上400以下に調整する。
本発明を実施例で更に説明する。実施例での条件は本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用しうるものである。
(実施例1)
真空溶解炉で様々な成分の鋼を溶解し、インゴットを鋳造した。インゴットをγ域の温度で厚さ45mmまで熱間圧延し、続いて温間または冷間で加工して所定の厚みの母材金属板を得た。表1に、母材金属板の化学成分(残部はFe及び不可避不純物)、およびA3点を示した。
次いで、母材金属板の両面にフェライト生成元素(Al、Si)を付着させて、様々な目付量の皮膜を形成した。次いでフェライト生成元素の付着した金属板に熱処理を行った。熱処理は10−2Paレベルまで真空引きした後にArガスで置換して不活性ガス雰囲気中で行った。冷却速度は不活性ガスをフローにすることで調整した。保持温度は1000〜1050℃、保持時間は8〜1800secとし、その後冷却した。表2に、皮膜の種類と目付量、熱処理条件などを示した。
得られたFe系金属板(製品金属板)を次のように評価した。
集合組織についてはX線回折法で評価した。磁気特性については圧延方向に対して45°方向からサンプルを切り出し、SST(Single Sheet Tester)を用いて、5000A/mの磁化力に対する磁束密度B50を求めた。この時、測定周波数は50Hzとした。次にVSM(Vibrating Sample Magnetometer)を用いて飽和磁束密度Bを求めた。この際、印加した磁化力は0.8×10A/mとした。また鉄損はJIS C2256に準拠し、単板磁気試験機(SST)で求めた。同じく表2に、{100}<011>のX線ランダム強度比及び磁気特性を示した。
表1、2から明らかなように、本発明のFe系金属板は高B50/Bであると同時に、低鉄損であることが確認できた。これに対し、No.1−1やNo.1−6、10、12、15のように金属板の組成が本発明の条件を外れている場合には、{100}<011>が高集積化せず、高B50/Bが得られなかった。またNo.1−7のように母材金属板がA3点のないα−Fe単相系の成分であると、十分に高いB50/Bは得られなかった。No.1−5や11は高合金であるため、硬くなり圧延中に割れてしまった。
Figure 2016008314
Figure 2016008314
(実施例2)
本実施例では母材に表1に記載の鋼種3、9を用いた。これらの母材は真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱間圧延、温間または冷間圧延によって所定の厚みに加工した。熱間圧延は1200℃に加熱した厚さ240mmのインゴットを厚さ36mmまで薄肉化した。この熱延板から機械加工によって各種厚みの板材を切り出した後、温間または冷間圧延を実施し、厚み0.015〜6.125mmの範囲の母材金属板を製造した。
得られた母材金属板にAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Ni、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Zn、Niを付着させた。本実施例においては付着させなかった場合も検討した。熱処理は赤外炉を用い、10−2Paレベルまで真空引きした雰囲気中で行った。保持温度は900〜1310℃、保持時間を0.2〜40000secとした。評価は実施例1と同じ方法により行った。
表3から明らかなように、本発明のFe系金属板は高B50/Bであると同時に、低鉄損であることが確認できた。これに対し、No.2−5は金属板の板厚が厚いため、板厚全体に集合組織を発達させることができず、高B50/Bを得ることが出来なかった。No.2−17や18のように、皮膜元素を付着させなかった場合やオーステナイト生成元素を付着させた場合には、集合組織を制御することができず、高B50/Bを得ることが出来なかった。No.2−20のように熱処理温度が母材金属板のA3点未満では、集合組織は発達しなかった。No.2−21では保持温度が1300℃を超え、{100}<011>の集積度は大きく増加することはなく、磁束密度への効果は見られなかった。No.2−22のように熱処理における保持時間が短いと、集合組織が十分に発達せず、高B50/Bを得ることが出来なかった。No.2−25のように保持時間が長いと、鉄損を十分に低減できなかった。No.2−27のように冷却速度が非常に大きい場合にも集合組織が十分に発達できず、高B50/Bを得ることが出来なかった。
Figure 2016008314
(実施例3)
本実施例ではフェライト生成元素として2種類以上の金属を混合したものを用いた。母材は実施例1の鋼種4を用いた。熱処理は10−2Paレベルの真空雰囲気中で行った。保持温度は1005℃とし、保持時間は45secとした。評価は実施例1と同じ方法で行った。
表4に示したように、フェライト生成元素同士の組み合わせであれば、高B50/Bかつ低鉄損が得られることが分かった。
Figure 2016008314

Claims (8)

  1. Si:1.5〜3.5質量%、および、MnとNiの1種または2種の合計:2.0〜5.0質量%を含有するFe系金属板であって、
    該金属板の表面から内部に、フェライト生成元素よりなる異種金属が合金化されて濃化した領域を有し、
    金属板板面における{100}<011>のX線ランダム強度比が5以上400以下であることを特徴とするFe系金属板。
  2. 前記異種金属が表面から拡散して濃化した領域の、表面を含む少なくとも一部領域がα単相領域であることを特徴とする請求項1に記載のFe系金属板。
  3. 濃化している異種金属がAl、Cr、Ga、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znのうち1種以上の元素であることを特徴とする請求項1または2に記載のFe系金属板。
  4. Fe系金属板の厚みが10μm以上6mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のFe系金属板。
  5. Si:0.5〜2.5質量%、およびMnとNiの1種または2種の合計:2.0〜5.0質量%を含有し、かつα―γ変態を生じ得る組成の加工用素材を、温間または冷間加工により母材金属板に加工する工程と、
    母材金属板の表面にフェライト生成元素よりなる異種金属を付着させる工程と、
    異種金属が付着した母材金属板を、母材金属板のA3点まで加熱して、異種金属を表面から母材金属板の内部に拡散させる工程と、
    母材金属板のA3点以上1300℃未満の温度で保定する工程と、
    保定後の母材金属板をA3点未満の温度へ冷却する工程と
    を有することを特徴とするFe系金属板の製造方法。
  6. 母材金属板に含有されるSi、Mn、Niの質量%をそれぞれ[Si]、[Mn]、[Ni]とすると下記(1)式を満足することを特徴とする請求項5に記載のFe系金属板の製造方法。
    Figure 2016008314
  7. 前記異種金属がAl、Cr、Ga、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znのうち1種以上の元素であることを特徴とする請求項5または6に記載のFe系金属板の製造方法。
  8. 該母材金属板の厚みが10μm以上6mm未満であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のFe系金属板の製造方法。
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